JP4291540B2 - スパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関の着火用に使用されるスパークプラグにおいては、エンジンの高出力化や燃費向上の目的で、燃焼室内の温度も高くなる傾向にある。また着火性向上のために、スパークプラグの火花放電ギャップに対応する放電部を燃焼室内部に突き出させるタイプのエンジンも多く使用されるようになってきている。このような状況では、スパークプラグの放電部が高温にさらされるので、その火花消耗が進み易くなる。そこで、火花放電ギャップに対応する放電部の耐火花消耗性向上のために、電極の先端にPtやIr等を主体とする貴金属チップを溶接したタイプのものが多数提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−7733号公報には、貴金属チップをIr及びRhを主体として構成することにより、高融点であるIrのメリットを生かしつつ、Irの高温(約900℃以上)での酸化揮発を防止するために、Rhを添加するによって、より高温における耐消耗性を向上させることができるスパークプラグが開示されている。
【0004】
一方、近年においては、上記のような耐消耗性の向上に加えて、着火性の向上もより一層求められている。これにより、放電部(貴金属チップ)の外径(チップ径)を小さくしたり、放電部の中心電極からの突出長を長くしたりして放電部を細径化し、放電電圧を低減することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者等が実験を行ったところ、上記のように細径化された放電部の場合にあっては、前述の特開平9−7733号公報に記載されているような耐消耗性に優れる貴金属チップを用いても、必ずしも放電部の消耗を完全には抑制できない場合があることがわかった。本発明者等は、主成分としてのIrと20質量%のRhを含有した貴金属チップにて構成した放電部を中心電極にのみ設けたスパークプラグを、6気筒ガソリンエンジン(排気量2000cc)に取り付け、無鉛ガソリンを燃料として、スロットル全開状態、エンジン回転数5000rpmにて運転を行なった。そして、20時間後の放電部の外観を観察したところ、図6に示すように、放電部の放電面ではない外周側面を円弧上にえぐるような形態で異常消耗が生じていることが観察された。図6においては、放電面は、放電部上部の面である。この異常消耗は、図6をみてわかるとおりその消耗形態も特殊であり、その消耗要因も単に火花放電や酸化揮発のみでは簡単に説得できないものと考えられる。従って、貴金属チップからなる放電部の火花消耗や単純な酸化消耗のみを抑制しようとする従来の方法では、完全に解消できないものであった。
【0006】
本発明の課題は、貴金属チップにて放電部を形成したスパークプラグであって、細径化された放電部において特に顕著にみられる上記のような異常消耗を抑制することができるスパークプラグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記課題を解決するための本発明のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極とを備え、火花放電ギャップに対応する位置において前記中心電極に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成され、
前記貴金属チップの外径をチップ径D(mm)、
前記放電面の外縁から、前記中心電極と前記貴金属チップとを溶接する溶接部の対応する端縁までの最短距離を放電部厚さH(mm)、としたとき、
D:0.3〜0.8mm、及び
H:0.4〜2mm、であるとともに、
前記貴金属チップは、主成分としてのIrと、1〜4質量%のNiとを含有する共に、Pt、Pd、Rh、Ru及びReから選ばれる1種又は2種以上を含有してなることを特徴とする。
【0008】
