JP4082469B2 - デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有するA.Thalianaの蛋白質をコードするDNA配列、デルタ7−Red蛋白質、製造方法、トランスフォームした酵母株、及び利用 - Google Patents
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Description
デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有するA. Thaliana の蛋白質をコードするDNA配列、デルタ7−Red蛋白質、製造方法、トランスフォームした酵母株、及び利用。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有するA. Thaliana の蛋白質をコードするDNA配列、デルタ7−Red蛋白質、それらの製造方法、トランスフォームした酵母株、及びそれらの利用に関するものである。
【0003】
デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ(E.C.1.3.1.21)は、ラット肝ホモジェネート中(M. E. Dempsey 等、 Methods Enzymol., 15, 501-514, 1969 )並びにトウモロコシ植物調製物中(M. Taton等、 Biochem.Biophys.Res.Commun., 181, 465-473, 1991 )の活性により存在が示されているミクロソーム酵素である。このレダクターゼはNADPHに依存して、イン・ビトロで、7−デヒドロコレステロールをコレステロールに還元する。
【0004】
ステロールは、真核生物メンバーの主要な構成成分であるが、種によって構造的差異を示す。酵母等の真核生物の細胞においては、主要なステロールは、C−5位及びC−7位の二重不飽和、C−24位の分枝側鎖及びC−22位の不飽和を含むエルゴステロールであるが、他方、哺乳動物においては、コレステロールはC−5位の不飽和及び飽和側鎖により特徴付けられる。シトステロール、スチグマステロール及びカンペステロール(これらは、植物における最も一般的なステロールを代表するものである)は、分枝しているが飽和の側鎖を有し、脊椎動物のステロールと同様に、C−7位には不飽和を有しない。このステロール核の構造における差異の原因である酵素は、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼである。
【0005】
デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼは、均質に精製されたことはなく、単に部分精製が記載されただけである(M. E. Dempsey 等; M. Taton等、 既出)。この蛋白質は、その物理化学的性質により特性決定されていない。この蛋白質の配列の情報及びそれに対する抗体は記載されていない。更に、RSH/スミス−レムリ−オピッツ(SLO)症候群に関連するヒトにおいて、7−デヒドロコレステロールレダクターゼの明白な不足が記載されている(J. M. Opitz 等、 Am. J. Med. Genet., 50, 326-338, 1944 )。
【0006】
従って、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼをコードするcDNAのクローニング(それは、対応する蛋白質の配列を同定すること並びにそのヒト遺伝子又はその先天的欠失の特性表示を可能にする)は、例えばハイブリダイゼーション及び/又は免疫学的検出技術を利用する公知の方法を用いては達成できない。従って、実施すべきクローニングを、特に蛋白質の情報のない場合に、可能にする創意に富むスクリーニング方法を得ることが必要とされる。
【0007】
カビの膜の主要なステロールであるエルゴステロールは、C−5、7位に一対の共役二重結合を含む(それは、ナイスタチン等のポリエンのファミリーの化合物に抗真菌活性を与える)(R. Bittman等、 J. Biol. Chem., 260, 2884-2889, 1985)。ナイスタチンの作用の、C−5、7位の不飽和ステロールの膜濃度に対する強い依存性は、S.cerevisiaeにおいて蓄積されるステロールについての変異株の選択を可能にした(S. W. Molzahn 等、 J. Gen. Microbiol., 72, 339-348, 1972 )。従って、変異体erg2及びerg3は、それぞれ、ステロールデルタ−8,7イソメラーゼ(W. Ashman 等、 Lipids, 26, 628, 1991 )及びステロールデルタ−5デヒドロゲナーゼ(B. Arthinton等、 Gene, 102, 39, 1991 )の不足の故に、C−5,7位に共役二重結合を有しないステロールを蓄積する。かかる変異体は、エルゴステロール(酵母の主要な天然ステロール)がある条件下でコレステロールを含む種々の代用ステロールによって置き換え可能である故に生存可能である。
【0008】
本願発明者は、S.cerevisiaeにおける代謝干渉を利用するスクリーニング方法を用いて、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する異種蛋白質をコードするcDNAをクローン化することにつき、C−5,7位に二重不飽和を有しないステロールに富む酵母株のナイスタチン耐性を増すことの有利さに気付いた。しかしながら、DNA配列又は蛋白質を知ること並びに酵素活性にのみ基づく検出に依存しない有利さを提供するこのアプローチの成功は、克服されるべき多くの技術的困難の故に予知できるものではない。
【0009】
第1の制限は、ナイスタチンが働く仕方が完全には解明されていないという事実に由来するものである(L. W. Parks 等、 CRC Critical Reviews in Microbiology, 301-304, 1978 )。例えば、ナイスタチンによる選択の低い特異性は、その間接的性質により予知でき、それは、酵母において、erg変異体等の自然のゲノム変異(S. W. Molzahn 等、 既出)又はステロール経路に依らない耐性を含むゲノム変異の選択へと導く。同様に、遺伝子ライブラリーによりトランスフォームされた細胞は、ステロール経路と無関係のナイスタチン耐性を与える異種遺伝子を発現することができる。
【0010】
予想される制限の他の例は、例えば、下記の理由の1つのために、異種蛋白質が細胞内で弱く作用して、ナイスタチンに対する耐性の欠如又は低い耐性へ導くという事実に関係する:1)デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼをコードする遺伝子が弱く発現される;2)この蛋白質が、不十分な折りたたまりのため又は不正確な細胞下配向の結果、活性が弱いか又は活性がない;3)この植物蛋白質が酵母自身のステロールを基質として認識しない;4)基質たり得るステロールがエステル型であるか小胞中に貯蔵されていてこの酵素と接触しない。従って、この仕方で蓄積されるステロールがデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ(これは、真核生物では、ミクロソームに局在化されると考えられている)の作用を免れることは予想され得る。
【0011】
本発明は、デルタ−7Redと呼ばれるデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードする A.thaliana のcDNAの、ナイスタチン耐性に基づく代謝干渉により酵母において行なうクローニング方法によるクローニングに関するものである。このデルタ−7Red蛋白質は、C−7位に不飽和を有するステロールを生物学的還元プロセスによって還元させ、それは、更に、C−5、7に二重不飽和を有するステロール又はステロイドのC−7位における選択的還元の問題に有利な解決を与える(化学的経路を用いる還元方法は、それを与えない)。
【0012】
この発明は又、C−7位及び適宜C−22位が飽和された生成物を驚くべき仕方で蓄積するデルタ−7Redを発現するトランスフォームされた酵母細胞にも関係し、該生成物は、エルゴステロールと対照的に、コレステロールの側鎖の制限酵素(即ち、チトクロームP450 SCC)の基質である。
【0013】
これらの予期しない性質は、工業的及び/又は薬理学的用途を有するステロール若しくはステロイドの製造方法、特に、C−7位が還元された酵母の内因性ステロールのチトクロームP450 SCC(P450 SCC)による、アドレノドキシンレダクターゼ(ADR)及びアドレノドキシン(ADX)の存在下での生物学的酸化によるプレグネノロンの製造において、この発明のトランスフォームされた酵母の利用を可能にする。この発明のトランスフォームされた酵母は、哺乳動物及び他の脊椎動物におけるコレステロールのヒドロコーチゾンへの代謝経路の中間体ステロイドの製造方法においても利用することができる。この利用は、ヒドロコーチゾン又はその中間体の生物学的酸化プロセスにおける製造を可能にする利点を有し、該プロセスは、コレステロール等の外因性ステロールの初期基質としての利用を必要とせず、従って、ステロールの酵母中への透過の問題を回避する(好気性条件下での酵母の外因性ステロールに対する不透過性は、R. T. Lorentz 等、 J. Bacteriology, 981-985, 1986に記載されている)。
【0014】
この発明は又、この発明のクローニング方法を用いて得られた核酸配列の利用にも関係する。デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼをコードするRNA又はDNA配列を、このデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの遺伝子の生成物が関係する疾患の診断又は治療に用いることが出来る。例えば、7−デヒドロコレステロールをコレステロールに変換するデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの不足は、RSH/SLO症候群に関係すると推定されている。従って、ヒトDNA配列を、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの不足を診断するためのプローブとして利用することができ、かかる不足を矯正するための遺伝子治療において利用することもできる。
【0015】
従って、本発明の主題は、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードする配列を含む核酸配列であり、該核酸は、DNA又はRNAであり、特にcDNAである。
【0016】
デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性は、例えば、イン・ビトロで酵素的試験を用いて示すことができる(実験部分にて更に説明する)。
【0017】
本発明の更に特別の主題は、コード配列が、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し且つ下記のSEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有する A.thaliana の蛋白質をコードするcDNA配列:
【化4】
並びに、この配列の対立遺伝子変異体である。
【0018】
図3に示した配列(SEQ ID NO:2)に対応する430アミノ酸を有する蛋白質をコードする上記のcDNA配列は、例えば、酵母におけるクローニング(A.thaliana発現ライブラリーから開始し、後述の詳細な説明の操作条件に従って、酵母のナイスタチン耐性の出現に基づくスクリーニング方法を用いることによる)によって得ることのできるcDNA配列である。
【0019】
上記のヌクレオチド配列SEQ ID NO:1の知識は、当業者に公知の方法によって(例えば、化学合成、又はハイブリダイゼーション技術若しくはPCR増幅により合成オリゴヌクレオチドプローブを用いて遺伝子ライブラリー若しくはcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより)、本発明を再現することを可能にする。
