JP4075479B2 - ガラス乾板収納用スペーサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトマスク用の写真プレート等のガラス乾板を容器内に複数枚収納させるに当って、相互のガラス乾板を接触させないようにして収納させるために、各ガラス乾板の端部に着脱可能に装着されるスペーサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ICやLSI等の製造工程において、ウエハ上に所望のパターンを転写するためにフォトマスクが用いられるが、このフォトマスクに用いられる写真プレートは高解像度が要求される。このために、光学ガラスの表面に極微細で均一な粒径を有するハロゲン化銀粒子等からなる乳剤を均一に塗布したガラス乾板が写真用プレートとして使用される。このように、乳剤を塗布したガラス乾板は、保管時には完全な遮光性が要求されるために、密閉された容器に収納させる。ガラス乾板のサイズ及び重量にもよるが、1個の容器には複数枚のガラス乾板を収納するようにしている。そして、ガラス乾板の輸送や運搬等の際に、容器に収納させたままで行うのが一般的である。ガラス乾板は、容器に収納させた状態で、特にその乳剤が塗布された被処理面には何等の部材とも接触させないように保持しなければならない。
【0003】
このように、ガラス乾板の保管及び輸送用に用いられる容器の構造としては、例えば特開平8−164985号公報に示されているものが従来から知られている。この公知の容器は、ボール箱からなる箱体の内面における各辺に無塵紙からなり、ガラス乾板を容器の内部で位置決めするためのパッドがそれぞれ2箇所取り付けられている。このように、各辺にそれぞれ間隔を空けて2箇所のパッドを設けて、その中央部分に人の指が入る間隔が形成されている。箱体の内底部にはクッション材が敷かれており、その上にガラス乾板が複数枚積層するようにして収納される。そして、ガラス乾板の端部は各パッドと当接するようにして位置決めされる。
【0004】
積層された上下のガラス乾板間を非接触状態とするために、箱体の相対向する長辺側には、これらの辺に設けたパッドと当接するようにしてスペーサが装着されており、このスペーサは各辺に形成した2箇所のパッドと前後に位置する短辺側のパッドとの間に挟み込むようにして固定されている。従って、ガラス乾板とスペーサとが交互に重ねられるようにして箱体内に収納され、上下から蓋を被せるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、容器内に収納させた状態では、ガラス乾板の両面がスペーサと当接する。ここで、ガラス乾板の一面には乳剤を塗布した被処理面となっているが、この被処理面側のうち周囲の縁部は有効領域としては用いられないことから、スペーサはこの有効領域外の部分に当接させることになる。また、ガラス乾板の端面はパッドと対面しているが、このガラス乾板の横ずれを防止するために、ガラス乾板の端面はパッドに当接する寸法関係を持たせている。ガラス乾板を収納させた容器は、それを輸送したり、運搬したりする際には振動が作用するが、この振動によりガラス乾板がパッドと衝突しても、ガラス乾板を損傷させないようにするために、パッドは緩衝性のある部材で形成されている。
【0006】
複数枚のガラス乾板を収納させた容器は重量物であるために、台車等に複数個の容器を載置して運搬する際に、容器を水平状態で段積みすると、最下段の容器に極めて大きな荷重が作用することになる。ガラス乾板の保護のために、容器は紙やプラスチックの薄板で形成されることから、台車に複数段容器を積み重ねると、最下段の容器が圧迫されて、変形したり、損傷したりする可能性がある。従って、容器を台車に積載する際には、立て掛けるように設置するのが一般的であり、また容器保護の観点からも望ましいものとなる。
【0007】
