JP4080015B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車エンジン等の内燃機関用のスパークプラグとして、耐火花消耗性向上のために電極の先端にPt(白金)合金のチップを溶接して発火部を形成したものが使用されているが、白金は高価であるためチップ材料として安価なIr(イリジウム)を使用する提案がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のプラグにおいてチップをIrで構成した場合、Irは900〜1000℃の高温域において酸化・揮発しやすい性質を有しているため、そのまま電極発火部に使用すると、火花消耗よりも酸化・揮発による消耗が問題となる欠点がある。従って、市街地走行のような温度の低い条件であれば耐久性はよいが、高速連続運転の場合には、耐久性が極端に低下してしまう問題があった。一方、これとは別の問題として、Irは常温及び高温のいずれにおいても延性あるいは展性に乏しいことから、発火部を形成するためのチップを鍛造、圧延あるいは打抜き等の加工により製造しようとすると、材料歩留まりと製造能率が低下して量産性が悪化する欠点がある。
【0004】
例えば、前述の発火部の耐久性を改善するための一手段としては、適当な金属成分を合金に添加してIrの酸化・揮発による消耗を抑さえることが考えられるが、合金の加工性については必ずしも改善されなかったり、添加元素の種類によっては加工性が一層悪化することもありうる。また、加工性の問題を回避するために、焼結法によりチップを製造する提案がなされているが(例えば特開昭61−88479号公報)、焼結合金製のチップは溶解合金製のチップに比べると耐久性に劣る欠点がある。このように、Ir系のチップを使用したプラグにおいて、チップの耐久性と量産性の双方に優れたものは未だ開発されておらず、該プラグの普及を妨げる大きな原因となっている。
【0005】
本発明の課題は、Irを主体に構成されつつも、高温でのIr成分の酸化・揮発による消耗が起こりにくく、しかも加工性に優れた材料により発火部が構成されたスパークプラグを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上述の課題を解決するために本発明のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、一方の端部側から中心電極を突出させた状態で、絶縁体の外側に設けられた主体金具と、その主体金具に一端が結合され、他端側が中心電極と対向するように配置された接地電極と、それら中心電極と接地電極との少なくとも一方に固着されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、その発火部が、Irを主体としてPdを1〜30重量%の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%の範囲で含有した合金の、圧延、鍛造又は打抜きによる熱間加工材により構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明者は、火花放電ギャップを形成する発火部を、Irを主体として上記範囲のPtないしPdを含有する合金により構成することで、高温でのIr成分の酸化・揮発による消耗が効果的に抑制さるとともに、合金がさらに上記範囲のRhを含有することにより、その加工性が劇的に改善されることを見い出したのである。これにより、Ir系金属で発火部を構成した従来のスパークプラグの問題点がことごとく解決され、ひいては発火部の構成材料としてIrを主成分とする金属を使用しつつも、その耐久性(特に高速走行時の耐久性)と量産性の双方に優れたスパークプラグを実現することができる。
【0008】
なお、上記発火部は、表記組成の金属からなるチップを、接地電極及び/又は中心電極に対し溶接により接合して形成することができる。この場合、本明細書でいう「発火部」とは、接合されたチップのうち、溶接による組成変動の影響を受けていない部分(例えば、溶接により接地電極ないし中心電極の材料と合金化した部分を除く残余の部分)を指すものとする。
【0009】
この場合、チップは、原料を所定の組成となるように配合・溶解して得られる溶解合金に対し所定の加工を施して形成された加工材により構成できる。なお、ここでいう「加工」とは、圧延、鍛造、引き抜き、切削、切断及び打抜きの少なくともいずれかの工程を含む方法によりなされるものを意味するものとする。この場合、圧延、鍛造、あるいは打抜き等の加工は、合金を所定の温度に昇温して行ういわゆる熱間加工(あるいは温間加工)により行うことができる。その加工温度は合金組成にもよるが、例えば700℃以上とするのがよい。本発明のスパークプラグにおけるチップ材質においては、とりわけ熱間打抜きにおける加工特性が良好であり、例えば溶解合金を熱間圧延により板状に加工し、さらにその板材を熱間打抜き加工により所定の形状に打ち抜いてチップを形成するようにすれば、チップの製造効率が著しく改善され、チップの製造単価を大幅に低減することができる。なお、溶解合金を熱間圧延又は熱間鍛造により線状あるいはロッド状に加工した後、これを長さ方向に所定長に切断してチップを形成する方法も可能である。
【0010】
