JP4070309B2 - 接着剤組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤組成物に関し、特に、繊維材料とゴムとの接着に好適に使用される接着剤組成物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、タイヤ、コンベヤベルト、ベルト、ホースおよび空気バネ等のゴム物品の補強用に、フィラメント、コード、ケーブル、コード織物および帆布等の形態で繊維材料を使用している。
【0003】
繊維材料とゴムとの接着には、従来より繊維材料とゴムの結合力を得るために、ゴムラテックスとレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の混合物(いわゆるRFL液)を含む接着剤組成物が広く使用されている。
【0004】
ここにおいて、ゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン三元共重合体ラテックス等を単独であるいは複数種を組み合わせて使用している。
【0005】
なお、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物は、レゾルシンとホルムアルデヒド、またはレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とホルムアルデヒドを、ゴムラテックスの存在下で、いわゆるレゾール化反応によるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応により得られる。
【0006】
このゴムラテックス混合下でのレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応のpHは、通常、8.0以上の高アルカリ性条件下で行われている。この理由は、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を得る反応が、pH8.0より低い中性付近の条件下では、反応速度が遅く、工業的でないためである。
【0007】
RFL液のpH条件は種々検討されているが、MillerとRobison の検討結果では、レゾルシン、ホルムアルデヒド、ゴムラテックスを混合し、苛性ソーダの添加量を変えてpHを調節し、24時間放置熟成して、RFL液の接着力を測定した結果、熟成前のRFL液のpHが8.0より低いと、24時間熟成後のpHが熟成前のpHより低くなり、また接着力も低めになる(A. L. Miler,S. B. Robison, Rubber World, 136,397(1957)および日本接着協会誌Vol. 8 NO.1(1972) p35.表4参照)ことが分かった。
【0008】
このレゾルシン、ホルムアルデヒド、ゴムラテックスに、苛性ソーダを添加してアルカリ性としてRFL液を調製する場合には、下記のようなレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の反応過程を経ると考えられている。
先ず、レゾルシンに弱酸のホルムアルデヒドが付加反応(メチロール化)して、酸性のメチロール基を有する反応中間体を生成させる。このときレゾルシンに付加したメチロール基は酸性がやや強いため、ホルムアルデヒドの付加反応が進み、メチロール基が生成する反応段階で、RFL液のpHは一時的に下がる。
その後、メチロール基を有する反応中間体が縮合反応していく段階では、メチロール基の部位が脱水縮合反応し、メチレン結合(−CH2 −)となり、縮合樹脂化していく。このとき、メチロール基が脱水縮合により消費されるにつれ、中性のメチレン部位になるため、メチロール基生成に伴い一時的に下がったRFL液のpHは、メチロール基の消費に伴い再び上がり、メチロール基のほとんどが消費されると、pHはほぼ一定となる。
また、熟成前と熟成後のpHを比べると、反応前の弱酸のホルムアルデヒドが、ほぼ中性のメチレン部位になるため、反応後のRFL液のpHが高くなる。
【0009】
ところが、前出のMillerとRobison らの実験によると、RFL液の熟成前のpHが9.0以上では、熟成前のpHより24時間熟成後のpHが高い結果となり、RFL液の熟成が24時間で十分進行しており、一方、RFL液の熟成前のpHが8.0より低い条件では、24時間熟成時のpHは熟成前のpHより低い。すなわち、RFL液の熟成前のpHが8.0未満であると、熟成時間が24時間ではメチロール基を有する反応中間体が残存していることを示している。
【0010】
この理由は、RFL液のpHとレゾルシン・ホルムアルデヒド反応の速度については、アルカリ添加量が多いほど、すなわち塩基性になるほど早くなる(G.M.Doy1e, Trans. Inst, Rubber Ind. 36;177(1960)参照)ため、RFL液のpHが低くなることで、レゾルシン・ホルムアルデヒドの縮合反応が遅くなったためであると考えられる。発明者の検討では、特に熟成前のpHが7.5以下の場合、1か月間熟成しても、熟成前のpHより熟成後のpHの方が低く、反応速度が極めて遅くなることを見いだした。
【0011】
このように、熟成前のpHより熟成後のpHが下がったRFL液は、メチロール基を有する反応中間体の縮合反応が不十分となるため、RFL液中のレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂の重縮合度、三次元網目状化が低くなり、接着剤組成物の凝集破壊抗力が不十分となって、その結果、接着力が低めになる。また、RFL液中のレゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂の重縮合度、三次元網目状化が低いと、ラテックスのゴム的粘性が強くなり、そのため、繊維に接着剤組成物を付着加工するときに、装置への付着汚れを発生させたり、接着剤組成物を付着処理したコードがボビン等の治具に粘着するなど、作業性が低下するので好ましくない。
