JP4081936B2 - 通信装置、通信方法、および記録媒体 - Google Patents

通信装置、通信方法、および記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信装置および方法、並びに記録媒体に関し、特に、デジタル化されたデータを送受信することができるようにした通信装置および方法、並びに記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタル化されたオーディオデータまたはビデオデータを再生して利用するシステムにおいては、エンコード側でエンコードされたデータが、デコード側に供給され、そこでデコードされて、データが再生される。この場合、例えば、エンコード側およびデコード側のそれぞれにおいて参照可能なクロックが存在し、エンコード側において、そのクロックに同期して、エンコード処理などの処理が行われる。デコード側においても、そのクロックと同期して、デコード処理などの処理が行われる。このように両者の処理が、1つの(共通の)クロックと同期して行われることにより、エンコード側においてエンコードされたデータが、デコード側において適切にデコードされる。
【0003】
ところが、上述したような参照可能なクロックが存在せず、エンコード側およびデコード側において、それぞれ独立したシステムクロック(互いに同期していないクロック)に従って、各処理(エンコード側におけるエンコード処理、およびデコード側におけるデコード処理)が行われると、エンコード側から送信されるデータのレートと、デコード側でデコードされるデータのレートが異なるようになり、例えば、デコード側のバッファがオーバーフローしたり、アンダーフローしたりして、デコードされるべきデータが失われる。例えば、ビデオデータが失われると、そのビデオデータを含むフレームが表示されなくなる。
【0004】
そこで、エンコード側とデコード側がネットワークを介して接続される場合など、両者が参照可能なシステムクロックを設けることが困難であるとき、タイムスタンプが用いられ、両者のシステムクロックの同期が取られるようになされる。
【0005】
図1は、タイムスタンプを利用したデータ伝送システムの構成例を示している。エンコード側のエンコーダ1は、伝送すべきデータとしての、例えばビデオデータおよびオーディオデータをMPEG(Moving Picture Expert Group)-2方式に従ってエンコードし、システムエンコーダ2に出力する。システムエンコーダ2は、エンコーダ1から入力されたビデオデータとオーディオデータをそれぞれパケット化し、トランスポートストリームパケットを生成するとともに、必要に応じて他のトランスポートストリームと多重化して、ネットワーク3上に出力する。なお、この例の場合のように、ネットワーク3を介してデータが伝送される場合など、伝送中のデータにエラーが発生する可能性があるとき、データの形態としてトランスポートストリームが利用される。一方、例えば、蓄積メディアにデータを蓄積させてデータを授受する場合など、エラーが想定されていないシステムにおいては、プログラムストリームと称される他の形態が利用される。
【0006】
システムエンコーダ2はまた、生成したトランスポートストリームパケットのヘッダに、タイムスタンプであるPCR(Program Clock Reference)を、図2に示すように組み込む(以下、PCRがヘッダに組み込まれたトランスポートストリームパケットをPCRパケットと称する)。このPCRは、エンコード側から、トランスポートストリームパケットが出力されるタイミングでカウントされた、システムエンコーダ2におけるシステムクロックC1(MPEG−2方式の場合、周波数が27MHzのクロック)のカウント値である。PCRはまた、MPEG-2規格により、0.1秒間に少なくとも1つ、エンコード側から出力されるように、トランスポートストリームパケットに組み込まれる。なお、プログラムストリームに対応するタイムスタンプは、SCR(System Clock Reference)と称され、0.7秒間に少なくとも1つ出力されるように、プログラムストリームパケットに組み込まれる。
【0007】
図1に戻り、エンコード側から出力されたトランスポートストリームパケット(PCRパケットを含む)は、ネットワーク3を介して、デコード側に到着し、そのシステムデコーダ4に入力される。システムデコーダ4は、入力されたトランスポートストリームパケットをデパケット化し、その結果得られたオーディオストリームまたはビデオストリームを、デコーダ5に出力する。システムデコーダ4はまた、図2に示すように、PCRパケットからPCRを取り出し、そのPCRと、PCRを取り出したタイミングでカウントしたデコード側のシステムクロックC2(27MHzのクロック)のカウント値と比較し、その比較結果に基づいて、システムクロックC2の速度を調整し、デコーダ5に供給する。
【0008】
デコーダ5は、システムデコーダ4から供給されたオーディオデータまたはビデオデータを、システムデコーダ4から供給されたシステムクロックC2に同期して、デコード処理する。
【0009】
次に、デコード側におけるシステムクロックC2の生成(調整)処理を、図3と図4を参照してさらに説明する。システムデコーダ4は、図3に示すように構成されている。システムデコーダ4に供給されたトランスポートストリームパケットは、システムデコーダ4のシステムデコード部11およびタイムスタンプ取出回路12に供給される。
【0010】
タイムスタンプ取出回路12は、図2に示したように、PCRパケットに組み込まれたPCRを取り出し、PLL回路13に出力する。PLL回路13は、例えば図4に示すように構成されており、その減算器21には、タイムスタンプ取出回路12により取り出されたPCR、およびPCRが入力されたタイミングでカウントされたカウンタ24のカウント値(D/Aコンバータ兼VCO23から出力されるクロックのカウント値)が入力される。減算器21は、タイムスタンプ取出回路12からのPCRと、カウンタ24からのカウント値との差を算出し、ローパスフィルタ(以下、LPFと略称する)22に出力する。LPF22は、入力された減算器21からの演算結果を時間的に平滑し、D/Aコンバータ兼VCO(電圧制御発振器)23に出力する。D/Aコンバータ兼VCO23は、LPF22より入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号を制御電圧として、その制御電圧に対応する周波数のシステムクロックC2を発生する。D/Aコンバータ兼VCO23は、発生したシステムクロックC2をカウンタ24およびデコーダ5に出力する。
【0011】
カウンタ24は、D/Aコンバータ兼VCO23からのシステムクロックC2をカウントし、そのカウント値を、その時点におけるシステムクロックC2の周波数と位相を表す信号として、減算器21に供給する。すなわち、このPLL回路13において、トランスポートストリームパケットに組み込まれたPCRと、そのPCRが取り出されるタイミング(PCRパケットがデコード側に到着するタイミング)でカウントされたシステムクロックC2のカウント値の差がなくなるように、システムクロックC2の速度が調整される。その結果、エンコード側のシステムクロックC1と同期する、デコード側のシステムクロックC2が生成される。
【0012】
図3に戻り、システムデコード部11は、入力されたトランスポートストリームパケットをデパケット化し、その結果得られたオーディオストリームおよびビデオストリームを、デコーダ5に出力する。
【0013】
ところで、ネットワーク3として、衛星放送における伝送方法と同様に、衛星が利用されている場合、エンコード側から伝送されたトランスポートストリームパケットには、固定遅延が付加される。つまり、エンコード側から伝送されたトランスポートストリームパケットは、一定時間分だけ遅れて、または速まって、デコード側に到着する。この場合、遅れる時間または速まる時間は、一定であるので、トランスポートストリームパケット(PCRパケットを含む)のデコード側への到着間隔は、エンコード側からの出力間隔と同じとなる。そのため、この場合においては、図3と図4を参照して説明した方法を利用することで、デコード側のシステムクロックC2は、エンコード側のシステムクロックC1と同期するように生成される。
【0014】
なお、データに固定遅延が付加された場合の処理方法については、下記の文献においても報告されている。
(1)M. Perkins and P.Skelly,"A Hardware MPEG Clock Recovery Experiment in the Presence of ATM Jitter", ATM Forum contribution to the SAA sub−working group,94−0434,May 1994.
(2)G.Franceschini,"Extension of the Adaptive Clock Method to Variable Bit Rate Streams",ATM Forum contribution to the SAA sub-working group,94−0321,May 1994.
(3)ISO/IEC13818−1(MPEG−2 Systems),"GENERIC CODING OF MOVING PICTURES AND ASSOCIATED AUDIO", Recommendation H.222.0, ISO/IEC JTC/SC29/WG11NO721rev,June,1994.
