JP4076992B2 - 熱式流量計 - Google Patents
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Description
本発明は、抵抗体(熱線)を用いて流量を計測する熱式流量計に関する。さらに詳細には、双方向において被測定流体の流量を精度良く計測することができる熱式流量計に関するものである。
背景技術
従来、半導体チップマウンティング時のハンドリングには真空吸着が用いられており、その吸着の確認は、圧力センサにより行われていた。しかし近年、半導体チップがどんどん小さくなってきている。このため、例えば0.5mm角のチップでは、直径が0.5mmあるいは0.3mmの吸着オリフィス(ノズル)が用いられている。その結果、第30図に示すように、吸着時と非吸着時とでオリフィス内の圧力にほとんど差が出ず、圧力センサでは吸着確認ができなくなってきた。このようなことから、オリフィスを流れる空気の流量を検出することにより、吸着確認を行うという提案がなされている。なお、第30図は、ノズル径が0.3mmで真空圧力が−70kPaの場合の圧力センサの出力例を示したものである。
そこで、本出願人は、吸着確認に用いるのに好適な熱式流量計を特願2000−368801にて提案した。そして、上記した条件で吸着確認を行った結果を第31図に示す。第31図から明らかなように、この熱式流量計を使用すれば、圧力センサでは困難であった吸着確認を行えることがわかる。
しかしながら、本出願人が特願2000−368801にて提案した熱式流量計では、第32図に示すように、真空度が高くなるにつれて圧力特性が悪くなり、精度良く吸着確認を行うことができないおそれがあった。また、この熱式流量計の出力特性は、第33図に示すようになり、被測定流体の流れ方向に関係なく同じ値が出力されるため、流れ方向を検出することができないという問題もあった。このように双方向の流量検知ができないと、吸着確認はできるが、リリースの確認を行うことができなかった。吸着時とリリース時とでは、流体が逆方向に流れるからである。なお、第32図、第33図は、ともにフルスケール流量を1L/minとした場合の出力である。
ここで、流量計を使用して吸着およびリリースの確認を行うためには、双方向の流量を検出することができる流量計が必要となる。そして、このような双方向の流量検知が可能な流量計としては、例えば、特開2002−5717号公報に記載されたものがある。ところが、特開2002−5717号公報に記載された流量計では、第34図に示すように、出力特性がリニアでないという問題があった。このように出力特性がリニアでないと、ノズルの目詰まり管理などを行うことができなかった。なお、出力特性をリニアにするためには、例えば、特開2001−165734号公報に記載されているように、演算回路を用いればよいが、別途そのための演算回路を設ける必要がありコスト面で不利になる。
また、特開2002−5717号公報に記載された流量計では、第35図に示すように、乱流の影響により出力が不安定になるという問題もあった。出力が不安定になると、吸着確認の閾値を低めに設定しなければならない。ところが、吸着確認においては微少の流量変化を検知しているため、閾値を低めに設定すると、正常状態で吸着されずに正常吸着時の流量よりも小さくなった場合であっても、正常に吸着されていると判断されてしまう。つまり、吸着確認を精度良く行うことができなかった。また、常に一定の漏れ量を確保しながら半導体チップを吸着するコレットタイプのノズルを用いた場合には、吸着確認を行うことができなかった。なお、このような出力のふらつきは、電気的なフィルタを入れることにより解消することはできるが、応答性が損なわれてしまい好ましくない。
発明の開示
本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、双方向の流量検知ができるとともに、出力特性をリニアにすることができ、かつ応答性を損なうことなく安定した出力を得ることができる熱式流量計を提供することを課題とする。
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る熱式流量計は、流量を計測するための抵抗体が架設されたセンサ流路の他に、センサ流路に対するバイパス流路を備える熱式流量計において、バイパス流路は、抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、エッチング加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成され、センサ流路は、抵抗体とその抵抗体に接続する抵抗体用電極とが設けられた測定チップを、抵抗体用電極と電気回路用電極とを接着して基板に実装することにより、測定チップあるいは基板の少なくとも一方に設けられた溝によって形成されており、測定チップには、流れ方向上流側に設けられた上流温度検出抵抗体と、流れ方向下流側に設けられた下流温度検出抵抗体と、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との間に設けられ、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体とを加熱する発熱抵抗体と、被測定流体の温度を検出する流体温度検出抵抗体と、が備わり、電気回路により、発熱抵抗体と流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御され、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との温度差に基づき被測定流体の流量が測定されることを特徴とするものである。なお、本明細書における「側面開口部」とは、ボディの側面(言い換えると、入出力ポートが開口していない面)であって基板が装着される面に開口した開口部を意味する。
この熱式流量計では、流量計に流れ込んだ被測定流体は、抵抗体が架設されたセンサ流路と、センサ流路に対するバイパス流路とに分流される。そして、抵抗体を用いた計測原理に基づき、センサ流路を流れる被測定流体の流量、ひいては熱式流量計の内部を流れる被測定流体の流量が測定される。具体的には、電気回路により、発熱抵抗体と流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御され、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との温度差に基づき被測定流体の流量が測定される。このため、順方向の流れの場合には出力が増加し、逆方向の流れの場合には出力が減少する。したがって、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
