JP4081840B2 - スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリングにより薄膜を形成する際に用いられるスパッタリングターゲットの製造方法に関し、特にスパッタリングターゲットのスパッタ面の表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングによる成膜方法は、膜の付着力が強い、膜厚の制御が容易である、合金の薄膜化における合金組成の再現性が良い、高融点材料の薄膜の作製が容易である等の特徴を有するため液晶ディスプレイ用の透明導電膜、ハードディスクの記録層、半導体メモリーの配線材料等の広い分野で使用されている。
【0003】
このような成膜方法に用いるスパッタリングターゲットは、用途に応じてクロム、モリブデン、カーボン、アルミニウム、ITO(酸化インジウム−酸化スズ)、ZAO(酸化亜鉛−酸化アルミニウム)、STO(チタン酸ストロンチウム)等の材質で構成されており、一般には、HIP(熱間静水圧プレス)法、常圧焼結法、真空溶解法等(以下成形・焼結方法と記載)により製造され、その後所定の大きさに加工される。
【0004】
加工の目的は、ターゲットの大きさを精度良く決定することと成形・焼結の際に不純物で汚染された表面層を取り除くことにある。この加工には、マシニングセンター、平面研削盤、フライス盤等が用いられ、その作業は長時間を要している。
【0005】
一方、成膜方法では、マグネトロンスパッタリング方式が最近の主流である。この方法は、ターゲットの裏面に配置した電磁石又は永久磁石等により該ターゲット上に閉磁界を形成して、磁界と電界との相互作用によりイオン電流密度が高いプラズマを形成することを特徴とする。このため、比較的低いガス圧力で高速成膜が行えるが、その反面、ターゲット表面のイオン電流密度を均一にすることが困難なためターゲットが不均一に消耗するという欠点を有していた。
【0006】
このような問題を解決するため、われわれは、特開平01−290764号公報で高効率ターゲットを提案している。該ターゲットは、イオン電流密度が高く、最もスパッタリングされるエロージョン部分を厚くし、スパッタリングされない非エロージョン部を薄くしたもので、これによりターゲットの利用効率を飛躍的に向上させることに成功した。
【0007】
しかし、該高効率ターゲットの場合、ターゲットのスパッタ面が単一の平面で構成されたものではなく、スパッタ面に凸状部を有する特殊な形状となるため、焼結後の表面加工が困難であり、焼結の際に表面を汚染した不純物を除去することや、表面を研磨して平滑化することができないという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、成形・焼結されたターゲットが複雑な表面形状を有するターゲットであっても、その表面から不純物を簡便で、効率的に除去することができるとともにターゲットの表面粗さを方向性のない、均一なものとすることができ、さらに、ターゲットの表面粗さを十分に小さくできる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ターゲットの表面に微細な粉末を高速で衝突させることにより、複雑な形状を有するターゲットの表面の不純物を簡便で、効率的に除去することができ、更には、ターゲットの表面粗さを方向性のない、均一なものとすることができること、また、衝突させる粉末の粒径を所定の範囲のものとすることにより、ターゲットの表面粗さを十分に小さくできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は粒径が10〜500μmのブラスト材を用いて、スパッタリングターゲットのスパッタ面をブラスト処理することにより、スパッタ面を汚染した不純物を除去することを特徴とするスパッタリングターゲットの表面処理方法であり、また、そのような表面処理を行う工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。また、本発明はスパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットの表面処理方法又はその製造方法であって、粒径が10〜500μmのブラスト材を用いて、前記スパッタリングターゲットの凸状部を有するスパッタ面をブラスト処理することにより、スパッタ面を汚染した不純物を除去することを特徴とするスパッタリングターゲットの表面処理方法であり、また、そのような表面処理を行う工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。また、このようなブラスト処理を行うことにより、スパッタリングターゲットのスパッタ面に不純物として含まれるアルミニウムの含有量を30ppm以下とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。なお、ブラスト材としては球状ジルコニア粉末を用いることが好ましい。さらに、本発明はスパッタリングターゲットのスパッタ面を粒径が50〜500μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第1のブラスト処理を行った後、該表面を粒径が10〜110μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第2のブラスト処理を行うことを特徴とするスパッタリングターゲットの表面処理方法であり、また、そのような表面処理を行う工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。さらに、本発明はスパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットの表面処理方法又はその製造方法であって、前記凸状部を有するスパッタ面を粒径が50〜500μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第1のブラスト処理を行った後、該表面を粒径が10〜110μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第2のブラスト処理を行うことを特徴とするスパッタリングターゲットの表面処理方法であり、また、そのような表面処理を行う工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。なお、第1のブラスト処理に用いるブラスト材がSiC粉末又はアルミナ粉末のいずれかであり、第2のブラスト処理に用いるブラスト材が球状ジルコニア粉末であることが好ましい。