【0020】
この発明の主題は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードし且つ、平均的若しくは高緊縮条件下でヌクレオチド配列SEQ ID NO:1とハイブリダイズし又はこの配列と約60%以上の配列同一を有するDNA配列でもある。
【0021】
この配列SEQ ID NO:1と検出可能な様式でハイブリダイズする配列は、平均的緊縮の標準的条件下でハイブリダイズする。例えば、42℃で、ホルムアミドの50%溶液、SSC×6中で12時間のハイブリダイゼーションの後に洗浄するか又は一層緊縮でない条件下でのハイブリダイゼーション、例えば、ホルムアミドの20%溶液、SSC×6中での42℃、24時間のハイブリダイゼーションの後に公知の標準的条件下で洗浄する(T. Maniatis 等、 Molecular cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
【0022】
ヌクレオチド配列同一のパーセンテージは、例えば、NCBIサーバーにて、BLAST プログラム「基礎的局所的整列(alignment )サーチ用ツール」(S. F. Altschul等、 J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990 )を用いることにより決定することができる。
【0023】
この発明は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードし、下記のアミノ酸配列SEQ ID NO:3を有するコンセンサス配列をコードするオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるPCR技術により増幅可能であるDNA配列にも関係する:
【化5】
(式中、7位のXaaは、Trp又はTyrであり、12位のXaaは、His又はLysである)。
【0024】
上記の配列SEQ ID NO:3は、新規なコンセンサス配列に対応し、該配列は、新規な配列SEQ ID NO:2(ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1から演繹される)と公知の配列(C−7位以外の位置での作用特異性を有する他のステロールレダクターゼ又はラミンBレセプターの配列)との間のアミノ酸配列の同一の整列により規定された(実験部分にて更に詳細に説明する)。アミノ酸配列SEQ ID NO:3により与えられる情報から、最大で45ヌクレオチドから構成されるプライマーを規定して合成することができ、該プライマーは、再結合配列としての第2プライマーオリゴdT(17ヌクレオチド)と組み合わせて、市販のPCRアッセイキット(例えば、Stratagene)を用いて、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAの増幅を可能にする。
【0025】
この発明は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し且つ下記のアミノ酸配列SEQ ID NO:2を有する A.thaliana の蛋白質:
【化6】
並びに、この配列の対立遺伝子変異体及びアナログにも関係する。
【0026】
対立遺伝子及びアナログには、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失又は付加により修飾された配列が、これらの生成物が同じ機能を維持する限りにおいて、含まれる。これらの修飾配列は、例えば、当業者に公知の位置指定突然変異導入技術を用いることにより作ることができる。
【0027】
この発明の特別の主題は、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し且つ上記のアミノ酸配列SEQ ID NO:2を有してデルタ−7Redと呼ばれる A.thaliana の蛋白質である。
【0028】
この発明は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し、配列SEQ ID NO:2と約60%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質にも関係する。
【0029】
同一性のパーセンテージは、例えば、上記のBLAST プログラムを用いて決定することができる。
【0030】
この発明は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し且つ上で規定した A.thaliana デルタ−7Red蛋白質と交差免疫反応性を有する蛋白質にも関係する。
【0031】
この蛋白質は、例えば、公知の方法により調製したデルタ−7Red蛋白質に対する抗血清を用いる免疫沈降によって検出することができる。
【0032】
この発明の一つの面は、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質、例えば、前に規定したDNA配列を含む宿主細胞における発現により得られるもの等に関係し、特に A.thaliana の蛋白質例えば上記のアミノ酸配列SEQ ID NO:2をコードするDNA配列を含む宿主細胞における発現により得られるものに関係する。
【0033】
この発明の蛋白質を宿主細胞における発現により得る場合は、これを、当業者に公知の遺伝子工学及び細胞培養法によって行なう。
【0034】
発現は、この発明のデルタ−7Redをコードする配列(適当なプロモーターを先行させる)を含む原核生物宿主細胞例えば大腸菌、又は真核生物宿主細胞例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞若しくは酵母にて行なうことができる。
【0035】
得られる組換え蛋白質は、グリコシル化されていてもされていなくてもよい。
【0036】
特に、この発明は、この発明による蛋白質、例えば、酵母中での発現により得られたもの等に関係する。
【0037】
この発明は又、前に規定したデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質に対する抗体にも関係する。この抗体は、当業者に公知の方法により調製されたポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
【0038】
この発明は又、前に規定したDNA配列を含む発現ベクター並びにこのベクターによりトランスフォームされた宿主細胞にも関係する。
【0039】
これらの発現ベクターは、適当なプロモーターの制御下で蛋白質の発現を与える公知のベクターである。原核生物細胞用には、このプロモーターは、例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、β−ラクタマーゼプロモーター又はPLプロモーターであってよい。哺乳動物細胞用には、このプロモーターは、SV40プロモーター又はアデノウイルスのプロモーターであってよい。バキュロウイルス型のベクターも又、昆虫細胞における発現用に用いることができる。酵母細胞用には、このプロモーターは、例えば、PGKプロモーター、ADHプロモーター、CYC1プロモーター又はGAL10/CYC1プロモーターであってよい。
【0040】
宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。原核細胞は、例えば、大腸菌、バチルス、ストレプトミセスである。真核宿主細胞は、酵母及び糸状菌並びに更に高等な生物の細胞例えば哺乳動物細胞又は昆虫細胞を含む。哺乳動物細胞は、ハムスターのCHO細胞又はサルのCos細胞であってよい。昆虫細胞は、例えば、SF9細胞である。酵母細胞は、例えば、Saccharomyces cerevisiae, Schizosaccharomyces pombe 又はKluyveromyces lactisであってよい。
【0041】
この発明の主題は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードする核酸の、微生物における、下記より選択するスクリーニング方法を含むクローニング方法でもある:
− 微生物のナイスタチン又は類似化合物(その毒性がC−7位に不飽和を有するステロールの存在に依るもの)に対する耐性、
− 核酸の、上記の配列SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーション、
− ランダムに単離されたDNA配列からの、データ処理技術を用いることによる核酸の同定、
− 蛋白質の直接発現とそれに続く上記のアミノ酸配列SEQ ID NO:2を有する蛋白質に対する抗体を用いる免疫学的検出。
【0042】
微生物とは、例えば、S.cerevisiae、S.pombe 又は K.lactis を意味する。
【0043】
ナイスタチンに類似する化合物は、例えば、アンフォテリシンB又はフィリピンを含む。
【0044】
ハイブリダイゼーションとは、公知の標準的条件による平均的又は高緊縮条件下でのハイブリダイゼーションを意味する(T. Maniatis 等、 既出)。
【0045】
データ処理技術を利用する同定は、例えば、上記のBLAST プログラムによって行なうことができる。
【0046】
スクリーニング方法が酵母のナイスタチン耐性を利用する上記のクローニング方法の一例を、実験部分において更に説明する。
【0047】
この発明の主題は又、上記のクローニング方法によって得られたDNA又はRNA核酸配列でもある。その核酸配列は、クローニングを行なう材料によって、原核生物起源でも、真核生物起源でもよい(例えば、ヒト起源でもよい)。
【0048】
この発明の主題は又、上記のクローニング方法により得られたDNA配列を含むベクターによりトランスフォームされた宿主細胞でもある。この宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。宿主細胞及びベクターの例は、前に示されている。
【0049】
この発明の特別の主題は、前に規定した発明によるDNA配列又は上記のクローニング方法により得られたDNA配列等を含むベクターによりトランスフォームされた酵母又は糸状菌から選択する宿主細胞である。
【0050】
この発明の主題の一つは又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質の製造方法にも関係し(該製造方法においては、本発明によりトランスフォームされた宿主細胞を培養して発現された蛋白質を単離する)、特に、宿主細胞がトランスフォームされた酵母(該酵母において、コードDNA配列は、酵母プロモーターの制御下に置かれる)である方法に関係する。
【0051】
この発明の主題の一つは又、C−7位が不飽和のステロールのイン・ビトロでの還元方法にも関係する(該方法においては、還元すべきステロールを、上記の方法により得られた蛋白質と共にインキュベートし、得られる還元されたステロールを適宜単離する)。
【0052】
この発明の主題の一つは又、C−7位が不飽和の外因性ステロールのイン・ビボでの還元方法にも関係する(該方法においては、ステロールを、この発明によりトランスフォームした宿主細胞と共にインキュベートし、得られる還元されたステロールを適宜単離する)。宿主細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい(特に、酵母又は糸状菌であってよい)。
【0053】
この発明の主題の一つは又、C−7位が不飽和の内因性ステロールのイン・ビボでの還元方法にも関係する(該方法においては、酵母又は糸状菌から選択し、この発明によってトランスフォームした宿主を培養して、蓄積された還元されたステロールを適宜単離する)。
【0054】
