JP4068494B2 - 通信データ中継方法および車々間通信システム - Google Patents

通信データ中継方法および車々間通信システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車々間で各種のメッセージを含む通信データを送受信する通信データ中継方法および車々間通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、走行中の車両と車両の間を無線で接続し、各種の通信データを送受信する車々間通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この車々間通信システムでは、車両に搭乗しているユーザが領域を指定し、この領域内を走行中の車両との間で通信を行う2種類の通信方式として近車通信モードと遠車通信モードを備えている。近車通信モードは、無線による直接通信によって通信データを送受信する通信方式であり、比較的近くの車両との間の通信に用いられる。また、遠車通信モードは、通信相手となる車両が存在する領域を指定した後この地域内を走行中の車両の電話番号を取得し、この電話番号を用いて電話を掛けて通信データを送受信する通信方式であり、比較的遠くの車両との間の通信に用いられる。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−47975号公報(第14−28頁、図1−44)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1に開示された近車通信モードによって特定の車両との間で通信を行う場合に、原則として通信電波が届く範囲を走行中の車両が通信先となる。一般には、一の車両から送信される電波を他の車両等において中継することができれば、遠隔地の領域内を走行中の車両との間で通信を行うことが可能であるが、通信データの送信元車両、送信先車両、中継車両のそれぞれが互いに無関係に移動しているため、送信先車両に通信データが届かないおそれがあるという問題がある。また、送信元車両から通信データをブロードキャスト配信することにより、順次その周辺の車両に通信データを伝えることにより、最終的に送信先車両において通信データを受信する通信方法も考えられるが、送信元車両と送信先車両とが距離的に離れている場合に通信量が膨大になるという問題がある。
【0005】
これに対し、上述した特許文献1に開示された遠車通信モードによって特定の車両との間で通信を行う場合には、送信先車両の電話番号を指定してこの車両のみに回線接続が行われるため、通信量が必要最小限で済むとともに、携帯電話の通話可能範囲を走行中の送信先車両に対して確実に通信データを送ることができるが、その前提として、車両の外部(例えば、電話局)に車載端末データ・ベースを備える必要があり、車両の外部に新たな設備を追加できない場合には採用が困難となる。このため、車載装置の追加のみで実現可能な通信システムが望まれていた。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、確実に送信先車両に通信データを送ることができるとともに、通信量を削減することができる通信データ中継方法および車々間通信システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の通信データ中継方法は、複数の車両のそれぞれに搭載された中継端末装置を用いて通信データを中継して所定領域内に存在する送信先端末装置に送っており、一の中継端末装置は、所定領域に対応して決められた一あるいは複数の車両に搭載された他の中継端末装置に到達するまでは第1の特定方向に存在する通信可能な他の中継端末装置に向けて通信データを中継し、到達した後は方向に依存しない通信可能な他の中継端末装置に向けて通信データを中継する。このように、所定領域に対応して決められた車両に到達するまでは特定方向に存在する車両の中継端末装置のみに通信データが中継されるため、周辺の全ての車両に対して通信データを送る場合に比べて通信量を削減することが可能になり、通信帯域を有効利用することができる。また、所定領域に対応して決められた車両に到達した後は、方向に依存しない中継を行うことにより、所定領域内に存在する送信先端末装置に確実に通信データを送ることが可能になる。
【0008】
また、上述した第1の特定方向は、通信データの送信元端末装置から所定領域に対応して設定された目標位置に向かう方向であり、送信元端末装置の位置と目標位置とによって中継対象となる中継端末装置が決定されることが望ましい。特に、上述した目標位置は所定領域の中心地点であることが望ましい。これにより、確実に送信先端末装置が存在する特定領域に向けて通信データを中継することが可能になる。
【0009】
また、上述した所定領域に対応して決められた車両とは、所定領域の中心地点に最も近い車両であることが望ましい。これにより、所定領域内に存在する全ての送信先端末装置に対して確実に通信データを送信することが可能になり、しかも中心地点に最も近い車両に到達するまでは特定方向の車両の中継端末装置のみに通信データが中継されるため、さらに通信量を削減することが可能になる。
【0010】
また、上述した第1の特定方向に存在する通信可能な中継端末装置に向けた通信データの中継は、中継端末装置を特定して行われることが望ましい。これにより、通信データを受信する中継端末装置での処理の負担を軽減することができる。
【0011】
また、上述した方向に依存しない通信可能な中継端末装置に向けた通信データの中継は、中継端末装置を特定せずに行われるブロードキャスト配信による通信データの送信であることが望ましい。これにより、通信データを送信する側の中継端末装置における処理の負担を軽減するとともに、この中継端末装置の周囲に存在する他の中継端末装置に対して確実に通信データを送信することができる。
【0012】
また、上述したブロードキャスト配信による通信データの送信は、あらかじめ設定された中継回数分繰り返されることが望ましい。あるいは、上述したブロードキャスト配信による通信データの送信は、通信データを中継する中継端末装置が所定領域内に含まれる間繰り返されることが望ましい。これにより、不必要になった通信データが中継されることを防止して、通信量を削減しつつ通信帯域の有効利用を図ることができる。
【0013】
また、上述した送信先端末装置に送られる通信データには所定の送信メッセージとともにこの通信データを送信した送信元端末装置が搭載された車両の走行予定経路が含まれており、送信先端末装置は、走行予定経路上を走行中の車両に搭載された送信元端末装置に向けて応答メッセージが含まれる通信データを送信することが望ましい。これにより、走行中の車両に搭載された送信元端末装置に対して、確実に応答メッセージを送り返すことが可能になる。
