JP4068547B2 - 車両懸架装置 - Google Patents

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本発明は、車両懸架装置に関し、特にモータを利用したショックアブソーバを有する車両懸架装置の技術に関する。
従来、各車輪のバネ下部材とバネ上部材間に配置され、車両の走行中に路面から車輪を介して伝達される振動や衝撃を吸収する車両の懸架装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の懸架装置は、モータにより減衰力を発生するとともに、そのモータを駆動してショックアブソーバのロッド長を変化させることにより車高調整することもできる。
特開2002−219920号公報
上記した従来の技術によると、通常の走行で考えられる程度を超えた過大な振動や衝撃が車輪を通じて懸架装置に伝達すると、急激な回転によってロッドとモータの連結部分が破損したり、モータや回生電流を発生させる回路が焼き付くといった事態が発生する可能性がある。こうした通常状態を超える不測の事態を考慮することも、より安全な車両設計を行う上で重要といえる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性をより向上させた車両懸架装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様における車両懸架装置は、バネ上部材とバネ下部材の間の減衰力を発生するモータと、前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定手段と、前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定力を変更する固定力調整手段と、を備える。モータは、電磁サスペンションの一部を構成する電動モータであってもよく、減衰力の発生とともにその回転により回生電流を発生させてもよい。モータは、車体や車体のフランジに固定されてもよい。固定手段は、モータをフランジに固定させるためのパッド、アクチュエータ等の固定機構であってもよい。固定力調整手段は、固定機構を制御する装置、車両状態センサ等の構成のうち少なくともいずれかを含んでもよい。前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の前記バネ下部材に対する相対的な変位の速度が所定値よりも大きい場合に、前記固定力を弱めてもよい。
本態様の車両懸架装置は、状況に応じてモータの固定力を変化させるので、通常時にはモータを車体に固定して車体の上下振動を減衰でき、必要に応じてモータの固定力を弱めて車体の上下振動の減衰力を弱めることができる。即ち、状況に応じてモータの固定力が変化されることにより、過大な上下振動に伴う過大な回転がモータに加わろうとしてもその回転力がモータ全体を供回りさせるので、モータ内に伝達される回転力が相対的に弱まる。従って、通常の走行で考えられる程度を越えた過大な回転によるモータや回生電流発生回路等の損傷を回避することができる。
また、この車両懸架装置においては、過大な上下振動に伴う過大な回転がモータに加わろうとするとモータの固定力が弱まるので、その過大な回転力がモータ全体を供回りさせてモータ内に伝達される回転力が相対的に弱まる。従って、モータや回生電流発生回路等の損傷を回避することができる。
本態様の車両懸架装置において、前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の前記バネ下部材に対する相対的な変位の速度が所定値よりも大きい場合に、前記固定力を解放してもよい。「固定力の解放」は、モータの固定力をほぼゼロにする変更であってもよい。この車両懸架装置においても、過大な上下振動に伴う過大な回転がモータに加わろうとしても、モータの供回りによりモータ内に伝達される回転力が弱まるので、モータや回生電流発生回路等の損傷を回避することができる。
本発明の別の態様もまた、車両懸架装置である。この装置は、バネ上部材とバネ下部材の間の減衰力を発生するモータと、前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定手段と、前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定力を変更する固定力調整手段と、を備える。前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の加速度の大きさに基づいて前記固定力を変更してもよい。この車両懸架装置は、バネ上部材の加速度に応じてモータの供回りの度合いを調節することができるので、過大な回転力によるモータや回生電流発生回路等の損傷を回避するだけでなく、通常時においてモータの減衰力の強弱を制御することもできる。