特に、この発明は、上に規定したイン・ビトロ又はイン・ビボでの還元方法に関係し(該方法においては、得られる還元されたステロールは、コレステロールの側鎖の制限酵素(P450 SCC)の基質である)、特に、イン・ビボでの還元方法に関係する(該方法においては、還元すべき外因性ステロールは、エルゴスタ5,7ジエン3−オール、エルゴスタ5,7,24(28)トリエン3−オール又はエルゴスタ5,7,22トリエン3−オール又はこれらの混合物である)。
【0055】
この発明の主題は又、プレグネノロンの製造方法でもある(該方法においては、酵母又は糸状菌から選択してこの発明によりトランスフォームした宿主細胞を培養し、蓄積された内因性のステロール又はC−7位が還元されたステロールを適宜単離し、これらの還元されたステロールをP450 SCCの存在下で(適宜、アドレノドキシンレダクターゼ(ADR)及びアドレノドキシン(ADX)の存在下で)インキュベートして得られるプレグネノロンを適宜単離する)。
【0056】
この発明の特別の主題は、上に規定したプレグネノロンの生成方法(宿主細胞は酵母)である。
【0057】
この発明は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ及びP450 SCCの活性を有する蛋白質並びに適宜ADR及びADXの活性を有する蛋白質の同時発現を可能にする1つ以上のベクターでトランスフォームした酵母を培養し、遊離の若しくはエステル化したプレグネノロンを適宜単離するプレグネノロンの生成方法にも関係する。
【0058】
この発明は、特に、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ、P450 SCC、ADR及びADXの活性を有する蛋白質を同時発現するトランスフォームされた酵母を培養する上記の方法に関係し、特に、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質が A.thaliana の蛋白質デルタ−7Redである上記の方法に関係し、特に、酵母株がEC01/pCD63株である上記の方法に関係する。
【0059】
この発明によるプレグネノロンの生成の例を、更に、実験部分で与える。
【0060】
上記のプレグネノロンの生成方法を実施するために用いられるトランスフォームされた酵母は、例えば、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA配列を含むこの発明の発現ベクター並びにチトクロームP450 SCCの及び適宜ADX及びADRの発現ベクターにより同時トランスフォームされた酵母であってよい。これらのチトクロームP450 SCC及び/又はADXの発現ベクターは公知であり、調製は、例えば、欧州特許出願EP0340878並びに実験部分に記載されている。
【0061】
用いるトランスフォームされた酵母は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA配列がゲノムの特定の遺伝子座(例えば、ADE2遺伝子座)にインテグレートされ及びエルゴステロールがもはやデルタ−7レダクターゼの発現条件下において主要ステロールでない酵母であってもよい。得られた「インテグレートされた」酵母を、次いで、チトクロームP450 SCC並びに適宜ADX及びADRをコードするDNA配列を含むインテグレート発現カセット又は発現ベクターによりトランスフォームすることが出来る。
【0062】
プレグネノロン又はその酢酸エステルをイン・ビボで産生する酵母株の構築の例を、更に、実験部分に与える。
【0063】
従って、この発明の主題は又、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ、P450 SCC、ADR及びADXの活性を有する蛋白質を同時発現し且つ遊離若しくはエステル化したプレグネノロンを蓄積するトランスフォームされた酵母株でもあり、特に、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの活性を有する蛋白質が A.thalianaの蛋白質デルタ−7Redである上記の酵母株、特にEC01/pCD63と呼ばれる酵母株(その正確な構築を更に実験部分で与える)でもある。
【0064】
この発明は又、上に規定したクローニング方法により得られ、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの先天的欠乏を診断するためのプローブとして利用されるヒトDNA配列にも及ぶ。デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの欠乏は、例えば、異常に低いレベルの血漿コレステロールの原因である7−デヒドロコレステロールレダクターゼの欠乏を含む。
【0065】
この発明は又、ヒトゲノムDNAを含む試料を上に規定したプローブと共に標準的ハイブリダイゼーション条件下でインキュベーションし、そのプローブのゲノムDNAへの固定又は固定の不在を示すこと(固定の不在又は後者の減少は、デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの先天的欠乏を示す)を含むデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの欠乏の検出方法にも関係する。
【0066】
この発明の方法は、例えば、出生前デルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼの先天的欠乏又は新生児並びに種々の病気特にRSH/SLO症候群の臨床的明示を有する患者における先天的欠乏の検出を可能にすることができる。
【0067】
下記の実施例は、この発明を制限することなく説明する。
【0068】
【実施例】
実施例1:A.thalianaの5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ(デルタ−7Red)をコードするcDNAのクローニング
A − 酵母中のA.thalianaの発現ライブラリーのスクリーニング
出発cDNA発現ライブラリーは、M.Minet 等(Plant J., 2, 417-422, 1992)により記載されたライブラリーであり、該ライブラリーは、二葉の発芽段階のA.thalianaのmRNAから調製され、そのNotI部位と接するcDNAがシャトルベクターE.coli/S.cerevisiae pFL61の発現カセットのBstXI部位に挿入された。このカセットは、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子(PGK)のプロモーター及びターミネーター配列を含む。2u配列から誘導された酵母の複製オリジン及び選択の指標URA3は、このベクターの酵母中での増殖を確実にする。このベクターの大腸菌中での増殖は、プラスミッドpUC19に由来する。
【0069】
酵母FY1679株(Mata)(これは、Thierry 等(Yeastk, 6, 521-534, 1990)により記載されたS288Cの同系株である)を、D.Gietz 等(Nucleic Acids Res., 20, 1425, 1992)により記載された酢酸リチウム法を用いて、cDNAライブラリーによりトランスフォームした。
【0070】
これらの細胞を、7g/lの「yeast nitrogen base 」(Difco )、1g/lのバクトカザミノ酸(Difco )、20g/lのグルコース、20mg/lのトリプトファンを含み、ウラシルを含まない合成培地SGI上にプレートした。105 のウラシルについての原栄養体トランスフォーマントが得られ、次いで、分類して同じウラシルを含まず2若しくは5μg/mlのナイスタチンを含む合成培地上に5×104 細胞/皿の割合で再プレートした。各ナイスタチン濃度について106 細胞を、この方法でスクリーニングした。3日間28℃でインキュベーションした後に、2μg/mlのナイスタチン濃度で成育させた約100クローンを、5つのクローンの群を構成することにより集めた(ステロール組成を逆相構成の液体クロマトグラフィー(以後、RP−HPLCと呼ぶ)により分析した)が、単一の耐性クローン(F22と呼ぶ)が、5μg/mlのナイスタチン濃度で得られた。
【0071】
B − クローンF22に蓄積されたステロールの分析
酵母の全ステロールを、L. Parks等(Methods in Enzymol., 111, 333-346, 1985 )により記載されたアルカリ鹸化法によって調製し、次いで、RP−HPLC及び/又はガスクロマトグラフィー(GCと呼ぶ)により分析した。
【0072】
得られたステロールの残渣をエタノール−テトラヒドロフラン−水の混合物(65:10:25v/v)に溶解させ、次いで、Applied Biosystems C18結合シリカカラム(100×2.1mm)上での、水中のメタノールの直線的勾配(18分間にわたって、50〜100%)及び205nm及び285nmでの測光検出(エルゴステロール、カンペステロール及びコレステロール標準と比較)を用いるRP−HPLCにより分析する(1ml/分の流量及び55℃で行なう)。
【0073】
ステロールの組成は又、ヘリウムをキャリアーガスとして使用するAlltech SE-30 キャピラリーカラム(30m×0.32mm)上でのGC(インジェクター及び検出器での温度は、それぞれ、280℃及び310℃)によっても分析する(初期に45℃/分の速度で温度を110℃から245℃まで増大させ、次いで、3℃/分にて280℃に達する)。
【0074】
RP−HPLCによる分析(図1A)及びGCによる分析(図1B)は、上で得られたクローンF22に蓄積したステロールのプロフィルを示し、それは、トランスフォームしてないFY1679株の主要ステロールであるエルゴステロールの事実上完全な消失、及び2つの主要ステロール(類似の量)での置き換えにより特徴付けられ、該ステロールは、285nmにて吸収せず、従って、RP−HPLCによる分析により、もはや共役二重不飽和を有しない。
【0075】
図1Aにおいて、カンペステロール(Sigma )(24−R−エルゴスタ5−エン3−オール)は、約35%のジヒドロブラシカステロール(24−S−エルゴスタ5−エン3−オール)を含む。
【0076】
C − デルタ−7RedcDNAのクローニング
クローンF22起源のプラスミッドを J. N. Strathern等(Methods in Enzymol., 194, 319-329, 1991 )により記載された方法によって大腸菌中で増幅し、次いで、NotIにより消化した。約600塩基対(bp)の断片及び1.6kbpの断片を得た。FY1679株を上記の各断片でそれぞれトランスフォームした。トランスフォームした酵母の各クローンのステロールの組成を上記のように分析し、ステロールの変化したプロフィルの原因である遺伝子を有するプラスミッドを弁別した。この方法で同定したプラスミッドをpF22と命名した。
【0077】
D − デルタ−7RedのcDNA配列の決定
pF22のcDNAインサートを、pUC9(Pharmacia )から誘導したベクターpUC9NのNotI部位にサブクローン化した(該ベクターにおいては、多数クローニング部位のEcoRI部位をNotI制限部位の挿入により置き換えてあるが、他方、LacZ遺伝子のリーディングフレームは保持している)。次いで、制限地図を決定した(図2)。
【0078】
外部NotI部位及び内部EcoRI、PvuII又はHindIII部位をそれぞれ有する制限断片を、pBluescript プラスミッド(Stratagene)中にサブクローン化した。そのヌクレオチド配列を、これらの二鎖について、DNAポリメラーゼ Sequenase(Stratageneキット)を用いて、pBluescript pUC9、T3及びT7の直接及び逆行プライマー又はcDNAヌクレオチド配列の推定の特異的プライマーを利用することにより、サンガー法によって決定した。
【0079】