また、バイパス流路は、抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、エッチング加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成されているため、積層体の構成(各薄板の組み合わせ)を変更してバイパス流路の断面積を変化させることができる。そして、バイパス流路の断面積が変化すると、センサ流路とバイパス流路とに分流する被測定流体の割合(バイパス比)が変化する。したがって、積層体の構成を変更することにより、最適な測定レンジを設定することができるので、別途演算回路を設けなくてもリニアな出力特性を得ることができる。
バイパス比を変更する場合には、積層体を、薄板の両端に開口部が形成されるとともに、中央に溝が形成された溝付両端開口板を介してメッシュ板を積層したものにすればよい。さらに、積層体に、薄板の両端に開口部が形成された両端開口板を含めてもよい。これらにより、バイパス流路の断面積を減少させることができ、バイパス比を変更することができる。
そして、本発明に係る熱式流量計においては、積層体に、薄板の両端にメッシュが形成されたメッシュ板が含まれていることが好ましい。また、本発明に係る熱式流量計においては、積層体は、薄板の縁部を残してその他の部分を開口させたスペーサを介してメッシュ板を積層したものであることが望ましい。
メッシュが形成されたメッシュ板を含めて積層体を形成することにより、非常に流れが整えられた被測定流体を、センサ流路に流し込むことができるからである。なぜなら、被測定流体は、メッシュを通過することにより、流れの乱れが減少するからである。したがって、積層体には複数枚のメッシュ板を含めるのがよい。そして、この場合には、各メッシュ板を直接重ねるよりも、所定の間隔をとって重ねる方がよい。より大きな整流効果を得ることができるからである。このため、メッシュ板は、スペーサを介して積層するのが望ましいのである。
このようにして、本発明に係る熱式量計では、センサ流路を流れる被測定流体の流れを整えることができるので、非常に安定した出力を得ることができる。また、電気的なフィルタを用いないので、応答性が損なわれることもない。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の熱式流量計を具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。本実施の形態に係る熱式流量計は、高速応答性、高感度、リニアな出力特性、および双方向検知が要求される流量計測、例えば半導体チップマウンティング時のハンドリングにおける吸着およびリリースの確認などに使用するのに好適なものである。
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態について説明する。そこで、第1の実施の形態に係る熱式流量計の概略構成を第1図に示す。第1図は、熱式流量計1を示す断面図である。第1図に示すように、本実施の形態に係る熱式流量計1は、ボディ41とセンサ基板21と積層体50とを有するものである。そして、積層体50がボディ41の流路空間44に装着された状態で、センサ基板21がシールパッキン48を介しボディ41にネジ固定で密着されている。これにより、センサ流路S、およびセンサ流路Sに対するバイパス流路である主流路Mが形成されている。
ボディ41は、第2図および第3図に示すように、直方体形状のものであり、左右対称に構成されている。なお、第2図は、ボディ41を示す平面図である。第3図は、第2図に示すA−A線における断面図である。このボディ41には、両端面に入口ポート42と出口ポート46とが形成されている。そして、入口ポート42からボディ中央に向かって入口流路43が形成され、同様に出口ポート46からボディ中央に向かって出口流路45が形成されている。なお、入口流路43および出口流路45は、主流路Mの下方に形成されている。つまり、入口流路43および出口流路45は主流路Mに対して、同一直線上には配置されていない。
また、ボディ41の上部には、主流路Mおよびセンサ流路Sを形成するための流路空間44が形成されている。この流路空間44の横断面は、長方形の両短辺を円弧状(半円)にした形状になっており、その中央部に円弧状の凸部44Cが形成されている。凸部44Cは、積層体50(各薄板)の位置決めを行うためのものである。そして、流路空間44の下面の一部が入口流路43および出口流路45に連通している。すなわち、入口流路43と出口流路45とがそれぞれ90度に屈曲したエルボ部43Aと45Aを介して流路空間44に連通されている。さらに、流路空間44の外周に沿うようにボディ41の上面には、シールパッキン48を装着するための溝49が形成されている。
積層体50は、第4図に示すように、2種類の薄板を合計11枚積層したものである。なお、第4図は、積層体50の構造を示す分解斜視図である。この積層体50は、下から順に、メッシュ板51、スペーサ52,52,52、メッシュ板51、スペーサ52,52、メッシュ板51、スペーサ52,52、およびメッシュ板51が積層されて接着されたものである。これらメッシュ板51およびスペーサ52は、ともに厚さが0.5mm以下であり、エッチングにより各形状の加工(マイクロマシニング加工)がなされたものである。そして、その投影形状は流路空間44の横断面形状と同じになっている。これにより、積層体50が流路空間44に隙間なく装着されるようになっている。
そして、このような組み合わせの積層体50を流路空間44に装着することにより、熱式流量計1のフルスケール流量が5L/minとなっている。つまり、積層体50を構成する薄板の形状(組み合わせ)を変更することにより、主流路Mの断面積が変化し被測定流体のバイパス比が変わるので、任意の流量レンジを設定することができるのである。なお、フルスケール流量を変更した例(フルスケール流量1L/min)については後述する。
ここで、個々の薄板について説明する。まず、メッシュ板51について、第5図A、第5図Bおよび第6図を用いて説明する。なお、第5図Aはメッシュ板51を示す平面図であり、第5図Bは第5図Aに示すA−A線における断面図である。第6図は、メッシュ板51のメッシュ部51Mの拡大図である。メッシュ板51は、第5図Aおよび第5図Bに示すように、その両端にメッシュ部51Mが形成された厚さが0.3mmの薄板である。メッシュ部51Mは、直径4mmの円形状であり、第6図に示すように、メッシュを構成する孔(直径0.2mm)の中心間距離がすべて0.27mmとなるように形成されている。すなわち、各孔の中心が正三角形の各頂点となるように孔が形成されている。なお、メッシュ部51Mの厚さは、第5図Bに示すように他の部分よりも薄くなっており、その厚さは、0.05〜0.1mmとなっている。