本態様の車両懸架装置において、前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の加速度の大きさに基づいて前記固定力を弱める。この車両懸架装置もまた、バネ上部材の加速度に応じてモータの供回りの度合いを調節できるので、モータや回生電流発生回路等の損傷を回避するだけでなく、通常時においても状況に応じてモータの減衰力を弱めることもできる。
本発明によると、耐久性がより向上した車両懸架装置を提供することができる。
(第1の実施の形態)
本実施の形態における車両懸架装置は電磁サスペンションであり、その電磁サスペンションに含まれる電動モータを車体のフランジに固定するとともに、その固定力を所定の場合に変更する。この車両懸架装置は、通常時には固定されたモータで車体の上下振動を減衰でき、必要に応じてモータの固定力を弱めて車体の上下振動の減衰力を弱めることができる。従って、通常考えられる程度を越えた過大な回転がモータに加わろうとしてもその回転力がモータ全体を供回りさせるので、モータ内に伝達される回転力が相対的に弱まり、モータや回生電流生成回路等の損傷を回避することができ、モータの耐久性をより向上させることができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両懸架装置の構成を示す。電磁サスペンション10は、車両のバネ上とバネ下の間の減衰力をモータ20を用いて発生するアブソーバ12を備え、この電磁サスペンション10を介して車体と車輪が接続される。なお、コイルスプリング22により支えられる車体側の部材を「バネ上」と呼び、コイルスプリング22により支えられていない車輪側の部材を「バネ下」と呼ぶ。電磁サスペンション10は、電子制御装置(以下、電子制御装置を「ECU」と表記する)により制御される。ECUは、CPU、RAM、ROMを備えて構成される。
電磁サスペンション10は、アブソーバ12とコイルスプリング22を含む。アブソーバ12は、モータ20、ボールねじ24、ボールねじナット26、ロッド28、アウターシェル30、軸受31、34、36およびダストシール38を備える。軸受31はロッド28内部においてボールねじ24を回動可能に支持し、また軸受34および36は、アウターシェル30内部においてロッド28を摺動可能に支持する。ダストシール38は、アウターシェル30内にゴミなどの異物が入り込むのを防止する。
電磁サスペンション10は、第1取付部40において車体側の構成に取り付けられ、また第2取付部46において車輪側の構成に取り付けられる。コイルスプリング22は、第1取付部40近傍の車体面とスプリングシート42の間に縮設され、予め所定の荷重を与えられる。
コイルスプリング22は車両のバネ上部分の重量を支持し、また路面からの振動や衝撃が車輪を通して車体に伝わるのを抑制する。アブソーバ12は、コイルスプリング22による車体の上下振動を減衰させる。このアブソーバ12は、モータ20を用いて車両のバネ上とバネ下の間に減衰力を発生させることができ、制御応答性に優れる。
ボールねじ24、ロッド28およびアウターシェル30は同軸に配置されている。アウターシェル30には、雌ねじ部分を有するボールねじナット26が内設される。ボールねじ24は雄ねじ部分を有し、ボールねじナット26に螺合した状態にある。モータ20はボールねじ24の一端を回動可能にセレーションで支持する。一方、モータ20に駆動電流が与えられてモータ20が駆動されると、ボールねじ24がボールねじナット26に対して相対回転し、その回転運動が直線運動に変換されるので、モータ20に対してアウターシェル30が下方に押し下げられ、または上方に引き上げられる。
車両が良路を走行している場合、ECUは電磁サスペンション10のモータ20に与える駆動電流の値を、例えば0Aである基準電流値に設定する。路面に凹凸がある場合、ECUは、車体に設けられる加速度センサによる検出結果から、車体の上下方向の加速度を測定する。車輪が上下動する場合、ロッド28とアウターシェル30との相対運動によりコイルスプリング22が伸縮する。このとき、ボールねじ24がボールねじナット26に対して相対回転することにより、モータ20が回転して発電機として作用し、このときに生じる抵抗力により減衰力が発生する。ECUは、コイルスプリング22の伸縮を抑制する方向の駆動電流、すなわちモータ20内部で電磁誘導により生じた電流とは逆向きの駆動電流をモータ20に与えてもよい。ECUは、車体の上下方向の加速度等に応じてモータ20に与える駆動電流を設定し、減衰力を調整してもよい。