【0014】
また、上述した応答メッセージが含まれる通信データを受信した一の中継端末装置は、走行予定経路上を走行中の車両に搭載された送信元端末装置の近傍の他の中継端末装置に到達するまでは第2の特定方向に存在する通信可能な他の中継端末装置に向けて応答メッセージが含まれる通信データを中継し、到達した後は方向に依存しない通信可能な他の中継端末装置に向けて通信データを中継することが望ましい。応答メッセージが含まれる通信データを中継する場合にも特定方向に沿った通信データの中継と方向に依存しない通信データの中継とを組み合わせることにより、さらに通信量の削減、通信帯域の有効利用を図りつつ、確実に通信データを送信元端末装置に対して送ることができる。
【0015】
また、上述した第2の特定方向は、応答メッセージが含まれる通信データが送信元端末装置に到達する到達予測時刻に送信元端末装置を搭載した車両が走行中の走行予定経路上の走行予測位置に向かう方向であり、送信先端末装置の位置と走行予測位置とによって中継対象となる中継端末装置が決定されることが望ましい。これにより、送信元端末装置が搭載された移動中の車両に向けて通信データを確実に中継することが可能になる。
【0016】
また、上述した送信先端末装置は、送信元端末装置を搭載した車両の走行速度と、送信元端末装置が通信データを送信した時刻から到達予測時刻までの所要時間とに基づいて、走行予測位置を計算することが望ましい。これにより、応答メッセージが含まれる通信データが送信元端末装置に到達する際の車両位置を正確に予測することが可能になり、この通信データを確実に送信元端末装置に送ることができる。
【0017】
また、方向を特定した通信データの送信動作における通信可能距離を、方向を特定しない通信データの送信動作における通信可能距離よりも長く設定することが望ましい。これにより、中継端末装置を搭載した車両が比較的離れた状態で点在する場合であっても、遠隔地の所定領域内に存在する送信先端末装置に対して確実に通信データを中継することができる。また、1回の送信距離を長くすることにより、通信データの中継回数を減らすことができるため、これに伴って通信量の削減が可能になる。
【0018】
また、方向を特定した通信データの送信動作と、方向を特定しない通信データの送信動作とで、通信チャンネル、通信速度、通信周波数の少なくとも一つを異ならせることが望ましい。これにより、送信先端末装置に近づいた際の通信をそれ以前の通信と区別して優先させること等が可能になり、無駄な通信量を削減することができる。
【0019】
また、本発明の車々間通信システムは、送信元端末装置から送信された通信データを一あるいは複数の車両のそれぞれに搭載された中継端末装置を用いて中継して所定領域内に存在する送信先端末装置に送っており、中継端末装置は、送信元端末装置あるいは他の中継端末装置から送信された通信データを受信する第1の受信手段と、自装置が所定領域に対応して決められた一あるいは複数の車両に搭載されたものである場合、あるいは、通信データが所定領域に対応して決められた一あるいは複数の車両に搭載された他の中継端末装置から送られてきた場合のいずれかに該当するか否かを判定する判定手段と、判定手段によって該当する旨の判断がなされたときに、方向に依存しない通信可能な他の中継端末装置あるいは送信先端末装置を中継対象として設定し、該当しない旨の判断がなされたときに第1の特定方向に存在する通信可能な他の中継装置あるいは送信先端末装置を中継対象として設定する中継先設定手段と、中継先設定手段によって設定された中継対象の中継端末装置あるいは送信先端末装置に向けて通信データを送信する第1の送信手段とを備えている。このように、所定領域に対応して決められた車両に到達するまでは特定方向に存在する車両の中継端末装置のみに通信データが中継されるため、周辺の全ての車両に対して通信データを送る場合に比べて通信量を削減することが可能になり、通信帯域を有効利用することができる。また、所定領域に対応して決められた車両に到達した後は、方向に依存しない中継を行うことにより、所定領域内に存在する送信先端末装置に確実に通信データを送ることが可能になる。
【0020】
また、上述した中継端末装置は、通信可能範囲に存在する他の中継端末装置および送信先端末装置の検出を所定の時間間隔で行う端末検出手段をさらに備えることが望ましい。これにより、所定方向に存在する車両の中継端末装置を検出し、この検出した中継端末装置のみに通信データを確実に送信することが可能になる。
【0021】
また、上述した送信元端末装置から送信される通信データには、送信元端末装置が搭載された車両の位置と、所定領域に含まれる目標位置とが含まれており、中継先設定手段は、これらの位置情報に基づいて第1の特定方向を決定することが望ましい。これにより、確実に送信先端末装置が存在する特定領域に向けて通信データを中継することが可能になる。
【0022】
また、上述した送信元端末装置から送信される通信データには、送信元端末装置が搭載された車両の走行予定経路が含まれており、送信先端末装置は、中継端末装置によって中継された通信データを受信する第2の受信手段と、通信データに含まれる走行予定経路上を走行中の車両に搭載された送信元端末装置に向けて応答メッセージが含まれる通信データを送信する第2の送信手段とを備えることが望ましい。これにより、走行中の車両に搭載された送信元端末装置に対して、確実に応答メッセージを送り返すことが可能になる。
【0023】
また、上述した送信元端末装置から送信される通信データには、この通信データを送信した送信開始時刻がさらに含まれており、送信先端末装置は、第2の受信手段によって受信された通信データに含まれる走行予定経路および送信開始時刻と、送信元端末装置を搭載した車両の走行速度とに基づいて、応答メッセージが含まれる通信データが送信元端末装置に到達する到達予測時刻を計算する到達予測時刻計算手段をさらに備え、送信先端末装置の第2の送信手段から送信される通信データには、到達予測時刻に送信元端末装置が搭載された車両が走行中の走行予定経路上の走行予測位置が含まれており、応答メッセージが含まれる通信データを受信した一の中継端末装置の中継先設定手段は、送信先端末装置の位置と走行予測位置とによって中継対象となる第2の特定方向を決定し、この第2の特定方向に存在する通信可能な他の中継端末装置に向けて通信データを中継することが望ましい。これにより、応答メッセージが含まれる通信データが送信元端末装置に到達する際の車両位置を正確に予測することが可能になり、送信元端末装置が搭載された移動中の車両に向けて通信データを確実に中継し、この通信データを確実に送信元端末装置に送ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車々間通信ネットワークシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車々間通信ネットワークシステムにおけるデータ送信の概要を示す図である。本実施形態の車々間通信ネットワークシステムでは、一の車両Aから所定領域S内を走行する他の車両に向けて特定のメッセージを含む通信データを送信する際に、最初はこの領域Sに向かう方向に沿って通信データが中継され、領域S内の所定位置(目標位置)周辺ではブロードキャスト配信によって通信データが中継される。