次に、スペーサ52について、第7図Aおよび第7図Bを用いて説明する。なお、第7図Aは、スペーサ52を示す平面図であり、第7図Bは第7図Aに示すA−A線における断面図である。スペーサ52は、第7図に示すように、外周部52Bを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、スペーサ52には、開口部61が形成されている。なお、スペーサ52の厚さは、0.5mmである。
ここで、第1図に戻って、上記したメッシュ板51およびスペーサ52を組み合わせて、第4図に示すように積層して接着した積層体50を流路空間44に装着することにより、主流路Mが形成されている。より詳細に言うと、スペーサ52の開口部61により主流路Mが形成されている。また、メッシュ板51に設けられたメッシュ部51Mと、スペーサ52に設けられた開口部61とによって、連絡流路5,6が形成されている。連絡流路5は、入口流路43と主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものであり、連絡流路6は、出口流路45と主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものである。
そして、主流路Mとセンサ流路Sとの間に、メッシュ部51Mが3層配置されている。各メッシュ部51Mの間隔は、2枚のスペーサ52の厚さ分(1.0mm)になっている。これにより、流れが整えられた被測定流体を、センサ流路Sに流し込むことができるようになっている。被測定流体は、各メッシュ部51Mを通過するたびに、流れの乱れを減少させられるからである。さらに、エルボ部43A,45Aと流路空間44(主流路M)との連通部にもメッシュ部51Mが配置されている。
一方、センサ基板21は、測定流量を電気信号として出力するものである。このためセンサ基板21には、第8図に示すように、ベースとなるプリント基板22の表面側(ボディ41への装着面側)において、その中央部に溝23が加工されている。そして、この溝23の両側に、電気回路用電極24,25,26,27,28,29が設けられている。一方、プリント基板22の裏面側には、電気素子31、32、33、34などで構成される電気回路が設けられている(第1図参照)。そして、プリント基板22の中で、電気回路用電極24〜29が電気素子31〜34などで構成される電気回路と接続されている。さらに、プリント基板22の表面側には、後述するようにして、測定チップ11が実装されている。
ここで、測定チップ11について、第9図を用いて説明する。なお、第9図は、測定チップ11を示す平面図である。測定チップ11は、第9図に示すように、シリコンチップ12に対して、半導体マイクロマシニングの加工技術を実施したものであり、このとき、チップ中央に溝13が加工されるとともに、抵抗体(熱線)用電極14,15,16,17、18,19がチップ両端に設けられる。
また、このとき、上流温度検出抵抗体R1が、抵抗体用電極15,17から延設されるとともに溝13の上に架設される。さらに、下流温度検出抵抗体R2が、抵抗体用電極17,19から延設されるとともに溝13の上に架設される。さらにまた、発熱抵抗体Rhが、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との間に、抵抗体用電極16,18から延設されるとともに溝13の上に架設される。また、測定チップ11においては、センサ流路Sの順方向上流側に流体温度検出抵抗体Rtが、抵抗体用電極14,16から延設される。
そして、測定チップ11の熱線用電極14,15,16,17,18,19を、センサ基板21の電気回路用電極24,25,26,27,28,29(第8図参照)のそれぞれと、半田リフロー又は導電性接着剤などで接合することによって、測定チップ11をセンサ基板21に実装している。したがって、測定チップ11がセンサ基板21に実装されると、測定チップ11に設けられた流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhは、測定チップ11の抵抗体用電極14〜19と、センサ基板21の電気回路用電極24〜29(第8図参照)とを介して、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路に接続されることになる。これにより、第10図に示す定温度差回路と、第11図に示す出力回路とが構成される。
ここで、第10図に示す定温度差回路は、発熱抵抗体Rhを、流体温度検出抵抗体Rtで検出される流体温度と一定の温度差をもつように制御するための回路である。また、第10図に示す出力回路は、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に相当する電圧値を出力するための回路である。この出力回路では、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2とが直列に接続され、定電圧Vcが印可されるようになっている。そして、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが測定信号として出力されるようになっている。
また、測定チップ11がセンサ基板21に実装されると、測定チップ11の溝13は、センサ基板21の溝23と重なり合う。よって、第1図に示すように、測定チップ11が実装されたセンサ基板21を、ボディ41に対して、積層体50およびシールパッキン48を介して密着すると、ボディ41の流路空間44において、センサ基板21と測定チップ11との間に、測定チップ11の溝13やセンサ基板21の溝23などからなる細長い形状のセンサ流路Sが形成される。そのため、センサ流路Sには、流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhが橋を渡すように設けられることになる。
続いて、フルスケール流量を1L/minとした場合について説明する。そこで、フルスケール流量が1L/minの熱式流量計の概略構成を第12図に示す。第12図は、熱式流量計1Aを示す断面図である。第12図に示すように、熱式流量計1Aは、熱式流量計1とほぼ同様の構成を有するものであるが、流路空間44に積層体50の代わりに積層体50Aが装着されている点が異なる。すなわち、熱式流量計1Aには、主流路Mの断面積を小さくするための積層体50Aが流路空間44に装着されている。このため、熱式流量計1と異なる点を中心に説明し、熱式流量計1と同様の構成のものについては、同じ符号を付してその説明を適宜省略する。
