JP4069060B2 - 電気化学的水質制御方法および装置 - Google Patents

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本発明は、水中の微生物及び有機物量を制御することによって、海洋構造物、船舶、水輸送用の配管又は水路、排水口、貯水槽、熱交換器あるいは、海水取水口のスクリーンなどに生物やスケールなどが付着することを電気化学的に防止したり、水中に含まれる微生物や有機物の量を制御し、電気化学的に水質を制御する方法及び装置に関する。
海水や淡水中には多くの生物が存在し、水中構造物表面に付着し、様々な問題を引き起こしている。例えば、船舶やブイに付着すると推進抵抗の増大といった問題が発生する。
また、給排水のパイプ内やバルブ等に付着した微生物は海水や淡水を介して人や生産物を汚染するといった問題を発生する。
海水や淡水に接している構造物表面への生物の一般的な付着機構は以下の通りである。まず付着性のグラム陰性菌が構造物表面に吸着して有機物(スライム状物質)を多量に分泌する。さらにグラム陰性菌は、このスライム層に集まって増殖し、微生物皮膜を形成する。そして、海水中ではこの微生物皮膜上に大型生物である藻類、貝類、フジツボ等の大型の生物が付着する。付着した大型生物が繁殖成長し、最終的に水中構造物表面を覆い尽くすことになる。
上記、海水や淡水に接している水中構造物の表面に付着した生物による汚染に対する防汚手段としては、殺菌性を有する物質を被防汚面に添加したり、有機スズ系化合物を含有した塗料で塗膜を形成し、有機スズ系化合物を溶出させる方法や、海水を電気分解する事により発生する塩素を利用した防汚方法が一般的に行われていた。しかし、これらの方法は有害物質が発生し、水質の汚染による生物への影響が懸念される。
近年、有害物質を発生させないで電気化学的に海水や淡水に接している水中構造物の表面などに付着する生物を制御する方法が提案されている。
この電気化学的な生物の制御方法は、微生物との直接電気化学反応が確認されている所定電位以上の電位を微生物に印加すると、微生物内部の酸化還元物質の一つである補酵素Aが不可逆的に酸化され、微生物の呼吸活性及び微生物膜の透過障壁の低下を誘発し、微生物を死滅させることが可能であるというものである(特公平6−91821号公報:特許文献1参照)。また、特開平9−248554号公報(特許文献2参照)には、水中において、導電性基材に正電位を印加することにより、水中の微生物を前記導電性基材表面に吸着して殺菌する工程と、前記導電性基材にさらに高い正電位を印加することにより、前記導電性基材表面に吸着している微生物の細胞を破壊し、導電性基材に付着し殺菌された微生物やその分解物を脱離する工程とを行うことを特徴とする水中微生物の制御方法を要旨とする発明が記載されている。また、特許3105024号公報(特許文献3参照)には、水中において、導電性基材に正電位を印加することにより、水中の微生物を前記導電性基材表面に吸着して殺菌する工程(+0〜1.5VvsSCE)と、前記導電性基材に負電位を印加することにより、前記導電性基材表面に吸着している殺菌された微生物を脱離する工程(−0〜−0.4VvsSCE)とを行うことを特徴とする水中微生物の制御方法を要旨とする発明が記載されている。また、特開2001−198572号公報(特許文献4参照)には、水中において、導電性基材に電気分解の起こらない正電位を印加することにより、水中の微生物を前記導電性基材表面に吸着して殺菌する工程と、前記導電性基材に電気分解の起こる負電位を印加し、導電基材表面を還元すると共にアルカリ性物質を導電性基材表面に誘導し、前記導電性基材表面に吸着している殺菌された微生物やその分解物を脱離する工程とを行うことを特徴とする水中微生物の制御方法を要旨とする発明が記載されている。
さらに、近似した防汚方法としては、導電性基材に酸素を発生させて付着を防止する方法が、特公平1−46595号公報(特許文献5参照)及び特開平11−303041号公報(特許文献6参照)に開示されている。これらの方法では、塩素発生電位以下で酸素発生する電位を0.55V〜1.1V程度とする範囲として制御している。しかしながら、前記電気化学的防汚方法では、細胞と導電性基材とが直接接触したときに微生物の殺菌ができることを明らかにしているのに対して、上記近似した防汚方法では、ほぼ同電位にて発生する酸素が、導電性基材に接触しない微生物を殺菌し、防汚できること示す明確な証明がない。従って、導電性基材に微生物などが付着しないのは、前記電気化学的防汚方法との概念的分離が難しい。
また、導電性塗膜皮膜に正電位を印加し、次亜塩素酸イオンや塩素イオンを生成させる防汚方法が、特公平6−15069号公報(特許文献7参照)及び特公平8−14036号公報(特許文献8参照)に記載されており、海水電解装置による塩素注入方式による防汚効果を、被防汚面で直接塩素などを発生させているものと考えられる。
一方、ある種の金属イオンは抗菌性を持つことが知られている。金属イオンは、水中に設置した導電性基材に電位を印加することによって溶出させることができる。例えば、特開平11−106791号公報(特許文献9参照)には、0.05ppm〜0.5ppmの濃度の銀イオン含有水が殺菌作用を持つことが記載されている。
特公平6−91821号公報(第3頁第42行〜第46行、第8頁第42行〜第44行) 特開平9−248554号公報(第6頁第4行〜第8行) 特許3105024号公報(第3頁第20行〜第27行、図1−4) 特開2001−198572号公報(第3頁第5行〜第8行) 特公平1−46595号公報(第5頁第3行〜第6行、第5頁第30行〜第34行) 特開平11−303041号公報(第5頁第5行〜第6行、図1) 特公平6−15069号公報(第3頁第1行〜第6行) 特公平8−14036号公報(第3頁第10行〜第12行) 特開平11−106791号公報(第49頁第10行〜第27行、図14)
電気化学的手法による水中微生物や有機物量の制御では、導電性基材に、水の電気分解が起こらない電位を印加することによって、微生物の殺菌や付着防止を行う方法が、海洋、河川及び湖水汚染が無く、更に水生生物の生態系への影響がないことから最も優れた水質制御方法である。しかし、上記電気化学的な水質制御方法においては、導電性基材に直接接触もしくは極隣接した微生物の殺菌が主であり、水質自体を制御するためには、水等が電気化学反応を起こす程度の高い電圧を加えたり多量の電流を流す等の必要性があり、水中での電気化学反応中に水中に含まれる有機物や無機物と目的以外の反応が起こることが想定された。そこで、上記電気化学反応を利用する水質制御方法において、より穏和な条件で、目的とする水質制御を行うためには、溶出系の導電性基材に電位を印加するなどして、金属イオン等を溶出させ、水中の微生物を殺菌する方法等を併用し、水質を制御する新たな制御方法の構築が望まれていた。
