JP4089000B2 - 湿潤バクテリアセルロースの保存方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース性物質を生産する能力を有する微生物(以下、「セルロース生産菌」という)に属する菌を通気攪拌等の培養系で培養して得られた、セルロース性物質(以下、「バクテリアセルロース」又は「BC」という)を保存する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
BC(バクテリアセルロース)は可食性であり食品分野で利用されるほか水系分散性に優れているので食品、化粧品又は塗料等の粘度の保持、食品原料生地の強化、水分の保持、食品安定性向上、低カロリー添加物又は乳化安定化助剤としての産業上利用価値がある。
BCは木材パルプ等から製造されるセルロースに較べ、フィブリルの断片幅が2ケタ程度も小さいことを特徴とする。
従って、BCの離解物はミクロフィブリルのかかる構造的物理的特徴に基づき高分子、特に水系高分子用補強剤として各種の産業用用途がある。このようなセルロース性離解物を紙状または固形状に固化した物質は高い引張弾性率を示すのでミクロフィブリルの構造的特徴に基づくすぐれた機械特性が期待され、各種産業用素材としての応用がある。
【0003】
さて一般に、約25重量%以上の水分含有量を有するBC(以下、「湿潤BC」という。)は腐敗しやすい為に、それ以下の水分しか含まないBC乾燥物とは異なり、保存にあたって殺菌等の処理を施す必要がある。
従来の例として、オートクレーブ精製したBCを殺菌したり,BCにソルビン酸、次亜塩素酸ナトリウム、エタノール、スライムコントロール剤等の防腐剤を添加することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オートクレーブ等による熱処理は最も確実な方法ではあるが、大量のBCを処理する場合には、熱伝導を考慮してそれら大量のBCを小分けにしてから処理する必要がある。
一方、防腐剤をBC精製の最終工程前に添加しようとすると、かなり大量の防腐剤を使用せざるを得ない為に経済的に効率が悪い。又、最終製品である精製したBCに添加する場合には、防腐剤を均一に混ぜ混むことが実質的に無理であった。
従って、腐敗しやすいBCを経済的且つ効果的に保存することが出来る方法が求められている。
【0005】
又、セルロースを常温で2規定以上の濃度の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム溶液中に入れると、セルロースの結晶が転移したり、セルロースの繊維が収縮したりすることが知られていた。この反応は温度が低い程起こりやすいことも知られている。更に、酸素の存在下でアルカリ中に放置すると、セルロースの還元末端から酸化され、その重合度が低下していくことが知られていた。
又、アルカリ性においては、一般的な微生物は増殖しないが、アルカリ性を好む特殊な微生物は生育することが知られていた。こうした微生物の中には、セルロースを分解するセルラーゼを分泌するものがあることも知られている。
ところが、上記のようなアルカリによるセルロースの構造・物性の変化に関して、アルカリ濃度及び放置時間等の諸条件が実質的にどの程度影響を与えるかについてはこれまで明らかにされていない。
更に、アルカリ性において、微生物によるセルロースの分解が実際にどの程度進行するかに関してもこれまでに調べられてこなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、硫酸アルキル塩を存在させることで湿潤BCの保存状態が飛躍的に向上すること、及び、特定条件のアルカリ下で湿潤BCを保存することにより、BCの実質的な構造変化なしにBCの保存状態を飛躍的に向上させ得ることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、湿潤バクテリアセルロース中に硫酸アルキル塩を存在させることを特徴とするバクテリアセルロースの保存方法に係わる。
硫酸アルキル塩の代表例としてはドデシル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
硫酸アルキル塩の添加量は当業者が適宜決めることが出来るが、通常、湿潤BC全体の約0.03重量%〜約2重量%、好ましくは、約0.05重量%〜約1.5重量%、更に好ましくは、約0.07重量%〜約1.2重量%存在させることができる。
本発明の保存方法に於いて、硫酸アルキル塩に加えて、更に水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを共存させることも可能である。
このような場合に、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの添加量も当業者が適宜決めることが出来、通常、湿潤BC全体の約0.001重量%〜約4重量%、好ましくは、約0.002重量%〜約2重量%存在させることが可能である。
