JP4087345B2 - Soiウェーハの結晶欠陥の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、貼り合わせ法により製造したSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法に関し、より詳しくは、SOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥の評価方法に関する。
近年、電気的に絶縁性のあるシリコン酸化膜の上にSOI(Silicon On Insulator)層が形成されたSOI構造を有するSOIウェーハが、デバイスの高速性、低消費電力性、高耐圧性、耐環境性等に優れていることから、電子デバイス用の高性能LSIウェーハとして特に注目されている。これは、SOIウェーハではベースウェーハとSOI層の間にBOX(Buried Oxide)層と呼ばれるシリコン酸化膜が存在するため、SOI層に形成される電子デバイスは耐電圧が高く、α線のソフトエラー率も低くなるという大きな利点を有するためである。
このようなSOIウェーハの原料となるシリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)やフローティングゾーン法(FZ法)等の方法により単結晶インゴットを製造する工程と、その単結晶インゴットをスライスしてウェーハに加工する工程と、そのウェーハをラッピング、エッチング、研削、研磨する工程、さらに、その表面を鏡面研磨する工程、洗浄する工程等を経て製造される。
そして、このように製造されたシリコンウェーハから、SOIウェーハは、大きく分けて以下の二種類の方法により製造される。
第一の方法は、シリコンウェーハの表層から酸素イオンを注入し、その後の熱処理にて二つのシリコン単結晶層間にシリコン酸化膜を形成するSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法である。そして、第二の方法は、シリコンウェーハに熱酸化等の方法で表面に酸化膜を形成し、その酸化膜を形成したウェーハと別途用意したシリコンウェーハを貼り合わせてSOI構造とする貼り合わせ法である。両者ともに特徴があるが、SOI層の結晶性が優れているなどの点から第二の方法である貼り合わせSOI法が注目されている。
近年、シリコンウェーハの大口径化に伴い、それを用いて製造されるSOIウェーハの大口径化も進んでいる。現在のSOIウェーハの主流は、直径200mmのものであるが、直径300mmのものへの移行も進んでいる。FZ法では、様々な理由から直径200mm以上の単結晶を製造することが困難であるため、現在、直径200mm以上のSOIウェーハを製造するための原料としては、CZ法により製造したシリコンウェーハ(CZウェーハ)が用いられている。
しかし、CZ法により製造されたシリコン単結晶には、通常、結晶成長中に取り込まれる結晶欠陥(Grown−in欠陥)が存在する。なかでも結晶成長中に取り込まれた原子空孔が冷却過程で集合もしくは成長してできた0.1〜0.3μm前後の大きさの微小な空孔(ボイド)型の結晶欠陥が存在することが良く知られており、この微小欠陥はCOP(Crystal Originated Particle)と呼ばれる。
このような結晶欠陥がSOI層に存在するとデバイス特性が劣化するので、貼り合わせ法によりSOIウェーハを製造する場合、SOI層を形成するボンドウェーハとしては、ボイド型の結晶欠陥を低減したCZウェーハやエピタキシャルウェーハが用いられることが多い。しかし、これらのウェーハの製造コストは高いので、支持基板となるベースウェーハについては、ボイド型の結晶欠陥を多く含有する通常のCZウェーハを用いるのが通常である。
また、ボイド型の結晶欠陥を低減したCZウェーハをボンドウェーハに使用した場合であっても、製造条件のバラツキにより、サイズの小さいボイド型の結晶欠陥が残存することがある。
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、低欠陥のSOIウェーハの製造が求められている。そのためには、SOIウェーハ、特にSOI層に存在する結晶欠陥の評価を正確に行うことが重要であり、SOIウェーハの結晶欠陥を低減するために、その結晶欠陥の実体を正確に把握し、それに対する適切な処置を施す必要がある。
ここで、シリコンウェーハの結晶欠陥を評価する方法としては、シリコンウェーハをアルカリ溶液等に浸漬して、ボイド型の結晶欠陥を顕在化させ、この顕在化した結晶欠陥を、レーザー光を用いたパーティクルカウンターにより検出する方法が知られている。
