JP4088022B2 - 防水コネクタの防水栓 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防水コネクタの防水シールに設けられたケーブル貫通孔のうちケーブルを貫通させていない空き貫通孔に対する防水技術の分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来防水コネクタは、コネクタハウジング後部に防水シールが設けられており、この防水シールにはケーブル貫通孔が多数整列配置され各単線ケーブルはこの貫通孔を通ってコンタクトに接続される。
防水シールの各貫通孔の内壁は軸方向に波打つように形成されており孔の直径が変化しているが、小さい直径が貫通させるケーブルの直径よりも小さくなるように設定されているため、複数箇所で防水シール自体の弾力性によりケーブルに密着して、水がコネクタハウジング内に浸入するのを防止するようになっている。
【0003】
しかし、場合によっては、防水シールに設けられている貫通孔の数よりもケーブルの数が少なくてよい場合がある。即ち、空きの貫通孔が存在する場合がある。このような場合は、図3に示すような形状の防水栓を空き貫通孔に挿入して水がコネクタハウジング内に浸入するのを防止している。
防水栓の形状は防水シールとの間で防水の機能を果す円柱部1があり、その後部は直径が大きくなって、抜け止め用の後部係止部6を形成しており、前部も、直径が大きくなって抜け止め用の前部係止部7を形成し、そのままの直径で一定距離進んだ後は先が円錐状になっている。
前部係止部の前方を円錐状にしてあるのは防水栓を防水シールの貫通孔にスムーズに挿入できるようにするためである。
円柱部の長さはほぼ防水シールの厚さと同じにしてある。
【0004】
このような形状の防水栓を防水シールの貫通孔へ装着した状態を図4に示す。(a)は防水栓が防水シール8の貫通孔に挿入された状態の断面図である。防水シール8の貫通孔中内径が防水栓の非挿入状態のとき円柱部の直径より小さい部分が挿入状態で円柱部に密着して防水機能を果している。
【0005】
図の(b)は、4つの貫通孔のうち上2つと下左の1つの計3つに防水栓を挿入した状態を後部係止部の方から見た図である。
大きい方の実線円3個が防水栓の後部係止部6である。内側の点線円は円柱部を示す。右下は貫通孔の図で外側実線円は開口円であり、内側実線円は直径が小さくなっている部分の円周線である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近時コネクタは、接続される回路の高集積化により接続芯数の増加が急務となっている。しかし只単に芯数を増やすのではコネクタが大型化してしまい、回路の高集積高密度化による機器の小型化の趨勢に反することとなり容認し得ない。従って、コネクタにおいても芯数の増大に伴ってコンタクト配列の高密度化が要求されることとなる。要するに、コンタクトの構造の改良とともにその配列間隔を狭めていかなければならないという要請がある。
これに対応してコネクタへ接続される多数のケーブル同士も密集せざるを得ない。これは防水コネクタについても同様である。従って、コンタクト間隔を狭くするのに応じて防水シールの貫通孔の間隔も狭めなければならない。
【0007】
しかしながら、防水栓には、円柱部より直径の大きい前部係止部7および後部係止部6があるため、横方向或いは縦方向に隣り合う貫通孔の間隔(PH およびPV )は、図4の(b)から分かるように前部係止部7或いは後部係止部6のうち直径の大なる方の直径寸法(図ではD)より狭くすることができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、前部および後部の係止部の形状を工夫することによって、係止部の存在が貫通孔の間隔を狭くしようとする場合の制約にならない防水栓を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の第1の防水栓は、一定の直径の円柱の前方途中でその中心軸に関して対称な外周上の2箇所の位置に中心軸に対し直角な面を有して立ち上る突起を有し、その突起が軸方向前方へ所定寸法だけ続いた後突起尾根面が中心軸に向って対称に傾斜し先細となって行きその傾斜面が前方円柱面に接する位置からは円柱面も同様に中心軸に向って傾斜して行き先端に達し、他方、円柱の後部では、その中心軸に関して対称な外周上の2箇所の位置に円柱表面から中心軸に対して直角な面を前側に有して立ち上る突起を有することを特徴とするものである。