本発明は、少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材と、一つ以上の溶出系の導電性基材と、少なくとも前記非溶出系の導電性基材と前記溶出系の導電性基材に共通の一つ以上の対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により前記少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、前記電源により前記少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材に電圧を印加して該溶出系の導電性基材を溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御方法を第1の要旨とし、少なくとも二つ以上の導電性基材と、対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材を少なくとも一時は接水面となり、少なくとも一時は接水面とならない部位に設置し、前記電源により電圧を印加して、前記溶出系の導電性基材を接水面となったときのみ溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御方法を第2の要旨とし、少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材と、一つ以上の溶出系の導電性基材と、少なくとも前記非溶出系の導電性基材と前記溶出系の導電性基材に共通の一つ以上の対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により前記少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、前記電源により前記少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材に電圧を印加して該溶出系の導電性基材を溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御装置を第3の要旨とし、少なくとも二つ以上の導電性基材と、対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材を少なくとも一時は接水面となり、少なくとも一時は接水面とならない部位に設置し、前記電源により電圧を印加して、前記溶出系の導電性基材を接水面となったときのみ溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御装置を第4の要旨とするものである。
本願発明になる電気化学的水質制御方法及び装置は、少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させ、及び/又は少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材に電圧を印加して該溶出系の導電性基材を溶出させて、水中の微生物や有機物の量を制御することによって、導電性基材の表面だけでなく、より広い範囲の水質制御に適用することが可能である。また、非溶出系の導電性基材と溶出系の導電性基材の双方を組み合わせて制御することにより、溶出系の導電性基材の摩耗の度合いを減少させながら水質制御を実現できるとともに、接水面における生物の付着による汚損を防止するなど、防汚効果を得ることができる。
本願発明になる電気化学的水質制御方法及び装置に用いる導電性基材は、非溶出系の導電性基材と溶出系の導電性基材からなり、全体が導電性材料から形成されていてもよいが、少なくとも水中に浸漬している部分の表面の一部もしくは全部が導電性であり、通電可能であることが必要である。また、導電性基材の少なくとも一つ以上が、殺菌性のある金属イオンを溶出させる材質であることが好ましい。
非溶出系の導電性基材として、金属の他、金属材料を酸化し、耐食性を向上させたものも使用することができる。一例として、バルブ金属であるチタンは、高温や常温で空気酸化や電解反応により陽極酸化され耐食性や意匠性が向上することが知られている。また、海水電解用電極や酸素発生電極などを製造する際に、一般的に用いられる定法に従って金属の表面を導電性物質の微粒子で被覆したり、積層して用いることができる。被覆及び積層する際には、導電性基材の母材との密着性を高める等の考慮が必要である。
また、本発明における非溶出系の導電性基材とは、樹脂、無機材料などの非導電性材料を基盤として用い、導電性物質の微粒子を該非導電性材料に充填して、基材を形成することにより導電性を付与したものを含む。
導電性物質の微粒子の例としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維からなる短繊維などの炭素微粒子、金、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、それらの合金または酸化物、チタン、ニオブ、タンタル等のバルブ金属またはその酸化物及び酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、酸化アンチモンなどの酸化物の微粒子、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化クロム等の金属窒化物、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タングステン等の金属炭化物、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハーフニウム、ホウ化バナジウム、ホウ化ニオブ、ホウ化タンタル、ホウ化クロム、ホウ化モリブデン、ホウ化タングステン等の金属ホウ化物、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ニオブ、ケイ化タンタル、ケイ化バナジウム、ケイ化タングステン等の金属ケイ化物などの微粒子が挙げられる。
さらに、長期間の水質制御を目的とした本発明においては、非溶出系の導電性基材表面に各種電位印加を行っても排除できない殺菌された微生物、スケールなどの有機物が付着することがあり、これに対して、導電性基材の交換等のコストを無くし、再活性化させて長期間の水質制御効果を再現させるために、必要最小限の塩素化合物及びラジカル発生機能を有する物質として、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムなどの白金族及びそれらの合金や酸化物、チタン、ニオブ、タンタル等のバルブ金属酸化物及び酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズ、酸化アンチモンなどの酸化物やそれらの合金を単一金属酸化物、複合金属酸化物や複合金属酸化物として用いることが好ましい。また、これらの素材をそのまま、もしくは成形して使用することも可能である。
また、導電性基材として、上記導電性物質の微粒子をバインダー樹脂に充填、分散させた導電性物質を、前記非導電性材料製基盤表面に被覆して導電性を付与したものを用いてもよい。バインダー樹脂の例としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、シリコン−ウレタン樹脂、シリコン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂や、熱硬化型のメラミン−アルキッド樹脂、メラミン−アクリル樹脂、メラミン−ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂、または天然ゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ニトリルブチレンゴム、ポリエチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレンエラストマー等のゴム弾性材料が挙げられる。導電性物質は、導電性シートを形成して非導電性材料製基盤上に接着剤を介して積層したり、塗膜層として形成してもよい。
上記の導電性物質の微粒子の他に、生物の細胞と電極との電子移動反応を促進する作用を有する特定の化合物を添加してもよい。すなわち、微生物と電極との電子移動を媒介する電子メディエータを導電性材料と共に使用することによって、より効率的に水生生物の殺菌を行うことができる。電子メディエータの例としては、フェロセン、フェロセンモノカルボン酸、フェロセンジカルボン酸または、((トリメチルアミン)メチル)フェロセン等のフェロセンおよびその誘導体、H4Fe(CN)6、K4Fe(CN)6、Na4Fe(CN)6等のフェロシアン類、2,6−ジクロロフェノールインドール、フェナンジンメトサルフェート、ベンゾキノン、フタロシアニン、ブリリアントクレジルブルー、カロシアニン、レゾルシン、チオニン、N,N−ジメチル−ジスルフォネイティド・チオニン、ニューメチレンブルー、トブシンブルーO、サフラニン−O、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、ベンジルビオロゲン、アリザリンブリリアントブルー、フェノシアジノン、フェナジンエトサルフェート等が挙げられる。