【0015】
文献(1)は、ATM上で発生するジッタをシミュレーションしたデータに基づき、情報発生源のシステムクロックヘの同期を取るハードウェアについて開示している。文献(2)は、可変ビットレートに関する同期の取り方について開示している。また文献(3)はMPEG−2システムに関する国際標準のドラフトである。
【0016】
しかしながら、例えば、図5のデータ伝送システムのように、ATMネットワーク30を介してデータが伝送される場合、データはATMセル化される。ATMネットワーク30を構成するバッファ(図示せず)に、ATMネットワーク30上を伝送するATMセルが一時保持されること、また複数のノード(図示せず)から1つのノードにATMセルが送信されること(同一方向にATMセルが送信されること)より、ATMネットワーク30上で伝送されるATMセルには、遅延ゆらぎ(固定遅延とは異なり、遅延時間が一定ではない遅延)が付加される。遅延ゆらぎが付加されることにより、この例の場合、システム全体として、MPEG-2方式のジッタの許容範囲である+/-500nsを超える、1ms乃至2msのジッタが発生するおそれがある。このようなジッタが発生すると、ATMセルの、エンコード側からの出力間隔と、デコード側への到着間隔とが異なるようになり、デコード側において、エンコード側のシステムクロックC1と同期するシステムクロックC2が生成できなくなる。
【0017】
そこで、システムデコーダ4のPLL回路13を改良することより、データに付加された遅延ゆらぎをある程度吸収することも可能であるが、この場合、PLL回路13の構成が複雑になる。また、PLL回路13を改良したとしても、ATMネットワーク30上で付加される遅延ゆらぎのように、その大きさが大きい場合、それを完全に吸収することは困難である。
【0018】
図5のデータ伝送システムでは、図1のデータ伝送システムのエンコード側のシステムエンコーダ2とATMネットワーク30との間に、MPEG/ATM変換器31が設けられ、さらにデコード側のシステムデコーダ4とATMネットワーク30との間に、ATM/MPEG変換器32が設けられている。エンコード側のMPEG/ATM変換器31は、システムエンコーダ2からのトランスポートストリームパケットをATMセル化し、ATMネットワーク30上に出力する。デコード側のATM/MPEG変換器32には、ATMネットワーク30を介してエンコード側から伝送されてきた、遅延ゆらぎが付加されたATMセルが入力される。ATM/MPEG変換器32は、入力されたATMセルをトランスポートストリームパケット化し、システムデコーダ4に出力する。システムデコーダ4(PLL回路13)は、デコード側のシステムクロックC2を生成するが、デコード側に到着したATMセルには、遅延ゆらぎが付加されているので、生成されるシステムクロックC2は、エンコード側のシステムクロックC1と同期したものとはならない。つまり、この例の場合、データは適切にデコードされない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
このように、PLL回路を利用してデコード側のシステムクロックを生成する方法では、エンコード側から伝送されてきたデータに遅延ゆらぎが付加されると、エンコード側のシステムクロックと同期したデコード側のシステムクロックが生成できない。そこで、PLL回路を利用せずに、データに付加された遅延ゆらぎを吸収する各種方法が提案されている。以下に説明するアダプティブクロック法も、そのうちの1つの方法である。
【0020】
図6は、アダプティブクロック法を適用したデコード側の装置のアダプティブクロック部51の構成例を表している。なお、ネットワーク50を介して伝送されてくるデータには、遅延ゆらぎが付加されているものとする。
【0021】
ネットワーク50を介して伝送されてきた、遅延ゆらぎが付加されたデータは、アダプティブクロック部51のFIFO(First-In-First-Out memory)52に入力される。FIFO52は、入力されたデータを一時的に保持するとともに、制御部53から供給される所定の読み出しクロックに対応してデータを出力する。FIFO52はまた、自分自身のデータ占有率をLPF54に出力する。LPF54は、FIFO52のデータ占有率を示すデータを時間的に平滑し、それを制御部53に出力する。
【0022】
制御部53は、LPF54から供給されるデータ(平滑されたFIFO52のデータ占有率)が、所定の値になるように、FIFO52に出力する読み出しクロックの速度を制御する。すなわち、アダプティブクロック法においては、制御部53により制御されるこのクロックがデコード側のシステムクロックとなる。
【0023】
このように、アダプディブクロック法においては、受信されたデータのみに基づいて、デコード側のシステムクロックが生成されるので、装置の構成を簡単にすることができる。しかしながら、この場合においては、ジッタ成分をアナログ的にシェイビングしているだけなので、長い時間でみればジッタ成分は残っており、例えば、1ms乃至2msのジッタは、40μs程度にしか低減されず、MPEG-2規格の+/-500nsを満たすことができない課題があった。
【0024】
また、従来の伝送方式では、1プログラム(1番組)の伝送が想定されているので、伝送されるデータは、同じタイムベースでエンコードされている。そのため、同期を取るクロックは1つでよかったが、異なるタイムベースでエンコードされたデータが多重化されたマルチプログラムのストリームに対しては、プログラムの数だけ同期させるPLL及びクロックが必要となり、そのため、装置の構成が複雑になるという課題があった。
【0025】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、遅延ゆらぎを、容易に、かつ、確実に吸収し、また装置を複雑、かつ、大型化することなく、複数のプログラムに対応するデータを送受信することができるようにするものである。
【0032】
【課題を解決するための手段】
請求項に記載の通信装置は、送信装置から送信されてきたパケットを受信する受信手段と、送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成したクロックをカウントするカウント手段と、受信手段により、パケットが受信されたときの、カウント手段によりカウントされたクロックの値を抽出する抽出手段と、受信手段により受信されたパケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出手段と、第1の検出手段により検出されたパケットに含まれるタイムスタンプから、到着間隔および同期残差を検出する第2の検出手段と、第2の検出手段により検出された到着間隔および同期残差、並びに抽出手段により抽出されたクロックの値に基づいて、タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算手段と、修正値計算手段により計算された修正値に基づいて、タイムスタンプを修正する修正手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
修正値計算手段には、抽出手段により抽出された、第1の検出手段により、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれる第1のパケットが検出されたときの、カウント手段によりカウントされたクロックの値と、第1のパケットに含まれるタイムスタンプの値とのオフセット値を計算させ、計算したオフセット値と、クロックの値に基づいて、基準クロック値を計算させ、計算したオフセット値、計算した基準クロック値、および抽出手段により抽出された、第1の検出手段により、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれる第2のパケットが検出されたときの、カウント手段によりカウントされたクロックの値に基づいて、第2のパケットに含まれるタイムスタンプの値の推測値を計算させ、計算した推測値、並びに第1のパケットに含まれる到着間隔および同期残差に基づいて、第2のパケットに含まれるタイムスタンプの修正値を算出させることができる。
【0034】
修正値計算手段により計算された、オフセット値、および計算された修正値を、第1のパケットおよび第2のパケットから構成されるプログラムに対応させて記憶する記憶手段をさらに設けることができる。
【0035】
請求項に記載の通信方法は、送信装置から送信されてきたパケットを受信する受信ステップと、送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成したクロックをカウントするカウントステップと、受信ステップの処理で、パケットが受信されたときの、カウントステップでカウントされたクロックの値を抽出する抽出ステップと、受信ステップの処理で受信されたパケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出ステップと、第1の検出ステップの処理で検出されたパケットに含まれるタイムスタンプから、到着間隔および同期残差を検出する第2の検出ステップと、第2の検出ステップの処理で検出された到着間隔および同期残差、並びに抽出ステップの処理で抽出されたクロックの値に基づいて、タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算ステップと、修正値計算ステップの処理で計算された修正値に基づいて、タイムスタンプを修正する修正ステップとを含むことを特徴とする。
【0036】
