JP4262714B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

本発明は内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
近年、上述のようなスパークプラグにおいては、耐火花消耗性向上のために中心電極および接地電極の先端にPtやIr等を主体とする貴金属チップを溶接したタイプのものが多数提案されている。
しかしながら近年では、内燃機関の高性能化により燃焼室内の温度も高くなる傾向にあり、また着火性向上のために、スパークプラグの発火部を燃焼室内部に突き出させるタイプのエンジンも多く使用されるようになってきている。このような状況では、スパークプラグの発火部が高温にさらされるので貴金属チップも消耗が進みやすくなる。この傾向は、高温で酸化揮発しやすいIr系のチップを使用したスパークプラグにおいて特に著しい。
ここで、高温におけるチップ消耗の要因としては、火花によるチップが一種のスパッタリングを受けることのほか、チップの酸化腐食あるいは酸化揮発により結晶粒界が脆弱化し、火花アタックにより脱粒が進行する影響も大きいと考えられる。特許文献1あるいは2には、貴金属チップの組織を、偏平な結晶粒が放電面と平行な方向に積層されたものとなるように制御することで粒界腐食の経路を長くし、脱粒を抑制する提案がなされている。しかしながら、貴金属チップの結晶粒形態の制御のみでは、腐食・脱粒の抑制効果は必ずしも十分ではない。
特開平8−037082号 特開平8−045643号
また、接地電極に貴金属チップを固着して発火部を形成したスパークプラグにおいて、貴金属チップは、接地電極に溶接部を介して接合した構造を有するものが多い。この溶接部は、接地電極の金属成分と貴金属チップの金属成分とが合金化することにより概して融点が低下しており、しかも接地電極の表面上で発火部よりも外側に広がって形成されるため、火花のアタックを受けやすく、消耗が進行しやすくなっている。そして、発火部で発生する火花に近接して溶接部が存在するため、例えば高速・高負荷運転時など長時間高温にさらされる条件下においては、発火部の寿命を十分に確保できなくなる場合もありうる。
本発明の課題は、貴金属チップを溶接して中心電極および接地電極に発火部を形成したスパークプラグにおいて、発火部の合金組織を結晶粒形態とは別の観点から制御するとともに、貴金属チップの溶接部の位置を規定することにより、該発火部の耐久性を高めたスパークプラグを提供することにある。
本発明のスパークプラグは、上述の課題を解決するために、中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、その絶縁体の外側に設けられた主体金具と、前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、その接地電極に溶接部により接合されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、前記接地電極の発火部が、Ir、Pt及びRhから選ばれる主成分元素と、該主成分元素以外の1種又は2種以上の添加元素成分とからなる貴金属合金を主体に構成されるとともに、該貴金属合金の組織には前記添加元素成分の濃度分布に縞状の濃淡を生じており、その濃淡縞の方向が前記発火部における電圧印加方向と交差する向きに配置され、前記溶接部は、レーザー溶接により形成されており、前記中心電極と該接地電極との対向方向において、該発火部の先端面から該溶接部の先端縁までの距離が0.2mm以上あり、前記貴金属合金は、前記主成分元素を主体とする主成分系相領域と、前記添加元素成分の含有量が主成分系相領域よりも多く、かつ主成分元素の含有量が主成分系相領域の97%以下となる添加元素系相領域とがそれぞれ偏平形状をなして、前記発火部における電圧印加方向に多数層状に積層された組織を有していることを特徴とする。
なお、上記発火部は、上記貴金属合金を主体とするチップを、接地電極に対し溶接により接合して形成している。この場合、本明細書でいう「発火部」とは、接合されたチップのうち、溶接による組成変動の影響を受けていない部分(例えば、溶接により接地電極ないし中心電極の材料と合金化した部分を除く残余の部分)を指すものとする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、接地電極の発火部を構成する貴金属合金において、その添加元素成分の濃度分布に縞状の濃淡を生じている場合、その濃淡縞の方向が発火部における電圧印加方向すなわち放電方向と交差するように(例えばほぼ直交するように)当該発火部を形成し、その発火部において、その発火部の先端面から溶接部の先端縁までの距離を0.2mm以上にすることで、接地電極の発火部の消耗を極めて効果的に抑制することができ、ひいては耐久性に優れたスパークプラグを実現できることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
なお、本発明においては、添加元素成分の縞状の濃度分布において、該添加元素成分濃度が合金平均値以上となる領域を添加元素系相領域といい、同じく合金平均値より小さくなる領域を主成分系相領域という。また、本発明においては、上記貴金属合金は、例えば上記主成分元素を主体とする主成分系相領域と、添加元素成分の含有量が主成分系相領域よりも多く、かつ主成分元素の含有量が主成分系相領域の97%以下となる添加元素系相領域とがそれぞれ偏平形状をなして、発火部における電圧印加方向に多数層状に積層された組織を有する。
発火部を構成する合金の組織形態を上述のように制御することで、該発火部の耐消耗性が向上する理由は以下のように推測される。すなわち、主成分系相領域と添加元素系相領域とでは合金組成が異なり、その高温での腐食電位も互いに異なるものになると考えられる。従って、腐食環境である高温大気中に隣接するそれら相領域同士の境界が露出している部分では、いわゆる局部電池が形成され、その短絡電流によって腐食が進行