【0010】
第2の防水栓は、前記本発明の第1の防水栓において、中心軸方向から見た場合、前方の2つの突起を結ぶ線の方向と後方の2つの突起を結ぶ線の方向とが異なることを特徴とするものである。
【0011】
第3の防水栓は、前記第1又は第2の防水栓において、前方の2つの突起の尾根面の傾斜と前方円柱面の傾斜がともに1つの円錐形の面に沿っていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、従来の防水栓の前部係止部および後部係止部が全円周に渡って円柱部より直径が大なる長さの短い円柱形状となっているため貫通孔の間隔をその直径より小さくすることができなかった点に着目して、係止部を全円周に渡って設けるのではなく、円周の一部分にだけ設け、係止部がなく円柱部と同じ直径の部分を設け、隣接して防水栓を貫通孔に挿入する場合には相互に係止部のない部分が対向するようにすることにより、貫通孔設定の間隔に対して係止部の存在が影響しないようにしたものである。
従来のものと形状は異なるが基本的には従来と同様の製造方法で製造が可能である。
【0013】
使用方法は、先端部から貫通孔へ挿入する点は従来と同様であるが、係止部が相互に抵触しないように係止部の向きを貫通孔の縦横の列方向から外して挿入することになる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の防水栓の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の防水栓の実施例の形状図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
1は円柱部であり、従来のものと同様に防水シール貫通孔の内壁と密着して防水機能を果す。2は前部係止突起であり、中心軸に垂直な面で中心軸に関して対称な2箇所(図では上と下)で立ち上り直径D1 の状態で距離tだけ進んだ後、円錐状に傾斜して前部傾斜部4を形成している。円柱部1の後部には中心軸に関して左右対称に後部係止突起3が設けられている。前部係止突起が中心軸に関して上下対称に設けられているから、対称方向は中心軸を中心にして90度の違いがあることになる。
【0015】
上記各突起は、防水栓を防水シールに挿入した後の抜け止めの役割を果すものであるから、前部係止突起2の直径寸法D1 は貫通孔のシール部材内側面における面取りの外周径φS1 (図2の(b))より大きく選ばれており、後部係止突起3の直径寸法D2 は貫通孔のシール部材外側面における面取り外周径φS2 (図2の(b))より大きく選ばれている。
【0016】
円柱部1の直径D3 は、貫通孔内の直径が軸方向に波形に変化している最小直径φS3 (図2の(b))よりも大きく、最大直径φS4 (図2の(b))より小さい値に設定されている。これにより直径φS3 の部分が円柱部1に弾力密着して防水機能を果すことになる。
【0017】
次に、前部係止突起2と後部係止突起3との間の円柱部の長さはシール部材の厚さW(図2の(b))と同じかやや大きめに設定されている。中空孔5は材料節約のため、いわゆる“肉抜き”をした孔である。
このような肉抜きを行うと円筒のようになるが、本発明では円柱、円筒のいずれであってもよいので、本明細書における円柱は円筒をも含むものとする。
【0018】
図2は、本実施例の防水栓を防水シール8の貫通孔へ装着した場合の説明図であり、(a)は背面から見た図、(b)は側断面図である。
(a)の例は貫通孔が縦横3個ずつ、合計9個の貫通孔が設けられている例である。今、横列を上から第1行、第2行、第3行とし、縦列を左から第1列、第2列、第3列とすれば、第1行および第2行の第2列、第3列の貫通孔には本実施例の防水栓が挿入されており、第1列全部と第3行の第2列、第3列目はケーブル貫通用として防水栓は挿入されておらず、ケーブル貫通前の状態が示されている。これら2重円で示されているうちの内側の円は、(b)の図の貫通孔の内径が波形になっているうちの最小直径φS3 の周線を示しており、外側の円はシール部材の面取り外周径φS2 の周線が示されているものである。
