JP4086960B2 - 直線運動装置の保護スクレーパ及び直線運動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば直線案内装置やボールねじ、ボールスプライン等、ボール又はローラ等の転動体を介して軌道軸とスライド部材とが相対的に移動自在に係合した直線運動装置において、その軌道軸の表面に付着した異物を除去するための保護スクレーパ、更にはこの保護スクレーパを備えた直線運動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の直線運動装置としては、工作機械や搬送装置等の直線案内部に使用され、ベッド又はサドル等の固定部上でテーブル等の可動体を案内する直線案内装置や、この直線案内装置と共に使用され、モータの回転量に応じた直線運動のストロークを上記可動体に対して与えるボールねじ等が知られている。
【0003】
前者の直線案内装置は、上記固定部上に配設されると共に長手方向に沿ってボールの転走溝が形成された軌道レール(軌道軸)と、多数のボールを介して上記軌道レールの転走溝と対向する負荷転走溝を有すると共に、この負荷転走溝を転走するボールの無限循環路が形成された摺動台(スライド部材)とからなり、ボールの無限循環に伴い、上記可動体を支持した摺動台が軌道レールに沿って連続的に直線運動するように構成されている。また、これとは逆に、固定した摺動台に対して軌道レールが運動するように構成されている場合もある。
【0004】
一方、後者のボールねじは、螺旋状のボール転走溝が所定のリードで形成されたねじ軸(軌道軸)と、多数のボールを介して上記ボール転走溝と対向する負荷転走溝を有すると共に、この負荷転走溝を転走するボールの無限循環路が形成されたナット部材(スライド部材)とからなり、これらねじ軸とナット部材との相対的な回転運動に伴ってボールが上記無限循環路内を循環し、ナット部材とねじ軸とが軸方向へ相対的に運動するように構成されている。
【0005】
これらの直線運動装置では、軌道レールと摺動台との隙間あるいはねじ軸とナット部材との隙間にゴミや異物が侵入すると、ボールや転走溝の異常磨耗の原因となり、これによって装置寿命が短命化することから、かかる隙間を外部雰囲気から密封する防塵手段が必要となる。
【0006】
従来、かかる防塵手段としては、摺動台の移動方向の両端部にゴム製等のシール部材を装着すると共に該シール部材を軌道レールに密着させ、摺動台の移動に伴って軌道レールに付着したゴミや異物を排除し、これらが摺動台の内部に侵入するのを防止するように構成したものが知られている。また、かかるシール部材は軌道レールに密着していることから、ボールを潤滑しているグリース等の潤滑剤が摺動台の内部から流出するのを防止する役割も果たしている。
【0007】
一方、軌道レールに溶接のスパッタ等が貼りついてしまった場合、これに上記シール部材が引っ掛かって破損してしまう懸念もあるので、かかる不都合を回避すべく、軌道レールと極僅かな隙間を介して対向する金属製等のスクレーパを上記シール部材の外側に装着し、このスクレーパによって軌道レールに貼り付いた異物を削ぎ落とすようにした構成も知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の如く上記シール部材は潤滑剤が摺動台の内部から外部へ漏出するのを防止していることから、摺動台の移動方向の後端に位置するシール部材は該摺動台の移動に伴って軌道レールの表面に付着した潤滑剤を拭き取っていることにもなり、摺動台の移動方向が逆向きとなった場合、今度は摺動台の移動方向の前端に位置するようになったシール部材と軌道レールとの摩擦抵抗が増加し、摺動台の円滑な移動が妨げられる他、軌道レールとの摩擦によってシール部材が破損してしまう恐れもあった。
【0009】
