JP4075371B2 - 車両の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の走行制御装置に係わり、詳しくはエンジンの出力増大に合わせて無段変速機の変速比を好適に制御する車両の走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の走行制御装置に関する従来技術は、例えば特開平7−266933号公報や特開平9−14414号公報等に記載されている。前者の変速ショック軽減装置は車両の加速時にエンジン出力を増大させ、その立ち上がりの時期と変速機の変速開始時期とを一致させて変速ショックを軽減しようとするものである。
【0003】
一方、後者の加速振動低減装置は車両の加速時にエンジンの回転加速度を検出し、その回転加速度変動に応じて変速比を増減補正することで、車体前後振動(しゃくり現象)を低減させようとするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の技術は変速後に生じる駆動系のねじり振動に対応していないため、加速走行に伴うしゃくり現象を抑えることはできない。この点、後者の技術はしゃくり現象の低減を目的とするものの、その具体的な手段は基準変速比に対して変速比を増減補正するものであるため実用性に問題がある。より詳しくは、後者の技術において変速比を補正する際、エンジンの回転加速度を検出しながら修正変速比を求め、その修正変速比を用いて実際に変速機を制御することとなる。この場合、制御上目標とする修正変速比に対して変速機に応答遅れが生じると、実際の変速比の変化がトルク変化に追従できず、しゃくり現象を低減できないばかりか、かえって車体前後振動を増幅させてしまう場合がある。
【0005】
そこで本発明は、複雑な制御手法を用いることなく、確実に車体前後振動を抑えることができる車両の走行制御装置の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の走行制御装置(請求項1)は、加速移行時にエンジンの出力を増大させるとともに無断変速機の変速比を増大させ、このとき、所定の切換タイミングで変速比の変化速度を減少させることで上記の課題を解決する。具体的には、エンジンの出力増大に伴い車両の駆動トルクが周期的に増減変動するとき、該増減変動の発生後、その減少時期に合わせて上記の切換タイミングを設定している。
【0007】
このような変速比制御を実行することにより、切換タイミングで変速比の変化速度が減少し、このとき無断変速機の入力軸にて慣性トルクが増大する。この慣性トルクの増大が駆動トルクの減少分を相殺し、しゃくり減少の発生を効果的に抑える。また出力軸では回転速度の急激な上昇が抑えられるので、車両の突き出し感が防止される
なお、上述した切換タイミングは、駆動トルクが最初に減少する時期(1回目)に合わせて設定される態様が好ましい(請求項2)。この場合、駆動系のねじり振動が速やかに収束し、以後の加速走行がスムーズに行われる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は、一実施形態に係る車両の部分的な構成を概略的に示している。この車両はエンジン2を搭載し、その駆動系に例えばベルト式の無段変速機(以下、「CVT」と略称する。)4を装備している。このCVT4はエンジン2から出力される回転を無段階に変速して駆動軸6に伝達することができる。
【0009】
CVT4は、プライマリプーリ8とセカンダリプーリ10との間に巻き掛けた無端状の駆動ベルト12により動力を伝達し、これらプーリ8,10間の巻き掛け径比に応じてプライマリ軸14とセカンダリ軸16との間にて変速比を無段階に設定することができる。ただし、本発明において無段変速機はベルト式に限られず、トロイダル式CVT等その他の型式のものであってもよい。
【0010】
CVT4の変速操作は、例えば油圧式の変速制御器18により行うことができる。具体的には、各プーリ8,10はいずれも駆動ベルト12を挟持するためのコーン面を有した固定シーブおよび可動シーブからなり、それぞれ可動シーブは固定シーブに対して軸方向に変位することができる。また、各可動シーブ内には油圧室が形成されており、個々の油圧室には変速制御器18を通じて作動油圧の給排路が接続されている。この変速制御器18は図示しない油圧源から作動油圧の供給を受け、その圧力を調整してCVT4に供給することができる。