【0025】
図2は、通信データの送受信を行う各車両に搭載された車載装置の全体構成を示す図である。
図2に示すように、各車両に搭載された車載装置には、車載端末装置100、ディスプレイ装置150、ナビゲーション装置200、アプリケーション処理装置300、GPS装置400、自律航法センサ410が含まれている。
【0026】
車載端末装置100は、他の車両に搭載された車載端末装置100との間で無線通信を行うことにより、所定のフォーマットを有する通信データを送受信する。このために、車載端末装置100は、端末制御部110、メモリ130、送信部132、受信部134、アンテナ切替部136、アンテナ138、時計140、操作部142を含んで構成されている。
【0027】
端末制御部110は、メモリ130に格納された所定の動作プログラムを実行することにより、車載端末装置100の全体動作を制御する。メモリ130には、端末制御部110によって実行される動作プログラムの他に、この車載端末装置100に割り当てられた固有の識別番号や各種のユーザ情報等が格納されている。
【0028】
送信部132は、端末制御部110から出力される送信データを変調した信号を、他の車両に向けてアンテナ切替部136を介してアンテナ138から送信する処理を行う。また、受信部134は、他の車両から送信されてアンテナ138に到達した信号をアンテナ切替部136を介して受信し、所定の復調処理を行う。アンテナ切替部136は、端末制御部110から入力される送受信切替信号に基づいて、アンテナ138を送信部132あるいは受信部134に選択的に接続する。
【0029】
時計140は、現在時刻を測定する。操作部142は、利用者が各種の指示を入力するためのものである。
また、図2に示すディスプレイ装置150は、車載端末装置100およびナビゲーション装置200に接続されており、各種の操作画面や設定画面あるいはナビゲーション装置200から出力される地図画像等を表示する。
【0030】
ナビゲーション装置200は、各種のナビゲーション動作を行うものであり、車両位置計算部210、地図描画処理部212、経路探索処理部214、目標位置設定部216を備えている。また、このナビゲーション装置200にはGPS装置400と自律航法センサ410が接続されている。GPS装置400は、GPSアンテナとこのGPSアンテナで受信した衛星の電波を解析する演算部とを有しており、自車両の位置(経度、緯度)を示す車両位置信号を出力する。また、自律航法センサ410は、所定距離間隔で出力される車速パルスを測定することにより車両の走行速度を検出する車速センサと、ジャイロ出力に基づいて車両の方位を検出する方位センサとを備えており、これらのセンサ検出信号を出力する。GPS装置400から出力される自車両の位置情報や自律航法センサ410から出力されるセンサ検出信号は、車載端末装置100にも送られる。
【0031】
車両位置計算部210は、GPS装置400から出力される車両位置信号や自律航法センサ410から出力されるセンサ検出信号に基づいて車両位置を計算する。例えば、走行軌跡と地図上の道路形状とを比較するマップマッチング処理が行われて、正確な車両位置の計算が行われる。地図描画処理部212は、車両位置計算部210によって計算された自車両の走行位置周辺の地図画像を描画する処理を行う。描画された地図画像は、ディスプレイ装置150に表示される。経路探索処理部214は、所定の目的地までの走行経路を探索したりこの走行経路に沿って車両の走行を案内する。例えば、走行経路を示す画像が描画され、地図画像に重ねて表示されることにより車両の走行案内が行われる。目標位置設定部216は、ナビゲーション装置200による地図表示機能を用いて通信データの送信対象となる特定領域内の目標位置を設定する動作を行う。
【0032】
アプリケーション処理装置300は、車載端末装置100に対してメッセージの送信を指示したり、受信したメッセージを用いて所定の処理を行う。例えば、車載コンピュータによってアプリケーション処理装置300が構成されている。図3は、端末制御部110の詳細構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、端末制御部110は、通信処理部112、自車情報取得部114、目標位置設定部116、データ送信処理部118、データ受信処理部120を備えている。
【0033】
通信処理部112は、端末制御部110によって行われる通信データの送信および受信に関する一連の処理を行う。例えば、アプリケーション処理装置300から送信対象のメッセージが入力されるとこのメッセージを含む送信データを作成する処理が行われる。また、メッセージが含まれる通信データが受信されると、メッセージを抽出してアプリケーション処理装置300に送ったり、この通信データを他の車両に向けて中継する処理が行われる。
【0034】
自車情報取得部114は、自車両がメッセージを含む通信データの送信元となる場合に、自車両の車両位置、通信データの送信開始時刻、走行予定経路、走行速度を自車情報として取得する。具体的には、ナビゲーション装置200の車両位置計算部210による計算結果が自車両の車両位置として取得される。また、時計140によって測定された現在時刻(あるいは現在時刻に所定時間を加算した時刻)が送信開始時刻として取得される。経路探索処理部214による経路探索処理によって得られた経路が走行予定経路として取得される。走行速度は、自律航法センサ410に含まれる車速センサによって検出された走行速度が用いられる。
【0035】