台車上において容器を立てると、ガラス乾板の端面がパッドと当接することになる。そして、台車を移動させると、容器に振動が作用することになり、ガラス乾板の端面がパッドと摺動する。その結果、パッドが無塵紙で形成しているにしろ、ガラス乾板の端面がパッドと摺動して、磨耗粉を発生させたり、パッドが削り取られたりする可能性がある。容器内で磨耗粉等の異物が発生すると、ガラス乾板の被処理面に付着して、この被処理面を汚損するという問題点が発生する。
【0008】
また、ガラス乾板相互間にはスペーサが介在しているが、このスペーサはガラス乾板の有効領域外の部位にしか当接させることができないので、その幅寸法は極めて小さいものとなる。台車が大きく振動すると、弾性を有するパッド上のガラス乾板が上下にバウンドして、スペーサの下部に潜り込む可能性があり、そうなるとガラス同士が直接当接する状態となってしまい、被処理面乃至ガラス面に傷が生じる可能性がある等といった問題点が生じることにもなる。
【0009】
ここで、スペーサとして概略コ字に形成したものも知られている。このように、コ字状のスペーサを使用すれば、ガラス乾板が直接パッドや容器の内壁等と直接接触するのを防止できることになる。ただし、この種コ字状スペーサにあっても、溝の深さがガラス乾板の有効領域外の幅寸法に規制され、しかもスペーサのガラス乾板への着脱の容易性等の観点から、溝幅がガラス乾板の厚みより大きくすることになり、振動発生時にはスペーサとガラス乾板とが摺動する可能性がある。従って、たとえコ字状のスペーサを用いても、前述した課題を実質的に解消できるものではない。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ガラス乾板を容器に収納させた状態で、容器に振動が作用しても、磨耗粉等が発生せず、またガラス乾板同士が直接接触しないように保持できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、一面側が被処理面となったガラス乾板の少なくとも一端部に着脱可能に装着されて、所定の容器内に収納するために用いられるスペーサであって、前記ガラス乾板の端部に装着される合成樹脂製のスティック部材からなり、このスティック部材には、溝底部と、この溝底部の両側から立ち上がる第1,第2の側壁部とからなる凹溝が長手方向に形成されており、前記溝底部は前記ガラス乾板の端面が当接するように、このガラス乾板の厚み寸法より広い幅を有する概略平坦面となし、前記第1の側壁部は、その立ち上がり方向の概略中間部が前記第2の側壁部側に向けた凸曲面形状となし、その最突出部が前記ガラス乾板の被処理面における有効領域外の部位と実質的に線接触するものであり、前記第2の側壁部は前記第1の側壁部に近接する方向に傾斜した弾性を有する傾斜壁であって、これら第1,第2の側壁部間に前記ガラス乾板の端部を弾性的に挟持させる構成としたことをその特徴とするものである。
【0012】
スペーサは長手方向に向けた凹溝を備えたスティック部材から構成される。凹溝は長手方向に貫通するように設けるが、少なくとも一方の端部を閉鎖するようにしても良い。ガラス乾板の少なくとも1つの端面はこのスペーサにより覆われると共に、そのエッジから被処理面側及びガラス面側に回り込むように第1,第2の側壁部が連設されている。第1,第2の側壁部はガラス乾板に対して挟持力がするようになっている。第1の側壁部は、その中間部が最も張り出しているので、この最突出部がガラス乾板の被処理面に対して線接触する。この接触部はガラス乾板の縁部側で有効領域外であって、この有効領域との境界部近傍とする。スペーサの材質としては、弾性,柔軟性,耐摩耗性,加工性等の観点から、合成樹脂材、特にポリプロピレン,ポリエチレン,ABSナチュラル等が好適ある。
【0013】
ガラス乾板を挟持させるために、スペーサにおける第2の側壁部の内側先端部が第1の側壁部に最も近接するようになし、かつ溝底部から第1,第2の側壁部の高さをほぼ同じにする。第1の側壁部の中間部位に配置されている最突出部から溝底部への垂線と、第2の側壁部の内側先端部から溝底部への垂線との間隔をガラス乾板の厚みより狭いものする。また、スペーサをできるだけ容易にガラス乾板に装着できるようにするためには、第1,第2の側壁部間における凹溝の先端開口部の幅をガラス乾板の厚み寸法より広くする。これによって、スペーサの入口部分を強制的に広げることなく、斜め方向からガラス乾板の端部に挿入するようにして嵌め込むことができる。