しやすくなるものと考えられる。
ここで、上記各相領域が偏平形状をなして積層される場合、本発明のようにその積層方向を放電方向とほぼ一致させるようにすれば、発火部表面のうち、特に消耗しやすい放電面(発火面)への領域境界の露出比率が減少する。これにより、局部電池形成による発火部の腐食が進みにくくなり、ひいては粒界腐食による脱粒等も抑制されて発火部の耐久性が向上するものと考えられる。
ここで、合金中の個々の主成分系相領域及び個々の添加元素系相領域は、合金を構成する結晶粒形態と必ずしも関連を有していなくともよく、例えば、各領域の少なくとも一部のものが、それぞれ多数の結晶粒が集合して形成される偏平な集合粒領域となっており、その集合粒領域の単位で互いに積層された形態になっていてもよい。
また、中心電極と接地電極との対向方向において、接地電極の発火部の先端面から、溶接部の先端縁までの距離を0.2mm以上とすることで、溶接部と中心電極との間で放電しにくくなるので、発火部の耐消耗性が向上する。なお、その距離は、望ましくは0.25mm以上とするのがよい。
上記本発明のスパークプラグは、具体的には次のように構成できる。
接地電極の一端を主体金具に結合するとともに、他端側を中心電極側に曲げ返して、その側面が中心電極の先端面と対向するように配置する。発火部は、貴金属合金をレーザー溶接により溶接部を形成して接地電極に接合することにより、形成する。そして、接地電極の発火部は、偏平形状をなす主成分系相領域と添加元素系相領域とが、中心電極の軸線方向に積層された組織を有するものとする。また、その溶接部は、中心電極と接地電極との対向方向において、接地電極の発火部の先端面から溶接部の先端縁までの距離が0.2mm以上になるように、形成する。この場合、接地電極の発火部においては、中心電極の軸線とほぼ直交する向きに放電面が形成されるが、上記組織構造とすることで、当該放電面での消耗が効果的に抑制されることとなる。また、溶接部が中心電極より十分に離間されるので、発火部の消耗が効果的に抑制されることとなる。
なお、本明細書において「偏平形状」とは、積層方向における最大寸法が、これと直交する任意の向きの寸法の最大値よりも小さいことをいう。例えば、主成分系相領域と添加元素系相領域とは、それぞれ板状に形成されていてもよいし、一方向に延伸された棒状ないし繊維状に形成されていてもよい。
添加元素成分は、具体的にはRh、Pt、Ir、Pd、Re、Ru、Nb、Os及びWのうち、主成分元素とは異なる1種又は2種以上を含むものとすることができる。例えば、発火部を構成する合金が、Irを主体として、これにRh、Pt、Pd、Re、Ru、Nb、Os及びWの1種又は2種以上を添加した組成を有するものである場合、主成分元素はIrであり、添加元素系成分はRh、Pt、Pd、Re、Ru、Nb、Os及びWの1種又は2種以上を主体とするものとなる。また、発火部を構成する合金が、さらに具体的に、Irを主成分としてRh及び/又はPtを含有する二元又は三元合金である場合には、主成分元素はIrとなり、添加元素成分はRh及び/又はPtを主体とするものとなる。
発火部を構成する合金のうち、Irを主成分とするものとしては、例えば次のようなものを使用できる(ただし、本発明でいう添加元素系相領域が合金中に形成される組成に限る)。
(1)Irを主体としてRhを3〜50重量%(ただし50重量%は含まない)の範囲で含有する合金を使用する。該合金の使用により、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗が効果的に抑制され、ひいては耐久性に優れたスパークプラグが実現される。
上記合金中のRhの含有量が3重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるため、プラグの耐久性が低下する。一方、Rhの含有量が50重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下する。以上のことから、Rhの含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは7〜30重量%、より望ましくは15〜25重量%、最も望ましくは18〜22重量%の範囲で調整するのがよい。
(2)Irを主体としてPtを1〜20重量%の範囲で含有する合金を使用する。該合金の使用により、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗が効果的に抑制され、ひいては耐久性に優れたスパークプラグが実現される。なお、上記合金中のPtの含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるため、プラグの耐久性が低下する。一方、Ptの含有量が20重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下する。
(3)Irを主体としてPtを1〜20重量%の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%の範囲で含有した合金を使用する。該合金の使用により、高温でのIr成分の酸化・揮発による消耗が効果的に抑制されるとともに、合金のRh含有量を上記範囲で調整することにより、その加工性が劇的に改善される。これにより、耐久性(特に高速走行時の耐久性)と量産性の双方に優れたスパークプラグを実現することができる。
Rhの含有量が1重量%未満になると、合金の加工性改善効果が十分に達成できなくなり、例えば加工中に割れやクラックなどが生じやすくなって、発火部となるべきチップを製造する際の材料歩留まりの低下につながる。また、熱間打抜き加工等によりチップを製造する場合は、打抜き刃等の工具の消耗あるいは損傷が生じやすくなり、製造効率が低下する。一方、49重量%を越えると合金の融点が低下し、プラグの耐久性低下を招く。それ故、Rhの含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは2〜20重量%の範囲で調整するのがよい。
