JP4074336B2 - クラブラン酸の塩の製法 - Google Patents
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Description
クラブラン酸((Z)−(2R,5R)−3−(2−ヒドロキシエチリデン)−7−オキソ−4−オキサ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸)は、通常、その塩の形態にて、医薬処方の成分として市販されているβ−ラクタマーゼ阻害剤である。クラブラン酸は、商業的には、例えば、GB1508977に記載されているように、ストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus)微生物を培養することにより産生される。
クラブラン酸およびその塩は、種々の方法により培地より抽出することができるが、通常、そのような抽出操作を始める前に、濾過または遠心分離などの方法によりまずエス・クラブリゲルス(S.clavuligerus)の細胞が該培地より除去される。
クラブラン酸またはその塩は種々の方法により清澄化された培地より抽出することができる。酸性のpH値に調整した冷却した清澄化培地からの溶媒抽出法およびアニオン性交換樹脂を用いるような中性のpHでのクラブラン酸のアニオン性の性質を利用する方法が、特に有用であることが判明している。さらに特に有用方法は、クラブラン酸のエステルを形成し、そのエステルを精製し、そのエステルから酸またはその塩を再生することである。
クラブラン酸またはその塩を得るための抽出法は、概念的には、第一の単離方法と、続くさらなる精製方法に分けられる。
適当な第一の単離方法は遊離クラブラン酸の溶媒抽出法を包含する。その溶媒抽出法においては、全体ブロスが酸性のpH値に調整されていてもよい、冷却清澄化培地より、クラブラン酸を有機溶媒に抽出する。
遊離クラブラン酸についての一の溶媒抽出法においては、清澄化培地を冷却し、実質的に水不混和性(water-imiscible)の有機溶媒と混合しながら、酸を添加することによりそのpHを1〜2のpHの範囲に下げる。pHを下げるのに用いる適当な酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸を包含する。適当な有機溶媒は、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよびメチルイソブチルケトンおよび他の同様の溶媒を包含する。メチルイソブチルケトンが酸性化培養濾液の抽出に用いるのに特に適する溶媒である。相の分離後、クラブラン酸が有機相の溶液中に見られる。
例えば、有機溶媒よりも水にクラブラン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の水溶性が大きいことを用いることにより、クラブラン酸を有機相から新たな水相に逆抽出してもよい。したがって、pHを略中性、例えばpH7に維持しながら、クラブラン酸を、有機溶媒から、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム緩衝液または炭酸カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基の水溶液または懸濁液あるいは水に逆抽出してもよい。相を分離した後に、この水性抽出液を減圧下で濃縮する。さらに、凍結乾燥に付し、クラブラン酸の塩の固体の粗調製物を得てもよい。かかる固体調製物は、−20℃で乾燥固体として貯蔵した場合に安定である。同様の方法がGB1563103に記載されている。例えば、付加的な精製工程を有機溶媒相に適用し、粗クラブラン酸から高分子量の不純物を除去する公知方法にてこの方法を修飾してもよい。
クラブラン酸についてさらに二次的な精製方法が、例えば、EP0026044にて、粗クラブラン酸の有機溶媒中溶液をt−ブチルアミンと接触させてクラブラン酸のt−ブチルアミン塩を形成させ、ついで、有機溶媒中にある不純物よりクラブラン酸を分離することによりその塩を単離し、ついで該塩を逆にクラブラン酸に変換するか、またはアルカリ金属塩またはエステルのようなクラブラン酸の誘導体に変換することが記載されている。クラブラン酸についての他の公知の二次的な精製方法は、ジエチルアミン、トリ−(低級アルキル)アミン、ジメチルアニリンおよびN,N'−ジイソプロピルエチレンジアミンなどの他の有機アミンを使用し、クラブラン酸との塩および/または他の誘導体を形成することを包含する。これらの精製方法は、アミンの影響を受けるか、または最終生成物にて、クラブラン酸のアミンとの塩の痕跡が残るという欠点を有する。