【0011】
本発明におけるブラスト処理とは、粉末からなるブラスト材を被処理面に衝突させることにより、被処理面表面の付着物や突起等を除去することを意味する。具体的な方法としては、例えば、ブラスト材を含む空気等の気体又は水等の液体を被処理面に噴射することにより、ブラスト材を被処理面に高速で衝突させることができる。
【0012】
本発明のブラスト処理に使用される装置は一般に市販されているブラスト装置で良く、例えば、ブラスト材を含む圧縮空気を噴射するブラスト装置(商品名 “ニューマブラスター・SGF−5−B”不二製作所製)等を挙げることができる。
【0013】
また、本発明のブラスト材(ブラスト処理に用いられる粉末)には、アルミナ、ガラス、ジルコニア、SiC等が使用できるが、ジルコニアの個々の粒子を球状に形成した球状ジルコニア粉末は、ブラスト処理されるターゲット表面(被処理面)が汚染されにくく、また、被処理面の表面粗さを小さくすることができるため特に好ましい。
【0014】
ブラスト材の形状は、針状、粒状、球状等が使用できる。表面不純物の除去を優先する場合は、針状等ランダム形状のものの使用がより効果的であるが、表面粗さを小さくすることを優先する場合は、球状のものが好ましい。また、ブラスト材の粒径は、10〜500μmが好ましく、特に10〜200μmが好ましい。ブラスト材の粒径が大きい場合は、ターゲットの表面粗さが粗くなり、スパッタリング時にノジュールが発生し易くなることがある。一方、ブラスト材の粒径が小さい場合は、表面不純物除去効果が小さくなる。
【0015】
なお、ブラスト材は、粉体を篩い等で分級したものを使用するのが一般的であり、本発明でいう粒径は、例えば、分級に使用する篩の開口の大きさとして定義されるものである。本発明でいう特定の粒径範囲(例えば、10〜500μm)のブラスト材とは、ブラスト材を構成する粒子の粒径がこの範囲内にあるものであり、例えば、この粒径範囲内の任意の一対の粒径に各々対応する一対の篩(前記の粒径範囲が10〜500μmの場合は、例えば粒径125μmと149μmに各々対応する一対の篩、あるいは粒径177μmと210μmに各々対応する一対の篩等)を用いて分級したブラスト材を意味する。
【0016】
ブラスト材をターゲット表面に衝突させるために媒体として使用する空気等の流体に印加する圧力(ブラスト圧力)は、1〜10kg/cm2程度が好ましく、特に2〜7kg/cm2が好ましく、更には3〜5kg/cm2が好ましい。この圧力が低い場合はブラスト処理による表面の不純物除去が難しくなる。一方、この圧力が高すぎると、ターゲット表面への衝撃が強くなり、割れの原因となるばかりか、大容量のコンプレッサーが必要となりコスト高となる。
【0017】
ブラスト材を噴出するノズルとターゲット表面の距離は、50〜300mm程度が好ましい。この距離が近すぎる場合はブラスト処理が施される有効面積が小さくなり効率的でない。反対に、この距離が大きすぎると圧力不足となりブラスト処理に長時間を要する。
【0018】
ターゲット表面のブラスト処理時間は、ブラスト圧力、ブラスト材の種類等にも因るが、0.05〜1.0秒/cm2で処理することが好ましい。処理時間が短い場合は、不純物の除去が難しくなり、一方処理時間が長い場合は、作業効率が悪くなり、ターゲット表面のブラスト材による汚染が問題となってくる。従って、長時間のブラスト処理を行う場合は、ターゲットと同じ材料のブラスト材を使用することが好ましい。
【0019】
ブラスト処理の処理条件としては、例えば、表面層に強固な付着不純物がない場合は、粒径10〜500μmのブラスト材を用いることが好ましい。この場合、表面の不純物を取り除くことが可能であるばかりか、被処理面の表面粗さ(Ra)も0.5〜4μmと小さくすることができる。特に球状のジルコニア製ブラスト材を用いた場合、被処理面の表面粗さをより小さくすることができる。
【0020】
一方、表面層に強固な付着不純物がある場合は、2種類以上のブラスト条件 (ブラスト材の材質、ブラスト材粒子の形状、ブラスト材粒子の粒径等)でブラスト処理することが好ましく、まず、粒径50〜500μm、針状、粒状等の球状でないブラスト材を使用し、強固な不純物を取り除くことが好ましい。形状が球状でないブラスト材を使用したり、粒径の大きいブラスト材を使用した場合、被処理面の表面粗さが粗くなるため、1回目のブラスト処理後、球状のブラスト材を使用したり、1回目に使用したブラスト材より粒径の小さいブラスト材を使用したり、さらにそれらを併用して2回目のブラスト処理を行なうことが好ましく、その粒径は10〜110μmが好ましい。更にターゲットの表面粗さを小さくしたい場合は、順次ブラスト材の粒径を小さくしながら、ブラスト処理を繰り返すことが好ましい。ただし、ブラスト処理の処理条件は3〜5種類が上限であり、あまり多くなると作業の効率が悪くなり作業性が低下する。なお、本発明では、ブラスト材の粒径の大小はブラスト材の粒径分布の中央値の大小を意味し、例えば、一対の篩により分級されたブラスト材を用いる場合は、その一対の篩の各々に対応する粒径の中間の値(両者の平均値)の大小を意味する。