また、抗菌性を有する材料を添加してもよい。抗菌性を有する物質は、無機物に属するものと有機物に属するものとがある。
無機物としては、銀、銅、ニッケル、亜鉛、鉛、ゲルマニウム等の金属およびこれらの酸化物、酸素酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、有機キレート化合物などが挙げられる。
有機物としては、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、4,5,6,7−テトラクロル−2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール、10,10’−オキシスフェノキシアルシン、トリメトキシシリル−プロピルオクタデシルアンモニウムクロライド、2−N−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛などが挙げられる。
さらに、導電性基材の一部又は全部が、少なくともチタン、チタン合金及びそれらの酸化物や白金及び/又は金属酸化物から選ばれた単一金属酸化物又は混合金属酸化物又は複合金属酸化物からなるものを使用してもよい。このような導電性基材に電位を印加することにより、水から塩素化合物もしくはラジカルを生成させ、導電性基材表面に直接または間接的に接触する水生生物の殺菌及びスケールなどの有機物の脱離洗浄、また導電性基材を再活性化させることができる。導電性基材の基盤上に上記の物質を導電性膜となしたものも好ましく用いられる。
この導電性膜は、金属又はその化合物から構成でき、具体的には、白金族金属、バルブ金属及びそれらの酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物の何れかから構成することができる。特に、金属酸化物が、酸化チタン、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化スズおよび酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化タンタル及び酸化ジルコニウムから選ばれた少なくとも1種又は2種以上から構成されることが好ましい。
導電性膜を形成するに当たっては、溶射やスパッタリング、イオンプレーティングなどの方法を採用することができる。
金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物については既に記載してあるが、記載した材料はその一部であり、形成方法によっては2種類以上の金属が含まれたり、酸化物の一部が含まれたり、さらにはこれらの化合物が2種以上混合されたり、導電性基材の素材自身が空気酸化や陽極酸化されることから、特に限定はされない。これらの金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物は0.01μm以上の厚さの膜が好ましい。最大の厚さは特に限定しないが、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物の形成方法や使用目的により適宜設定すればよい。
非溶出系の導電性基材が電気化学的に溶解や腐食する材料、例えば、鉄やアルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウムおよびそれらの合金、ステンレス等の金属材料からなる場合では、該金属材料と接水面に形成された導電層との間に、絶縁性樹脂塗膜層や絶縁性樹脂フィルム層、アルミナ、チタニア酸化ケイ素などの絶縁無機物層、またはチタン、ニオブ、タンタル等のバルブ金属などを設けておくことで耐食性が向上し好ましい。これらの材料からなる層は、1種又は2種以上の多層として形成されてもよい。特に、導電性基材が、バルブ金属であるチタンの様に高温や常温で空気酸化されたものや、電解反応により陽極酸化されたものは、耐食性導電性材料として使用できる。また、耐食性導電性基材と、該耐食性導電性基材の表面の一部又は全部に多孔質白金からなる、又は、前記多孔質白金と該多孔質白金に3次元的に担持された金属酸化物とからなる被覆層とよりなるもの、及び、導電性基材が、耐食性導電性基材と、該耐食性導電性基材の表面が部分的に露出する程度に分散被覆された白金と、少なくとも耐食性導電性基材表面の露出部分を被覆する少なくとも1種以上の金属酸化物及び/又はバルブ金属酸化物の少なくとも1種以上からなる混合金属酸化物とからなる中間層と、貴金属酸化物とバルブ金属酸化物から選ばれた少なくとも1種以上の金属酸化物からなる混合金属酸化物層から構成された外層とよりなるものも好ましい。
次に、本願発明で使用される溶出系の基材としては、銀、銅、ニッケル、亜鉛、鉛、アルミニウム、マグネシウム、ゲルマニウム等の金属及び前記金属の合金を使用目的により適宜設定すればよい。また、前記導電性物質の微粒子をバインダー樹脂に充填、分散させた導電性物質を、前記非導電性材料製基材表面に被覆して導電性を付与してもよい。バインダー樹脂の例としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、シリコン−ウレタン樹脂、シリコン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂や、熱硬化型のメラミン−アルキッド樹脂、メラミン−アクリル樹脂、メラミン−ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂、または天然ゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ニトリルブチレンゴム、ポリエチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレンエラストマー等のゴム弾性材料が挙げられる。導電性物質は、導電性シートを形成して非導電性材料製基盤上に接着剤を介して積層したり、塗膜層として形成してもよい。さらに、前記抗菌性を有する材料を添加し生物又は生物付着の抑制を向上させることができる。
例えば、銀、銅、亜鉛などはそのイオンが抗菌性を持つことが知られており、水の殺菌によく用いられる。特に銀は幅広い抗菌スペクトルを持つことが以前より知られている。また銀は人体への毒性も低いため、本発明において用いるのに適している。
本願発明に係る電気化学的水質制御方法を用いた水質制御装置は、二つ以上の全ての導電性基材と接触しないように対極が設置されている。対極に使用される基材は、目的により適宜選択すればよく、特に限定されない。基本的には、前記した非溶出系の導電性基材もしくは前記した溶出系の導電性基材と同様のものを用いることができる。溶出系の導電性基材と対極の材質の組み合わせに関しては、それぞれのイオン化傾向の差により、両者を電気的に接続するだけで溶出系の導電性基材が溶出するような材質の対極を選択することも可能である。そのような組み合わせの材質でない場合は、溶出系の導電性基材と対極とに接続した電源より、溶出系の導電性基材と対極との間に電圧もしくは電流を印加することによって、溶出系の導電性基材を溶出させることができる。また溶出系の導電性基材と対極を接続するだけで溶出系の導電性基材が溶出するような材質の組み合わせである場合でも、溶出系の導電性基材と対極とに電源を接続し、電圧もしくは電流を印加することによって、溶出をより精密に制御することが可能である。
