JP4072654B2 - 船舶の舵取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、船舶の舵取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、船舶に多く使用されている舵取り装置は、その構造が簡単で取扱いが容易であることから油圧シリンダ方式が採用されている。この舵取り装置は例えば図4(イ)(ロ)(ハ)に示すように、垂直方向の舵軸1上部1aに嵌着された中心ボス部2の左右外側より上下一定の間隔をおいて左右反対方向にそれぞれ伸長する各上下一対のアーム部3,4を有する舵柄17と、上記左右の各上下のアーム部3a,3bおよび4a,4bの先端部間に介入し、連結ピン5,6によって連結された連結ボス部7,8を先端に有する左右のピストンロッド9,10と、この左右のピストンロッド9,10を摺動自在に保持する左右の油圧シリンダ11,12と、この左右の油圧シリンダ11,12の基端軸部11a,12aを中心としてこの油圧シリンダ11,12を水平面内に揺動自在に保持する機構とを備えている。(以下A装置という。)
【0003】
上記油圧シリンダ11,12は油圧ポートA,Bを介して図示しない油圧ユニットに連結されている。また、上記基端軸部11a,12aは船体甲板上に作られたシリンダ取付け台13に固定されている。
14,15は球面ブッシュで、上記連結ボス部7,8の回動および揺動運動を円滑化するためのものである。上記舵軸1の下方には舵板16が固定されている。
【0004】
次に上記A装置の動作について説明する。例えば一方の油圧シリンダ11の油圧ポートAに圧油が供給されると、そのピストンロッド9が突出させられるとともに、この圧油は同時に他方の油圧シリンダ12の油圧ポートAにも供給される。従って、そのピストンロッド10は没入方向に移動させられ両ピストンロッド9,10が協働して、図4(ロ)の仮想線で示す通り、舵柄17を時計回り方向に回動させる。この回動角度は図示しない舵角トランスミッターにより検出されて、舵軸1が所定角度だけ回転したところで油圧シリンダ11,12への圧油の供給が停止され、舵はその位置に保持される。逆に油圧ポートBに圧油が供給されると、舵柄は反時計方向に回動させられる。
上記舵角は最大35度〜45度まで操作することが可能であり、45度を超えると、ピストンロッド9と舵柄の中心ボス部2が干渉する。
【0005】
これを解決する有効な手段として、実開昭63−48699号(実用新案登録第2516462号)公報に示す舵取装置がある。(以下B装置という。)図5はその要部を示すもので、中心ボス部2およびこの中心ボス部2の側部に突設されたアーム部3,4からなる舵柄17の上記中心ボス部2を舵軸1の上部1aに外嵌固定し、上面が舵軸1およびボス部の上端面より上方位置となる支持ボス部20,21を設け、甲板上に水平面内で揺動自在に支持した油圧シリンダのピストンロッド先端部に連結ボス部7,8を設け、この連結ボス部7,8と支持ボス部20,21の双方にわたって上下方向に連結ピン5,6を挿通するとともに、連結ボス部と連結ピンとを球面ブッシュ15を介して回動自在に連結したものである。
【0006】
このB装置によれば、前記のようにピストンロッドが中心ボス部に接触することがないのは勿論、舵軸にも接触することがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
船舶の離着桟時において、船体船尾の移動をほぼ真横方向へ移動させることが出来れば、離着桟時に多くの人手を必要とせず、安全に離着桟が可能となる。しかしながら、従来の前記A装置では、従来の舵の最大角度45度以上をとるとピストンロッド9と舵柄の中心ボス部2が干渉し、これ以上の舵角をとることが不可能である。そこで従来の方法によって舵角を大きくとるためには、舵柄17の上下のアーム部3,4の半径を大きく設定する手段があるが、この半径が大きくなることによって同一舵角度に対し、ピストンロッドのストロークを長くする必要があり、このため、油圧シリンダのサイズも大きくなり、油圧装置全体が大型化すると共に、舵取り装置全体が大きくなり、限られた船体スペースの中で据え付け面積を多くとることにも限界があり、コストアップになるという問題があった。また、従来の前記B装置によれば、これらの問題点が改善されるものの、シリンダからの力を舵柄17の上部に突設されたピンで受けるため、アーム部3,4にねじり力を与えながら舵を作動させることになるため、アーム部3,4およびピストンロッドの強度について、舵柄のアーム部を厚く、ピストンロッドを太くする等設計的に特別の考慮を払わなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、従来の油圧シリンダ方式の舵取り装置を改良することによって、離着桟時に大きな舵角度で安全かつ容易に操船できる舵取装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、次の通りである。
【0010】
