JP4089321B2 - 連続培養法による光学活性1,2−プロパンジオール類の製法 - Google Patents

連続培養法による光学活性1,2−プロパンジオール類の製法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬品・農薬・生理活性物質などの光学活性化合物の製造において極めて重要、且つ有用な化合物である光学活性1,2−プロパンジオール類の連続培養法を用いた連続生産法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に培養法としては、バッチ培養法、流加培養法、連続培養法が知られている。バッチ培養法は、培養当初にすべての基質を添加して培養終了時に培養液を回収する方法であり、少量、多品種生産に適した培養法である。流加培養法は、培養中に適宜基質を加えて最後に培養液を回収する方法であり、阻害性の基質を用いる場合やカタボライトリプレッションがかかる場合などに有効な培養法である。しかしながら、これら培養法は、培養終了まで培養液を取り出さないため、代謝産物による阻害が生じる。また、その都度培地の滅菌や種菌の調製といった煩雑な操作が必要であるため、手間と労力のかかる培養法であり、大量生産には適さない。
一方、連続培養法は培養中、連続的に培地を供給し、連続的に培養液を取り出す培養法である。この培養法では、一度培養を始めると連続的に培地を供給し連続的に培養液を得ることができ、培養槽を常に稼動状態に保てるため、バッチ培養や流加培養に見られるような煩雑な操作は不必要であり、また大量生産に最適な培養法である。しかしながら、長期にわたり連続培養を維持するには、雑菌による汚染などを防ぐために、特開平4−211357にあるような除菌または滅菌装置が必要となる。
【0003】
連続培養法による連続生産法としては、連続醗酵によるL−グルタミン酸の製造法(特開平10-150996)やエリスリトールの連続生産法(特開平5−137585)などが知られているが、ラセミ体化合物またはエナンチオマー混合物を単一炭素源とした連続培養法による光学活性体化合物の連続生産法は知られていない。
【0004】
光学活性1,2−プロパンジオールの製法に関して、鈴木らはアルカリゲネス属細菌を用いることにより、ペプトンや酵母エキスなどの栄養源を含有する培地中で好気的に培養しながらラセミ体1,2−ジオールを光学分割する方法を報告しているが、工業的なスケールでは雑菌の汚染などの可能性があり実際的な方法とは言い難い(特開2002−292)。
また、鈴木らはS体1,2−プロパンジオール資化能を有し、S体1,2−プロパンジオールを単一炭素源として資化増殖する能力を有するシュードモナス属またはアルカリゲネス属に属する細菌を、ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする培地あるいは完全合成培地中で培養し、培養液より残存するR体1,2−プロパンジオールを分離回収することを特徴とする資化培養法によるR体1,2−プロパンジオールの製法につき特許出願している(特願2001−387660)。なお、資化培養法によるS体1,2−プロパンジオールの製法については報告されていない。
【0005】
光学活性3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールの製法、例えばR体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールの製法に関しては、S体3−クロロ−1,2−プロパンジオール資化能を有し、S体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを単一炭素源として資化増殖する能力を有するシュードモナス属に属する細菌を、ラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする培地あるいは完全合成培地中で培養し、培養液より残存するR体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを分離回収することを特徴とする資化培養法によるR体3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製法が、特開平3−191794に開示されている。
【0006】
S体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールの製法に関しては、R体3−クロロ−1,2−プロパンジオール資化能を有し、R体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを単一炭素源として資化増殖する能力を有するシュードモナス属またはアルカリゲネス属に属する細菌を、ラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする培地あるいは完全合成培地中で培養し、培養液より残存するS体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを分離回収することを特徴とする資化培養法によるS体3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製法が、特開平3−191795、特開2001−149090に開示されている。
【0007】