一方、SOI層が厚さ1μm以下、特に近年需要が増加している0.5μm以下といった薄膜のSOIウェーハの結晶欠陥の評価を行なう場合、上記のようなシリコンウェーハの結晶欠陥の評価方法をそのまま適用することができない。なぜなら、レーザー光を用いたパーティクルカウンターにより薄膜のSOI層を有するSOIウェーハの検査を行うと、BOX層とSOI層の界面から散乱光が生じ、サイズの小さいボイド型の結晶欠陥の検出が困難になるからである。
これに対して、SOIウェーハを、アンモニア、過酸化水素、水を含む水溶液(アンモニア過水水溶液)で処理してSOI層の結晶欠陥を顕在化させ、HF水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥をBOX層に拡大転写し、このBOX層に拡大転写した結晶欠陥の密度を測定することで、SOIウェーハの結晶欠陥を評価する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、拡大転写した結晶欠陥の散乱強度は強く、BOX層とSOI層の界面から生じる散乱光の影響に左右されなくなるため、レーザー光を用いたパーティクルカウンターにより欠陥を測定することが可能になるというものである。しかし、この方法によっても、SOI層に存在する結晶欠陥を正確に評価することができないという問題があった。
また、薄膜のSOI層を有するSOIウェーハの結晶欠陥を評価する場合に、重クロム酸カリウムを含有するSecco液を用いる方法も知られている(非特許文献1)。しかし、このSecco液を用いる方法は、有害な物質である重クロム酸カリウムを含有するSecco液を用いているため、SOIウェーハの結晶欠陥の評価を行なう際には、地球環境や人体に及ぼす影響や廃液処理について考慮しなければならないという問題もあった。
特開平11−74493号公報 J.Electrochem.soc.,Vol.140,No.6,June 1993,1713−1716
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、SOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥を、正確かつ簡単に評価することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決されるためになされたもので、ボンドウェーハとベースウェーハを酸化膜を介して貼り合わせ、該ボンドウェーハを薄膜化して作製したSOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥を評価する方法であって、少なくとも、貼り合わせ前に予めベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを求め、SOIウェーハ作製後に、SOIウェーハを、アンモニア、過酸化水素、水を含む水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥を顕在化させ、HF水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥をBOX層に拡大転写した後、該拡大転写した欠陥を、予め求めておいたベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズが検出される感度よりも低い感度に設定したパーティクルカウンターで測定することを特徴とするSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法を提供する(請求項1)。
このように、本発明では、ベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを、貼り合せ前にあらかじめ求めるため、ベースウェーハに存在する結晶欠陥のサイズを簡単かつ正確に把握することができる。また、貼り合わせ後に、SOIウェーハを、アンモニア過水水溶液で処理し、その後HF水溶液で処理することで、SOI層に存在する結晶欠陥を顕在化させ、それからBOX層に拡大転写することができる。そして、拡大転写した欠陥をパーティクルカウンターで測定することで、SOIウェーハの結晶欠陥を簡単に評価することができる。さらに、この時、パーティクルカウンターの設定を、貼り合わせ前に予めサイズを求めておいたベースウェーハ表面の結晶欠陥が検出されず、BOX層に拡大転写した欠陥が検出できるようにしておくことで、測定の際に、ベースウェーハに存在する結晶欠陥が拾われないため、正確にSOI層に存在する結晶欠陥を評価することが可能となる。また、本評価方法では、クロムを含有する溶液を用いないため、地球環境や人体に影響を及ぼす影響、廃液処理等について考慮する必要がなく、簡単にSOIウェーハの結晶欠陥の評価を行うことができるという利点もある。