【0021】
ブラスト処理を2回以上施す場合は、1回目のブラスト材は不純物に汚染されやすいため、アルミナ、カーボンシリサイドなどの安価なものが好ましい。2回目以降のブラスト材は、ブラスト材自身が不純物に汚染されにくいため長期間にわたる使用が可能であり、球状ジルコニア粉末等の高価なブラスト材も使用することができる。
【0022】
本発明を適用することのできるターゲットとしては、一般に用いられる材料、例えば、Cr、Cr−Mo、Cr−V、Cr―W、Ni−Cr−Si、Ni−Cr−Si−Al、Co−Cr−Ta、Mo、Ti、Al、WSi、MoSi、C、ITO、ZAO、STO、BSTO、MgO、SiO2、Si、Si3N4、等で形成されたものを例示することができる。
【0023】
特に、酸化物や窒化物等からなるスパッタリングターゲットの場合は、成形体の焼結の際に、成形体の下にアルミナ粉末を敷いたり、成形体をアルミナ粉末で覆うことが成形体の割れやそりを防止するために有効であるが、ターゲットのスパッタ面の不純物としてのアルミニウムの含有量が増加してしまうため、本発明は、このようなターゲットの製造において特に有効である。不純物としてのアルミニウムの含有量は、一般に、30ppm以下であれば特に問題なしとされているが、本発明によれば、スパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットにおいても、容易に不純物で汚染された表面層を除去することが可能であり、スパッタ面のアルミニウム含有量を30ppm以下とすることが可能である。なお、本発明におけるスパッタ面の不純物の含有量は、蛍光X線分析によりスパッタ面を測定して得られるものであり、濃度への換算は対象とする不純物が試料中に均一に分布していると仮定してして行う。
【0024】
また、ITOターゲットの場合は、酸化スズの蒸気圧が高いため、焼成により、焼結体の表面層のスズ含有量が低下する場合があるが、上記のブラストによる表面処理により、前記のスズ含有量が低下した表面層を除去することができる。
【0025】
なお、スパッタ面以外のターゲット表面についても、同様のブラスト処理により容易に不純物で汚染された表面層を除去することができることはいうまでもない。
【0026】
本発明は、ターゲットのスパッタ面が単一の平面により形成されている単純な平板状のスパッタリングターゲットの製造にも適用することができるが、例えば図3にその形状の一例を示す高効率形状を有するターゲット(高効率ターゲット)のように、そのスパッタ面が単一の平面により形成されているものではなく、複雑な形状、すなわち、そのスパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットの製造に、より効果的に適用することができる。なお、図3(a)は高効率形状を有するターゲットの形状の一例を示す斜視図であり、図3(b)はそのA・A線断面図である。このA・A線断面の断面形状としては、図3(b)の他にも、例えば、図3(c)〜(e)に示すような形状等であっても良い。図3(a)では上面がスパッタ面であり、図3(b)〜(e)のA・A線断面図でも図の上端がスパッタ面に対応する。また、図3では図示を容易にするために、スパッタ面の角(エッジ)部の丸みを省略して図示しているが、必要に応じて角部に適当な丸みを付けることが好ましい。
【0027】
本発明により、ターゲットのスパッタ面の表面粗さ(Ra)が、0.5〜4μmであるスパッタリングターゲットを得ることができるが、表面粗さが大きいターゲットは、スパッタリングの際にノジュールが発生しやすくなるので、スパッタ面の表面粗さ(Ra)は4μm以下であることが好ましい。
【0028】
このようにターゲット表面をブラスト処理する方法は、安価で迅速に表面層の不純物を除去可能であり、ターゲットの表面粗さは小さく、平面研削盤で研削した時に発生する方向性のある研削傷がなく、均一な表面を形成することができる。
【0029】
ところで、スパッタリングターゲットは一般に下記のようにして製造することができる。
【0030】
まず、単一の原料粉末、あるいは所定の組成を有するように複数の原料粉末を混合した混合粉末を、鋳込み成形法、射出成形法、プレス成形法等で成形して所定の形状を有する成形体を作製する。得られた成形体を常圧焼結法、HIP法等により焼結し、必要に応じて機械加工を施して所定の形状の焼結体(ターゲット)を得る。なお、成形体を作製するに当たって、必要に応じて、冷間静水圧プレス等による圧密化処理を行っても良いし、原料粉末又は混合粉末中に添加したバインダー等の有機物を除去する脱バインダー処理等を行っても良い。また、金属のスパッタリングターゲットの場合は、真空溶解法等により得られた金属材料を機械加工により成形して所定の形状のターゲットを得る。
【0031】
こうして得られたターゲットの少なくともスパッタ面となる面に、前述のブラストによる表面処理を施し、その後、通常の方法により、銅製のバッキングプレート等にInハンダ等を用いて接合することによりスパッタリングターゲットを製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0033】
(参考例1)
酸化インジウム粉末4500g、酸化スズ粉末450g、ポリカルボン酸系分散剤(固形分40%)125g、アクリルエマルジョン系バインダー(固形分50%)100g、純水1144gを10リットルのナイロンポット中で直径15mmの鉄心入り樹脂ボールを用いて回転ボールミルにより16時間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを十分脱泡した後、図3(a)、(b)に示す形状を形成することのできる鋳型に流し込んで鋳込み成形を行い、ITO成形体を得た。得られたITO成形体を冷間静水圧プレスにて3ton/cm2の圧力で圧密化し、その後、脱バインダーを行った。