そこで、積層体50Aについて、第13図を用いて説明する。なお、第13図は、積層体50Aの構造を示す分解斜視図である。積層体50Aは、第13図に示すように、3種類の薄板を合計11枚積層したものである。すなわち、下から順に、メッシュ板51、両端開口板53、溝付両端開口板56、メッシュ板51、溝付両端開口板56,56、メッシュ板51、溝付両端開口板56,56,56、およびメッシュ板51が積層されて接着されたものである。すなわち、積層体50Aは、積層体50におけるスペーサ52の代わりに、両端開口板53と溝付両端開口板56を用いたものである。
ここで、両端開口板53について、第14図Aおよび第14図Bを用いて説明する。なお、第14図Aは両端開口板53を示す平面図であり、第14図Bは第14図Aに示すA−A線における断面図である。両端開口板53は、第14図Aおよび第14図Bに示すように、外周部53Bと中央部53Dとを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、両端開口板53には、その両端に開口部63が形成されている。なお、両端開口板53の厚さは、0.5mmである。
また、溝付両端開口板56について、第15図A〜第15図Cを用いて説明する。なお、第15図Aは溝付両端開口板56を示す平面図であり、第15図Bは第15図Aに示すA−A線における断面図であり、第15図Cは第15図Aに示すB−B線における断面図である。溝付両端開口板56は、第15図に示すように、外周部56Bと中央部56Dとを残し、中央部56Dに溝56Eが形成されるようにエッチング加工されたものである。すなわち、溝付両端開口板56は、両端開口板53の中央部53D(第14図A参照)に溝56Eを設けたものである。そして、中央部56Dには、片面に3本の溝56Eが形成されている。この溝56Eの深さは0.35mmであり、溝55Eの幅は1.1mmである。そして、隣り合う溝の間隔は0.2mmとなっている。なお、溝付両端開口板56の厚さは、0.5mmである。
これらメッシュ板51、両端開口板53、および溝付両端開口板56を、第13図に示すように積層して接着した積層体50Aをボディ41に形成された流路空間44に装着することにより、第12図に示すように、両端開口板53の中央部53D、および溝付両端開口板56の中央部56Dによって、主流路Mの断面積が減少している。これにより、被測定流体のバイパス比が変化しフルスケール流量が1L/minとなるようにされている。このように、積層体の構成を変更することにより、任意の流量レンジを設定することができるようになっているのである。
次に、上記した構成を有する熱式流量計1,1Aの作用について説明する。熱式流量計1,1Aにおいては、順方向の流れの場合には、入口ポート42を介して入口流路43へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間44にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、出口流路45を介して出口ポート46からボディ41の外部に流れ出す。
一方、逆方向の流れの場合には、出口ポート46を介して出口流路45へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間44にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、入口流路43を介して入口ポート42からボディ41の外部に流れ出す。
ここで、被測定流体が順方向あるいは逆方向のいずれの方向に流れても、センサ流路Sへ流れ込む被測定流体は、積層体50あるいは50A内における3層のメッシュ部51Mを通過した後に、センサ流路Sに流れ込む。したがって、非常に流れが整えられた状態の被測定流体が、センサ流路Sを流れる。
そして、センサ流路Sを流れる被測定流体は、センサ流路Sに橋設された発熱抵抗体Rhから熱を奪う。そうすると、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路(第10図に示す定温度差回路)により、流体温度検出抵抗体Rtと発熱抵抗体Rhとが一定の温度差になるように制御される。
また、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路(第11図に示す出力回路)により、直列に接続され定電圧Vcが印可された上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが測定信号として出力される。このとき、被測定流体が順方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が低下し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が増加するため、中点電位Voutが増加する。一方、被測定流体が逆方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が増加し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が低下するため、中点電位Voutは低下する。このため、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
このときの出力の一例を、第16図、第17図に示す。第16図、第17図は、流量と出力電圧との関係を示したものである。そして、第16図のグラフは、熱式流量計1からの出力を示したものである。第17図のグラフは、熱式流量計1Aからの出力を示したものである。
第16図、第17図から明らかなように、被測定流体が順方向に流れた場合には、流量が大きくなるにつれて出力が大きくなる。逆に、被測定流体が逆方向に流れた場合には、流量が大きくなるにつれて出力が小さくなる。これにより、熱式流量計1,1Aによれば、被測定流体の流れ方向を検出することができる。
また、熱式流量計1,1Aの出力特性はともに、従来の熱式流量計(特開2002−5717号公報記載のもの)の出力特性(第34図)に比べ、直線性が大幅に改善されていることがわかる。すなわち、熱式流量計1,1Aによれば、リニアな出力特性を得ることができる。これは、主流路Mを積層体50,50Aにより構成して、各測定レンジに最適なバイパス比を設定したからである。このように、熱式流量計1,1Aによれば、被測定流体の流量を双方向において正確に計測することができる。これにより、ノズルの目詰まり管理を精度良く行うことができる。