また、本発明のSOIウェーハの評価方法では、前記水溶液は、アンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたものであるのが好ましい(請求項2)。
アンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたアンモニア過水水溶液で、SOI層に加工起因の欠陥があるSOIウェーハを処理することで、LPD(Light Point Defect)を急激に増加させることができる。そして、これをBOX層に拡大転写し、それを測定することで、SOI層の空孔型等の結晶欠陥の他、加工起因の欠陥が存在するか否かの評価も容易に行うことができる。
そして、この場合、前記水溶液が、さらにキレート剤を含むものであるのが好ましい(請求項3)。
このように、キレート剤を含むアンモニア過水水溶液でSOIウェーハを処理することで、該水溶液に溶け込んだ極微量な金属汚染が原因の評価のバラツキをなくして安定した評価結果を得ることができる。
また、この場合、前記水溶液が、さらにウェーハ欠陥を増感させる物質を含むものであるのが好ましい
このように、ウェーハ欠陥を増感させる物質を含むアンモニア過水水溶液でSOIウェーハを処理することで、製品の品質管理の上では重要であるが通常は検出しづらい大変微弱な欠陥も評価することができる。
以上説明したように、本発明によれば、SOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥を、BOX層に拡大転写した後、ベースウェーハに存在する結晶欠陥の影響を排除して拡大転写した欠陥のみをパーティクルカウンターで測定することで、正確かつ簡単にSOIウェーハの結晶欠陥を評価することが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上述のように、特許文献1に記載された方法により、SOIウェーハの結晶欠陥を、レーザー光を用いたパーティクルカウンターで測定することが可能となっている。しかし、この方法では、SOI層に存在する結晶欠陥を正確に測定することができないという問題があった。
本発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。
その結果、本発明者らは、近年のSOI層は0.5μm以下の超薄膜であり、また、BOX層は透明膜であるため、レーザー光を用いたパーティクルカウンターによりBOX層に拡大転写した欠陥を検出する際に、レーザー光がベースウェーハ内部まで侵入することにより、ベースウェーハ内部の結晶欠陥も含めて検出してしまうことが、SOI層に存在する結晶欠陥を正確に測定することができない原因であることを見出した。そこで、本発明者らは、SOI層に存在する結晶欠陥のみを評価するためには、貼り合わせ前に予めベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを求めておき、SOI層の結晶欠陥をBOX層に拡大転写した後、ベースウェーハの結晶欠陥サイズに基づき、ベースウェーハに存在する結晶欠陥の影響を排除してBOX層に拡大転写した欠陥のみを測定すれば良いことに想到し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明のSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法は、ボンドウェーハとベースウェーハを酸化膜を介して貼り合わせ、該ボンドウェーハを薄膜化して作製したSOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥を評価する方法であって、少なくとも、貼り合わせ前に予めベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを求め、SOIウェーハ作製後に、SOIウェーハを、アンモニア、過酸化水素、水を含む水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥を顕在化させ、HF水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥をBOX層に拡大転写した後、該拡大転写した欠陥を、予め求めておいたベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズが検出される感度よりも低い感度に設定したパーティクルカウンターで測定することを特徴とする。
ここで、ベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを求める方法としては、貼り合せ前のベースウェーハを直接パーティクルカウンターで測定することのほか、CZ法の引き上げ条件からサイズを推定したり、あらかじめサイズがわかっている引き上げ条件と同一条件で引き上げたCZ単結晶をベースウェーハとして使用したりする方法などがある。