請求項に記載の記録媒体は、送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成したクロックをカウントするカウントステップと、送信装置から送信されてきたパケットが検出されたときの、カウントステップでカウントされたクロックの値を抽出する抽出ステップと、送信装置から送信されてきたパケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出ステップと、第1の検出ステップの処理で検出されたパケットに含まれるタイムスタンプから、到着間隔および同期残差を検出する第2の検出ステップと、第2の検出ステップの処理で検出された到着間隔および同期残差、並びに抽出ステップの処理で抽出されたクロックの値に基づいて、タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算ステップと、修正値計算ステップの処理で計算された修正値に基づいて、タイムスタンプを修正する修正ステップとを含むことを特徴とする。
【0037】
請求項に記載の通信装置、請求項に記載の通信方法、および請求項に記載の記録媒体においては、送信装置と共有するクロックに同期したクロックが生成され、生成されたクロックがカウントされ、送信装置から送信されてきたパケットが検出されたときの、カウントされたクロックの値が抽出され、送信装置から送信されてきたパケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットが検出され、検出されたパケットに含まれるタイムスタンプから、到着間隔および同期残差が検出され、検出された到着間隔および同期残差、並びに抽出されたクロックの値に基づいて、タイムスタンプの修正値が計算され、計算された修正値に基づいて、タイムスタンプが修正される。
【0038】
【発明の実施の形態】
図7は、本発明を適用したデータ伝送システムの構成例を表している。送信装置101には、図示せぬエンコーダでエンコードされた複数のプログラム、図示せぬシステムエンコーダで多重化されたトランスポートストリームパケットMPEG−TSが入力される(例えば、図1に示すシステムエンコーダ2の出力が送信装置101に入力される)。このトランスポートストリームパケットMPEG−TSには、MPEG-2規格により、0.1秒間に少なくとも1つのPCRがATMネットワーク102上に出力されるように、PCRパケットPが含まれている。
【0039】
送信装置101は、ATMネットワーク102のネットワーククロックN(8KHz)と同期するクロックS(27MHz)を生成してそれをカウントするとともに、PCRパケットPが、システムエンコーダから入力(到着)したときのそのカウント値(NCOUNT)、およびPCRパケットPのPCR(以下、EPCRと称する)に基づいて、後述する同期情報を算出し、PCRパケットPに挿入する。送信装置101はまた、同期情報を挿入したPCRパケットPおよびその他のトランスポートストリームパケットMPEG−TSをATMセルに変換し、ATMネットワーク102上に出力する。
【0040】
ATMネットワーク102は、ネットワーククロックNを有し、そのネットワーククロックNに同期して、各種の処理(例えば、ATMセル伝送処理)を実行する。ATMネットワーク102上を伝送されるATMセルには、遅延ゆらぎが付加される。
【0041】
受信装置103には、ATMネットワーク102を介して送信装置101から伝送されてきた、遅延ゆらぎが付加されたATMセルが入力される。受信装置103は、入力されたATMセルをトランスポートストリームパケットMPEG−TSに変換する。受信装置103はまた、ATMネットワーク102のネットワーククロックNと同期するクロックR(27MHz)を生成してそれをカウントするとともに、PCRパケットPが入力(到着)したとき(正確には、受信装置103のPCRパケット検出部304(図17)によりPCRパケットPが検出されたとき)のカウント値(以下、RNCOUNTと称する)、およびPCRパケットPに挿入された同期情報に基づいて、PCRパケットPのPCR(EPCR)を修正する。EPCRが修正されたPCRパケットPおよびその他のトランスポートストリームパケットMPEG−TSは、図示せぬシステムデコーダに出力される(例えば、図1に示すシステムデコーダ4に出力される)。
【0042】
図8は、送信装置101の構成例を表している。SYNC_BYTE検出部201には、送信装置101に到着したトランスポートストリームパケットMPEG−TSが入力される。
【0043】
SYNC_BYTE検出部201は、入力されるトランスポートストリームパケットMPEG−TSの先頭を検出し、フレーム同期を確立するとともに、フレーム同期を確立した後、トランスポートストリームパケットMPEG−TSを、PCRパケット検出部202およびRTS/PAT算出部203に出力する。
【0044】
図9は、PCRパケットPのデータ構成を示しているが、他のトランスポートストリームパケットMPEG−TS(PCRパケットP以外のトランスポートストリームパケットMPEG−TS)も、図9に示すように、ヘッダ部、アダプテーションフィールド部、およびペイロード部からなる、188バイトの固定パケットであり、そのヘッダ部には、sync_byte(”0x47h”)(8バイト)が設定されている。SYNC_BYTE検出部201は、トランスポートストリームパケットMPEG−TSのヘッダ部に設定されているこのsync_byteを検出することで、トランスポートストリームパケットMPEG−TSの先頭を検出(決定)し、トランスポートストリームパケットMPEG−TSのフレーム同期を確立する。
【0045】
PCRパケット検出部202は、SYNC_BYTE検出部201からのトランスポートストリームパケットMPEG−TSのヘッダ部またはアダプテーションフィールド部を参照して、そのトランスポートストリームパケットMPEG−TSがPCRパケットPであるか否かを判定し、PCRパケットPであると判定した場合(PCRパケットPを検出した場合)、PCRパケット検出信号Dpを、RTS/PAT算出部203およびカウンタ208に出力する。
【0046】
PCRパケットPのヘッダ部およびアダプテーションフィールド部には、図9に示すように、MPEG-2規格に準拠した所定のデータ(以下、このデータをPCRパケット条件と称する)が設定されており、PCRパケット検出部202は、このPCRパケット条件から、そのパケットがPCRパケットPであるか否かを判定する。PCRパケット条件とは、図9を参照して説明するadaptation_field_control(2ビット)、PCR _ flag(1ビット)、またはPCRパケットPの専用のPID(Packet Identification)(13ビット)である。
【0047】
PCRパケットPのヘッダ部は、sync_byte(8ビット)の他、transport_error_indicator(1ビット)、payload_unit_start_indicator(1ビット)、transport_priority(1ビット)、PID(13ビット)、transport_scrambling_control(2ビット)、adaptation_field_control(2ビット)、continuity_counter(4ビット)の各ビットが含まれており、そのadaptation_field_controlには”10”または”11”が設定されている。
【0048】
また、PCRパケットPのアダプテーションフィールド部は、adaptation _ field _ length(8ビット)、discontinuity_indicator(1ビット)、random_ access_indicator(1ビット)、elementary_stream_priority_indicator (1ビット)、PCR_flag、OPCR_flag(1ビット)、splicing_point_flag(1ビット)、transport_private_date_flag(1ビット)、adaptation_field_extension_flag(1ビット)、program_clock_reference_base(33ビット)、reserved(6ビット)、およびprogram_clock_reference_extension(9ビット)の各ビットが含まれており、そのadaptation _ field _ lengthには、”0”以上の値が設定され、そしてPCR_flagには”1”が設定されている。
【0049】
図8に戻り、RTS/PAT算出部203には、SYNC_BYTE検出部201から、トランスポートストリームパケットMPEG−TSが、PCRパケット検出部202から、PCRパケット検出信号Dpが、そしてカウンタ208から、カウント値(NCOUNT)が、それぞれ入力される。RTS/PAT算出部203は、PCRパケット検出信号Dpにより特定されるトランスポートストリームパケットMPEG−TS、すなわち、PCRパケットPからPCR(EPCR)を読み出し、そのEPCRおよびカウンタ208から入力されたNCOUNTに基づいて、同期情報としてのRTSおよびPATを算出し、RTS/PAT挿入部204に出力する。これらの詳細については、図13を参照して後述するが、PATは、2つのPCRパケットPの間隔を、PLL回路207が出力するクロックSの数で表した値であり、RTSは、2つのPCRパケットPの間隔における、システムエンコーダのシステムクロックとクロックSのずれを表す。
【0050】
なお、PCRは、図9に示すように、PCRパケットPのアダプテーションフィールド部のprogram_clock_reference_baseの値(ベースカウント値)(33ビット)およびprogram_clock_reference_extensionの値(拡張カウント値)(9ビット)の組み合わせにより示される。program_clock_reference_baseには、PCRパケットP毎に、0乃至299のベースカウント値が順に設定され(カウントされ)、ベースカウント値が299から0の値に戻る(リセット)されるタイミングで、拡張カウント値が1だけインクリメントされる。すなわち、program_clock_reference_baseおよびprogram_clock_reference_extensionの合計42ビットにより、MPEG-2方式における27MHzのシステムクロックを単位として、24時間分の時間がカウントされる。