Rhの含有量が1重量%未満になると、合金の加工性改善効果が十分に達成できなくなり、例えば加工中に割れやクラックなどが生じやすくなって、チップを製造する際の材料歩留まりの低下につながる。また、熱間打抜き加工等によりチップを製造する場合は、打抜き刃等の工具の消耗あるいは損傷が生じやすくなり、製造効率が低下する。一方、49重量%を超えると合金の融点が低下し、プラグの耐久性低下を招く。それ故、Rhの含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは2〜20重量%の範囲で調整するのがよい。特に、PdないしPtの合計含有量が5重量%以上である場合には合金がさらに脆くなり、所定量以上のRhを添加しないと、加工によるチップ製造が極めて困難となる。この場合、Rhは2重量%以上、望ましくは5重量%以上、さらに望ましくは10重量%以上添加するのがよい。なお、Rhの含有量が3重量%以上である場合には、Rhは加工性の改善だけでなく、高温でのIr成分の酸化・揮発の抑制に対しても効果を生ずる場合がある。
【0011】
PtないしPdの合計含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、チップが消耗しやすくなるためプラグの耐久性が低下する。一方、含有量が30重量%を超えると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下したり(例えばPd単独添加の場合)、あるいは高価なPtないしPdの含有量が増大して発火部の材料コストが増大する割には、発火部の消耗抑制効果がそれほど期待できなくなる問題が生ずる。以上のことから、PtないしPdの合計含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは3〜20重量%の範囲で調整するのがよい。
【0012】
なお、PtないしPdはそれぞれ単独で合金に含有させることができ、この場合は、その含有量を下記のように調整することが望ましい。
▲1▼Ptを使用する場合は、その含有量を1〜20重量%の範囲で設定するのがよい。合金中のPtの含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるためプラグの耐久性が低下する。一方、Ptの含有量が20重量%を超えると、高価なPtの含有量が増大して発火部の材料コストが増大する割には、発火部の消耗抑制効果がそれほど期待できなくなる。
【0013】
▲2▼Pdを使用する場合は、その含有量を1〜30重量%の範囲で設定するのがよい。合金中のPdの含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるためプラグの耐久性が低下する。一方、Pdの含有量が30重量%を超えると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下する。以上のことから、Pdの含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは1.5〜18重量%、より望ましくは2〜15重量%の範囲で調整するのがよい。
【0014】
また、Pt及びPdは、2種以上のものを組み合わせて含有させることもできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のいくつかの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1に示す本発明の一例たるスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
【0016】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための孔部6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。
【0017】
次に、中心電極3及び接地電極4の本体部3a及び4aはNi合金等で構成されている。一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Irを主体としてPt及びPdの少なくともいずれかを合計で1〜30重量%、望ましくは3〜20重量%の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%、望ましくは2〜20重量%の範囲で含有した合金により構成される。
【0018】
図2に示すように、中心電極3の本体部3aは先端側が縮径されるとともにその先端面が平坦に構成され、ここに上記発火部を構成する合金組成からなる円板状のチップを重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接等により溶接部Wを形成してこれを固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32は、発火部31に対応する位置において接地電極4にチップを位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部Wを形成してこれを固着することにより形成される。これらチップは、例えば表記組成となるように各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解合金を熱間圧延により板状に加工し、その板材を熱間打抜き加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成されたものが使用されている。なお、チップは、合金を熱間圧延又は熱間鍛造により線状あるいはロッド状に加工した後、これを長さ方向に所定長に切断して形成したものを使用してもよい。
【0019】
ここで、発火部31及び対向する発火部32のいずれか一方を省略する構成としてもよい。この場合には、発火部31又は対向する発火部32と接地電極4又は中心電極3との間で火花放電ギャップgが形成される。
【0020】