本発明者等が、図6に示す異常消耗が生じた放電部を調べたところ、該放電部の表面にCa及び/又はPを含有する堆積物が付着していることが明らかとなった。また、該堆積物が付着する放電部において、異常消耗が生じない場合もあったが、異常消耗が見られる全ての放電部に該Ca及び/又はPに起因する堆積物が付着していた。これにより、前述した異常消耗はこのような堆積物が要因の一端となっていると推測される。一方、該異常消耗は放電部のある一定方向からのみ進行していることが図6から明らかである。そのため、放電部の着火が行なわれる着火雰囲気中において、何らかの流体の流れが存在しており、該流体の流れが異常消耗の要因の一端となっているとも考えられる。例えば、上記流体とは、混合気体中の燃料を均一に拡散させるための一定の流れを有する混合気流(スワール流)であると推測することができる。また、該異常消耗は上記二つの要因により進行する消耗であると推測することもできる。いずれにしても、このような異常消耗は、火花放電による溶解・離散や、あるいは、放電部の単純な酸化揮発による消耗とは異なる機構により生じているものと推測でき、従来の方法では、完全に抑制するには至らないものであった。
【0009】
本発明者等は、異常消耗が進行した放電部において、図6に示すようにその放電部の放電面周辺がほとんど異常消耗していないことに着目した。そして、該放電面周辺において成分分析を行い、該放電面周辺にNiが含有されていることを見出した。なお、異常消耗が生じている部分(外周側面)において同様の成分分析を行ったところ、Niの存在は認められなかった。つまり、この放電面周辺に存在するNiは、貴金属チップに作製当初から含有されていたものではなく、スパークプラグの使用過程において含有されたものである。すなわち、火花放電の繰り返しによりNi系耐熱合金等にて構成される接地電極からNi成分が飛び出し、その後該Ni成分が貴金属チップの放電面周辺に注入されたものと考えられる。いずれにしても、本発明者等は、異常消耗が観察される貴金属チップにおいて、異常消耗の起こりにくい部分(放電面周辺)にNiが含有されているという知見を得た。
【0010】
そして、該異常消耗は、着火性の向上のために、放電部の外径(貴金属チップのチップ径)を小さくし、放電部の中心電極からの突出長を長くした細径化の放電部において、特に生じやすいことが本発明者等により明らかとなった。具体的に、放電部が細径化されたスパークプラグとは、放電部としてチップ径D(mm)及び放電部厚さH(mm)が、それぞれ、D:0.3〜0.8mm、H:0.4〜2mmとなるもの、とりわけD:0.3〜0.6mm、H:0.5〜2mmとなるものである。つまり、チップ径Dが0.8mmを超えたり、あるいは放電部厚さHが0.4mm未満である場合は、放電部の細径化の概念からは逸脱してしまうとともに、前述の異常消耗が生じる環境とはなりにくいため、本発明の適用範囲外となる。なお、Hは0.5mm以上とするのが、細径化の効果を得るのに特に好ましい。一方、チップ径Dが0.3mm未満となると、火花放電や酸化揮発等による通常の消耗に対しても十分な耐久性を維持できなくなる。これは、本発明を適用する以前の問題であり、本発明はこのような問題を解決することを課題とはしない。また、放電部厚さHが2mmを超えると、放電部における蓄熱が過剰となりがちで、放電部の消耗が急激に進行し、本発明を適用しても効果的に消耗を抑制することができなくなる。従って、チップ径Dは0.3mm以上とし、放電部厚さHは2mm以下とする。
【0011】
上記のような細径化された放電部において異常消耗が顕著に見られるのは、放電部が細径化されるために、該放電部が高温となりやすいためであると考えられる。すなわち、放電部が高温となることにより、前述にて推測した異常消耗の要因(堆積物、燃料に起因する混合気の流れによるもの)が活性化されるものと推測される。このことから、本発明は、放電部を細径化したスパークプラグとともに、放電部の熱引きが良好に行なわれ得ないために、放電部が高温とならざるを得ないような構造を有するスパークプラグにおいても好適に適用できるといえる。そして、本発明者等は、上記のような鋭意検討の結果、細径化の放電部、具体的にはチップ径D(mm)及び放電部厚さH(mm)が、それぞれD:0.3〜0.8mm、H:0.4〜2mmとなる放電部について、主成分としてのIrと、0.5〜8質量%のNiとを含有する貴金属チップにて構成すれば、前述のような異常消耗を抑制できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。なお、本発明において、「主成分としてのIr」とは、貴金属チップ中にてIrを50質量%以上含有していることをいうものである。
