JP4084491B2 - 車両異常衝撃通報装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の衝突等の異常衝撃を事前に乗客に通報する通報装置に関する。特には、鉄道車両において運転士が検知した衝突情報等を迅速に乗客に通報できる通報装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
走行中の鉄道車両が、前方の障害物を回避する唯一の手段は、その障害物の前で停止することだけであり、発見が遅かった場合は衝突に至る場合が多い。このような場合を考慮して、車両速度や減速度は、運転士が前方の障害物を発見して非常ブレーキをかけたとき車両が600m以内の範囲で停止するよう決められている。在来線車両の常用減速度は2〜4Km/h/s、非常減速度は5Km/h/s前後であり、最高速度が通勤電車で100〜120km/h、特急電車で120〜130km/hに設定されている。
【0003】
しかし、上述した設定は見通しのよい区間の場合であって、線路上への落石や倒木が発見しにくい線形や、踏切直前横断による踏切障害の場合は、障害物から600m以内の発見となることが多く、高速走行においては数秒後にほぼ確実に衝突に至る。
【0004】
このような場合、運転士は乗客に対して何の情報も与えないことがほとんどである。これは、運転士は衝突までに非常ブレーキの作動と警笛の鳴動、衝突後の列車防護措置(他の列車を止めるための発煙筒の作動、列車防護無線での通報等)を緊急に行う必要があり、運転機器台から手を離したり、席を離れることができず、運転士自身の転倒を防ぐことしかできないためである。また、乗客に対して種々の車内放送を行うのは先頭車両に乗車していない車掌である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このため、客車車両の乗客は無防備な状態で、非常ブレーキ作動時や衝突時に不意に衝撃を受けることとなり、怪我を負うことが多い。特に、ドアや手すりに寄り掛かり、吊り皮や手すりを持たずに立っている乗客は転倒して大怪我を負う場合がある。
減速途上にある30km/h程度の低速度の衝突の場合、先頭車両の床面にかかる前後加速度は150G以上、ピーク・ツー・ピークで300G以上であることが実験により確認されている。この実験において、比較的すいた車内の立ち客を想定したダミー人形を実験車両に設置すると、衝突時にダミー人形は前方に5〜6m以上飛ばされて床面に衝突する。
【0006】
このような事故は、事前にしゃがませたり、座り込ませるというアナウンスを行い、乗客がアナウンスに従って行動すれば、人体の重心が下がって、飛ばされて転倒することを減少させたり、転倒した場合でもその衝撃を軽減したり、ムチウチ等の後遺症を減少させることができる。車両が混雑している状況では「将棋倒し」を防止することができる。また、さらに低速度の場合は、手すりや吊り皮につかまるようアナウンスすることで、転倒を回避することができる。しかし、前述のように現状では衝突告知のアナウンスや警報の発令はなされていない。
【0007】
本発明はこのような問題点を鑑みてなされたもので、鉄道車両において、衝突の予測や非常ブレーキの作動を検知した場合に乗客に予告を行う通報装置を提供することを目的とする。特には、予告とともに衝突時や非常ブレーキ作動時において身体を固定したり、重心を下げさせる措置を行うよう告知する通報装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の車両異常衝撃通報装置は、複数の客車(3,5,7)が連結器によってつながっている鉄道車両(1)において予測される車両の異常衝撃を乗客に通報する装置であって、車両の運転室(9)において運転士が手動で操作する通報ボタン(17)と、各客車(3,5,7)の乗客への通報手段(27,29)と、
ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)信号、及び、落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号(S1)、を受信する信号受信器(19)と、前記信号受信器(19)からの信号、前記通報ボタン(17)の押しボタン信号、及び、前記ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)を受け、これらの信号や情報に基づいて前記通報手段(27,29)を起動させる制御装置21と、を具備し、前記制御装置(21)が、前記ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)信号、及び、前記落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号(S1)の双方を受けたときに、前記通報手段(27,29)を自動起動することを特徴とする。