導電性基材と対極の配置、位置関係については、導電性基材と対極の間に存在する、微生物や有機物を含む水の量及び周囲の構造物の形状などにより、少なくとも、非溶出系の導電性基材の表面で電気化学的反応が発生し、溶出系の導電性基材が溶出する程度に配置されていればよく、特に限定されるものではない。
上記、二つ以上の導電性基材と対極とは、それぞれリード線などにより、電気的に電源に接続されている。この電源は、導電性基材と対極との間に直流を通電する装置であって、二つ以上の導電性基材のそれぞれに、対極に対して同一もしくは異なる電圧を出力することが可能である。本発明においては、実装上、例えば複数の電源ユニットを個別もしくはまとめて制御するもの、また少なくとも一つの電源ユニットを用い複数のアンプ回路によって互いに異なる複数の電圧を出力するもの、などを電源と呼ぶ。また、電源は、特定の導電性基材の電気的接続を切断したり、出力する電圧の極性を正負反転させたり、フィードバックによって電流を指定値に保つように電圧出力を制御したり、電圧や電流の出力値を予め指定されたスケジュールもしくは条件に従って時間的に変化させたりする機能を有していることが好ましい。これらの機能は、マイクロプロセッサ、A/D変換器(アナログ・デジタル変換器)、D/A変換器(デジタル・アナログ変換器)、アンプなどを組み合わせ、それらをプログラムにより制御することで実現することができる。
溶出系の導電性基材と対極の材質の組み合わせによって、両者を接続するだけで溶出系の導電性基材が溶出するような場合は、両者を切断するスイッチ機構を装備するか、もしくは電源が溶出系の導電性基材と対極の相対的な電位を逆転させるように電圧を出力することによって、溶出を停止させることが可能であるし、一方、両電極間の相対的な電位を増加させるように電圧を出力することによって溶出を増加させるなどの制御をすることが可能である。
更に、必要に応じて、参照極を用いることもできる。
参照極は、電気化学反応が進む導電性部材の電位を測るときに基準とするものであって、参照極と導電性基材との電位差を計測し、前記電源によって導電性基材の電位を適正に補正するためのものである。従って、参照極を使用する場合、電源は、参照極の電位を計測し、二つ以上の導電性基材と参照極との間の電位がそれぞれ指定した値になるよう、二つ以上の導電性基材に対して同一もしくは異なる電圧を出力する機能を持つことが好ましい。
参照極は作用極たる導電性基材の近傍に設置することが好ましいが、予め通電状態において参照極と導電性基材の電位差を計測しておけば、水質制御のための通電条件を知ることができるので、必ずしも配置を限定するものではなく、また参照極の常設を要請するものでもない。また、導電性基材と対極間で、水質制御効果が発現される時の電流値が明らかである場合などには、もとより参照極を使用しない構成を選択することが可能である。
参照極は、参照電極表面で電極反応が可逆で水中のある化学種とNernstの平衡電位式に従って応答し、その電位は時間に対して安定で、微少電流が流れてもすぐ最初の電位に戻り、温度変化も一定の温度になれば一定の電位を出すもの、といったものを用いる。例えば水素電極(NHE、RHE、白金黒電極)、カロメル電極(SCE)、銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)、硫酸第一水銀電極、酸化水銀電極などが挙げられる。
少なくとも二つ以上の導電性基材において、非溶出系の導電性基材、及び溶出系の導電性基材のそれぞれの振り分けは、本電気化学的水質制御方法を適用する応用領域によって、それら導電性基材の材質、形態、面積、設置位置、制御条件などと共に適切に決定する。
例えば本願発明になる電気化学的水質制御装置を設置する領域の水が少なくとも滞留していることがある場合、当該領域の接水面の少なくとも一部もしくは溶出系の導電性基材及び対極などを設置する部位を除く全部に、一つの非溶出系の導電性基材、もしくは電気的に相互に接続されて一系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材、もしくは接水面においては相互に接続されておらずそれぞれ独立した系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材を設置する。接水面のうち非溶出系の電極によってどの程度の面積を被覆するかについては、領域中の微生物や有機物を含む水の水量、滞留する程度、印加する電圧、及び面積などから導出できる水質制御能力の大きさによって、必要な面積を被覆すればよい。また、非溶出系の導電性基材を被覆した面は特に効果の高い生物付着防止性を持つため、特に生物付着を防止する必要のある部位から被覆するようにしてもよい。
一方で、接水面の少なくとも一部には、溶出系の導電性基材を一つ以上、少なくとも非溶出系の導電性基材と相互に直接接続することのないように設置する。一つ以上の溶出系の導電性基材には、それぞれに独立した系統の電源出力を接続するか、二つ以上の溶出系の導電性基材に一つの電源出力を接続する。対極との材質の組み合わせにより、両者を電気的に接続するだけで溶出系の導電性基材が溶出する場合は、特に溶出させるために電源を必要としない場合もある。そのような場合でも、溶出を制御するために、溶出系の導電性基材と対極との電気的な接続を切り離すスイッチを装備したり、電源によって溶出系の導電性基材の溶出を促進したり、逆に溶出しないように電圧を印加したりすることができることが好ましい。
また、例えば、本願発明になる電気化学的水質制御装置を設置する領域の水に流れが存在する場合は、前記同様、当該領域の接水面の少なくとも一部もしくは溶出系の導電性基材及び対極などを設置する部位を除く全部に、一つの非溶出系の導電性基材、もしくは電気的に相互に接続されて一系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材、もしくは接水面においては相互に接続されておらずそれぞれ独立した系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材を設置する。接水面のうち非溶出系の電極によってどの程度の面積を被覆するかについては、領域中の微生物や有機物を含む水の水量、流速、印加する電圧、及び面積などから導出できる水質制御能力の大きさによって、必要な面積を被覆すればよい。また、非溶出系の導電性基材を被覆した面は特に効果の高い生物付着防止性を持つため、特に生物付着を防止する必要のある部位から被覆するようにしてもよい。
一方、溶出系の導電性基材は、微生物や有機物を含む水の中にイオンを可能な限り満遍なく行き渡らせることができるように配置することが好ましく、例えば流れの上流側に設置することが好ましい。
また、例えば、本願発明になる電気化学的水質制御装置を設置する領域における接水面が一定でなく変化する場合、例えば潮位の変化によって上下する場合や、当該領域への流入口からの、微生物や有機物を含む水の間欠的な流入と滞留の繰り返しによって、例えば水の流入時のみ接水する面が存在するようになる場合などには、溶出系の導電性基材の溶出を、接水面の変化によって制御することも可能である。前記同様、当該領域の接水面の少なくとも一部もしくは溶出系の導電性基材及び対極などを設置する部位を除く全部に、一つの非溶出系の導電性基材、もしくは電気的に相互に接続されて一系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材、もしくは接水面においては相互に接続されておらずそれぞれ独立した系統の出力によって制御される複数の非溶出系の導電性基材を設置する。接水面のうち非溶出系の電極によってどの程度の面積を被覆するかについては、領域中の微生物や有機物を含む水の水量、滞留する程度及び流入が発生する頻度、印加する電圧、及び面積などから導出できる水質制御能力の大きさによって、必要な面積を被覆すればよい。また、非溶出系の導電性基材を被覆した面は特に効果の高い生物付着防止性を持つため、特に生物付着を防止する必要のある部位から被覆するようにしてもよい。
