JP4079587B2 - 脆性部材の接着構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方が脆性を有する2つの被接着部材が、両面に接着剤が塗付されたシートをその厚み方向の両側から挟む状態で接着されている脆性部材の接着構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
脆性を有する被接着部材としては、例えば、板ガラスやセラミックスなどがあり、従来、金属板と脆性を有する板ガラスとが、接着剤を含浸させたシートをその厚み方向の両側から挟んで、シートに含浸させた接着剤によって金属板と板ガラスとを接着させる技術が知られている(例えば、特開2000−87924号公報参照)。
この従来技術で使用されているシートは、ガラス繊維などの繊維材で形成されていて、締付け用の雄ねじ部材を挿通する挿通孔以外は、その厚み方向に中実の状態に形成され、かつ、その厚み方向の全体にわたって接着剤が含浸されていて、接着剤の硬化により金属板と板ガラスとを接着するように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、上述した従来技術では、シートに含浸させた接着剤が硬化すると、硬化した接着剤全体にわたって繊維材が存在することになり、その繊維材による強化作用で、シートと接着剤からなる接着層の剛性が高くなる傾向にある。そして、その剛性の高い接着層の一方の面において、前記挿通孔以外の全面が金属板に接着し、他方の面においても、前記挿通孔以外の全面が板ガラスに接着することになる。
ところが、金属板と板ガラスでは、熱膨張率が異なるため、接着後において雰囲気温度が変化し、例えば、雰囲気温度が上昇すると、金属板の方がより多く伸びようとして脆性を有する板ガラスに対して不要な引張り力が作用し、極端な場合には板ガラスの損傷原因となる虞があり、また、板ガラスが損傷しないまでも、金属板と板ガラスとの間で接着層の剥離が生じて、接着力の低下を招く虞がある。
【0004】
このような問題を解消するには、例えば、繊維材からなるシートに接着剤を含浸させるのではなく、シートの両面に接着剤を塗付するだけに留めれば、繊維材からなるシートの変形作用で、熱膨張率の差異に伴う剥離現象の発生を緩和することができる。
しかし、その反面、接着剤がシートの面に塗付されているだけなので、シートに含浸させる場合に比べて、どうしても接着力が低くなる傾向にある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目したもので、少なくとも一方が脆性を有する被接着部材を比較的高い接着力で接着することができ、しかも、接着後においてたとえ雰囲気温度が変化しても、脆性を有する被接着部材に作用する引張り力などを緩和し、かつ、剥離現象の発生を防止することのできる脆性部材の接着構造の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1の発明の特徴構成は、図1、図2、および、図4に例示するごとく、少なくとも一方が脆性を有する2つの被接着部材1,3が、両面に接着剤12が塗付されたシート5をその厚み方向の両側から挟む状態で接着されている脆性部材の接着構造であって、前記シート5が繊維材で形成され、前記シート5における接着剤12の塗付部分にシート5の厚み方向に貫通する複数の貫通孔13が設けられて、それら貫通孔13に前記接着剤12が充填され、前記脆性を有する被接着部材1が板ガラスであり、その板ガラス1の面に沿って前記シート5が挟まれて接着されているところにある。
【0008】
請求項2の発明の特徴構成は、図1、図2、および、図4に例示するごとく、前記2つの被接着部材1,3のうち、前記板ガラス1以外の他の被接着部材3が金属板であって、それら板ガラス1と金属板3との面に沿って前記シート5が挟まれて接着されているところにある。
【0010】
なお、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【0011】
〔作用及び効果〕
請求項1の発明の特徴構成によれば、シートが繊維材で形成されているので、繊維材の変形作用で熱膨張率の差異に伴う剥離現象の発生を効果的に緩和することができ、シートにおける接着剤の塗付部分にシートの厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられて、それら貫通孔に接着剤が充填されているので、シートの一方の面に塗付された接着剤と他方の面に塗付された接着剤とは、複数の貫通孔に充填された接着剤を介して互いに連続する状態となり、その接着剤が連続する状態で、シートの両面に被接着部材が接着されるため、2つの被接着部材を比較的高い接着力で接着することができる。