【0051】
RTS/PAT挿入部204は、RTS/PAT算出部203から入力された同期情報を、図9に示すように、PCRパケットPのペイロード部に挿入し、MPEG/ATM変換部205に出力する。通常、PCRパケットPは、専用のPID(13ビット)が付されて伝送されることが多く、この場合、そのペイロード部には、オーディオデータやビデオデータが格納されておらず、スタッフィングバイトが格納されている。
【0052】
MPEG/ATM変換部205は、トランスポートストリームパケットMPEG−TSをALL(ATM Adaptation Layer)5にマッピングして、ATMセルを生成する。具体的には、図10(A)に示すように、RTS/PAT挿入部204から入力される、2つのトランスポートストリームパケットMPEG−TSからCPCS (Common Part Convergence Sublayer)ペイロードが生成され、さらにそれにAAL5のCS(Convergence Sublayer)で規定されるCPCSトレイラが付加されて、CPCS-PDU(Protocol Data Unit)が生成される(図10(B))。
【0053】
CPCS-PDUは、図10(C)に示すように、8つのSAR(Segmentation and Reassembly)-PDU(48バイト)に分割される。そしてSAR-PDUは、図10(D)に示すように、ATMレイヤにおいて、5バイトのATMヘッダが付加され、53バイトのATMセルに変換される。このようにして生成されたATMセルは、ATMセル送受信部206に出力される。
【0054】
ATMセル送受信部206は、MPEG/ATM変換部205から入力されたATMセルを、ATMネットワーク102上に出力する。ATMセル送受信部206はまた、ATMネットワーク102から順次送信されてくるATMセルを受信し、受信したATMセルに基づいてATMネットワーク102のネットワーククロックNに同期した8KHzのクロックを生成し、PLL回路207に出力する。PLL回路207は、ATMセル送受信部206からの8KHzのクロックから、そのクロックと同期する27MHzのクロックSを再生する。
【0055】
PLL回路207は、図11に示すような構成を有しており、そのVCO251は、位相比較部252から供給される比較結果(位相誤差)に基づいて27MHzのクロックSを発生し、カウンタ208および分周器253に出力する。分周器253は、VCO251から入力されたクロックSを、1/3375に分周して8KHzのクロックを生成し、位相比較部252に出力する。位相比較部252は、ATMセル送受信部206からの8KHzのクロックの位相と、分周器253からの8KHzのクロックの位相を比較し、その比較結果をVCO251に出力する。
【0056】
このように、クロックSは、ネットワーククロックNと同期するように、その位相が調整される。
【0057】
再び図8に戻り、カウンタ208は、PLL回路207からのクロックS(27MHz)をカウントするとともに、PCRパケット検出部202から、PCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウント値(NCOUNT)を、RTS/PAT算出部203に出力する。
【0058】
メモリ209は、RTS/PAT算出部203から供給される、同期情報を算出する上において必要なデータを適宜記憶する。なお、この例の場合、RTS/PAT算出部203による同期情報算出処理は、プログラム毎(トランスポートストリームパケットMPEG−TSに設定されたPID毎)に行われるので、メモリ209は、RTS/PAT算出部203から供給されるこのデータを各プログラム毎に記憶する。
【0059】
次に、送信装置101における同期情報挿入処理を、図12のフローチャートを参照して説明する。なお、この処理は、トランスポートストリームパケットMPEG−TSに設定されたPID毎(最大8192個のプログラム分のPID毎)に実行されるが、この例の場合、1つのPIDに対応して実行される同時情報挿入処理を例として説明する。
【0060】
SYNC_BYTE検出部201により、トランスポートストリームパケットMPEG−TSのフレーム同期が確立された状態において、ステップS21で、RTS/PAT算出部203は、PCRパケット検出部202から、フレーム同期確立後、送信装置101に最初に到着したPCRパケットP1が検出されたときのPCRパケット検出信号Dpが、そしてカウンタ208から、NCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウンタ208のカウント値)が入力されるまで待機する。なお、ステップS21での待機中、RTS/PAT算出部203には、SYNC_BYTE検出部201から、トランスポートストリームパケットMPEG−TSが随時入力されるが、RTS/PAT算出部203は、入力されるこのトランスポートストリームパケットMPEG−TSを、そのままRTS/PAT挿入部204に出力する。また、PLL回路207は、ATMセル送受信部206を介してATMネットワーク102からネットワーククロックNの供給を受け、これに同期したクロックSを生成し、カウンタ208に出力しており、カウンタ208は、これをカウントしている。
【0061】
ステップS21において、PCRパケット検出部202から、PCRパケットP1が検出されたとき(時刻t1)のPCRパケット検出信号Dpが入力され、そしてカウンタ208から、NCOUNT1(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたとき(時刻t1)のカウンタ208のカウント値)が入力されたとき、ステップS22に進み、RTS/PAT算出部203は、ステップS21でPCRパケット検出部202から入力されたPCRパケット検出信号Dpで特定されるトランスポートストリームパケットMPEG−TS(PCRパケットP1)のPCR(EPCR1)を検出する。
【0062】
次に、ステップS23において、RTS/PAT算出部203は、ステップS21でカウンタ208から入力されたNCOUNT1およびステップS22で検出したEPCR1を、次に示す式(1)に代入し、オフセット値(以下、RTS/PAT算出部203により算出されるオフセット値をOFFSETと称する)を算出する。
OFFSET=EPCR1−NCOUNT1・・・(1)
【0063】
ステップS24において、RTS/PAT算出部203は、ステップS22で検出したEPCR1をNPCR1として、ステップS23で算出したOFFSETとともにメモリ209に記憶させる。次に、ステップS25で、RTS/PAT算出部203は、PCRパケット検出部202から、PCRパケットP1の次に送信装置101に到着するPCRパケットP2が検出されたときのPCRパケット検出信号Dpが、そしてカウンタ208から、NCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウンタ208のカウント値)が入力されるまで待機する。
【0064】
ステップS25において、PCRパケット検出部202から、PCRパケットP2が検出されたとき(時刻t2)のPCRパケット検出信号Dpが入力され、そしてカウンタ208から、NCOUNT2(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたとき(時刻t2)のカウンタ208のカウント値)が入力されたと判定されたとき、ステップS26に進み、RTS/PAT算出部203は、PCRパケット検出部202から入力されたPCRパケット検出信号Dpにより特定されるPCRパケットP2のEPCR2を検出する。
【0065】
次に、ステップS27において、RTS/PAT算出部203は、同期情報、つまり、RTSおよびPATを算出する。この同期情報算出処理を、図13(A)を参照して説明する。図13(A)は、カウンタ208によるカウント値(ネットワーククロックNと同期するクロックSがカウントされたカウント値)を横軸にとり、その横軸上に、NCOUNT1(時刻t1でのカウント値(ステップS21))、EPCR1(ステップS22)、NCOUNT2(時刻t2でのカウント値(ステップS25))、およびEPCR2(ステップS26)の他、同期情報を算出する上において必要なデータ(OFFSET、NPCRなど)を示したものである。
【0066】
RTS/PAT算出部203は、次に示す式(2)に従って、NCOUNT2に、メモリ209に記憶されているOFFSETを加算して、NPCR2を算出する。図13(A)の例では、NPCR2は、NCOUNT2よりOFFSET分だけ右側方向に離れた位置に示されている。
NPCR2=NCOUNT2+OFFSET・・・(2)
なお、NCOUNT1およびNCOUNT2にOFFSETを加算し、NPCR1およびNPCR2を算出したのは、カウンタ208でカウントされたNCOUNT1およびNCOUNT2、すなわち、ネットワーククロックNと同期するクロックSのカウント値を、EPCRの時間軸に対応させるためである。
【0067】
RTS/PAT算出部203は、メモリ209に記憶されているNPCR1を参照点Bとして、算出したNPCR2とともに、次の式(3)に代入して、PAT(以下、RTS/PAT算出部203により算出されるPATをEPATと称する)1を算出する(図13)。
EPAT1=NPCR2−参照点B(=NPCR1)・・・(3)
すなわち、EPAT1は、PCRパケットP1とPCRパケットP2の送信装置101への到着間隔の間でカウントされるクロックSのクロック数を示している。
【0068】
次に、RTS/PAT算出部203は、EPCR1、EPCR2、およびEPAT1を、次の式(4)に代入して、RTS1を算出する。
RTS1=(EPCR2−EPCR1)−EPAT1・・・(4)