以下、本発明について図面を参照して説明する。
図2は、本発明におけるSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法の説明図である。
図2(a)には、結晶欠陥の評価に用いるSOIウェーハの断面図を示している。貼り合わせ法によれば、SOIウェーハは、ボンドウェーハとベースウェーハを酸化膜を介して貼り合わせ、該ボンドウェーハを薄膜化して作製することができる。したがって、図2(a)に示すSOIウェーハ10は、ベースウェーハ11、BOX層12、ならびにボンドウェーハを薄膜化したSOI層13を有する。
尚、本発明では、貼り合わせる前に、予めベースウェーハの表面近傍に存在する結晶欠陥のサイズをパーティクルカウンター等で測定している。これにより、ベースウェーハに存在する結晶欠陥を簡単かつ正確に測定することができる。また、CZ法の引き上げ条件等により予めベースウェーハの結晶欠陥サイズが把握されている場合には、この様な測定を省略することができる。
次に、図2(b)に示すように、SOIウェーハ10を、アンモニア過水水溶液で処理してSOI層13の結晶欠陥を顕在化させる。すなわち、アンモニア過水水溶液での処理により、SOI層13をエッチングして薄膜化するとともに、SOI層13に空孔型等の結晶欠陥起因のエッチピット14を発生させる。
この時に用いるアンモニア過水水溶液の一例としては、通常のSC1洗浄で用いられる水溶液(SC1)が挙げられる。その代表的な組成は、通常、アンモニア:過酸化水素:水=1:1:5である。そして、このアンモニア過水水溶液で処理することにより、SOI層をエッチングして薄膜化するとともに、SOI層にエッチピットを発生させることができる。
さらに、アンモニア過水水溶液の別の例としては、アンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度とした水溶液が挙げられる。その水溶液としては、アンモニア濃度が0.3〜3.0質量%、過酸化水素濃度が0.15〜0.6質量%であり、アンモニア濃度が過酸化水素濃度の2倍以上、好ましくは2〜5倍であるのが好ましい。特に、アンモニア濃度を3.0質量%、過酸化水素濃度を0.6質量%とした水溶液が好ましい。このように、アンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたアンモニア過水水溶液を用いれば、結晶欠陥の顕在化のみならず、SOI層に加工起因の欠陥がある場合に、LPDを急激に増加させることができる。そして、これをBOX層に拡大転写し、それを測定することで、SOI層に空孔型等の結晶欠陥が存在するか否かは勿論、加工起因の欠陥が存在するか否かの評価も容易に行うことができる。
そして、上記水溶液が、さらにキレート剤を含むものであれば、該溶液に溶け込んだ極微量な金属汚染が原因の評価のバラツキをなくして安定した評価結果を得ることができる。ここで用いるキレート剤としては、特に制限はないが、クエン酸やエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−五酢酸(DTPA)等が挙げられる。特に、クエン酸であれば廃水の処理等取扱いが容易で好ましい。
また、この上記水溶液が、さらにウェーハ欠陥、特に加工ダメージを増感させる物質を含むものであるのが好ましい。このように、ウェーハ欠陥を増感させる物質を含む溶液でSOIウェーハを処理することで、製品の品質管理の上では重要であるが通常は検出しづらい大変微弱な欠陥も評価することができる。特に加工ダメージを増感させる物質として、Cuを含む物質、すなわち、Cu化合物単体又はCu化合物とCa化合物、及びZn化合物からなる群から選択された少なくとも一つの化合物とを組み合せてなる物質を用いるのが好適である。これらの物質はアンモニア過水水溶液に溶解可能なものであれば良く、例えばCu化合物であれば硝酸銅、硫酸銅、塩化銅等、また同じくCa、Zn等も硝酸塩等の化合物を用いれば良い。アンモニア過水水溶液中で各金属がイオン化するものであれば、加工ダメージを増感させる物質として用いることができる。Cu以外の加工ダメージを増感させる物質としては、Au、Ag、Pt等のSiに比べイオン化傾向が小さい金属の化合物で、アンモニア過水水溶液に溶解するものが使用可能である。
尚、Cuを含む物質とその他の物質の組み合せによっては、感度に影響があることが判っている。例えば、Cuを添加したアンモニア過水水溶液に更にNi、Feなどの汚染があった場合は加工ダメージの検出を阻害し、逆にCuの他にCa、Znが添加された場合、わずかなCuの添加でも、Ca等の相乗作用により感度が向上することがわかった。従って、Cu化合物以外にもCa化合物、Zn化合物等を添加することによっても加工ダメージを高感度で検出することができる。