【0012】
貴金属チップに含有されるNiの含有量は、0.5〜8質量%の範囲とする。Niの含有量が0.5質量%未満であると、異常消耗抑制の効果が十分に発揮されない。一方、Niの含有量が8質量%を超えると、Niの含有量が多くなりすぎ、火花放電による通常の消耗に対する耐久性が劣化するため好ましくない。従って、貴金属チップには0.5〜8質量%のNiが含有されていればよいが、本発明では、1〜4質量%のNiが含有させている。これにより、異常消耗の抑制の効果と耐火花消耗性の観点からより優れるものとなる。なお、貴金属チップはIrを主成分として含有するIr基合金にて構成する。Ir基合金は、火花放電に対する耐久性が良好であるため貴金属チップに好適に使用できる。
【0013】
さらに、本発明の上記貴金属チップには、Pt、Pd、Rh、Ru及びReから選ばれる1種又は2種以上が含有されているものを使用している。このような元素を上記Ir基合金にてなる貴金属チップに含有することにより、上記範囲(1〜4質量%)のNi成分を含有させて異常消耗を抑制するメリットに加えて、高温におけるIrの酸化揮発を抑制することが可能となる。さらに、これらのうちでも特にRhを含有させるのがよく、その含有量を0.5〜40質量%とするのがよい。Rhの含有量が0.5質量%未満であると、Rhを含有させることの酸化揮発抑制に対する効果が十分に得られない。一方、40質量%を超えると、貴金属チップの融点が低下して、火花放電による消耗を効果的に抑制することができなくなる。従って、上記範囲のRhを含有させることにより、火花放電による消耗とIrの酸化揮発による消耗等の前記異常消耗に起因しない放電部の消耗を効果的に抑制することが可能となる。
【0014】
さらに、貴金属チップは、RuあるいはReの少なくとも一方が1〜5質量%含有されているものとすることもできる。これらの元素はIrよりは劣るもののRhよりも融点が高いために、火花放電に対する耐久性を向上させるのに有効であるとともに、Irよりも高温で酸化揮発しにくいため、耐高温酸化性を向上させる観点からも有効である。これらの元素の含有量が1質量%未満では十分な上記効果が得られず、5質量%を超えると逆に耐火花消耗性及び耐高温酸化性が劣化するため、上記範囲内に設定するのがよい。
【0015】
また、貴金属チップは、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されていてもよい。これにより、Irの高温での酸化揮発による消耗がさらに効果的に抑制される。上記酸化物の含有量は0.5〜3質量%の範囲にて設定するのがよい。0.5質量%未満になると、当該酸化物添加による添加金属元素成分の酸化揮発防止効果が十分に得られなくなる。一方、酸化物の含有量が3質量%を超えると、貴金属チップの耐熱性が却って損なわれてしまうことがある。なお、上記酸化物としては、
La2O3及びY2O3の少なくとも一方が含有されているのがよいが、このほかにもThO2、ZrO2等を好ましく使用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のいくつかの実施の形態について断面を用いて説明する。図1は本発明のスパークプラグ100の一例を示した縦断面図であり、図2(a)はスパークプラグ100の放電部周辺の拡大図である。本発明の一例たる抵抗体入りスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された放電部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに、他端側が側方に曲げ返されて、その側面が中心電極3に形成された放電部31と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記放電部31に対向する放電部32が形成されており、それら放電部31と放電部32とに挟まれた隙間に火花放電ギャップgが形成されている。