従って、本発明は、硫酸アルキル塩を約0.03重量%〜約2重量%を含有する湿潤バクテリアセルロースにも係わる。
この湿潤バクテリアセルロースは、更に水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを約0.001重量%〜約4重量%含有することもできる。
更に、本発明は、湿潤バクテリアセルロース中に水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを存在させることを特徴とするバクテリアセルロースの保存方法に係わる。
水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの濃度は当業者が適宜決めることが出来るが、通常、1.5規定以下で、湿潤バクテリアセルロースのpHが10.5以上、特に、pH10.5から12.5となるように、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを存在させることが好ましい。
従って、本発明は、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの濃度が1.5規定以下で、湿潤バクテリアセルロースのpHが10.5以上、特に、pH10.5から12.5となるように、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する湿潤バクテリアセルロースにも係わるものである。
【0007】
湿潤バクテリアセルロースは、セルロース生産菌の培養終了時からBC精製に至る如何なる工程から得られたものでも良い。通常、ブロス分離後に水酸化ナトリウムで溶菌処理した後、フィルタープレス等で濃縮して得られる、湿潤状態にあるBCが好ましい。
例えば、溶菌処理の際に洗浄の目的で硫酸アルキル塩を添加したような場合には、その後の水洗処理等によりかかる硫酸アルキル塩を除去しない限り、特に外部から更めて硫酸アルキル塩を添加する必要はない。
尚、本発明の湿潤BCには、BCの他にも、例えば、各種培地成分及び溶菌残査等の不純物が混在していても構わない。又、湿潤BCに於けるBCの濃度に特に制限はない。
又、保存の終了後にBCを使用するときは、通常の方法で湿潤BCに水洗等の処理を施してBC精製物を調製することが出来る。
【0008】
本発明におけるバクテリアセルロースの生産に使用されるセルロース生産菌は、例えば、BPR2001株に代表されるアセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタンス(Acetobacter xylinum subsp. sucrofermentans)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum )ATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌス(A. pasteurianus )ATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142及びアセトバクター・キシリナムATCC10821等の酢酸菌(アセトバクター属)、その他に、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、アエロバクター属、アゾトバクター属及びズーグレア属並びにそれらをNTG(ニトロソグアニジン)等を用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株である。
尚、BPR2001株は、平成5年2月24日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに寄託され(受託番号FERM P−13466)、その後1994年2月7日付で特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく寄託(受託番号FERM BP−4545)に移管されている。
NTG等の変異剤を用いての化学的変異処理方法には、例えば、Bio Factors, Vol. l, p.297−302 (1988)及び J. Gen. Microbiol, Vol. 135, p.2917−2929 (1989) 等に記載されているものがある。従って、当業者であればこれら公知の方法に基づき本発明で用いる変異株を得ることができる。また、本発明で用いる変異株は他の変異方法、例えば放射線照射等によっても得ることができる。
【0009】