運転席に乗務する運転士が、障害物や信号機の目視や落石検知装置、踏切障害物検知装置等からの信号受信または防護無線からの発報を受けて、非常ブレーキ作動操作に支障を与えることなく、乗客に衝突等の異常衝撃に対する対処姿勢をとるように告知することにより、乗客に衝突に備えた姿勢をとらせ、傷害を緩和することができる。
【0009】
この態様においては、 上記通報起動手段が、 運転士が手動で操作する通報ボタン、高いブレーキの操作レベルを検知するブレーキセンサ、落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号受信、EB装置(運転士が急病により操縦不能になった場合に作動する非常ブレーキ)からの信号受信のうちの1つ以上を含むことができる。
運転士が目視や信号機により前方の障害物を発見した場合は、非常ブレーキの作動操作に支障を与えることなく迅速に対処することのできる通報ボタンを押して通報を起動する。また、非常ブレーキの作動自体で自動的に通報を起動することで障害物発見から通報までの時間を短縮することができる。さらに、落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号やEB装置からの信号を受けて自動的に通報が起動されると、より確実で事前に障害物発見及び告知を行うことができる。
【0010】
さらに、上記通報起動手段が、運転士が急病により操縦不能になった場合に作動する非常ブレーキであるEB装置からの非常ブレーキ信号を受けたときに自動起動されることも好ましい。
運転士が目視や信号機で進路上の障害を検知したときは、通報ボタンを押すだけで通報が起動される。したがって、運転士はこの後非常ブレーキを作動させる等の緊急措置を行うことができる。また、落石や踏切等の障害物検知装置からの信号を受信し、即時に非常ブレーキを作動させる必要があって通報ボタンを押す時間がないときにも自動的に通報が起動される。さらに、EB装置が作動して非常ブレーキがかかったときも、運転士は通報ボタンを押すことができないため、自動的に通報が起動される。このように、あらゆる場合に対応してより確実な通報起動が可能となる。
【0011】
本発明の異常衝撃通報装置においては、複数の通報のランクが設けられていることが好ましい。
この場合、例えば、車両の速度に応じて上記通報のランクを選択することができる。
衝突時の車両にかかる衝撃は、速度に大きく依存し、進行方向に急激なマイナス加速度が発生する。高速時にはしゃがむ等の重心を低くさせる姿勢をとらせ、低速時には吊り皮や手すりにつかまる等の身体を固定させる措置をとらせるよう告知することで、的確な衝撃回避姿勢をとらせることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施例に係る車両異常衝突通報装置の構成を模式的に示す図である。
鉄道車両1は複数(この例では三両)の客車3、5、7が連結器によってつながっているもので、先頭車両には運転室9、最後尾車両には車掌室11が設けられている。運転室9の操作パネル上には、ブレーキハンドル13や速度計15等の操作装置や計器類が配置されている。さらに、通報ボタン17と、踏切障害物検知装置や踏切支障報知装置からの信号の受信機19が設けられている。通報ボタン17は、運転士が障害物を発見したとき等に押される。また運転室9にはEB装置20が設置されている。EB装置20は、運転士が急病等で操縦不能になったとき、自動的に作動し非常ブレーキをかける。この装置は、一定時間ごとに警報音がなりこれに応じてリセットしないと作動するものや、足踏みボタンやマスターコントローラハンドルから手を離して一定時間経過すると作動するもの等がある。
【0013】
運転室9にはさらに制御装置21が設けられている。信号受信器19からの信号、通報ボタン17の押しボタン信号、ブレーキハンドル13からのブレーキ情報、速度計15からの速度情報、EB装置20からの非常ブレーキ信号は、各々配線19a、17a、13a、15a、20aにより制御装置21に送られる。制御装置21はこれらの信号や情報に基づいて通報装置を起動させ、音声情報や画像情報、文字放送等を送信する。制御装置内のロジックについては後述する。