クラブラン酸カリウムは特に水に対して敏感であるため、クラブラン酸カリウムを製造する場合、このような逆抽出法は一の問題を提起することとなる。通常の逆抽出法にて、クラブラン酸カリウムの溶液濃度は、一般に用いられる比較的緩やかな混合および分離条件下で高まるため、クラブラン酸カリウムは、長期間、典型的には、約1時間またはそれ以上、水と接触したままとすることができ、このことが大きな加水分解性デグラデーションをもたらしうる。
本発明者らは、デグラデーションを減少させる、クラブラン酸の塩を製造する改良法を見いだした。
本発明はクラブラン酸の塩の製法であって、クラブラン酸またはその不安定な誘導体の完全にまたは部分的に水不混和性有機溶媒中溶液を、高度の乱流および/または剪断圧の領域である接触領域にて、溶液または懸濁液のカウンターアニオンとのカチオンを形成する塩の塩先駆体化合物と接触させ、該カウンターアニオンは水の存在下でクラブラン酸塩のアニオンと交換能を有し、それでクラブラン酸の塩の水相中溶液が形成され、ついで有機溶媒および水相を分離工程、つづいてさらなる加工処理工程の間に物理的に分離し、クラブラン酸の塩を固体として溶液より単離することを特徴とする方法からなる。
この方法により調製できるクラブラン酸の適当な塩は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を包含する。特に好ましい塩は、クラブラン酸塩がβ−ラクタマーゼ阻害剤として作用する医薬処方にて広く用いられる塩の、クラブラン酸カリウムである。
適当な有機溶媒は、前記した溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよびメチルイソブチルケトンを包含する。クラブラン酸の溶液は、不純物、例えば、溶液が前記した第一の単離方法により得られる場合に存在するような高分子量の不純物を含有してもよいが、予備的な精製方法に付し、少なくともいくらかの不純物を除去することが好ましい。適当な予備的な精製方法は、濾過、および吸着炭による処理を包含する。該溶液はまた、溶解または懸濁した少量の水を含有していてもよいが、溶液を第一の単離方法より得る場合に、脱水操作、例えば、遠心分離に付し、懸濁した水の水滴を除去することが好ましい。
クラブラン酸またはその不安定な誘導体に関する適当な溶液濃度は、クラブラン酸の含量で表した場合に、約500〜20,000μg/ml(0.0025M〜0.1M)、例えば、約1,000〜5,000μg/ml(すなわち、0.005M〜0.025M)、典型的には約3,000±1,000μg/ml(すなわち、0.015M±0.005M)である。適当なクラブラン酸の不安定な誘導体は、シリルエステルなどの難無く切断されるエステルを包含する。本明細書中、以下に用いる「クラブラン酸」なる語は、遊離クラブラン酸およびそのような不安定な誘導体の両方をいう。
適当な塩形成カチオンは、アルカリ金属カチオンおよびアルカリ土類金属カチオン、特にカリウムである。適当なカウンターアニオンは、水素カルボネート、カルボネートまたは水素ホスフェートのような塩基性アニオン、特に、
式:R−CO2H(RはC1-20アルキル、例えば、C1-8アルキルである)で示されるような弱有機カルボン酸のアニオンを包含する。適当なカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸およびエチルヘキサン酸、例えば、2−エチルヘキサン酸を包含する。
これらのイオンを有する適当な塩先駆体化合物は、炭酸水素ナトリウムまたはカリウム、リン酸水素カリウムまたは炭酸カルシウムであり、特にクラブラン酸カリウムを調製する場合には、2−エチルヘキサン酸カリウムである。他の適当な塩先駆体化合物は、固体または液体であってもよく、クラブラン酸との塩を形成しうるカリウムのような塩形成カチオンを受け入れるイオン交換樹脂を包含する。
クラブラン酸または誘導体の溶液を、塩先駆体化合物を溶媒に溶かすかまたは懸濁させて、その2つの溶液または溶液と懸濁液を混合することにより該先駆体化合物と接触させてもよい。クラブラン酸と先駆体について、同じ有機溶媒を用いてもよい。塩先駆体化合物として2−エチルヘキサン酸カリウムを用いる場合、メチルイソブチルケトンのような有機溶媒における溶液は、適当には、2−エチルヘキサン酸カリウムにて0.5〜5.0M、例えば、1.0〜3.0M、適当には2.0±0.5Mである。