また、RFL液の製造では、熟成前のpHが8.0以下では、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応が遅くなる不都合がある。特に、pH7.5以下になると、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応は極めて遅くなるため、1か月で熟成が終了せず、また、安定的に反応しなくなるので、RFL液の製造方法としては実用的でなくなる。
したがって、ゴムラテックスと混合下でのレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を得る反応のpH条件は、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応を十分行わせるため、pHを7.5より高くする必要がある。
【0012】
また、市販スチレン・ブタジエンゴムラテックス、市販ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスは、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物と混合する場合、あるいはゴムラテックス、レゾルシン、ホルムアルデヒドを混合する場合に、pHが7.5より低くなると、コアギュレーションが発生することがある。
この理由は、エマルジョンラテックスハンドブック(大成社発行第187 頁)、また豊田、西岡、上村らの公報(特開平6−184505)などから明らかな通り、これらゴムラテックスの乳化剤として、一般的にオレイン酸塩、ロジン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ホルムアルデヒド縮合ナフタレンスルホン酸塩等が使用さており、pHが中性付近では、これら乳化剤が析出するなどして、界面活性作用が弱くなり、ゴムラテックス粒子同士の電気的な反発力が低下し、凝集してしまうためである。
【0013】
このように、RFL液(固形分濃度20%)のpH条件が8.0以上、特に好ましくはpH8.3〜8.8であれば、6〜24時間の熟成時間で、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応を行わせることにより、熟成が終了し、接着剤組成物として使用することができる。
ところが、このRFL液を保存すると、接着力、特に160℃以上での長時間の加熱劣化時での接着力が、1週間程度で低下する兆しがみられ、熱的入力に対する安定性が必要なタイヤ等においては、可使期間が1週間となる。また、製品性状も、1ヶ月半ほどの放置で粘度が上昇し、4ヶ月も放置するとクリーム状になり、ゲル化する等の不具合がある。
RFL液の粘度が10mPa・s以上になると、接着剤組成物を付着処理する上で装置に対する付着汚れなどの問題が発生する。
また、RFL液の輸送などの便宜のため、固形分濃度を高くしてRFLを製造すると、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応が早くなり、このRFL液の可使期間は、さらに短くなってしまう不具合があった。
【0014】
このため、RFL液の使用においては、長期保存せず、使用直前に必要量を調製するなどの制約がある他、使用可能期間を経過した場合は廃棄せざるを得ない等、資源の有効活用上好ましくない制約があった。また、従来のRFL液では、製造拠点から遠方への輸送、例えば、工場から工場間で1週間以上の期間が必要な輸送、または輸出、が不可能な他、固形分濃度を高くした場合は、保存安定性のよい商品として市場で販売することができなかった。
【0015】
このRFL液の接着力低下、および粘度上昇の理由は、接着剤組成物として使用可能になった(熟成が終了した)後でも、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応が進み、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂の分子量が過度に大きくなるため、良好な接着を得るための適度な重縮合度、三次元網状化度でなくなり、ラテックス粒子間に弱い橋渡しができて流動性を失うためであると説明されている(日本接着剤協会誌 Vo1.8 NO.1(1972 )P35, P36, P42)。
【0016】
そこで、熟成終了後のレゾルシン・ホルムアルデヒドの縮合反応を抑制し、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂の分子量を過度に大きくしないことが、RFL液の熟成終了後のポットライフを延長する上で重要である。
しかし、その方法として、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応条件を変えるために温度を低くすることは、設備とエネルギーおよびコスト面で好ましくなく、また、濃度を低くすることは、接着剤組成物を繊維などへ付着させるときの付着量を保持する上で、必要最低濃度からの制約があり、さらに、pHを低くする方法は、前述のとおり、pHが8.0以下の領域では、縮合反応が遅くなりすぎ、RFL液の熟成時間が長くなるため実用的でない。
また、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応の調節剤としてキノリン誘導体やエチレングリコールを添加する方法、あるいはレゾルシンとホルムアルデヒドの反応終了後にアンモニアを添加する方法が報告されている(日本接着剤協会誌Vo1.8 NO.1(1972)P42)。しかし、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応の調節剤としてキノリン誘導体やエチレングリコールを添加する方法は、反応を抑制しすぎると、RFL液の熟成する時間が長くなり実用的ではない。また、レゾルシンとホルムアルデヒドの反応終了後にアンモニアを添加する方法は、メチロール基に付加したアミンが酸化されると、RFL液が青く変色するとともに、接着力が低下するため満足できる方法とは言えない。
