JP5068347B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
自動車エンジン等の内燃機関の着火用に使用されるスパークプラグにおいては、エンジンの高出力化や燃費向上の目的で、燃焼室内の温度が高くなる傾向にある。また、着火性向上のために、スパークプラグの火花放電ギャップに対向する放電部を燃焼室内部に突き出させるタイプのエンジンも多く使用されるようになってきている。このような状況では、スパークプラグの放電部が高温にさらされるので、その火花消耗が進み易くなる。そこで火花放電ギャップに対向する放電部の耐火花性向上のために、電極の先端にIr等を主体とする貴金属チップを溶接したタイプのものが多数提案されている。
例えば、特許文献1には、主体としてIrと、Rh及びNiで構成される貴金属チップが記載されている。これは、Irが高融点(2410℃)であるため、火花放電による消耗(以下、火花消耗ともいう)に対する耐久性が良好であることを生かしつつ、Irの高温(約900℃以上)での酸化揮発による消耗(以下、酸化消耗とも言う)を防止するために、Rhを添加することにより耐酸化消耗性を向上させることができる。しかし、使用条件によっては、主成分としてのIrと、Rhが含有された貴金属チップにて構成された放電部からなるスパークプラグでは、運転後に放電部の火花放電ギャップに対する位置である放電面ではない、外周側面を円弧状にえぐるような形態で異常消耗が生じていた。そこで、特許文献1では、異常消耗を抑制する成分として、Niに着目し、主成分としてのIrとRhを含有した貴金属チップにさらにNiを含有させることで、火花消耗とIrの酸化消耗を防止しつつ、上記のような異常消耗を抑制することができた。
特開2002−359050公報
しかしながら、特許文献1のような主成分としてのIrと、Rhと、Niで構成された貴金属チップを放電部に用いても、その使用条件によっては、放電部の表面に粒状のダレが生じる発汗が生じ、さらには放電部の表面が膜状に剥離する現象が出るものもあった。本発明者等は主成分のIrと、1質量%のRhと、1質量%のNiを含有した貴金属チップを構成した放電部を中心電極のみ設けたスパークプラグを、スロットル全開状態、9600rpmにて一分間、アイドリングにて30秒の繰り返しにて運転をおこなった。そして、100時間後の放電部の外観を観察したところ、図3に示すように、放電部の表面に貴金属の剥離が生じていることが観察された。この剥離が生ずると、放電部の体積が減少してしまい、耐久性を損なってしまう。なお、この剥離は、放電部の火花消耗や酸化消耗、異常消耗を抑制する従来の方法では、完全に解消することができなかった。
本発明の課題は、貴金属チップにて放電部を形成したスパークプラグであって、放電部の火花消耗や酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、放電部表面における貴金属の発汗、剥離を抑制することができるスパークプラグを提供する。
上記課題を解決するための請求項1のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の先端部に自身の側面が対向するように配置された接地電極と、を備え、火花放電ギャップに対向する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成され、前記貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、さらにNiを0.5〜8質量%、Pt及びPdの少なくともいずれか一方を4〜8質量%で、かつNiの含有量以上含有することを特徴とする。
そこで、本発明者等の検討の結果、主成分としてのIrと、Rhで構成される貴金属チップに、さらに特定量のNIと、Pt及びPdの少なくともいずれか一方を特定量含有させた放電部とすることで、この発汗、剥離を抑制することができる知見を得た。よって、主成分のIrと、Rhとを含有し、さらにNiと、Pt及びPdの少なくとも一方を含有する貴金属チップから構成される放電部とすることで、従来からの火花消耗及び酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、さらに、放電部表面における貴金属の発汗、剥離も抑制することができる。なお、本発明において、「主成分としてのIr」は、貴金属チップ中にIrが50重量%以上含有されていることを言うものである。
また、貴金属チップは、PtとPdの少なくともいずれか一方の含有量が、Niの含有量以上である。PtとPdとの合計の含有量が、Niの含有量未満であると、上記剥離抑制の十分な効果が得られない虞がある。従って、PtとPdの少なくともいずれか一方の含有量が、Niの含有量以上であることで、放電部表面における貴金属の発汗、剥離を効果的に抑制することができる。