【0014】
スペーサとしての機能の点から、容器を水平状態に置いて両端が支持されてるガラス乾板の中間部が撓んでも、その下部に位置するガラス乾板と接触しないように保持されなければならない。従って、第1,第2の側壁部の厚みの合計寸法は、ガラス乾板の撓み量より大きいものとする。このガラス乾板の撓み量は、その厚み,大きさ等により異なってくる。第1の側壁部と第2の側壁部とを同じ厚みとすることもできるが、一方の側壁部、特に被処理面側と対面する第1の側壁部は、第2の側壁部より厚みが大きくするのが望ましい。しかもこの厚肉からなる第1の側壁部は中空の部材とすることによって、緩衝性を向上させることができる。
【0015】
ガラス乾板を収納容器内に収納させて、この収納容器を立て掛けたときに、少なくとも下側に位置する端部がスペーサの凹溝に装着されるようにする。勿論、上側にもスペーサを装着するが、この上部側のスペーサも前述したと同様の構成としても良い。また、立て掛けた状態において、左右両側の部位には格別スペーサを設けなくても良いが、やはり同様のスペーサを装着することもできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の一形態について説明する。まず、図1にはガラス乾板1を複数枚、例えば5枚収納させるに適切な容器2の断面が示されている。容器2は、内箱3と、蓋4と、外箱5との三重箱から構成される。この三重箱からなる容器2の内部は密閉構造となり、外部からの光が入り込まず、また塵埃等が侵入しないようになっている。図2に示したように、内箱3の4辺の周壁部内面には、それぞれ中実または中空のボックス形状からなるパッド6(以下において、内箱3の長辺部のパッドと短辺部のパッドとを分ける場合には、図2に示したように、前者を6L,後者を6Sという)が貼り付けられている。ここで、パッド6,6間の間隔は、各辺において、相互にガラス乾板1を手で着脱できるスペースを確保するためのものである。
ガラス乾板1には、その一面側には乳剤が塗布される等により被処理面1aとなっており、反対側の面は格別の処理がなされないか、またはハレーション防止膜等が塗布されたガラス面1bである。ガラス乾板1には、その両長辺部にスペーサ10が装着されており、図2に示したように、両スペーサ10がパッド6L,6Lに当接し、ガラス乾板1の両短辺部はパッド6S,6Sと対面する状態にして内箱3に収納される。そして、内箱3の底面にはクッション材7が敷かれており、このクッション材7の上にスペーサ10を装着したガラス乾板1が載置される。
【0017】
ここで、クッション材7の上に載置される最下段のガラス乾板1は、その被処理面1aを上向きにして配置される。また、第2段目、第3段目及び第4段目のガラス乾板1は、それらの被処理面1aを上向きにして載置される。そして、最上段のガラス乾板1は、その被処理面1aが下向きにして載置される。従って、内箱3内に収納された全てのガラス乾板1の被処理面1aは他のガラス乾板1と対面した状態に保持される。そして、この最上段のガラス乾板1の上部はもう一つのクッション材8により覆われている。さらに、この内箱3に蓋4を被せると、この内箱3の内面がクッション材8と当接するようになる。従って、多段に積層された各ガラス乾板1に装着したスペーサ10が相互に重なり合い、上下のガラス乾板1の被処理面1a及びガラス面1bは相互に接触しないようになる。
【0018】
図3にスペーサ10を自由状態にして示し、また図4にはガラス乾板1にスペーサ10を装着した状態を示す。スペーサ10は、ガラス乾板1の端部が挿嵌される凹溝11を有するスティック状の部材であり、その長さは好ましくは挿入されるガラス乾板1の長辺の長さとほぼ一致させる。ただし、スペーサ10の長さはガラス乾板1の長辺の長さより短いものであっても、またスペーサ10の方を長くしても良い。しかしながら、内箱3の長辺側に設けた一対のパッド6L,6L間に形成される間隙以下の寸法であってはならず、また短辺側のパッド6Sが図2に示したように、スペーサ10の内側に位置している場合には、内箱3の長辺側の幅を超えるものであってはならない。