EPCR1とEPCR2の差は、PCRパケットP1とPCRパケットP2のシステムエンコーダからの出力間隔(実質的に、送信装置101への到着間隔と同じ間隔)の間でカウントされるシステムエンコーダのシステムクロックのクロック数を示す。つまり、RTSは、送信装置101へのPCRパケットP1とPCRパケットP2の到着間隔の間にカウントされる、システムエンコーダのシステムクロックの数(EPCR2−EPCR1)とクロックSのクロック数(EPAT1)の差であり、その間の両者のずれに対応する。
【0069】
このように、RTS1およびEPAT1が算出されると、ステップS28において、RTS/PAT算出部203は、ステップS27で算出したRTS1およびEPAT1をRTS/PAT挿入部204に出力する。RTS/PAT挿入部204は、RTS/PAT算出部203から入力されたRTS1およびEPAT1を、図9に示したように、PCRパケットP1のペイロード部に同期情報として挿入する。なお、図9には、ペイロード部にオーディオデータまたはビデオデータが格納されていない場合が示されているが、ペイロード部にデータが格納されている場合であっても、そのデータの後に同期情報を挿入することができる。ペイロード部に格納されているデータの長さは、ヘッダ部に示されているので、データの後に同期情報が挿入されても、そのヘッダ部に示すデータの長さから、同期情報が挿入されている位置を検出することができ、同期情報を読み出することが可能となる。
【0070】
次に、ステップS29において、RTS/PAT算出部203は、次の式(5)に従って、ステップS23で算出したOFFSETに、ステップS27で算出したRTS1を加算し、新しいOFFSETを算出する(図13)。
新しいOFFSET=OFFSET+RTS1・・・(5)
【0071】
さらに、ステップS30において、RTS/PAT算出部203は、次の式(6)に従って、ステップS25で入力されたNCOUNT2に、ステップS29で算出した新しいOFFSETを加算し、新しい参照点Bを算出する。
新しい参照点B=NCOUNT2+新しいOFFSET・・・(6)
【0072】
ステップS31において、RTS/PAT算出部203は、ステップS26で検出したEPCR2、ステップS29で算出した新しいOFFSET、およびステップS30で算出した新しい参照点Bをメモリ209に上書きする。すなわち、この場合、ステップS24で記憶されたEPCR1に代えてEPCR2が、ステップS24で記憶されたEPCR1(参照点B)に代えて新しい参照点Bが、およびステップS24で記憶されたOFFSETに代えて新しいOFFSETが記憶される。
【0073】
その後、ステップS25に戻り、RTS/PAT算出部203は、例えば、図14(A)に示すように、PCRパケットP2の後のPCRパケットP3またはPCRパケットP4が送信装置101に到着すると、ステップS25乃至ステップS31における処理を実行する。これにより、PCRパケットP2にEPAT2およびRTS2が挿入され、PCRパケットP3にEPAT3およびRTS3が挿入される。以下に、PCRパケットP2の次のPCRパケットP3が送信装置101に到着した場合の処理を、簡単に説明する。
【0074】
PCRパケットP3が送信装置101に到着すると(PCRパケット検出部202により検出されると)(ステップS25)、PCRパケットP3のEPCR3が検出され(ステップS26)、RTS2およびEPAT2が算出される(ステップS27)。具体的には、メモリ209から参照点B、OFFSETおよびEPCR2が読み出され、カウンタ208から入力されたNCOUNT3に、メモリ209から読み出されたOFFSETが加算されて、NPCR3が算出される(式(2))。また、算出されたNPCR3から、メモリ209より読み出された参照点Bが減算されて、EPAT2が算出される(式(3))。次に、検出されたEPCR3から、メモリ209より読み出されたEPCR2が減算され、その減算結果からさらに算出されたEPAT2が減算されて、RTS2が算出される(式(4))。
【0075】
このようにして算出されたRTS2およびEPAT2は、RTS/PAT挿入部204に出力され、そこでPCRパケットP2に挿入される(ステップS28)。次に、OFFSETにRTS2が加算され、新しいOFFSETが算出され(式(5))(ステップS29)、NCOUNT3に、算出された新しいOFFSETが加算され、新しい参照点Bが算出される(式(6))(ステップS30)。そして、算出された新しい参照点Bおよび新しいOFFSETは、検出されたEPCR3とともにメモリ209に上書きされる(ステップS31)。
【0076】
以上のようにして、システムエンコーダにおけるシステムクロック(PCR)と、送信装置101におけるクロックSの間の同期情報が算出され、PCRパケットPに挿入される。同期情報が挿入されたPCRパケットPは、MPEG/ATM変換部205に供給され、そこで、ATMセルに変換され、ATMセル送受信部206を介して、送信装置101への到着間隔(EPAT)が保持される状態で受信装置103に伝送される。
【0077】
なお、以上の処理においてメモリ209に記憶される各種データは、プログラム毎に記憶される。
【0078】
次に、同期情報の情報量について説明する。MPEG-2規格によれば、システムクロックとして用いられる27MHzのクロック(例えば、システムエンコーダのシステムクロックや送信装置101のクロックS)には、それぞれ+/-30ppm(parts per million )の偏差が許容されている。すなわち、システムエンコーダのクロックおよびクロックSの周波数は、(27MHz−810(=27×106×30×10-6)Hz)乃至(27MHz+810Hz)の範囲で変動する。
【0079】
つまり、両者の周波数のずれは、図15に示すように、システムエンコーダのシステムクロックの周波数が27MHz+810Hz(図15(A))で、かつ、クロックSの周波数が27MHz−810Hz(図15(C))であるとき、また逆に、図16に示すように、システムエンコーダのシステムクロックの周波数が27MHz−810Hz(図16(A))で、かつ、クロックSの周波数が27MHz+810Hzであるとき(図16(C))に最大となる。
【0080】
そこで、図15の場合における各クロックの1秒間にカウントされるクロック数を求めると、想定する真の27 MHzの場合、27×106個であるのに対して、図15(A)のシステムエンコーダの場合は、(27×106+810)個となり、図15(C)のクロックSの場合は、(27×106−810)個となる。また、同様に図16の場合における各クロックの1秒間にカウントされるクロック数を求めると、図16(A)のシステムエンコーダのシステムクロック場合、(27×106−810)個となり、図16(C)のクロックSの場合、(27×106+810)個となる。すなわち、両者の周波数が最大となるときの、1秒間でカウントされるクロック数は、1620個となる。
(27×106+810)−(27×106−810)=1620
【0081】
ところで、同期情報の1つであるRTSも、図13(A)に示したように、システムエンコーダのシステムクロックとクロックSのずれ(PCRパケットPの送信装置101への到着間隔の間でカウントされるクロック数の差)を示すものであるが、RTSは、クロックSのカウント値(NCOUNT)をPCRの時間軸に対応させることで算出されている。すなわち、RTSの最大値も、PCRの時間軸に対応させて求める必要がある。また、PCRは、0.1秒間に1つ以上の割合で、トランスポートストリームパケットMPEG−TSに組み込まれているので、RTSは、最大0.1秒間のずれ(0.1秒間にカウントされるクロック数の差)を示すことができる必要がある。つまり、RTSは、図15の状態のとき、プラス側で最大となり、その値は、下記に示すように、162.00486となる。
((1+30ppm)/(1-30ppm)-1)×27MHz×0.1s=162.00486
【0082】
上記式は、図15(C)のクロックSの周期(1/(27MHz−810Hz))(時間)を、図15(A)のシステムエンコーダのシステムクロックの周期(1/(27MHz+810Hz))で正規化し(PCRの時間軸に対応させ)、正規化されたそのクロックSの時間(PCRの時間軸に対応するクロックSの時間)と、PCRの時間(1単位)との差を求め、求めたその差に基づいて、0.1秒間に発生する両者のクロックのずれをクロック数で示したものである。
【0083】
一方、図16の状態のとき、RTSは、マイナス側で最大となり、その値は、下記に示すように、-161.99514となる。
((1-30ppm)/(1+30ppm)-1)×27MHz×0.1s=-161.9951
すなわち、以上のことから、RTSは、下記に示す範囲の値を取り得る。
-162<=RTS=<162
【0084】
このことより、RTSを表すには、9ビットが必要となるが(バイト単位で容量を確保するものとすると、2バイトが必要となるが)、1ビット分削除し、8ビットで示しても、+/-1クロック分の誤差が発生するだけで、MPEG-2方式のジッタの規格を越えない。MPEG-2方式におけるジッタの規格は、+/-500nsであり、それをクロック数に変換すると、+/-13.5(=+/-500nsec×27MHz)クロックである。すなわち、+/-1クロック分の誤差は、その範囲内であり、結局、この例の場合、RTSは、8ビット(1バイト(-127乃至127))で示される。
【0085】
一方、EPATは、3バイト分で示される。すなわち、この例の場合、同期情報(RTSおよびEPAT)は、合計4バイトで示される。
【0086】
図17は、受信装置103の構成例を表している。ATMセル受信部301は、ATMネットワーク102を介して、送信装置101から伝送されてきたATMセル(図10(D))を受信し、ATM/MPEG変換部302に出力する。ATMセル受信部301はまた、ATMネットワーク102から順次送信されてくるATMセルを受信し、受信したATMセルに基づいてATMネットワーク102のネットワーククロックNに同期した8KHzのクロックを生成し、PLL回路308に出力する。
【0087】