また、剥離に至らない発汗をも防止するためには、貴金属チップは、PtとPdの少なくともいずれか一方の含有量が、4〜8質量%である。なお、貴金属チップはIrを主成分として含有するIr基合金にて構成する。Ir基合金は、火花放電に対する耐久性が良好であるため放電部に好適に使用できる。
さらに、貴金属チップに含有されるNiの含有量は、0.5〜8質量%である。Niの含有量が0.5質量%未満であると、異常消耗抑制の十分な効果が得られないことがある。一方、Niの含有量が8質量%を超えると、Niの含有量が多くなりすぎ、放電部の耐火花消耗が低下したり、Ni酸化物が増大し、放電部の耐酸化消耗が低下し余り好ましくない。従って、上記範囲のNiを含有させることにより、主成分としてのIrとRhが含有した放電部の異常消耗を効果的に抑制することが可能である。
さらに、貴金属チップに含有されるRhの含有量は、0.5〜40質量%の範囲が良い。Rhの含有量が0.5質量%未満であると、放電部の酸化消耗を抑制する十分な効果が得られないことがある。一方、Rhの含有量が40質量%を超えると、Rhの含有量が多くなりすぎ、貴金属チップの融点が低下して、放電部の火花消耗を効果的に抑制することができなくなることがある。従って、上記範囲のRhを含有させることにより、Irが含有される放電部の酸化消耗を効果的に抑制することが可能である。
さらに、貴金属チップは、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されていてもよい。これにより、Irの高温での酸化消耗がさらに効果的に抑制される。上記酸化物の含有量は、0.5〜3質量%の範囲にて適宜設定すればよい。0.5質量%未満になると、当該酸化物による添加金属元素成分の酸化消耗防止効果が十分に得られなくなることがある。一方、酸化物の含有量が3質量%を越えると、放電部の耐熱性が却って損なわれてしまうことがある。なお、上記酸化物としては、Y及びZrの少なくとも一方が含有されているのがよい。
一方、上記課題を解決するための請求項のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の先端部に中心電極側貴金属チップが溶接されてなる中心電極側放電部と、前記中心電極の先端部に自身が対向するように配置された接地電極と、接地電極に接地電極側貴金属チップが溶接されてなる接地電極側放電部を備え、中心電極側放電部と接地電極側放電部とにより火花放電ギャップを形成し、前記中心電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、さらにNiを0.5〜8質量%、Pt及びPdの少なくともいずれか一方を4〜8質量%で、かつNiの含有量以上含有し、前記接地電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、前記中心電極側貴金属チップよりもRhの含有量が多いことを特徴とする。
本発明では、中心電極側放電部及び接地電極側放電部に使用される貴金属チップ(中心電極側貴金属チップ及び接地電極側貴金属チップ)として、主成分としてのIrと、Rhとを含有する。このように中心電極側貴金属チップ及び接地電極側貴金属チップがIrを主成分とすることで、中心電極側放電部及び接地電極側放電部の耐火花消耗を向上させることができ、さらに、Rhを含有させることで、Irの耐酸化消耗を向上することができる。
そして、中心電極側貴金属チップは、Niと、Pt及びPdの少なくともいずれか一方とを特定量含有する。このように、中心電極側放電部に用いられる中心電極側貴金属チップとして、Niを含有することで、IrとRhが含有した中心電極側貴金属放電部の異常消耗を抑制しつつ、さらに、Pt及びPdの少なくともいずれか一方とを含有することで、IrとRhとNiが含有した中心電極側貴金属放電部の放電部表面における貴金属の剥離も抑制することができる。
ところで、一般的なスパークプラグは、中心電極側放電部と比べて、接地電極側放電部は燃焼機関内に突き出すこと等により中心電極側放電部に比べて温度が高くなるため、酸化消耗の割合が高くなる。そこで、本発明では、接地電極側放電部に用いられる接地電極側貴金属チップは、中心電極側貴金属チップよりもRhの含有量を多くする。Rhを中心電極側貴金属チップよりも多く添加することにより、接地電極側放電部が高温になるが故に生ずるIrの酸化消耗を抑制することができる。これに対し、接地電極側放電部と比較し、酸化消耗の程度が低い中心電極側貴金属チップのRh含有量を接地電極側貴金属チップよりも少なく抑えることで、スパークプラグ全体における高価なRhの使用量をできるだけ小さくすることができる。