前述のとおり、繊維材料とゴムとの結合に使用されているRFL液の製造は、ゴムラテックスの存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドとを縮合反応させるために、pH8.0以上が必要であるが、接着剤組成物として使用することができる程度にまでレゾルシン・ホルムアルデヒドの縮合反応が達成された後も、この縮合反応が進むため、接着力が1週間程度で低下するほか、製品性状については1ヶ月半ほどで粘度が増加してしまう不具合があった。
なお、工業的に好ましいpHの範囲は8.5〜9.7である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記不都合を解消して、ポットライフの長い接着剤組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成とする。
(1)本発明のレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスを含んでなる接着剤組成物の製造方法は、7.5より高いpHで、好ましくはpH8.5〜9.7でレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応を行わせた後、好ましくは、pH4.0〜7.5まで、更に好ましくは、5.0〜6.7までpHを下げることを特徴とする。
また、前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応はレゾール化反応であり、また、ゴムラテックスの存在下で行われると好ましい。また、前記反応系のpHを下げる工程を、イオン交換あるいは酸または酸性塩の添加により行うと好ましい。
(2)本発明の接着剤組成物は、スチレン・ブタジエン共重合体粒子およびビニルピリジン・スチレン・ブタジエン三元共重合体粒子のうち少なくとも1種を含んでなるゴムラテックスと、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とを含んでなり、pHが4.0〜7.5であることを特徴とする。
また、上記接着剤組成物は、上記各方法により製造されると好ましく、その配合組成は、ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を固形分で7〜250重量部、あるいは、ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物のうちレゾール化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を固形分で7〜35重量部含んでなり、また、接着剤組成物の固形分100重量部に対して、水を25〜1900重量部含んでなると好ましい。
【0019】
【発明を実施するための最良の形態】
本発明者は、RFL液を保存するpHと、経日に基づく貯蔵RFL液の接着劣化および粘度上昇とについて種々検討した結果、RFL液の熟成反応がほぼ終了した後のRFL液においては、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応による接着劣化および粘度上昇に、RFL液の特にpH条件の関与が大きいことを見出した。
ゴム補強材の形態は、特に限定されず、コード、フィルム、短繊維、不織布などいずれでもよいが、ここでは、補強材の形態として、コードを例にとり、本発明を詳細に説明する。
【0020】
前記のように、RFL液のpHにより、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応の速度が変化することから、RFL液熟成期間と、RFL液熟成後の接着剤組成物の可使期間には、次のような関係がある。すなわち、RFL液のpHが6.7以下では、メチロール基の消費に伴うpH上昇が僅かなため、レゾルシンとホルムアルデヒドの縮合反応がほぼ停滞し、RFL液は未熟成になる。また、RFL液のpHが7.5程度では、RFL液の熟成に、1か月以上と、RFL液の製造日数がかかるため、工業的でなくなるが、接着剤組成物の可使期間は2〜3か月と長い。また、RFL液のpHが8.5程度では、RFL液の熟成が16〜24時間と工業的に好ましい所要時間になるが、前述のとおり、接着剤としての可使期間は、1週間程度と短くなる。RFL液のpHが9.7以上では、RFL液は12時間程度で熟成し、使用可能になるが、接着剤としての可使期間は1〜2日と短くなる。
したがって、熟成前のRFL液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとを縮合反応させるために、また、ゴムラテックスの凝縮を抑制するために、pHを7.5以上に保つ必要があるが、一度、良好な接着を得るための適度な重縮合度、三次元網状化度までレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合を達成し、熟成がほぼ終了したRFL液においては、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合反応を遅延することが好ましい。
【0021】
そこで、本発明者はRFL液のpHを、RFL液熟成後に低く調節する方法を検討したところ、イオン交換樹脂を投入する手法、あるいは酸物質もしくは弱酸性塩を混合する手法で、RFL液をpH4.0まで低く調節することができ、このようにpHを低くすると、貯蔵RFL液の接着劣化および粘度上昇の抑制に有効であることを見出した。
また、RFL液のpHを低く調節することで、接着劣化抑制効果に止まらず、さらに接着力が向上する効果があることを見出した。
【0022】
このようにpHを低くした接着剤組成物のゴムラテックスが凝集しない理由は、ゴムラテックス存在下でレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を得る反応が行われた後では、ゴムラテックスとレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物間で相互作用が生じ、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物がゴムラテックスの界面活性作用を強めて分散を補助しているためと考えられる。