【0019】
スペーサ10における凹溝11は、溝底部12と、この溝底部12の両端から立ち上がる第1,第2の側壁部14,14とにより区画形成される。溝底部12の内面部はほぼ平面形状となっており、図3にB1で示した幅寸法を有するものである。この溝底部12の幅寸法B1はガラス乾板1の厚みB2より僅かに大きいものである。第1の側壁部13は、第2の側壁部14とは同じ高さまで延在されており、かつ第1の側壁部13の方が厚肉となっている。また、厚肉となった第1の側壁部13の剛性を緩和してクッション性を持たせるために、長さ方向に貫通する中空部15が形成されている。そして、この第1の側壁部13における凹溝11側の面13aは凸円弧面形状となっており、その第2の側壁部14側への最突出部13aPは、第1の側壁部13の溝底部12からの立ち上がり部の概略中間位置となっている。また、第2の側壁部14は、その厚みは、溝底部12とほぼ同じ厚みを有し、つまり第1の側壁部13の厚みより薄いものであり、その溝底部12への連設部から立ち上がり方向において、第1の側壁部13側に向けて傾斜している。そして、第2の側壁部14の内側先端部14aが第1の側壁部13に最も近接している。
【0020】
第1の側壁部13における最突出部13aPから溝底部12に垂線V1を下ろし、また第2の側壁部14の内側先端部14aから溝底部12に垂線V2を下ろしたときに、両垂線V1,V2の間隔B3はガラス乾板1の厚みB2より小さくなっている。さらに、第1の側壁部13の先端部と第2の側壁部14の内側先端部14aとの間の間隔B4、つまり凹溝11の入口開口の幅はガラス乾板1の厚みB2より広くなっている。
【0021】
ここで、スペーサ10は比較的軟質の合成樹脂、例えば軟質ポリエチレンから構成され、外面にエッジが出ない形状となっている。また、少なくとも第2の側壁部14は弾性変形が可能なものであり、第1の側壁部13は第2の側壁部14より弾性力が低いものとなっている。なお、スペーサ10には、第1の側壁部13の幅をより広くし、またパッド6への接触面積を少なくするために、図3に仮想線で示したように、第1の側壁部13の下方に向けて円弧状の突出部13bを形成することもできる。さらに、この端面の形状としては、これ以外の非平面形状とすることもできる。
【0022】
従って、スペーサ10をガラス乾板1に装着するに当っては、図3の矢印方向から挿入する。スペーサ10の凹溝11における入口開口の幅はガラス乾板1の厚みより大きくなっているので、凹溝11の幅を強制的に広げなくても、ガラス乾板1の端部は凹溝11内に進入させることができる。そして、ガラス乾板1の端面が凹溝11の溝底部12に当接する位置にまで進入する間には、特に第1の側壁部13における最突出部13aPの位置を通過すると、第2の側壁部14は第1の側壁部13から離間する方向に弾性変形することになる。その結果、スペーサ10はガラス乾板1の両面を挟持する状態となる。この状態では、ガラス乾板1における被処理面側は第1の側壁部13における凸円弧面13aの最突出部13aPと線接触することになり、またガラス面側は第2の側壁部14の内側先端部14aと当接して、この第2の側壁部14の撓みによって、ガラス乾板1に対する挟持力が作用することになる。また、逆にスペーサ10を引き出すことによって、ガラス乾板1から容易に分離できる。
【0023】
以上のように、ガラス乾板1には、その両長辺部にスペーサ10が装着されているが、このスペーサ10の厚みは、このガラス乾板1の両長辺部を支持した時に、その中間部の最大撓み量より大きいものとしている。従って、容器2を水平状態に保った場合でも、内部に収納されている各ガラス乾板1は相互に接触することはない。