また、接地電極側貴金属チップには、0.5〜8質量%のNiが含有されていることがよい。これにより、IrとRhとが含有した接地電極側放電部の異常消耗を抑制することができる。Niの含有量が0.5質量%未満であると、異常消耗抑制の十分な効果が得られないことがある。一方、Niの含有量が8質量%を超えると、Niの含有量が多くなりすぎ、接地電極側放電部の耐火花消耗が低下したり、Ni酸化物が増大し、接地電極側放電部の耐酸化消耗が低下し、余り好ましくない。
また、接地電極側貴金属チップには、PtとPdの少なくともいずれか一方の含有量が、1〜20質量%であることが良い。これにより、主成分としてのIrとRh、Niが含有した接地電極側放電部の放電部表面における貴金属の剥離を効果的に抑制することが可能である。PtとPdとの合計の含有量が1%未満であると、上記剥離抑制の十分な効果が得られない虞がある。一方、PtとPdとの合計の含有量が20質量%を超えると、接地電極側貴金属チップの融点が低下して、接地電極側放電部の耐火花消耗が低下するので余り好ましくない。また、接地電極側貴金属チップは、PtとPdの少なくともいずれか一方の含有量が、4〜8質量%であることがより好ましい。
また、接地電極側貴金属チップには、5.2〜41質量%のRuが含有されていることを特徴とすることがよい。これにより、接地電極側放電部の剥離の発生を抑制し、接地電極側放電部の消耗や変形を抑制することができる。接地電極側貴金属チップには、8〜20質量%のRuが含有されていることがより好ましい。
本発明のスパークプラグの一実施例を示す正面全体断面図である。 図1のスパークプラグの部分断面図及び要部を示す拡大断面図である。 剥離による中心電極側の放電部の様子を示す観察写真である。
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について断面を用いて説明する。図1は本発明のスパークプラグ100の一例を示した縦断面図であり、図2(a)はスパークプラグ100の放電部周辺の拡大図である。本発明の一例たる抵抗体入りスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された中心電極側放電部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに、他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3に形成された中心電極側放電部31と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記中心電極側放電部31に対向する接地電極側放電部32が形成されており、それら中心電極側放電部31の中心電極側放電面31tと接地電極側放電部32の接地電極側放電面32tとに挟まれた隙間に火花放電ギャップgが形成されている。
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有している。また、主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、その外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成されている。貫通孔6の一方の端部側に端子13が挿入・固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔6内において端子13と中心電極3との間には抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端側は、導電性ガラスシール層16、17を介して中心電極3と端子13とをそれぞれに電気的に接続されている。なお、中心電極側放電部31及びそれに対向する接地電極側放電部32のいずれか一方を省略する構成としても良い。この場合には、中心電極側放電部31の中心電極側放電面31t又はそれに対向する接地電極側放電部32の接地電極側放電面32t及び接地電極4または中心電極3との間で火花放電ギャップgが形成される。
中心電極側放電部31は例えば、図2(b)に示すように、円板上の中心電極側貴金属チップ31´をINCONEL600、INCONEL601(英国INCO社の商標)等のNi系耐熱合金、又はFe系耐熱合金で構成される中心電極3の先端部3aの端面に重ね合わせ、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接により溶接部Wを形成してこれを固着するようにして形成される。また、例えば、INCONEL600、INCONEL601等のNi系耐熱合金で構成されている接地電極4に接地電極側放電部32を形成する場合には、接地電極側放電部32は中心電極側放電部31と対向する位置において、接地電極4に接地電極側貴金属チップ32´を位置あわせし、その接合面に、例えば、抵抗溶接により溶接部W´を形成してこれを固着することにより形成される。