また、シール部材の外側に装着された金属製スクレーパはスパッタ等の大きな異物は除去し得るものの、軌道レールと密着していないことから、小さなゴミや塵芥は除去することができず、結果的にスクレーパのみでは軌道レールと摺動台の隙間を密封することはできず、常にシール部材と併用しなければならなかった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、劣悪な環境下で直線運動装置を使用するのでなければ、シール部材を使用せずともゴミや異物が軌道軸とスライド部材との隙間に侵入するのを効果的に防止することができると共に、シール部材と併用する場合には、該シール部材の軌道レールとの摩擦を抑え、スライド部材の運動の円滑化を図ることが可能な直線運動装置の保護スクレーパ、更にはこれを備えた直線運動装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、転動体を介して軌道軸に係合するスライド部材に装着され、かかる軌道軸に付着した異物を上記スライド部材と軌道軸との相対的な移動に伴って除去する直線運動装置の保護スクレーパであって、潤滑油を含浸すると共に軌道軸に密着する弾性部材と、この弾性部材を上記スライド部材との間に挟み込む補強板とから構成されることを特徴とするものである。
【0012】
また、このような保護スクレーパを備えた本発明の直線運動装置は、転動体の転走面が形成された軌道軸と、上記転動体を介して軌道軸に係合すると共に該軌道軸と相対的に移動するスライド部材と、このスライド部材に装着されると共に、かかる相対移動に伴って上記軌道軸の表面に付着した異物を除去する保護スクレーパとを備えた直線運動装置を前提とし、上記保護スクレーパが、潤滑油を含浸すると共に軌道軸に密着する弾性部材と、この弾性部材を上記スライド部材との間に挟み込む補強板とから構成されることを特徴とするものである。
【0013】
このような本発明の保護スクレーパによれば、潤滑油を含浸した弾性部材を軌道軸に密着させると共に、かかる弾性部材を補強板によってスライド部材との間に挟み込んでいることから、ある程度の強度で上記弾性部材を軌道軸に対して摺接させることができ、シール部材を用いずとも摺動台の内部にゴミや異物が侵入するのを防止することが可能となる。
【0014】
また、上記弾性部材は潤滑油を含浸していることから、かかる弾性部材は潤滑油を軌道軸に塗布しながら該軌道軸と摺接することとなり、弾性部材の密着によってスライド部材の摺動抵抗が極端に増加することもない。
【0015】
更に、切削粉やクーラントが飛散する劣悪な環境下においても、この保護スクレーパとスライド部材との間にゴム製等のシール部材を介装することにより、一層完全にスライド部材と軌道軸の隙間を外部から密封することができ、しかも弾性部材に含浸された潤滑油によって軌道軸が潤滑されることから、シール部材と軌道軸との摩擦を低減化することも可能となる。
【0016】
このような技術的手段において、上記弾性部材は軌道軸に対して密着していることが必要であるが、両者を容易に密着させるという観点からすれば、かかる弾性部材を収容すると共に該弾性部材よりも小さめに形成された凹所を上記補強板に形成し、かかる凹所に弾性部材を押し込むように構成するのが好ましい。このように構成すれば、補強板の凹所に押し込められた弾性部材は軌道軸に向けて該凹所より膨出するので、かかる弾性部材と軌道軸とを容易に密着させることができるものである。
【0017】
また、軌道軸に貼りついたスパッタ等に対してもこの保護スクレーパを有効なものとするためには、上記補強板が僅かな隙間を介して軌道軸と対向するように構成し、かかる補強板を金属等からなるスクレーパの代用とするのが好ましい。このように構成すれば、スライド部材に対して別個にスクレーパを装着する手間が省け、生産コストの低減化を図ることも可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の保護スクレーパ及びこれを装着した直線運動装置を詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の直線運動装置の一例としての直線案内装置を示す側面図及びその拡散分解斜視図である。