以下、スパークプラグ100の作用について説明する。すなわち、スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。ここで、その火花放電ギャップgを形成する発火部31及び対向する発火部32が前述の合金で構成されることで、Irの酸化・揮発による発火部の消耗が抑制されるので、長期に渡って火花放電ギャップgが拡大せず、プラグ100の寿命を伸ばすことができる。また、合金組成が前述の範囲に設定されることで、発火部31及び32を構成するチップを熱間圧延及び熱間打抜き等により極めて能率よく製造できる。
【0021】
【実施例】
(実施例1)
所定量のIrとPd及び/又はPtとを配合・溶解することにより、PdとPtとを合計で0〜30重量%(0重量%は比較例)の各比率で含有し、さらにRhを0〜10重量%(0重量%は比較例)の各種比率で含有して、残部が実質的にIrである合金を作製した。この合金に対し、1パス当りの圧下率を10〜35%の範囲で各種値に固定的に設定して熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの板材に加工した。なお、圧延中は試料温度が常に700℃以上に保持されるよう、一定パス毎に所定の炉を用いて試料を加熱した。そして、圧延により得られた板材の外観を目視にて観察し、割れやクラックの発生しなかったものを「○」、微小なクラックが発生したものを「△」、割れの発生したものを「×」として評価した。その結果を表1に示す(なお、各組成及び圧延条件毎の試料数は5000とした)。
【0022】
【表1】
Figure 0004080015
【0023】
すなわち、Rhを添加しない比較例の試料(No.1〜3)については、圧延時に割れやクラックを生じやすく、特に、Ptを5〜10重量%含有するNo.2ないし3の試料については、圧下率を10%としても、割れ等を生ずることなく板材に加工することはほぼ不可能であった。一方、Rhを2重量%以上含有させた実施例の試料(No.4〜8)については、圧下率を25%〜30重量程度まで増大させても問題なく圧延することができ、加工性が良好であることがわかる。
【0024】
次いで、上記得られた板材を熱間打抜き加工(温度700℃以上)することにより、直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状のチップを得た(なお、Rhを添加しないNo.2及び3の試料の板材については、打抜き中に割れが生じたりして加工が困難であったため、チップの作製は断念した)。それらチップを用いて、図1に示すスパークプラグ100の発火部31及び対向する発火部32を形成するとともに(火花放電ギャップgの幅1.1mm)、各プラグの性能試験を以下の条件にて行った。すなわち、6気筒ガソリンエンジン(排気量3000cc)にそれらプラグを取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数6000rpmにて400時間連続運転し(中心電極温度約920℃)、運転終了後のプラグの火花放電ギャップgの拡大量を測定し、ギャップ拡大量が0.2mm 未満のものを「○」、0.2〜0.4mmのものを「△」、0.4mmを超えるものを「×」として評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】
すなわち、比較例(No.1:Ir金属)のプラグは火花放電ギャップが著しく拡大しているのに対し、実施例のプラグ(No.4〜8)については、火花放電ギャップの増加が小さく耐久性に優れている。以上の実験結果から、合金組成が本発明の範囲に属するチップを使用したプラグは、チップの耐久性に優れ、かつ溶解合金からの熱間加工(圧延及び打抜き)によるチップの製造も容易であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグを示す正面部分断面図。
【図2】その要部を示す拡大断面図。
【符号の説明】
1 主体金具
2 絶縁体
3 中心電極
4 接地電極
31 発火部(チップ)
32 対向する発火部(チップ)
g 火花放電ギャップ

Claims (4)

  1. 中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、前記絶縁体の外側に設けられた主体金具と、その主体金具に一端が結合され、他端側が前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、それら中心電極と接地電極との少なくとも一方に固着されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、
    その発火部が、Irを主体としてPdを1〜30重量%の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%の範囲で含有した合金の、圧延、鍛造又は打抜きによる熱間加工材により構成されることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記発火部を構成する合金は、Rhを2〜20重量%の範囲で含有する請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記発火部を構成する合金はPdを3〜20重量%の範囲で含有する請求項1又は請求項2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記発火部を構成する合金はPdを5重量%以上含有し、Rhを5重量%以上含有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載のスパークプラグ。
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