本名発明は、垂直方向の舵軸1上部1aに嵌着された中心ボス部2の左右外側より上下一定の間隔をおいて左右反対方向にそれぞれ伸長する各上下一対のアーム部3,4を有する舵柄17と、上記左右の各上下のアーム部3a,3b、4a,4bの先端部間に介入し、連結ピン5,6によって連結された連結ボス部7,8を先端に有する左右のピストンロッド9,10と、この左右のピストンロッドを摺動自在に保持する左右の油圧シリンダ11,12と、この左右の油圧シリンダの基端軸部11a,12aを中心としてこの油圧シリンダを水平面内に揺動自在に保持する機構とを備えた船舶の舵取装置において、上記中心ボス部2の上下のアーム部3a,3b、4a,4b間に位置するボス中央部2aに、上記左右のピストンロッドの揺動軌跡が干渉する空間であって、ボス中央部2aの約半周にわたる切欠空間部2bが形成されおり、前記舵軸1が貫着されているボス中央部2aは、前記上下のアーム部3a,3b、4a,4bよりそれぞれ上下に突出している。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。なお、従来技術の船舶の舵取装置と同一部分または対応部分については同一符号を付し説明を省略する。図1および図2は本発明の請求項1および3に係る船舶の舵取装置の一実施例を示すもので、図1(イ)はニュートラルの位置にある船舶の舵取装置の平面図、図2(ロ)は舵角45度以上の位置にある船舶の舵取装置の平面図、図2(イ)は図1(イ)の要部の側面図、図2(ロ)はA’A’線矢視図である。
【0012】
この例において、前記A装置と異なる点は、中心ボス部2の上下のアーム部3a,3bおよび4a,4b間に位置するボス中央部2aに、上記左右のピストンロッドの揺動軌跡が干渉する空間であって、ボス中央部の約半周にわたる切欠空間部2bが形成されていることである。すなわち、図1(ロ)に示すように、舵角45度以上の位置にある船舶の舵取装置ではピストンロッド9の揺動軌跡がボス中央部2aに干渉する。この干渉空間を確実に含むように斜線を付したボス中央部の約半周にわたる切欠空間部2bが形成されている。半周に区切った理由は型抜きなどの作業が容易になり量産に適するからである。また、上下のアーム部3a,3bおよび4a,4bよりそれぞれ上下に突出する中心ボス部2の突出量αが上下のアーム部を有する在来の中心ボス部2の突出量(図4のβ)より大きく設定されている。
【0013】
このため、舵角を左右45度以上に大きく作動させたとき、油圧シリンダのピストンロッド9,10のいずれもがボス中央部2aに当ることがなく、舵軸に当るまで大きな舵角60度以上を得ることが出来、離着桟時に必要とする大きな舵角度で使用することが可能になる。また、切欠空間部2bの形成による構造強度の低下は中心ボス部2の突出量αが上下のアーム部を有する在来の中心ボス部2の突出量(図4のβ)より大きく設定されていることにより、充分にカバーされる。
【0014】
図3は本発明の請求項2および3に係る船舶の舵取装置の別の一実施例を示す正面図である。前記実施例においては、干渉空間を確実に含むように斜線を付したボス中央部の約半周にわたる切欠空間部2bが形成されているが、この例では、中心ボス部の上下のアーム部3a,3bおよび4a,4b間に位置するボス中央部が全周にわたって省略され、これにより上記中心ボス部が上下のボス部2c,2dに分割されている。
また、上下のアーム部3a,3bおよび4a,4bよりそれぞれ上下に突出する中心ボス部2の突出量αが上下のアーム部を有する在来の中心ボス部2の突出量(図4のβ)より大きく設定されている。
【0015】
このため、前記実施例と同様に、舵角を左右45度以上に大きく作動させたとき、油圧シリンダのピストンロッド9、10のいずれもがボス中央部2aに当ることがなく、舵軸に当るまで大きな舵角60度以上を得ることが出来、離着桟時に必要とする大きな舵角度で使用することが可能になる。また、切欠空間部2bの形成による構造強度の低下は中心ボス部2の突出量αが上下のアーム部を有する在来の中心ボス部2の突出量(図4のβ)より大きく設定されていることにより、充分にカバーされる。
【0016】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0017】
本発明の船舶の舵取装置は、垂直方向の舵軸1上部1aに嵌着された中心ボス部2の左右外側より上下一定の間隔をおいて左右反対方向にそれぞれ伸長する各上下一対のアーム部3,4を有する舵柄17と、上記左右の各上下のアーム部3a,3bおよび4a,4bの先端部間に介入し、連結ピン5,6によって連結された連結ボス部7,8を先端に有する左右のピストンロッド9,10と、この左右のピストンロッドを摺動自在に保持する左右の油圧シリンダ11,12と、この左右の油圧シリンダの基端軸部11a,12aを中心としてこの油圧シリンダを水平面内に揺動自在に保持する機構とを備えた船舶の舵取装置において、上記中心ボス部2の上下のアーム部3a,3bおよび4a,4b間に位置するボス中央部2aに、上記左右のピストンロッドの揺動軌跡が干渉する空間であって、ボス中央部の約半周にわたる切欠空間部2bが形成されていることにより、装置を格別大型化することなく、舵角を左右45度以上に大きく作動させたとき、油圧シリンダのピストンロッド9,10のいずれもがボス中央部2aに当ることがなく、舵軸に当るまで大きな舵角60度以上を得ることが出来、離着桟時に必要とする大きな舵角度で使用することが可能になる。