目標位置設定部116は、所定の領域内を走行する他の車両に向けてメッセージを送信する際に、この領域内の所定位置を目標位置として設定する。アプリケーション処理装置300によって目標位置が指定されている場合にはその指定された目標位置がそのまま用いられる。また、目標位置の設定は、車載端末装置100の操作部142を用いて行うことができる。例えば、ディスプレイ装置150に所定の目標位置設定画面を表示させた状態で操作部142を操作して、住所を入力したり、経度および緯度を入力したり、特定の交差点名称を入力したりすることにより目標位置の設定が行われる。また、目標位置の設定は、ナビゲーション装置200を用いて行うこともできる。例えば、ナビゲーション装置200によってディスプレイ装置150に地図画像を表示させた状態で、操作部142を操作して(ナビゲーション装置200に専用の操作部が備わっている場合にはこの操作部を操作して)、地図画像上の位置を指定することにより目標位置の設定が行われる。
【0036】
データ送信処理部118は、この車載端末装置100から他の車両に向けて通信データを送信する処理を行う。このデータ送信処理部118から出力された通信データは、送信部132およびアンテナ切替部136を介してアンテナ138から送信される。
【0037】
データ受信処理部120は、他の車両から送信された通信データを受信する処理を行う。この通信データは、アンテナ138およびアンテナ切替部136を介して受信部134で受信され、データ受信処理部120に入力される。
図4は、本実施形態の車々間で送受信される通信データのフォーマットを示す図である。図4に示すように、本実施形態で用いられる通信データには、「送信先アドレス」、「送信元アドレス」からなる「ヘッダ部」と「データ部」が含まれている。
【0038】
「送信先アドレス」には、2台の車両間で通信データを送受信する際の送信先の車両に搭載された車載端末装置100に付与された識別番号が格納される。また、「送信元アドレス」には、2台の車両間で通信データを送受信する際の送信元の車両に搭載された車載端末装置100に付与された識別番号が格納される。例えば、図1において車両C1から車両D2に対して通信データを送信する場合には、「送信先アドレス」には車両D2に搭載された車載端末装置100に付与された識別番号が格納され、「送信元アドレス」には車両C1に搭載された車載端末装置100に付与された識別番号が格納される。なお、上述した送信先アドレスと送信元アドレスは、一の車載端末装置100を識別するために用いられるが、必ずしも車載端末装置100の識別番号である必要はなく、各車両に固有な情報(例えば車両番号)やその他の固有情報を用いるようにしてもよい。また、本実施形態の通信データは、ブロードキャスト配信を行う場合にも使用されるが、この場合には上述した「送信先アドレス」には、ブロードキャスト配信を示す特定の値が格納される。
【0039】
「データ部」は、メッセージの送信元となる車両から送信先となる車両に対して送られるメッセージそのもの(送信メッセージ)とその付随情報が格納される。例えば、図1において車両Aから領域S内の車両に対してメッセージを送る場合を考えると、車両Aから送信された通信データに含まれるこのデータ部は、途中の車両B2、C2等で中継される際にそのままの内容が維持される。
【0040】
「データ部」には、「目標位置」、「送信元アドレス」、「送信元車両位置」、「送信開始時刻」、「走行予定経路」、「走行速度」「メッセージ」が含まれている。「目標位置」には、メッセージの送信元の車両Aに対応する目標位置設定部116によって設定された目標位置が格納される。「送信元アドレス」は、メッセージの送信元の車両Aに搭載された車載端末装置100の識別番号が格納される。「送信元車両位置」、「送信開始時刻」、「走行予定経路」、「走行速度」には、メッセージの送信元の車両Aに対応する自車情報取得部114によって取得されたこれらの自車情報が格納される。
【0041】
図1に示した車両Aに搭載された車載端末装置100が送信元端末装置に、車両B1〜B5、C1〜C4、D1〜D4のそれぞれに搭載された車載端末装置100が中継端末装置に、領域S内を走行中の車両E1〜E3、F1〜F5のそれぞれに搭載された車載端末装置100が送信先端末装置に対応する。なお、車両E1〜E3、F1〜F5のそれぞれに搭載された車載端末装置100は、中継端末装置を兼ねている。
【0042】
また、中継端末装置としての車載端末装置100において、アンテナ138、アンテナ切替部136、受信部134、データ受信処理部120が第1の受信手段に、通信処理部112が判定手段、中継先設定手段、端末検出手段に、データ送信処理部118、送信部132、アンテナ切替部136、アンテナ138が第1の送信手段にそれぞれ対応する。
【0043】
また、送信元端末装置としての車載端末装置100において、アンテナ138、アンテナ切替部136、受信部134、データ受信処理部120が第2の受信手段に、通信処理部112が到達予測時刻計算手段に、通信処理部112、データ送信処理部118、送信部132、アンテナ切替部136、アンテナ138が第2の送信手段にそれぞれ対応する。
【0044】
本実施形態の車々間通信ネットワークシステムはこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
本実施形態の車々間通信ネットワークシステムに含まれる各車載端末装置100は、自装置の通信可能エリア内を走行中の他の車両の車両位置とこれらの車両に搭載された車載端末装置100の識別番号を把握する処理を所定のタイミングで実施している。
【0045】
図5は、通信可能エリア内に存在する他の車両の車両位置等を検出する動作手順を示す流れ図である。
各車両に搭載された車載端末装置100内の通信処理部112は、送信部132から送信される信号が直接到達可能な通信可能エリア内を走行中の他の車両に対して所定の確認データを送り、この確認データに対する応答データを受信することにより、他の車両に関する情報を取得する確認処理を実施する(ステップ100)。確認データを受信した各車両の車載端末装置100から送り返されてくる応答データには、応答データの送信元車両の車両位置と、この送信元車両に搭載された車載端末装置100に付与された識別番号が含まれている。通信可能エリア内の各車両から送られてくるこの応答データを受信した車載端末装置100内の通信処理部112は、通信可能車両テーブルの作成あるいは更新を行う(ステップ101)。作成あるいは更新された通信可能車両テーブルは、メモリ130に格納される。
【0046】