得られた配列をすべて編集すると、図3に示した A.thaliana のデルタ−7RedcDNAヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)を与える。それは、ポリアデニル化配列で終了する1496ヌクレオチドを含む。それは、ヌクレオチド76のメチオニンイニシエーターで開始し、ヌクレオチド1366の終止コドンで終了するオープンリーディングフレームを有する。これは、430アミノ酸の蛋白質をコードする1290ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを生じる。デルタ−7RedcDNAのコード領域は、蛋白質デルタ−7Redをコードし、その演繹したアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を図3に示す。この蛋白質の配列は、430アミノ酸を含み、アミンは、49.286kDaの計算分子質量を有する。
【0080】
ベクターpUC9N中のデルタ−7RedcDNA(デルタ7Red/pUC9NcDNAと呼ぶ)を含む大腸菌DH5−1株の試料を、CNCMに、1995年2月10日に、番号I−1535にて寄託した。
【0081】
E − コンセンサス配列SEQ ID NO:3の決定
配列データベース(Genbank 及びEMBL)のコンピューター検索を利用して、A.thalianaのデルタ−7Red蛋白質の配列が、他のステロールレダクターゼ、特に、R. T. Lorentz 等(DNA Cell Biol., 11, 685-692, 1992 )及び W. Chen 等(Yeast, 7, 305-308, 1991 )によりそれぞれ記載された S.cerevisiae のステロールC−14レダクターゼ及びステロールC−24(28)レダクターゼ並びに M. Shimanuki等(Mol. Biol. Cell, 3, 263-273, 1992 )により記載されたS.pombe の sts1+遺伝子の生成物及び Neurospora crassaのステロールC−14レダクターゼ(EMBLデータベースでの番号 X77955 )と幾らかの配列類似性を有することが示された。更に、デルタ−7Red蛋白質は、H. J. Worman等(J. Cell Biol., 111, 1535-1542, 1990 )及び E. Schuler 等(J. Biol. Chem., 269, 11312-11317, 1994)により記載されたニワトリラミンBレセプターのC末端の400アミノ酸及び対応するヒトレセプターのそれとの類似性を示す。
【0082】
上で得られたデルタ−7RedcDNAから演繹したアミノ酸配列SEQ ID NO:2と3つの酵母ステロールレダクターゼ及び2つのラミンBレセプターのそれとの間の配列同定整列(alignment )を確立し、次いで、下記のアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を有する新たなコンセンサス配列:
【化7】
(式中、7位のXaaはTrp又はTyrであり、12位のXaaはHis又はLysである)を、デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードする新たなゲノムDNA又はcDNA配列をPCRにより増幅するためのプライマーとして利用し得るオリゴヌクレオチドを調製するために規定した。
【0083】
F − 酵母におけるデルタ−7Red蛋白質の発現
a)酵母において誘導可能な発現ベクターデルタ−7/V8の構築
pF22のcDNAの非コード領域の欠失を、下記の特異的オリゴヌクレオチドを用いるPCR増幅により行なった:
【化8】
5' CGCGGATCCA TGGCGGAGAC TGTACATTC 3' (SEQ ID NO:4)及び
【化9】
5' CAGGGTACCT CAATAAATTC CCGGAATG 3' (SEQ ID NO:5)
(これらは、BamHI制限部位を開始コドンのすぐ上流に導入し、KpnI部位を停止コドンのすぐ下流に導入するために規定した)。
【0084】
このcDNAを、1ngの「デルタ7red/pUC9NcDNA」から出発して、2単位のPfuDNAポリメラーゼ及び0.2uMの上記の各プライマーの存在下で、次の増幅条件を用いることにより増幅した(33サイクル):
94℃、10秒;52℃、50秒;74℃、90秒(Stratagene PCRキット使用)。
【0085】
約1300bpの断片を得、次いで、制限酵素BamHI及びKpnIで消化して、C. Cullin 等(Gene, 65, 203-217, 1988 )により記載された E.coli/S.cerevisiaepYeDP1/8−2シャトルベクター(V8と呼ばれる)のBamHI及びKpnI部位に挿入した。V8は、選択指標URA3を有し、酵母における発現カセットを含む(PGK遺伝子のプロモーターGAL10/CYC1及びターミネーター配列を含む)。従って、この得られたベクター(デルタ−7/V8と呼ぶ)は、ガラクトースによるデルタ−7Red蛋白質の誘導可能発現を与える。
【0086】
b)デルタ−7Red蛋白質の生成
酵母FY1679株(Mata)を、上で得たデルタ−7/V8プラスミッドで、D. Gietz等(既出)により記載された酢酸リチウム法を用いることによりトランスフォームした。
【0087】
トランスフォームした酵母を、上記のSGI選択培地(但し、グルコース濃度は5g/l)にて、細胞密度の飽和(OD600nm =12)が得られるまで、27℃で培養した。この培養物を、次いで、一容の完全培地YP(10g/lのイーストエキス(Difco )及び10g/lのバクトペプトン(Difco ))を加え、次いで、エタノール(1.5%v/v)を炭素源として加えることにより希釈する。少なくとも7×107 細胞/mlの細胞濃度に達するまで成育させたときに、デルタ−7Redの発現を20g/lの濃度のガラクトースを加えることにより誘導した。
【0088】
この誘導を、SLI選択用最小培地(グルコースをガラクトース(20g/l)で置き換えたSGI培地に相当)においても、2×107 細胞/mlの細胞濃度が得られるまで行なった。
【0089】
c)デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性のイン・ビトロ酵素試験
デルタ−7Red蛋白質の発現を、M. Taton等(Biochem. Bioph. Res. Commun., 181, 465-473, 1991)により記載された酵素試験(但し、NADPH再生系を除き、上記の誘導した酵母のミクロソーム又は細胞質ゾルの細胞調製物を使用)を用いることにより示した。
【0090】
誘導した細胞の機械的破壊及び P. Urban 等(Eur. J. Biochem., 222, 843-850, 1994)により記載された方法による超遠心分離による単離によって細胞画分を得た。これらの細胞を集め、次いで、TE−KCl緩衝液(50mM トリス−HCl、pH7.4;1mM EDTA、0.1M KCl)で2回洗い、0.6M TE−ソルビトール溶解緩衝液中に再懸濁する。直径0.45〜0.5mmのガラスビーズ(Braun )を細胞懸濁液の表面を通して見えるまで加え、次いで、4℃で5分間激しく揺り動かす。その表面上の細胞溶解物を集め、ガラスビーズを溶解緩衝液で3回洗う。この溶解物及び洗液を合わせ、次いで、ミトコンドリア画分を除去するために、4℃で13分間、20,000gで遠心分離する。集めた上清を、4℃で1時間、100,000gで遠心分離する。ミクロソーム画分を含むペレットと細胞質ゾル画分に相当する上清をそれぞれ集める。
【0091】
得られたミクロソーム画分又は細胞質ゾル画分を、それぞれ、基質としてツイーン80(1.5g/l)で乳化した150umの7−デヒドロコレステロールを含む100mM トリス/HCl緩衝液(pH7.3)中で、2mM NADPHの存在下で、37℃で90分間インキュベートする。これらのステロールを、3容のメタノール−ジクロロメタン混合物(50:50、v/v)の添加により抽出し、次いで、GCにより、標準生成物との比較により分析する。
【0092】
上記のように酵母FY1679から得たミクロソーム画分(3.5mg/mlの蛋白質)を用いる、7−デヒドロコレステロール(RT=16.528分)からのコレステロール(RT=15.887分)の生成を図4に示す。該酵母は、デルタ−7/V8ベクターでトランスフォームし、3時間誘導したものであり、その内因性ステロールは、一層高い保持時間を有する(エルゴスタ5−22ジエン3−オールのRT=16.682分;エルゴステロールのRT=17.249分及びエルゴスタ5−エン3−オールのRT=17.664分)。
【0093】
これらの結果は、一方で、デルタ−7Red蛋白質がトランスフォームされた酵母において発現されることを示し、他方で、該蛋白質がデルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有することを示す。
【0094】
実施例2:C−7位が不飽和の酵母の内因性ステロールのイン・ビボでの還元
主要ステロールがC−5,7位に二重結合を有する酵母株を、実施例1で得たデルタ−7/V8ベクターでトランスフォームし、次いで、培養して実施例1に示したように誘導した。これらの内因性ステロール(そのプロフィルをGCにより分析する)を抽出し、調製用C18カラム(100×4.6mm)を用いて実施例1で示したようにRP−HPLCにより精製し、次いで、IR、UV、MS及びNMRにより同定した。下記の3つの株を、それぞれ、用いた:
− 実施例1に記載したFY1679株;
− erg5変異株(PLC1051と呼ぶ)。該株は、ステロールC−22デサチュラーゼの欠乏により特徴付けられ、FY1679株と S. W. Molzahn等(J. Gen. Microbiol., 72, 339-348, 1972 )により記載された元のpol5株との間の交配により構築されたものであり、エルゴスタ5,7−ジエン3−オールを蓄積する。
【0095】
− erg4,5二重変異株(PLC1451と呼ぶ)。該株は、ステロールC−22デサチュラーゼ(erg5)及びステロールC−24(28)レダクターゼ(erg4)の欠乏により特徴付けられ、FY1679株と S. W. Molzahn等(既出)により記載されたpol5株との間の交配により得られたものであり、ステロールの変異体を探すための酵母の系統的スクリーニングの間に自然のナイスタチン耐性を獲得しており、エルゴスタ5,7,24(28)トリエン3−オールを蓄積する。その結果生じた二重変異erg4、erg5を有する一倍体株は、ガラクトース及び非発酵性基質の存在下で成育し、ウラシル、トリプトファン及びヒスチジンについて独立栄養性である。これらのPLC1051株及びPLC1451株を、CNCMに、1995年2月10日に、それぞれ、番号I−1536及びI−1537にて寄託した。
【0096】
上記のトランスフォームされた3つの株からそれぞれ同定された主要な還元されたステロールを次の表に示す:
【表1】
【0097】
実施例3: C−7位が還元された酵母の内因性ステロールの制限によるイン・ビトロでのプレグネノロンの生成
Wada等(Arch. Biochem. Biophys., 290, 376-380, 1991 )により記載されたイン・ビトロでのコレステロール側鎖の酵素的制限試験を用いることにより、プレグネノロンの生成を行なう。該試験において、実施例2で得たC−7位が還元されたステロール260uMを、150ulの10mM リン酸緩衝液(pH7.4)、100mM NaCl、0.3% ツイーン20中で、140nMのアドレノドキシンレダクターゼ、1.16uMのアドレノドキシン及び0.68uMのウシ起源のチトクロームP450 SCC(副腎から、例えば、D. W. Seybert 等、 J. Biol. Chem., 254, 12088-12098, 1979に従って得たもの)の存在下でインキュベートする。
【0098】
150uMのNADPHの添加により反応を引き起こす。80分間37℃でインキュベートした後に、一容のメタノール−ジクロロメタン混合物(50:50v/v)を加えることにより反応を停止させる。これらのステロールを、実施例1に示したように、抽出してGCにより分析する。
【0099】
図5は、それぞれ、エルゴスタ5−エン3−オール(図5A)、エルゴスタ5,24(28)ジエン3−オール(図5B)又はエルゴスタ5,22ジエン3−オール(図5C)が、チトクロームP450 SCCの基質であり、コレステロールの制限により同じ条件下で得られるプレグネノロンのRTと同じRTを有する生成物へと導く。
