JP4076294B2 - 磁気媒体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固定信号を付与した磁気媒体に関するものであり、特に磁気信号の改竄、偽造による不正使用を困難にしたプリペイドカードに使用するのに適した磁気カードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の磁気カードにおいてはプリペイドカードと呼ばれる前払い方式の磁気カードが広く普及してきた。しかしこのプリペイドカードは市場において金券同様に扱われるため、磁気信号の改竄、偽造による不正使用を防止しなければならず、これまでに種々の考案がなされている。
【0003】
磁気カードの不正使用を防止する有効な方法として、1)磁気カードに記録した可変情報信号を磁気的に遮蔽し、信号の解読を困難にしたもの、2)磁気記録層を多層化し可変情報信号の読み取り方法に特定の条件を付与したもの、3)通常の可変情報信号とは別に媒体固有の識別情報を付与したものなどが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特に前記3)の通常の可変情報信号とは別に媒体固有の識別情報を付与したものとして、代表的なものは磁性インキをスクリーン印刷などの方法を用いてパターン形成した磁気バーコードや特公昭49−37529号公報や特開平7−117382号公報、特開平8−300858号公報に開示されたように磁性層に直接識別情報を付与する方法などいくつか提案されている。これらの提案は、基本的に単層構造の磁性層に媒体固有の識別情報を永久構造として付与する方法である。
【0005】
磁気バーコードは識別情報を磁性インキによるスクリーン印刷などの方法で形成するため、識別情報の種類の数だけシルク版を準備する必要があり、一般に同一の識別情報をもつ大量の磁気カードが製造されてしまう。
【0006】
特公昭49−37529号公報に開示された方法は、基体上に磁性層を形成し、この磁性層の選択された離間領域において予め定められた方向に磁性粒子を配向させ、残部の磁性粒子は配向されていないか或いは前記予め定められた方向に対し実質的に直角をなす方向に配向されることにより媒体固有の識別情報を付与するもので、磁性塗料をベースフィルム上に塗布し、流体である前記磁性塗料中の磁性粒子に周期的配向パターンを形成する単方向の電流パルスを供給される電磁ヘッド上を通過させ、乾燥し、前記磁性層に永久構造を形成する方法である。この方法では、パルス磁界はベースフィルムを通して磁性塗料に印加され、信号出力は配向されている部分とされていない部分の磁束変化によって得られ、最大でも残部をパターン配向にほぼ直角に配向するのが限界で、分解能、SN比、記録密度をあまり高くすることができない。
【0007】
特開平7−117382号公報に開示された方法は、基体上に第1の磁性層を形成し、次いで前記第1の磁性層に磁気記録し、その後第2の磁性層を形成することにより書換不能な固定信号を前記第2の磁性層に形成し、更に前記第2の磁性層上に接着層を形成して磁気転写テープを作製し、次いでこの磁気転写テープを用いて基体上に前記第2の磁性層のみを転写する方法で、媒体固有の識別情報を付与するためには少なくとも2つの磁性層と1つの別の基体を必要とするものである。
【0008】
特開平8−300858号公報に開示された方法は、基体上に少なくとも1つの磁性層を形成し、次いでこの磁性層を部分的に物理的除去する方法で、媒体固有の識別情報を付与するためにはレーザー光を照射するなど物理的除去をするための高度な設備を必要とし、除去したときに発生するかすを十分に除去する必要がある。
【0009】