また、熱式流量計1の別の出力例を第18図に示す。第18図は、時間と出力電圧との関係を示したものである。第18図から明らかなように、熱式流量計1の出力は、従来の熱式流量計(特開2002−5717号公報記載のもの)の出力(第35図)に比べ、ふらつきが少なく安定していることがわかる。すなわち、熱式流量計1によれば、出力の振幅幅が小さく非常に安定した出力を得ることができるのである。そして、電気的フィルタを用いていないので、応答性を損なうこともない。
ここで、この振動幅の出力値に対する比率をノイズと定義すると、従来の熱式流量計におけるノイズが「±39.5(%FS)」であるのに対し、第1の実施の形態に係る熱式流量計1におけるノイズは「±0.7(%FS)」である。すなわち、熱式流量計1Aによれば、ノイズを約1/50にすることができる。これは、上記したようにセンサ流路Sを流れる被測定流体の流れが非常に整ったものになっているからである。
このように、熱式流量計1によれば、安定した出力を得ることができるので、吸着確認の閾値を高く設定することができる。これにより、精度良く吸着確認を行うことができる。また、コレットタイプのノズルを用いた場合であっても、吸着確認を行うことができる。
なお、ここでは熱式流量計1について述べたが、熱式流量計1よりもフルスケール流量が小さい熱式流量計1Aでも同様の結果が得られたことは言うまでもない。なぜなら、測定流量が小さくなれば、出力のふらつきは小さくなるからである。
また、熱式流量計1Aの別の出力例を第19図に示す。第19図は、圧力を変化させたときの出力を示したものである。第19図から明らかなように、熱式流量計1Aは、従来の熱式流量計(特願2000−368801号記載のもの)に比べ、圧力特性がよいことがわかる。すなわち、熱式流量計1Aによれば、圧力が変化しても、出力がドリフトせず常に正確な流量を計測することができるのである。なお、熱式流量計1でも同様の結果が得られた。
このように圧力特性がよくなったのは、次の理由からである。すなわち、従来方式(特願2000−368801)では、発熱抵抗体Rhと流体との熱の授受そのものを出力としていたため、圧力変化すなわち気体の密度が変化すると出力が変わってしまっていた。ところが、熱式流量計1Aでは、圧力が変化した場合、発熱抵抗体Rhと流体との熱の授受は変化するが、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2の抵抗値が同じように変化するため、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2の中間電位Voutは変化しない。したがって、圧力が変化しても出力に影響が出ないのである。
このように熱式流量計1,1Aは、双方向において流量計測が可能であり、また応答性(約20msec)を損なうことなく測定出力が非常に安定している。このため、熱式流量計1,1Aを半導体チップマウンティング時のハンドリングにおける真空吸着の吸着およびリリースの確認に用いた場合、吸着およびリリースを正確に判断することができる。なぜなら、吸着時と非吸着時におけるオリフィス内の流量を瞬時に正確かつ安定して測定することができるからである。したがって、吸着およびリリースの確認に熱式流量計1,1Aを利用することにより、実際には吸着しているにも関わらず、吸着していないと誤判断されることがなくなり吸着確認を正確に行うことができるとともに、リリースの確認も行うことができる。これにより、近年、小型化の進む半導体チップ(例えば0.5mm角)のマウンティング時におけるハンドリング作業を非常に効率よく行うことができる。
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る熱式流量計1,1Aによれば、ボディ41に形成された流路空間44に積層体50,50Aを装着して、主流路Mを構成することにより、被測定流体の最適なバイパス比を設定することができるため、リニアな出力特性を得ることができる。また、積層体50,50Aには、主流路Mとセンサ流路Sとの間に配置される3層のメッシュ部51Mが備わっている。これにより、センサ流路Sに流れ込む被測定流体の流れが整えられる。したがって、非常に安定した出力を得ることができる。さらに、測定チップ11に上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、発熱抵抗体Rt、および流体温度検出抵抗体Rtを設け、電気回路により、発熱抵抗体Rhと流体温度検出抵抗体Rtとが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に基づき被測定流体の流量を測定する。これにより、双方向の流量検知ができる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。そこで、第2の実施の形態に係る熱式流量計の概略構成を第20図に示す。第20図に示すように、第2の実施の形態に係る熱式流量計101は、第1の実施の形態に係る熱式流量計1と基本的な構成を同じくするものであるが、さらなる小型化を図るためにボディの形状を変えている。これに伴い、積層体を構成する各薄板の形状も異なっている。このため、以下の説明では、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施の形態と同様な点については同符号を付して適宜説明を省略する。
まず、ボディについて第20図および第21図を参照しながら説明する。なお、第21図はボディの平面図である。このボディ141は、第21図に示すように、大別して被測定流体が流れる主流路Mやセンサ流路Sなどが形成された流量測定部141Aと、増幅回路などの電気部品を収納するための電気部品収納部141Bとにより構成されている。なお、ボディ141の奥行き寸法(被測定流体の流れる方向と直交する方向における寸法)は、第1の実施の形態におけるボディ44とほぼ同じである。
ここで、本発明の特徴部分は、流量測定部141Aにあることから、この部分について詳細に説明する。この流量測定部141Aには、第20図に示すように、第1の実施の形態に係るボディ41と異なり、ボディ自体にはエルボ部43A,45Aが形成されておらず、入口流路43と出口流路45とが流路空間144に直接連通している。より詳しく述べると、入口流路43および出口流路45ともに、流路空間144の側面中央部に直接連通している。このように、入口流路43および出口流路45を形成することにより、第1の実施の形態に比べ高さ方法の寸法を小さくすることができる。これにより、熱式流量計101は、さらなる小型化を図っているのである。