この直線案内装置は、長手方向に沿ってボールの転走面11が形成された軌道レール(軌道軸)1と、転動体としての多数のボール3を介してこの軌道レール1に係合すると共に内部に該ボールの無限循環路を備えた摺動台(スライド部材)2と、この摺動台2の移動方向の前後両端面に装着されると共に、かかる摺動台2の移動に伴って軌道レール1の表面に潤滑油を塗布する一対の潤滑油供給部材4,4と、軌道レール1に密着するシールリップ部51を備えて上記潤滑油供給部材4の外側に配置されたシール部材としてのエンドシール5と、このエンドシール5の外側から摺動台2に装着されると共に上記軌道レール1に密着する保護スクレーパ6とから構成されており、かかるボール3の循環に伴って上記摺動台2が軌道レール1上を往復運動するように構成されている。尚、図2において、上記エンドシール5は薄板状の芯金52に対してゴム層を加硫接着して、上記シールリップ部51を形成している。
【0019】
また、上記摺動台2は、テーブル等の機械装置の取付け面21を備えると共にボール3を循環させるためのボール戻し孔22を備えた略サドル状のブロック本体23と、このブロック本体23の前後両端面に固定された一対のエンドプレート24,24とから構成されている。かかるエンドプレート24には、上記軌道レール1のボール転走面11からボール3を掬い上げて上記ブロック本体23のボール戻し孔22に送り込む一方、このボール戻し孔22からボール転走面11へボール3を送り込む方向転換路(図示せず)が形成されており、このエンドプレート24を取付ボルト25を用いてブロック本体23に固定することにより、上記摺動台2にボール3の無限循環路が形成されるようになっている。
【0020】
更に、上記エンドプレート24には上記無限循環路に対して潤滑油を注油するための給油口26が設けられておれり、かかる給油口26には上記保護スクレーパ6、エンドシール5及び潤滑油供給部材4を介して供給ニップル27が装着されるようになっている。
【0021】
また更に、上記保護スクレーパ6、エンドシール5及び潤滑油供給部材4は固定ボルト28によって各エンドプレート24の上から摺動台2に装着されるが、かかる固定ボルト28の締結によって保護スクレーパ6等が潰れてしまうのを防止するため、各部材4,5,6には夫々の厚みに応じたボス29a,29b,29cが嵌め込まれ、上記固定ボルト28はこれらボスを貫通して摺動台2に螺合するようになっている。
【0022】
図3乃至図7は上記潤滑油供給部材4を示すものである。
図示のように、潤滑油供給部材4は、上記摺動台2のエンドプレート24に装着されるケーシング40(図2参照)と、このケーシング40内に収容されると共に上記軌道レール1に当接して該軌道レール1に潤滑油を塗布する塗布体41(図5乃至図7参照)と、この塗布体41と共に上記ケーシング40内に収容され、潤滑油を吸収して保持する一方で上記塗布体41に対して潤滑油を供給する吸蔵体42(図5乃至図7参照)と、これら塗布体41と吸蔵体42との間を隔離する油量調整板(油量制御手段)43(図5及び図7参照)とから構成されている。
【0023】
上記ケーシング40は、吸蔵体42及び塗布体41の収容スペースとなる潤滑油収容室44を備えたケーシング本体45と、このケーシング本体45の潤滑油収容室44を密閉する蓋基板46とから構成されており、上記蓋基板46がエンドプレート24に当接するように装着される。
【0024】
かかるケーシング本体45は、例えば鋼板からなる基板47の輪郭に沿ってゴム、合成樹脂等からなる側壁48を立設したものであり、かかる基板47及び側壁48によって囲まれた凹所が上記塗布体41及び吸蔵体42を収容する潤滑油収容室44となっている。この潤滑油収容室44は上記固定ボルト28及び供給ニップル27の貫通孔49,50を避けるようにして形成されると共に、軌道レール1の左右両側面に対応する潤滑油収容室44,44が夫々独立して設けられており、軌道レール1の左側面を潤滑する塗布体41及び吸蔵体42と右側面を潤滑するそれとが独立して収容されるようになっている。
【0025】