ATM/MPEG変換部302は、ATMセル受信部301から入力されるATMセルをトランスポートストリームパケットMPEG−TSに変換し、SYNC_BYTE検出部303に出力する。
【0088】
SYNC_BYTE検出部303は、図8の送信装置101のSYNC_BYTE検出部201と同様に、ATM/MPEG変換部302からのトランスポートストリームパケットMPEG−TSに設定された同期バイトを利用して、トランスポートストリームパケットMPEG−TSのフレーム同期を確立し、フレーム同期を確立したトランスポートストリームパケットMPEG−TSを、PCRパケット検出部304およびMPCR算出部305に出力する。
【0089】
PCRパケット検出部304は、図8の送信装置101のPCRパケット検出部202と同様に、SYNC_BYTE検出部303から入力されたトランスポートストリームパケットMPEG−TSのヘッダ部およびアダプテーションフィールド部を参照し、PCRパケット条件が設定されているか否かを判定し、PCRパケット条件が設定されていると判定した場合(PCRパケットPを検出した場合)、PCRパケット検出信号DpをMPCR算出部305およびカウンタ309に出力する。
【0090】
MPCR算出部305には、SYNC_BYTE検出部303から、トランスポートストリームパケットMPEG−TSが、PCRパケット検出部304から、PCRパケット検出信号Dpが、そしてカウンタ309から、カウント値(以下、RNCOUNTと称する)が、それぞれ入力される。MPCR算出部305は、PCRパケット検出部304からのPCRパケット検出信号Dpにより特定されるPCRパケットPから同期情報を読み出し、その同期情報およびカウンタ309から入力されるRNCOUNTに基づいて、MPCRを算出し、PCR修正部306に出力する。
【0091】
PCR修正部306は、MPCR算出部305から入力されるPCRパケットPのPCR(EPCR)を、MPCR算出部305から入力されるMPCRに置き換え(修正し)、図示せぬシステムデコーダに出力する。
【0092】
メモリ307は、MPCR算出部305から供給される、MPCRを算出する上において必要な各種データを適宜記憶する。なお、この例の場合、MPCR算出部305によるMPCR算出処理は、プログラム毎(トランスポートストリームパケットMPEG−TSに設定されたPID毎)に行われるので、メモリ307は、MPCR算出部305から供給されるデータを各プログラム毎に記憶する。
【0093】
PLL回路308は、図8の送信装置101のPLL回路207と同様に、図11に示すような構成を有しており、ATMセル受信部301から供給された、ATMネットワーク102のネットワーククロックNに同期した8KHzのクロックから、それに同期する27MHzのクロックRを生成し、カウンタ309に出力する。
【0094】
カウンタ309は、PLL回路308からの27MHzのクロックRをカウントするとともに、PCRパケット検出部304から、PCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウント値(RNCOUNT)をMPCR算出部305に出力する。
【0095】
次に、受信装置103におけるPCR修正処理を、図18のフローチャートを参照して説明する。なお、この処理は、トランスポートストリームパケットMPEG−TSに設定されたPID毎(最大8192個のプログラム分のPID毎)に実行されるが、この例の場合、1つのPIDに対応して実行されるPCR修正処理を例として説明する。
【0096】
PLL回路308は、ATMセル受信部301を介してATMネットワーク102から入力されるネットワーククロックNに同期したクロックRを生成し、カウンタ309に入力する。カウンタ309は、クロックRをカウントしている。ATMセル受信部301により受信されたATMセルが、ATM/MPEG変換部302に入力され、そこでトランスポートストリームパケットMPEG−TSに変換され、そしてそのトランスポートストリームパケットMPEG−TSのフレーム同期がSYNC_BYTE検出部303により確立されている状態において、ステップS41において、MPCR算出部305は、PCRパケット検出部304から、フレーム同期確立後、受信装置103に到着した最初のPCRパケットPが検出されたときのPCRパケット検出信号Dpが、そしてカウンタ309から、RNCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウンタ309のカウント値)が入力されるまで待機する。なお、ステップS41での待機中、MPCR算出部305には、SYNC_BYTE検出部303から、トランスポートストリームパケットMPEG−TSが随時入力されるが、MPCR算出部305は、入力されるこのトランスポートストリームパケットMPEG−TSを、そのままPCR修正部306に出力する。
【0097】
ステップS41において、PCRパケット検出部304から、フレーム同期確立後、受信装置103に到着した最初のPCRパケットPが検出されたとき(時刻t11)のPCRパケット検出信号Dpが入力され、そしてカウンタ309から、RNCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたと判定されたとき(時刻t11)のカウンタ309のカウント値)が入力されたとき、ステップS42に進み、MPCR算出部305は、PCRパケット検出信号DPにより特定されるトランスポートストリームパケットMPEG−TS(PCRパケットP)のEPCRを検出する。
【0098】
次に、ステップS43において、MPCR算出部305は、ステップS41でカウンタ309から入力されたRNCOUNT、およびステップS42で検出したEPCRをRPCR1として、次の式(7)に代入し、オフセット値(以下、MPCR算出部305により算出されるオフセット値をROFFSETと称する)を算出する。
ROFFSET=RPCR1−RNCOUNT・・(7)
【0099】
ステップS44において、MPCR算出部305は、RPCR1(=ステップS42で検出されたEPCR)を、MPCR1として、ステップS43で算出したROFFSETとともにメモリ307に記憶させる。次に、ステップS45において、MPCR算出部305は、PCRパケットPに挿入されている同期情報(RTSおよびEPAT)を読み取り、メモリ307に記憶させる。
【0100】
ステップS46において、MPCR算出部305は、PCRパケット検出部304から、PCRパケットPが検出されたときのPCRパケット検出信号DPが入力され、そしてカウンタ309から、RNCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたときのカウンタ309のカウント値)が入力されるまで待機する。ステップS46において、PCRパケット検出部304から、そのPCRパケットPが検出されたとき(時刻t12)のPCRパケット検出信号Dpが入力され、そしてカウンタ309から、RNCOUNT(そのPCRパケット検出信号Dpが入力されたとき(時刻t12)のカウンタ309のカウント値)が入力されたと判定されたとき、ステップS47に進み、MPCR算出部305は、ステップS46で入力されたPCRパケット検出信号Dpにより特定されるPCRパケットPのEPCRを検出する。
【0101】
次に、ステップS48において、MPCR算出部305は、PCRパケットPのEPCRと置き換えられるMPCRを算出する。ここでのMPCRの算出方法を、図13(B)を参照して説明する。なお、この例の場合、ステップS41で入力されたPCRパケット検出信号Dpにより特定されるトランスポートストリームパケットMPEG−TSは、送信装置101から送信されてきたPCRパケットP1であり、ステップS46で入力されたPCRパケット検出信号Dpで特定されるトランスポートストリームパケットMPEG−TSは、PCRパケットP2であるとする。図13(B)は、カウンタ309によるカウント値(ネットワーククロックNと同期するクロックRがカウントされたカウント値)を横軸にとり、その横軸上に、RNCOUNT1(時刻t11でのカウント値(ステップS41))、PCRパケットP1のEPCR1(ステップS42)、RNCOUNT2(時刻t12でのカウント値(ステップS46))、およびPCRパケットP2のEPCR2(ステップS47)の他、MPCRを算出する上において必要なデータ(例えば、ROFFSET、RPCRなど)を示したものである。
【0102】
MPCR算出部305は、次の式(8)に従って、RNCOUNT2に、メモリ307に記憶されているROFFSET(ステップS44で記憶された)を加算して、RPCR2を算出する。図13(B)の例では、RPCR2が、RNCOUNT2よりROFFSET分だけ右側方向に示されている。
RPCR2=RNCOUNT2+ROFFSET・・・(8)
【0103】
MPCR算出部305は、算出したRPCR2とメモリ307から読み取ったMPCR1(ステップS44で記憶されている)のそれぞれを、次の式(9)に代入して、PAT(以下、MPCR算出部305により算出されるPATをRPATと称する)1を算出する(図13(B))。
RPAT1=RPCR2−MPCR1(=RPCR1)・・・(9)
RPAT1は、PCRパケットP1とPCRパケットP2の受信装置103への到着間隔の間でカウントされるクロックRのクロック数を示している。
【0104】
次に、MPCR算出部305は、PCRパケットP1から読み取ったRTS1およびEPAT1(ステップS45)、メモリ307に記憶されているMPCR1、並びに先に算出したRPAT1を、次の式(10)に代入し、MPCR2を算出する(図13(B))。
MPCR2=MPCR1+RPAT1+RTS1×RPAT1/EPAT1・・・(10)
【0105】