【0023】
また、前記のように、RFL液熟成終了後にpHを低くした接着剤組成物では、接着力が向上する効果があることが分かった。
これは、接着剤組成物に浸漬するなどして接着処理を施したコードと、被着ゴムとを加硫接着させる工程においては、ゴム組成物中から拡散する加硫剤、加硫促進剤等により接着剤組成物中のゴムラテックスが加硫し、接着剤層が硬化すると、コードと接着剤層間に応力集中が発生し、接着劣化が生じることになるが、本発明の接着剤組成物では、RFL液が酸性になり、この加硫が抑制されるため、接着剤層硬化による接着劣化が少なくなったこともその理由と考えられる。
【0024】
本発明で用いることができるゴムラテックスとしては、一般に広く用いられているビニルピリジン−スチレン−共役ジエン化合物ラテックスおよびそれをカルボキシル基などで変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエンラテックスおよびその変性ラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックスの他、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、被着ゴムに配合されるゴムと同種のゴムを水または有機溶媒に分散させたもの、等をそれぞれ単独であるいは複数種混合して用いることができる。
【0025】
本発明で用いることができるスチレン・ブタジエン共重合体粒子は、スチレンと共役ジエン化合物を共重合させたものであり、また、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン三元共重合体粒子はピリジン環含有ビニル化合物、スチレンおよび共役ジエン化合物を三元共重合させたもので、スチレンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、スチレンである。
【0026】
共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の脂肪族共役ジエン化合物モノマーが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、1,3−ブタジエンである、
【0027】
ピリジン環含有ビニル化合物としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられ、1種または2種以上を組合わせて使用することができる。好ましくは、2−ビニルピリジンである。
【0028】
レゾルシンとしては、レゾルシンまたは5−メチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシンなどのアルキルレゾルシンなどが挙げられるが、好ましくはレゾルシンである。
【0029】
ホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキサール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等の1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくはホルムアルデヒドである。
【0030】
レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物は、レゾルシンとホルムアルデヒドを反応させ得られる反応物である。この縮合物は、レゾルシン以外のフェノール誘導体を第三成分として含んでいてもよく、また、スルフィメチル化剤などによる変性やカルボキシル化などの変性をしてもよい。好ましくは、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物である。
【0031】
レゾール化させて得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物は、ゴムラテックスとの混合下で反応させ得られることが好ましいが、これは、接着剤組成物の粘着性を下げて、付着処理工程における装置への付着汚れの発生やガムアップ発生の抑止と同時に、RFL液の熟成がほぼ終了した後にpHを低くしてもゴムラテックスの凝集発生が抑止できるためである。
【0032】
レゾール化させて得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を、ゴムラテックスとの混合下での反応により得る方法には、(1) アルカリ性液下で、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の原材料(レゾルシンまたは比較的低分子量のレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物のうち、一種または二種の組み合わせと、ホルマリン)とゴムラテックスとを混合させる方法、あるいは(2) 反応開始時はゴムラテックスと混合せず、アルカリ性液下で、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の原材料だけでレゾール化反応を開始させるが、なるべく、縮合反応初期段階で低縮合度の反応中間体の時点でゴムラテックスと混合して反応を続行させる方法、等が一般的に用いられているが、いずれにしても、レゾール型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の縮合反応が終了する以前にゴムラテックスと混合させる。
なお、縮合反応終了の判定方法は、レゾール化反応中は反応中間体のメチロール基生成に伴い、pHが一時的に下がり、縮合反応が進むにつれてメチロール基が消費され、pHが再び上がり、反応が終了するとpHがほぼ一定となるため、本発明ではこのpH変化を指標として、ゴムラテックスの添加を行う。