一方、溶出系の導電性基材は、当該領域に特有な条件によって少なくとも一時は接水面となり、少なくとも一時は接水面とならない部位に設置することができる。このようにすると、溶出系の導電性基材と対極との間に常に電位を印加しておけば、該導電性基材が接水面となったときのみ、溶出が発生する。溶出系の導電性基材が接水面でないときは、電流が流れないため、電力を消費しない。対極との材質の組み合わせにより、溶出系の導電性基材と対極とを電気的に接続するだけで溶出系の導電性基材が溶出する場合は、特に溶出させるために電源を必要としない場合もある。両者を接続しておけば、溶出系の導電性基材が接水面となったときのみ、溶出系の導電性基材が溶出する。このような組み合わせに際しても、必要量を溶出させるために、電源を用いた方が好ましい場合もある。
当該領域に特有な条件により、溶出系の導電性基材が接水面となって溶出する期間は異なる。領域の水中に必要な量の溶出が発生するように、溶出系の導電性基材及び対極の種類、印加する電位もしくは電流、及び溶出系の導電性基材の面積などを制御する。
次に制御条件について説明する。
まず非溶出系の導電性基材の制御条件について説明する。定電流の制御条件は以下の通りである。
定電流による水質制御効果の発現には、20mA/m以上の電流密度が有効で、本願発明になる電気化学的水質制御方法を適用する領域における接水面の面積、微生物や有機物を含む水の量及び流速などにより適宜通電量を調整することが好ましい。また、導電性基材の材質や形状などにより、もしくは導電性基材表面の状態保持の目的により、適宜電流密度の設定を変更することができる。一般的には、20mA/mから1000mA/m程度でよい。好ましくは、微生物との直接反応を利用して、水質制御効果の発現を期待する場合には、50mA/mから500mA/mが好ましく、導電性基材の表面に付着した有機物等を除去することを目的とする場合には、100mA/mから800mA/m程度とすることが好ましい。また、それぞれの通電時間は、目的によってそれぞれ適宜選択して制御することができる。また、導電性基材の表面が酸化状態になり、出力電圧が高くなるような場合は、設定する電流を正負相互に、任意の時間制御することによって、導電性基材を還元し出力電圧を低い状態に保つことができる。ただし、負の電流を定電流で流す時間が長いと、水質制御効果の低下を招くことがあるので、使用する導電性基材の材質により適宜選択することが好ましい。負電流の電流密度についても、導電性基材の材質により、水質制御効果などと導電性基材の材質の還元化を考慮して適宜選択し使用することが好ましい。
さらに、本発明は定電位制御も用いることが可能である。定電位の制御条件は以下の通りである。
微生物や有機物を含む水中において、非溶出性の導電性基材に正電位を印加すると、導電性基材表面に付着した微生物は電気化学的に殺菌される。印加する正電位は、導電性基材の材質により適宜選択すれば良く、好ましい電位は、+0Vvs.SCE以上、より好ましくは+0.8Vvs.SCE以上である。印加する電位が+0Vvs.SCEより負では微生物を殺菌することができない。また、+1.5Vvs.SCEを越えた電位を長時間印加すると、導電性基材の劣化が起きたり、導電性基材の組成物によっては水が電気化学的に分解され、水素や酸素が生成することがあるので、材質により適宜考慮することが必要である。さらに、上記正電位を印加してなる殺菌工程の後、印加した正電位を負電位に変更すると、導電性基材に付着した生物、その他の細胞、殺菌された生物の細胞および/またはその破壊物や有機物を脱離することができる。印加する負電位は、場合により適宜選択すればよい。上記正電位を印加してなる殺菌工程と、負電位を印加してなる脱離工程とは周期的に変化させるが、周期、即ち、正電位及び負電位の維持時間は、本水質制御方法を適用する環境に応じて適宜設定すれば良い。
また、経時的に使用すると上記制御方法のみでは除去しきれない水生生物、その一部の細胞、殺菌された水生生物の細胞および/またはその破壊物、スケールなどの有機物の付着が生じる。導電性基材の劣化との関連もあるが、電気化学的に水が分解され水素、酸素や塩素などが発生する程度の負電位もしくは正電位を導電性基材に印加することもできる。
水から電気化学的に生成物が発生する負電位は、−1.0Vvs.SCE以上、好ましくは−2.0Vvs.SCE以上であり、この値での電位の印加を周期的もしくは不定期的に所定の時間で行うことによって、前記水生生物、その一部の細胞、殺菌された水生生物の細胞および/またはその破壊物、スケールなどの有機物を効果的に洗浄することができる。
また、水中から電気化学的に生成物が発生する正電位とは、水の分解にともない酸素や塩素の発生する電位であり、+1.5Vvs.SCEを越えた電位により、明確に確認される。
これらの高い電位を長時間印加すると水が電気分解して塩素や未知の物質を発生する可能性が高く、また、導電性基材の劣化が起こることがあるので、長期に渡って安定的に水質制御効果を維持し、水中への電解生成物質による汚染を最小限に抑制するためには、不適切な場合がある。しかしながら、長期間の水質制御を目的とした本発明においては、導電性基材表面に各種電位印加を行っても排除できない殺菌された微生物、スケールなどの有機物が付着することがあり、これらを導電性基材の交換などのコスト無く、再活性化させて長期間の水質制御効果を再現させるためには、必要最小限の塩素化合物及びラジカル発生機能を制御することが好ましい。
導電性基材に、水中から電気化学的に生成物が発生する負電位が印加されているとき、水の分解により導電性基材表面では水素などが発生したり、導電性基材近傍がアルカリ性を示す雰囲気となったりし、除去しきれない水生生物、その一部の細胞、殺菌された水生生物の細胞および/またはその破壊物などのスケールと呼ばれる有機物が分解される。これら、除去及び溶解によって、導電性基材表面は洗浄されることになる。
上記の洗浄工程において、水中から電気化学的に生成物が発生する正電位もしくは負電位を印加する時間は、導電性基材の耐久性、導電性基材表面に直接または間接的に接触する水生生物の付着量によって適宜選択することができる。
ちなみに、導電性基材表面の物性が、塩素過電圧が酸素過電圧より低い場合には、塩素化合物の生成が起こり、逆であれば酸素が先に発生する現象が確認できる。塩素発生基材としては、貴金属及びその酸化物などが挙げられる。酸素発生基材としては、バルブ金属やその酸化物及び酸化コバルトなどが挙げられる。
水中から電気化学的に生成物が発生する正電位を印加する時間は、導電性基材の特性によって適宜選択することができる。一般的には導電性基材の耐久性、導電性基材表面に直接または間接的に接触する水生生物の付着量によって異なるが、導電性基材の劣化及び水の電解物質による汚染を最小限とするための設定を行うことが好ましい。その点を考慮すると一ヶ月あたり0.5〜24時間程度の印加がより好ましい。また、上記殺菌工程の設定時間と比較して、10分の1〜一万分の1程度の時間に設置して運用することも可能である。
本発明において化学物質による水の汚染を最小限となし、且つ、長期に渡り水質制御効果を維持するため、上記殺菌工程、脱離工程、洗浄(還元・分解)工程の各工程は、印加電位及び印加時間を適宜設定したうえで、状況に応じて任意の順序及び頻度で周期的に適用することができる。また、定電流の制御時に上記の脱離工程、洗浄(還元・分解)工程を適宜選択し、状況に応じて任意の順序及び頻度で周期的に適用することができる。
次に、溶出系の導電性基材の制御条件について説明する。
溶出系の導電性基材の溶出量は、その導電性基材を流れた電流から計算することができる。時間tにおける電流値をI(t)、溶出系の導電性基材の材質の分子量をm、その材質のイオン化に必要な電子の数をn、ファラデー定数をFとすると、溶出した導電性基材の重量Mを次の式で求めることができる。