以下に示すような多くの方法にて水を接触領域にて供給してもよく、1またはそれ以上のこれらの方法を別々にまたは一緒に用いてもよい。例えば、塩先駆体化合物、その物を水または溶解した有機溶媒含有の水に溶解させるかまたは懸濁させ、それ物をクラブラン酸の溶液と接触させてもよい。例えば、クラブラン酸の溶液は、例えば、前記したように、溶解または懸濁した水を含有してもよい。例えば、塩先駆体化合物を有機溶媒、例えばクラブラン酸を溶解させるのと同じ溶媒に溶かすかまたは懸濁させてもよく、これらの溶媒それ自体が、溶解または懸濁した水を含有していてもよい。例えば、メチルイソブチルケトンは、クラブラン酸および先駆体についてのかかる有機溶媒として用いてもよく、0.1〜7.5%v:vの溶解した水、典型的には1〜3%、例えば2.0±0.5%の溶解した水を含有してもよい。例えば、水または溶解した有機溶媒含有の水のような水性媒体を、クラブラン酸溶液および塩先駆体の有機溶媒中溶液または懸濁液に添加することにより、それらの物質が接触領域で接触するように、水を供給してもよい。
例えば、前記したように、溶解した水が本発明の方法にて用いる有機溶媒中に存在する場合、溶解したクラブラン酸塩を蓄積させる「塩析」効果により、その溶解した水をその後に水性相として分離してもよい。
該方法の実施条件、例えば、反応体の濃度、用いる溶液の相対割合、流速、接触時間などは、とりわけ、可能な限り、クラブラン酸が有機溶媒の溶液からその塩の溶液としての水相に抽出され、クラブラン酸の塩の水相中濃縮溶液が形成されるように選択される。クラブラン酸カリウムの場合、好ましい具体例にて、実施条件は、水相中のクラブラン酸カリウムの濃度が約10〜40重量%(約0.4〜1.7M)、例えば20〜30重量%(約0.8〜1.2M)であるよううに選択される。この濃度のクラブラン酸カリウムの溶液濃度が、最適収量および改良された純度のさらなる加工処理工程を促進することが見いだされた。
該方法にて、例えば、光学密度などにより、分離した水相中のクラブラン酸カリウムのようなクラブラン酸塩の濃度をモニター観察することは、他の実施条件を決定し、調節するのに適当な方法である。
クラブラン酸および塩先駆体化合物は、最初、クラブラン酸に対して化学量論過剰量の塩先駆体化合物があるように導入される。例えば、1:1.1〜1:2、典型的には1:1.1〜1:1.5のモル比のクラブラン酸:先駆体化合物にて先駆体を導入し、接触領域にてすべてのクラブラン酸と合するのに理論的に十分な塩先駆体化合物があるようにする。
クラブラン酸と塩先駆体化合物が接触する領域にて存在する水の量は、適当には、例えばクラブラン酸カリウムについて前記したように、実際には該塩の所望の水相濃度を得るために必要な最少量である。
接触領域にて、成分の間で、すなわち、クラブラン酸溶液、塩先駆体化合物溶液および有機溶媒中に存在するか、または接触領域に導入される水の間で、できる限り、迅速かつ効果的な接触を達成することが望ましい。接触領域にて、水および/または分離相として存在する水相は、有機相と高い表面接触域を有する形態にて存在し、例えば、水相は分散した、すなわち、二相間で高接触表面域を形成するように、小水滴などの形態に破壊されたエマルジョン相であることが望ましい。
成分間の効果的な接触は、適当には、ミキサーに導入される流体を混合する接触領域にて高度の流体の乱流および剪断圧を付与し、分離した水または水相を小水滴に破壊することができる公知の混合装置を用いて達成される。そのようなミキサーは当該分野にて公知であり、この目的を達成するための適当な混合装置の選択は当業者に明らかであろう。前記した成分は、各々、別々に接触領域に導入してもよく、または別法として接触領域の上流にて予め混合しまたはブレンドし、接触領域に一緒に導入してもよい。
適当な混合装置は、例えば、1個またはそれ以上の乱流形成エレメントがパイプライン内に配置され、その間を成分が流れる型の公知のイン・ライン式ミキサーを包含する。別の適当な型のミキサーは、例えば、2種の液体相にバイアスを付したバルブを介して圧力を加える型のホモジナイザーである。適当な混合装置はまた、タービン、プロペラなどにより高い乱流および/または剪断圧に付される窪みを有していてもよい。
別の好ましい型のミキサーは、導入された流体を激しい渦巻に付すチャンバー、例えば、一般にEP−0153843−A(UKアトミック・エネルギー・オーソリティー(UK Atomic Energy Authority)、その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に開示されている型の渦式チャンバー、例えば、形状が略円筒状の、少なくとも1個の接線方向の引入口と1個の軸方向の流出口を有する、実質的に断面が円形のチャンバーからなる渦式チャンバーである。そのようなミキサーにおいては、接線方向の引入口(複数)を介して成分を供給し、十分な混合をもたらす渦巻きに付す。成分を渦式チャンバーに入れる前にすでに混合してあるならば、その成分を単一の接線方向の引入口を介して供給してもよく、または各成分を別個の接線方向の引入口を介して供給し、渦式チャンバーで混合してもよい。