【0014】
制御装置からは放送用引き通し線23と表示器用引き通し線25が出ており、各客車に配線されている。各車両には、乗客から見やすい位置、例えば車両前後の通路ドアや乗降用ドアの上に表示装置27とスピーカー29が設けられている。放送用引き通し線23は各車両のスピーカー29に、表示器用引き通し線25は各車両の表示装置27に接続されている。スピーカー29は制御装置21から送信された音声情報や警報音を各客車内に同時に放送し、表示装置27は文字放送や赤ランプの点滅等によって各客車内に同時に警報を表示する。
【0015】
図2は、図1の実施例に係る制御装置のロジックを示すブロック図である。
この制御装置はマイコンで構成され、CPU51、メモリ53、データ読み込みバッファ群55、出力バッファ57、クロック59等から構成されている。CPU51、データ読み込みバッファ群55、出力バッファ57はクロック59からのタイミングで管理されている。
【0016】
データ読み込みバッファ群55には、障害物発見時に受け取られる落石検知装置や踏切障害物検知装置の受信器19からの受信信号S1、通報ボタン17からの押しボタン信号S3、障害物回避のために運転士が操作するブレーキハンドル13からの非常ブレーキ情報S2、EB装置20からの非常ブレーキ信号S4、速度計15からの車両の速度情報S5が常に入力されている。受信信号S1と非常ブレーキ信号S2はここからAND回路61に送られる。ここでどちらの信号も入力された状態、すなわち、進路上に落石等の障害物が自動的に検知されて非常ブレーキが作動した状態であれば、AND回路61から出力される。
【0017】
AND回路61からの出力信号S6と、読み込みバッファ群55を経由した押しボタン信号S3、EB装置からの非常ブレーキ信号S4はOR回路63に送られる。ここでAND回路61の出力信号S6、押しボタン信号S3、EB装置からの非常ブレーキ信号S4のいずれかが入力された状態であれば、OR回路63から出力される。つまりこの状態は、運転士が目視により進路上に障害物を検知して押しボタンを押した場合や、障害物検知装置からの受信信号が受信され、かつ高いブレーキの操作レベルを検知した場合、あるいはEB装置が作動した場合である。
【0018】
OR回路63の出力S7はランクセレクタ65に入力される。ランクセレクタ65には読み込みバッファ群55を経由した速度情報S5が入力されており、OR回路63からの入力によって作動する。ここで現在の速度が高速(ランク1)か低速(ランク2)かを決める。高速は例えば80km/h以上で、低速はそれ未満とする。この情報はCPU51に送られる。
【0019】
CPU51は高速時(ランク1)及び低速時(ランク2)に応じてメモリ53から情報を呼び出す。メモリにはランク1に対応する音声情報及び画像情報とランク2に対応する音声情報及び画像情報が別のアドレスに記憶されている。音声情報はランクに合わせた警報音や、ランク1の場合は「しゃがんでください。」、ランク2の場合は「吊り皮や手すりにつかまって下さい。」等の合成音声である。画像情報はランクに合わせた点滅ランプや、LED等による「しゃがんでください。」、「吊り皮や手すりにつかまって下さい。」等の文字情報やイメージ情報である。メモリ53からは、ランクに応じた音声情報及び画像情報が出力バッファ57を介して音声信号S8及び画像信号S9として制御装置から出力される。
【0020】
出力された音声信号S8及び画像信号S9は、各々放送用引き通し線23と表示器用引き通し線25を介して、各客車のスピーカー29及び表示装置27に送られる。各客車ではスピーカー29から音声信号が放送され、さらに表示装置27に文字情報やイメージ情報が表示されたり、ランプが点滅し、乗客はこれらの情報に従って衝突に備えた姿勢をとることができる。
【0021】
次に、障害物発見の方法について詳細に説明する。
運転士が目視により進路上の障害物を発見したとき、落石検知装置、踏切障害物検知装置や踏切支障報知装置からの信号機の停止信号を確認したとき、あるいは無線等による列車緊急停止指令を受信したときには押しボタン信号が出力される。このとき運転士は非常ブレーキの作動や衝突後の列車防御措置を至急に行う必要があるため、押しボタンは片手で簡単に押すことのできる位置に設置される。