上に挙げた、微生物を用いる資化培養法による製法は、いずれも、それらの実施例に記載されているのように、バッチ培養法及び流加培養法による光学活性1,2−プロパンジオール類の生産法であるため、その都度培地の滅菌や種菌の調製といった煩雑な操作が必要となる手間と労力のかかる培養法であり、大量生産に適しているとはいい難い。また、代謝産物や生成物等の影響により、長時間にわたり安定に生産性を維持することは難しく、より簡便で安価な光学活性1,2−プロパンジオール類の製法が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光学活性1,2−プロパンジオール類を、より経済的に安価で且つ簡便に大量生産することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のバッチ培養法及び流加培養法による光学活性1,2−プロパンジオール類の製造法を改良すべく鋭意検討した結果、該光学異性体を単一炭素源として資化増殖する能力を有するシュードモナス属またはアルカリゲネス属に属する細菌を、1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物を含む最少培地の供給速度を制御しながら連続培養することにより、光学活性1,2−プロパンジオール類を生産させる方法を見出し本発明に到達した。
【0010】
本発明の要旨は、式(1)で示される1,2−プロパンジオール類のR体あるいはS体資化能を有し、該光学異性体を単一炭素源として生育しうるシュードモナス属またはアルカリゲネス属に属する微生物もしくはその培養菌体を、式(1)で示される1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物を単一炭素源とする培地を培養槽に添加しながら連続培養し、該光学異性体を資化分解せしめ、培養槽から流出する培養物から、残存する式(1)で示される光学活性1,2−プロパンジオール類を分取することを特徴とする該光学活性1,2−プロパンジオール類の製法に関する。
【化3】
Figure 0004089321
(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を表す。)
培養槽は一槽でもよいが、連続した少なくとも2つの培養槽を用い、滞留時間、一槽目の培養槽内の1,2−プロパンジオール類の濃度、菌体濃度、比増殖速度μ、比基質消費速度νのいずれかを一定に保つ様に制御する連続培養法により行うことが好ましい。
滞留時間、一槽目の培養槽内の1,2−プロパンジオール類の濃度、菌体濃度、比増殖速度μ、比基質消費速度νを一定に保つには、例えば最少培地の供給速度を調整すればよい。
以下に、本発明の連続培養法及びその制御方法について詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、培養条件は至適pH 、至適温度の範囲内で行うのがよい。例えばpH を4 〜 1 0 、好ましくは5 〜 9 、培養温度は15 〜 5 0℃、好ましくは2 0 〜 3 7℃の範囲で行なう。なお、1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物の資化反応の進行に伴い、培養液中のpHが徐々に低下あるいは上昇する場合、適当なアルカリ源あるいは酸源を添加することにより培養液中のpH を至適範囲内にコントロールする必要がある。例えば、アルカリ源としては炭酸カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウ水溶液などの炭酸アルカリ塩水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などの水酸化アルカリ金属塩水溶液、あるいはアンモニア水溶液など、酸源としては塩酸、燐酸など、通常酸またはアルカリを中和させることができるものを用いてpH を至適範囲内に制御するのがよい。
【0012】
本発明の方法において、炭素源は、1,2−プロパンジオール類のみであり、窒素源としては、使用する菌株が利用し得る無機物質であれば特に制限は無く、例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸アンモニウム等の無機窒素化合物、およびそれらの混合物を挙げることができる。これらの炭素源、窒素源を使用することにより、雑菌汚染などを防ぐことができる。更にリン酸塩、金属塩を必要に応じて加えることもできる。
【0013】
本発明の方法において、培養槽の形式は、通気攪拌槽であればいずれでも利用可能であり、例えばエアーリフト式培養槽、機械的攪拌槽、気泡塔型培養槽などを利用することができる。培地の供給方法は、炭素源、窒素源、無機塩類、各種添加剤などが、一括してまたは個別に連続的にあるいは断続的に供給される。たとえば1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物は他の培地成分との混合物として培養槽に供給してもよいし、また他の培地成分とは別に独立して培養槽に供給してもよい。また、消泡剤も必要に応じて添加する。本発明の方法は、培養槽内に常に生育状態の良い対数増殖期の菌を安定に存在させることができるので、生産効率の高い製法である。
【0014】