【0018】
また、本発明の船舶の舵取装置は、前記ボス中央部の約半周にわたり切欠空間部2bが形成されているので、型抜きなどの作業が容易になり、量産に好適となる。
【0019】
前記舵軸1が貫着されているボス中央部2aは、前記上下のアーム部3a,3b、4a,4bよりそれぞれ上下に突出しているので、前記舵軸1はボス中央部2aの突出した部分によっても保持される。従って、前記切欠空間部2bの形成による構造強度の低下は、このボス中央部により充分にカバーされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)は本発明の一実施例によるニュートラルの位置にある船舶の舵取装置の平面図、(ロ)は舵角45度以上の位置にある船舶の舵取装置の平面図である。
【図2】(イ)は図1(イ)の要部の正面図、(ロ)はA´A´線矢視図である。
【図3】本発明の船舶の舵取装置の別の一実施例を示す正面図である。
【図4】(イ)は従来の舵取り装置Aの正面図、(ロ)は同平面図、(ハ)は同側面図である。
【図5】従来の舵取り装置Bの正面図である。
【符号の説明】
1 舵軸
1a 上部
2 中心ボス部
2a ボス中央部
2b 切欠空間部
3,4 上下一対のアーム部
3a 上アーム部
3b 下アーム部
4a 上アーム部
4b 下アーム部
5 連結ピン
6 連結ピン
7 連結ボス部
8 連結ボス部
9 ピストンロッド
10 ピストンロッド
11 油圧シリンダ
11a 基端軸部
12 油圧シリンダ
12a 基端軸部
13 シリンダ取付け台
14 球面ブッシュ
15 球面ブッシュ
16 舵板
17 舵柄
20 支持ボス部
21 支持ボス部
Claims (1)
- 垂直方向の舵軸(1)上部(1a)に嵌着された中心ボス部(2)の左右外側より上下一定の間隔をおいて左右反対方向にそれぞれ伸長する各上下一対のアーム部(3,4)を有する舵柄(17)と、上記左右の各上下のアーム部(3a,3b)、(4a,4b)の先端部間に介入し、連結ピン(5,6)によって連結された連結ボス部(7,8)を先端に有する左右のピストンロッド(9,10)と、この左右のピストンロッドを摺動自在に保持する左右の油圧シリンダ(11,12)と、この左右の油圧シリンダの基端軸部(11a,12a)を中心としてこの油圧シリンダを水平面内に揺動自在に保持する機構とを備えた船舶の舵取装置において、
上記中心ボス部(2)の上下のアーム部(3a,3b)、(4a,4b)間に位置するボス中央部(2a)に、上記左右のピストンロッドの揺動軌跡が干渉する空間であって、ボス中央部(2a)の約半周にわたる切欠空間部(2b)が形成されており、
前記舵軸(1)が貫着されているボス中央部(2a)は、前記上下のアーム部(3a,3b)、(4a,4b)よりそれぞれ上下に突出していることを特徴とする船舶の舵取装置。
Priority Applications (1)
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JP16700098A JP4072654B2 (ja) | 1998-06-15 | 1998-06-15 | 船舶の舵取装置 |
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JP16700098A JP4072654B2 (ja) | 1998-06-15 | 1998-06-15 | 船舶の舵取装置 |
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JPH11348889A JPH11348889A (ja) | 1999-12-21 |
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ID=15841531
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JP16700098A Expired - Lifetime JP4072654B2 (ja) | 1998-06-15 | 1998-06-15 | 船舶の舵取装置 |
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CN108082437B (zh) * | 2017-10-24 | 2020-04-21 | 武汉船用机械有限责任公司 | 一种推舵机构 |
-
1998
- 1998-06-15 JP JP16700098A patent/JP4072654B2/ja not_active Expired - Lifetime
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