本発明者らはかかる点に着目し、高度な設備を必要とせず、少なくとも1つの磁性層を直接基体上に形成することにより媒体固有の識別情報を付与した磁気媒体を製造する方法を検討した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気媒体の製造方法は、基体上の全体または一部に磁性層を形成してなる磁気媒体の製造方法で、主要な3つの工程よりなる。すなわち1)磁気ドラムに磁気記録する工程と、2)前記磁気ドラムに磁性塗料を供給する工程と、3)前記磁性塗料をベースフィルムに転写する工程よりなる。本発明の各工程について以下に説明する。
【0011】
磁気ドラムに磁気記録する工程において、前記磁気ドラムは磁気記録可能なピックアップローラーで、少なくとも表層は磁気ヘッドによる磁気記録が可能で、この磁気ドラムに磁気ヘッドを用いて磁気記録する工程である。
【0012】
前記磁気ドラムに磁性塗料を供給する工程において、前記磁気ドラムに磁性塗料を供給し、前記磁気ドラムに磁気記録した磁気信号に対応した磁性粒子の粗密を形成する工程である。場合により前記磁性塗料を乾燥、固化し、皮膜化する工程である。更には前記磁性塗料が乾燥、固化する前に外部磁界を印加する工程である。
【0013】
磁性塗料をベースフィルムに転写する工程において、前記磁気ドラムに磁気記録した磁気信号に対応した磁性粒子の粗密を形成した磁性塗料をベースフィルムに転写する工程である。場合によりあらかじめ接着剤を塗布したベースフィルムに前記磁性塗料を転写する工程である。更に前記磁性塗料をベースフィルムに転写した後、十分乾燥させる工程である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に本発明の磁気媒体の製造方法の実施の形態について説明する。
本発明の一実施例としての磁気媒体の製造工程の概略図を示す図3を参照するに、巻き出し部14からベースフィルム9を巻き出し、ガイドローラにより塗工部1に供給する。塗工部1では以下に詳細に説明するように書換え不能な磁気記録を有する磁性層を形成し、該磁性層をベースフィルム9に転写・固定し、次いで必要なら更に乾燥炉15において最終的に乾燥し、巻き取り部16に巻き取る。得られた積層体は所定の幅と長さに裁断して磁気カード等の製品にする。
【0015】
次に、図3の塗工部1の詳細を示す図1を参照するに、塗工装置の塗工部1において、磁気記録可能なピックアップローラーすなわち磁気ドラム2に書き込み用磁気ヘッド3で磁気信号を記録し、これに塗料供給ノズル4により磁性材料を含有、分散してなる磁性塗料5を塗布し、スクレーパー6で厚みを制御する。これに外部磁界印加装置7、例えば配向用磁石などを用いて外部磁界を印加し、前記磁気塗料5を加熱ヒーター8でプレキュアーすることにより皮膜化し、予め接着剤を塗布したベースフィルム9上に転写させて磁性層を形成する。次いで前記磁気ドラム2に記録された磁気信号を消去用磁気ヘッド11を用いて消去し、新たに別の磁気信号を前記磁気ドラム2に磁気記録し、これを連続して行うことにより媒体固有の識別情報として書換不能な固定信号を付与した磁気媒体を製造することができる。また、上記のスクレーパー、外部磁界印加装置、加熱ヒーター、消去用磁気ヘッドおよびベースフィルムヘの接着剤塗布は必ずしも必要ではない。
本発明の製造方法によると、単一の磁性層に媒体固有の識別情報として書換不能な固定信号を付与した磁気媒体を製造することができる。
【0016】
磁気ドラム2は少なくとも表層に磁気記録可能なピックアップローラーであり、例えば、アルミニウムなどの円筒状コア材の表面に磁性層をコーティング、ディッピング、スパッタリング、蒸着、メッキなどの方法で形成し、次いで前記磁性層の表面にクロムメッキなどの保護層を形成したものである。
【0017】
磁気ヘッド3を用いて前記磁気ドラム2に信号を記録するときには、通常公知のRZ、RB、NRZ、NRZI、MFM、STRおよびPRなどの方法で符号化することができるが、再生パルス電圧が高く、記録密度が高くでき、分解能が良く、偽造変造し難い方法として周波数変調方式または位相変調方式が好ましい。
【0018】
前記磁気ドラム2に記録する信号は媒体の固有情報として磁気カード1枚毎に異なった書換不能な固定信号を形成するために記録される。