【0100】
得られた結果は、デルタ−7Redを発現するトランスフォームされた酵母が、イン・ビトロでの生物学的酸化によってプレグネノロンを生成するのに直接に利用できるステロールを蓄積することを示している。
【0101】
実施例4: イン・ビボでプレグネノロン又はその酢酸エステルを生成する酵母株の構築
A − 一倍体株FY1679交配型a(FY1679Mata)の遺伝子座ADE2にインテグレートされた A.thaliana のデルタ−7Redの発現カセットを含むELR01株の構築
a)インテグレートプラスミッドpADデルタ−7(pADΔ7)の構築:
プラスミッドpAD7の構築を、図6に記載したように行なった。S.cerevisiaeのADE2遺伝子を含むBglII断片(2244bp)を、プラスミッドpASZ11(A. Stotz等、 Gene, 95, 91, 1990)から単離し、pBluescriptII KS+ ベクター(Stratagene)の多数クローニング部位のBamHI部位に挿入した。
【0102】
得られたプラスミッド(pBS−ADE2と呼ぶ)を、次いで、その単一StuI部位にて線状化して、脱リン酸化した。プロモーターGAL10/CYC1、デルタ−7Red(ステロール7レダクターゼ)のコードフェーズ及びターミネーターPGK(tPGK)を含む約2.44kbの断片を、プラスミッドデルタ−7/V8から得た。該プラスミッドは、実施例1Fにおいて、下記のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いるPCR技術により得たものである:
【化10】
5' GATTACGCCA AGCTTTTCGA AAC 3' (SEQ ID NO:6)及び
【化11】
5' AGATCTTGAG AAGATGCGGC CAGCAAAAC 3' (SEQ ID NO:7)
(これらは、それぞれ、tPGKの3’末端及びURA3遺伝子の3’末端と対合するように規定したものである)。テンプレートとしてのプラスミッドデルタ−7/V8(80ng)、天然のPfuDNAポリメラーゼ(Stratageneが勧める緩衝液中に1単位)及び次の増幅条件を用いた(35サイクル):
95℃で1分;95℃で5秒;56℃で30秒;70℃で4分30秒。得られた増幅断片を、次いで、上で線状化したプラスミッドpBS−ADE2の鈍端にクローン化してプラスミッドpADΔ7を与えた。該プラスミッドにおいて、約4720bpのNotI−PstI断片が、デルタ−7Redの発現カセットにより中断されたADE2遺伝子を運ぶ。
【0103】
b)酵母FY1679Mata株における染色体インテグレーション:
制限酵素NotI及びPstIで消化したプラスミッドpADΔ7から単離したNotI−PstI断片(4720bp)を、D. Gietz等(既出)により記載された酢酸リチウム法を用いるトランスフォーメーションによって酵母FY1679Mataに導入した。
【0104】
相同組換えによりこの断片をインテグレートしたトランスフォーマントをそれらのナイスタチン耐性によって選択した(この表現型は、酵母のデルタ−5,7ステロールをデルタ−5ステロールに変換するデルタ−7Redの発現によるものである)。
【0105】
これらのトランスフォームした細胞を、グルコース(20g/l)を含み且つアデニン(20mg/l)を補った実施例1に記載した完全培地YP中で28℃で4時間インキュベートした。次いで、それらを濃縮し、それから、SLI−寒天最小培地(1g/lのバクトカザミノ酸;7g/lの「yeast nitrogen base 」;20g/lのガラクトース;20mg/lのアデニン;20g/lの寒天)上にプレートし、28℃で一晩インキュベートしてデルタ−7Red遺伝子の発現を誘導した。ウラシルの補足のない場合は、細胞の成育が制限される。これらのクローンを集めてグループ分けしてからガラクトース(20g/l)を含み、アデニン(20mg/l)を補った完全培地YP皿上にプレートした(各皿は、それぞれ、0、1、2、5、20μg/mlの濃度のナイスタチンを含む)。4日目に、5μg/mlのナイスタチン濃度にて成育した約20クローンが得られた。これらのクローンの内の12を、ウラシル、ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン及びアデニンを豊富(それぞれ、20mg/l)にした最小培地WO(7g/lのアミノ酸を含まない「yeast nitrogen base 」、20g/lのグルコース)にて、皿上でサブクローン化した。
【0106】
次いで、ADE2遺伝子の崩壊によるアデニンの栄養要求性を、ウラシル、ロイシン、トリプトファン、ヒスチジンを豊富に有するがアデニンを含まない上記の最小培地WO上で成育しないことを観ることにより確認した。
【0107】
酵母のゲノム中の発現カセットの存在を、得られたクローンのゲノムDNAからのPCR増幅(上記の配列SEQ ID NO:6及び7を有するプライマーを使用)により制御した。
【0108】
インテグレートされたデルタ−7Red遺伝子の機能性を、酵母中に蓄積したステロールを、実施例1Bに記載した操作方法によってアルカリ鹸化により抽出して、その組成のGC分析により確認した(5メートルのSE30キャピラリーカラム(Alltech )使用)。分析は、クローンをガラクトースの存在下で培養した場合には、C−7位が飽和したステロールを含む改変されたプロフィルを示す。得られた株(ELR01と呼ぶ)は、エルゴスタ5,7,22トリエン3−オール(エルゴステロール)(図7に示すように、初期の株FY1679の主要ステロール)の代わりにエルゴスタ5エン3−オール及びエルゴスタ5,22ジエン3−オールを蓄積する。
【0109】
この方法で構築した株ELR01は、プロモーターGAL10/CYC1による転写制御の事実のために、ガラクトースの存在下で培養した場合に、デルタ−7Red遺伝子を発現する。デルタ−7Redの発現ユニットは、ADE2遺伝子と同じ転写方向を有するにもかかわらず、グルコースの存在下で培養を行なった場合には、プロモーターGAL10/CYC1のリプレッションの結果、GCによるステロールの組成の分析によってデルタ−7Redの発現は検出されない。
【0110】
B − 一倍体株FY1679交配型アルファ(mat.alpha)の遺伝子座LEU2とSPL1の間にインテグレートされた成熟型ウシアドレノドキシンレダクターゼ(ADRm)用の発現カセットを含むCDR01株の構築。
a)シャトルベクター E.coli - S.cerevisiaeV13の構築
V13ベクターは、GAL10/CYC1プロモーター(pG/C)を含む酵母における選択指標URA3及び発現カセットを有するV8ベクター(C. Cullin 等、 既出)に対応し、該ベクターにおいては、図8に与えたダイヤグラムに従って、更なるSalI部位(Sa)が多数クローニング部位に導入されている。
【0111】
V8ベクターを制限酵素HindIII及びBamHIで消化し、URA3遺伝子及びGAL10/CYC1プロモーターを含む得られたBamHI−HindIII断片(1722bp)(今後、「ura−gal」と呼ぶ)を、HindIII及びBamHIで消化したpUC18ベクター(Pharmacia )の対応部位の間にサブクローン化した。
【0112】
この「ura−gal」断片を、次いで、得られたpUC18/「ura−gal」プラスミッド(95℃で30秒間変性したもの)から次の条件を用いるPCRによって増幅した(30サイクル):86℃で5秒;95℃で10秒;38℃で40秒;55℃で5秒及び74℃で2分、2単位のTaqDNAポリメラーゼ(Boehringer)(製造者の緩衝液中)及び下記のヌクレオチド配列を有するプライマー各1μMを使用:
【化12】
【化13】
5' GTAAAACGAC GGCCAGT 3' (SEQ ID NO:9)
プライマーSEQ ID NO:8は、「ura−gal」断片と同じBamHI部位GGATCC、テンプレートとハイブリダイズしないBamHI部位における3つの連続したヌクレオチド、SalI部位GTCGAC及びGAL10/CYC1プロモーターと相同な配列を含む。プライマーSEQ ID NO:9は、pUC18の多数クローニング部位のHindIII部位に先行する配列とマッチする。増幅後に得られた1722bpのHindIII−BamHI断片をXhoI及びBamHIで消化して、GAL10/CYC1プロモーター(pG/C)を含む254bpの断片を遊離させ、次いで、それを、制限酵素BamHI及びXhoIで消化したV8ベクター中にサブクローン化した。
【0113】
生成したV13ベクターは、成熟ウシアドレノドキシンレダクターゼ(ADRm)、成熟ウシアドレノドキシン(ADXm)及びウシチトクロームP450 SCCをコードするcDNAの容易なサブクローン化を可能にする制限部位を含む。
【0114】
このV13ベクターから出発して、V13−ADRベクター、V13−ADXベクター及びV13−SCC10ベクターを、それぞれ、下記の方法にて調製した:
【0115】
a)V13−ADRベクターの構築
ADRmをコードするcDNAを有する1478bpのSalI−KpnI断片を、欧州特許出願EP340878の実施例25に記載されたプラスミッドpGBADR−2から単離し、V13ベクターの対応部位にサブクローン化してV13−ADRベクターを与えた。
【0116】
b)V13−ADXベクターの構築
ADXmをコードするcDNAを有する390bpのSalI BamHI断片を、欧州特許出願EP340878の実施例23に記載されたプラスミッドpGBADX−1から単離し、V13ベクターの対応部位にサブクローン化してV13−ADXベクターを与えた。
【0117】
c)V13−SCC10ベクターの構築
P450 SCCをコードするcDNAを有する1554bpのSalI−EcoRI断片を、欧州特許出願EP340878の実施例6に記載されたプラスミッドpGBSCC−10から単離し、V13ベクターの対応部位にサブクローン化してV13−SCC10ベクターを与えた。
【0118】
b)インテグレートプラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築:
プラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築を図9に記載したようにして行なった。
【0119】
a)プラスミッドpFL26CDの構築
NotI部位を、下記の操作方法に従って、プラスミッドpFL26(N. Bonneaud 等、 Yeast, 7, 609-615, 1991 )中に、leu2遺伝子をspl1遺伝子(spl1と呼ぶ)(C. Kolman 等、 J. Bacteriol., 175, 1433, 1933)の5’から分離する遺伝子間領域に導入した:
【0120】
leu2の5’末端及びSpl1の3’末端をそれぞれ運ぶ704bp及び347bpの2つのDNA断片を、下記のヌクレオチド配列を有するプライマーを用いてPCRにより合成した:
【化14】
5' TTGAAGGTTC AACATCAATT GATTG 3' (SEQ ID NO:10)及び
【化15】
及び
【化16】
5' CAAGGAGGCG GCCGCCACAC AAAAAGTTAG GTGT 3' (SEQ ID NO:12)及び
【化17】
5' TCTGCTTCCC TAGAACCTTC TTATG 3' (SEQ ID NO:13)
(347bp断片の増幅用)。
【0121】
プライマーSEQ ID NO:11及びSEQ ID NO:12は、NotI部位に対応する配列GGCGGCCGを有し、その中の3塩基はテンプレートとマッチしない。プライマーSEQ ID NO:10は、leu2の停止コドンの536bp上流に位置する配列とマッチし、プライマーSEQ ID NO:13は、spl1Δの停止コドンの194bp上流に位置する配列とマッチする。
【0122】
704bp及び347bp断片を、先ず、プラスミッドpFL26をテンプレートとし、PfuDNAポリメラーゼを酵素として用いて、供給者(Stratagene)により記載された標準条件下で、PCRによって増幅する。