【0033】
ここで、ゴムラテックス混合下で得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の熟成の際には、pHを7.5より高くすることが好ましいが、この理由は、前述のとおり、RFL液熟成反応をほぼ1か月以内と速く進行させるためである。また、pH8.5〜pH9.7である理由は、pHが8.5以上ではRFL液の熟成時間が1日程度と、工業的に好ましい熟成時間まで短縮できるためであり、また、pH9.7より高いと、RFL液保存の使用可能期間(ポットライフ)が短くなるためである。
【0034】
また、本発明で、ゴムラテックスの固形分100重量部あたり、ゴムラテックス混合下でレゾール化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の固形分が、7重量部未満であると、コードに接着剤組成物を塗布する過程で、粘着性が強く、処理機を汚し、延いては接着剤組成物塗布状態の悪化で接着力が低下する傾向にあり、逆に、35重量部を越えると、被着ゴムと接着剤層の接着が低下する傾向にあり、好ましくない。特に、12重量部以上25重量部以下のとき、有機繊維コード等に塗布された接着剤の粘着性が最適となり、治具、機械への付着、あるいは、長時間経過したときのコード等同士の付着が抑止でき、さらに、接着剤表面の状態も良好で、高い接着力が得られるので好ましい。
また、後述するように、RFL液に接着/粘着を促進する配合剤として、ノボラック型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を、ゴムラテックスとレゾール化反応により得られたレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の混合物(RFL液)に添加することができる(WO97/13818参照)。このとき、ノボラック型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とレゾール型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物等の、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の固形分が、ゴムラテックスの固形分100重量部あたり、250重量部より多くなると、接着剤組成物中のゴムラテックス配合比率が少なくなり、接着剤組成物と被着ゴムとの間で、ゴム成分同士の混合や架橋などが起こり難くなるため、接着力が低下するので好ましくない。
【0035】
ゴムラテックスとpH7.5より高い条件のレゾール化反応により得られたレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の混合物とのpHを4.0〜7.5に調節する手法としては、イオン交換樹脂を使用してpHを下げる手法、もしくは酸および/または酸性塩を添加する手法が挙げられるが、他の方法であっても、RFL液のpHを4.0〜7.5に調節できる手法であれば、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合を遅延してポットライフを延長できる。
【0036】
イオン交換樹脂の添加により、RFL液のpHを下げる手法について説明する。
予め、陽イオン交換体(例えば、Duolite C-20 )を予備処理することで[H+ ]形にしておき、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の縮合反応が終了したRFL液200gを採取し、pH計によりRFL液のpHを測定しながら、少量づつ、先ほど予備処理し[H+ ]形になった陽イオン交換体を添加する。陽イオン交換体の添加につれて、RFL液のpHが低下するので、RFL液のpHが目的のpH値になった時点で、添加を停止して、500メッシュの金網によりRFL液からイオン交換樹脂体を分離除去し、pHを4.0〜7.5に調節したRFL液を得る。本発明の実施例においては、後述するように、Duolite C-20 を使用したが、その他の陽イオン交換体を適宜用いることができるのは言うまでもない。
【0037】
次に、酸および/または酸性塩を使用して、RFL液のpHを下げる手法を説明する。
酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硼酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機酸または有機酸、レゾルシンなどの多価フェノール類、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩類、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、酸性の水溶性高分子やその塩などの酸性化合物を使用できる。好ましくは、蓚酸、蟻酸、酢酸、フマル酸などの有機酸、または、これらの酸性塩類である。また、酸性下条件で作成した(ノボラック型)レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物などpH7.5以下でも水溶性のフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物も使用できる。
【0038】
また、これらの酸はアルカリ性物質で弱酸性塩にしてRFL液に添加することができる。例示すると、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の塩類やアミン類等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、石灰、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアルカリ化合物等である。好ましくは、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0039】