このようにMPCR2が算出されると、ステップS49において、MPCR算出部305は、ステップS48で算出したMPCR2をPCR修正部306に出力する。PCR修正部306は、PCRパケットP2のEPCR2を、MPCR算出部305から供給されたMPCR2で置き換える(修正する)。なお、この例の場合、EPCR1=MPCR1としたので、その置き換えは行われないが、MPCR1を、最初の複数回に受信したN個のEPCRの平均とすることもでき、この場合、EPCR1とMPCR1の置き換えが行われる(EPCRの修正が行われる)。
【0106】
次に、ステップS50において、MPCR算出部305は、次の式(11)に従って、メモリ307に記憶されているROFFSETに、式(10)の第3項(=RTS1×RPAT1/EPAT1)で算出される値を加算し、新しいROFFSETを算出する(図13(B))。
新しいROFFSET=ROFFSET+RTS1×RPAT1/EPAT1・・・(11)
【0107】
ステップS51において、MPCR算出部305は、ステップS48で算出したMPCR2およびステップS50で算出した新しいROFFSETを、メモリ307に上書きする。すなわち、この場合、ステップS44で記憶されたROFFSETに代えて新しいROFFSETが、そしてステップS44で記憶されたMPCR1に代えてMPCR2が記憶される。ステップS52において、MPCR算出部305は、PCRパケットP2に挿入された同期情報(RTS2およびEPAT2)を読み取り、メモリ307に記憶させる。
【0108】
その後、ステップS46に戻り、MPCR算出部305は、例えば、図14(B)に示すように、PCRパケットP2の後のPCRパケットP3またはPCRパケットP4が受信装置103に到着すると、ステップS46乃至ステップS52における処理を実行する。これにより、PCRパケットP3のEPCR3がMPCR3と置き換えられ、PCRパケットP4のEPCR4がMPCR4と置き換えられる。以下に、PCRパケットP3が受信装置103に到着した場合の処理を、簡単に説明する。
【0109】
PCRパケットP3が受信装置103に到着すると(PCRパケット検出部304により検出されると)(ステップS46)、PCRパケットP3のEPCR3が検出され(ステップS47)、MPCR3が算出される(ステップS48)。具体的には、メモリ307から、MPCR2、ROFFSET、RTS2およびEPAT2が読み出され、カウンタ309から入力されたRNCOUNT3に、メモリ307から読み出されたROFFSETが加算されて、RPCR3が算出される(式(9))。また算出されたRPCR3から、メモリ307から読み出されたMPCR2が減算されて、RPAT2が算出される(式(9))。次に、メモリ307から読み出されたMPCR2、RTS2、およびEPAT2、並びに算出されたRPAT2が、(式(10))に代入され、MPCR3が算出される。
【0110】
このようにして算出されたMPCR3は、PCR修正部306に出力され、そこでPCRパケットP3のEPCR3と置き換えられる。次に、ROFFSETに式(10)の第3項の値が加算され(式(11))(ステップS50)、新しいROFFSETが算出され、算出されたMPCR3とともにメモリ307に上書きされる(ステップS51)。そして、PCRパケットP3に挿入されている同期情報(RTS3およびEPAT3)がメモリ307に上書きされる(ステップS52)。
【0111】
以上のようにして、PCRパケットPが受信装置103に到着したときの、ATMネットワーク102のネットワーククロックNと同期したクロックRのカウント値(RNCOUNT)と、PCRパケットPに挿入された同期情報に基づいてMPCRが算出され、そのMPCRに基づいてPCRが修正される(置き換えられる)。PCRが修正されたPCRパケットPは、PCR修正部306から、受信装置103への到着間隔が保持された状態で、図示せぬシステムデコーダに出力される。
【0112】
なお、以上の処理においてメモリ307に記憶される各種データは、プログラム毎に記憶される。
【0113】
ところで、送信装置101から送信されてきたデータに、遅延が付加されていなければ(固定遅延または遅延ゆらぎのいずれも付加されていなければ)、PCRパケットP1およびPCRパケットP2は、図13(B)の矢印Aおよび矢印Bで示されるクロックRのカウント値がカウントされるタイミングで、受信装置103に到着する。しかしながら、この例の場合のように、データに遅延ゆらぎが付加されている場合、PCRパケットP1およびPCRパケットP2は、RNCOUNT1およびRNCOUNT2がカウントされるタイミングで、受信装置103に到着する。すなわち、遅延が付加されていない場合と異なるタイミングで、受信装置103に到着する。また、固定遅延が付加される場合とも異なり、PCRパケットP1およびPCRパケットP2の受信装置103への到着間隔(RPAT)と、送信装置101への到着間隔(EPAT)(実質的に、送信装置101からの送信間隔と同じ間隔)は等しくない。同様に、PCRパケットP3およびPCRパケットP4は、遅延が付加されていないときに到着するタイミング(図14(B)の点線の矢印に示すタイミング)とは異なるタイミングで(図14(B)において左右方向に、矢印で示される分だけずれて)、受信装置103に到着する。すなわち、図3と図4で説明した方法では、システムエンコーダのシステムクロックと同期する、システムデコーダのシステムクロックは生成されない。
【0114】
これに対して、本発明では、システムエンコーダから出力されたPCRパケットP1とPCRパケットP2の送信装置101への到着間隔の間にカウントされる、クロックS(ネットワーククロックNと同期するクロック)のクロック数(EPAT)と、そのEPATと、送信装置101への到着間隔の間にカウントされる、システムエンコーダのシステムクロックのクロック数(EPCR1とEPCR2との差)の差(RTS)、すなわち、その間に発生したシステムエンコーダのシステムクロックとクロックSとのずれがPCRパケットPに挿入されて、受信装置103に供給される。そして受信装置103において、供給されたEPATおよびRTSに基づいて、PCRパケットP1とPCRパケットP2の受信装置103への到着間隔(RPAT)の間に発生するシステムエンコーダのシステムクロックとクロックS(クロックR)とのずれが推測され(比例計算され)、その推測値に基づいて、EPCRが修正される。すなわち、PCRが、遅延ゆらぎに対応した値に修正される。これにより、システムデコーダにおいて、システムエンコーダのシステムクロックと同期するシステムクロックが生成される。
【0115】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実現させることもできるが、ソフトウエアにより実現させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実現する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムがコンピュータにインストールされ、そのプログラムがコンピュータで実行されることより、上述した送信装置101や受信装置103が機能的に実現される。
【0116】
そこで、図19は、上述のような送信装置101または受信装置103として機能するコンピュータ501の1実施の形態を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)511にはバス515を介して入出力インタフェース516が接続されており、CPU511は、入出力インタフェース516を介して、ユーザから、キーボード、マウスなどよりなる入力部518から指令が入力されると、例えば、ROM(Read Only Memory)512、ハードディスク514、またはドライブ520に装着される磁気ディスク531、光ディスク532、光磁気ディスク533、若しくは半導体メモリ534などの記録媒体に格納されているプログラムを、RAM(Random Access Memory)513にロードして実行する。これにより、上述した各種の処理(例えば、図12のフローチャートまたは図18のフローチャートにより示される処理)が行われる。さらに、CPU511は、その処理結果を、例えば、入出力インタフェース516を介して、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部517に必要に応じて出力する。なお、プログラムは、ハードディスク514やROM512に予め記憶しておき、コンピュータ501と一体的にユーザに提供したり、磁気ディスク531、光ディスク532、光磁気ディスク533,半導体メモリ534等のパッケージメディアとして提供したり、衛星、ネットワーク等から通信部519を介してハードディスク514に提供することができる。
【0117】
以下に、例えば、ハードディスク514に格納されているプログラムをRAM513にロードすることで実行されるCPU511の動作を、図12のフローチャートを参照して説明する。
【0118】
ステップS21で、CPU511は、フレーム同期確立後、コンピュータ501に最初に到着するPCRパケットP1を検出するまで待機し、PCRパケットP1を検出したとき、ステップS22に進み、PCRパケットP1のPCR(EPCR1)を検出する。
【0119】
次に、ステップS23において、CPU511は、PCRパケットP1を検出したタイミングでカウントしたネットワークのネットワーククロックと同期するクロックのカウント値(NCOUNT1)およびステップS22で検出したEPCR1を、式(1)に代入し、オフセット値(OFFSET)を算出する。
【0120】
ステップS24において、CPU511は、ステップS22で検出したEPCR1と、ステップS23で算出したOFFSETを、例えばハードディスク514に記憶させる。次に、ステップS25で、CPU511は、PCRパケットP1の次のPCRパケットP2を検出するまで待機する。
【0121】
ステップS25において、PCRパケットP2を検出したとき、CPU511は、ステップS26に進み、PCRパケットP2のEPCR2を検出する。さらに、ステップS27において、CPU511は、同期情報、つまり、RTSおよびPATを算出し、ステップS28において、算出したRTS1およびEPAT1をPCRパケットP1に挿入する。