【0123】
得られた2つの増幅された断片は、プライマーSEQ ID NO:11(704bp断片)及びプライマーSEQ ID NO:12(347bp断片)により生成された末端のレベルで20bpにわたってマッチした(5’末端から開始)(これらの20bpは、それぞれ、これらのプライマーの各々の最初の20ヌクレオチドに対応する)。
【0124】
704bp(1ng)及び347bp(2ng)のDNA断片の対合から生じた生成物を、プライマーSEQ ID NO:10及びSEQ ID NO:13並びに次の条件を用いて増幅した:95℃で10秒、60℃で5秒、45℃で1分、65℃で5秒及び72℃で2分を30サイクル行ない、その後、72℃で7分を1サイクル行なう(50μlの反応緩衝液(Stratagene)中で、50pモルの各プライマー及び1単位のPfuDNAポリメラーゼを使用)。NotI制限部位を含む1031bpの増幅された断片が得られた。この断片を、次いで、BstXI及びNsiI酵素で消化し、得られたNotI部位を含む920bpの断片をpFL26の初期BstXI−NsiI断片の代わりに挿入してプラスミッドpFL26CDを与えた(その地図を図9Aに示す)。
【0125】
b)プラスミッドpCD60の構築
− プラスミッドpDP10036の調製:
成熟ウシアドレノドキシン(ADXm)をコードするcDNAを有する390bpのSalI−BamHI断片を、プラスミッドV13−ADXから単離し、次いで、プラスミッドpTG10033の多数クローニング部位のSalI−BamHI部位にサブクローン化した(それは、誘導可能なプロモーターGAL10/CYC1及びターミネーターterPGKと隣接する)。プラスミッドpTG10033(その地図を図18に示す)は、後述する操作方法に従って調製した。該プラスミッドは、プロモーターCYC1及びterPGKを含む発現ベクターpTG10031(図17)に対応し、その中のプロモーターCYC1がプロモーターGAL10/CYC1で置き換えられている。
【0126】
こうして得られたプラスミッド(pDP10034と呼ぶ)は、ADX発現カセット即ちGAL10/CYC1及びterPGKの転写制御下でADXmをコードする遺伝子を有する。従って、用語「発現カセット」は、GAL10/CYC1及びterPGKに転写的に依存する任意の遺伝子について使用される。
【0127】
選択指標URA3及びADR発現カセットを有する3593bpのHindIII断片を、制限酵素HindIIIで消化したプラスミッドV13−ADRから単離し、次いで、制限酵素HindIIIで消化したプラスミッドpDP10034の対応部位に挿入した。得られたプラスミッド(pDP10036と呼ぶ)は、マーカーURA3により互いに分離されたADX及びADR発現カセットを含む(図9B)。
【0128】
− プラスミッドpCD60の調製:
ADRカセットを有する2770bpのAflIII−AccI断片を、プラスミッドpDP10036を制限酵素AflIII及びAccIで部分消化することにより単離し、DNAポリメラーゼIのクレノー断片で処理して鈍端を生成し、その鈍端でのライゲーションの後にプラスミッドpBlue-Script KS+(Stratagene)のSmaI部位にサブクローン化した。得られたプラスミッド(pCD60と呼ぶ)において、ADR発現カセットは、両側をNotI部位にはさまれ、該部位の一つはAflIII/SmaIライゲーション部位の209bp上流に位置してサブクローン化された断片に由来し、他方は、pBlue-Script KS+の多数クローニング部位(MCS1)に由来する(図9B)。
【0129】
c)プラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築:
制限酵素NotIで消化したプラスミッドpCD60から単離した2558bpのNotI断片を、次いで、プラスミッドpFL26CDの単一NotI部位にサブクローン化した。断片の挿入の方向によって、2種類のプラスミッド(pCD62−1及びpCD62−2と呼ぶ)が得られた(図9C)。
【0130】
プラスミッドpCD62−1において、ADR発現カセットは、leu2遺伝子の転写の方向に向けられ、この向きはプラスミッドpCD62−2における向きと逆である。
【0131】
プラスミッドpCD62−1を、続く構築のために保持した。
【0132】
c)酵母FY1679株(Matalpha)における染色体インテグレーション:
プラスミッドpCD62−1は、FY1679株の染色体遺伝子座に相同な領域を含む。これらの領域は、それぞれ、図10に示した1060bpのBglII−ClaI断片(A)、707bpのEcoRI−NotI断片(B)及び602bpのNotI−BglII断片(C)に対応する。
【0133】
このプラスミッドpCD62−1の486bpのClaI−EcoRI断片に対応する領域は、FY1679株においては欠失し、それは、この株のロイシンに関する栄養要求性(LEU2- 株)を意味する(R. S. Sikorski等、 Genetics, 122, 19, 1989 )。
【0134】
プラスミッドpCD62−1を、制限酵素XbaI(その制限部位は相同領域の外に位置する)での消化により線状化し、次いで、FY1679株(Matalpha)に酢酸リチウム法(D. Gietz等、 既出)を用いるトランスフォーメーションにより導入した。
【0135】
酵母による細胞のDNA修復能力(「gap修復」)及び表現型LEU2+ を有する組換え体の選択は、第1に、2つの型の組換え体を選択することを可能にした:第1の型は、断片A及びBのレベルにおける相同組換えの後に得られ、第2の型は、断片A及びCのレベルにおける相同組換えの後に得られる。後者の型の組換えだけが、表現型LEU2+ の回復に加えてADR発現カセットのインテグレーションを与えた。
【0136】
この第2の型のクローンを選択するために、PCRによるスクリーニングを、上記のプライマーSEQ ID NO:10及び下記のヌクレオチド配列を有するプライマーを用いて、FY1679株(Matalpha)のゲノム中のADR発現カセットの存在及び正確な位置を確認するように行なった:
【化18】
5' TACATTAGGT CCTTTGTAGC 3' (SEQ ID NO:14)。
【0137】
このスクリーニングにおいて、プライマーSEQ ID NO:14は、専ら、ADRmをコードする配列とマッチし、プライマーSEQ ID NO:10は、染色体配列(図10)とマッチする。
【0138】
増幅反応を、FY1679株(Matalpha)(C. Hoffman等、 Gene, 57, 267, 1987 )から単離したゲノムDNA(20ng)をテンプレートとし、TaqDNAポリメラーゼ(1U、Boehringer)、50pモルの各プライマー及び30PCRサイクル(95℃で10秒、55℃で1分、72℃で3分)を用いて供給者により記載された標準条件下で行なった。
【0139】
増幅は、発現カセットがインテグレートされた場合には、2.9kbの対応する断片の単離へと導いた。逆の場合には、増幅生成物は、検出されなかった。
【0140】
ADRインテグレートされた発現カセットを含むこの方法で選択されたFY1679株(Matalpha)は、CDR01と呼ばれた。
【0141】
この株によるADRの発現は、実施例1Fに記載したプロトコールに従って調製した細胞質ゾルの細胞画分から、抗−ADR抗体により認識される蛋白質の免疫検出によって示された。
【0142】
CDR01株によって発現されたADRの機能性を、実施例3に記載したイン・ビトロでのコレステロールの側鎖の酵素的制限試験(精製ADR(0.28pモル)を、100ugの全蛋白質を含むCDR01株の細胞質ゾルの細胞画分で置き換えた)にて確認した。約25%のコレステロールからプレグネノロンへの生物学的変換率が認められ、これは、精製ADRで得られたものに匹敵した。
【0143】
C − A. Thaliana のデルタ−7RedとADRmとを同時発現するEC01二倍体株の構築。
EC01二倍体株を、上で得たCDR01及びELR01一倍体株を G. Sprague 等(Methods in Enzymology, 194, 77, 1991)により記載されたプロトコールに従って交配させることによって得た:
【0144】
ウラシル、トリプトファン及びヒスチジンを豊富に(各20mg/l)含むがロイシンを含まない前述した最小培地WO上での第1の選択は、二倍体クローンLEU2+ (ADR発現カセットの存在を示す原栄養体特性)の単離を可能にする。これらのクローンを、次いで、それらの5μg/mlナイスタチンに対する耐性(デルタ−7Redの発現カセットの存在を示す耐性特性)について、前記の固体合成SLI−寒天培地上で試験した。
【0145】
EC01と呼ばれる株が、この方法において、ナイスタチン耐性のクローンから任意に単離された。
【0146】
D − プレグネノロン及びプレグネノロン3−アセテートを生成するEC01/pCD63株の構築。
a)発現プラスミッドpCD63の構築
プラスミッドpCD63の構築を、図11に記載したように行なった。
【0147】
ADX発現カセット、選択指標URA3及びADR発現カセットを含む4961bpのNotI断片を、上で調製したプラスミッドpDP10036から単離して、制限酵素NotIで消化し、次いで、プラスミッドpFL45L(N. Bonneaud 等、 Yeast, 7, 609, 1991 )の多数クローニング部位のNotI部位にクローン化した。こうして得られたベクター(pDP10037と呼ぶ)を図11に示す。
【0148】
一方において、プラスミッドpDP10037を、ADRmをコードする遺伝子内に制限部位がある酵素Tth111Iで消化して線状化した。
【0149】
他方において、P450 SCCの発現カセット及びURA3マーカーの5’末端を含む3476bpのPvuII−EcoRV断片を、前に得たプラスミッドV13−SCC10から精製して制限酵素PvuII及びEcoRVで消化した。
【0150】
これらの別々に得た2種類の線状DNAは、図11Aに示すように、一方で遺伝子URA3の5’末端及びGAL10/CYC1に対応し、他方で、terPGKに対応する相同領域を有する。
【0151】
これらの2種類の断片を、次いで、酢酸リチウム法(D. Gietz等、 既出)を用いる同時トランスフォーメーションによって酵母FY1679株(Mata)に導入した。
【0152】
続く原栄養性組換え体のウラシル及びトリプトファン(URA3+ 、RTP1+ )についての選択は、制限酵素Tth111Iでの消化により生じた二本鎖破壊が、相同組換えによる発現カセットP450 SCCのインテグレーションの結果修復されたクローンの単離を与えた。
【0153】
組換え体(URA3+ 、RTP1+ )の選択を、ロイシン、ヒスチジン及びロイシンに富む(各20mg/l)がウラシル及びトリプトファンを含まない最小培地WO上で行なった。50の集めたクローンから出発して、全DNAを C. Hoffman 等(Gene, 57, 267, 1987 )により記載された方法によって抽出し、次いで、エレクトロポレーションにより大腸菌XL1−Blue株(Stratagene)に導入した。「gap修復」により生成したプラスミッドによりトランスフォームしたクローンを、50mg/lのアンピシリンを含む豊富な培地LB(トリプトファン1%、イーストエキス0.5%、NaCl 1%)にて選択した。選択したクローンの1つから出発して、pCD63と呼ばれるプラスミッドを、J. Sambrook 等、 Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に記載された方法に従って抽出した。得られたプラスミッドpCD63は、図11Bに示したように、選択指標URA3により分離された発現カセットADX及びP450 SCCを含む。
【0154】
b)EC01株のプラスミッドpCD63によるトランスフォーメーション