これら酸および/または酸性塩の添加に際しては、pH4.0〜7.5の弱酸性の水溶液を作成し、これをRFL液に添加するのが好ましい。この理由は、pH4.0未満の酸および/または酸性塩の添加に伴う不安定化の発生を回避するためである。
なお、pH4.0未満の酸および/または酸性塩は、これを水で十分希釈すれば、RFL液への添加に伴う不安定化が少なくなり、ゲル化することなく添加できる。この酸を水で希釈する場合の濃度は、酸のイオン強度で異なる。
【0040】
このとき、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の縮合反応が終了したRFL液のpHを調節できる範囲を4.0〜7.5にした理由は、pHを4.0未満にすると、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物の縮合反応が終了したRFL液でも、分散粒子の電気的反発力が減少することで不安定化してゲル化してしまうためである。好ましくは、pH5.0以上であると更にゲル化に対する安定性が向上する。また、pHが7.5より低いpHでは縮合反応が遅くなることにより、ポットライフ延長の効果が得られるが、pHが7.5より高いと、従来のRFL液対比、ポットライフ延長の効果が得られないためである。特に、pH6.7以下であると、縮合反応に伴うpHの上昇が極めて小さくなることから、レゾルシン・ホルムアルデヒドの縮合がほぼ停滞するため、好ましい。
【0041】
なお、本発明では、ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、熱硬化性樹脂の固形分が14〜205重量部の範囲であれば、必要に応じて、上記のゴムラテックス混合下、レゾール反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物以外の熱硬化性樹脂成分、例示すればノボラック反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物、第三成分を含むレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド初期縮合物、ウレア・ホルムアルデヒド初期縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド初期縮合物、3,5−キシレノールや5−メチルレゾルシン等のフェノール誘導体とホルムアルデヒドとの初期縮合物、フェノール類・アルデヒド縮合物のスルホメチル化物またはスルフィメチル化物などで変性したフェノール系縮合物等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、本発明では、接着剤組成物を水と混合下で保存する場合、接着剤組成物の固形分100重量部あたり、水は、25〜1900重量部であることが好ましく、より好ましくは150〜1000重量部である。これは、水25重量部未満では、接着剤組成物の濃度が高くなりすぎ、接着剤組成物液に含まれるRFL粒子等の分散粒子同士が近接したり、また、レゾルシン・ホルムアルデヒドの縮合反応が促進される等の理由で、接着剤組成物液が不安定となるため好ましくないからである。
また、水1900重量部超過では、接着剤組成物の固形分濃度が薄くなりすぎ、接着剤組成物液を用い、有機繊維等への付着処理において、十分な接着剤付着量が得られなくなり、好ましくないからである。
【0043】
以上のように構成された接着剤組成物を、ポリエステルコード等のコードに付着させ、適度な熱処理を施すことによって、接着処理されたポリエステルコードを作成することができる。
このようにして得られたコードを未加硫ゴムに埋設し、加硫することによって該コードとゴムを強固に接着させることができる。接着剤組成物をコードに付着させる方法としては、接着剤組成物にコードを浸漬する方法、接着剤組成物をハケで塗布する方法、接着剤組成物をスプレーする方法等があるが、必要に応じて適当な方法を選択することができる。
【0044】
乾燥に引き続いて行う熱処理は、コードを構成するポリマーのガラス転移温度以上、好ましくは、該ポリマーの〔融解温度−70℃〕以上、〔融解温度−20℃〕以下の温度で施すのが好ましい。
この理由としては、ポリマーのガラス転移温度未満では、ポリマーの分子運動性が悪く、接着剤組成物のうちの、接着/粘着付与樹脂とポリマーとが十分な相互作用を行えないため、接着剤組成物とコードの結合力が得られないためである。また、ポリマーの〔融解温度−20℃〕を越える温度では繊維材料や接着剤組成物中のゴムラテックスが劣化傾向にあるからである。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル、レーヨン、ビニロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、4,6−ナイロン等の脂肪族ポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維などの有機繊維材料に使用することができる。好ましくはポリエステル繊維で、最も代表的には、ポリエチレンテレフタレートである。
【0046】
かかる有機繊維材料は、コード、ケーブル、フィラメント、フィラメントチップ、コード織物、帆布等のいずれの形態でも良い。また、予め電子線、マイクロ波、コロナ放電、プラズマ処理等の前処理加工されたものでもよい。
また、かかる有機繊維材料はゴム補強用有機繊維としてゴム製品に適用することができる。
【0047】
更に、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維等に代表される繊維の重合・紡糸過程後に、エポキシ化合物またはイソシアネート化合物で、後処理加工に付したもの、あるいは電子線、マイクロ波、プラズマ処理等で予め処理加工された繊維材料についても、本発明の接着剤組成物を適用できる。これらの繊維材料についてもその形態はコード、ケーブル、フィラメント、フィラメントチップ、コード織物、帆布等のいずれでも良い。