特に、RhないしPtの合計含有量が5重量%以上である場合には合金がさらに脆くなり、所定量以上のRhを添加しないと、加工によるチップ製造が極めて困難となる。この場合、Rhは2重量%以上、望ましくは5重量%以上、さらに望ましくは10重量%以上添加するのがよい。なお、Rhの含有量が3重量%以上である場合には、Rhは加工性の改善だけでなく、高温でのIr成分の酸化・揮発の抑制に対しても効果を生ずる場合がある。
また、Ptの含有量が1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるため、プラグの耐久性が低下する。一方、含有量が20重量%以上になると合金の融点が低下し、プラグの耐久性が同様に低下したり、あるいは高価なPtの含有量が増大して、チップの材料コストが増大する割には、発火部の消耗抑制効果がそれほど期待できなくなる問題が生ずる。以上のことから、Ptの合計含有量は前述の範囲で調整するのがよく、望ましくは3〜20重量%の範囲で調整するのがよい。
(4)Ir−Rh−Pt合金を使用する場合、Ir成分の酸化揮発による消耗を効果的に抑制しつつ、なるべく高価なPt及びRhの含有量を低減させる観点においては、次のような合金組成を採用することも有効である。すなわち、該合金は、主成分として0.2〜10重量%のRhと10重量%以下のPtとを含有するとともに、Ptの含有量をWPt(単位:重量%)、Rhの含有量をWRh(単位:重量%)として、WPt/WRhを0.1〜1.5とする。
すなわち、該合金は、Ptの含有量をRhの含有量の1.5倍以下とする点に特徴がある。すなわち、Ptの含有量を上述のように設定することで、Ir−Rh二元合金を使用する従来のスパークプラグと比較して、Rh含有量を大幅に削減しても発火部の耐消耗性を十分に確保でき、ひいては高性能のスパークプラグをより安価に構成できるようになるのである。この場合、上記(3)の合金と共通する組成領域を採用すれば、合金の加工性改善効果も合わせて達成できることとなる。
上記合金中のRhの含有量が10重量%を超えた場合は、Irの酸化揮発抑制効果に対するPt添加の寄与が顕著でなくなり、例えば従来のIr−Rh二元合金を使用したスパークプラグに対する優位性が確保できなくなる。一方、Rhの含有量が0.2重量%未満になると、Ir成分の酸化揮発抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなってプラグの耐消耗性が確保できなくなる。
ここで、Irの酸化揮発抑制に対するPt添加の効果は、Rh含有量が少なくなるにつれて顕著となる傾向がある。この場合、特にRhの含有量が8重量%以下となる組成を採用することで、より少ないRh含有量でもPt添加により、発火部におけるIrの酸化揮発ひいては発火部の耐消耗性を顕著に向上させることができ、従来のIr−Rh二元合金で発火部を構成したスパークプラグに対する優位性が一層高められる。なお、Rhの含有量は、望ましくは0.2〜3重量%、より望ましくは0.5〜2重量%の範囲で調整するとよい。
次に、Ptの含有量が10重量%を超えると、Ir成分の酸化揮発抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなってプラグの耐消耗性が確保できなくなる。また、Rhの含有量をWRh、Ptの含有量をWPtとすれば、WPt/WRhは1.5以下の範囲で調整するようにする。WPt/WRhが1.5を超えると、Ptを添加しない場合と比較して却ってIrの酸化揮発抑制に対する効果が損なわれてしまう場合がある。一方、WPt/WRhが0.1未満になると、Pt添加によるIrの酸化揮発抑制効果への寄与がほとんど期待できなくなる。なお、WPt/WRhは、より望ましくは0.2〜1.0の範囲で調整するのがよい。
以上のことは、発火部を構成する材料中のPt含有量WPtの望ましい範囲が、Rh含有量WRhによって異なるものとなることを意味している。例えばWRhが1重量%である場合には、WPtの範囲は0.1〜1.5重量%とするのがよい。また、WRhが2重量%である場合には、WPtの範囲は0.2〜3重量%とするのがよい。また、WRhが3重量%である場合には、WPtの範囲は0.3〜4.5重量%とするのがよい。また、WRhが4重量%である場合には、WPtの範囲は0.4〜6重量%とするのがよい。
(5)Irを主体としてRhを0.1〜35重量%の範囲で含有し、さらにRuを0.1〜17重量%の範囲で含有する合金を使用する。これにより、高温でのIr成分の酸化・揮発による発火部の消耗がさらに効果的に抑制され、ひいてはより耐久性に優れたスパークプラグが実現される。Rhの含有量が0.1重量%未満になるとIrの酸化・揮発の抑制効果が不十分となり、発火部が消耗しやすくなるため、プラグの耐消耗性が確保できなくなる。一方、Rhの含有量が35重量%を超えると、Ruを含有する合金の融点が低下して耐火花消耗性が損なわれ、プラグの耐久性が同様に確保できなくなる。それ故、Rhの含有量は上記範囲で調整される。
一方、Ruの含有量が0.1重量%未満になると、該元素の添加によるIrの酸化・揮発による消耗を抑制する効果が不十分となる。また、Ruの含有量が17重量%を超えると、発火部が却って火花消耗しやすくなり、プラグの十分な耐久性が確保できなくなる。それ故、Ruの含有量は上記範囲で調整され、望ましくは0.1〜13重量%、さらに望ましくは0.5〜10重量%の範囲で調整するのがよい。
Ruが合金中に含有されることにより発火部の耐消耗性が改善される原因の一つとして、例えばこの成分の添加により、合金表面に高温で安定かつ緻密な酸化物皮膜が形成され、単体の酸化物では揮発性が非常に高かったIrが、該酸化物皮膜中に固定されることが推測される。そして、この酸化物皮膜が一種の不動態皮膜として作用し、Ir成分の酸化進行を抑制するものと考えられる。また、Rhを添加しない状態では、Ruを添加しても合金の高温での耐酸化揮発性はそれほど改善されないことから、上記酸化物皮膜はIr−Ru−Rh系等の複合酸化物であり、これが緻密性ないし合金表面に対する密着性においてIr−Ru系の酸化物皮膜より優れたものとなっていることも考えられる。