プラスミッドpCD63を、酢酸リチウム法(D. Gietz等、 既出)によるトランスフォーメーションにより上で得たEC01株に導入した。トランスフォームした酵母を、次いで、ウラシル、トリプトファン、アデニン及びロイシンを含まないがヒスチジン(20mg/l)を補った前述の最小培地WO上で培養した。
【0155】
EC01/pCD63と呼ばれる株をこの方法で単離した。この株の試料(EC01/pCD63として言及する)を、CNCMに、1995年2月10日に、番号I−1538で寄託した。
【0156】
c)プレグネノロン及びプレグネノロン3−アセテートのイン・ビボでの産生。
EC01/pCD63株を、3リットルのエルレンマイヤーフラスコにて、グルコース濃度が5g/lの実施例1Aに記載したSGI選択培地中で、定常成育期(DO600=12〜13)に達するまで、好気条件(130r/分)下で、28℃で培養した。次いで、培養物を、上記の完全培地YP一容の添加と、続く炭素源としてのエタノール(0.5%v/v)の添加によって希釈する。新たな定常成育期に到達したとき(DO600=12〜13)に、ガラクトースを、それぞれプロモーターGAL10/CYC1の制御下にあるADXm、ADRm、P450 SCC及びデルタ−7Redをコードする遺伝子の発現を同時に誘導するために、濃溶液(500g/l)の形態で培養に添加する。
【0157】
これらの4つの遺伝子の同時発現は、それぞれ細胞及び培養上清に蓄積したステロールの下記の操作方法による分析により示される:
【0158】
この培養の50mlの試料を、誘導の9時間及び24時間後に採取する。各試料を、細胞を培養培地から分離するために遠心分離する(4000g、10分、4℃)。
【0159】
一方において、これらの細胞を、実施例1Fに記載した方法により、ガラスビーズの存在下で機械的破壊によって溶解させる。こうして得られた溶解物から出発し、次いで、細胞内ステロールを一容のヘキサンの添加によって抽出する。
【0160】
他方において、培養培地中に存在するステロールを、一容のヘキサンの添加によって直接抽出する。
【0161】
抽出したステロールの組成を、実施例1に記載したように、GCによって、標準生成物と比較して分析する。
【0162】
9時間又は24時間の誘導の後に得られた結果を、それぞれ、図12A及び図12Bに示す。
【0163】
9時間の誘導の後、図12Aは、下記を示す:
− 細胞溶解物において、存在する主要化合物は、標準プレグネノロンアセテート(RT=11.8分)と同じ保持時間を有し、1つの非常に弱いピークがプレグネノロンの保持時間(RT=9.9分)に存在するだけである。C−7位が還元されたこの酵母の内因性ステロール(エルゴスタ5−エン3−オール及びエルゴスタ5,22ジエン3−オール)が少量、それぞれ、RT=18分及びRT=17分にて同定される。分析前の細胞溶解物のアルカリ鹸化は、プレグネノロンと同時移動する主要化合物の存在へと導く。これは、11.8分のRTを有する蓄積した化合物がプレグネノロンアセテートに相当することの確認を与える。
【0164】
− 培養培地において、プレグネノロン又はそのアセテートは、有意に、存在しない。
【0165】
24時間の誘導の後、図12Bは、下記を示す:
− 細胞溶解物において、少量のプレグネノロン(RT=10.2分)及びプレグネノロンアセテート(RT=12分)並びにこの酵母の還元された内因性ステロール(RT=17分及びRT=18分)が存在する。コレステロール(RT=16.2分)は、抽出前に加えた内部標準である。
【0166】
− 培養培地において、主に存在するのはプレグネノロンアセテートであり、プレグネノロンは、少量である。
【0167】
対照用プラスミッド例えば前述のpFL45LでトランスフォームしたEC01株を用いて並行して行なった実験は、遊離のプレグネノロン又はアセテート形態のプレグネノロンに対応するピークを示さなかった。
【0168】
この方法で行なったステロールの同定は、酵母EC01/pCD63株が、外因性ステロール源の不在において、ガラクトースの存在下での誘導の後、9時間の誘導の後の主要な産生を伴って、プレグネノロン及びプレグネノロンアセテートを蓄積したことを示す。
【0169】
これらの結果は、一方において、EC01株のC−7位が還元された内因性ステロールの効果的な流動化を、他方において、内因性ステロールの側鎖の制限反応のカップリングの極度の効果を示す。
【表2】
【0170】
実施例4の準備:プラスミッドpTG10033の構築
1.新しい多数クローニング部位を有するpUC19の誘導体:
クローニングベクターM13mp19(C. Yanish-Peron 等、 Gene, 33, 103, 1985 )を、下記のオリゴヌクレオチドを用いて突然変異誘発し:
【化19】
5' GCGCTCAGCG GCCGCTTTCC AGTCG 3' SEQ ID NO:15
NotI部位を切り詰めたlacI遺伝子の配列中に導入して、プラスミッドM13TG724を与えた。
【0171】
次いで、EcoRI、SnaBI及びNotI部位を含む「ポリリンカー」を、下記のオリゴヌクレオチドを用いてプラスミッドM13TG724のEcoRI部位に導入し:
【化20】
5' AATTGCGGCC GCGTACGTAT G 3' SEQ ID NO:16
及び
【化21】
5' AATTCATACG TACGCGGCCG C 3' SEQ ID NO:17
プラスミッドM13TG7244を与えた(増幅段階において、インサートの改変が認められた)。プラスミッドM13TG7244のインサートは、下記のヌクレオチド配列を有する:
【化22】
GAATTCATACGTACGCGGCCGCAATTGCGGCCGGTACGTATAATTCACTGGCCGT
(式中、EcoRI、SnaBI及びSstI部位に下線を引き、又、右端の9ヌクレオチドは、pUC19のlacZ配列である)。
制限酵素EcoRI及びSstIによるプラスミッドM13TG7244の消化の後に、MluI及びAvrII部位を含む「ポリリンカー」を、下記のオリゴヌクレオチドを用いて導入した:
【化23】
5' CAACGCGTCC TAGG 3' SEQ ID NO:18
【化24】
5' AATTCCTAGG ACGCGTTGAG CT 3' SEQ ID NO:19。
【0172】
酵素PvuIIでの消化の後に、得られたPvuII断片を、pUC19(C. Yanish-Porch 等、 既出)にてサブクローン化してプラスミッドpTG7457(図13)を与えた。
【0173】
2.PGKターミネーターのサブクローン化
pUC19を、制限酵素BamHI及びEcoRIで消化し、下記のオリゴヌクレオチドを用いて、新たな「ポリリンカー」BamHI SstIを導入した:
【化25】
5' GATCCGCAGA TATCATCTAG ATCCCGGGTA GAT 3' SEQ ID NO:20、
【化26】
【化27】
5' CTTGAGCTCT ACGCAGCTGG TCGACACCTA GGAG 3' SEQ ID NO:22 及び
【化28】
5' AATTCTCCTA GGTGTCGACC AGCTGCGT 3' SEQ ID NO:23。
【0174】
この方法で得たプラスミッドpTG7453(図14)を、次いで、制限酵素BamHI及びSstIで消化した。BamHIとSstIの間の「ポリリンカー」の部位を、上で得たプラスミッドpTG7457の誘導体に導入して、制限酵素BamHI及びSstIで消化した。得られた新たなプラスミッドは、PvuII、HindIII、BamHI、EcoRI、XbaI、SmaI、BglII、SstI(=SacI)、MluI、AvrII、EcoRI、SnaBI、NotI、SnaBI、PvuI部位を含む。
【0175】
この新しいプラスミッドを、制限酵素BglII及びHindIIIで消化し、PGKプロモーター(R. A. Hitzeman等、 Nucleic Acids Res., 10, 7791, 1982)を含むBglII−HindIII断片を前者に挿入してプラスミッドpTG10014(図15)を与えた。
【0176】
3.プロモーターのサブクローニング:
a)CYC1プロモーター
プラスミッドpTG7453のBamHIとSstIの間の「ポリリンカー」の部位を、上で同定したプラスミッドpTG7457の誘導体に導入した。得られた新しいプラスミッドを制限酵素SnaBIで消化し、次いで、ファージf1の複製オリジンを含むプラスミッドpEMBL8(L. Dente等、 Nucleic Acids Res., 11, 1645, 1983)の456bpのRsaI−DraI断片を導入してプラスミッドpTG7503を与えた。
【0177】
欧州特許出願EP0340378の実施例6において調製したプラスミッドpGBSCC−9の0.78kbのBamHI HindIII断片(S.cerevisiaeのCYC1プロモーター、「ポリリンカー」及び K.lactis のラクターゼターミネーターを含む)を、制限酵素HindIII及びBamHIで消化したプラスミッドpTG7503中にサブクローン化してプラスミッドpTG10004(図16)を与えた。
【0178】
次いで、CYC1プロモーターのXhoI及びMluI部位を、下記のオリゴヌクレオチドを用いる、プラスミッドpTG10004の二本鎖DNAの位置指定突然変異導入法によって除去した:
【化29】
こうして得られたプラスミッドpTG10005を、次いで、制限酵素SalI及びXhoIで消化し、それから、MluI部位を、下記のオリゴヌクレオチドを用いて導入して:
【化30】
5' TCGACGGACG CGTGG 3' SEQ ID NO:25
及び
【化31】
5' TCGACCACGC GTCC 3' SEQ ID NO:26
プラスミッドpTG10006を与えた。
【0179】
b)GAL10/CYC1プロモーター
プラスミッドpYeDP1/8−2(C. Cullin 等、 Gene, 203, 1988 )を、制限酵素XhoIで開いた。生成した粘着末端を、DNAポリメラーゼのクレノー断片を用いて埋め、次いで、そのプラスミッドを再結合(religated )した。こうして得られたプラスミッドpTG10010(GAL10/CYC1プロモーターは、もはやXhoI部位を含まない)を、PCR増幅のためのテンプレートとして用いる。
【0180】
4.発現ベクターpTG10031の構築
lacZをコードする配列の残りの部分を、下記のオリゴヌクレオチドを用いる位置指定突然変異導入法により、プラスミッドpTG7503において除去して:
【化32】
5' TGGCCGTCGT TTTACTCCTG CGCCTGATGC GGTAT 3' SEQ ID NO:27
プラスミッドpTG7549を与えた。
【0181】
プラスミッドpTG7549中に存在するLacZプロモーターを、次いで、下記のオリゴヌクレオチドを用いて削除して:
【化33】
5' GGCCGCAAAA CCAAA 3' SEQ ID NO:28
及び
【化34】
5' AGCTTTTGGT TTTGC 3' SEQ ID NO:29
(これらは、予め制限酵素NotI及びHindIIIで消化したプラスミッド中に挿入されており、2つの部位を回復する)プラスミッドpTG7553を与えた。
【0182】
CYC1プロモーターを含むBamHI MluI断片を、制限酵素BamHI及びMluIで消化したプラスミッドpTG10006から得て、PGKプロモーターを含むMluI HindIII断片を、制限酵素MluI及びHindIIIで消化したプラスミッドpTG10015から単離した。これらの2種の断片をライゲートし、得られたライゲーション生成物を、制限酵素MluI及びHindIIIで予め消化したプラスミッドpTG7553に挿入した。
【0183】
下記のオリゴヌクレオチド:
【化35】
5' GATCTATCGA TGCGGCCGCG 3' SEQ ID NO:30
を下記のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせたもの
【化36】
5' CGCGCGCGGC CGCATCGATA 3' SEQ ID NO:31
(該ハイブリッド分子は、ClaI及びNotI部位を含むBamHI MluI「リンカー」を構成する)を加えて、ライゲートして発現ベクターpTG10031(図17)を与えた。