【0019】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有している。また主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取付けるためのねじ部7が形成されている。貫通孔6の一方の端部側に端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層17、18を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。なお、放電部31及び対向する放電部32のいずれか一方を省略する構成としてもよい。この場合には、放電部31又は対向する放電部32及び接地電極4又は中心電極3との間で火花放電ギャップgが形成される。
【0020】
放電部31は例えば、図2(b)に示すように円板上の貴金属チップ31’をINCONEL600(英国INCO社の商標)等のNi系耐熱合金、又はFe系耐熱合金で構成される中心電極3の先端部3aの端面に重ね合わせ、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、電気抵抗溶接等により溶接部Wを形成してこれを固着するようにして形成される。また、例えばINCONEL600、INCONEL601等のNi系耐熱合金で構成されている接地電極4側に放電部32を形成する場合には、放電部32は中心電極3側の放電部31と対応する位置において、接地電極4に貴金属チップ32’を位置合わせし、その接合面外周縁部に沿って同様に溶接部W’を形成してこれを固着することにより形成される。
【0021】
ここで、放電部31、32には、主成分としてのIrを含有し、0.5〜8質量%のNiとを含有しているIr基合金にてなる貴金属チップ31’、32’を使用する。なお、該貴金属チップ31’、32’は、添加元素成分として、Pt、Pd、Rh、Ru及びReから選ばれる1種又は2種以上を含有しており、例えば、Rhを0.5〜40質量%及び/又は、RuあるいはReの少なくとも一方を1〜5質量%含有している。
【0022】
貴金属チップ31’、32’は、例えば、以下のようにして形成される。すなわち、原料となる貴金属粉末を所期の比率で配合し、これを溶解して合金インゴットを形成する。具体的な溶解方法としては、例えばアーク溶解や、プラズマビーム溶解、高周波誘導溶解等の方法が採用される。また、合金溶液を水冷鋳型等により鋳造、急冷インゴットとすれば、合金の偏析を低減することができるため、該方法を採用してもよい。また、上記インゴットは所望の組成にて配合した貴金属粉末を圧縮成形したあと、焼結することによって作製するようにしてもよい。
【0023】
その後、合金を熱間鍛造、熱間圧延及び熱間伸線の1種又は2種以上の組合せにより線状あるいはロッド状の素材に加工した後、これを長さ方向に所定長さに切断して形成する。例えば、熱間鍛造によりロッド状に加工した後、溝付圧延ロールによる熱間圧延と、熱間スエージングによりさらに縮径し、最終的に熱間伸線により0.8mm以下の線径の線材に加工する。その後、該線材を所望の厚さとなるように切断し、貴金属チップ31’、32’を得る。
【0024】
また、貴金属チップ31’、32’の作製は、各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解合金を熱間圧延により板状に加工し、その板材を熱間打抜加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成することも可能である。さらに、公知のアトマイズ法により球状の貴金属合金を作製し、該球状の貴金属合金をそのまま放電部として使用するようにしてもよいし、これをプレスあるいは平ダイスで圧縮して、扁平状あるいは円柱状の貴金属チップ31’、32’とすることもできる。
【0025】
また、本発明のスパークプラグにおいては、図3に示すように放電部31が細径化されている。具体的には、放電部31を構成する貴金属チップのチップ径D(mm)が0.3〜0.8mm、放電部厚さH(mm)が0.4〜2mmとなっている。これらチップ径D及び放電部厚さHは図3に示すように規定する。すなわち、チップ径Dは放電部31の外径Dであって、放電部厚さHは、放電部31の放電面31tの外縁から、中心電極3と貴金属チップ31’を溶接する溶接部Wの対応する端縁までの軸線方向における最短距離である。以上、中心電極3側の放電部31についてのみ示したが、接地電極4側の放電部32においても同様にチップ径D及び放電部厚さHを規定することができる。
【0026】