そして、特に、貫通孔に充填された接着剤中には、繊維材のような硬化後において接着層の剛性を高める物質が含まれていないので、接着剤として硬化後に弾性変形可能なものを選択使用することにより、その硬化後における接着剤の弾性変形で、雰囲気温度の変化に伴う剥離現象をも防止することができる。
【0012】
さらに、請求項1の発明の特徴構成によれば、脆性を有する被接着部材が板ガラスであり、その板ガラスの面に沿って前記シートが挟まれて接着されるので、近年多用されている板ガラス製の壁面や屋根などの施工において実施することができるとともに、上述したように雰囲気温度の変化に伴う剥離現象を防止することができるので、屋外の各種建屋においても使用することができる。
【0013】
請求項2の発明の特徴構成によれば、2つの被接着部材のうち、前記板ガラス以外の他の被接着部材が金属板であって、それら板ガラスと金属板との面に沿って前記シートが挟まれて接着されるので、上述した板ガラス製の壁面や屋根などの施工において、板ガラスどうしを接合する箇所などに使用して、板ガラスどうしを金属板を介して強固に接合することができ、さらに、シートが繊維材で形成されているので、板ガラスに対するメタルタッチを効果的に防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明による脆性部材の接着構造につき、その実施の形態を図面に基づいて説明する。
このような脆性部材の接着は、例えば、脆性部材の一例である板ガラスを使用する際に実施されるもので、図1に示すように、板ガラス製のガラス壁Aにより建物の外壁の一部を構成する場合、そのガラス壁Aの補強用に使用される帯板状の板ガラス1どうしを上下方向で互いに接合する際に使用される。
この脆性を有する被接着部材としての板ガラス1は、強化ガラスにより構成され、目地シールSによってガラス壁Aに固定されていて、上下方向で突き合わせ状に配置された一対の板ガラス1には、比較的径の大きい接合用の挿通孔2がそれぞれ複数個穿設されている。
【0016】
その一対の板ガラス1の厚み方向両側には、図2にも示すように、被接着部材としての金属板の一例であるステンレス製の接合板3が位置されて、上下の板ガラス1を跨ぐ状態で、上下の板ガラス1の厚み方向から当て付けられている。
両接合板3は、矩形に形成されていて、その両側の接合板3と板ガラス1との間には、接合板3とほぼ同一形状のシート5がそれぞれ挟み込まれ、両接合板3には、板ガラス1の挿通孔2に対応するように、比較的径の小さい接合用の挿通孔4が穿設され、両シート5には、比較的径の大きい接合用の挿通孔6が穿設されている。
【0017】
これらの挿通孔2,4,6を利用して上下の板ガラス1を接合するための接合具は、図3に示すように、その全長にわたって雄ねじ7aが形成されたステンレス製の高張力のボルト7と、そのボルト7に外嵌される合成樹脂製のブッシュ8と、ボルト7に螺合する雌ねじ9aと頭部9bとを有する一対のナット部材9などで構成されている。
そのボルト7の両端部には、ドライバーD用の係合溝10が設けられ、ナット部材9の頭部9bには、六角レンチW用の六角穴11が雌ねじ部9aと連通して設けられている。
【0018】
前記シート5は、ガラス繊維不織布、フェルト布、不織布、バルカナイズドファイバなどの繊維材で形成され、その繊維材には、弾性エポキシ系やエマルジョンラテックス系の接着剤、変性シリコン系接着剤、あるいは、変性シリコン系と弾性エポキシ系との混合接着剤などが含浸されている。
つまり、シート5には、その両面を含んで、シート5全体に接着剤12が含浸されていて、シート5における接着剤12の含浸部分には、シート5の厚み方向に貫通する複数の貫通孔13が、ほぼ一定の間隔を置いて均等に設けられて、それら複数の貫通孔13にも接着剤12が充填されている。
【0019】
この上下一対の板ガラス1を互いに接合するには、シート5に含浸させ、かつ、複数の貫通孔13に充填した接着剤12が未硬化の状態で、そのシート5を板ガラス1と両接合板3との間にそれぞれ挟み込む。つまり、各シート5をその厚み方向の両側から板ガラス1と接合板3とにより、その板ガラス1と接合板3の面に沿うように挟み、かつ、板ガラス1の挿通孔2にブッシュ8を内嵌し、そのブッシュ8内にボルト7を挿入して、その両端部にナット部材9を螺合して板ガラス1と接合板3とを締付ける。