本発明の評価方法では、このようにアンモニア過水水溶液を用い、クロムを含有する溶液を用いないため、地球環境や人体に影響を及ぼす影響、廃液処理等について考慮する必要がなく、簡単にSOIウェーハの結晶欠陥の評価を行うことができるという利点もある。
次に、図2(c)に示すように、HF水溶液で処理してSOI層13の結晶欠陥をBOX層12に拡大転写して欠陥15を形成する。すなわち、HF水溶液で処理することにより、SOI層13のエッチピット14を通じてHF水溶液がBOX層12に浸透し、エッチピット14直下のBOX層が部分的にエッチング除去され、BOX層12に、SOI層の結晶欠陥が拡大転写されて欠陥15が形成される。このようにして、拡大転写された欠陥15のサイズは、1μm〜5μmであり、COP(0.1〜0.3μm程度)より非常に大きい。
そして、本発明では、この拡大転写した欠陥15を、予め求めておいたベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズが検出される感度よりも低い感度に設定したパーティクルカウンターで測定する。すなわち、ベースウェーハ表面の結晶欠陥が検出されず、それよりもサイズの大きいBOX層に拡大転写した欠陥15のみを検出できるようにパーティクルカウンターを設定するのである。これにより、測定の際に、ベースウェーハに存在する結晶欠陥が拾われないため、正確かつ簡単にSOI層に存在する結晶欠陥を評価することが可能となる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
1) SOIウェーハの作製
CZ法により、ボイド型の結晶欠陥を低減した条件で、直径200mm、結晶方位<100>のシリコン単結晶インゴットを引上げた。この単結晶のインゴットをスライス、研磨等し、通常のデバイス作製用の基板として使用されるシリコンウェーハの形状へ加工した。このシリコンウェーハを、ボンドウェーハとして用いた。そして、ボンドウェーハに酸素雰囲気の熱処理を施し、表面に酸化膜を形成した。その後、この酸化膜上から、水素イオンをイオン注入した。
一方、CZ法により、ボイド型の結晶欠陥を多く含有する通常の条件で、直径200mm、結晶方位<100>のシリコン単結晶インゴットを引上げた。この単結晶のインゴットをスライス、研磨等し、通常のデバイス作製用の基板として使用されるシリコンウェーハの形状へ加工した。このシリコンウェーハをベースウェーハとして用いた。
この時、ベースウェーハの表面近傍の結晶欠陥のサイズを測定したところ、直径0.16μm未満であった。
次に、ベースウェーハの表面とボンドウェーハのイオン注入をした方の表面を室温で接合し、その状態で剥離熱処理を行った。これにより、ボンドウェーハ内部の水素イオン注入層において剥離を発生させ、SOI層を形成した。その後、接合部の接合強度を高めるため、酸素雰囲気にて熱処理を施し、厚さ120nmのSOI層と厚さ200nmのBOX層を有するSOIウェーハを作製した。
2) SOIウェーハの結晶欠陥の評価
先ず、作製したSOIウェーハを1%HF水溶液でHF洗浄し、SOIウェーハ表面の酸化膜を除去した。このSOIウェーハを、故意にCu汚染した水溶液中に(3条件:汚染なし、5ppt、25ppt)、10分間浸漬した。
HF洗浄により表面が水素終端されたSOIウェーハをCu汚染溶液中に浸漬すると、終端水素とCuが交換しCu吸着が生じ、吸着されたCuがSiを蝕み欠陥を形成すると考えられる。従って、Cu濃度が高いほど発生する欠陥密度が大きくなる。
次に、SOIウェーハを、アンモニア濃度が3質量%、過酸化水素濃度が0.6質量%の水溶液に50分間浸漬した。この水溶液のエッチング速度は、1.5nm/minであるので、SOI層が75nmエッチングされた。
この処理により、SOI層を薄膜化するとともに、SOI層にエッチピットを発生させ、SOI層の結晶欠陥を顕在化させることができる。
次に、50質量%のHF水溶液で、3分処理した。
この処理により、SOI層のエッチピットを通じてHF水溶液がBOX層に浸透し、エッチピット直下のBOX層が部分的にエッチング除去され、BOX層に、SOI層の結晶欠陥が拡大転写される。
次に、パーティクルカウンターでBOX層に拡大転写した欠陥を測定した。この時、貼り合わせ前に予め測定しておいた、直径0.16μm未満のサイズのベースウェーハに存在する結晶欠陥を検出しないようにして、直径0.16μm以上のサイズのBOX層に拡大転写した欠陥のみが検出できるように、パーティクルカウンターを設定した。
測定は、上記Cu汚染の3条件(汚染なし、5ppt、25ppt)の各条件で2枚づつ、計6枚行った。この結果を、図1に示す。
(比較例1)
1) SOIウェーハの作製