前記した混合操作は、大きな有機溶媒相に分散されたクラブラン酸の塩の水溶液からなる細かい水滴の水相のエマルジョンの形成をもたらす。ついで、水相および溶媒相を分離工程にて物理的に分離する。分離は、公知の分離装置、特に遠心分離機を用いて実施してもよい。適当な型の遠心分離機はディスク式遠心分離機である。このようなディスク式遠心分離機は、一般に、その中のセントラルディスクスタックである略円形の内部セクションのチャンバーと、該ディスクスタックの外端とチャンバー壁の間の空隙とからなる。前記したように、本発明の方法にて用いる有機相の水相に対する高比率を鑑みれば、その空隙は相対的に小さいことが望ましい。そのような遠心分離機の構造および操作は当業者にはよく知られている。
エマルジョンは、好ましくはクラブラン酸カリウムのような塩の加水分解性デグラデーションを最小にするようにできる限り短時間の移動時間で混合装置から分離装置に直接供給してもよい。また、EP−153843−Aに記載の型のミキサーを用いてもよく、それは前記したように渦式チャンバーと、伸長した流出口を形成し、渦式チャンバーから遠位末端でまたはその付近で間隔をおいている開口部を有するカラムからなる連結した分離機からなり、引入口(複数)を介してチャンバーに導入された異なる密度の流体が該チャンバーで渦巻きを形成し、該チャンバーからカラムに沿って流れる渦巻き流が流体の遠心分離を生じさせ、分離した流体が間隔をおいた開口部を介して該カラムから出てくるものである。
前記の成分ならびに混合および分離装置を用いる場合、成分を混合装置中に供給し、その混合装置にて形成される有機相と水相のエマルジョンを分離装置に供給してもよく、水相が分離相としてその分離装置から出てくる。混合装置に供給される成分の相対比は、条件、主にクラブラン酸溶液に用いる溶媒の濃度で変わる。これらの比率を決定するにおいて、前記したように、分離装置より出てくるクラブラン酸の水相中の塩の濃度をモニター観察し、塩先駆体化合物の投入量を調整し、必要ならば実験による決定に従って水を添加し、所望の濃度を達成し、維持する。
典型的には、前記した、クラブラン酸と2−エチルヘキサン酸カリウムの濃度を用いる場合、接触領域における水:有機溶媒の体積比は、1:50ないし1:300、例えば1:150ないし1:250の範囲にあり、適当には約1:180±20である。適当には、この水の比率は、適当な流速の水をさらに接触領域に導入することにより、または適当な慣用的脱水技法により過剰量の水を除去することにより達成される。
例えば、前記した、クラブラン酸のメチルイソブチルケトン中の典型的な濃度、および2−エチルヘキサン酸カリウムのメチルイソブチルケトン/水中の濃度を用い、前記した典型的な水相中のクラブラン酸カリウム濃度を得るには、クラブラン酸溶液:2−エチルヘキサン酸カリウム溶液:混合装置に導入される水の相対的体積比は、約180±25:2±0.2:1±0.2である。用いる絶対容量は、もちろん、用いる混合および分離装置の大きさ、例えば第一単離方法より利用できるクラブラン酸溶液の量に依存するであろう。
接触領域における高乱流および/または剪断圧の条件は、本発明の方法を極端に迅速に実施できるようにし、クラブラン酸カリウムを該方法にて調製する場合、水相を有機相と接触させるのに要する時間、したがってクラブラン酸カリウムが水溶液中にあるのに要する時間は非常に短時間である。有機相と水相が接触している時間の合計を1時間より少なくすることができる。実質的にこの時間よりも短い時間、適当には15分間またはそれ未満、より好ましくは10分間またはそれ未満、より好ましくは5分間またはそれ未満、理想的にはできる限り短時間、有機相と水相を接触させることが好ましく、その間にもまた、クラブラン酸塩イオンの有機相から水相への適度の移動がその塩として行われる。適当には、該方法の成分が接触領域および分離段階にて接触している時間は、0.5ないし3分間であり、例えば、接触領域における有機相の滞留時間は0.5ないし2.0分間、例えば、1分間±15秒間であり、分離段階にある滞留時間は、適当には、1.5ないし3.0分間、例えば、2分間±15秒間である。成分が該方法の接触領域および分離段階にある時間は該方法の規模によって変わるが、この開示にて明示された一般的原理および特定の方法の詳細は当業者に手引きを提供するものであり、工業的規模に適する方法を提示する。
本発明の方法の工程の間に、クラブラン酸塩イオンの有機溶液相から水相への移動が生じる。クラブラン酸の塩の形成は、相が接触している間に、分離段階にて分離している間に生じるであろう。前記したように、この移動はできる限り速やかに生じることが望ましい。適当には、75%より多い、好ましくは80%より多い、例えば90%またはそれより多いクラブラン酸塩イオンが、有機相と水相が接触している間に、該方法の接触および分離段階の間に有機相から移動する。この割合のクラブラン酸塩イオンの水相への抽出は該方法の測定可能な特性であり、調節パラメーターとして用い、例えば、成分の投入物を調節することができる。