ここで、中心電極側放電部31、接地電極側放電部32には、主成分としてのIrを含有し、0.5〜40質量%のRhと、0.5〜8質量%のNiと、1.0〜20重量%のPt及びPdの少なくともいずれか一方とを含有しているIr基合金にてなる中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´を使用する。これにより、中心電極側放電部31、接地電極側放電部32の火花消耗及び酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、中心電極側放電部31の放電部表面、接地電極側放電部32の放電部表面における貴金属の剥離も抑制することができる。なお、中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´は、添加元素成分として、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されていてもよい。これにより、さらに、酸化消耗を効果的に抑制することができる。
また、スパークプラグ100は、中心電極側放電部31の温度が高くなりやすい構造を有するものである。例えば、図2示すように中心電極3の中心部には、表層部をなす電極母材よりも相対的に熱伝導性に優れる芯体35が形成されている。この芯体35は中心電極側放電部31からの熱を中心電極3側に熱引きするために形成されたものであり、CuやCu合金等にて形成されている。また、スパークプラグ100は中心電極3側のみに芯体35が形成されていたが、接地電極4に芯体が設けられていてもよい。
以下、スパークプラグ100の製造方法について説明する。まず、中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´は、原料となる貴金属粉末を所期の比率で配合し、これを溶解して合金インゴットを形成する。具体的溶解方法としては、例えば、アーク溶解や、プラズマビーム溶解等の方法が採用される。また、上記インゴットは所望の組成にて配合した貴金属粉末を圧縮成形したあと、焼結することによって作製するようにしてもよい。
その後、合金を熱間鍛造、熱間圧延及び熱間伸線の1種又は2種以上の組合せにより線状あるいはロッド状の素材に加工した後、これを長さ方向に所定長さに切断して形成する。例えば、熱間鍛造によりロッド上に加工した後、溝付圧延ロールによる熱間圧延と、熱間スエージングによりさらに縮径し、最終的に熱間伸線により0.8mm以下の線径の線材に加工する。その後、該線材を所望の厚さとなるように切断し、中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´を得る。
また、中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´の作製は、さらに公知のアドマイズ法により球状の貴金属合金を作製し、該球状の貴金属合金をそのまま放電部として使用するようにしてもよいし、扁平状あるいは円柱状の中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´とすることもできる。さらに、原料となる貴金属粉末とバインダを所期の比率で配合し、金型プレス成形、CIP成形、HIP成形等の圧紛成形により成形体を作製する。そして、この成形体を脱脂後に焼結し、中心電極側貴金属チップ31´、接地電極側貴金属チップ32´を得ることもできる。
そして、中心電極3に中心電極側貴金属チップ31´を溶接し、中心電極側貴金属チップ31´が溶接された中心電極3を絶縁体2の貫通孔6内に中心電極側貴金属チップ31´が絶縁体2から突出するように取り付ける。そして、中心電極3の後端側に導電性のガラスシール(圧入固定後にガラスシール層17となる。)、抵抗体(圧入固定後に抵抗体15となる。)、導電性のガラスシール(圧入固定後にガラスシール層17となる。)の順に挿入し、絶縁体2の後端側に端子13を挿入して、公知の方法で圧入固定される。そして、中心電極3や端子13等が組み付いた絶縁体2を、接地電極4が接合された主体金具1に組み付け、さらに接地電極4に接地電極側貴金属チップ32´を溶接し、接地電極4が放電ギャップgを形成するように中心電極3側に曲げ、スパークプラグ100を得ることができる。
上記のような本発明のスパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気の着火源として使用される。使用時においては、中心電極側放電部31及び接地電極側放電部32との間に放電電圧が印加されて、火花放電ギャップgに火花が生じる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2を説明する。