図6は、通信可能車両テーブルの内容を示す図である。例えば、図1に示す車両Aに搭載された車載端末装置100において作成、更新がなされた通信可能車両テーブルの内容が示されている。図6に示すように、通信可能車両テーブルには、車両Aの車載端末装置100の通信可能エリアを走行中の車両B1、B2、B3、…のそれぞれの車両位置(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、…と、これら各車両に搭載された車載端末装置100のそれぞれの識別番号b1、b2、b3、…が格納されている。この通信可能車両テーブルは、車載端末装置100を搭載した全ての車両毎に通信処理部112によって作成される。
【0047】
通信可能車両テーブルの作成、更新が終了した後、通信処理部112は、前回の確認データ送信から一定時間が経過したか否かを判定し(ステップ102)、経過していない場合には否定判断を行ってこの判定を繰り返す。また、一定時間が経過した場合にはステップ102の判定において肯定判断が行われ、ステップ100に戻って次の確認データが送信され、他車確認処理が繰り返される。
【0048】
このようにして、一定の時間間隔で周辺車両の走行位置等が検出されるため、各車載端末装置100では、通信データを送信しようとしたときに、自装置の通信可能エリアのどこに他の車両が存在するかが常にわかるようになっている。
次に、通信データの送信受信動作の詳細について説明する。例えば、図1に示す車両Aに搭載された車載端末装置100における通信データの送信動作と、それ以外の車両に搭載された車載端末装置100における通信データの送受信動作(中継動作)について場合を分けて説明する。
【0049】
(1)車両Aの車載端末装置100における動作
図7は、メッセージの送信元となる車両Aの車載端末装置100における通信データの送信動作手順を示す流れ図である。
通信処理部112は、アプリケーション処理装置300から通信データの送信要求があるか否かを判定しており(ステップ200)、この送信要求がない場合には否定判断を行ってこの判定を繰り返す。また、アプリケーション処理装置300から送信対象のメッセージが出力されて、このメッセージを含む通信データの送信要求が送られてくるとステップ200において肯定判断が行われる。
【0050】
次に、自車情報取得部114は、自車両の車両位置(送信元車両位置)、通信データの送信開始時刻、走行予定経路、走行速度を自車情報として取得する(ステップ201)。また、目標位置設定部116は、通信データを送信したい特定領域Sの中心地点Pの座標を目標位置として設定する(ステップ202)。
【0051】
次に、通信処理部112は、アプリケーション処理装置300から入力されたメッセージと、自車情報取得部114によって取得された自車情報と、目標位置設定部116によって設定された目標位置とを用いて、図4に示したフォーマットの通信データに含まれるデータ部を作成する(ステップ203)。
【0052】
次に、通信処理部112は、この作成したデータ部に含まれる「送信元車両位置」と「目標位置」とに基づいて、通信データの送信対象となる向き(第1の特定方向)に存在する車両を特定する(ステップ204)。車両Aを基準位置に設定し、特定領域Sの中心地点Pに向かう方向に対してその左右±θ(例えば±30度)の範囲に含まれる直接通信可能な車両が、通信データの送信対象車両として特定される。例えば、図1に示した例では、車両B2と車両B3がこの範囲に含まれるため、通信データの送信対象車両としてこれらの車両B2、B3が特定される。また、車両B1、B4、B5は、通信可能エリアには含まれるが、この特定の範囲には含まれないため、送信対象車両から除外される。
【0053】
次に、通信処理部112は、送信対象として特定された車両B2、B3のそれぞれ用にヘッダ部を付加した通信データを作成し、データ送信処理部118は、これらの車両B2、B3に向けて通信データを送信する(ステップ205)。
このようにして、メッセージの送信元である車両Aの車載端末装置100から特定方向の車両B2、B3のみに向けて通信データが送信される。
【0054】
(2)車両A以外の車両の車載端末装置100における動作
図8は、メッセージの送信元車両以外の車両において通信データを受信した際の動作手順を示す流れ図である。
本実施形態の車々間通信ネットワークでは、領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2に到達するまでの通信データの中継は、車両Aと同様に通信可能エリア内で中心地点P方向に存在する特定の車両のみに向けて行われ、一旦車両F2に到達した後の通信データの中継は、送信先車両を特定しないブロードキャスト配信によって行われる。以下、車両F2に到達する前と後とで場合を分けて説明する。
【0055】
(2−1)領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2に通信データが到達するまでの各車両における動作
通信処理部112は、データ受信処理部120によって他の車両から送られてくる通信データを受信したか否かを判定しており(ステップ300)、受信していない場合には否定判断を行ってこの判定を繰り返す。また、データ受信処理部120によって他の車両から送られてくる通信データが受信されるとステップ300の判定において肯定判断が行われ、次に、通信処理部112は、自車が通信相手の車両(正確には通信相手の車載端末装置100を搭載した車両)か否かを判定する(ステップ301)。通信相手の車両とは、領域Sに含まれる車両であり、本実施形態では図1に示す車両E1〜E3、F1〜F5が該当する。
【0056】
自車が通信相手の車両E1〜E3、F1〜F5のいずれかに該当する場合にはステップ301の判定において肯定判断され、次に、アプリケーション処理装置300は、通信データに含まれるメッセージに基づいて所定の処理を行う(ステップ302)。例えば、周辺の渋滞情報の収集を依頼された場合には、渋滞情報を収集してその結果を車両Aに向けて送り返す処理が行われる。
【0057】
次に、通信処理部112は、通信データの中継が必要か否かを判定する(ステップ303)。通信相手となる車両E1〜E3、F1〜F5のいずれかに通信データが到達した時点で通信データを中継する必要がなくなる場合(例えば、領域S内で最初に通信データを受信した1台の車両から所望の情報を送り返してもらうことによりメッセージを送信した目的が達せられた場合)にはステップ303の判定において否定判断が行われ、一連の通信データの送受信動作は終了する。
【0058】