【0011】
より具体的には、変速制御器18はプライマリプーリ8側の油圧室に対する作動油圧の給排を制御してその可動シーブを軸方向に変位させる一方、セカンダリプーリ10側の油圧室に必要なライン圧を供給する。これにより、CVT4はプライマリプーリ8およびセカンダリプーリ10による駆動ベルト12の挟持力を適正に保持したまま、これらプーリ8,10間にてベルト巻き掛け径比を無段階に変更することができる。なお、CVT4はトルクコンバータ19を含めてユニット化されており、上述の変速制御器18はトルクコンバータ19のロックアップ動作等をも含めてCVT4の作動を制御することができる。
【0012】
また図1の車両は、その走行状態を総合的に制御するための電子制御ユニット(以下、「ECU」と略称する。)20を装備しており、エンジン2の出力やCVT4の変速操作はいずれもECU20により制御することができる。
この車両のエンジン2は、吸気系に例えば電動スロットルバルブを備えており、エアフローメータおよび燃料噴射弁(これらはいずれも図示されていない)を用いて空燃比の電子制御を可能とする装備を有している。ECU20は電動スロットルバルブの開度を調節するとともに、エアフローメータからのセンサ信号を受け取ってエンジン2の吸入空気量を検出し、所定の空燃比を得るように燃料噴射弁を駆動させる。
【0013】
また上述した変速制御器18は、例えば図示しないソレノイドバルブを用いて駆動されるスプールバルブを有しており、そのスプールの位置を切り換えて個々の油圧室に対する作動油圧の給排やライン圧の調整を行うことができる。ECU20は、所定の変速制御プログラムに従って変速制御器18のソレノイドバルブを駆動させ、CVT4の変速比を制御することができる。なお図1には、変速制御器18とCVT4との間の作動油圧の給排を表す矢印のみが示されている。
【0014】
ECU20には車両の走行状態を表す各種の情報が収集されるようになっており、それゆえ車両には各種のセンサ類が組み込まれている。例えばアクセルペダル22には、その踏み込み量に応じたセンサ信号を出力するアクセルポジションセンサ24が取り付けられており、ECU20はアクセルポジションセンサ24からのセンサ信号によりアクセル開度を検出することができる。
【0015】
また車輪Wには、その回転速度に同期したパルスを出力する車速センサ26が組み込まれており、ECU20はそのパルス信号から車速を検出することができる。その他、エンジン2にはクランク軸の回転に同期したパルスを出力する回転速度センサ(図示していない)が設けられており、ECU20はそのクランク角パルスからエンジン2の回転速度を検出することができる。
【0016】
以上は本発明の走行制御装置に含まれる要素の基本的な構成であるが、本実施形態ではさらに、ECU20の制御機能に関してその他の構成を具備している。
次にECU20による走行制御機能について、具体的な実施例を挙げて説明する。また以下の説明により、本発明の走行制御装置に係るその他の機能構成もまた明確となる。
【0017】
図2から図4は、ECU20が実行する走行制御ルーチンを示している。
ECU20は先ず、車両の走行制御に関して各種場合分けの判断を行うため、車両の走行状態に応じて燃料カットフラグFCおよびしゃくり低減フラグFRの設定処理を行う。これらフラグFC,FRはECU20の内部で設定される識別信号であり、そのオンまたはオフの切り換えもECU20の内部で行われる。
【0018】
具体的には、図2に示されるように、先ずECU20は前回の燃料カットフラグFC(n−1)の状態を今回の燃料カットフラグFC(n)に置き換え、その設定状態を保持する(ステップS1)。ここで(n)は制御インターバルの繰り返し回数を意味する。
次にECU20はアクセル開度が全閉であるかを判断する(ステップS2)いま、例えば車両の運転者がアクセルペダル22の踏み込みを解除して車両が減速走行しており、アクセル開度が全閉である場合(ステップS2=Yes)、次にECU20は燃料カット中であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0019】