M = {m × ∫I(t)dt}/(F × n)
電流値が一定のIであるとし、それを時間Tの間だけ通電したとすると、上式は次のようになる。
M = (m × I × T)/(F × n)
従って、溶出系の導電性基材の材質により、水質制御効果があると判明しているイオン濃度になるよう、溶出系の導電性基材に電流を流せばよい。これを実現するには、電流制御を行ってもよいし、電流を計測する限り、電位制御によってもよい。流す電流値と時間は、前記したように導電性基材の材質、水量、水が滞留しているか流れているか、などを考慮して決定する。
また、流れる電流値を計測し続けることにより、溶出系の導電性基材の溶出量を積算していくことが可能である。溶出系である以上、特に長期間の運転を想定する場合、ある程度の量が溶出したら導電性基材を交換する必要がある。電流値の計測によって溶出量を算出することができるため、所定の割合が溶出してしまったら、それ以上溶出させないように通電を停止する、また装置を通じて警告を発するなどのようにし、メンテナンスにかかるコストを低減することができる。
更に、非溶出系の導電性基材との組み合わせの制御により、溶出系の導電性基材のみ使用した場合と同等もしくはそれ以上の効果を得ながら、溶出系の導電性基材の溶出の程度を抑制し、より長期間に渡って、導電性基材の交換などのメインテナンスの手間を発生させないようにすることが可能である。
本発明により利用できる水は、海水、淡水など、特に限定されない。例えば、海水、河川の水、湖沼の水、水道水、飲料水、または各種緩衝液などが挙げられ、電気を通電する液体であれば、特に特定のものに限定されるものではない。また、対象となる生物も、それらの水中に存在する生物であれば特に限定されるものではない。
次に本発明の実施例を説明する。尚、本発明は、以下の実施例に限るものではなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。
図1には、本願発明になる電気化学的水質制御方法を用いた電気化学的水質制御装置の簡易的な電気的ブロック図を示す。ここで、前記電源1は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)2、OPアンプ3、OPアンプ4、OPアンプ5、及び電流検出抵抗6、電流検出抵抗7に、装置用の電源(図示せず)を加えたものである。図示しない装置用電源はMPU2及びOPアンプ3〜5に電力を供給する。装置用電源としては、AC100Vなどを整流して用いてもよいし、電池を使用してもよい。電源1は、非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、対極10、及び参照極11とリード線もしくはケーブルなどで電気的に接続している。
MPU2はCPU(中央処理装置)、ROM(読み出し専用メモリ)、RAM(読み書き可能メモリ)、D/A変換器(デジタル・アナログ変換器)、A/D変換器(アナログ・デジタル変換器)などを必要に応じて集積したマイクロプロセッサであるが、各要素に関して独立した部品を使用してもよい。MPU2は、ROMに予め収めたプログラムを読み出し、RAMやレジスタを作業領域としてCPUによる演算処理を実行する。OPアンプ3はMPU2の電圧指示に応じて非溶出系の導電性基材8に電圧を出力する。OPアンプ4はMPU2の電圧指示に応じて溶出系の導電性基材9に電圧を出力する。OPアンプ5はMPU2の電圧指示に応じて対極10に電圧を出力する。電流検出抵抗6及び電流検出抵抗7は、それぞれ非溶出系の導電性基材8及び溶出系の導電性基材9に流れる電流値を計測するためのものである。
MPU2は、非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、対極10、及び参照極11の電位をそれぞれ計測することができる。MPU2は、参照極11の電位を基準にして非溶出系の導電性基材8及び溶出系の導電性基材9の電位を算出して、それらが所定の電位になるようにOPアンプ3〜5の出力を調整することにより、電位制御を実現できる。
一方、MPU2は、電流検出抵抗6及び電流検出抵抗7の両端の電位を計測して、非溶出系の導電性基材8及び溶出系の導電性基材9にそれぞれ流れる電流を算出することができる。MPU2が、それらの電流計測値が所定の値になるようにOPアンプ3〜5の出力を調整することにより、電流制御を実現することができる。
以下の図においては電源1を省略し、非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、及び対極10の設置例のみ示す。参照極11は特に示さないが、前述した通り、前記導電性基材及び対極と通電可能な水中に存在する限り、その配置は特に限定されない。また、更に、前述した通り、予め必要な出力電圧が判明している場合、もしくは電流制御を主に行う場合などは、参照極11を特に必要としない。
(実施例1)
図2は実施例1の構成図である。
配管12の中を海水が一方向に流れる場合の一例である。内径150mmの塩化ビニル製の配管12の直線部に、非溶出系の導電性基材8として円筒状に加工したチタン(JIS2種相当、t0.5×w450×L500mm)、溶出系の導電性基材9として円筒状に加工した銀(t1.0×w450×L20mm)を流れの上流側に設置し、溶出したイオンが水中により広く行き渡るようにする。対極10としてはやはり円筒状に加工した鉄(t0.5×w450×L20mm)を設置した。本実施例においては、対極10から溶出する金属イオンが非溶出系の導電性基材8及び溶出系の導電性基材9に影響を与えることのないよう、対極10を非溶出系の導電性基材8と溶出系の導電性基材9の下流側に設置したが、特にこの配置に限るものではない。更に、基準電位を計測するため、図示しない参照極を設置した。非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、対極10及び参照極は、リード線などと接続し、それらを配管12の継ぎ手などから配管12の外側に導出して、電源(図示せず)に接続して制御した。
制御条件は以下のようにし、6ヶ月間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:1.2Vvs.SCE、90分
−0.6Vvs.SCE、45分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :0.5Vvs.SCE
6ヵ月経過時において、装置継続稼働状況の下、配管12中、本装置を設置した位置よりも下流側で採取した海水を、培地上にて培養して微生物増殖状態を、本装置を設置した位置よりも上流側で採取した海水での同様の微生物増殖状態と比較して実施例1を評価した。上流側で採取した海水に比べ下流側で採取した海水では微生物量が遙かに少ないことから実施例1の装置及び制御方法により、水中の微生物及び有機物量を十分に制御できることが確認された。
(実施例2)
図3は実施例2の構成図である。
生活排水の流入口13、及び流出口14が存在する場合の一例である。内径約50mmの塩化ビニル製のホース15をS字型に曲げて水のトラップ16を形成し、ホース15内のほぼ常時没水する部位に、非溶出系の導電性基材8として、後述する処理を施した、円筒形に加工した導電性基材を設置する。非溶出系の導電性基材8は、処理を施した面が接水する内側の面となるよう曲げ加工し、その裏面はエポキシ樹脂でシーリングして絶縁した。更に、常時没水する位置に、対極10として、円筒状に加工した鉄(t0.5×w150×L20mm)を設置する。一方、溶出系の導電性基材9として、円筒状に加工した銀(t1.0×w150mm×L20mm)を、常時没水はしない流入口13の付近に設置する。更に、基準電位を計測するため、図示しない参照極を常時没水する位置に設置した。非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、対極10及び参照極は、リード線などと接続し、それらをホース15の継ぎ手などからホース15の外側に導出して、電源(図示せず)に接続して制御した。特に、溶出系の導電性基材9については、常時通電をしておくと、水が流入し、流入した水によって溶出系の導電性基材9と対極10が電気的に接続されたときにのみ電流が流れ、溶出系の導電性基材9の溶出が発生する。