該方法の分離工程の流出物はクラブラン酸の塩、例えば、クラブラン酸カリウムの濃縮水溶液であり、また溶解した有機溶媒、未使用の塩先駆体化合物および他の不純物などを、溶液中の残りのクラブラン酸を含有する別々の有機溶媒相流出物と一緒に含有してもよい。この消費されたクラブラン酸の有機溶媒中溶液を、もう一度および所望によりその後、本発明の2または3以上の段階にて、前記した本発明の混合および分離段階に付し、さらなる割合のクラブラン酸を塩として抽出してもよい。適当には、この方法にて、合計90%またはそれより多くの最初の有機溶媒中のクラブラン酸の溶液が、クラブラン酸の塩として、例えば、93%またはそれより多くの、典型的には96−98%で水相に抽出される。このクラブラン酸の抽出の全体割合もまた、水相にて測定可能な特性であり、前記したように調節パラメーターとして用いることができる。
そのような2段階方法の1つの具体例にて、クラブラン酸の塩の水溶液と、未反応の残りの塩先駆体化合物、例えば、各々、クラブラン酸カリウムおよび2−エチルヘキサン酸カリウムからなる、第2段階の分離工程の水相流出物を、水性媒体源として、該方法の第1段階の接触領域にフィードバックしてもよい。
そのような場合において、塩先駆体化合物およびいずれの付加的な水も第2段階の接触領域に導入してもよく、塩先駆体化合物および/または水の最初の直接投入物を、該方法の第1段階の接触領域に必ずしも導入する必要はない。この具体例の方法にて、十分な塩先駆体化合物を添加し、接触領域および分離工程の両方にて存在するクラブラン酸に対して化学量論過剰量を提供する。この具体例の2段階方法において、クラブラン酸の塩の水相溶液の流出物を該方法の第1段階の分離工程より収集する。
本発明の方法が単一または複数−段階のいずれであろうと、本発明の分離段階からの流出物として得られたクラブラン酸の塩の濃縮水溶液を、さらなる加工処理段階に付し、固体として、好ましくは、塩生成物、例えばクラブラン酸カリウムの結晶として単離する。該水溶液を凍結乾燥のような公知方法に付して固体を単離してもよいが、該水溶液を所望により冷却しながら有機溶媒と混合し、該溶液より塩を結晶形にて沈殿させるのが好ましい。クラブラン酸カリウムの場合、結晶を沈殿させるには、イソプロピルアルコールが適当な有機溶媒である。
用いる別の加工処理操作が何であっても、塩、特にクラブラン酸カリウムの加水分解性デグラデーションを最小とするために、クラブラン酸の塩の水溶液をできる限り速やかに別の加工処理操作に付すことが好ましい。したがって、適当には、クラブラン酸またはその不安定な誘導体を最初に接触させてから結晶の塩の生成物を沈殿させるまでの方法全体に1時間も要しない。例えば、遠心分離機の分離段階の流出物より水溶液を直接処理し、有機溶媒と混合して結晶を沈殿させる。例えば、濃縮したクラブラン酸カリウム水溶液の流出物を過剰量の有機溶媒、例えば冷却したイソプロパノールに混合する。
所望により、該水溶液をさらに、例えば、顆粒炭で処理し、つづいて濾過することにより精製してもよく、この精製は、結晶沈殿工程にて有機溶媒との混合の前後で該水溶液に対して実施してもよい。形成される結晶は、常法、例えば、濾過し、つづいて乾燥することにより単離してもよい。
本発明の方法は、連続的または半連続的方法あるいはバッチ方法として作動させることができる。
本発明の方法は、前記した精製方法にて用いられるアミンのような、公知精製方法により導入される不純物の形跡のない、クラブラン酸の塩、例えば、クラブラン酸カリウムを提供する。そのような不純物のないクラブラン酸の塩は実験室規模では知られているが、医薬処方の調製に用いるための、そのような塩、特にクラブラン酸カリウムの大規模生産は知られていない。
したがって、さらなる態様において、本発明は、例えば、前記したような、クラブラン酸の塩、特にクラブラン酸カリウムからなる細菌感染症を治療するのに用いるための医薬処方であって、該処方が、t−ブチルアミン、ジエチルアミン、トリ(低級アルキル)アミン、メチルアニリンまたはN,N'−ジイソプロピルエチレンジアミン(遊離アミンまたはその誘導体もしくは塩として)のような有機アミンを実質的に含有しない医薬処方を提供するものである。
適当には、該処方は、処方中に存在するクラブラン酸塩の重量について、0.05重量%より少ない、例えば0.005重量%より少ない、好ましくは0.0005重量%より少ない、望ましくは0.00005重量%より少ない有機アミンを含有する。