本発明の方法において、一槽目に連続的あるいは断続的に供給される1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物を含む最少培地は、単一炭素源である1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物以外は、無機窒素化合物、リン酸塩、金属塩などの無機塩類であるため、雑菌が生育しがたい環境であり、別途滅菌などの操作を必要ない特徴を有する。最少培地のpHは、好ましくは3程度に調整するのがよい。なお、単一炭素源として用いられる1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物に占めるRとS体の混合比は特に制約が無い。
また、本発明の方法は、分割基質を単一炭素源とし、他に栄養培地を含まないため培養制御がきわめて容易である。生産量の調節も基質濃度の調整で、でき簡便である。
【0015】
本発明の方法において、連続培養初期における一槽目の培養液中の菌体濁度OD(660nmでの濁度、以下同様)は特に制限は無いが、通常は本発明における定常状態時の菌体濁度と同程度か、やや低い菌体濁度に達した後、連続培養へ移行することが望ましい。また、本発明において、連続培養中の一槽目の培養液の菌体濁度は通常4 OD〜13 ODである。
【0016】
本発明の方法において、連続培養に先立って、菌を活発に増殖させて培養液中の菌体濁度が所定の値となるまで予備培養が行われる。予備培養としてバッチ培養または流加培養を行って菌体濁度を高くした後に連続培養を行ってもよいし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行ってもよい。
【0017】
予備培養は通常の方法により行われ、培養温度、pH、基質及び培地成分などは前記の本発明の連続培養における条件と同様である。予備培養に引き続き、前記の滞留時間、一槽目の培養槽内の1,2−プロパンジオール類濃度、菌体濃度、比増殖速度μ、比基質消費速度νにより制御される連続培養が行われる。
【0018】
本発明の方法において、連続培養に切り替えられた後は、培地供給流量あるいは1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物の供給量を調整して、滞留時間、一槽目の培養槽内の1,2−プロパンジオール類濃度、菌体濃度、比増殖速度μまたは比基質消費速度ν、が一定となるように調整することが好ましい。
本発明の方法において、一槽目の培養液中の1,2−プロパンジオール類濃度は1〜20%、好ましくは1〜15%、更に好ましくは2.0〜8%に保つのが望ましい。
【0019】
本発明の方法において、定常状態では、1,2−プロパンジオール類がラセミ体の場合、二槽目以降の滞留時間は、末端の培養槽から流出する培養物をガスクロマトグラフィー等で分析し、ラセミ体1,2−プロパンジオール類の残存濃度が初期濃度に比して50% 、あるいは目的とする光学活性体の光学純度を測定して調節すればよい。また、ラセミ体以外の場合は、目的とする光学活性体の光学純度を測定して、調節すればよい。すなわち、基質である1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物中の一方の光学異性体1,2−プロパンジオール類が全て分解資化された時点で末端の培養槽から流出するように調節するのがよい。
滞留時間の調節は、二槽目以降の培養槽の体積で調節してもよいし、培養槽の数で調節してもよい。また培地供給流量で調節してもよい。
【0020】
このようにして末端の培養槽から流出した培養液中に残存する光学活性1,2−プロパンジオール類は一般的な方法で回収および精製できる。例えば、培養液から菌体を遠心分離で除いた後、上清をエバポレーターにより濃縮し、酢酸エチル等の溶媒で抽出する。次いで抽出液を無水硫酸マグネシウムにより脱水した後、減圧下で溶媒を除去し光学活性1,2−プロパンジオール類のシロップを得ることができる。さらに蒸留により精製してもよい。
【0021】
なお、シュードモナス シュードアルガリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)DS−T−SP32株は文献未載の新菌株であり、その生理学的、菌学的諸性質を以下に記載する。
菌株:シュードモナス シュードアルガリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes) DS−T−SP32
【0022】
Figure 0004089321
【0023】
Figure 0004089321
【0024】
Figure 0004089321
【0025】
Figure 0004089321
【0026】
Figure 0004089321
【0027】
Figure 0004089321
【0028】
Figure 0004089321
【0029】
Figure 0004089321
【0030】
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特に記載のない限り%(w/v)を表す。
【0031】
実施例1
121℃で15分間、加圧蒸気滅菌したグリセリン10g/L、酵母エキス10g/L、ペプトン10g/Lを含む液体培地100ml(pH7.2)を入れた500ml容バッフル付き三角フラスコに、あらかじめ同栄養培地プレートで生育させたシュードモナスsp.DS−SI−5株の菌体を1白金耳分植菌し、30℃で24hr培養を行ない種培養液を得た。
【0032】
【表1】
Figure 0004089321
【0033】