培養に用いる培地の組成物中、炭素源としてはシュクロース、グルコース、フラクトース、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、マルトース、エリスリット、グリセリン、エチレングリコール、エタノール等を単独或いは併用して使用することができる。更にはこれらのものを含有する澱粉水解物、シトラスモラセス、ビートモラセス、ビート搾汁、サトウキビ搾汁、柑橘類を始めとする果汁等を炭素源に加えて使用することもできる。 また、窒素源としては硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸塩、尿素等有機或いは無機の窒素源を使用することができ、或いはBacto−Peptone、Bacto−Soytone、Yeast−Extract、豆濃などの含窒素天然栄養源を使用してもよい。有機微量栄養素としてアミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、2,7,9−トリカルボキシ−1Hピロロ〔2,3,5〕−キノリン−4,5−ジオン、亜硫酸パルプ廃液、リグニンスルホン酸等を添加してもよい。
【0010】
生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、要求される栄養素を補添することが必要である。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩、コバルト塩、モリブデン酸塩、赤血塩、キレート金属類等が使用される。
BCの製造方法に関しては、特開昭62−265990号、特開昭63−202394号及び特公平6−43443号等にBCの製造方法に関する記載がある。
セルロース生産菌の培養を行なう際に適当とされている栄養培地としては、炭素源、ペプトン、酵母エキス、燐酸ナトリウム及びクエン酸からなる Schramm/Hestrin 培地(Schramm ら、J. General Biology, 11, pp.123〜129, 1954 ) が知られている。また、このような栄養培地に、培地中の特定栄養素によるセルロース生成促進因子である,イノシトール、フィチン酸及びピロロキノリンキノン(PQQ)(特公平5−1718号公報;高井光男、紙パ技協誌、第42巻、第3号、第237〜244頁)等を添加したり、更には、カルボン酸又はその塩(特願平5−191467号)、インベルターゼ(特願平5−331491号)及びメチオン(特願平5−335764号)を添加することによって、セルロース性物質の生産性が向上することが見出されている。
【0011】
本発明で用いるBCは従来公知の培養方法を任意に選択することができる。
例えば、酢酸菌を生産菌として用いる場合には、培養のpHは3ないし7に、好ましくは5付近に制御する。培養温度は10〜40℃、好ましくは25〜35℃の範囲で行う。培養装置に供給する酸素濃度は1〜100%、望ましくは21〜80%であれば良い。これら培地中の各成分の組成割合及び培地に対する菌体の接種等は培養方法に応じて当業者が適宜選択し得るものである。
バクテリアセルロースは、従来より公知の静置、振盪又は通気攪拌培養形式で、培養操作法としては、いわゆる回分発酵法、流加回分発酵法、反復回分発酵法及び連続発酵法等の公知の方法によって製造することができる。
【0012】
尚、攪拌培養とは、インペラー、エアーリフト発酵槽、発酵ブロスのポンプ駆動循環及びこれら手段の組合せ等で培養液を攪拌しながら行なう培養法であり、当該攪拌培養中に受ける攪拌作用によって、バクテリアセルロースの構造が、例えば、結晶化指数が低下して非晶部が増すように変化する。
更に、本出願人名義の特開平8−33494号公報に記載された培養装置と分離装置の間で菌体を含む培養液を循環させるセルロース性物質の製造方法であって、該分離装置に於いて、生産物であるセルロース性物質を菌体及び培養液から分離することを特徴とする前記方法や、同じく、本出願人名義の特開平8−33495号公報に記載されたセルロース生産菌を培養してセルロース性物質を製造する方法であって、培養期間中、培養系からの培養液の引き抜き及び該引き抜き量とほぼ等容量の新たな培地の供給を連続的に行なうことによって、培養中の培養液に於けるセルロース性物質の濃度を低く維持することを特徴とする前記製造方法がある。
本発明でいう攪拌培養においては、攪拌と同時に、必要に応じて、通気を行なう。
【0013】
攪拌培養により得たバクテリアセルロースを遠心分離法又は濾過法等により培養液から分離する。
バクテリアセルロースは菌体と一緒に回収してもよく、さらに本物質中に含まれる菌体を含むセルロース性物質以外の不純物を取り除く処理を施すことが出来る。
不純物を取り除くためには、水洗、加圧脱水、希酸洗浄、アルカリ洗浄、次亜塩素酸ソーダ及び過酸化水素などの漂白剤による処理、リゾチームなどの菌体溶解酵素による処理、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸などの界面活性剤による処理、常温から200℃の範囲の加熱洗浄などを単独及び併用して行い、セルロース性物質から不純物をほぼ完全に除去することができる。