該処方はまた、1または2種以上の抗生物質、適当には、ペニシリンおよびセファロスポリンのようなβ−ラクタム抗生物質からなっていてもよい。適当な抗生物質は、公知な抗生物質処方、例えば、アモキシシリン(例、三水和物の形態)およびチカルシリンにて、クラブラン酸を配合する抗生物質を包含する。該処方は、クラブラン酸塩:抗生物質の比率が公知範囲内にあり、例えば親クラブラン酸および抗生物質で表した重量比で12:1〜1:1の組み合わせを用いる。
該処方はまた、他の公知添加剤および賦形剤、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、発泡性カップル、着色剤、フレーバー剤、乾燥剤など、例えば、GB2005538にてクラブラン酸カリウム含有処方にて用いるのに列挙されているものを含有してもよい。該処方はまた、クラブラン酸カリウムと一緒に、セルロース誘導体、例えば、アビセル(Avicel)(登録商標)またはシロイド(Syloid)(登録商標)のような微結晶セルロース、二酸化ケイ素またはシュークロースのような物質を含有してもよい。該処方は、例えば、1:1の重量比の、例えば、クラブラン酸カリウムとセルロース誘導体、二酸化ケイ素またはシュークロースの混合物からなっていてもよい。
本発明はまた、細菌感染症の治療用医薬処方の製造における、前記した実質的に有機アミン不含のクラブラン酸の塩の使用を提供する。
本発明を単なる例示としての添付図面に従って説明する。
図1は3つの接線方向の引入口と1つの軸方向の流出口を有する渦式チャンバーの形態の混合装置を示す。
図2は本発明の1段階方法の全体の模式図を示す。
図3は本発明の2段階方法の全体の模式図を示す。
図4はクラブラン酸についての第一単離方法の模式図を示す。
図1に関して、第1、第2および第3の接線方向の引入口(13)、(14)、(15)および単一の軸方向の流出口(16)を有する本質的に円筒状のチャンバー(12)からなる、全体として(11)で示される渦式チャンバーを、図1Aにて部分断面側面図で、図1Bにて図1Aの面A−Aを介する断面平面図にて示す。操作において、第1、第2および第3流体(図示せず)を、各々、第1、第2および第3の接線方向の引入口(13)、(14)、(15)を介して矢印で示す方向に急いで導入し、第1、第2および第3流体を混合するチャンバー(12)内に渦を形成させる。混合された第1、第2および第3流体の流れは、チャンバー(12)の壁の管状伸長部(17)に形成される、軸方向の流出口(16)を介して矢印で示される方向に該チャンバー(12)から流出する。
図2に関して、図1に示される型の渦式チャンバー(21)に、第1の接線方向の引入口(22)を介して、約3000μg/mlの濃度の、クラブラン酸のメチルイソブチルケトン中溶液の流れを導入する。第2の接線方向の引入口(23)を介して、2−エチルヘキサン酸カリウムのメチルイソブチルケトン中溶液+2−エチルヘキサン中約2M濃度の2%v:vの水の流れを導入する。第3の接線方向の引入口(24)を介して、水の流れを導入する。
渦式チャンバー(21)の内径は約10cmで、高さは約2.5cmである。(22)、(23)および(24)を介する各流速は、約3.5L/分、34ml/分および18ml/分であり、(23)を介して加えられる2−エチルヘキサン酸カリウムの体積は、2−エチルヘキサン酸カリウムがクラブラン酸に対して1.3:1モル過剰を維持するような容量である。
渦式チャンバー(21)の内部での渦巻形成条件下、引入口(22)、(23)および(24)を介して導入された各成分の徹底的な混合が起こり、水は細かな水滴に破壊される。その混合物の渦式チャンバー(21)中の滞留時間は約1分間である。この時間の終わりに、エマルジョンがミキサー(21)の軸方向の流出口(16)から流出し、ライン(25)を介して遠心分離機(26)に送られる。
遠心分離機(26)は、ディスク・スタックとケーシングの内壁の間の内部空隙を最小とする内部の本質的にドーナッツ状のインサート(図示せず)により修飾された市販のディスク式遠心機である。その遠心分離機(26)は有機溶媒相と水相を分離し、前者は出口(27)を介して出て、後者は出口(28)を介して出てくる。遠心分離機(26)中の滞留時間は約2分間である。