【0019】
防水栓が挿入されている方は、各防水栓の後部係止突起3の方向がほぼ45度右下りになるよう傾けて挿入されている。このように傾けることにより、隣接する防水栓の後部係止突起3同士が抵触しないことになる。もし、後部係止突起3の寸法D2 を直径として従来の防水栓の後部係止部6のように円柱部の全円周に渡って存在するとしたならば図2の(a)の貫通孔のピッチでは後部係止部6同士が抵触してしまい、もっとピッチを大きくしなければ防水栓を正常に挿入することができなくなるところである。
【0020】
これに対して、本発明の防水栓では、円柱部の全周にではなく中心軸に関して対称な、円柱外周上の2箇所の位置に突起として設けているだけであるので、中心軸を中心にして回動させて向きを変えることにより隣接する防水栓の後部係止突起3同士の抵触を回避することができ、その結果、図2に示すように正常挿入ができることとなる。
以上のことは前部係止突起についても同じように言えることである。
【0021】
図2の(b)は、(a)の第2列又は第3列の側断面図であり、第1行目と第2行目に本実施例の防水栓が挿入され、第3行目はケーブル挿入用であり、挿入前の状態で図示されている。
貫通孔は、中心軸方向に直径が一定ではなく中心軸方向に関して波形に変化している。図では最も小さい直径をφS3 、最も大きい直径をφS4 としている。防水栓の円柱部1の直径D 3 は最小径φS3 より大きく、最大径φS4 より小さく設定されているので、防水栓を挿入すると(b)の第1行目、第2行目のように最小径であった部分がD 3 まで押し広げられ波形が浅くなる。
防水シールは弾力性があるので最小径であった部分が円柱部に密着して防水機能を果す。Wは防水シールの厚さ寸法である。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防水コネクタの防水栓は、貫通孔に挿入した後の抜け止め構造として従来のように円柱部の前部及び後部において、全周に渡って直径の大なる部分を形成するのではなく、中心軸に関して対称な円柱外周上の2箇所の位置に突起として設けているだけであるので、中心軸を中心にして回動させて向きを変えることにより隣接する防水栓の後部係止突起同士の抵触を避けることができるので、従来のように円柱の全周に渡って直径の大なる部分を形成していた場合に較べ、防水シールに設ける貫通孔の配列ピッチを小さくでき、コネクタの多芯高密度化に資することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防水栓の実施例の形状図である。
【図2】図1の実施例の防水栓を防水シールの貫通孔へ装着した場合の説明図である。
【図3】従来の防水栓の形状斜視図である。
【図4】図3の従来の防水栓を防水シールの貫通孔へ装着した状態の説明図である。
【符号の説明】
1 円柱部
2 前部係止突起
3 後部係止突起
4 前部傾斜部
5 中空孔
6 後部係止部
7 前部係止部
8 防水シール
Claims (3)
- 一定の直径の円柱の前方途中でその中心軸に関して対称な外周上の2箇所の位置に中心軸に対し直角な面を有して立ち上る突起を有し、その突起が軸方向前方へ所定寸法だけ続いた後突起尾根面が中心軸に向って対称に傾斜し先細となって行きその傾斜面が前方円柱面に接する位置からは円柱面も同様に中心軸に向って傾斜して行き先端に達し、他方、円柱の後部では、その中心軸に関して対称な外周上の2箇所の位置に円柱表面から中心軸に対して直角な面を前側に有して立ち上る突起を有することを特徴とする防水コネクタの防水栓。
- 中心軸方向から見た場合、前方の2つの突起を結ぶ線の方向と後方の2つの突起を結ぶ線の方向とが異なることを特徴とする請求項1記載の防水コネクタの防水栓。
- 前方の2つの突起の尾根面の傾斜と前方円柱面の傾斜がともに1つの円錐形の面に沿っていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防水コネクタの防水栓。
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