なお、Ruの含有量が増え過ぎると、Ir酸化物の揮発よりはむしろ下記のような機構により火花消耗が進行するようになるものと推測される。すなわち、形成される酸化物皮膜の緻密性あるいは合金表面に対する密着力が低下し、該合計含有量が17重量%を超えると特にその影響が顕著となる。そして、スパークプラグの火花放電の衝撃が繰返し加わると、形成されている酸化物皮膜が剥がれ落ちやすくなり、それによって新たな金属面が露出して火花消耗が進行しやすくなるものと考えられる。
また、Ruの添加により、さらに次のような重要な効果を達成することができる。すなわち、Ruを合金中に含有させることにより、Ir−Rh二元合金を使用する場合と比較して、Rh含有量を大幅に削減しても耐消耗性を十分に確保でき、ひいては高性能のスパークプラグをより安価に構成できるようになる。この場合、Rhの含有量は望ましくは0.1〜3重量%となっているのがよい。
なお、上記(1)〜(5)のいずれの材質においても、チップを構成する材料には、元素周期律表の3A族(いわゆる希土類元素)及び4A族(Ti、Zr、Hf)に属する金属元素の酸化物(複合酸化物を含む)を0.1〜15重量%の範囲内で含有させることができる。これにより、Ir成分の酸化・揮発による消耗がさらに効果的に抑制される。上記酸化物の含有量が0.1重量%未満になると、当該酸化物添加によるIrの酸化・揮発防止効果が十分に得られなくなる。一方、酸化物の含有量が15重量%を超えると、チップの耐熱衝撃性が低下し、例えばチップを電極に溶接等により固着する際に、ひびわれ等の不具合を生ずることがある。なお、上記酸化物としては、Yが好適に使用されるが、このほかにもLa、ThO、ZrO等を好ましく使用することができる。
以下、本発明のいくつかの実施の形態を図面を用いて説明する。図1及び図2に示す本発明の一例たるスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された発火部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記発火部31に対向する発火部32が形成されており、それら発火部31と、対向する発火部32との間の隙間が火花放電ギャップgとされている。
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための孔部6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。
なお、発火部31を省略する構成としてもよい。この場合には、発火部32と中心電極3との間で火花放電ギャップgが形成される。
図2(b)に示すように、中心電極3及び接地電極4の本体部3a及び4aはNi合金等で構成されている。一方、上記発火部31及び対向する発火部32は、Ir、Pt及びRhから選ばれる主成分元素と、該主成分元素以外の1種又は2種以上の添加元素成分、例えばRh、Pt、Pd、Re、Ru、Nb、Os及びWの1種又は2種以上とからなる貴金属合金を主体に構成される。そして、図3にごく模式的に示すように、その貴金属合金は、主成分元素を主体とする主成分系相領域50と、添加元素成分の含有量が主成分系相領域よりも多く、かつ主成分元素の含有量が主成分系相領域の97%以下となる添加元素系相領域51とがそれぞれ偏平形状をなして、発火部32における電圧印加方向(すなわち、図1において中心電極3の軸線O方向)に多数層状に積層された組織を有している。
以下、上記貴金属合金が、所定の臨界温度までは全率固溶し、該臨界温度以下では溶解度を生じて相分離を起こす合金で構成される場合について、さらに詳しく説明する。このような合金系で、本発明の発火部を構成しうるものとしては、例えばIr−Rh系、Ir−Pt系、Pt−Rh系、Ir−Pt−Rh系があるが、本実施例ではIr−Pt−Rh三元系合金、例えばIrを主体としてPtを1〜20重量%(望ましくは5〜20重量%)の範囲で含有し、さらにRhを1〜49重量%(望ましくは2〜20重量%)の範囲で含有した合金で発火部31ないし32を構成する場合を例にとる。この場合、図3において、主成分系相領域50はIrを主体として残余の組成が実質的にRh及びPtとなる相領域となり、添加元素系相領域51は、Rh及びPtの平均的な含有量が上記主成分系相領域よりも多く、かつIrの平均的な含有量が主成分系相領域の90%以下となる相領域となる。このような発火部31ないし32を形成するための円板状のチップは、例えば次のようにして製造できる。
すなわち、原料となるIr単体金属、Pt単体金属及びRh単体金属とを所期の比率で配合し、これを溶解して合金インゴットを作る。図5は、例えばIr−Rh二元系状態図を示しているが、臨界温度は約1335℃であり、これ以下の温度においては合金はRhリッチ相α1とIrリッチ相α2とに分離する。また、Ir−Pt系、及びRh−Pt系も、同様の2相分離型状態図を示す。そして、上述のようにIrが主体となる組成では、冷却とともにIrリッチ相中にRhリッチ相及び/又はPtリッチ相が析出(組成によってはスピノーダル分解の可能性もありうる)する形で相分離が進行するものと推測される。
この合金インゴットを、図6に示すように、例えば700℃前後に加熱して熱間圧延により板材300にすると、該板材300中には、Irリッチ相を主体とする主成分系相領域50と、Rhリッチ相及び/又はPtリッチ相の含有比率がそれよりも高い添加元素系相領域51とが、板厚方向に多数積層された組織が生ずる。