(27)から出てくるクラブラン酸カリウムの溶液の濃度を、例えば、密度によりモニター観察し、それを用いて流入口(24)を介する水の流入速度を調節し、濃度が落ちたならばその流速を減少させ、濃度が増せばその速度を上昇させる。(27)より出てくる約20−25重量%の最適濃度のクラブラン酸カリウムの溶液を調べる。(28)より出てくる濃縮水溶液を、25gのクラブラン酸の等価物がタンク(29)に収集されるまで、4倍体積過剰のイソプロピルアルコール(引入口30を介して加える)を含有するタンク(29)に移す。ついで、顆粒状の吸着炭(約10〜20重量%の液体)を加え、タンク(29)中の混合物を5分間撹拌する。ついで、さらなる量のイソプロピルアルコールを引入口(30)を介してタンク(29)に加え、該混合物をさらに20分間撹拌する。ついで、顆粒状炭素をフィルター(31)のセライト濾過により除去し、該フィルターを最少量のイソプロピルアルコール:水(7:1)の混合液で洗浄する。
ついで、該濾液をタンク(33)中の2.5Lのイソプロピルアルコール(引入口32を介して加える)に混合し、クラブラン酸カリウムを結晶化させる。結晶と母液のタンク(33)中のスラリーを撹拌し、1時間にわたって3〜5℃に冷却する。ついで、結晶をフィルター(34)の濾過により単離し、収集して真空乾燥する(35)。該方法の収率は、(22)から入れるメチルイソブチルケトン投入物の溶液において溶液中に存在する最初のクラブラン酸を基礎として約90%である。
ミキサー(21)と遠心分離機(26)の2またはそれ以上の組み合わせを並列に配置し、本発明の方法の処理量を増加させてもよいことが理解されるであろう。
2段階方法を提供する図2に示す操作の修飾において、流出口(28)からの有機溶媒相の流出物を、ミキサー(21)と遠心分離機(26)の別の組み合わせ(36)に、別のミキサー(21)の軸方向の流出口(16)を介して供給し、別の2−エチルヘキサン酸カリウム溶液および水を別のミキサー(21)の各接線方向の引入口(23)、(24)を介して導入してもよい。これは、タンク(29)にて、(37)を介して合することのできるクラブラン酸カリウムの濃縮溶液と、該方法の第1段階より得られたクラブラン酸カリウム溶液とからなる別の部分の水相の分離をもたらし、前記したさらなる処理工程に付される。このように2段階方法として該方法を操作することにより、その収率を約96−98%まで改良することができる。
図3に示す、前記した方法の別の2段階修飾において、図1に示す型であるが、2つの接線方向の引入口(42)、(43)を有する渦式ミキサー(41)に、約3000μg/mlの濃度のクラブラン酸のメチルイソブチルケトン中溶液の流れを、接線方向の引入口(42)を介して約3.5L/分の流速で導入する。接線方向の引入口(43)に、以下に記載する、該方法のその後の工程より得られる水流を導入する。渦式ミキサー(41)の寸法は、渦式ミキサー(21)の寸法と同様である。
混合物のミキサー(41)中に滞留する時間は約1分間であり、その終わりに、生成されたエマルジョンがミキサー(41)の軸方向の流出口(16)より流出し、ライン(44)を介して遠心分離機(26)と同様の構造の遠心分離機(45)に移される。該混合物が遠心分離機(45)に滞留する時間は約2分間である。クラブラン酸の濃縮水溶液からなる、遠心分離機(45)からの水相流出物を、ライン(46)を介して図2のタンク(29)に対応するタンク(47)に移し、そこでライン(48)を介して導入されるイソプロピルアルコールと混合し、図2に示す(30−35)と同一のさらなる処理および単離工程に付してもよい。
消費されたクラブラン酸のメチルイソブチルケトン中溶液からなる、遠心分離機(45)からの有機相流出物をラインおよび軸方向の引入口(49)を介してミキサー(41)と同様の第2のミキサー(50)に移す。接線方向の引入口(50、51)を介して、各々、2−エチルヘキサン酸カリウムのメチルイソブチルケトン中溶液(約2M、流速約34ml/分)および水(流速約18ml/分)の流れを導入する。該混合物のミキサー(50)中の滞留時間は約1分間である。
ミキサー(50)の軸方向の流出口(16)からのエマルジョンは、ライン(53)を介して、分離機(45)と同様の遠心分離機(54)に入り、遠心分離機(54)中での滞留時間は約1分間である。有機溶媒相が遠心分離機(54)よりライン(55)を介して出てくる。水相が分離機(54)よりクラブラン酸カチウムと残りの2−エチルヘキサン酸カチウムの水溶液として出、ライン(56)を介して前記した水相投入物として接線方向の引入口(43)にフィードバックする。
(46)から出てくる水溶液のクラブラン酸カリウムの濃度を、前記した方法にてモニター観察し、それを用いて、クラブラン酸カリウムの水溶液の最適濃度、約20−25重量%が得られるように、引入口(52)を介して水の投入量を調節する。
図3の方法の全収率は、(42)で挿入する溶液中に存在する最初のクラブラン酸を基礎として、約96−98%である。
図4は、エス・クラブリゲルスの培養液からの粗製醗酵ブロスを用い、本発明の方法にて用いるための適量のクラブラン酸の有機溶媒中溶液を調製する方法を示す模式図である。