なお、実施形態2のスパークプラグ200は、実施形態1のスパークプラグ100と比較して、中心電極放電部31を構成する中心電極側貴金属チップ31´及び接地電極側放電部32を構成する接地電極側貴金属チップ32´が主に異なるものであり、その他の部分についてはほぼ同様である。従って、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略または簡略化する。
図2に示すように、中心電極側放電部31は例えば、円板上の中心電極側貴金属チップ31´をINCONEL600、INCONEL601(英国INCO社の商標)等のNi系耐熱合金、又はFe系耐熱合金で構成される中心電極3の先端部3aの端面に重ね合わせ、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接により溶接部Wを形成してこれを固着するようにして形成される。また、例えば、INCONEL600、INCONEL601等のNi系耐熱合金で構成されている接地電極4に接地電極側放電部32を形成する場合には、接地電極側放電部32は中心電極側放電部31と対向する位置において、接地電極4に接地電極側貴金属チップ32´を位置あわせし、その接合面に、例えば、抵抗溶接により溶接部W´を形成してこれを固着することにより形成される。
この、中心電極側貴金属チップ31´は、Ir−1wt%Rh−5wt%Pt−1wt%Niといった、主成分としてのIrと、Rhと、Niとを含有し、さらにPt及びPdの少なくともいずれか一方とを含有しているIr合金からなる。これにより、中心電極側放電部31の火花消耗、酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、中心電極側放電部31の放電部表面における貴金属の剥離も抑制することができる。
一方、接地電極側貴金属チップ32´も、Ir−10wt%Rh−5wt%Pt−1wt%Niといった、主成分としてのIrと、Rhと、Niとを含有し、さらにPt及びPdの少なくともいずれか一方とを含有しているIr合金からなる。これにより、接地電極側放電部32の火花消耗、酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、接地電極側放電部32の放電部表面における貴金属の剥離も抑制することができる。そのうえ、接地電極側貴金属チップ32´のRhの含有量は、中心電極側貴金属チップ31´よりも多くなっている。このように、接地電極側貴金属チップ32´のRhの含有量が中心電極側貴金属チップ31´よりも多く添加することにより、接地電極側放電部32の温度が高くなることにより生ずる接地電極側放電部32のIrの酸化消耗を抑制することができる。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3を説明する。
なお、実施形態3のスパークプラグ300は、実施形態1のスパークプラグ100、実施形態2のスパークプラグ200と比較して、中心電極放電部31を構成する中心電極側貴金属チップ31´及び接地電極側放電部32を構成する接地電極側貴金属チップ32´が主に異なるものであり、その他の部分についてはほぼ同様である。従って、実施形態1、実施形態2と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略または簡略化する。
図2に示すように、中心電極側放電部31は例えば、円板上の中心電極側貴金属チップ31´をINCONEL600、INCONEL601(英国INCO社の商標)等のNi系耐熱合金、又はFe系耐熱合金で構成される中心電極3の先端部3aの端面に重ね合わせ、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接により溶接部Wを形成してこれを固着するようにして形成される。また、例えば、INCONEL600、INCONEL601等のNi系耐熱合金で構成されている接地電極4に接地電極側放電部32を形成する場合には、接地電極側放電部32は中心電極側放電部31と対向する位置において、接地電極4に接地電極側貴金属チップ32´を位置あわせし、その接合面に、例えば、抵抗溶接により溶接部W´を形成してこれを固着することにより形成される。
この、中心電極側貴金属チップ31´は、Ir−1wt%Rh−5wt%Pt−1wt%Niといった、主成分としてのIrと、Rhと、Niとを含有し、さらにPt及びPdの少なくともいずれか一方とを含有しているIr合金からなる。これにより、中心電極側放電部31の火花消耗、酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、中心電極側放電部31の放電部表面における貴金属の剥離も抑制することができる。