なお、エルボ部が存在しないと、流量計に流れ込む被測定流体の入射角による出力特性への影響が大きくなってしまう。そこで、本実施の形態では、後述する積層体150によって流路空間144内にエルボ部143A,145Aを形成している。これにより、エルボ部143A,145Aにおいて流量計に流れ込む被測定流体の流れを乱し、強制的に流れの向きを変えて、センサ流路Sには入射角の影響をほとんど受けていない被測定流体を流すことができるようになっている。
そして、流路空間144の横断面は、第21図に示すように、長方形の両短辺を円弧状(半円)にした形状になっており、長辺の中央部の一方に円弧状の凸部144Cが形成され、他方に平坦状の凸部144Dが形成されている。凸部144C,144Dは、積層体150(各薄板151〜157)の位置決めを行うためのものである。また、流路空間144の上面部には、シールパッキン148の位置合わせを行うための4つの凸部149A、149B,149C,149Dが形成されている。
続いて、上記の流路空間144に装着される積層体150について説明する。この積層体150は、第22図に示すように、7種類の薄板を合計13枚積層したものである。なお、第22図は、積層体150の積層順序を示す図である。この積層体150は、下から順に、両端開口板151,151、溝付両端開口板152、第1スペーサ153、第1メッシュ板154、第2スペーサ155、第1メッシュ板154、第2スペーサ155、第1メッシュ板154、第2スペーサ155、第1メッシュ板154、第2メッシュ板156、および中央開口板157が積層されて接着されたものである。これらの各薄板151〜157は、厚さが0.3mm程度のものであり、エッチングにより各形状の加工(マイクロマシニング加工)がなされたものである。そして、その投影形状は流路空間144の横断面形状とほぼ同じになっている。これにより、積層体150が流路空間144に隙間なく装着されるようになっている。
ここで、個々の薄板について説明する。まず、両端開口板151について、第23図Aおよび第23図Bを用いて説明する。なお、第23図Aは両端開口板53を示す平面図であり、第23図Bは第23図Aに示すA−A線における断面図である。両端開口板151は、第23図Aおよび第23図Bに示すように、外周部151Bと中央部151Dとを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、両端開口板151には、その両端に開口部161,162が形成されている。
また、溝付両端開口板152について、第24図A〜第24図Cを用いて説明する。なお、第24図Aは溝付両端開口板152を示す平面図であり、第24図Bは第24図Aに示すA−A線における断面図であり、第24図Cは第24図Aに示すB−B線における断面図である。溝付両端開口板152は、第24図Aおよび第24図Bに示すように、外周部152Bと中央部152Dとを残し、中央部152Dに溝152Eが形成されるようにエッチング加工されたものである。すなわち、溝付両端開口板152は、両端開口板151の中央部151D(第23図A参照)に溝152Eを設けたものである。そして、中央部152Dには、片面に3本の溝152Eが形成されている。この溝152Eの深さは0.1mmであり、溝55Eの幅は1.4mmである。そして、隣り合う溝の間隔は0.425mmとなっている。なお、溝付両端開口板152にも、第24図Aおよび第24図Cに示すように、開口部161,162が形成されている。
また、第1スペーサ153について、第25図Aおよび第25図Bを用いて説明する。なお、第25図Aは第1スペーサ153を示す平面図であり、第25図Bは第25図Aに示すA−A線における断面図である。第1スペーサ153は、第25図Aおよび第25図Bに示すように、外周部153Bを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、第1スペーサ52には、開口部163が形成されている。
また、第1メッシュ板154について、第26図A〜第26図Cを用いて説明する。なお、第26図Aは第1メッシュ板154を示す平面図であり、第26図Bは第26図Aに示すA−A線における断面図であり、第26図Cは第26図Aに示すB−B線における断面図である。第1メッシュ板154は、第26図Aおよび第26図Bに示すように、外周部154Bと中央部154Dと遮蔽部154Cとを残し、中央部154Dに溝152Eが形成されるとともに、中央部154Dと遮蔽部154Cとの間にメッシュ部154Mが形成されるようにエッチング加工されたものである。そして、外周部154Bは、両端の円弧部分の一部もエッチング加工により切り欠きが形成されている。このような切り欠きを形成するのは、積層体150を流路空間144に装着したときに、この切り欠き部分が入口流路43および出口流路45との連通部に位置するからである。また、第1メッシュ板154には、第26図Aおよび第26図Cに示すように、遮蔽部154Cを挟んでメッシュ部154Mの外側に、開口部164,165が形成されている。なお、メッシュ部154Mの構成は、メッシュ部51Mと同様である。
また、第2スペーサ155について、第27図Aおよび第27図Bを用いて説明する。なお、第27図Aは第2スペーサ155を示す平面図であり、第27図Bは第26図Aに示すA−A線における断面図である。第2スペーサ155は、第27図Aおよび第27図Bに示すように、外周部155Bと遮蔽部155Cとが形成されるようにエッチング加工されたものである。すなわち、第1メッシュ板154における中央部154Dおよびメッシュ部154M(第26図A参照)を設けていないものである。これにより、開口部166が新たに形成されている。なお、第2スペーサ155にも、第27図Aおよび第27図Bに示すように、開口部164,165が形成されている。
また、第2メッシュ板156について、第28図Aおよび第28図Bを用いて説明する。なお、第28図Aは第2メッシュ板156を示す平面図であり、第28図Bは第28図Aに示すA−A線における断面図である。第2メッシュ板156は、第28図Aおよび第28図Bに示すように、中央部156Dを挟んで両側にメッシュ部156Mが形成されるようにエッチング加工されたものである。なお、メッシュ部156Mの構成も、メッシュ部51Mと同様である。