次いで、表1に示す組成の無機成分水溶液にラセミ体1,2−プロパンジオールを4%添加した最少培地1L(pH6.9)を2L容の培養槽に入れ、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌し、ラセミ体1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする培地を作製した。これに、種培養液4%(v/v)を加え、温度30℃、通気量0.1L/min、回転数500rpmの条件で12hr、バッチ培養により予備培養を行った。12hr後の時点で菌体濁度は8.6 OD(660nmでの濁度)で、そのときの1,2−プロパンジオール濃度は2.2% であった。なお、pHの測定および制御は連動させたpH コントローラーを用いて行い、3N の水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.9に制御した。
次に連続培養に移り、図1に示すように、表1に示す組成の無機成分水溶液1L(pH6.9)を2L容の培養槽に入れ121℃で15分間、加圧蒸気滅菌後、二層目培養槽として一槽目と接続した。一槽目、二槽目とも、温度、通気量、pH等の条件は予備培養時と同じ条件で行った。表1に示した無機成分水溶液に単一炭素源としてラセミ体1,2−プロパンジオールを100g/L加え、連続培養時の供給培地とした。一槽目の滞留時間を73hrにするため、培地供給流量を0.0137L/hr、として連続培養を行った。
結果として、定常状態において一槽目の1,2−プロパンジオール濃度は6.2%、菌体濁度は8.0 OD(660nmでの濁度)、比増殖速度μは0.0137(h-1)、比基質消費速度νは0.065(g/OD・hr・L)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は13 OD(660nmでの濁度)、 1,2−プロパンジオール濃度は3.2%であった。
【0034】
二槽目から流出する培養液中の1,2−プロパンジオールを回収し無水トリフルオロ酢酸によりトリフルオロ酢酸化した後、アステック社製のキャピラリーカラムG−TA( 0.25mm(ID)x30m(長さ))を用いたガスクロマトグラフィーにより光学異性体の分析を行なった(Suzuki et al., Tetrahedron: Asymmetry, Vol. 5, 239-246 (1994) )。
その結果、得られた1,2−プロパンジオールは光学純度98%ee 以上のR体1,2−プロパンジオールであった。光学異性体の分析条件:カラム温度,60℃; 検出器温度, 200℃; キャリアーガス,窒素;流速,0.5ml/min ; 検出器,FID;スプリット比,200/L 。1,2−プロパンジオールのリテンションタイム:R体,11.4 分;S体,17.6 分。
【0035】
実施例2
種培養から予備培養の終了段階までの方法は、菌株をシュードモナス ニトロレデューセンス DS−S−RP8株に変えた以外は、実施例1と同様に行い、以降、連続培養に移った。一槽目の菌体濁度を11 OD(660nmでの濁度)に保つように培地供給流量を調節して連続培養を行った。結果として、培地供給量0.0159L/hrで定常状体となった。このときの一槽目の滞留時間は62.9hr、一槽目の1,2−プロパンジオール濃度は6.8%、比増殖速度μは0.0159(h-1)、比基質消費速度νは0.046(g/OD・hr・L)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は14 OD(660nmでの濁度)、 1,2−プロパンジオール濃度は3.8%であった。実施例1と同様の方法で二槽目から流出する培養液中の1,2−プロパンジオールの光学純度を測定したところ、98%ee 以上のR体1,2−プロパンジオールであった。
【0036】
実施例3
種培養からバッチ培養の終了段階までの方法は、菌株をアルカリゲネスsp.DS−S−7G株に変えた以外は、実施例1と同様に行い、以降、連続培養に移った。比基質消費速度νが0.053(g/OD・hr・L)に保つように培地供給流量を調節して連続培養を行った。結果として、培地供給量0.0080L/hrで定常状態となった。このときの一槽目の滞留時間は125hr、一槽目の1,2−プロパンジオール濃度は3.2%、比増殖速度μは0.0080(h-1)、菌体濁度10.2 OD(660nmでの濁度)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は13.5 OD(660nmでの濁度)、 1,2−プロパンジオール濃度は1.2%であった。実施例1と同様の方法で二槽目から流出する培養液中の1,2−プロパンジオールの光学純度を測定したところ、98%ee 以上のR体1,2−プロパンジオールであった。
【0037】
実施例4
種培養からバッチ培養の終了段階までの方法は、菌株をシュードモナスシュードアルガリゲネス DS−T−SP32株に変えた以外は、実施例1と同様に行い、以降、連続培養に移った。一槽目の滞留時間を80hrになるように、培地供給流量を0.0125L/hr、として連続培養を行った。
結果として、定常状態において一槽目の1,2−プロパンジオール濃度は4.9%、菌体濁度は10.0 OD(660nmでの濁度)、比増殖速度μは0.0125(h-1)、比基質消費速度νは0.064(g/OD・hr・L)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は14 OD(660nmでの濁度)、1,2−プロパンジオール濃度は1.8%であった。実施例1と同様の方法で二槽目から流出する培養液中の1,2−プロパンジオールの光学純度を測定したところ、98%ee 以上のS体1,2−プロパンジオールであった。