ガラス乾板1を容器2に収納するに当っては、まず各ガラス乾板1の両端部にスペーサ10を装着するが、このスペーサ10の凹溝11の開口幅はガラス乾板1の厚みより大きいことから、円滑に挿入することができ、その後にスペーサ10をガラス乾板1に向けて押し込むようにすることによって、容易に装着できる。装着状態では、スペーサ10における第1の側壁部13の最突出部13aPがガラス乾板1の被処理面1aに対して実質的に線接触する。また、ガラス乾板1のガラス面1bには第2の側壁部14における少なくとも内側先端部14aが当接しており、しかも第2の側壁部14全体が弾性変形することになる。
【0024】
ガラス乾板1の被処理面1a側においては、第1の側壁部13の最突出部13aPが当接している。そして、ガラス乾板1の端面が溝底部12に当接した状態でも、この最突出部13aPはガラス乾板1の被処理面1aにおける有効領域外とする。ただし、第1の側壁部13は、この最突出部13aPより先端側に延在しているので、ガラス乾板1における被処理面1aの有効領域の一部を覆うことになる。一方、第2の側壁部14はガラス乾板1のガラス面1bに当接しているが、このガラス面1b側は前述したように接触位置が限定されていないので、有効領域に対応する領域の内側にまで入り込ませている。そして、第2の側壁部14によりガラス面1bが損傷しないようにするために、内側先端部14aは丸みを持たせており、またスペーサ10の材質そのものが軟質樹脂であるから、スペーサ10の着脱時を含めて、スペーサ10によりガラス乾板1に傷等を発生させるおそれはない。
【0025】
このようにしてスペーサ10を装着したガラス乾板1は、人手作業で容器2に収納するには、スペーサ10を持って内箱3に積層する。ここで、内箱3の内部における長辺部には、一対のパッド6L,6Lが設けられているが、これらは所定の間隔だけ離れた位置に配置されているので、その間の隙間に手を挿入することができるので、ガラス乾板1に直接手を触れずに容易に収納でき、また取り出すことができる。また、ハンドリング手段によりガラス乾板1を容器2に収納させたり、取り出したりする作業を行う場合にも、やはりスペーサ10の部分をハンドリングする。内箱3の底面にクッション材7が敷かれ、ガラス乾板1を所定枚数収納させ、その上をクッション材8で覆った状態で、蓋4を装着し、さらに外箱5に組み込まれる。そして、必要に応じて、容器2の周囲に締め付けバンドを巻き付ける等により容器2を固定的に保持させることができる。これにより、容器2内に収納されたガラス乾板1はほぼ完全に遮光された状態で保管されると共に、その持ち運び等を行えるようにする。
【0026】
ガラス乾板1を保管場所から運搬する等の場合には、図5に示したように、台車20に容器2を積載するが、容器2は立て掛けた状態にして複数個積載される。そして、これら複数の容器2は固定用バンド21によって鉛直状態となるようにして固定される。このような積載方式を採ることによって、容器2を水平状態に積層する場合と比較して、安定性が良好となり、かつ容器2に過大な荷重が作用するのを防止できる。
【0027】
台車20に積載されると、容器2の下端部は、図6に示したように、ガラス乾板1に装着したスペーサ10が内箱3に設けたパッド6Lと当接しており、ガラス乾板1の端部はパッド6Lに対して非接触状態に保持されている。また、相隣接するガラス乾板1,1間はそれぞれに設けたスペーサ10,10が当接しており、ガラス乾板1,1は相互に隔てられた状態に保持されている。所定数の容器2を台車20に積載して運搬する際には、容器2に作用する振動によりその内部に収納させたガラス乾板1が上下動することになる。パッド6Lにはスペーサ10が当接しており、このスペーサ10は軟質の合成樹脂で形成されているから、振動発生時にスペーサ10がパッド6Lに繰り返し衝突しても、ガラス乾板1はもとより、スペーサ10及びパッド6Lが損傷したり、変形したりすることがなく、また摩擦による磨耗粉等を生じるおそれはない。さらに、スペーサ10はガラス乾板1を挟持しているので、振動により上下動したときにガラス乾板1とスペーサ10との間に相対的な動きが生じることがなく、従ってスペーサ10とガラス乾板1との間で摩擦が生じることもない。