【0034】
図1に示すように、アルミナ製の板上にアルミナ粉末を厚さ5mmで敷き、その上に上記により得られた図3(a)(b)に示す形状を有する高効率形状のITO成形体をセットし、1550℃で5時間、常圧焼結法により焼成した。得られたITO焼結体の密度は、99.5%であり、大きさは130mmx405mmx10.5mmt、ターゲットのスパッタ面となる面の表面粗さ(Ra)は2.1μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて測定したところ、Si:20ppm、Al:760ppm、Zr:30ppm以下、スズの含有量は酸化物換算でSnO2:7.8wt%であった。なお、測定に使用した蛍光X線分析は理学電機製蛍光X線分析装置3080−E3、ロジウムX線管を用い、X線管電圧、X線管電流をそれぞれ50kV、50mAとして測定を行った。また、X線の照射面積は20mmφである。
【0035】
次にこの焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が25〜106μmの範囲(平均粒径53μm)の球状ジルコニアビーズ(商品名“YTZ53W”東ソー株式会社製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、1.6μm、表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて上記と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.1wt%であった。
【0036】
こうして得られた焼結体(ターゲット)は、通常の方法によりInハンダを用いて銅製のバッキングプレートに接合することによりスパッタリングターゲットとすることができる。
【0037】
(参考例2)
図2のように、アルミナ製の板上にアルミナ粉末を厚さ5mmで敷き、その上に参考例1で用いたものと同じ図3(a)(b)に示す形状を有する高効率形状のITO成形体をセットし、更に、ITO成形体の上にアルミナ粉末を被せて1550℃で5時間、常圧焼結法にて焼成した。得られたITO焼結体の密度は、99.8%であり、大きさは130mmx405mmx10.5mmt、ターゲットのスパッタ面となる面の表面粗さ(Ra)は、4.1μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:2500ppm、Zr:30ppm以下、SnO2:8.1wt%であった。
【0038】
次にこの焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が125〜149μmの範囲のカーボンシリサイド(商品名“フジアランダムC−100”株式会社不二製作所製)を使用、ブラスト処理時間は240秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、3.8μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:60ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.2wt%であった。
【0039】
(実施例1)
参考例2でブラスト処理を行なったターゲットを再びブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が25〜106μmの範囲(平均粒径53μm)の球状ジルコニアビーズ(商品名“YTZ53W”東ソー株式会社製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、2.2μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.1wt%であった。
【0040】
(参考例3)
参考例2と同じ方法で焼結した焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が177〜210μmの範囲のアルミナ(商品名“フジランダムWA−80”株式会社不二製作所製)を使用、ブラスト処理時間は240秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、3.9μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:120ppm、Zr:30ppm以下、SnO2:10.0wt%であった。
【0041】
(実施例2)
参考例3でブラスト処理を行なったターゲットを再びブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が25〜106μmの範囲(平均粒径53μm)の球状ジルコニアビーズ(商品名“YTZ53W”東ソー株式会社製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、2.4μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.1wt%であった。
【0042】
(参考例4)
図1に示すように、アルミナ製の板上にアルミナ粉末を厚さ5mmで敷き、その上にプレーナー形状のITO成形体をセットし、1550℃で5時間、常圧焼結法により焼成した。得られたITO焼結体の密度は、99.5%であり、大きさは130mmx405mmx10.5mmt、ターゲットのスパッタ面となる面の表面粗さ(Ra)は2.3μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:760ppm、Zr:30ppm以下、SnO2:7.5wt%であった。