また、本実施例におけるスパークプラグ100は、特に中心電極3側の放電部31の温度が高くなりやすい構造を有するものである。例えば、図3に示すように中心電極3の中心部には、表層部をなす電極母材36よりも相対的に熱伝導性に優れる芯体35が形成されており、軸線方向における該芯体35の火花放電ギャップg側の先端35a(以下、単に芯体の先端ともいう)と放電部31との最短距離L1が1〜3mmとなっている。ここで、上記芯体35は放電部31からの熱を中心電極3側に熱引きするために形成されたものであり、CuあるいはCu合金等にて形成されている。該構成において、上記規定されたL1が1mm未満であると、芯体35の先端35aが絶縁体の先端21aよりも放電部31側にならざるをえず、熱の過度の蓄積によって芯体35が膨張し、絶縁体2を内側から破ってしまう場合もある。また、表層部を構成する電極母材36が消耗し、芯体35が露出する場合もありえる。一方、L1が3mmを超えると、放電部31の温度が高温となりすぎ、火花放電による消耗に耐えられなくなる。L1は望ましくは1.5〜2.5mmとするのがよい。
【0027】
なお、貴金属チップ31’と中心電極3とを溶接する溶接部Wは、図4に示すように貴金属チップ31’の径方向において連続して形成される場合もある。この場合も図3の場合と同様に放電部31と芯体35の先端35aとの最短距離をL1とする。
【0028】
また、図3に示すように、放電面31tと絶縁体2の火花放電ギャップg側の先端21a(以下、単に絶縁体の先端ともいう)との軸線方向における最短距離をJと規定したとき、Jの範囲が1.5mm以上となっていることが好ましい。このJの値を1.5mm以上とすることにより放電電圧が低減するが、放電部31の温度が高温となりやすいため本発明の好適な適用範囲となる。Jの値が1.5mm未満となると、放電面31tに電界が集中しにくくなり、放電電圧が上昇するため放電部31を細径化する効果が失われることとなる。
【0029】
さらに、図3及び図4に示すように、絶縁体2の先端21aと、芯体35の先端35aとの軸線方向における最短距離をL2としたとき、芯体35の先端35aが絶縁体2の先端21aよりも放電面31t側にある場合(図4の場合)にはL2が1mm以下であり、一方、絶縁体2の先端21aが芯体35の先端35aよりも放電面31t側にある場合(図3の場合)にはL2が1.5mm以下となっている。このようにL2の範囲を規定することにより、上記のように規定したL1を好適な範囲に設定し易くなる。
【0030】
上記のような本発明のスパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気の着火源として使用される。使用時においては、放電部31及び放電部32との間に放電電圧が印加されて、火花放電ギャップgに火花が生じる(各符号については図1を参照)。なお、本発明のスパークプラグ100は、Ca及び/又はPが存在する着火雰囲気中にて使用されると、本発明を適用する効果が有効に発揮されることになる。また、これらの着火雰囲気中に存在するCa及び/又はPは内燃機関に使用されるエンジンオイルに含有されるものであるため、このようなエンジンオイルを使用する内燃機関に本発明のスパークプラグ100を好適に使用することができる。
【0031】
【実験例】
本発明の効果を調べるために、以下の実験を行った。
(実験例1)
まず、スパークプラグの放電部に使用される貴金属チップを以下のように製造した。表1に示す、異なる組成の各種貴金属チップを形成するために、所期の元素成分を各種比率にてそれぞれ配合・混合し、各種原料粉末を得た。次いで、この原料粉末を直径20mm、長さ130mmの円柱状に加圧成形した。そして、その成形体をアーク溶解炉内に配置し、アーク溶解を行って各種組成の合金インゴットを得た。さらに、この合金を、約1500℃にて熱間鍛造、熱間圧延及び熱間スエージングし、さらに熱間伸線することにより、外径0.6mmの合金線材を得た。これを長手方向に切断することにより、各組成について直径(チップ径)0.6mm、厚さ0.8mmの円板状の貴金属チップを得た。この貴金属チップを、INCONEL600製の中心電極母材にレーザー溶接により溶接して、図1ないし図2示す形態のスパークプラグを製造した。なお、上記レーザー溶接後において、放電面の外縁から、中心電極と貴金属チップとを溶接する溶接部の対応する端縁までの軸線方向における最短距離(放電部厚さH:図3参照)が0.5mmとなるように、各組成の貴金属チップに見合うレーザー溶接条件を適宜調整して上記レーザー溶接は実施した。また、本実験においては接地電極側の放電部はチップ径0.9mm、厚さ0.6mmであって、成分がPt−20質量%Niである貴金属チップにより構成した。