【0184】
プラスミッドpYeDP1/8−2から上で得たPCRにより増幅した断片を制限酵素ClaI及びSalIで消化し、次いで、予め同じ制限酵素で消化したプラスミッドpTG10031に導入してプラスミッドpTG10033(図18)を与えた。
【図面の簡単な説明】
【図1A】酵母FY1679中のA.thalianaライブラリーのスクリーニングにより得られたナイスタチン耐性のクローンF22から抽出した全ステロールのプロフィルを示す図である。205nm若しくは285nmでのRP−HPLCにより、トランスフォームしてない酵母FY1679と比較して、分析を行なう。
【図1B】酵母FY1679中のA.thalianaライブラリーのスクリーニングにより得られたナイスタチン耐性のクローンF22から抽出した全ステロールのプロフィルを示す図である。205nm若しくは285nmでのGCにより、トランスフォームしてない酵母FY1679と比較して、分析を行なう。
【図2】プラスミッドpF22のNotI断片の制限地図及び配列決定のストラテジーを示す図である。
【図3A】cDNAデルタ−7Redのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図である。
【図3B】cDNAデルタ−7Redのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図(続き)である。
【図3C】cDNAデルタ−7Redのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図(続き)である。
【図3D】cDNAデルタ−7Redのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図(続き)である。
【図3E】cDNAデルタ−7Redのヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1)及び対応するアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を示す図(続き)である。
【図4】誘導可能発現ベクター「デルタ−7/V8」でトランスフォームしたFY1679のミクロソーム画分のデルタ−5,7−ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性のイン・ビトロでの測定を示す図である。GCを用いて分析を行ない、内因性ステロール5,22ジエン3−オール(RT=16.682);エルゴステロール(RT=17.249);エルゴスタ5−エン3−オール(RT=17.664)の存在下での基質7−デヒドロコレステロール(RT=16.528)のコレステロール(RT=15.887)へのトランスフォームを示す。
【図5A】エルゴスタ5−エン3−オールの制限によるイン・ビトロでのプレグネノロンの生成(デルタ−7Redを発現するトランスフォームした酵母から精製し、次いで、P450 SCC、ADX及びADRとインキュベートする)を示す図である。コレステロールの対照制限と比較したGCにより分析を実施する。
【図5B】エルゴスタ5,24(28)ジエン3−オールの制限によるイン・ビトロでのプレグネノロンの生成(デルタ−7Redを発現するトランスフォームした酵母から精製し、次いで、P450 SCC、ADX及びADRとインキュベートする)を示す図である。コレステロールの対照制限と比較したGCにより分析を実施する。
【図5C】エルゴスタ5,22ジエン3−オールの制限によるイン・ビトロでのプレグネノロンの生成(デルタ−7Redを発現するトランスフォームした酵母から精製し、次いで、P450 SCC、ADX及びADRとインキュベートする)を示す図である。コレステロールの対照制限と比較したGCにより分析を実施する。
【図6A】デルタ−7Red(ステロールデルタ−7レダクターゼ)をコードするcDNAのインテグレーションを可能にするインテグレートプラスミッドpADデルタ−7の構築を示す図である。
【図6B】デルタ−7Red(ステロールデルタ−7レダクターゼ)をコードするcDNAのインテグレーションを可能にするインテグレートプラスミッドpADデルタ−7の構築を示す図(続き)である。
【図7】FY1679株及びインテグレートされたELR01株(ガラクトースの存在下で培養)のアルカリ鹸化により抽出した全ステロールのGCによる分析を示す図である。
【図8】多数クローニング部位に単一SalI(Sa)を含むシャトルベクターE.coli-S.cerevisiae V13の構築を示す図式表示である。
【図9A】ADR発現カセットのleu2とspl1デルタとの遺伝子間領域への挿入を可能にするインテグレートプラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築の段階を示す図である。MCS1及びMCS2: 多数クローニング部位
【図9B】ADR発現カセットのleu2とspl1デルタとの遺伝子間領域への挿入を可能にするインテグレートプラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築の段階を示す図(続き)である。MCS1及びMCS2: 多数クローニング部位
【図9C】ADR発現カセットのleu2とspl1デルタとの遺伝子間領域への挿入を可能にするインテグレートプラスミッドpCD62−1及びpCD62−2の構築の段階を示す図(続き)である。MCS1及びMCS2: 多数クローニング部位
【図10】CDR01株の構築ストラテジーを示す図である。
【図11A】2つの発現カセットADX及びP450 SCCを含む発現プラスミッドpCD63の構築の段階を示す図である。
【図11B】2つの発現カセットADX及びP450 SCCを含む発現プラスミッドpCD63の構築の段階を示す図(続き)である。
【図12A】ガラクトースにより9時間にわたって誘導した後に、細胞(細胞溶解物)又は培養培地(EC01/pCD63から単離)から抽出したステロールのGCによる分析を示す図である。
【図12B】ガラクトースにより24時間にわたって誘導した後に、細胞(細胞溶解物)又は培養培地(EC01/pCD63から単離)から抽出したステロールのGCによる分析を示す図である。
【図13】プラスミッドpTG7457の構造を示す図である。
【図14】プラスミッドpTG7453の構造を示す図である。
【図15】プラスミッドpTG10014の構造を示す図である。
【図16】プラスミッドpTG10004の構造を示す図である。
【図17】プラスミッドpTG10031の構造を示す図である。
【図18】プラスミッドpTG10033の構造を示す図である。
Claims (30)
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有し、且つSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有し、且つデルタ−7Redと呼ばれるA.thaliana蛋白質。
- 請求項1又は2に記載のDNA配列を含む宿主細胞における発現により得られるデルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質。
- A.thaliana蛋白質である請求項5の蛋白質。
- 宿主細胞が酵母又は糸状菌である、請求項5又は6に記載の蛋白質。
- 請求項3〜7の何れか1つに記載のデルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質に対する抗体。
- 請求項1又は2に記載の核酸を含む発現ベクター。
- 請求項9に記載のベクターによりトランスフォームされた宿主細胞。
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質をコードする核酸の微生物におけるクローニング方法であって、ナイスタチン耐性に基づく代謝干渉により行なわれるクローニング方法。
- 請求項11に規定した方法によって得られる請求項1又は2に記載の核酸。
- 請求項12に記載の核酸を含むベクターによりトランスフォームされた宿主細胞。
- 宿主が酵母又は糸状菌である、請求項10又は13に記載のトランスフォームされた宿主細胞。
- 請求項10、13又は14の何れか1つに記載のトランスフォームされた宿主細胞を培養して、発現された蛋白質を単離する、デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質の製造方法。
- 宿主細胞がトランスフォームされた酵母であり、該酵母において、コードDNA配列が酵母プロモーターの制御下に置かれている、請求項15に記載の方法。
- C−7位が不飽和のステロールのイン・ビトロでの還元方法であって、還元すべきステロールを請求項15又は16の方法で製造された蛋白質とインキュベートし、得られる還元されたステロールを単離する還元方法。
- C−7位が不飽和の外因性ステロールのイン・ビボでの還元方法であって、ステロールを、請求項10、13又は14の何れか1つに記載のトランスフォームされた宿主細胞とインキュベートし、得られる還元されたステロールを単離する還元方法。
- C−7位が不飽和の内因性ステロールのイン・ビボでの還元方法であって、請求項14に記載のトランスフォームされた宿主株を培養し、蓄積する還元されたステロールを単離する還元方法。
- 請求項17〜19の何れか1つに記載のイン・ビトロ又はイン・ビボでの還元方法であって、得られる還元されたステロールがコレステロールの側鎖の制限酵素(P450SCC)の基質である還元方法。
- 請求項20に記載のイン・ビボでの還元方法であって、還元すべき内因性ステロールがエルゴスタ5,7ジエン3−オール、エルゴスタ5,7,24(28)トリエン3−オール若しくはエルゴスタ5,7,22トリエン3−オール又はこれらの混合物である還元方法。
- プレグネノロンの製造方法であって、請求項14に記載のトランスフォームされた宿主細胞を培養し、蓄積した内因性ステロール又はC−7位が還元されたステロールを単離し、これらの還元されたステロールをP450SCCの存在下であるが、アドレノドキシンレダクターゼ(ADR)及び/又はアドレノドキシン(ADX)が存在してもしなくてもよい条件下で、インキュベートして得られるプレグネノロンを単離する製造方法。
- 宿主細胞が酵母である、請求項22に記載の方法。
- プレグネノロンの製造方法であって、デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質及びP450SCC活性を有する蛋白質、並びにADR活性及びADX活性の少なくとも1の活性を有する又は有さない蛋白質の同時発現を与える1つ以上の請求項9に記載のベクターによりトランスフォームされた酵母を培養し、遊離の若しくはエステル化したプレグネノロンを単離する製造方法。
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ、P450SCC、ADR及びADX活性を有する蛋白質を同時発現するトランスフォームされた酵母を培養する、請求項24に記載のプレグネノロンの製造方法。
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質がA.thalianaデルタ−7Red蛋白質である、請求項25に記載の方法。
- 酵母株が番号I−1538として寄託されたEC01/pCD63株である、請求項26に記載の方法。
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ、P450SCC、ADR及びADX活性を有する蛋白質を同時発現して、遊離の又はエステル化したプレグネノロンを蓄積するトランスフォームされた請求項13に記載の酵母株。
- デルタ−5,7ステロール,デルタ−7レダクターゼ活性を有する蛋白質がA.thalianaデルタ−7Red蛋白質である、請求項28に記載の酵母株。
- 番号I−1538として寄託されたEC01/pCD63と呼ばれる、請求項29に記載の酵母株。
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