通常、減速走行中は燃料噴射が停止(カット)されるので(ステップS3=Yes)、ECU20は燃料カットフラグFCをオン、つまりセットする。
また図3に示されるように、アクセル開度が全閉である場合(ステップS11=Yes)、ECU20はしゃくり低減フラグFRをオフ、つまり、リセットの状態にしている(ステップS16)。
【0020】
次に、運転者がアクセルペダル22を踏み込み、車両が減速走行から加速走行に移行した場合、アクセル開度が全閉ではなくなるので(ステップS2=No)、ECU20は燃料カットフラグFCをオフにする(ステップS5)。
燃料カットフラグFCをオフにすると、図3の制御ルーチンにおいてステップS11およびステップS12の判定がいずれも成立し(Yes)、さらに前回燃料カットフラグFCがオンの状態であったことから(ステップS13=Yes)、この場合、ECU20はしゃくり低減フラグFRをオンにする(ステップS14)。
【0021】
続いてECU20はタイマT1をリセットする(ステップS15)。なお、タイマT1はECU20が内蔵するタイマカウンタ機能の一つを意味する。
以上のようにフラグFC,FRの設定を行うと、ECU20はCVT4の変速比制御を実行する。図4に示されるように、しゃくり低減フラグFRがオンの場合(ステップS21=Yes)、ECU20はアクセル開度からタイマカウント時間TC1を設定する(ステップS22)。
【0022】
ここで、カウント時間TC1は減速走行から加速走行への移行に伴い、CVT4の変速比を変化させる切換タイミングまでの所要時間であり、具体的にはアクセル開度が大きいほどカウント時間TC1は短縮化される傾向にある。なお、カウント時間TC1は検出したアクセル開度に基づいて演算するものであってもよいし、あるいは、ECU20がカウント時間TC1の設定マップを予め内蔵していてもよい。
【0023】
次にECU20は、アクセル開度と車速から所定の勾配A,Bを設定する(ステップS23)。ここで勾配Aは、上述のカウント時間TC1内にCVT4の変速比を変化させる速度(変化速度)を表しており、具体的にはアクセル開度が大きいほど勾配Aは大となり、また車速が高いほど勾配Aは大となる傾向にある。以下に図5を追加して、さらに勾配A,Bについて詳しく説明する。
【0024】
図5は、変速比制御の実行に伴う各種状態の変化を示している。例えば、ある時刻t0に運転者がアクセルペダル22の踏み込みを解除し、アクセル開度が全閉となると、ECU20は電動スロットルバルブを閉じるとともに、燃料噴射量を次第に減少させる。この結果、エンジントルクが減少して一定値に落ち着く。またECU20は、減速に伴いCVT4の変速比を小さくする。
【0025】
この後、時刻t1に運転者がアクセルペダル22を踏み込むと、ECU20は電動スロットルバルブを開かせるとともに燃料噴射量を増大する。この結果、時刻t1からエンジントルクが立ち上がっている(出力制御手段)。
このときECU20が行う変速制御は、所定の目標変速比Raに向けてCVT4の変速比を増大させる増大変速制御となるが(変速比制御手段)、この実施例では、加速前の変速比R0から目標変速比Raまで変速比を増大させる期間TC2内に、ECU20は変速比の変化速度を2段階に変化させている(変化速度制御手段)。
【0026】
具体的には、ECU20は変速比の増大制御を開始すると、最初に図5中に示される勾配Aの変化速度でCVT4の変速比を増大させる(ステップS25)。そして、加速走行への移行時点(時刻t1)から上述のカウント時間TC1が経過すると(ステップS24=No)、その時点(切換タイミングtc)で変速比の変化速度を勾配Bに切り換える(ステップS26=Yes,ステップS27)。この後、変速比の変化速度は所定のカウント時間TC2が経過するまで勾配Bに制御される。
【0027】
このとき、勾配Bは勾配Aよりも緩やかに設定されているため(A>B)、切換タイミングtcを境にCVT4の変速比の変化速度が低下している。これにより、プライマリ軸14の角加速度が減少する分、慣性トルクが増大している。