【0032】
【表1】
【0033】
上記のようにして得た各スパークプラグの耐久試験を下記の条件にて行った。すなわち、排気量2000ccのガソリンエンジン(6気筒)にそれらスパークプラグを取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数5000rpmにて累積300時間まで運転を行った。なお、燃料は無鉛ガソリンを使用し、中心電極の先端温度は900℃であった。また、各スパークプラグの火花放電ギャップについては1.1mmに設定して、本耐久試験を行った。
【0034】
耐久時間と貴金属チップの消耗の程度との関係を、該耐久時間まで運転を行った後におけるギャップ増加量を測定することにより調べた。図5は、表1の実施例No.1、6、7及び比較例No.18において得られた耐久時間とギャップ増加量との関係を示すものである。図5に示すように、Niを含有する本実施例においては、300時間の耐久試験に耐えられたが、比較例においては、放電部の異常消耗により耐久試験が途中で続行不能となった。これにより、Niの添加により異常消耗が抑制されていることがわかる。また、耐久試験後の比較例の放電部周辺の光学顕微鏡による観察図を図6に示す。放電部の一方の側部が異常消耗によりえぐられているのがわかる。本実施例においても同様に放電部周辺を観察したところ、異常消耗はほとんど観察されなかった。すなわち、Niを特定の範囲で含有することにより異常消耗の発生が抑制されている。
【0035】
また、上記耐久試験後の各スパークプラグにおいて異常消耗の程度を目視にて評価した。異常消耗が生じなかったものは○、異常消耗は生じたが最後まで耐久試験に耐えられたものは△、異常消耗により耐久試験が続行不能となったものは×として評価した。異常消耗についての評価結果を表1に示す。また、耐久時間まで運転を行った後における各スパークプラグのギャップ増加量を測定した評価結果(耐火花消耗性の評価結果)については、火花放電ギャップの拡大量が0.15mm未満のものを○、0.15〜0.3mmのものを△、0.3mmを超えるものを×として評価した。なお、異常消耗により耐久試験が続行不能となったものは、ギャップ増加量を測定せずに−として評価した。耐火花消耗性の評価結果についても表1に示す。そして、表1において、異常消耗の評価結果と耐火花消耗性の評価結果の両者を加味して、両評価結果が○であるものを○、一方の評価結果が○であり他方の評価結果が△であるものを△、それ以外のものを×として総合評価を行った。これにより、Niを0.5〜8質量%含有させることにより、異常消耗が抑制され、耐火花消耗性も良好に得られることがわかる。
【0036】
(実施例2)
次に、貴金属チップの組成を表1に示すNo.1あるいはNo.18のどちらかの組成に固定して、貴金属チップのチップ径D(mm)及び放電部厚さH(mm)を表2のように各種変化させた以外は実験例1と同様となるスパークプラグを作製した。そして、実験例1と同様の条件によりスパークプラグの耐久試験を行った。そして、その後それぞれのスパークプラグにおいて放電部の周辺部を光学顕微鏡にて観察し、異常消耗の発生の程度を目視にて評価した。評価の方法は実験例1と同様の方法により行った。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
No.1とNo.10においては、チップ径Dが0.3mmよりも小さいため、火花放電による消耗が急激に進行したので、Ni成分の有無に拘わらず評価対象外となった。また、Dが0.8mmより大きく、あるいはHが0.4mmより小さくなる放電部の細径化が施されていないようなNo.4、6、13および15のスパークプラグにおいては、いずれもNiの有無に拘わらず、図6に示すような異常消耗は発生しなかった。一方、D:0.3〜0.8mm、及びH:0.4〜2mmを満たす細径化されたその他の放電部にあっては、Niの添加により異常消耗が効果的に抑制されているのがわかる。