非溶出系の導電性基材8については、下記による処理にて作成を行った。
導電性基材の調整
チタン基板(JIS2種相当、t0.5×w150×L50mm)をアルコールで洗浄後、20℃の8重量%弗化水素水溶液中で2分間処理した後、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いでチタン基板を硫酸水溶液から取り出し、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。更に20℃の0.3重量%HF水溶液に2分間浸漬した後、水洗した。
水洗後、Pt(NH(NOを硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/リットル、pH約2、50℃に調整した状態の白金メッキ液中で15mA/cmで約50秒間のメッキをチタン基板の片面に対して行って、Pt分散析出させた。分散被覆量は1g/mであった。また、このときのチタン基板上へのPt被覆率は約40%であった。
このようにして、Ptを分散被覆したチタン基板を40℃の大気中で1時間加熱処理した。
次いで、塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir13.0g/リットル及びTa50.0g/リットル(金属換算)を含有する塗布液を調製し、マイクロピペットで1cm当たり2.7マイクロリットル秤量し、それを上記の様にして作製したPtを分散被覆したチタン基板上に塗布した後、室温で30分間真空乾燥させ、更に500℃の大気中で10分間焼成した。この工程を2回繰り返した。
次に外層を得るため、塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、イリジウム(Ir)50.0g/リットル及びタンタル(Ta)20.2g/リットル(モル混合比:70Ir−30Ta)を含有する塗布液を調製した後、この塗布液を用いて前記と同様の工程を8回繰り返して導電性基材とした。
制御条件は以下のようにし、1ヶ月間試験を行った。日常的に、生活排水が断続して流入するような環境下において行った。
非溶出系の導電性基材:1.1Vvs.SCE、60分
−0.1Vvs.SCE、20分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :5.0Vvs.SCE
(比較例1)
実施例2同様、内径約50mmの塩化ビニル製のホースをS字型に曲げて水のトラップ16を形成し、日常的に、生活排水が断続して流入するような環境下に1ヶ月間放置した。
1ヵ月経過時において、装置継続稼働状況の下、実施例2及び比較例1のトラップ16より水を回収し、コロニー法で評価した。コロニー法は酵母MY培地に回収した水1ミリリットルを均一に塗布し25℃で12時間培養し生じたコロニー数を計数し、比較例1に対する計数量の比を評価した。
実施例2において回収した水では比較例1において回収した水の場合に比べ、微生物量が遙かに少ないことから実施例2の装置及び制御方法により、水中の微生物及び有機物量を十分に制御できることが確認された。
以降の実施例において、非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、及び対極10については、以下に説明するようなものを使用した。
非溶出系の導電性基材8については、チタン基板(JIS2種相当、t0.5×w20×L100mm)を、実施例2における非溶出系の導電性基材の処理方法によって処理したものを用いた。この際、処理されていない片面をエポキシ樹脂でシーリングして絶縁し、表面で反応が発生しないようにした。
また溶出系の導電性基材9については、1mm厚の銀板(20mm×100mm)を用いた。
非溶出系の導電性基材8及び溶出系の導電性基材9と対になる対極10は、1mm厚のNi板(20mm×100mm)を用いた。
以降の実施例3〜5及び比較例2においては、人工海水(千寿製薬(株)製ニューマリンアートSF)を滅菌した滅菌海水を用いた。500ミリリットルビーカーに滅菌海水を満たし、ビーカー中に、上記の非溶出系の導電性基材、溶出系の導電性基材、対極及び参照極を設置して、それらに電源を接続した電気化学的水質制御装置を用いた。非溶出系の導電性基材、溶出系の導電性基材、対極はそれぞれ長辺100mmのうち80mmを没水させ、水面上に突出した部位にリード線を設置して、電源と接続した。
また、殺菌試験は、海洋細菌を用いて行った。海洋細菌はビブリオアルギノリティカスを用いた。滅菌海水を用いた菌体懸濁液(1.0×10cells/ミリリットル)を作成し、非溶出系の導電性基材8、溶出系の導電性基材9、対極10、及び参照極を設置して電位もしくは電流を印加した。
(実施例3)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:0.9Vvs.SCE
溶出系の導電性基材 :0.5Vvs.SCE
(実施例4)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:0.9Vvs.SCE、60分
−0.1Vvs.SCE、20分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :0.5Vvs.SCE
(実施例5)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。尚、溶出系の導電性基材に対して、12時間ごとに、およそ0.1ppm程度のイオンを溶出させるよう、通電制御を実施した。算出は前記の式に依った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:0.9Vvs.SCE、60分
−0.1Vvs.SCE、20分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :500μA、2分、12時間ごと
(実施例6)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。尚、非溶出系の導電性基材に対して200mA/mを印加する電流制御を実施した。非溶出系の導電性基材の没水部の面積を80mm×20mmとしたため、そこから電流値を算出した。
制御条件
非溶出系の導電性基材:160μA
溶出系の導電性基材 :0.5Vvs.SCE
(比較例2)
電気化学的水質制御装置を設置せず、恒温室(25℃)内に7日間放置した。
上記実施例3〜6及び比較例2の試験結果を表1に示す。試験終了後、ビーカー内の水を回収し、コロニー法で評価した。コロニー法は0.7%の寒天を含むマリンブロスと回収した水1ミリリットルと混釈し25℃で12時間培養し生じたコロニー数を計数し、比較例2に対する計数量の比を評価した。
実施例3〜6の場合には比較例2の場合に比べ、微生物量が遙かに少ないことから実施例3〜6の装置及び制御方法により、水中の微生物及び有機物量を十分に制御できることが確認された。
Figure 0004069060
以降の実施例7〜10及び比較例3においては、生活排水(社内食堂より採取)を用いた。生活排水は雑菌を含む。500ミリリットルビーカーに生活排水を満たし、ビーカー中に、前記非溶出系の導電性基材、溶出系の導電性基材、対極及び参照極を設置して、それらに電源を接続した電気化学的水質制御装置を用いて、電位もしくは電流を印加した。