このようにして得られたバクテリアセルロースは、セルロース及び、セルロースを主鎖としたヘテロ多糖を含むもの及びβ−1,3、β−1,2等のグルカンを含むものである。ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分はマンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の六炭糖、五炭糖及び有機酸等である。
なおこれ等の多糖が単一物質である場合もあるし2種以上の多糖が水素結合等により混在してもよい。
【0014】
本発明の湿潤BCに含まれるBCは離解処理を受けたものでも良い。
BCの離解現象は、機械的外力等によってセルロース内部に発生した応力が、これを変形・破壊することによる現象と考えられる。従って、BCの離解処理は、BCに機械的外力を与えることにより行なえる。更に酸加水分解、酵素加水分解及び漂白剤によっても離解処理を行なうことができる。
ここでいう機械的外力とは、例えば、引っ張り、曲げ、圧縮、ねじり、衝撃及び剪断等の応力が挙げられるが、一般的には圧縮、衝撃及び剪断応力が主体である。
実際にこれら機械的外力をBCに与える場合は、例えば、ミキサー、ポリトロン又は自励式超音波破砕機のような超音波発振機等を使用することで達成できる。
【0015】
ミキサーによる離解処理においては、機械的外力は攪拌羽根とBCが衝突することによる衝撃力と、媒体の速度差によるズレ現象によって発生する剪断力が主体となる。
ポリトロンによる離解処理においては、機械的外力はBCが外歯と内歯に挟まることによる圧縮力、高速に回転する歯とBCが衝突することによる衝撃力、静止している外歯と高速に回転する内歯の隙間に存在する媒体に発生する剪断応力が主体となる。
超音波破砕機による離解においては、機械的外力は超音波発振部の発振により媒体中にキャビテーション(空洞現象)が連続的に発生し、局部的に生じる著しい剪断応力が主体となる。
本発明の離解処理は、BCに一定の負荷(機械的外力)を与えることができれば、上記具体例以外のいかなる方法でも行ない得る。
その他の離解処理条件は当業者が適宜選択することが出来る。
更に、所定の目開きを有するスクリーンで篩い分けすることもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、該実施例は本発明の範囲を何等限定するものではない。
【0017】
【実施例】
実施例1
BPR−2001株をグリセロールストックよりCSL−Fru培地100mlを仕込んだ750ml容ルーフラスコに1%植菌し28℃で3日間静置培養した。培養後ルーフラスコをよく振って菌体をセルロース膜よりはがした後、菌液12.5mlを112.5mlの培地を含む500mlフラスコに植菌し、28℃、180rpm 、3日間培養した。
得られた培養物をブレンダーにより無菌的に離解し、その60mlを540mlのCSL−Fru培地を仕込んだ1lジャーに植菌し、pHをNH3 ガスおよび1規定H2 SO4 で4.9〜5.1に制御しながら、溶存酸素量(DO)が3.0%以上になるように回転数を自動制御しながら、通気攪拌下でメイン培養を行った。尚、以上の実施例で用いたCSL−Fruの組成は以下に示す。
【0018】
【表1】
培地組成
CSL−Fru培地
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
培養終了後、得られたBC含有培養液を希釈したもの(BC濃度:0.5重量%,液量600L)を80℃まで加熱した後、以下の仕様のスクリューデカンターで遠心分離し沈殿物を回収した。沈殿物を水で希釈分散させた後、最終濃度が0.2N NaOH及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.1重量%となるようにこれらの薬剤を添加して調製し、80℃、60分間加熱することで溶菌した。その液を硫酸で中和し、以下の仕様のフィルタープレスを用いて濾過回収し,本発明の湿潤BCを得た。尚、比較の為、同じ沈殿物を、最終濃度が0.1NNaOHなるように薬剤を添加し、以下、同様にして調製して、硫酸アルキル塩を含まない比較湿潤BCを得た。
又、これらの溶菌処理の後、それぞれの湿潤BCを水に懸濁し80℃で60分間加熱後、フィルタープレスにより濾過分離し沈殿物を回収することによりセルロースの洗浄を行い、本発明湿潤BCからの水洗処理物(1)及び比較湿潤BCからの水洗物(2)を得た。
更に、同様の洗浄を行ない、本発明湿潤BCからの水洗処理物(3)及び比較湿潤BCからの水洗物(4)を得た。
【0022】
(1)スクリューデカンター仕様
最大遠心力: 3100G(6,000rpm)
差速: 5〜30rpm
公称処理能力: 最大1000L/hr
(2)フィルタープレス仕様