また、自車が通信相手の車両E1〜E3、F1〜F5のいずれにも該当しない場合であってステップ301の判定において否定判断がなされた場合や、自車が通信相手の車両であったがさらに通信データの中継が必要であってステップ303の判定において肯定判断が行われた場合には、通信処理部112は、受信した通信データがブロードキャスト配信されたものであるか否かを判定する(ステップ304)。この判定は、図4に示した通信データのヘッダ部に含まれる送信先アドレスに、ブロードキャスト配信を示す特定の値が格納されているか否かを調べることにより行われる。車両Aから送信された通信データが領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2に到達するまではブロードキャスト配信による通信データの中継は行われないため、ステップ304の判定において否定判断が行われる。
【0059】
次に、通信処理部112は、自車が領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2であるか否かを判定する(ステップ305)。車両F2でない場合には否定判断が行われ、次に、通信処理部112は、受信した通信データのデータ部に含まれる「送信元車両位置」と「目標位置」とに基づいて、通信データの送信対象となる車両を特定する(ステップ306)。自車を基準位置に設定し、車両Aから特定領域Sの中心地点Pに向かう方向に対してその左右±θ(例えば±30度)の範囲に含まれる直接通信可能な車両が、通信データの送信対象車両として特定される。例えば、図1に示した車両C1に着目すると、車両Aから中心地点Pに向かう方向に対して±30度の範囲内に車両D2が含まれるため、通信データの送信対象車両として車両D2が特定される。また、車両D1は、通信可能エリアには含まれるが、この特定の範囲には含まれないため、送信対象車両から除外される。
【0060】
次に、通信処理部112は、送信対象として特定された車両D2用にヘッダ部を変更した通信データを作成し、データ送信処理部118は、車両D2に向けて通信データを送信する(ステップ307)。
このようにして、中心地点Pに最も近い車両F2に到達するまでは、各車両の車載端末装置100では、目標地点(領域Sの中心地点P)が存在する特定の向きに存在する車両に対してのみ通信データを中継する処理が行われる。
【0061】
(2−2)領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2に通信データが到達した後の各車両における動作
通信データを受信し、この受信した通信データがブロードキャスト配信されたものか否かを判定する動作は、上述した「(2−1)領域Sの中心地点Pに最も近い車両F2に通信データが到達するまでの各車両における動作」の場合と全く同様にして行われる。
【0062】
中心地点Pに最も近い車両F2において通信データを受信した場合(図1において、車両E2から送信された通信データを車両F2で受信した場合)には、受信した通信データがブロードキャスト配信されたものであるか否かの判定(ステップ304)において否定判断が行われ、次に、自車が目標位置に最も近い車両であるか否かの判定(ステップ305)において肯定判断が行われる。この場合には、通信処理部112は、受信した通信データのヘッダ部に含まれる「送信先アドレス」をブロードキャスト配信を示す特定の値に、「送信元アドレス」を自車に搭載された車載端末装置100の識別番号にそれぞれ変更し、データ送信処理部118は、このヘッダ部が変更された後の通信データを通信可能エリア内に含まれる全ての車両に向けてブロードキャスト配信により送信する(ステップ308)。
【0063】
また、一旦ブロードキャスト配信された通信データを受信した車両の通信処理部112は、ステップ304の判定において肯定判断を行った後、受信した通信データのヘッダ部に含まれる「送信先アドレス」を変更せずに(ブロードキャスト配信を示す特定の値を維持し)、「送信元アドレス」を自車に搭載された車載端末装置100の識別番号に変更し、データ送信処理部118は、このヘッダ部の送信元アドレスのみが変更された通信データを通信可能エリア内に含まれる全ての車両に向けてブロードキャスト配信により送信する(ステップ308)。
【0064】
このようにして、中心地点Pに最も近い車両F2に到達した後は、各車両の車載端末装置100では、通信可能エリア内の全ての車両に対してブロードキャスト配信が行われ、通信データが中継される。なお、ブロードキャスト配信によってデータを中継する範囲に制限を設けないと、各車両を介して無限に通信データが中継されることになるため、ブロードキャスト配信による通信データの中継回数を設定してこの中継回数分だけ通信データの中継を繰り返したり、ブロードキャスト配信によって通信データを中継する車両の範囲を設定して(例えば、車載端末装置100を搭載した車両が領域S内に含まれる間だけ)通信データの中継を繰り返したりしている。
【0065】
このように、本実施形態の車々間通信ネットワークでは、各車両の車載端末装置100において通信データの中継を行うときに、特定方向に存在する車両に搭載された車載端末装置100に対してのみ通信データを中継するルーティング処理を行うことにより、車々間ネットワーク全体における通信量を削減して通信帯域の有効利用を図ることができる。また、目標位置周辺の車両に到達した後にブロードキャスト配信によって通信データの中継処理を行うことにより、特定の領域内を走行する車両の車載端末装置100に対して確実に通信データを送信することができる。
【0066】
また、通信データを中継する特定方向は、通信データの送信元となる車載端末装置100から所定領域Sに対応して設定された目標位置(例えば中心地点P)に向かう方向であり、送信元の車載端末装置100の位置と目標位置とによって中継対象となる車両を決定しているため、確実に送信先の車載端末装置100が存在する特定領域Sに向けて通信データを中継することが可能になる。
【0067】
また、所定領域Sの中心地点Pに最も近い車両に到達するまで特定方向に向けた通信データの中継を行っているため、領域S内に存在する全ての車載端末装置100に対して確実に通信データを送信することが可能になる。しかも、中心地点Pに最も近い車両に到達するまでは特定方向の車両に対してのみ通信データが中継されるため、さらに通信量を削減することが可能になる。
【0068】
また、特定方向に向けた通信データの中継は、中継対象となる車載端末装置100を特定して行われるため、通信データを受信する中継端末装置での処理の負担を軽減することができる。また、ブロードキャスト配信による通信データの中継は、中継対象となる車載端末装置100を特定せずに行われるため、通信データを送信する側の車載端末装置100の処理負担を軽減するとともに、この車載端末装置100の周囲に存在する他の車載端末装置100に対して確実に通信データを送信することができる。