【0028】
さらに、振動発生時において、相隣接するガラス乾板1,1の動き方向が反対方向となると、つまり図6に矢印で示したように、一方のガラス乾板1が上昇する一方、他方のガラス乾板1が下降したときには、両ガラス乾板1,1間が上下方向に大きくずれることになる。ガラス乾板1の被処理面における有効領域外の幅は、例えば5mm程度というように狭い幅であり、またパッド6にクッション性を持たせるようにした場合には、大きな振動が作用したときに、相隣接するガラス乾板1,1が相対的にこの有効領域外の幅を超えるずれが生じる可能性がある。しかしながら、スペーサ10における第1の側壁部13は、そのガラス乾板1に線接触している最突出部13aPより有効領域側に張り出しており、また第2の側壁部14の高さもこの第1の側壁部13と実質的に同じ状態となっているので、極めて大きな振動が作用したとしても、スペーサ10同士の当接状態が確保されることになり、一方のスペーサ10が隣接する他のスペーサ10に乗り上げるおそれはない。
【0029】
ここで、前述した実施の形態では、ガラス乾板1の長辺部にスペーサ10を装着する構成としたが、このガラス乾板1より大判のガラス乾板30の場合には、その短辺が上下となるようにして台車20に積載する方が運搬時における幅寸法の縮小等の点で望ましい場合がある。この場合には、図7乃至図10に示したように構成する。
【0030】
大判のガラス乾板30は重量物であることから、持ち運び等を容易にするために、容器31には2枚のガラス乾板30が収納されるようになっている。この容器31は、図7に示したように、容器本体32と蓋33とから構成され、これら容器本体32及び蓋33は合成樹脂の成形品から構成される。容器本体32は、図8に示したように、その長辺側の内壁部32L,短辺側の内壁部32Sはパッドの機能を発揮するものであり、それぞれ中間位置に凹部34が形成されており、これら凹部34はガラス乾板30の着脱を容易にするためのものである。また、内壁部32L,32Sは上方に向けて相互に拡開する傾斜壁となっており、これによってガラス乾板30の容器31への着脱を容易にしている。
【0031】
このように、大判のガラス乾板30であっても、このガラス乾板30の厚みが、前述した第1の実施の形態と実質的に同じであれば、スペーサ10をその両短辺部に装着することができる。つまり、長尺のスティック状に形成したスペーサ10をガラス乾板30の短辺部の長さに応じた位置で切断して、ガラス乾板30の両短辺部に装着する。
【0032】
大判のガラス乾板30の両短辺部を支持した状態における中間部の撓み量は、それよりサイズの小さい第1の実施の形態におけるガラス乾板1よりかなり大きくなる。しかしながら、図9に示したように、容器31内に収納した2枚のガラス乾板30の被処理面30a,30aを相対向するようにして収納させることによって、その間に第1の側壁部13の2倍の厚みに相当する隙間が形成される。従って、収納状態でガラス乾板30,30を確実に非接触状態に保つことができる。また、2枚のガラス乾板30を収納させる際には、容器本体32及び蓋33の端部に段差面部32a,33aを形成して、この段差面部32a,33aをスペーサ10に当接させるようになし、これら段差面部32a,33aにクッション機能を発揮させるようにすることができる。
【0033】
なお、2枚のガラス乾板30,30における長辺部間にもスペーサを介装する構成とすることができ、この部位にスペーサ10を装着することもできるが、容器31の運搬時における横揺れは小さいことから、スペーサは必ずしもガラス乾板30に対して挟持力を作用させる必要がなく、例えば図10に示したように、所定の厚みを有する角棒状のスペーサ部の端部に上下に向けて、ガラス乾板30の端面に当接するストッパ部とを連設したスペーサ35等、適宜の構造のスペーサを用いることができる。そして、スペーサ35のスペーサ部の厚みは、好ましくはスペーサ10によるガラス乾板30,30間の隙間と同じか若しくはそれ以下の寸法とする。