かかる塗布体41は含浸する潤滑油を澱みなく軌道レール1に塗布することができるよう、毛細管現象による潤滑油の移動が生じ易い材質、例えば空隙率の低いフェルト等の繊維交絡体が適しており、本実施例では空隙率54%の羊毛フェルトを使用している。また、上記吸蔵体42は潤滑油を多量に吸収保持することができるよう、空隙率の高いフェルト等の繊維交絡体が適している。この実施例では空隙率81%のレーヨン混合羊毛フェルトを使用している。
【0026】
一方、上記ケーシング本体45の側壁48には軌道レール1の転走面11と対向する位置に凹溝48aが形成されており、かかる凹溝48aからは潤滑油収容室44に収容した塗布体41の一部である塗布片41aが突出し、上記転走面11に当接するようになっている。すなわち、上記吸蔵体42から塗布体41へ供給された潤滑油は該塗布片41aを介して軌道レール1の転走面11に塗布される。前述したように、上記潤滑油収容室44は軌道レール1の左側面に対応したものと、右側面に対応したものとが夫々独立して設けられており、この実施例では軌道レール1の左右両側面には各々2条の転走面11,11が形成されていることから、軌道レール1の左側面に位置して互いに隣接する二つの塗布片41a,41aと、右側面に位置して互いに隣接する二つの塗布片41a,41aに対しては別個の潤滑油収容室44,44から潤滑油が供給されることとなる。
【0027】
また、上記側壁48には潤滑油収容室44の内周縁に沿って段部54が形成されており、かかる段部54に上記油量調整板43が嵌合して、塗布体41と吸蔵体42とを隔離するように構成されている。上記油量調整板43は例えばステンレス薄板(本実施例では厚さ0.1〜0.2mm)から形成されており、吸蔵体42に含浸された潤滑油を塗布体41へ供給する供給孔56が例えば1穴だけ開設されている。かかる供給穴56の径及び数、すなわちその開口面積に応じて吸蔵体42から塗布体41への潤滑油の供給量が制御される。供給孔56の形状は本実施例では円形であるが、他の形状を採用しても良い。供給孔56の開設位置は図6に破線で示した位置とすることが望ましいが、これは各塗布体41から潤滑油が供給される2条のボール転走面11,11に対して略均等な距離となる位置である。
【0028】
また、上記吸蔵体43から塗布体42への潤滑油の供給を円滑に行うため、図4に示すように、上記ケーシング本体45の側壁48には空気孔55が開設されており、ケーシング40内の圧力が常に大気圧に保たれるようになっている。従って、吸蔵体42から塗布体41への潤滑油の移動は、主として繊維交絡体の内部における潤滑油の毛細管現象に依存していることになる。もっとも、吸蔵体42に含浸された潤滑油のうち、油量調整板43の供給孔56よりも上方に位置する潤滑油は重力によっても塗布体41へ移動することとなる。
【0029】
このように構成された潤滑油供給部材4は、先ず上記側壁48を加硫接着によって基板47に接合して上記ケーシング本体45を製作し、かかるケーシング本体45の潤滑油収容室44に潤滑油を含浸した潤滑油吸蔵体42を収めた後、かかる潤滑油吸蔵体42を覆うようにして油量調整板43をケーシング本体45の側壁48の段部54に嵌合させる。次いで、油量調整板43の上に潤滑油塗布体41を重ね、最後に蓋基板46を加硫接着によってケーシング本体45の側壁48と接合する。これにより、内部に潤滑油塗布体41及び潤滑油吸蔵体42が収容された潤滑油供給部材4が完成する。尚、図5における符号57は供給ニップル27の貫通孔50を形成すると共に、上記側壁48と供給ニップル27との直接接触を防止するためのリング部材である。
【0030】
一方、上記保護スクレーパ6は、図2及び図8に示されるように、潤滑油を含浸した弾性部材60と、この弾性部材60を摺動台2との間に挟み込んで固定する補強板61とから構成されており、上記弾性部材60が軌道レール1の表面に隙間なく密着し、かかる軌道レール1に付着しているゴミや異物を上記摺動台2の移動に伴って拭い去ると共に、軌道レール1の表面に対して僅かずつ潤滑油を塗布するようになっている。
【0031】