【0038】
実施例5
121℃で15分間、加圧蒸気滅菌したグリセリン10g/L、酵母エキス10g/L、ペプトン10g/Lを含む液体培地100ml(pH7.2)を入れた500ml容バッフル付き三角フラスコに、あらかじめ同栄養培地プレートで生育させたシュードモナスsp.DS−K−2D1株の菌体を1白金耳分植菌し、30℃で24hr培養を行ない種培養液を得た。
【0039】
次いで、表1に示す組成の無機成分水溶液にラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを2%添加した最少培地1L(pH6.9)を2L容の培養槽に入れ121℃で15分間、加圧蒸気滅菌し、ラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを単一炭素源とする培地を作製した。これに、種培養液4%(v/v)を加え、温度30℃、通気量0.1L/min、回転数400rpmの条件で19hr、バッチ培養により予備培養を行った。19hr後の時点で菌体濁度は5.4 OD(660nmでの濁度)で、そのときの3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度は0.9% であった。なお、pH の測定および制御は連動させたpH コントローラーを用いて行い、3N の水酸化ナトリウム水溶液によりpH6.9に制御した。次に連続培養に移り、図1に示すように、表1に示す組成の無機成分水溶液1L(pH6.9)を入れた2L容の培養槽を121℃で15分間、加圧蒸気滅菌後、二槽目培養槽として一槽目と接続した。一槽目、二槽目とも、温度、通気量、pH等の条件は予備培養時と同じ条件で行った。表1に示した無機成分水溶液に単一炭素源としてラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを24g/L加え、連続培養時の供給培地とした。一槽目内の3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度を2.0%に保つように、培地供給流量を調節して連続培養を行った。
結果として、培地供給流量が0.063L/hrで定常状態となった。このときの一槽目の滞留時間は15.9hr、比増殖速度μは0.063(h-1)、比基質消費速度νは0.053 (g/OD・h・L)、菌体濁度4.8 OD(660nmでの濁度)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は6.8 OD(660nmでの濁度)、3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度は1.0%であった。
【0040】
二槽目から流出する培養液中の3−クロロ−1,2−プロパンジオールを回収し、水酸化ナトリウム水溶液を用いたアルカリ処理により相当するグリシドールの光学異性体に変換後、アステック社製のキャピラリーカラムG−TA[(0.25mm(ID)x30m(長さ))を用いたガスクロマトグラフィーにより光学異性体の分析を行なった(Suzuki et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., Vol. 40, 273-278 (1993))。その結果、得られた3−クロロ−1,2−プロパンジオールは光学純度98%ee のR体3−クロロ−1,2−プロパンジオールであった。
光学異性体の分析条件:カラム温度,45℃;検出器温度,200℃;キャリアーガス,窒素;流速,0.5ml/min;検出器,FID;スプリット比,200/L。グリシドールのリテンションタイム:R体,80.6分;S体,82.1分。
【0041】
実施例6
種培養からバッチ培養の終了段階までの方法は、菌株をシュードモナス s p. DS−SI−5株に変更した以外は実施例5と同様の方法で行い、以降、連続培養に移った。表1に示した無機成分水溶液に単一炭素源としてラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを40g/L加え、連続培養時の供給培地とした。一槽目内の3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度を2.3%に保つように、培地供給流量を調節して連続培養を行った。結果として、培地供給流量が0.070L/hrで定常状態となった。このときの一槽目の滞留時間は14.3hr、比増殖速度μは0.070(h-1)、比基質消費速度νは0.170 (g/OD・hr・L)、菌体濁度7.0 OD(660nmでの濁度)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は9.8 OD(660nmでの濁度) 、3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度は0.8%であった。実施例5と同様の方法で二槽目から流出する培養液中の3−クロロ−1,2−プロパンジオールの光学純度を測定したところ、98%ee 以上のS体3−クロロ−1,2−プロパンジオールであった。
【0042】
実施例7