モータ20は、車体に設けられた略筒状のフランジ16内部に配置されており、フランジ16の内壁に設けられた固定機構14によって固定される。固定機構14は、通常時において、モータ20に対して少なくとも2方向以上から押圧力を発することにより、モータ20を挟持固定する。通常の走行状態では考えられない程度の過大な振動や衝撃によって過大な回転力がモータ20に加わろうとするとき、固定機構14は固定力を弱める。これにより、過大な回転力がモータ20を供回りさせるので、モータ20や回生電流生成回路等の焼き付きを防止でき、またモータ20とボールねじ24のセレーション部分の破損を防止できる。固定機構14によるモータ20の固定力は、ECUによって制御される。固定機構14がモータ20の外周面に当接する箇所を含む固定部分32については、図2で説明する。
図2は、図1の固定部分32を拡大した図と固定機構14を制御するための構成を示す。固定機構14は、可動部15とパッド18を含む。パッド18は、モータ20に当接する摩擦部材であり、モータ20へ押圧されたときの摩擦力によってモータ20を把持する。パッド18は、摩擦係数が高く摩耗の少ない燒結金属や繊維等の材料で形成される。可動部15は、アクチュエータ50により駆動され、パッド18をモータ20へ押圧する押圧力を発生する。可動部15およびアクチュエータ50は、例えば油圧式、電磁ソレノイド、ピエゾ素子等のアクチュエータを構成する。
ストロークセンサ54は、車体の上下動の相対変位であるストロークの速度を車輪ごとに検出する。ストロークセンサ54は、例えば車軸の回転角からストローク速度を求めてもよいし、モータ20の回転角からストローク速度を求めてもよい。ECU52は、ストロークセンサ54で検出したストローク速度に応じてアクチュエータ50の制御量を算出し、算出した制御量をアクチュエータ50へ送る。アクチュエータ50は、ECU52から受け取る制御量の情報に基づいて可動部15を駆動してパッド18をモータ20へ押圧する押圧力を発生させ、または変化させる。通常状態においては、ECU52は、固定機構14によるモータ20の固定力が最大となるようアクチュエータ50の制御量を算出する。モータ20に加わる回転力が所定の限界値に達した場合、ECU52は、固定機構14によるモータ20の固定力が弱まる、または解除されるようアクチュエータ50の制御量を算出する。モータ20に加わる回転力の限界値は、例えば通常状態においてモータ20に加わることが想定される回転力の最大値であり、その値を超えた回転力が加わるとモータ20を損傷させる等の不具合を生じさせるおそれのある値である。
図3は、ECU52がモータ20の固定力を変化させる過程を示すフローチャートである。通常状態においては、ECU52は固定機構14によってモータ20をフランジ16に固定させて減衰力が発生可能な状態におく。ECU52は、ストロークセンサ54で検出されたストローク速度が所定の限界値以上であると判定した場合(S10Y)、固定機構14によるモータ20の固定を解除するようアクチュエータ50を制御する(S12)。S10において、ストロークセンサ54で検出されたストローク速度が所定の限界値未満であるとECU52が判定した場合(S10N)、ECU52はS12をスキップして通常状態のモータ20の固定を維持させる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態における車両懸架装置は、第1の実施の形態におけるモータ20等の損傷を回避する他、車体の加速度に応じてモータ20による減衰力を制御する点で第1の実施の形態と異なる。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
図4は、第2の実施の形態における固定部分32を拡大した図と固定機構14を制御するための構成を示す。本実施形態におけるECU52は、ストロークセンサ54の検出結果に応じてアクチュエータ50の制御量を算出する他、さらに加速度センサ56による検出結果に応じてアクチュエータ50の制御量を算出する。加速度センサ56は、車体の上下方向、前後方向、横方向等の加速度を車輪ごとに検出する。ECU52は、車体の各方向への加速度に示される車両の姿勢状態に応じて、固定機構14によるモータ20の固定力の強弱を制御する。これにより、ECU52はモータ20の減衰力を状況に応じて変化させることができ、良好な操縦安定性と良好な乗り心地の両立を図ることができる。