【0039】
(実験例3)
次に、放電部を構成する貴金属チップの組成を表1の実施例No.1あるいは比較例No.18のいずれかに固定するとともに、前述の実施の形態(図3及び図4)において規定したL1及びL2の長さをそれぞれ表3のように変化させたスパークプラグを製造した。なお、チップ径D及び放電部厚さHはそれぞれD:0.3〜0.8mm、H:0.4〜2mmとして、それ以外は実験例1及び2と同様のスパークプラグとした。そして、各スパークプラグにおいて、上記実験例1及び2と同様の耐久試験を行い、該耐久試験後の放電部における異常消耗の程度を評価した。得られた結果を表3に示す。なお、本実験例におけるL2の値において、符号がマイナス(−)になっているものは、図4に示すように、絶縁体の先端よりも芯体の先端のほうが放電部側に位置する場合における該芯体の先端と該絶縁体の先端との最短距離を示すものとし、それ以外のものは、図3に示すように、芯体の先端よりも絶縁体の先端のほうが放電部側に位置する場合における該芯体の先端と該絶縁体の先端との最短距離を示すものとする。
【0040】
【表3】
【0041】
表3によれば、Niを含有しない比較例の場合に、L1:1〜3mm、L2:−1〜1.5mmとなる比較例No.1〜8のスパークプラグにおいて、放電部が高温となりやすいため、特に顕著に放電部の異常消耗が発生した。また、L1及びL2の値が上記範囲外の場合は、異常消耗の発生が確認されたものの、発火部の熱引きが良好に行われ、温度が高温となりにくいためか、L1及びL2が上記範囲内の場合に比べて消耗の程度は少なかった(比較例No.9)。一方、本実施例No.10〜18においては、L1及びL2が上記規定範囲外なる場合に加えて、L1及びL2が上記規定範囲内となるような放電部が比較的高温となり易い場合であっても、Ni添加による異常消耗低減の効果が十分に得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一実施例を示す正面全体断面図。
【図2】図1のスパークプラグの部分断面図及び要部を示す拡大断面図。
【図3】放電部周辺を拡大して示すとともに、チップ径D及び放電部厚さH等の定義を説明する図。
【図4】 図3に続いてチップ径D及び放電部厚さH等の定義を説明する図。
【図5】 実施例における耐久試験により得られた耐久時間とギャップ増加との関係を示す図。
【図6】 異常消耗による中心電極側の放電部の様子を示す観察図。
【符号の説明】
100 スパークプラグ
3 中心電極
4 接地電極
1 主体金具
g 火花放電ギャップ
31、32 放電部
31’、32’ 貴金属チップ
W 溶接部
Claims (5)
- 中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極とを備え、火花放電ギャップに対応する位置において前記中心電極に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成され、
前記貴金属チップの外径をチップ径D(mm)、
前記放電面の外縁から、前記中心電極と前記貴金属チップとを溶接する溶接部の対応する端縁までの最短距離を放電部厚さH(mm)、としたとき、
D:0.3〜0.8mm、及び
H:0.4〜2mm、であるとともに、
前記貴金属チップは、主成分としてのIrと、1〜4質量%のNiとを含有する共に、Pt、Pd、Rh、Ru及びReから選ばれる1種又は2種以上を含有してなることを特徴とするスパークプラグ。 - 前記貴金属チップは、Rhが0.5〜40質量%含有されている請求項1に記載のスパークプラグ。
- 前記貴金属チップは、RuあるいはReの少なくとも一方が1〜5質量%含有されている請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
- 前記貴金属チップは、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されている請求項1ないし3のいずれかに記載のスパークプラグ。
- 前記貴金属チップは、 La2O3及びY2O3の少なくとも一方が含有されている請求項1ないし4のいずれかに記載のスパークプラグ。
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