前記固定信号を形成するため前記磁気ドラム2に信号を記録する方法としては上述の方法のほかDM、FM、PDMなどのアナログ記録、または見掛け上アナログ的ランダム信号になるように記録したデジタル記録であっても良い。
【0019】
前記磁気ドラム2に磁性塗料5を供給する方法は、ノズルやインクパンなど通常公知の供給方法で良い。
磁性塗料5は通常公知の磁性粒子を含有してなり、γ−Fe23、Co被着γ−Fe23、マグネタイト、Baフェライト、Srフェライト、カルボニル鉄粉、FeA1合金、FeNi合金、FeAlSi合金、MnZnフェライト、NiZnフェライト、NiMnZnフェライトなどの磁性材料を含有、分散してなる磁性塗料であってよく、また2種類以上の磁性粒子を含有、分散してなる磁性塗料であってもよい。前記磁性塗料に使用する磁性材料に特に制約はない。
【0020】
前記磁気記録した磁気ドラム2に前記磁性塗料5を塗布すると磁気記録した磁気信号に対応し前記磁性塗料5中の磁性粒子が移動し粗密を形成することができる。図2の本発明の一実施例としての磁気媒体12によると基体9上に磁性層13が形成され、前記磁性層13は前記磁気ドラム2に記録した信号磁界に応じ、磁性粒子が密な部分13aと疎な部分13bが交互またはランダムに存在している。
【0021】
場合により前記磁気ドラム2上で磁性塗料5を乾燥、固化し、ベースフィルムに転写することができる。この場合、乾燥硬化する方法は、加熱ヒーター、熱風式乾燥装置、UV照射装置、電子線照射装置など磁性塗料の乾燥、固化システムに合わせた装置8から選ぶことができ、乾燥させることによりその形状を安定に保持することができる。更には前記磁性塗料5が乾燥、固化する前に外部磁界を印加することができる。この場合、塗布方向に対し平行な均一磁界であっても良く、また方向性、強度が不均一なランダム磁界であっても良く、配向用磁石や配向用コイルなどの外部磁界印加装置7によって与えられる。外部磁界を印加することにより磁気ドラム2上に形成された磁性塗料5中の磁性粒子の粗密の形状を制御することができ、この状態で前記磁性塗料5を前記ベースフィルム9に転写する。
【0022】
前記ベースフィルム9には、プラスチック、紙、または非磁性金属板であっても良いが、特にプラスチックを用いる場合にはポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0023】
前記磁性塗料5を前記ベースフィルム9に転写する場合、特に前記磁気ドラム2上で前記磁性塗料5を乾燥、固化した場合には、あらかじめ接着剤を塗布した前記ベースフィルム9に前記磁性塗料5を転写することができる。更に前記磁性塗料5を前記ベースフィルム9に転写した後、乾燥炉15などを通過させて十分乾燥させ、前記磁性塗料5を十分に皮膜化し、この皮膜化した磁性層と前記ベースフィルム9を強固に接着することができる。
【0024】
必要に応じ前記磁気ドラム2に前記磁気ヘッド3を用いて記録した磁気信号を消去できる。消去には磁気ヘッド11や配向用磁石、配向用コイル、電磁ヨークなどを用いることができる。
【0025】
本発明の製造方法により作製された磁気媒体は単一の磁性層に媒体固有の識別情報としての書換不能な固定信号を付与した磁気媒体である。使用目的により磁性層を保護する保護層や感熱印字層、絵柄印刷層などを更に付与し一般に使用されている磁気媒体の一部として使用することができ、また、感熱接着層や感圧接着層、カラー層などを付与した磁気テープおよびこれを用いた磁気媒体として使用することもできる。
【0026】
【実施例】
次に本発明の磁気媒体の製造方法の実施の形態を実施例により具体的に説明する。
先ず、保磁力2750OeのBaフェライト粉を含有、分散してなる磁性塗料を作製した。次に、図3に示すような磁気記録可能なピックアップローラーと前記ピックアップローラーに磁気記録するための磁気ヘッド、厚みを制御するためのスクレーパー、外部磁界印加装置、前記磁気塗料をプレキュアーするための加熱ヒーター、前記ピックアップローラーに磁気記録した磁気信号を消去するための磁気ヘッドを具備した塗工装置に前記磁性塗料を供給した。