図5は、第2の実施の形態においてECU52が固定機構14によるモータ20の固定力を変化させる過程を示すフローチャートである。通常状態においては、ECU52は固定機構14によってモータ20をフランジ16に固定させて減衰力が発生可能な状態におく。ECU52は、ストロークセンサ54で検出されたストローク速度が所定の限界値以上であると判定した場合(S20Y)、固定機構14によるモータ20の固定を解除するようアクチュエータ50を制御する(S22)。S20において、ストロークセンサ54で検出されたストローク速度が所定の限界値未満であるとECU52が判定した場合(S20N)、ECU52は加速度センサ56が検出した加速度に応じて固定機構14の最適な制御量を算出してアクチュエータ50へ送る(S24)。
(第3の実施の形態)
本実施の形態における車両懸架装置は、モータ20の固定力を、ストローク速度や加速度等の車両状態量に応じてECU52が制御する構成を有しない点で第1、2の実施の形態と異なる。以下、第1、2の実施の形態との相違点を中心に説明する。
図6は、第3の実施の形態における固定部分32を拡大した図と固定機構14を制御するための構成を示す。本実施の形態における固定機構14は、パッド18とコイルスプリング60を含む。コイルスプリング60は、所定のセット荷重にて圧縮されており、その反発力でパッド18をモータ20に押圧することにより、モータ20を固定する。モータ20へ加わろうとする過大な回転力がコイルスプリング60のセット荷重を超えた場合、その回転力はモータ20を供回りさせることとなり、過大な回転力が逃がされる。これにより、モータ20の内部に加わる回転力が弱まるので、モータ20や回生電流生成回路等の損傷を回避することができる。本実施の形態によれば、モータ20等の損傷を比較的簡易または安価な機械的構造にて回避することができる。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、その様々な変形例もまた本発明の態様として有効である。例えば、各実施の形態においてはモータ20をフランジ16に固定する構成を説明したが、変形例においてはモータ20をフランジ16以外の車体に固定する構成としてもよい。
本発明の第1の実施の形態に係る車両懸架装置の構成を示す図である。 図1の固定部分を拡大した図と固定機構を制御するための構成を示す図である。 ECUがモータの固定力を変化させる過程を示すフローチャートである。 第2の実施の形態における固定部分を拡大した図と固定機構を制御するための構成を示す図である。 第2の実施の形態においてECUが固定機構によるモータの固定力を変化させる過程を示すフローチャートである。 第3の実施の形態における固定部分を拡大した図と固定機構を制御するための構成を示す図である。
符号の説明
10 電磁サスペンション、 12 アブソーバ、 14 固定機構、 15 可動部、 16 フランジ、 18 パッド、 20 モータ、 32 固定部分、 50 アクチュエータ、 52 ECU、 54 ストロークセンサ、 56 加速度センサ、 60 コイルスプリング。

Claims (4)

  1. バネ上部材とバネ下部材の間の減衰力を発生するモータと、
    前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定手段と、
    前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定力を変更する固定力調整手段と、
    を備え
    前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の前記バネ下部材に対する相対的な変位の速度が所定値よりも大きい場合に、前記固定力を弱めることを特徴とする車両懸架装置。
  2. 前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の前記バネ下部材に対する相対的な変位の速度が所定値よりも大きい場合に、前記固定を解放することを特徴とする請求項1に記載の車両懸架装置。
  3. バネ上部材とバネ下部材の間の減衰力を発生するモータと、
    前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定手段と、
    前記モータを前記バネ上部材へ固定するための固定力を変更する固定力調整手段と、
    を備え、
    前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の加速度の大きさに基づいて前記固定力を変更することを特徴とする車両懸架装置。
  4. 前記固定力調整手段は、前記バネ上部材の加速度の大きさに基づいて前記固定力を弱めることを特徴とする請求項に記載の車両懸架装置。
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