一方、接地電極側貴金属チップ32´は、Ir−8wt%Rh−11wt%Ru−1wt%Niといった、主成分としてのIrと、Rhと、Niとを含有し、さらにRuを含有しているIr合金からなる。これにより、接地電極側放電部32の火花消耗、酸化消耗、異常消耗を抑制しつつ、接地電極側放電部32の放電部表面における貴金属の剥離の発生を抑制し、接地電極側放電部32の消耗や変形を抑制することができる。そのうえ、接地電極側貴金属チップ32´のRhの含有量は、中心電極側貴金属チップ31´よりも多くなっている。このように、接地電極側貴金属チップ32´のRhの含有量が中心電極側貴金属チップ31´よりも多く添加することにより、接地電極側放電部32の温度が高くなることにより生ずる接地電極側放電部32のIrの酸化消耗を抑制することができる。
(実施例1)
本発明の効果を調べるために、以下の実験を行った。
まず、スパークプラグのそれぞれの放電部に使用される貴金属チップを以下のように製造した。表1に示す、異なる組成の各種貴金属チップを形成するために、初期の元素成分を各種比率にてそれぞれ配合・混合し、各種原料粉末を得た。次いでこの原料粉末を10mm×10mm×130mmの直方体状に加圧成形した。そして、その成形体をアーク溶解炉内に配置し、アーク溶解を行って各種組成の合金インゴットを得た。さらに、この合金を、約1500℃にて熱間鍛造、熱間圧延及び熱間スエージングし、さらに熱間伸線することにより、外径0.6mmの合金線材を得た。これを長手方向に切断することにより、各組成について直径(チップ径)0.6mm、厚さ0.8mmの円柱状の貴金属チップを得た。
上記のようにして得た貴金属チップの酸化消耗試験を下記の条件にて行った。すなわち、大気中にて、1100℃の温度で20時間保持した後の各貴金属チップの重量と、試験前の貴金属チップの重量とを比較した。そして、試験後の貴金属チップの重量が、試験前の貴金属チップの重量よりも90%以上のものを○、90%未満のものを×とした。しかし、すべての貴金属チップは、試験後の重量が、試験前の重量の90%以上であった。
さらに、上記の貴金属チップを、中心電極側貴金属チップ31´として、INCONEL600製の中心電極母材3aにレーザ溶接により溶接して、図1ないし図2に示す形態のスパークプラグ100を製造した。また、本実験において、INCONEL600製の接地電極4の接地電極側放電部32は、チップ径0.9mm、厚さ0.6mmであって、成分がPt−20質量%Niである接地電極側貴金属チップ32´により構成した。そして、上記のようにして得た各スパークプラグ100の耐久試験を下記の条件にて行った。すなわち、排気量2000ccのガソリンエンジン(6気筒)にそれらスパークプラグ100を取り付け、スロットル全開条件、エンジン回転数5600rpmにて累積50時間まで運転を行った。また、各スパークプラグ100の火花放電ギャップgについては1.1mmに設定して、耐久試験を行った。
なお、上記耐久試験後の各スパークプラグ100において、異常消耗の程度を目視にて評価した。しかし、いずれのスパークプラグ100の中心電極側放電部31にも異常消耗は生じていなかった。
そして、上記耐久試験後の各スパークプラグ100において、剥離の程度を目視にて評価した。剥離が生じなかったものを○(このうち発汗すら生じなかったものを◎)、剥離は生じたが、耐久試験を最後まで行えたものを△、剥離が生じ、耐久試験を続けることができないものを×として評価した。剥離についての評価結果を表1に示す。また、耐久時間まで運転を行った後における各スパークプラグ100のギャップ増加量を測定した評価結果(耐火花消耗性の評価結果)については、火花放電ギャップの拡大量が0.05mm未満のものを○、0.05〜0.1mmのものを△、0.1mmを越えるものを×として評価した。そして、表1において、剥離の評価結果と耐火花消耗性の評価結果の両者を加味して、両評価結果が○以上であるものを○、一方の評価結果が○であり他方の評価結果が△であるものを△、それ以外のものを×として総合評価を行った。これによると、PtまたはPdの少なくとも一方を含有させることにより、剥離が抑制される事がわかる。さらに、PtまたはPdの少なくとも一方を1.0〜20質量%含有させることで、効果的に剥離が抑制され、耐火花消耗性も良好に得られることがわかる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
なお、本発明においては、上述した具体的な実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。例えば、本発明のスパークプラグ100において、中心電極3と溶接する溶接部Wは、図2(b)のように接合面外周縁に設けたが、これに限られず、中心電極側貴金属チップ31´の径方向において連続して形成されてもよい。それにより、より強固に中心電極側貴金属チップ31´を中心電極3に溶接することができる。