最後に、中央開口板157について、第29図Aおよび第29図Bを用いて説明する。なお、第29図Aは中央開口板157を示す平面図であり、第29図Bは第29図Aに示すA−A線における断面図である。中央開口板157は、第29図Aおよび第29図Bに示すように、中央に略長方形状の開口部167が形成されるようにエッチング加工されたものである。
ここで、第20図に戻って、上記した各薄板151〜157を組み合わせて積層し接着した積層体150を流路空間144に装着することにより、エルボ部143A,145A、連絡流路105,106、および主流路Mが形成される。より詳細に述べると、エルボ部143Aは、第1メッシュ板154の開口部164と遮蔽部154C、および第2スペーサ155の開口部164と遮蔽部155Cにより形成される。また、エルボ部145Aは、第1メッシュ板154の開口部165と遮蔽部154C、および第2スペーサ155の開口部165と遮蔽部155Cにより形成される。また、主流路Mは、第1メッシュ板154の溝154Eおよび第2スペーサ155の開口部166により形成される。
また、連絡流路105は、両端開口板151の開口部161、溝付両端開口板152の開口部161、第1スペーサ153の開口部163、第1メッシュ板154のメッシュ部154M、第2スペーサ155の開口部166、第2メッシュ板156のメッシュ部156M、および中央開口板157の開口部167により形成される。また、連絡流路106は、両端開口板151の開口部162、溝付両端開口板152の開口部162、第1スペーサ153の開口部163、第1メッシュ板154のメッシュ部154M、第2スペーサ155の開口部166、第2メッシュ板156のメッシュ部156M、および中央開口板157の開口部167により形成される。なお、連絡流路105は、エルボ部143Aと主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものであり、連絡流路106は、エルボ部145Aと主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものである。
そして、連絡流路105および106のうち、主流路Mとセンサ流路Sとの間に、4層のメッシュ部154Mと1層のメッシュ部156Mとが配置されている。つまり、主流路Mとセンサ流路Sとの間には、合計5層のメッシュ部が配置されているのである。これにより、流れが整えられた被測定流体を、センサ流路Sに流し込むことができるようになっている。被測定流体は、各メッシュ部154Mおよび156Mを通過するたびに、流れの乱れを減少させられるからである。
次に、上記した構成を有する熱式流量計101の作用について説明する。熱式流量計101においては、順方向の流れの場合には、入口流路43へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間144にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、出口流路45からボディ141の外部に流れ出す。
一方、逆方向の流れの場合には、出口流路45へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間144にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、入口流路43からボディ141の外部に流れ出す。なお、熱式流量計101においても、積層体150を構成する各薄板151〜157の組み合わせや形状を変更することにより、第1の実施の形態と同様にバイパス比を任意に変更することができる。
ここで、被測定流体が順方向あるいは逆方向のいずれの方向に流れても、センサ流路Sへ流れ込む被測定流体は、積層体150における5層のメッシュ部(4層のメッシュ部154Mと1層のメッシュ部156M)を通過した後に、センサ流路Sに流れ込む。したがって、非常に流れが整えられた状態の被測定流体がセンサ流路Sを流れる。
そして、センサ流路Sを流れる被測定流体は、センサ流路Sに橋設された発熱抵抗体Rhから熱を奪う。そうすると、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路(第10図に示す定温度差回路)により、流体温度検出抵抗体Rtと発熱抵抗体Rhとが一定の温度差になるように制御される。
また、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路(第11図に示す出力回路)により、直列に接続され定電圧Vcが印可された上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが測定信号として出力される。このとき、被測定流体が順方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が低下し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が増加するため、中点電位Voutが増加する。一方、被測定流体が逆方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が増加し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が低下するため、中点電位Voutは低下する。このため、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
そして、熱式流量計101でも、第1の実施の形態に係る熱式流量計1,1Aと同様に、リニアな出力特性を得ることができたとともに、出力の振幅幅が小さく非常に安定した出力を得ることができた。また、被測定流体の圧力が変化したときであっても、出力がドリフトせずに常に正確な流量を計測することができた。このように、熱式流量計101によれば、さらなる小型化を図った上で、双方向の流量検知ができるとともに、出力特性をリニアにすることができ、かつ応答性を損なうことなく安定した出力を得ることができる。