種培養からバッチ培養の終了段階までの方法は、菌株をアルカリゲネスsp.DS−S−7G株に変更した以外は実施例5と同様の方法で行い、以降、連続培養に移った。表1に示した無機成分水溶液に単一炭素源としてラセミ体3−クロロ−1,2−プロパンジオールを34g/L加え、連続培養時の供給培地とした。菌体濁度を6.0 OD(660nmでの濁度)に保つように培地供給流量を調節して連続培養を行った。結果として、培地供給量0.025L/hrで定常状態となった。このときの一槽目の滞留時間は40hr、一槽目の3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度は3.0%、比増殖速度μは0.025(h-1)、比基質消費速度νは0.017(g/OD・hr・L)に維持された。このとき、二槽目の菌体濁度は7.5 OD(660nmでの濁度)、 3−クロロ−1,2−プロパンジオール濃度は1.4%であった。実施例5と同様の方法で二槽目から流出する培養液中の3−クロロ−1,2−プロパンジオールの光学純度を測定したところ、98%ee 以上のS体3−クロロ−1,2−プロパンジオールであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば高光学的純度のR体及びS体1,2−プロパンジオール、R体及びS体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジオールを原料的に安価で、きわめて簡便な方法で、効率的に量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の二槽による連続培養装置の概略図である。
【符号の説明】
1 培養槽(第一槽)
2 培溶液面
3 撹拌翼
4 培養槽(第二槽)
5 pH電極
6 スパージャー
7 ポンプ
8 アルカリ液
9 酸液
10 pHメーター
11 培溶液流出管
12 基質液

Claims (9)

  1. 式(1)で示される1,2−プロパンジオール類のR体あるいはS体資化能を有し、該光学異性体を単一炭素源として生育しうるシュードモナス属またはアルカリゲネス属に属する微生物もしくはその培養菌体を、連続した複数の培養槽を用い、単一炭素源として式(1)で示される1,2−プロパンジオール類のエナンチオマー混合物を1〜20%濃度で含む培地を一槽目に添加しながら連続培養し、該光学異性体を資化分解せしめ、末端の培養槽から流出する培養物から、残存する式(1)で示される98%以上の光学活性1,2−プロパンジオール類を分取することを特徴とする該光学活性体1,2−プロパンジオール類の製法。
    Figure 0004089321
    (式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を表す。)
  2. 単一炭素源が1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物である請求項1に記載の光学活性1,2−プロパンジオールの製法。
  3. 単一炭素源が3−クロロ−1,2−プロパンジオールのエナンチオマー混合物である請求項1に記載の光学活性3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製法。
  4. 連続培養を制御するに際し、滞留時間により、一槽目内の式(1)の化合物濃度により、菌体濃度により、比増殖速度μにより、および/または比基質消費速度νにより、培養を制御する請求項1に記載の光学活性1,2−プロパンジオール類の製法。
  5. 使用する微生物がシュードモナス(Pseudomonas)sp.DS−SI−5株(国際寄託番号:FERM BP−7080)、シュードモナス ニトロレデューセンス(Pseudomonas nitroreducens) DS−S−RP8株(国際寄託番号:FERM BP−7793)、またはアルカリゲネス(Alcaligenes)sp.DS−S−7G株(国際寄託番号:FERM BP−3098)である、請求項1、2および4のいずれかに記載の(R)−1,2−プロパンジオールの製法。
  6. 使用する微生物がシュードモナス シュードアルガリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)DS−T−SP32株(国内寄託番号:FERM P−18402)である、請求項1、2および4のいずれかに記載の(S)−1,2−プロパンジオールの製法。
  7. 使用する微生物がシュードモナス(Pseudomonas)sp.DS−K−2D1株(国際寄託番号:FERM BP−3096)である請求項1、3および4のいずれかに記載の(R)−3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製法。
  8. 使用する微生物がシュードモナス(Pseudomonas)sp.DS−SI−5株(国際寄託番号:FERM BP−7080)またはアルカリゲネス(Alcaligenes)sp.DS−S−7G株(国際寄託番号:FERM BP−3098)である請求項1、3および4のいずれかに記載の(S)−3−クロロ−1,2−プロパンジオールの製法。
  9. シュードモナス シュードアルガリゲネス(Pseudomonas pseudoalcaligenes)DS−T−SP32株(国内寄託番号:FERM P−18402)。
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