【0069】
また、ブロードキャスト配信による通信データの送信を、あらかじめ設定された中継回数分繰り返したり、通信データを中継する車載端末装置100が所定領域S内に含まれる場合に繰り返すことにより、不必要になった通信データが中継されることを防止して、通信量を削減しつつ通信帯域の有効利用を図ることができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、図1に示す車両Aから領域S内の各車両に向けて通信データを送信する場合について説明したが、反対に車両Aから送られたメッセージを受信した領域S内の各車両から車両Aに対して応答メッセージを送り返す場合にも同様に本発明を適用することができる。但し、この場合には、通信データの送受信を繰り返している間に車両Aの走行位置が移動するため、応答メッセージを含む通信データが車両Aに到達する時刻(到達予測時刻)とこの時刻における車両Aの走行位置(走行予測位置)を車両F2等の通信処理部112によって予測し、この予測した走行位置を図4に示すデータ部内の「目標位置」として、この目標位置に向かう方向(第2の特定方向)に対して通信データの中継を行えばよい。例えば、車両F1から車両Aに対して応答メッセージを含む通信データを送信する場合を考えると、車両F2において通信データを受信した時刻から通信データに含まれる「送信開始時刻」を引くことにより車両Aと車両F2との間で通信データを送受信する際の一方向の所要時間がわかるため、この所要時間を2倍することにより、あるいはこの所要時間を2倍した結果に応答メッセージ送信に要した時間を加算することにより、車両Aが通信データを送信してから応答メッセージを含む通信データが再び車両Aに到達するまでの往復所要時間を車両F2の通信処理部112によって計算することができる。また、車両Aから送られてきた通信データには、車両Aの走行予定経路と走行速度が含まれているため、車両F2の通信処理部112は、この往復所要時間の間に車両Aがどの位置まで走行しているかを予測することができる。なお、通信データに含まれる走行予定経路と走行速度とに基づいて車両Aの走行位置を予測するのではなく、走行予定経路とこの走行予定経路の幅員や道路種別に対応する平均的な走行速度とに基づいて、あるいは走行予定経路の幅員に関係なく設定した一定の走行速度を用いて、車両Aの走行位置を予測するようにしてもよい。
【0071】
このように、車両F2等の通信処理部112では、受信した通信データに含まれる走行予定経路上を走行中の車両Aに搭載された車載端末装置100に向けて応答メッセージが含まれる通信データを送信しており、これにより、走行中の車両Aに搭載された車載端末装置100に対して、確実に応答メッセージを送り返すことが可能になる。また、応答メッセージが含まれる通信データを中継する場合にも特定方向に沿った通信データの中継と方向に依存しない通信データの中継とを組み合わせることにより、さらに通信量の削減、通信帯域の有効利用を図りつつ、確実に通信データを送信元端末装置に対して送ることができる。特に、応答メッセージを含む通信データを送り返すために中継を行う特定方向は、応答メッセージが含まれる通信データが車両Aの車載端末装置100に到達する到達予測時刻にこの車両Aが走行中の走行予定経路上の走行予測位置に向かう方向であり、応答メッセージを含む通信データを送信する車載端末装置100が搭載された車両の位置と車両Aの走行予測位置とによって中継対象となる車両を決定することにより、移動中の車両Aに向けて通信データを確実に中継することが可能になる。さらに、応答メッセージが含まれる通信データが車両Aの車載端末装置100に到達する際の車両位置を正確に予測することが可能になるため、この通信データを確実に車両Aの車載端末装置100に送ることができる。
【0072】
また、上述した実施形態では、各車両は、一定時間間隔で周辺車両の位置とそれぞれに搭載された車載端末装置100の識別番号を調べるようにしたが、各車両から通信データを送信する際にこれらを調べるようにしてもよい。すなわち、図5に示したステップ100、101の動作を、図7に示したステップ200からステップ204までの間に実施したり、図8に示したステップ300からステップ306までの間に実施するようにしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、領域Sの中心位置Pに最も近い車両F2に通信データが到達した後にブロードキャスト配信による通信データの中継を行うようにしたが、領域S等の特定領域内の車両に通信データが到達したときに、すなわち特定領域内を走行中のいずれかの車両に搭載された車載端末装置100に通信データが到達したときに、ブロードキャスト配信による通信データの中継を行うようにしてもよい。
【0074】
また、車両F2に到達する前後で通信データを送信したときの通信可能距離を変えたり、通信チャンネル、通信速度、通信周波数の少なくとも一つを変えるようにしてもよい。
車両F2に到達するまでの特定方向に向けた通信データの送信における通信可能範囲を、車両F2に到達した後のブロードキャスト配信による通信データの送信における通信可能範囲よりも広く設定することにより、中継対象の車載端末装置100を搭載した車両が比較的離れた状態で点在する場合であっても、遠隔地の領域S内に存在する各車載端末装置100に対して確実に通信データを中継することができる。また、1回の送信距離を長くすることにより、通信データの中継回数を減らすことができるため、これに伴って通信量の削減が可能になる。通信可能範囲の広狭を可変に設定する方法としては、送信部132の送信出力を切り替えたり(通信可能範囲を広くする場合には送信出力を大きくし、反対に、送信可能範囲を狭くする場合には送信出力を小さくする)、送信部132から送信する信号の周波数や通信速度を切り替えたり(通信可能範囲を広くする場合に周波数を低くしたり、通信速度を遅くする)場合が考えられる。
【0075】
また、車両F2に到達する前後で通信チャンネル、通信速度、通信周波数の少なくとも一つを可変することにより、異なる通信回線を用いて通信データを中継することが可能になるため、回線の輻輳を防止しつつ無駄な通信量を削減することができる。例えば、通信チャンネル等を変えることでブロードキャスト配信された通信データとそれ以外の同じ内容を有する通信データとを識別することができれば、ブロードキャスト配信された通信データのみ区別、優先させて取り込み、それ以外の通信データを廃棄することができる。