【0022】
落石検知装置は、落石が発生する可能性のある防護壁に電線を配設し、落石が起こると断線して落石の発生を検知する。
踏切障害物検知装置は、赤外線を発光する発光器と、光線を受光して光を電気信号に変換し、検知リレーを作動させる受光器で構成される。発光器と受光器は踏切道を対角上に横切るよう設置されている。踏切警報発令中に自動車等の障害物が踏切道にあり、受光器の受光がさえぎられると、受光器の検知リレーが作動機能を失い、起動回路が短絡し、障害物が検知される。
踏切支障報知装置は、押しボタンスイッチ、軌道回路短絡器、信号炎管から構成される。自動車が踏切横断中にエンスト等により運転不能になると、通報者は操作器前面のアクリル窓の内部にある押しボタンスイッチを押す。スイッチが押されると信号炎管が発火し、さらに軌道回路短絡器の水銀スイッチにより軌道回路を短絡し、障害物が検知される。
【0023】
障害物が検知されると、踏切異常警報器の赤色灯が回転点滅したり、信号機に送られ、障害物の検知を走行中の列車の運転士に知らせる。
【0024】
上述の落石検知装置や踏切障害物検知装置、踏切支障報知装置は、進路上に支障が存在することを警報器や信号機で報知するものであり、最終的にはこの信号表示を運転士が目視することで確認される。しかし、これらの装置からの信号を車上の受信器で受信することができれば、より短時間で確実に進路上の異常を検知し報知することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、鉄道車両において、衝突予測や非常ブレーキの作動を検知し、乗客に衝突時や非常ブレーキ作動時において身体を固定したり、重心を下げさせる措置を行うようアナウンスすることができる。したがって、障害を発見した運転士が、非常ブレーキ作動操作に支障を与えることなく、衝突に対する対処姿勢をとるように乗客に告知することにより、乗客に衝突に備えた姿勢をとらせ、傷害を緩和又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る車両異常衝突通報装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の実施例に係る制御装置のロジックを示すブロック図である。
【符号の説明】
1 鉄道車両 3、5、7 客車
9 運転室 11 車掌室
13 ブレーキハンドル 15 速度計
17 通報ボタン 19 信号受信器
20 EB装置 21 制御装置
23 放送用引き通し線 25 表示器用引き通し線
27 表示装置 29 スピーカー
51 CPU 53 メモリ
55 データ読み込みバッファ群 57 出力バッファ
59 クロック 61 AND回路
63 OR回路 65 ランクセレクタ
Claims (2)
- 複数の客車(3,5,7)が連結器によってつながっている鉄道車両(1)において予測される車両の異常衝撃を乗客に通報する装置であって、
車両の運転室(9)において運転士が手動で操作する通報ボタン(17)と、
各客車(3,5,7)の乗客への通報手段(27,29)と、
ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)信号、及び、落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号(S1)、を受信する信号受信器(19)と、
前記信号受信器(19)からの信号、前記通報ボタン(17)の押しボタン信号、及び、前記ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)を受け、これらの信号や情報に基づいて前記通報手段(27,29)を起動させる制御装置(21)と、
を具備し、
前記制御装置(21)が、前記ブレーキハンドル(13)からの非常ブレーキ情報(S2)信号、及び、前記落石検知装置や踏切等の進路上の障害物検知装置からの信号(S1)の双方を受けたときに、前記通報手段(27,29)を自動起動することを特徴とする車両異常衝撃通報装置。 - 前記制御装置(21)が、運転士が急病により操縦不能になった場合に作動する非常ブレーキであるEB装置(20)からの非常ブレーキ信号を受けたときに、前記通報手段(27,29)を自動起動することを特徴とする請求項1記載の車両異常衝撃通報装置。
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