(実施例7)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:1.1Vvs.SCE
溶出系の導電性基材 :5.0Vvs.SCE
(実施例8)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:1.1Vvs.SCE、60分
−0.1Vvs.SCE、20分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :5.0Vvs.SCE
(実施例9)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。尚、溶出系の導電性基材に対して、12時間ごとに、およそ0.1ppm程度のイオンを溶出させるよう、通電制御を実施した。算出は前記の式に依った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:1.1Vvs.SCE、60分
−0.1Vvs.SCE、20分 の繰り返し
溶出系の導電性基材 :500μA、2分、12時間ごと
(実施例10)
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。尚、非溶出系の導電性基材に対して200mA/mを印加する電流制御を実施した。非溶出系の導電性基材の没水部の面積を80mm×20mmとしたため、そこから電流値を算出した。
制御条件
非溶出系の導電性基材:160μA
溶出系の導電性基材 :0.5Vvs.SCE
(比較例3)
電気化学的水質制御装置を設置せず、恒温室(25℃)内に7日間放置した。
上記実施例7〜10及び比較例3の試験結果を表2に示す。試験終了後、ビーカー内の水を回収し、コロニー法で評価した。コロニー法は酵母MY培地に回収した水1ミリリットルを均一に塗布し25℃で12時間培養し生じたコロニー数を計数し、比較例3に対する計数量の比を評価した。
実施例7〜10の場合には比較例3の場合に比べ、微生物量が少ないことから実施例7〜10の装置及び制御方法により、水中の微生物及び有機物量を十分に制御できることが確認された。
Figure 0004069060
(実施例11)
実施例11においては、生活排水(社内食堂より採取)を用いた。500ミリリットルビーカーに生活排水を満たし、ビーカー中に、前記非溶出系の導電性基材、溶出系の導電性基材、対極及び参照極を設置して、それらに電源を接続した電気化学的水質制御装置を用いて、電位を印加した。また、本実施例に対する接水面の付着制御評価用に、電位を印加しないブランク材として前記非溶出系の導電性基材を、他の導電性基材、対極及び参照極に接触しないように設置した。
制御条件を以下のようにし、恒温室(25℃)内に配置して、7日間試験を行った。
制御条件
非溶出系の導電性基材:1.1Vvs.SCE
溶出系の導電性基材 :5.0Vvs.SCE
(比較例4)
比較例4においては、生活排水(社内食堂より採取)を用いた。500ミリリットルビーカーに生活排水を満たし、付着評価用に、電位を印加しないブランク材として前期非溶出系の導電性基材をビーカー内に設置し、恒温室(25℃)内に7日間放置した。
試験終了後、ビーカー内の水を回収し、コロニー法で評価した。コロニー法は酵母MY培地に回収した水1ミリリットルを均一に塗布し25℃で12時間培養し生じたコロニー数を計数し、比較例4に対する計数量の比を評価した。その結果、実施例11において回収した水では比較例4において回収した水の場合に比べ、微生物量が遙かに少ないことが判明した。また、試験終了後、接水面における付着制御効果の評価のために、実施例11の非溶出系の導電性基材の表面、実施例11の付着制御評価用に設置したブランク材としての非溶出系の導電性基材の表面、及び比較例4に設置したブランク材としての非溶出系の導電性基材の表面のそれぞれから菌を回収し、コロニー法で評価した。導電性基材の表面からの菌の回収は、導電性基材の表面を10ミリリットルの滅菌水で100回繰り返しピペッティングで洗浄して行った。コロニー法は酵母MY培地に回収した水1ミリリットルを均一に塗布し25℃で12時間培養し生じたコロニー数を計数し、比較例4に対する計数量の比を評価した。その結果、実施例11の非溶出系の導電性基材の表面、及び実施例11の付着制御評価用に設置したブランク材としての非溶出系の導電性基材の表面における微生物量は、比較例4に設置したブランク材としての非溶出系の導電性基材の表面における微生物量よりも遙かに少ないことが判明した。これらの結果から、実施例11の装置及び制御方法により、水中の微生物及び有機物量、及び接水面における微生物付着の量を十分に制御できることが確認された。
電気的ブロック図 実施例1の構成図 実施例2の構成図
符号の説明
1 電源
2 MPU
3,4,5 OPアンプ
6,7 電流検出抵抗
8 非溶出系の導電性基材
9 溶出系の導電性基材
10 対極
11 参照極
12 配管
13 流入口
14 流出口
15 ホース
16 トラップ

Claims (4)

  1. 少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材と、一つ以上の溶出系の導電性基材と、少なくとも前記非溶出系の導電性基材と前記溶出系の導電性基材に共通の一つ以上の対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により前記少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、前記電源により前記少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材に電圧を印加して該溶出系の導電性基材を溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御方法。
  2. 少なくとも二つ以上の導電性基材と、対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材を少なくとも一時は接水面となり、少なくとも一時は接水面とならない部位に設置し、前記電源により電圧を印加して、前記溶出系の導電性基材を接水面となったときのみ溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御方法。
  3. 少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材と、一つ以上の溶出系の導電性基材と、少なくとも前記非溶出系の導電性基材と前記溶出系の導電性基材に共通の一つ以上の対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により前記少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、前記電源により前記少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材に電圧を印加して該溶出系の導電性基材を溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御装置。
  4. 少なくとも二つ以上の導電性基材と、対極と、前記導電性基材及び前記対極に通電可能なように設置された電源とからなり、前記電源により少なくとも一つ以上の非溶出系の導電性基材に電圧を印加して該非溶出系の導電性基材表面で電気化学反応を発生させると共に、少なくとも一つ以上の溶出系の導電性基材を少なくとも一時は接水面となり、少なくとも一時は接水面とならない部位に設置し、前記電源により電圧を印加して、前記溶出系の導電性基材を接水面となったときのみ溶出させることによって、水中の微生物及び有機物量を制御することを特徴とする電気化学的水質制御装置。
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