実施例1と同様に、SOIウェーハを作製した。ただし、実施例1と異なり、貼り合わせ前に、ベースウェーハの表面近傍の結晶欠陥のサイズを測定しなかった。
2) SOIウェーハの結晶欠陥の評価
実施例1と同様に、Cu汚染の3条件(汚染なし、5ppt、25ppt)で、各条件で2枚づつ、計6枚のSOIウェーハの結晶欠陥の評価を行った。ただし、実施例1と異なり、ベースウェーハの表面近傍の結晶欠陥を予め測定しておかなかったため、ベースウェーハの結晶欠陥を考慮できない。したがって、通常の直径0.12μm以上のサイズの欠陥が検出できるように、パーティクルカウンターを設定した。その結果、どのサンプルでも検出点が多すぎてデータがオーバーフローし、測定不能であった。
(実験1)
1) シリコンウェーハの作製
実施例1で用いたボンドウェーハの作製方法と同様にして、シリコンウェーハを作製した。
2) シリコンウェーハの結晶欠陥の評価
実施例1と同様に、Cu汚染の3条件(汚染なし、5ppt、25ppt)で、各条件で2枚づつ、計6枚のシリコンウェーハの結晶欠陥の評価を行った。ただし、通常の直径0.12μm以上のサイズの結晶欠陥が検出できるように、パーティクルカウンターを設定した。この結果を、図1に併せて示す。
実験1でシリコンウェーハから検出される結晶欠陥は、実施例1、比較例1のボンドウェーハに存在する結晶欠陥であり、すなわち、SOI層に存在する結晶欠陥である。したがって、SOIウェーハの結晶欠陥を評価するとき、実験1の結晶欠陥密度に近ければ近いほど、その評価は、正確であると言える。
そこで、図1を見ると、実施例1と実験1の欠陥密度はCu濃度に依存して増加しており、両者はほぼ同等の傾向を示していることがわかる。すなわち、貼り合わせる前に予めベースウェーハの結晶欠陥のサイズを測定しておき、SOI層の欠陥をBOX層に拡大転写した後、ベースウェーハに存在する結晶欠陥の影響を排除して測定することで、実験1と同等の欠陥密度評価が可能であることが判る。このように、実施例1の評価方法によれば、SOIウェーハの結晶欠陥の評価を正確に行うことができる。
一方、比較例1のように、ベースウェーハの表面近傍の結晶欠陥を考慮せず、測定感度を通常のシリコンウェーハと同等の感度として測定するとベースウェーハの結晶欠陥を拾ってしまうため、正確な測定ができないことが判った。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
結晶欠陥の評価結果をまとめたグラフである(実施例1、実験1)。 本発明におけるSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法の説明図である。
符号の説明
10…SOIウェーハ、11…ベースウェーハ、12…BOX層、13…SOI層、
14…エッチピット、15…拡大転写した欠陥。

Claims (4)

  1. ボンドウェーハとベースウェーハを酸化膜を介して貼り合わせ、該ボンドウェーハを薄膜化して作製したSOIウェーハのSOI層に存在する結晶欠陥を評価する方法であって、少なくとも、貼り合わせ前に予めベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズを求め、SOIウェーハ作製後に、SOIウェーハを、アンモニア、過酸化水素、水を含む水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥を顕在化させ、HF水溶液で処理してSOI層の結晶欠陥をBOX層に拡大転写した後、該拡大転写した欠陥を、予め求めておいたベースウェーハ表面の結晶欠陥のサイズが検出される感度よりも低い感度に設定したパーティクルカウンターで測定することを特徴とするSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法。
  2. 前記水溶液は、アンモニアの濃度を過酸化水素の濃度よりも高濃度としたものであることを特徴とする請求項1に記載のSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法。
  3. 前記水溶液が、さらにキレート剤を含むものであることを特徴とする請求項2に記載のSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法。
  4. 前記水溶液が、さらにCu化合物単体又はCu化合物にCa化合物及びZn化合物からなる群から選択された少なくとも一つの化合物を組み合せてなる物質を含むものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のSOIウェーハの結晶欠陥の評価方法。
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