【0122】
次に、ステップS29において、CPU511は、式(5)に従って、ステップS23で算出したOFFSETに、ステップS27で算出したRTS1を加算し、新しいOFFSETを算出する。
【0123】
ステップS30において、CPU511は、式(6)に従って、PCRパケットP2を検出したタイミングでカウントしたネットワークのネットワーククロックと同期するクロックのカウント値(NCOUNT2)に、ステップS29で算出した新しいOFFSETを加算し、新しい参照点Bを算出する。
【0124】
ステップS31において、CPU511は、ステップS26で検出したEPCR2、ステップS29で算出した新しいOFFSET、およびステップS30で算出した新しい参照点Bをメモリ209に上書きする。
【0125】
以上のように、CPU511によって、プログラムが実行されることにより、上図した送信装置101のブロック図の構成が、機能的に実現される。ここでは、詳細な説明は省略するが、図18のフローチャートに示した各ステップを、受信装置103の各部に代わり、CPU511が実行することにより、受信装置103のブロック図の構成も、機能的に実現される。
【0126】
なお、本明細書において、システムの用語は、複数の装置、手段などより構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0128】
【発明の効果】
請求項に記載の通信装置、請求項に記載の通信方法、および請求項に記載の記録媒体によれば、パケットの到着間隔と同期残差、並びに送信装置と共有のクロックに同期したクロックをカウントしたカウント値に基づいて、タイムスタンプの修正値を計算し、タイムスタンプを修正するようにしたので、遅延ゆらぎを取り除くことができ、例えば、固定遅延に対応したデコーダにおいてもデコードが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のデータ伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】 PCRを説明する図である。
【図3】図1のシステムデコーダ4の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3のPLL回路13の構成例を示すブロック図である。
【図5】従来のデータ伝送システムの他の構成例を示すブロック図である。
【図6】アダプティブクロック部51の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用したデータ伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の送信装置201の構成例を示すブロック図である。
【図9】 MPEGトランスポートストリームパケットのデータ構造を説明する図である。
【図10】 ATMセルを説明する図である。
【図11】 PLL回路207の構成例を示すブロック図である。
【図12】同期情報挿入処理を説明するフローチャートである。
【図13】同期情報算出方法およびMPCR算出方法を説明する図である。
【図14】同期情報算出方法およびMPCR算出方法を説明する他の図である。
【図15】 RTSのデータ量を説明する図である。
【図16】 RTSのデータ量を説明する他の図である。
【図17】図7の受信装置203の構成例を示すブロック図である。
【図18】 PCR修正処理を説明するフローチャートである。
【図19】 コンピュータ501の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
101 送信装置, 102 ATMネットワーク, 103 受信装置, 201 SYNC_BYTE検出部, 202 PCRパケット検出部, 203 RTS/PAT算出部, 204 RTS/PAT挿入部, 205 MPEG/ATM変換部, 206 ATMセル送受信部, 207 PLL回路, 208 カウンタ, 209 メモリ,301 ATMセル送受信部, 302 ATM/MPEG変換部, 303 SYNC_BYTE検出部, 304 PCRパケット検出部, 305 MPCR算出部, 306 PCR修正部, 307 メモリ, 308 PLL回路, 309 カウンタ

Claims (5)

  1. 所定のネットワークを介して送信装置に接続される通信装置において、
    前記送信装置から送信されてきたパケットを受信する受信手段と、
    前記送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成した前記クロックをカウントするカウント手段と、
    前記受信手段により、前記パケットが受信されたときの、前記カウント手段によりカウントされた前記クロックの値を抽出する抽出手段と、
    前記受信手段により受信された前記パケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出手段と、
    前記第1の検出手段により検出された前記パケットに含まれる前記タイムスタンプから、前記到着間隔および前記同期残差を検出する第2の検出手段と、
    前記第2の検出手段により検出された前記到着間隔および前記同期残差、並びに前記抽出手段により抽出された前記クロックの値に基づいて、前記タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算手段と、
    前記修正値計算手段により計算された前記修正値に基づいて、前記タイムスタンプを修正する修正手段と
    を備えることを特徴とする通信装置。
  2. 前記修正値計算手段は、
    前記抽出手段により抽出された、前記第1の検出手段により、前記到着間隔および前記同期残差を含む前記タイムスタンプが含まれる第1のパケットが検出されたときの、前記カウント手段によりカウントされた前記クロックの値と、前記第1のパケットに含まれる前記タイムスタンプの値とのオフセット値を計算し、
    計算した前記オフセット値と、前記クロックの値に基づいて、基準クロック値を計算し、
    計算した前記オフセット値、計算した前記基準クロック値、および前記抽出手段により抽出された、前記第1の検出手段により、前記到着間隔および前記同期残差を含む前記タイムスタンプが含まれる第2のパケットが検出されたときの、
    前記カウント手段によりカウントされた前記クロックの値に基づいて、前記第2のパケットに含まれる前記タイムスタンプの値の推測値を計算し、
    計算した前記推測値、並びに前記第1のパケットに含まれる前記到着間隔および前記同期残差に基づいて、前記第2のパケットに含まれる前記タイムスタンプの修正値を算出する
    ことを特徴とする請求項に記載の通信装置。
  3. 前記修正値計算手段により計算された、前記オフセット値、および計算された前記修正値を、前記第1のパケットおよび前記第2のパケットから構成されるプログラムに対応させて記憶する記憶手段
    をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の通信装置。
  4. 所定のネットワークを介して送信装置に接続される通信装置の通信方法において、
    前記送信装置から送信されてきたパケットを受信する受信ステップと、
    前記送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成した前記クロックをカウントするカウントステップと、
    前記受信ステップの処理で、前記パケットが受信されたときの、前記カウントステップでカウントされた前記クロックの値を抽出する抽出ステップと、
    前記受信ステップの処理で受信された前記パケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出ステップと、
    前記第1の検出ステップの処理で検出された前記パケットに含まれる前記タイムスタンプから、前記到着間隔および前記同期残差を検出する第2の検出ステップと、
    前記第2の検出ステップの処理で検出された前記到着間隔および前記同期残差、並びに前記抽出ステップの処理で抽出された前記クロックの値に基づいて、前記タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算ステップと、
    前記修正値計算ステップの処理で計算された前記修正値に基づいて、前記タイムスタンプを修正する修正ステップと
    を含むことを特徴とする通信方法。
  5. 所定のネットワークを介して送信装置に接続される通信装置で行われる通信処理を制御するプログラムであって、
    前記送信装置と共有するクロックに同期したクロックを生成し、生成した前記クロックをカウントするカウントステップと、
    前記送信装置から送信されてきたパケットが検出されたときの、前記カウントステップでカウントされた前記クロックの値を抽出する抽出ステップと、
    前記送信装置から送信されてきた前記パケットから、到着間隔および同期残差を含むタイムスタンプが含まれるパケットを検出する第1の検出ステップと、
    前記第1の検出ステップの処理で検出された前記パケットに含まれる前記タイムスタンプから、前記到着間隔および前記同期残差を検出する第2の検出ステップと、
    前記第2の検出ステップの処理で検出された前記到着間隔および前記同期残差、並びに前記抽出ステップの処理で抽出された前記クロックの値に基づいて、前記タイムスタンプの修正値を計算する修正値計算ステップと、
    前記修正値計算ステップの処理で計算された前記修正値に基づいて、前記タイムスタンプを修正する修正ステップと
    を含むことを特徴とするコンピュータが読み取り可能なプログラムが記録されている記録媒体。
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