また、接地電極4と接地電極側貴金属チップ32´の溶接を抵抗溶接により溶接部W´を形成しているが、抵抗溶接後、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザ溶接、電子ビーム溶接により溶接部W´を形成してこれを固着するようにしてもよいし、レーザ溶接により溶接部W´を形成してもよい。これにより、より強固に接地電極4に接地電極側貴金属チップ32´を溶接することができる。
100,200,300 スパークプラグ
1 主体金具
3 中心電極
4 接地電極
31 中心電極側放電部
32 接地電極側放電部
31´ 中心電極側貴金属チップ
32´ 接地電極側貴金属チップ
W,W´ 溶接部

Claims (10)

  1. 中心電極と、その中心電極の先端部に自身の側面が対向するように配置された接地電極と、を備え、火花放電ギャップに対向する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成され、
    前記貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、さらにNiを0.5〜8質量%、Pt及びPdの少なくともいずれか一方を4〜8質量%で、かつNiの含有量以上含有することを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記貴金属チップは、0.5〜40質量%のRhが含有されていることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記貴金属チップは、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記貴金属チップは、 、La 及びZr の少なくとも一方が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  5. 中心電極と、その中心電極の先端部に中心電極側貴金属チップが溶接されてなる中心電極側放電部と、前記中心電極の先端部に自身が対向するように配置された接地電極と、接地電極に接地電極側貴金属チップが溶接されてなる接地電極側放電部を備え、中心電極側放電部と接地電極側放電部とにより火花放電ギャップを形成し、
    前記中心電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、さらにNiを0.5〜8質量%、Pt及びPdの少なくともいずれか一方を4〜8質量%で、かつNiの含有量以上含有し、
    前記接地電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、Rhとを含有し、かつ、前記中心電極側貴金属チップよりもRhの含有量が多いことを特徴とするスパークプラグ。
  6. 前記接地電極側貴金属チップは、0.5〜質量%のNiが含有されていることを特徴とする請求項に記載のスパークプラグ。
  7. 前記接地電極側貴金属チップは、PtとPdの少なくともいずれか一方が1〜20質量%含有されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスパークプラグ。
  8. 前記接地電極側貴金属チップは、5.2〜41質量%のRuが含有されていることを特徴とする請求項乃至7のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  9. 前記中心電極側貴金属チップには、0.5〜40質量%のRhが含有されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  10. 中心電極と、その中心電極の先端部に中心電極側貴金属チップが溶接されてなる中心電極側放電部と、前記中心電極の先端部に自身が対向するように配置された接地電極と、接地電極に接地電極側貴金属チップが溶接されてなる接地電極側放電部を備え、中心電極側放電部と接地電極側放電部とにより火花放電ギャップを形成し、
    前記中心電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、0.5〜40質量%のRhと、0.5〜8質量%のNiとを含有し、さらにPt及びPdの少なくともいずれか一方を4〜8質量%で、かつNiの含有量以上含有し、
    前記接地電極側貴金属チップは、主成分としてのIrと、0.5〜40質量%のRhと、0.5〜8質量%のNi、8〜20質量%のRuとを含有することを特徴とするスパークプラグ。
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