本発明者らがIr−5重量%Rh−5重量%Pt合金を用いたチップについて、SEM(走査電子顕微鏡)付属のEPMA(電子プローブ微小分析)の面分析により、断面のIr濃度分布を測定したところ(後述する図13)、主成分系相領域50はIrの含有量が約92重量%程度(残部Rh+Pt)であり、添加元素系相領域51はIrの含有量が約88重量%(主成分系相領域の約96%)程度であった。そして、主成分系相領域50と添加元素系相領域51とはいずれも、Irを主成分としてPtとRhで占められる固溶体相(以下、Irリッチ相という)を主体としつつ、Rhを主体として残余が実質的にIrとPtで占められる固溶体相(以下、Rhリッチ相という)と、Ptを主体として残余が実質的にIrとRhで占められる固溶体相(以下、Ptリッチ相という)とが微小な析出物となってこれに分散形成されたものになっていると推測される。この場合、主成分系相領域50中のRhリッチ相析出物及びPtリッチ相析出物の形成密度が、添加元素系相領域51中のそれよりも高くなっており、結果として両領域50,51間でIrの平均的な含有量に差が生じているものと考えられる。
なお、平衡状態図によればIrリッチ相と、Rhリッチ相及びPtリッチ相との間のIr含有量の差は50重量%以上に及ぶと推測されるが、上記EPMA面分析においては倍率1000倍程度に拡大しても、これに相当する濃度差を有する各相を目視にて判別することができなかった。従ってRhリッチ相及びPtリッチ相の各析出物が形成されているとしても、個々の析出物は1μm以下の微細粒子になっているのではないかと推測される。
さて、上記板材300は、例えば熱間打抜きにより円板状に打ち抜くことにより、あるいは放電加工により円板状に切り出すことにより、軸方向に主成分系相領域50と添加元素系相領域51とが積層されたチップ150が得られる。
そして、図2(b)に示すように、中心電極3の本体部3aは先端側が縮径されるとともにその先端面が平坦に構成され、ここに上記円板状のチップ150(図6)を重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接により溶接部Wを形成してこれを固着することにより発火部31が形成される。また、対向する発火部32は、発火部31に対応する位置において接地電極4にチップ150(図6)を位置合わせし、その接合面外縁部に沿って同様に溶接部Wを形成してこれを固着することにより形成される。
以下、スパークプラグ100の作用について説明する。
すなわち、スパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。ここで、その火花放電ギャップgを形成する発火部31及び対向する発火部32を構成する合金は、いずれも中心電極3の軸線方向、すなわち放電電圧の印加方向において、偏平形状をなす上記主成分系相領域50と添加元素系相領域51とが多数積層された構造を有するものとなっている。これにより、両発火部31,32の消耗を極めて効果的に抑制することができ、ひいては耐久性に優れたスパークプラグが実現される。
発火部31,32の耐消耗性が向上する理由は以下のように推測される。すなわち、主成分系相領域50と添加元素系相領域51とでは、酸素を含有する高温の大気中においては、主成分系相領域50の方がIr成分の含有量が高いことからIr成分の酸化揮発が進行しやすい。その結果、図4に示すように、それら相領域50と51との境界Bが露出している部分では、主成分系相領域50側をカソード、添加元素系相領域51側をアノードとする局部電池が形成され、その短絡電流によって腐食が進行しやすくなると考えられる。しかしながら、上記各相領域50,51の積層方向は放電方向とほぼ一致しており、図2において、発火部31,32の表面のうち、特に消耗しやすい放電面(発火面)31sないし32sへの領域境界Bの露出比率は減少する。これにより、例えば図2(c)に示すような方位関係で発火部31,32を配置した場合よりも、局部電池形成による発火部31,32の腐食が進みにくくなり、粒界腐食による脱粒等も抑制されてその耐久性が向上すると考えられる。
なお、熱間圧延加工により板材300(図6)中に上記層状組織が形成される理由は、あくまでも推測の域を出ないが、次のようなことが考えられる。まず、合金原料となるIr、Pt及びRhはいずれも非常に高融点の貴金属であるから、次のような手法による少量バッチ生産方式を採用するのが有利であると考えられる。すなわち、図8(a)に示すように、耐火性の容器62に各原料金属60を所期の組成となるように配合し、誘導加熱コイル(あるいは、レーザービーム、プラズマアークビーム等でもよい)等の熱源63により、原料配合物を局所溶解させ、同図(b)に示すように、その溶解領域200aを所定の方向に徐々に移動させることにより全体を溶解させる。なお、均質な合金を得るためには、該方式の溶解を複数回繰り返すことが望ましい。
ここで、溶解領域200aは、既に凝固済みの合金部分200bによって指向的に冷却されるため、Rhリッチ相及び/又はPtリッチ相が形成される場合、これら各相は冷却方向に優先析出しやすくなると考えられる。その結果、得られる合金インゴット200は、図8(c)に示すように、該Rhリッチ相及び/又はPtリッチ相の形成比率が高い添加元素系相領域51が、主成分系相領域50中において、熱源63の移動方向に長く延びた層状(あるいは柱状)の組織を呈するものになると考えられる。
そして、図9に示すように、これを、添加元素系相領域51と主成分系相領域50との積層方向が圧下方向となるように1ないし複数回熱間圧延すると(温度:例えば約700℃)、インゴット200は厚みを減じて板材300となる。このとき、添加元素系相領域51と主成分系相領域50とは、その厚みを減ずる形でもとの積層構造は維持するものと考えられるから、結果的に板材300は図6のような層状組織を有するものになると推測される。