【0048】
本発明の接着剤組成物は、タイヤ、コンベアベルト、ベルト、ホース、空気バネ等のあらゆるゴム製品に適用できる。
【0049】
【実施例】
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明する。
なお、実施例中の固形分濃度は、JIS K6833−1980「その他の接着剤」の測定方法における接着剤の不揮発分の測定方法に準拠して実施した。また、pHについては、JIS K6833−1980の6.2項pH測定方法に準拠して実施した。
【0050】
(1)ゴムラテックス混合下でレゾール化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物調製
(i)実施例1〜10、比較例1〜4の調製
表1に示すゴムラテックスとレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物原材料を混合した液を、表1に示す組成にて混合し、表1に熟成前のRFL液pHで示すRFL液原材料混合液を得た。
これを25℃で24時間熟成し、ゴムラテックスとレゾール化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とからなる組成物を得た。表1に、24時間熟成後のPFL液のpHを示す。
【0051】
(2)RFL液pH調節用のイオン交換樹脂の調製
イオン交換体としては、市販の陽イオン交換樹脂:Duolite C-20(製造元:Chemical Process co., 販売:和光純薬工業株式会社)を用いた。
先ず、この陽イオン交換樹脂にコンディショニングとよばれる予備処理を行った。すなわち、塩酸で洗って[H+ ]形にした後、食塩水で洗って[Na+ ]形に戻し、再び塩酸で洗って[H+ ]形にする。この操作を2,3回繰り返し、有機物、無機物の不純物を除く。塩酸で洗って[H+ ]形とした樹脂は、さらに樹脂に含まれるCl- イオンを洗い流すまで、蒸留水で洗浄する。
【0052】
(3)RFL液pH調節用の酸性混合液の調製
表2に示す組成で酸性混合液を調整する。表2に種類と混合液のpHを示す。
【0053】
(4)接着剤組成物の調製
(i)実施例1〜6、比較例2
実施例1〜6、比較例2の接着剤組成物として、(1)で得られた24時間熟成後のRFL液200gを採取し、pH計によりRFL液のpHを測定しながら、(2)で予備処理し[H+ ]形になったDuolite C-20 を少量ずつ添加する。Duolite C-20 を添加するにつれ、RFL液のpHが低下するので、RFL液のpHが目的のpH値になったらぱ、Duolite C-20 の添加を停止して、500メッシュの金網を使用して、RFL液とイオン交換樹脂体を分離し、pHを4.0〜7.5に調節した接着剤組成物を作製した。表1にpH調節後のpHを記載する。
(ii)実施例7〜10
実施例7〜10の接着剤組成物として、(1)で得られたRFL液に(3)で得られた酸性混合液を添加し、pHを4.0〜7.5に調節した接着剤組成物を作製した。表1に、pH調節後のpHを記載する。
(iii) 比較例1,3,4
比較例1,3,4の接着剤組成物として、(1)で調製したRFL液をpH調節することなく、そのまま用いた。
【0054】
(5)接着剤組成物液のゲル化日数の測定
予め25℃±0.5に保持しておいた密閉できる300m1ガラス容器、各実施例、各比較例の接着剤組成物サンプルおよび25℃±0.5に保持できる恒温槽を用意する。
各接着剤組成物サンプル200gを300m1ガラス容器に採取し、密閉すると同時に、その開始時間を記録して、直ちに25℃±0.5に保持できる恒温槽内に入れる。
このサンプルを時々、JIS K6833−1980の6.3項の測定方法により粘度を測定し、粘度の測定値が10mPa・s以上となるまでの時間を計る。
これらの測定は2回以上行い、その平均時間を日数単位で表し、試料のゲル化日数とする。
なお、上記粘度測定試験は25℃±0.5に保持した恒温浴槽中で、B型粘度計(芝浦システム株式会社製BL型)、回転数60rpmでNo.1ローターにより測定した。
【0055】
(6)接着剤組成物液の接着剤使用可能日数(可使期間)測定用試料の調製
予め25℃±0.5に保持しておいた密閉できる300m1ガラス容器、各実施例、各比較例の接着剤組成物サンプルおよび25℃±0.5に保持できる恒温槽を用意する。
各接着剤組成物サンプル200gを300m1ガラス容器に採取し、密閉すると同時に、その開始時間を記録して、直ちに25℃±0.5に保持できる恒温槽内に入れる。
この試料サンプルを時々、後述する(9−3)の方法で耐熱接着力を測定し、(9−2)で測定した耐熱接着力に対し、接着力が90%以下になる時間を計る。これらの測定は2回以上行い、その平均時間を日数単位で表し、可使期間とする。
【0056】
(7−1)接着剤組成物処理コードの作製I
繊維材料として、撚構造1670dtex/2、上然数40回/10cm、下撚数40回/10cmのポリエチレンテレフタレートタイヤコードを用い、(4)で得た接着剤組成物に浸漬し、次に、150℃で1.5分間乾燥後、240℃に保った雰囲気下で2分間処理した。
(7−2)接着剤組成物処理コードの作製II
繊維材料として、撚構造1670dtex/2、上撚数40回/10cm、下撚数40回/10cmのポリエチレンテレフタレートタイヤコードを用い、(6)で得た接着剤組成物に浸漬し、次に、150℃で1.5分間乾燥後、240℃に保った雰囲気下で2分間処理した。
【0057】
(8−1)加硫I
(7−1)で得た接着剤組成物処理コードを表3に示す配合の未加硫状態のゴム組成物に埋め込み、170℃×30分、20Kg/cm2 の加圧下で加硫する。
(9−1)初期接着力の測定
(8−1)で得た加硫物からコードを堀り起こし、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を測定し、これを初期接着力とした。結果を表1に示す。
【0058】
(8−2)加硫II