【0034】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、ガラス乾板を容器に収納させた状態で、容器に振動が作用しても、磨耗粉等が発生せず、またガラス乾板同士が直接接触しないように保持できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すものであって、スペーサを装着したガラス乾板を容器内に収納させた状態を示す断面図である。
【図2】内箱の内部にガラス乾板を収納させた状態での平面図である。
【図3】スペーサの断面図である。
【図4】スペーサをガラス乾板に装着した状態の断面図である。
【図5】容器を運搬するために、台車に積載した状態の構成説明図である。
【図6】台車に積載した容器の内部構造における要部断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示すものであって、ガラス乾板にスペーサを装着して容器内に収納させた状態での長辺方向における断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における容器本体内にガラス乾板を収納させた状態の平面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における容器の内部構造における要部断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるガラス乾板にスペーサを装着して容器内に収納させた状態での短辺方向における断面図である。
【符号の説明】
1,30 ガラス乾板
2,31 容器
3 内箱
10 スペーサ
11 凹溝
12 溝底部
13 第1の側壁部
13a 凸円弧面部
13aP 最突出部
14 第2の側壁部
14a 内側先端部
Claims (6)
- 一面側が被処理面となったガラス乾板の少なくとも一端部に着脱可能に装着されて、所定の容器内に収納するために用いられるスペーサであって、
前記ガラス乾板の端部に装着される合成樹脂製のスティック部材からなり、このスティック部材には、溝底部と、この溝底部の両側から立ち上がる第1,第2の側壁部とからなる凹溝が長手方向に形成されており、
前記溝底部は前記ガラス乾板の端面が当接するように、このガラス乾板の厚み寸法より広い幅を有する概略平坦面となし、
前記第1の側壁部は、その立ち上がり方向の概略中間部が前記第2の側壁部側に向けた凸曲面形状となし、その最突出部が前記ガラス乾板の被処理面における有効領域外の部位と実質的に線接触するものであり、
前記第2の側壁部は前記第1の側壁部に近接する方向に傾斜した弾性を有する傾斜壁であって、これら第1,第2の側壁部間に前記ガラス乾板の端部を弾性的に挟持させる
構成としたことを特徴とするガラス乾板収納用スペーサ。 - 前記第1,第2の側壁部は概略同じ高さを有し、前記第2の側壁部の先端部が前記第1の側壁部に最も近接するものであって、前記第1の側壁部の最突出部から前記溝底部への垂線と、前記第2の側壁部の内側先端部から前記溝底部への垂線との間隔は、前記ガラス乾板の厚みより狭いものする構成としたことを特徴とする請求項1記載のガラス乾板収納用スペーサ。
- 前記凹溝の先端開口部の幅は前記ガラス乾板の厚み寸法より広いものであることを特徴とする請求項2記載のガラス乾板収納用スペーサ。
- 前記第1,第2の側壁部の厚みの合計寸法は、前記ガラス乾板を水平状態に保持したときの撓み量より大きいものであることを特徴とする請求項1記載のガラス乾板収納用スペーサ。
- 前記第1の側壁部は、前記第2の側壁部より厚みが大きいものであり、この第1の側壁部は中空の部材となっていることを特徴とする請求項4記載のガラス乾板収納用スペーサ。
- 前記ガラス乾板を前記容器内に収納させて、この容器を立て掛けたときに、少なくとも下側に位置する端部が前記凹溝に装着されることを特徴とする請求項1記載のガラス乾板収納用スペーサ。
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