なお、合金インゴット200の結晶粒は、前述の指向性冷却の影響で圧延前の状態では、添加元素系相領域51と主成分系相領域50とに対応して、長く引き伸ばされた形状になっていることも考えられる。しかしながら、これに上述の温度域で熱間圧延を施すと、いわゆる動的再結晶によって結晶粒が微細化することもある。その一方で、上記熱間圧延温度は、合金が単相化する温度よりはかなり低いため、結晶の微細化とは関係なく、添加元素系相領域51と主成分系相領域50との層状構造は少なくとも部分的に維持される可能性が高い。その結果、図10に示すように、各領域50及び51の少なくとも一部のものが、それぞれ多数の結晶粒50aないし51aが集合して形成される偏平な集合粒領域となり、その集合粒領域の単位で互いに積層された組織が形成されることもありうる。
なお、図11(a)に示すように、インゴットの状態で添加元素系相領域51と主成分系相領域50とが層状形態をなさず、例えば等軸晶に比較的近い組織を有していた場合でも、熱間圧延により潰れて、同図(b)に示すような層状組織が形成されることもありうる。
一方、別の推測される機構としては、熱間圧延中あるいは圧延後の冷却過程において、Rhリッチ相及び/又はPtリッチ相が、圧延応力の影響を受けてIrリッチ相中に層状形態に析出することも考えられる。
以下に、本発明の別形態のスパークプラグについて説明する。
本発明の別形態のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、その絶縁体の外側に設けられた主体金具と、中心電極と対向するように配置された接地電極と、その接地電極に固着されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備えるとともに、接地電極には中心電極との対向面から中心電極側に突出して突起部が形成され、その突起部の先端面に発火部が形成されたことを特徴とする。
接地電極に貴金属チップを固着して発火部を形成したスパークプラグにおいては、図2(b)に示すように、接地電極4の中心電極との対向面4cに直接貴金属チップ32’を重ねるか、あるいは図15に示すように、該対向面4cに浅い凹部4dを形成してその凹部4d内にチップ32’を配置し、その状態で該チップ32’の外周縁に溶接部Wを形成してこれを接地電極4に接合した構造を有するものが多い。この溶接部Wは、接地電極4の金属成分とチップ32’の金属成分とが合金化することにより概して融点が低下しており、しかも接地電極4の表面上で発火部32よりも外側に広がって形成されるため、図16に示すように火花のアタックを受けやすく、消耗が進行しやすくなっている。そして、図2あるいは図15に示す構造においては、発火部32で発生する火花に極く近接して溶接部Wが存在するため、例えば高速・高負荷運転時など長時間高温にさらされる条件下においては、発火部32の寿命を十分に確保できなくなる場合もありうる。
また、近年、排気ガス規制が高まるにつれ、自動車エンジン等もリーンバーン型のものが増えており、希薄な混合気にも確実に着火できるスパークプラグが要求されている。この場合、スパークプラグの着火性を高めるためには、発火部の先端径を小さくすることが有効である。ここで、例えば図15の構造においては、チップ32’を凹部4d内に埋設する形となるために発火部32は突出高さが小さくなる。その結果、その先端面4eは溶接部Wとほとんど面一となるか、あるいは逆に溶接部Wが先端面4eよりも突出した構造となるので、中心電極に対向する溶接部Wの表面が実質的に放電面の一部として機能する形となり、発火部の細径化ひいては着火性向上という観点においては不利に作用する場合がある。
そこで、上記本発明の別形態のスパークプラグの構成を採用することにより、このような問題点を一挙に解決することができる。具体的には、図17及び図18に示すように、接地電極4の対向面4cから中心電極3側に突出して突起部4f(例えば円形断面のもの)を形成し、その突起部4fの先端面に溶接部Wによって貴金属チップを固着することにより発火部32を形成するようにする。この場合、溶接部Wは、重ね合わされた貴金属チップ32’と突起部4fとをそれらの外周面において互いに結合するものとして形成できる(なお、図1及び図2の共通の部分には同一の符号を付して説明は省略する)。
これにより、溶接部Wは、接地電極4の対向面4cから突起部4fの高さに相当する分だけ離間するので、溶接ダレ部分等が該対向面4c上で大きく広がることが防止ないし抑制され、ひいては溶接部Wが火花のアタックを受けにくくなって発火部32の耐久性を向上させることができる。また、図18において発火部32の先端面4eの対向面4cからの突出高さH2を十分大きくできるので、溶接部Wの影響で発火部32の先端径が増大する問題も生じにくい。その結果、リーンバーンエンジン等に使用する場合も、その発火部を容易に細径化することができ着火性を高めることができる。さらに、突起部4fに貴金属チップを接合して発火部を形成するようにしたから、接地電極4からの突出部分の全体を貴金属チップにより形成するのと比較して、高価な貴金属の節約になる。
なお、溶接部Wは、例えばレーザー溶接により形成することが、貴金属チップ32’と突起部4fとの接合強度を高める上で望ましい。
次に、対向面4cからの、発火部32の先端面4eの突出高さH2は、突起部4fの高さと発火部32の厚みH3との合計として表すことができる。この場合、発火部32の軸断面径(断面形状が非円形の場合は、同一面積の円の直径にて代用する)をAとして、該Aと前述のH2との比A/H2は、2.0以下とすることが望ましい。A/H2が2.0を超えると溶接部Wが対向面4c上で広がりやすくなり、火花のアタックを受けて消耗しやすくなる。A/H2は、より望ましくは1.5以下とするのがよい。また、H3/H2は0.6〜1.0の範囲で調整するのがよい。H3/H2が0.6未満になると、発火部32が薄くなり過ぎて寿命が早く尽きてしまう問題がある。一方、1.0を超えると突起部4fによる貴金属部分節約の効果が顕著でなくなる。
また、中心電極3と接地電極4との対向方向において、発火部32の先端面4eから、溶接部Wの先端縁までの距離H1は、0.2mm以上とすることが望ましい。H1が0.2mm未満になると、溶接部Wと中心電極3との間で放電しやすくなり、溶接部Wの消耗が進みやすくなる問題を生ずる。なお、H1は、望ましくは0.25mm以上とするのがよい。