濾過面積2.67m2 (濾過板サイズ750mm角)、濾室数4室、圧搾機構付:
濾過方法:濾過圧力4kg/cm2 の定圧濾過、圧搾方法:圧搾圧力7kg/cm2 、圧搾時間:20分間、処理温度:80℃、濾布:テトロン製、通気度:30cc/cm2 /sec
【0023】
実施例2
実施例1で得られた本発明湿潤BC、比較湿潤BC及び水洗処理物(1)〜水洗処理物(4)のそれぞれを実験試料として用いて以下の実験を行った。
窒素含量の測定:
各実験試料を乾燥させた後に、それらに含まれている窒素の含有量を全炭素・全窒素分析装置(スミグラフNC−90A;住化分析センター製)を用いて測定し、これを汚れの尺度とした。
得られた結果を以下の表4に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
保存安定性:
次に各実験試料を5℃及び30℃で6カ月間にわたり保存して、各時期に於ける一般の細菌数を測定した。
尚、一般の細菌数の測定は、標準寒天平板培養法で実施した。
得られた結果を以下の表5及び表6に示す。
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
実施例3
実施例1の方法に従い、湿潤BCを調製した。但し、ドデシル硫酸ナトリウムを添加しての洗浄は行わなかった。得られた湿潤BCのpHは10.8であった。この湿潤BCをガラスビンの中に入れて密閉し、2年間常温で保存した。保存後の色、性状、外観は保存前のそれらと差が認められなかった。又、重合度にも変化は見られなかった。
更に、保存前と保存後の湿潤BCから調製したセルロース濃度0.5重量%の離解物懸濁液の粘度、乳化安定性、填料歩留まり向上効果等を当該技術分野で周知の方法で測定したが、差は認められなかった。又、セルロース自体の重合度を当該技術分野で周知の方法で測定したところ、保存後に、7〜8%の低下が見られたが、この差は測定上の誤差を考慮すると有意なものとは認められなかった。更に、離解物懸濁液からシートを調製し、そのヤング率を測定したが、これも両者の間に全く差が認められなかった。
これらの結果から、保存前と保存後とで、セルロースの構造及び物性が変化していないことが判明した。
更に、実施例2の方法に従い、細菌数、カビ数、及び酵母数等を調べたが、2年間の保存にもかかわらず、いずれも検出されなかった。水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムを使用した場合にも、同様の結果が得られた。
【0029】
【発明の効果】
硫酸アルキル塩を含有する本発明の湿潤BCは、5℃及び30℃で6カ月間にわたり長期間保存しても、一般細菌数は実質的に増加しないことが確認された。一方、本発明湿潤BCを水洗処理して得られた水洗処理物(1)及び水洗処理物(3)のいずれも一般細菌数の増加が見られるので、かかる本発明湿潤BCの効果は硫酸アルキル塩を湿潤BC中に存在させたことに因るものと思われる。
更に、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを湿潤BCに特定の濃度で存在させ密閉状態に保つことによって、BCの構造又は物性を変化させることなく、又、微生物により汚染されることなく、湿潤BCを長期間にわたり保存することが可能となった。
Claims (6)
- 水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの濃度が1.5規定以下で、湿潤バクテリアセルロースのpHが10.5以上となるように、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを存在させることを特徴とするバクテリアセルロースの保存方法。
- 湿潤バクテリアセルロースのpHが10.5から12.5となるように、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを存在させることを特徴とする、請求項1記載のバクテリアセルロースの保存方法。
- 水酸化ナトリウムの濃度が1.5規定以下で、湿潤バクテリアセルロースのpHが10.5から12.5となるように、水酸化ナトリウムを存在させることを特徴とする、請求項1又は2記載のバクテリアセルロースの保存方法。
- 湿潤バクテリアセルロース中に更に硫酸アルキル塩を存在させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバクテリアセルロースの保存方法。
- 硫酸アルキル塩がドデシル硫酸ナトリウムである請求項4に記載のバクテリアセルロースの保存方法。
- 硫酸アルキル塩を約0.03重量%〜約2重量%存在させることを特徴とする請求項4又は5に記載のバクテリアセルロースの保存方法。
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