【0027】
前記ピックアップローラーに磁気ヘッドで105BPIのFM信号を記録し、供給ノズルから磁性塗料を供給した。供給した磁性塗料はスクレーパーで125μmの厚みに制御し、外部磁界印加装置から600Gの磁界を印加した。この状態で前記磁性塗料中の磁性粒子の粗密を制御し、加熱ヒーターでプレキュアーすることにより前記磁性塗料を皮膜化し前記磁性塗料中の磁性粒子の粗密状態を安定に保持した磁性膜を形成した。そして予め接着剤を塗布したベースフィルム上にこの皮膜化した磁性塗料を転写し、乾燥炉を通して十分に乾燥、固化し、ベースフィルム上に厚さ10μmの磁性層を形成した。
【0028】
これをカードサイズに打ち抜き、単一の磁性層に媒体固有の識別情報としての書換不能な固定信号を付与した磁気カードを作製した。
【0029】
本発明の製造方法により作製された磁気カードを用いて以下のような試験を行った。
まず実施例の本発明の製造方法により作製された磁気カードをリーダーライタで再生したところ、図4に示した再生波形が得られた。
【0030】
次に前記磁気カードから再生された読取信号を消去するため15kGの外部磁界を印加し、その後、再びリーダーライタで再生したところ、図4に示した再生波形と同様の再生波形が得られ、信号が消去されなかったことが確認された。
【0031】
【発明の効果】
本発明の磁気媒体の製造方法によれば単層構造の磁性層に媒体固有の識別情報として書換不能な固定信号を形成できる。本発明によれば、高度な設備を必要とせず、少なくとも1つの磁性層を直接基体上に形成することにより媒体固有の識別情報を書換不能な固定信号として付与した磁気媒体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての塗工部の概略図である。
【図2】本発明により製造された磁気媒体の一実施例としての断面図である。
【図3】本発明の一実施例としての磁気媒体の製造工程の概略図である。
【図4】本発明により製造された磁気媒体の一実施例としての再生波形である。
【符号の説明】
1 塗工部
2 磁気ドラム
3 書き込み用磁気ヘッド
4 塗料供給ノズル
5 磁性塗料
6 スクレーパー
7 外部磁界印加装置
8 加熱ヒーター
9 ベースフィルム
10 バックロール
11 消去用磁気ヘッド
12 磁気媒体
13 磁性層
13a 磁性粒子が密な部分
13b 磁性粒子が疎な部分
14 巻き出し部
15 乾燥炉
16 巻き取り部

Claims (7)

  1. 基体上の全体または一部に磁性層を形成してなる磁気媒体の製造方法において、少なくとも磁気ドラムに磁気記録する工程と前記磁気ドラムに磁性塗料を供給する工程と前記磁性塗料をベースフィルムに転写する工程よりなる磁気媒体の製造方法。
  2. 前記磁気ドラムの少なくとも表層は磁気ヘッドによる磁気記録が可能で、前記磁気ドラムに磁気ヘッドを用いて磁気記録することを特徴とする請求項1の磁気媒体の製造方法。
  3. 前記磁気ドラムに磁性塗料を供給し、前記磁気ドラムに磁気記録した磁気信号に対応した磁性粒子の粗密を形成することを特徴とする請求項1の磁気媒体の製造方法。
  4. 前記磁性塗料を乾燥、固化し、ベースフィルムに転写することを特徴とする請求項1の磁気媒体の製造方法。
  5. 前記ベースフィルムに接着剤を塗布し、前記磁性塗料を転写することを特徴とする請求項1又は請求項4の磁気媒体の製造方法。
  6. 前記磁性塗料が乾燥、固化する前に外部磁界を印加することを特徴とする請求項1、請求項4又は請求項5の磁気媒体の製造方法。
  7. 前記磁性塗料をベースフィルムに転写し、十分乾燥させることを特徴とする請求項1、4、5又は6の磁気媒体の製造方法。
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