例えば図19に示すように、鍛造等により接地電極4の対向面4cに突起部4fを一体形成しておき、次いでこれに貴金属チップ32’を重ね合わせ、さらにその外周部にレーザー溶接により溶接部Wを形成して両者を接合することにより、上記発火部32を形成することができる。一方、図20に示すように、接地電極4の対向面4cに、突起形成部材4f’を溶接部W’(レーザー溶接)により接合してこれを突起部4fとし、さらにこれに貴金属チップ32’を溶接部Wにより接合して発火部32を形成するようにしてもよい。この場合、突起形成部材4f’に貴金属チップ32’を予め接合・一体化しておいて、その接合物を接地電極4に接合するようにしてもよい。
なお、発火部31,32は、貴金属を主体として接地電極4の構成金属よりも高融点の金属により構成でき、例えばPt、Ir、W及びReの1種又は2種以上を主体とする金属により構成できる。例えばIr合金で構成する場合は、前述の(1)〜(5)のIr合金のいずれかを使用することが可能である。
(実施例1)
所定量のIrとRh及びPtとを配合・溶解することにより、Ir−5重量%Rh−5重量%Ptの組成を有する合金を作製した。この合金に対し、温度700℃で熱間圧延を行い、厚さ0.5mmの板材に加工した。次いで、上記得られた板材を熱間打抜き加工(温度700℃以上)することにより、直径0.7mm、厚さ0.5mmの円板状のチップを得た(実施例)。一方、比較例として、合金を同じく700℃で熱間スエージングによりロッド状に加工し、さらに放電加工により、その軸方向に厚さ5mmに切断して作製した円板状のチップも用意した。
それらチップを用いて図1及び図2(a)に示すスパークプラグ100の発火部31及び対向する発火部32を形成するとともに(火花放電ギャップgの幅1.1mm)、各プラグの性能試験を以下の条件にて行った。すなわち、6気筒ガソリンエンジン(排気量2000cc)にそれらプラグを取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数5000rpmにて累積600時間まで運転を行ない、各時間毎のプラグの火花放電ギャップgの拡大量を測定した。結果を図12に示す。
すなわち、比較例のプラグは火花放電ギャップgが著しく拡大しているのに対し、実施例のプラグについては、火花放電ギャップの増加が小さく耐久性に優れていることがわかる。
また、実施例のプラグの発火部31に対しては、中心電極の軸線を含む面で切断し、SEM(走査電子顕微鏡)付属のEPMA(電子プローブ微小分析)の面分析により、断面のIrとRhの濃度分布を測定した。図13(a)は、Ir特性X線の強度分布を示す二次元マッピングの出力結果(黒い部分ほどIr濃度が高いことを示す)、同図(b)は、Rh特性X線の強度分布を示す二次元マッピングの出力結果(黒い部分ほどRh濃度が高いことを示す)をそれぞれ示している。また、図13において、矢印は中心電極3の軸線方向であり、図面上方が放電面側である。
まず、図13(a)においては、Ir特性X線の強度分布において、中心電極3の軸線方向に層状をなす縞状の濃淡のコントラストが現われている。一方、図13(b)においては、(a)のIr特性X線の強度が低い領域に対応して、Rh特性X線の強度が高い領域が現われている。すなわち、発火部31には、Ir濃度の高い相領域(主成分系相領域)と、Rh濃度の高い相領域(添加成分系相領域)とが、上記方向に多数積層された組織を有しているものであることがわかる。なお、各濃淡領域の特性X線の平均強度レベルから算出した主成分系相領域のIr濃度は約92重量%、Rh濃度は約3.5重量%、Pt濃度は5.5重量%であり、同じく添加成分系相領域のIr濃度は約88重量%、添加成分系相領域のRh濃度は約6.5重量%、Pt濃度は約5.5重量%であった。
図14(a)は、実施例のプラグの試験終了後における発火部の外観写真を、また、同図(b)は、比較例のプラグの試験終了後における発火部の外観写真を、それぞれ示す。すなわち、実施例のプラグでは発火部の消耗がそれほど進行していないことがわかる。これは、消耗しやすい放電面(発火面)への、上記両領域境界の露出比率が比較的少なく、局部電池形成による発火部の腐食が進みにくくなったためであると推測される。一方、比較例のプラグでは、発火部は図7のチップ150と同様の組織状態になっていると考えられ、発火面となるその軸方向端面には上記境界が相当量露出していることから、発火部の腐食が急速に進んだのではないかと推測される。
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について説明する。
所定量のIrとRh及びPtとを配合・溶解することにより、Ir−5重量%Rh−5重量%Ptの組成を有する合金を作製した。この合金に対し、温度700℃で熱間圧延を行い、厚さ0.6mmの板材に加工した。次いで、上記得られた板材を熱間打抜き加工(温度700℃以上)することにより、直径0.8mm、厚さ0.6mmの円板状の貴金属チップを得た。
このチップを用いて図19に示す方法により、図17に示すスパークプラグ100の発火部31及び対向する発火部32を形成した(火花放電ギャップgの幅1.1mm:参考発明品)。なお、中心電極3と接地電極4とは、ともにNi合金(インコネル600)により構成した。また、接地電極4の断面形状は、厚さ1.5mm、幅2.8mmの角状とした。ただし、突起部4fは、外径1.1mm、高さ0.3mmの円柱状とし、貴金属チップ32’はレーザー溶接により接合した。なお、図18における前述のH1の値は0.25mm、H2の値は0.9mm、H3の値は0.6mmとした。一方、比較のために、発火部32を図15に示す形態で形成したものも作製した。ただし、凹部4dの深さは0.5mm、発火部32の先端面4eの対向面4cからの突出高さは0.1mmとし、溶接部Wの幅w1は0.5mmとした。