なお、ボルト7に対するナット部材9の締付けは、ボルト7の一方の係合溝10にドライバーDを差し込み、ボルト7の他方にナット部材9を螺合し、六角穴11を利用して六角レンチWにより締付けるのであり、そのボルト7とナット部材9による締付け軸力が、予め設定された軸力になるように締付ける。
【0020】
その状態で、シート5に含浸させ、かつ、複数の貫通孔13に充填した接着剤12が硬化すると、板ガラス1を中央にして、その厚み方向の両側にシート5を挟んだ状態で、板ガラス1の両面に接合板3が接着される。
この板ガラス1と接合板3との接着に関しては、図4に示すように、シート5の一方の面と板ガラス1の面とが、接着剤12を介して接着され、かつ、シート5の他方の面と接合板3の面とが、同じく接着剤12を介して接着され、更に、シート5の両面に位置する接着剤12どうしが、貫通孔13に充填された接着剤12を介して互いに連続する状態で接着されるので、板ガラス1と接合板3とは強固に接着され、かつ、接着剤12として、例えば、弾性エポキシ系接着剤のように適度な弾性を有するものを選択使用することで、雰囲気温度の変化に伴う剥離現象を防止することができる。
【0021】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、脆性を有する被接着部材として板ガラス1を例に説明したが、脆性を有する被接着部材としては、板ガラス以外にも、セラミックスなどが適用可能である。
また、2つの被接着部材のうち、一方のみを脆性を有する被接着部材とした例を示したが、両方とも脆性を有する被接着部材とすることもできる。つまり、一方を板ガラス、他方をセラミックスとすることも、更に、両方とも互いに熱膨張率の異なる板ガラスにしたり、セラミックスにすることもできる。
【0022】
(2)先の実施形態では、シート5を繊維材で形成した例を示したが、繊維材以外にも、合成樹脂製や金属製の板材で形成することもでき、その場合には、接着剤12を含浸させるのではなく、板材の両面に接着剤12を塗付することになり、その接着剤12の塗付部分に貫通孔13を設けることになる。
また、貫通孔13の開口断面積の大きさや数などについては、両被接着部材間における熱膨張率の差異や接着面積などに応じて適宜選択して実施することになる。
【0023】
(3)先の実施形態では、上下方向で突き合わせ状に配置された一対の板ガラス1の厚み方向両側に接合板3を位置させ、かつ、板ガラス1と両側の接合板3との間に接着剤12を含浸させたシート5をそれぞれ挟んで接着した例を示したが、板ガラス1の厚み方向の一側方にのみ接合板3を位置させ、その接合板3と板ガラス1との間にのみ接着剤12を含浸させたシート5を挟んで接着する場合にも適用可能であり、いずれの場合においても、その接合板3の材質としては、特にステンレスに限るものではなく、ステンレス以外の各種の金属材料により形成することができ、また、ボルト7とそのボルト7に螺合する一対のナット部材9については、必ずしも必要ではなく、ボルト7やナット部材9を使用せずに実施することもできる。
【0024】
(4)先の実施形態では、ガラス壁Aの補強用に使用される帯板状の板ガラス1どうしを接合する場合を例に説明したが、屋根や壁などを板ガラスで形成する場合などにおいて、各板ガラス間の接合に適用することもでき、その適用範囲については特に制限はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス接合部を示す分解斜視図
【図2】ガラス接合部を示す断面図
【図3】ガラスの接合に使用する接合具の分解図
【図4】板ガラスと金属板との接着部を示す断面図
【符号の説明】
1 脆性を有する被接着部材としての板ガラス
3 被接着部材としての金属板
5 シート
12 接着剤
13 シートの貫通孔
Claims (2)
- 少なくとも一方が脆性を有する2つの被接着部材が、両面に接着剤が塗付されたシートをその厚み方向の両側から挟む状態で接着されている脆性部材の接着構造であって、
前記シートが繊維材で形成され、前記シートにおける接着剤の塗付部分にシートの厚み方向に貫通する複数の貫通孔が設けられて、それら貫通孔に前記接着剤が充填され、前記脆性を有する被接着部材が板ガラスであり、その板ガラスの面に沿って前記シートが挟まれて接着されている脆性部材の接着構造。 - 前記2つの被接着部材のうち、前記板ガラス以外の他の被接着部材が金属板であって、それら板ガラスと金属板との面に沿って前記シートが挟まれて接着されている請求項1に記載の脆性部材の接着構造。
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