粗製ブロスが(61)を介してタンク(62)に入り、そこで酢酸で酸性化し、フロクレントと混合する。ついで、該混合物を回転式真空フィルター(63)にて濾過し、遠心分離機(64)にて分離し、残りの固形物を除去する。ついで、クラブラン酸をイオン交換樹脂(65)に吸着させ、より濃縮された、例えば1500−50000μg/ml、例えば5000−50000μg/mlの水溶液として溶出させる。適当なイオン交換樹脂および溶出条件は、例えば、GB1563103に記載されているとおりである。ついで、この水溶液を抽出器(66)にてメチルイソブチルケトンのような有機溶媒中に抽出する。ついで、このクラブラン酸の有機溶液を遠心分離機(67)を用いて脱水し、吸収性炭素床(68)を通し、その後、図2および図3に示す(22)または(42)で前記した方法のフィードストックとして用いるのに適する形態にて(69)より出てくる。
Claims (13)
- クラブラン酸カリウムの製法であって、クラブラン酸の水不混和性有機溶媒中の溶液を、実質的に円形の断面であって、少なくとも1個の接線方向の引入口と1個の軸方向の流出口を有するチャンバーからなる型の渦式チャンバーである接触領域にて、カリウムと水素カルボネート、カルボネートまたは水素ホスフェートから、および式:R−CO2H(RはC1−20アルキルである)の弱い有機カルボン酸のアニオンから選択されるカウンターアニオンとの溶液中の化合物と接触させ、接触領域中の水:有機溶媒の容量比が1:50ないし1:300の範囲にある水の存在下で、クラブラン酸カリウムの水相中溶液を形成させ、ついで有機溶媒および水相を分離工程、つづいてさらなる加工処理工程の間に物理的に分離し、クラブラン酸カリウムを固体として溶液より単離することを特徴とする方法。
- 有機溶媒が、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、およびメチルイソブチルケトンから選択される請求項1記載の方法。
- クラブラン酸溶液の濃度が、クラブラン酸にて500ないし20,000μg/ml(0.0025Mないし0.1M)の範囲にある請求項1または2記載の方法。
- カリウムの化合物が炭酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、および2−エチルヘキサン酸カリウムから選択される請求項1記載の方法。
- 2−エチルヘキサン酸カリウムがカリウムの化合物であり、2−エチルヘキサン酸カリウムにて0.5ないし5.0Mの溶液濃度で、有機溶媒の溶液にて用いる請求項4記載の方法。
- カリウムの化合物を水含有の溶解した有機溶媒に溶かし、その物をクラブラン酸の溶液と接触させることにより、水を接触領域にて供給する請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
- 溶解または懸濁した水を含有するクラブラン酸の溶液により、水を接触領域にて供給する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
- カリウムの化合物を有機溶媒に溶かすことにより水を接触領域にて供給し、該溶媒が溶解または懸濁した水を含有する請求項1ないし7のいずれか1つに記載の方法。
- メチルイソブチルケトンをクラブラン酸およびカリウムの化合物に関する有機溶媒として用い、0.1ないし7.5%v:vの溶解した水を含有する請求項8記載の方法。
- 水または水性媒体を、クラブラン酸溶液およびカリウムの化合物の有機溶媒中溶液に添加することにより水を接触領域にて供給し、それらの物質が接触領域にて接触するようにする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法。
- 水相中のクラブラン酸カリウムの濃度が10〜40重量%(0.4〜1.7M)である請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法。
- カリウムの化合物がメチルイソブチルケトンの溶液にて用いられる2−エチルヘキサン酸カリウムであって、水を接触領域に添加し、クラブラン酸溶液:2−エチルヘキサン酸カリウム溶液:接触領域に導入される水の相対的体積比が180±25:2±0.2:1±0.2の範囲にある請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法。
- 分離段階から流出物として得たクラブラン酸の塩の水溶液を有機溶媒と混合し、所望により冷却してもよく、溶液より塩を結晶として沈殿させる請求項1ないし12のいずれか1つに記載の方法。
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