以上、詳細に説明したように第2の実施の形態に係る熱式流量計101によれば、入口流路43および出口流路45と流路空間144とを直接連通させ、流路空間144内に装着する積層体150によって、エルボ部143A,145A、連絡流路105,106、およびメイン流路Mを構成している。これにより、高さ方向の寸法が小さくなり、さらなる小型化を図ることができる。そして、熱式流量計101では、積層体150を構成する各薄板151〜157の組み合わせを変更することにより、被測定流体の最適なバイパス比を設定することができるため、リニアな出力特性を得ることができる。また、積層体150には、主流路Mとセンサ流路Sとの間に配置される4層のメッシュ部154Mおよび1層のメッシュ部156が備わっている。これにより、センサ流路Sに流れ込む被測定流体の流れが整えられる。したがって、非常に安定した出力を得ることができる。さらに、測定チップ11に上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、発熱抵抗体Rt、および流体温度検出抵抗体Rtを設け、電気回路により、発熱抵抗体Rhと流体温度検出抵抗体Rtとが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に基づき被測定流体の流量を測定する。これにより、双方向の流量検知ができる。
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態においては、積層体として3種類のものを例示したが、これだけに限られず、各薄板51,52,53,56あるいは151〜156を任意に組み合わせて積層体を構成することができる。
産業上の利用可能性
以上説明した通り本発明に係る熱式流量計によれば、流量を計測するための抵抗体が架設されたセンサ流路の他に、前記センサ流路に対するバイパス流路を備える熱式流量計において、バイパス流路を、抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、エッチング加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成し、センサ流路を、抵抗体とその抵抗体に接続する抵抗体用電極とが設けられた測定チップを、抵抗体用電極と電気回路用電極とを接着して基板に実装することにより、測定チップあるいは基板の少なくとも一方に設けられた溝によって形成して、測定チップに、流れ方向上流側に設けられた上流温度検出抵抗体と、流れ方向下流側に設けられた下流温度検出抵抗体と、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との間に設けられ、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体とを加熱する発熱抵抗体と、被測定流体の温度を検出する流体温度検出抵抗体とを設けて、電気回路により、発熱抵抗体と流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との温度差に基づき流体流量を測定することとしたので、双方向の流量検知ができるとともに、出力特性をリニアにすることができ、かつ応答性を損なうことなく安定した出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、第1の実施の形態に係る熱式流量計(フルスケール流量5L/min)の概略構成図である。
第2図は、ボディの平面図である。
第3図は、第2図に示すA−A線における断面図である。
第4図は、第1図に示す積層体の分解斜視図である。
第5図Aは、メッシュ板を示す平面図である。
第5図Bは、第5図Aに示すA−A線における断面図である。
第6図は、第5図のメッシュ部の拡大図である。
第7図Aは、スペーサを示す平面図である。
第7図Bは、第7図Aに示すA−A線における断面図である。
第8図は、センサ基板の斜視図である。
第9図は、測定チップの平面図である。
第10図は、定温度差回路の回路図である。
第11図は、出力回路の回路図である。
第12図は、別の形態に係る熱式流量計(フルスケール流量1L/min)の概略構成図である。
第13図は、第12図に示す積層体の分解斜視図である。
第14図Aは、両端開口板を示す平面図である。
第14図Bは、第14図Aに示すA−A線における断面図である。
第15図Aは、溝付両端開口板を示す平面図である。
第15図Bは、第15図Aに示すA−A線における断面図である。
第15図Cは、第15図Aに示すB−B線における断面図である。
第16図は、第1の実施の形態に係る熱式流量計の出力特性を示す図である。
第17図は、別の形態に係る熱式流量計の出力特性を示す図である。
第18図は、第1の実施の形態に係る熱式流量計の時間に対する出力特性を示す図である。
第19図は、別の形態に係る熱式流量計の圧力特性を説明するための図である。
第20図は、第2の実施の形態に係る熱式流量計の概略構成図である。
第21図は、ボディの平面図である。
第22図は、第20図に示す積層体の構成図である。
第23図Aは、両端開口板を示す平面図である。
第23図Bは、第23図Aに示すA−A線における断面図である。
第24図Aは、溝付両端開口板を示す平面図である。
第24図Bは、第24図Aに示すA−A線における断面図である。
第24図Cは、第24図Aに示すB−B線における断面図である。
第25図Aは、第1スペーサを示す平面図である。
第25図Bは、第25図Aに示すA−A線における断面図である。
第26図Aは、第1メッシュ板を示す平面図である。
第26図Bは、第26図Aに示すA−A線における断面図である。
第26図Cは、第26図Aに示すB−B線における断面図である。
第27図Aは、第2スペーサを示す平面図である。
第27図Bは、第27図Aに示すA−A線における断面図である。
第28図Aは、第2メッシュ板を示す平面図である。
第28図Bは、第28図Aに示すA−A線における断面図である。
第29図Aは、中央開口板を示す平面図である。
第29図Bは、第29図Aに示すA−A線における断面図である。
第30図は、小径のノズルを用いた場合における非吸着時と吸着時との圧力変化を示す図である。
第31図は、小径のノズルを用いた場合における非吸着時と吸着時との流量変化を示す図である。
第32図は、双方向検知ができない従来の熱式流量計の圧力特性を説明するための図である。
第33図は、双方向検知ができない従来の熱式流量計の出力特性を示す図である。
第34図は、双方向検知ができる従来の熱式流量計の出力特性を示す図である。
第35図は、双方向検知ができる従来の熱式流量計の時間に対する出力特性を示す図である。
Claims (2)
- 流量を計測するための抵抗体が設けられたセンサ流路を備える熱式流量計において、
エッチング加工により形成したメッシュを、エッチング加工により形成した厚さ0.5mm以下のスペーサを2枚以上介して複数枚積層し、それらを接着して一体化した積層体を備えることを特徴とする熱式流量計。 - 請求項1に記載する熱式流量計において、
前記積層体は、パッキンにより押圧された状態でボディに装着されていることを特徴とする熱式流量計。
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