上述のように発火部31,32を形成したスパークプラグの耐久試験を以下の条件にて行った。すなわち、6気筒ガソリンエンジン(排気量2000cc)にそれらプラグを取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数5000rpmにて累積600時間まで運転を行ない、各時間毎のプラグの火花放電ギャップgの拡大量を測定した。結果を図21に示す。すなわち、参考発明のスパークプラグは、比較例のスパークプラグと比較して火花放電ギャップの増加が小さく耐久性に優れていることがわかる。
(実施例3)
実施例2と同様の板材から、外径0.6〜1.5mmの各種貴金属チップを放電加工により切り出し、これを用いて図17に示すスパークプラグ100の発火部31及び対向する発火部32を形成した(火花放電ギャップgの幅1.1mm)。接地電極4の断面形状は、厚さ1.5mm、幅2.8mmの角状とした。ただし、突起部4fは、外径0.8〜1.7mm、高さ0.05〜2.5mmの円柱状とし、貴金属チップはレーザー溶接により接合した。なお、得られた各スパークプラグにおいて前述のA/H2の値は、0.5〜2.5の範囲で変化させる形とした。
上述のように発火部31,32を形成したスパークプラグの着火性試験を以下の条件にて行った。すなわち、4気筒ガソリンエンジン(排気量1600cc)にそれらプラグを取り付け、無負荷状態でアイドリングさせるとともに、吸入混合気の空燃比A/Fを10から30までの範囲で徐々に増加させ、失火回数が10回/分となる限界A/F値を測定した。なお、失火したか否かは、排気ガス中の炭化水素(HC)濃度が、定常時よりも20%以上高くなった時に失火したものと判断している。この場合、該A/Fが大きいスパークプラグほど、希薄混合気に対する着火性に優れていることを意味する。以上の結果を、図22に示す。この図において、横軸は限界A/F値を、縦軸はA/H2の値を示す。また、◎はチップの外径Aが0.6mm、○は同0.8mm、△は同1.2mm、×は同1.5mmであることを示す。すなわち、チップの外径Aによらず、A/H2が2以下の範囲で、スパークプラグの限界A/F値が20以上と高くなっていることがわかる。
本発明のスパークプラグの一実施例を示す正面全体断面図。 その部分断面図及び要部を示す拡大断面図。 その発火部の合金組織の模式図。 合金組織の推測される腐食機構の説明図。 Ir−Rh系二元系状態図。 発火部形成用のチップの製造方法の一例を示す説明図。 同じくその変形例を示す説明図。 チップの原料合金インゴットの製造方法の一例を示す工程説明図。 チップ製造用の合金板材の製造工程説明図。 発火部の合金組織の一例を拡大して示す模式図。 圧延により組織が偏平化する様子を示す模式図。 実施例の実験結果を示すグラフ。 実施例の実験で使用したスパークプラグの発火部を構成する合金断面に対して行なったEPMA面分析における、Ir特性X線及びRh特性X線の強度分布二次元マッピング出力。 実施例の実験で使用した本発明のスパークプラグの試験後の外観を、比較例のスパークプラグの外観とともに示す写真。 接地電極側の発火部の形成形態の別の例を示す説明図。 図15の発火部の問題点を説明する説明図。 参考発明のスパークプラグの一実施例を示す正面部分断面図。 その要部を示す拡大断面図。 参考発明のスパークプラグの製造方法の一例を示す説明図。 同じく別の例を示す説明図。 参考実施例1における実験結果を示すグラフ。 参考実施例2における実験結果を示すグラフ。
符号の説明
1 主体金具
2 絶縁体
3 中心電極
4 接地電極
31 発火部(チップ)
32 対向する発火部(チップ)
g 火花放電ギャップ
50 主成分系相領域
51 添加元素系相領域

Claims (4)

  1. 中心電極と、その中心電極の外側に設けられた絶縁体と、その絶縁体の外側に設けられた主体金具と、前記中心電極と対向するように配置された接地電極と、その接地電極に溶接部により接合されて火花放電ギャップを形成する発火部とを備え、
    前記接地電極の発火部が、Ir、Pt及びRhから選ばれる主成分元素と、該主成分元素以外の1種又は2種以上の添加元素成分とからなる貴金属合金を主体に構成されるとともに、該貴金属合金の組織には前記添加元素成分の濃度分布に縞状の濃淡を生じており、その濃淡縞の方向が前記発火部における電圧印加方向と交差する向きに配置され、
    前記溶接部は、レーザー溶接により形成されており、前記中心電極と該接地電極との対向方向において、該発火部の先端面から該溶接部の先端縁までの距離が0.2mm以上あり、
    前記貴金属合金は、前記主成分元素を主体とする主成分系相領域と、前記添加元素成分の含有量が主成分系相領域よりも多く、かつ主成分元素の含有量が主成分系相領域の97%以下となる添加元素系相領域とがそれぞれ偏平形状をなして、前記発火部における電圧印加方向に多数層状に積層された組織を有していることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記接地電極は一端が前記主体金具に結合されるとともに、他端側が前記中心電極側に曲げ返されて、その側面が前記中心電極の先端面と対向するように配置され、
    前記接地電極の発火部は、前記中心電極の先端面と対向する該接地電極の側面に形成され、偏平形状をなす前記主成分系相領域と前記添加元素系相領域とが、前記中心電極の軸線方向に積層された組織を有する請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記主成分系相領域と前記添加元素系相領域とは、それぞれ板状に形成されている請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記主成分系相領域と前記添加元素系相領域とは、それぞれ一方向に延伸された棒状ないし繊維状に形成されている請求項1または2に記載のスパークプラグ。
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