(7−1)で得た接着剤組成物処理コードを表3に示す配合の未加硫ゴム組成物に埋め込み、190℃×30分、20kg/cm2 の加圧下で加硫する。
(9−2)耐熱接着力の測定
(8−2)で得た加硫物からコードを堀り起こし、前記と同様に、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を測定し、これを耐熱接着力とした。結果を表1に示す。
【0059】
(8−3)加硫II
(7−2)で得た接着剤組成物処理コードを表3に示す配合の未加硫ゴム組成物に埋め込み、190℃×30分、20kg/cm2 の加圧下で加硫する。
【0060】
(9−3)接着剤組成物液の可使期間測定用試料の耐熱接着力測定
(8−3)で得た加硫物からコードを堀り起こし、前記と同様に、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を測定し、これを接着剤組成物液の可使期間測定用試料の耐熱接着力とした。
【0061】
(10)タイヤ耐久性
(7−1)で得た処理コードを使用し、カーカスプライとして1層用いて、185/70R14のサイズの乗用車用ラジアルタイヤを作製した。
作製したタイヤについて、JIS D4230−1986の5.3.1の方法でリム組みを行い、同じく5.3.2の試験装置を用い、同じく5.3.3の試験方法において、第3段階終了後も連続して、24時間毎に荷重を5%ずつ増加させ、タイヤが破壊するまでの総走行距離を測定し、比較例3の接着剤組成物を用いた場合の結果を100とした指数表示を表1に示し、タイヤ耐久性とした。
【0062】
表1に示す通り、各実施例は、各比較例に比べ、ゲル化日数、可使期間、初期接着力、耐熱接着力、およびタイヤ(高速)耐久性に優れていることがわかる。
【0063】
【表1】
Figure 0004070309
試薬
レゾルシン:関東化学(株)製 特級試薬
ホルムアルデヒド液:関東化学(株)製 特級試薬
1規定水酸化ナトリウム水溶液:関東化学(株)製 試薬
Vpラテックス:JSR(株)製 JSR0650
SBRラテックス:JSR(株)製 JSR2108
【0064】
【表2】
Figure 0004070309
試薬
レゾルシン:関東化学(株)製 特級試薬
酢酸:関東化学(株)製 特級試薬
1規定塩酸標準溶液:関東化学(株)製 試薬
ノボラック型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物:インドスペック社製ペナコライト樹脂R2170(pH1.6)
アンモニア水:関東化学(株)製 特級試薬
【0065】
【表3】
Figure 0004070309
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、接着剤組成物のポットライフを長くすることができると共に、接着力の向上をも図ることができる。

Claims (10)

  1. レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスを含んでなる接着剤組成物の製造方法であって、ゴムラテックスの存在下で、7.5より高いpHでレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応を行わせた後、pHを下げることを特徴とする接着剤組成物の製造方法。
  2. 前記pHを下げて、pH4.0〜7.5に調節することを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物の製造方法。
  3. イオン交換を行うことにより、前記pHを下げることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物の製造方法。
  4. 酸または酸性塩を添加することにより、前記pHを下げることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物の製造方法。
  5. 前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応において、pHが一時的に下がり、再び上がり、ほぼ一定となった後に、pHを下げることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の接着剤組成物の製造方法。
  6. 前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合反応がレゾール化反応であることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の接着剤組成物の製造方法。
  7. スチレン・ブタジエン共重合体粒子およびビニルピリジン・スチレン・ブタジエン三元共重合体粒子のうち少なくとも1種を含んでなるゴムラテックスと、レゾール型レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物とを含んでなり、pHが4.0〜7.5であり、請求項1、2、3、4、5または6記載の方法により製造されたことを特徴とする接着剤組成物。
  8. ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を固形分で7〜250重量部含んでなることを特徴とする請求項7記載の接着剤組成物。
  9. ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、レゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物のうちレゾール化反応により得られるレゾルシン・ホルムアルデヒド縮合物を固形分で7〜35重量部含んでなることを特徴とする請求項7または8記載の接着剤組成物。
  10. 接着剤組成物の固形分100重量部に対して、水を25〜1900重量部添加してなることを特徴とする請求項7、8または9記載の接着剤組成物。
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