なお、カウント時間TC2はTC2経過後に所定の慣性トルクを得るために勾配BでCVT4の変速比が制御される期間である。さらにカウント時間TC2は、ECU20自身がしゃくり低減制御中であることを判定するための期間として設定されている。したがって、慣性トルクが放出されてしゃくり現象が充分低減されるまでの期間(TC2)は勾配Bで変速比が制御されることとなる。
【0028】
一方、加速走行時の車両駆動トルク変動は駆動系のねじり振動特性に基づいて現れる。例えば図5中に1点鎖線で示されるように、車両が加速走行に移行して時刻t1からエンジントルクが増大すると、駆動系のねじり振動周期で車両駆動トルクも周期的に増減変動し、通常、これがしゃくり現象となって現れることになる。
【0029】
そこでECU20は、車両駆動トルクの減少時期に上述の切換タイミングtcを合わせて制御することで車両駆動トルクの減少分をプライマリ軸14の慣性トルク増大で補償する。これにより、図5中実線で示されるように車両駆動トルクの減少が抑えられ、しゃくり減少が現れなくなる。
またこの場合、車両駆動トルクの最初(1回目)の減少時期に切換タイミングtcを合致させることで駆動系のねじり振動が収束される。したがって、切換タイミングtc後に再度同様の制御を実行しなくても、以後の加速走行はスムーズに行われることととなる(図5参照)。
【0030】
ECU20はタイマカウント時間TC2が経過すると(ステップS26=No)、しゃくり低減フラグFRをオフにした後(ステップS28)、通常のCVT制御に復帰する(ステップS29)。
上述した一実施例のように、車両の加速移行時にエンジントルクを増大させても、ECU20によるCVT4の変速制御によりしゃくり現象の発生が抑えられるので、運転フィーリングの向上が図られる。また切換タイミングtcまでの勾配Aを勾配Bよりも大きくしていることから、アクセルペダル22の踏み込み時加速応答性を損なうことがない。
【0031】
本発明は一実施例に制約されることなく、各種に変形して実施可能である。例えば、一実施例ではECU20が各種フラグFC,FRを設定して場合分けを行っているが、単にアクセル開度を検出して制御上の場合分けを行ってもよい。
また、一実施例では変速比の変化速度を勾配A,Bにて表しているが、ECU20が制御するべき変速比の変化速度を数値で扱う態様であってもよい。
【0032】
その他、車両の具体的な構成要素は一実施形態のみに限定されるものではなく、車両の具体的な仕様に応じて適宜に変形が可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明の車両の走行制御装置(請求項1)は、加速走行時のしゃくり現象を防止し、良好な乗車フィーリングを提供する。また、当該車両の走行制御装置(請求項2)は、駆動系のねじり振動を速やかに収束させ、以後の加速走行をスムーズに行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に係る車両の構成を概略的に示した図である。
【図2】変速比制御の実施例を示したフローチャートである。
【図3】変速比制御の実施例を示したフローチャートである。
【図4】変速比制御の実施例を示したフローチャートである。
【図5】変速比制御の実行に伴う各種状態の変化を示した図である。
【符号の説明】
4 CVT
20 ECU(各種制御手段)
Claims (2)
- 車両に搭載されたエンジンの回転を無段階に変速して駆動軸に伝達可能な無段変速機と、
前記車両が減速走行から加速走行へ移行する加速移行時に前記エンジンの出力を増大させる出力制御手段と、
前記加速移行時に前記無段変速機の変速比を増大させる増大変速制御を実行する変速比制御手段と、
前記増大変速制御の実行に伴い、変速比の変化速度を所定の切換タイミングで減少させる変化速度制御手段とを備え、
前記変化速度制御手段は、前記エンジンの出力増大に伴い前記車両の駆動トルクが周期的に増減変動するとき、該増減変動の発生後、その減少時期に合わせて前記切換タイミングを設定することを特徴とする車両の走行制御装置。 - 前記所定の切換タイミングは、前記車両の駆動トルクが増減変動を開始して最初に減少する時期に合わせて設定されることを特徴とする、請求項1記載の車両の走行制御装置。
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