上記弾性部材60は軌道レール1の上半分に嵌合する凹欠部60aを有して断面略サドル形状に形成されており、本実施例においては材質として微細セル構造を有する発泡ウレタンが用いられている。また、かかる発泡ウレタンの気泡は潤滑油を含浸させるべく連泡されている。具体的には、引張り強さ43kg/cm3 、伸び率360%、密度0.5g/cm3 、反発弾性53%のものを用いた。
【0032】
また、上記補強板61も弾性部材と略同じ形状に形成され、図8及び図9に示すようにその周縁部には側壁62が立設されて、上記弾性部材60を収容する凹所63を有している。ここで、上記弾性部材60はこの凹所63の大きさよりも若干大きく形成されており、かかる凹所63内に弾性部材60を押し込むと、該弾性部材60が上記側壁62によって周囲より圧縮され、図8中の矢線の如く軌道レール1に向けて弾性変形するようになっている。従って、補強板61の凹所63に弾性部材60を収容すると、かかる弾性部材60はその凹欠部60a側に僅かに膨出し、軌道レール1との密着度が向上して、この保護スクレーパ6によるゴミ等の除去能力を高めることができるものである。
【0033】
更に、上記補強板61に形成された凹欠部61aは僅かな隙間(0.05mm)を介して軌道レール1の表面と対向しており、軌道レール1に貼りついた溶接のスパッタ等をこの補強板61によって削ぎ取るように構成されている。これにより、強固に軌道レール1に貼り付いた異物や、大きな異物が弾性部材60と軌道レール1との間に入り込むことがなく、かかる弾性部材60の損傷を防止することができるようになっている。
【0034】
そして、以上のように構成された本実施例の直線案内装置では、エンドシール5の外側に上記保護スクレーパ6を装着していることから、摺動台2が軌道レール1上を移動すると、かかる保護スクレーパ6の補強板61が大きな異物や強固に軌道レール1に貼り付いた異物を除去すると共に、軌道レール1に密着する弾性部材60が細かな塵芥をも除去するので、これらの異物がエンドシール5を破損させたり、ボール3や軌道レール1の転走面11を傷つけたりすることがなく、長期にわたって摺動台2の運動精度を維持することができるものである。
【0035】
しかも、上記保護スクレーパ6の弾性部材60は軌道レール1に対して僅かずつではあるが潤滑油を塗布しているので、かかる潤滑油によって軌道レール1とエンドシール5との摩擦抵抗も軽減され、摺動台2の円滑な運動を確保することも可能となる。
【0036】
更に、この実施例では上記保護スクレーパ6と摺動台2との間に上記潤滑油供給部材4を装着しているので、上記摺動台2が軌道レール1上を移動すると、かかる摺動台2に装着された潤滑油供給部材4によって軌道レール1のボール転走面11に潤滑油が塗布され、このボール転走面11を転動するボール3の潤滑が行われる。また、上記潤滑油供給部材4と保護スクレーパ6との間には軌道レール1の表面と密着するエンドシール5が装着されているので、潤滑油供給部材4から軌道レール1に塗布された潤滑油が該エンドシール5よりも外側に漏れ出すことがなく、上記潤滑油供給部材4から軌道レール1の転走面11に塗布される僅かな潤滑油のみでボール3を確実に潤滑することができるものである。
【0037】
もっとも、上記保護スクレーパ6も軌道レール1に密着し、微量ではあるがこれに潤滑油を塗布していることから、摺動台2に作用する荷重が極端に小さくボール3の磨耗が問題とならない場合等は、上記潤滑油供給部材4は装着するに及ばない。また、軌道レール1に付着したゴミや異物は上記保護スクレーパ6によって拭き取られていることから、粉塵やクーラントが飛散するような劣悪な環境下で直線案内装置を使用するのでなければ、摺動台2にエンドシール5を装着せずとも、上記保護スクレーパ6の装着のみで長期にわたって摺動台2を円滑に運動させることも可能である。従って、上記保護スクレーパ6を用いれば、潤滑装置やシール部材を省略することによって直線案内装置の構成を従来よりも簡易化することができ、コストの低減化を図ることも可能となる。
【0038】
