JP4074768B2 - 操作装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばコンピュータ用のキーボード装置などの各種電子機器において回路を開閉するために使用される操作装置の製造方法に係り、特に操作力で弾性変形する弾性部材に接点が設けられた操作装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来のコンピュータ用のキーボード装置として使用される操作装置を示す断面図である。この操作装置50は、押圧部材51とメンブレンスイッチ60で構成されている。
【0003】
押圧部材51は、指で押圧される操作面52を有し、操作面52の裏面に押圧突起53が一体に形成されている。前記押圧部材51は、パンタグラフ形状の支持部材54によって操作面52が上下方向に移動自在に支持されている。前記押圧突起53とメンブレンスイッチ60との間には、ゴム製の弾性部材55が介装されており、この弾性部材55の弾性力によって操作面52が常に上方に付勢されている。また弾性部材55の内部には、下方へ突出する突起56が一体に形成されている。
【0004】
メンブレンスイッチ60は、絶縁材料で形成された上部シート61と下部シート62を有し、前記上部シート61と前記下部シート62との間にシート状のスペーサ63が介装されている。上部シート61と下部シート62との間には、前記押圧部材51の下側において、それぞれ対向する面に電極パターンの一部である接点61a,62aが互いに対向して形成されている。スペーサ63には、円形の貫通穴64が形成され、この貫通穴64に、前記接点61a,62aが露出している。
【0005】
押圧部材51が押圧操作されると、このときの押圧力によって、弾性部材55が押圧突起53によって押し下げられ、さらに弾性部材55の突起56が上部シート61の表面を押圧することで接点61aが押し下げられることで、接点61aと接点62aとが接触して、スイッチ出力がオフからオンに切り換えられる。また前記押圧操作を解除することで、弾性部材55の弾性復帰力によって操作面52が上方へ押し上げられて、スイッチ出力がオフに切り換えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来の操作装置は、上部シート61と下部シート62の双方に接点61a,62aを有する電極パターンを形成し、さらに両シート61,62とスペーサ63を含む3層構造にする必要があるため、製造工程が煩雑になる問題があった。
【0007】
そこで、弾性部材55の突起56の先端に接点を設けて、この接点に対向するシートに1対の導電パターンを形成してシートの構成を簡略化したものが提案されている。しかし、前記接点を弾性部材55に設けて可動接点にすると、接点を接着剤を用いて弾性部材55に接着する必要があるため、打鍵操作や接着剤の劣化によって接点が弾性部材から剥離してしまう問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、接点が弾性部材側に設けられて可動する構造のものにおいて、接点の剥離による接点不良を防止することができる操作装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電極パターンに対向して設けられ且つ前記電極パターンに接離可能に支持された接点を有する弾性部材が設けられた操作装置の製造方法において、
水酸基を有し、架橋したポリジメチルシロキサンからなる前記弾性部材の表面に、ケイ素原子に結合したオキシム基を有するポリジメチルシロキサンを主成分とし、導電剤を含む接点を付着し加熱することにより、前記付着面を共有結合により接合させることを特徴とするものである。
【0010】
上記本発明では、接点が可動するものであっても、前記接点と前記弾性部材が共有結合により化学的に接合されるため、接点が弾性部材から剥離しにくくなり、接点不良を防止できる操作装置を製造することができる。また接着剤を塗布する工程が不要になるので、製造工程を簡略化することができる。
【0012】
このように接点と弾性部材の双方にポリジメチルシロキサンを主成分とする化合物を使用しているので、互いの部材の親和性がより高い操作装置を製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法で製造される操作装置は、押圧操作によってスイッチ出力がオフとオンとの間で切り換えられ、所定の操作信号を出力することができるものである。例えば、前記操作装置を複数個配列して、パーソナルコンピュータのキーボード装置に適用することができる。なお、操作装置を単独で設けたスイッチであってもよい。図1は操作装置を示す断面図である。
【0014】
図1に示す操作装置1は、基板2上に押圧部材3が昇降自在に支持されている。本実施の形態では、押圧部材3にパンタグラフ形状の支持部材4が設けられて、押圧部材3が基板2から離れる方向と基板2に接近する方向に移動自在に支持されている。
【0015】
図1に示すように、前記押圧部材3と基板2との間には弾性部材5が設けられている。この弾性部材5は、シリコーン系のゴムを素材として形成され、上向きに凸状に形成されている。弾性部材5の内部には空間6が形成されて、この空間6内の天井面に突起7が下向きに突出して形成されている。前記突起7の先端には接点8が形成されている。接点8は、シリコーン系の素材にカーボンブラックや銀などの導電材を混入して形成されたものである。
【0016】
基板2は、絶縁性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)をフィルム状に形成したものである。ただし基板2はフィルム状のものではなく、ガラスエポキシ樹脂や紙フェノール樹脂で形成されたものであってもよい。前記基板2には、前記接点8との対向面に1対の導電パターン9a,9bが形成されている。この導電パターン9a,9bは、銅や金などの導電性の金属材料を用いて印刷形成されて互いに離れて形成されている。
【0017】