【0043】
次にこの焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が25〜106μmの範囲(平均粒径53μm)の球状ジルコニアビーズ(商品名“YTZ53W”東ソー株式会社製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、1.8μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.4wt%であった。
【0044】
(参考例5)
参考例4と同じ方法で焼結した焼結体を#400の砥石を使用して平面研削盤で加工し、127.0mm×400.0mmx6.35mmtの焼結体を得た。加工後のITO焼結体のターゲットのスパッタ面となる面の表面粗さ(Ra)は1.3μm(研削方向に対して平行方向)と1.7μm(研削方向に対して垂直方向)、その面の表面の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.2wt%であった。
【0045】
次にこの加工後の焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm2、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が25〜106μmの範囲(平均粒径53μm)の球状ジルコニアビーズ(商品名“YTZ53W”東ソー株式会社製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、加工時の研削方向に対して平行・垂直方向共に1.6μm、その面の表面層の不純物とスズの含有量を蛍光X線分析にて参考例1と同様にして測定したところ、Si:20ppm、Al:30ppm以下、Zr:30ppm以下、SnO2:10.2wt%であった。
【0046】
(比較例)
参考例2と同じ方法で焼結した焼結体(ターゲット)のターゲットのスパッタ面となる面の表面をブラスト処理した。ブラスト圧力は4kg/cm 2 、ノズルとターゲット表面の距離は150mm、ブラスト材は粒径が595〜707μmの範囲のアルミナ(商品名“フジアランダムWA−30”株式会社不二製作所製)を使用、ブラスト処理時間は80秒であった。ブラスト処理後にターゲットのスパッタ面となる面の表面の分析をしたところ、表面粗さ(Ra)は、5.6μmであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、スパッタリングターゲットの表面を所定の粒径のブラスト材を用いてブラスト処理するため、スパッタ面に凸状部を有する複雑な表面形状のターゲットでも、容易に表面の不純物及び変質層を除去することができ、また、ターゲットの表面粗さも方向性のない均一なものとすることができ、さらに、ターゲットの表面粗さを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例で使用したITO成形体の焼成方法を示す概略図である。
【図2】参考例で使用したITO成形体の他の焼成方法を示す概略図である。
【図3】高効率形状を有するターゲットの形状の一例を示す図である。(a)高効率ターゲットの形状の一例を示す斜視図、(b)A・A線断面図、(c)〜(e)A・A線断面の断面形状の他の例
Claims (6)
- スパッタリングターゲットのスパッタ面を粒径が50〜500μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第1のブラスト処理を行った後、該スパッタ面を粒径が10〜110μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第2のブラスト処理を行う工程を有し、かつ第2のブラスト処理のブラスト材の粒径として、第1のブラスト処理のブラスト材の粒径よりも小さいものを使用することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
- スパッタリングターゲットがそのスパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットであることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
- 第1のブラスト処理に用いるブラスト材がSiC粉末又はアルミナ粉末のいずれかであり、第2のブラスト処理に用いるブラスト材が球状ジルコニア粉末であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
- スパッタリングターゲットのスパッタ面を粒径が50〜500μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第1のブラスト処理を行った後、該スパッタ面を粒径が10〜110μmのブラスト材を用いてブラスト処理する第2のブラスト処理を行い、かつ第2のブラスト処理のブラスト材の粒径として、第1のブラスト処理のブラスト材の粒径よりも小さいものを使用することを特徴とするスパッタリングターゲットの表面処理方法。
- スパッタリングターゲットがそのスパッタ面に凸状部を有するスパッタリングターゲットであることを特徴とする請求項4記載のスパッタリングターゲットの表面処理方法。
- 第1のブラスト処理に用いるブラスト材がSiC粉末又はアルミナ粉末のいずれかであり、第2のブラスト処理に用いるブラスト材が球状ジルコニア粉末であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のスパッタリングターゲットの表面処理方法。
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