尚、この実施例では軌道レール1に沿って摺動台2が移動する直線案内装置について本発明の保護スクレーパを適用したが、螺旋状のボール転走溝が形成されたねじ軸にボールを介してナット部材が螺合したボールねじ装置や、軸方向に沿ったボール転走溝を有するスプライン軸にボールを介してナット部材が移動自在に係合したボールスプライン装置にも本発明の保護スクレーパを適用し得る。
【0039】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、潤滑油を含浸した弾性部材を軌道軸に密着させると共に、かかる弾性部材を補強板によってスライド部材との間に挟み込んでいることから、ある程度の強度で上記弾性部材を軌道軸に対して摺接させることができ、劣悪な環境下で直線運動装置を使用するのでなければ、シール部材を使用せずともゴミや異物が軌道軸とスライド部材との隙間に侵入するのを効果的に防止することができると共に、シール部材と併用する場合には、該シール部材の軌道レールとの摩擦を抑え、スライド部材の運動の円滑化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を直線案内装置に適用した実施例を示す側面図である。
【図2】 実施例に係る直線案内装置及びこれに付設される機器の分解斜視図である。
【図3】 実施例にかかる摺動台に装着される潤滑油供給部材を示す正面図である。
【図4】 図3のIV−IV線断面図である。
【図5】 実施例に係る潤滑油供給部材の分解斜視図である。
【図6】 図4のVI−VI線断面図である。
【図7】 図3のVII−VII線断面図である。
【図8】 実施例に係る保護スクレーパの背面図である。
【図9】 図8のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
1…軌道レール(軌道軸)、2…摺動台(スライド部材)、3…ボール(転動体)、4…潤滑油供給部材、5…エンドシール(シール部材)、6…保護スクレーパ、60…弾性部材、61…補強板、63…凹所、
Claims (6)
- 転動体を介して軌道軸に係合するスライド部材に装着され、かかる軌道軸に付着した異物を上記スライド部材と軌道軸との相対的な移動に伴って除去する直線運動装置の保護スクレーパであって、
潤滑油を含浸すると共に軌道軸に密着する弾性部材と、この弾性部材を上記スライド部材との間に挟み込む補強板とから構成され、
上記補強板には上記弾性部材を収容すると共に該弾性部材よりも小さめに形成された凹所を形成し、かかる凹所に弾性部材を押し込んだ際に該弾性部材が軌道軸に向けて膨出するように構成したことを特徴とする保護スクレーパ。 - 上記補強板は僅かな隙間を介して上記軌道軸と対向し、上記弾性部材に先立って軌道台に付着した異物を除去することを特徴とする請求項1記載の保護スクレーパ。
- 転動体の転走面が形成された軌道軸と、上記転動体を介して軌道軸に係合すると共に該軌道軸と相対的に移動するスライド部材と、このスライド部材に装着されると共に、かかる相対移動に伴って上記軌道軸の表面に付着した異物を除去する保護スクレーパとを備えた直線運動装置において、上記保護スクレーパは、潤滑油を含浸すると共に軌道軸に密着する弾性部材と、この弾性部材を上記スライド部材との間に挟み込む補強板とから構成され、
上記保護スクレーパの補強板は上記弾性部材を収容すると共に該弾性部材よりも小さめに形成された凹所を有し、かかる凹所に弾性部材を押し込んだ際に該弾性部材が軌道軸に向けて膨出するように構成されていることを特徴とする直線運動装置。 - 上記保護スクレーパの補強板は僅かな隙間を介して上記軌道軸と対向し、上記弾性部材の摺接に先立って軌道台に付着した異物を除去することを特徴とする請求項3記載の直線運動装置。
- 上記スライド部材と保護スクレーパとの間には軌道軸に対して密着するシール部材が介装されていることを特徴とする請求項3記載の直線運動装置。
- 上記スライド部材とシール部材との間には上記軌道軸に対して潤滑油を塗布する潤滑油供給部材が介装されていることを特徴とする請求項5記載の直線運動装置。
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