なお、キーボード装置では、前記基板2に前記導電パターン9a,9bが複数組設けられている。また前記基板2に広い面積の弾性シートが重ねられており、この弾性シートに図1に示す構造の弾性部材5が複数個一体に形成されており、この個々の弾性部材5が各組の前記導電パターン9a,9bに対向している。
【0018】
前記押圧部材3の操作面3aを下方へ押圧すると、このときの押圧力によって支持部材4が折り畳まれるように変形するとともに弾性部材5が撓み、接点8の先端が導電パターン9aと9bの双方に接触する位置まで押し下げられる。接点8が導電パターン9aと9bに接触することで、導電パターン9aと9bとが導通してスイッチ出力がオンに切り替えられて、操作装置1に予め割り当てられている操作信号がマイコンなどの処理回路へ出力される。
【0019】
前記弾性部材5は、付加反応タイプのシリコーン系のゴムで形成され、具体的には、ケイ素原子に結合したビニル基を有するポリジメチルシロキサンをベースポリマーとして、このベースポリマーに架橋材としてケイ素原子に結合した水素原子を有するポリジメチルシロキサン(商品名;PRK−3C、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を、白金(Pt)を触媒として付加することによって得ることができる。その反応式を下記化1に示す。ただし、下記化1での反応前の各ポリジメチルシロキサンは、ケイ素原子とこのケイ素原子に結合する官能基の部分を示している。
【0020】
【化1】
【0021】
実際には、ベースポリマーとして使用されるケイ素原子に結合したビニル基を有するポリジメチルシロキサンは、下記化2で表されるポリジメチルシロキサンのメチル基の一部がビニル基(−CH=CH2)で置換されたものである。またこのベースポリマーには、下記化2に示すポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が水酸基(−OH)で置換されたものも含まれている。
【0022】
【化2】
【0023】
架橋材として使用されるケイ素原子に結合した水素原子を有するポリジメチルシロキサンは、下記化3で表されるものである。
【0024】
【化3】
【0025】
上記した各ポリジメチルシロキサンを白金触媒を用いて生成したものを所定の金型内に流し込んでオーブンで加熱して硬化させることで、下記化4に示す架橋したポリジメチルシロキサンが得られる。
【0026】
【化4】
【0027】
一方、前記接点8は、ケイ素原子に結合したオキシム基を有するポリジメチルシロキサンを空気中で反応させることにより、空気中の水分(H2O)と反応してオキシムを副産物として生成しながら硬化させることで得ることができる。
【0028】
本実施の形態の操作装置1では、前記弾性部材5の突起7の先端に、前記接点8の主成分となるケイ素原子に結合したオキシム基を有するポリジメチルシロキサンを塗布し、これを弾性部材5とともにオーブンで加熱する。これによって、前記接点8が硬化させられて、接点8が弾性部材5に接合させられる。このとき加熱して硬化させることによって、接点障害を引き起こす原因となる低分子のシロキサンを外部に放出することができる。
【0029】
接点8と弾性部材5との接着機構について説明する。ケイ素原子にオキシム基が結合したポリジメチルシロキサン同士では、下記化5に示すように、水分(H2O)が互いのオキシム基と縮合反応して、双方のケイ素原子とケイ素原子とが酸素原子(−O−)を介して結合する。また前記縮合反応によって、オキシム(R´RC=NOH)からなる副生成物がガスとして外部に放出される。
【0030】
【化5】
【0031】
接点8と弾性部材5との間では、下記化6にしたがって反応が進行する。下記化6に示すように、ケイ素原子に結合したオキシム基を有するポリジメチルシロキサンからオキシム基(−ON=CRR´)が離れて残ったケイ素原子(−Si)と、弾性部材5の水酸基(−OH)から水素原子(H)が離れて残った酸素原子(−O)とが結合して、接点8が弾性部材5の表面と接合させられる。このときケイ素原子と酸素原子との間では、互いの不対電子を出し合うことで共有結合が生成されるため、接点8が弾性部材5の表面との間で非常に強い結合力が発揮される。なお、接点8と弾性部材5との間では、前記共有結合による結合力とともに、ファンデルワールス力や水素結合力などの結合力が複合して寄与することで強固な結合力が発揮される。
【0032】
【化6】
【0034】
【発明の効果】
以上説明した本発明は、弾性部材側に接点を設けた可動接点のものにおいて、接点を弾性部材に対して共有結合による強固な結合力によって接合することができるため、接点の剥離による接点不良を防止できる操作装置を製造することができる。また接着剤を塗布する工程が不要になるので、製造工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法で製造される操作装置を示す断面図、
【図2】従来の操作装置を示す断面図、
【符号の説明】
1 操作装置
2 基板
3 押圧部材
5 弾性部材
7 突起
8 接点
9a,9b 導電パターン(電極パターン)
Claims (3)
- 電極パターンに対向して設けられ且つ前記電極パターンに接離可能に支持された接点を有する弾性部材が設けられた操作装置の製造方法において、
水酸基を有し、架橋したポリジメチルシロキサンからなる前記弾性部材の表面に、ケイ素原子に結合したオキシム基を有するポリジメチルシロキサンを主成分とし、導電剤を含む接点を付着し加熱することにより、前記付着面を共有結合により接合させることを特徴とする操作装置の製造方法。 - 前記加熱により、低分子のシロキサン、およびオキシムからなるガスとを放出し、前記接点のケイ素原子と、前記弾性部材の酸素原子とが結合して前記共有結合を行う請求項1記載の操作装置の製造方法。
- 水酸基を含み、ケイ素原子に結合したビニル基を有するポリジメチルシロキサンに、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリジメチルシロキサンを付加して前記弾性部材を形成する請求項1または2記載の操作装置の製造方法。
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