【0076】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、所定領域に対応して決められた車両に到達するまでは特定方向に存在する車両の中継端末装置のみに通信データが中継されるため、周辺の全ての車両に対して通信データを送る場合に比べて通信量を削減することが可能になり、通信帯域を有効利用することができる。また、所定領域に対応して決められた車両に到達した後は、方向に依存しない中継を行うことにより、所定領域内に存在する送信先端末装置に確実に通信データを送ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車々間通信ネットワークシステムにおけるデータ送信の概要を示す図である。
【図2】通信データの送受信を行う各車両に搭載された車載装置の全体構成を示す図である。
【図3】端末制御部の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態の車々間で送受信される通信データのフォーマットを示す図である。
【図5】通信可能エリア内に存在する他の車両の車両位置等を検出する動作手順を示す流れ図である。
【図6】通信可能車両テーブルの内容を示す図である。
【図7】メッセージの送信元となる車両Aの車載端末装置における通信データの送信動作手順を示す流れ図である。
【図8】メッセージの送信元車両以外の車両において通信データを受信した際の動作手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
100 車載端末装置
110 端末制御部
112 通信処理部
114 自車情報取得部
116 目標位置設定部
118 データ送信処理部
120 データ受信処理部
130 メモリ
132 送信部
134 受信部
136 アンテナ切替部
140 時計
142 操作部
150 ディスプレイ装置
200 ナビゲーション装置
210 車両位置計算部
212 地図描画処理部
214 経路探索処理部
216 目標位置設定部
300 アプリケーション処理装置
400 GPS装置
410 自律航法センサ

Claims (15)

  1. 複数の車両のそれぞれに搭載された中継端末装置を用いて通信データを中継して所定領域内に存在する送信先端末装置に送る通信データ中継方法であって、
    一の前記中継端末装置は、前記所定領域に対応して決められた一あるいは複数の前記車両に搭載された他の前記中継端末装置に到達するまでは第1の特定方向に存在する通信可能な他の前記中継端末装置に向けて通信データを中継し、到達した後は方向に依存しない通信可能な他の前記中継端末装置に向けて通信データを中継し、
    前記通信データには前記所定領域を特定する目標位置が含まれており、この目標位置に基づいて、前記所定領域に対応して決められた一あるいは複数の前記車両に搭載された他の前記中継端末装置に到達したか否かが、前記通信データを受信したそれぞれの前記中継端末装置において判定され、
    前記第1の特定方向は、通信データの送信元端末装置から前記所定領域に対応して設定された前記目標位置に向かう方向であり、
    前記送信元端末装置および前記中継端末装置のそれぞれは、前記通信データの送信に先立って、通信可能な他の前記中継端末装置の位置情報を取得する確認処理を行い、この位置情報に基づいて前記第1の特定方向に対応して前記通信データの送信先となる他の前記中継端末装置を決定し、
    前記送信元端末装置および前記中継端末装置のそれぞれにおける前記通信データの送信は、送信対象となる他の前記中継端末装置が複数存在する場合にはこれら複数の中継端末装置に向けて行われることを特徴とする通信データ中継方法。
  2. 請求項1において、
    前記目標位置は、前記所定領域の中心地点であることを特徴とする通信データ中継方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記方向に依存しない通信可能な前記中継端末装置に向けた通信データの中継は、前記中継端末装置を特定せずに行われるブロードキャスト配信による通信データの送信であることを特徴とする通信データ中継方法。
  4. 請求項3において、
    前記ブロードキャスト配信による通信データの送信は、あらかじめ設定された中継回数分繰り返されることを特徴とする通信データ中継方法。
  5. 請求項3において、
    前記ブロードキャスト配信による通信データの送信は、通信データを中継する前記中継端末装置が前記所定領域内に含まれる間繰り返されることを特徴とする通信データ中継方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかにおいて、
    前記送信先端末装置に送られる通信データには所定の送信メッセージとともにこの通信データを送信した送信元端末装置が搭載された車両の走行予定経路が含まれており、
    前記送信先端末装置は、前記走行予定経路上を走行中の車両に搭載された前記送信元端末装置に向けて応答メッセージが含まれる通信データを送信することを特徴とする通信データ中継方法。
  7. 請求項6において、
    前記応答メッセージが含まれる通信データを受信した一の前記中継端末装置は、前記走行予定経路上を走行中の車両に搭載された前記送信元端末装置の近傍の他の前記中継端末装置に到達するまでは第2の特定方向に存在する通信可能な他の前記中継端末装置に向けて前記応答メッセージが含まれる通信データを中継し、到達した後は方向に依存しない通信可能な他の前記中継端末装置に向けて通信データを中継することを特徴とする通信データ中継方法。
  8. 請求項7において、
    前記第2の特定方向は、前記応答メッセージが含まれる通信データが前記送信元端末装置に到達する到達予測時刻に前記送信元端末装置を搭載した車両が走行中の前記走行予定経路上の走行予測位置に向かう方向であり、
    前記送信先端末装置の位置と前記走行予測位置とによって中継対象となる前記中継端末装置が決定されることを特徴とする通信データ中継方法。
  9. 請求項8において、
    前記送信先端末装置は、前記送信元端末装置を搭載した車両の走行速度と、前記送信元端末装置が通信データを送信した時刻から前記到達予測時刻までの所要時間とに基づいて、前記走行予測位置を計算することを特徴とする通信データ中継方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかにおいて、
    方向を特定した通信データの送信動作における通信可能距離を、方向を特定しない通信データの送信動作における通信可能距離よりも長く設定することを特徴とする通信データ中継方法。
  11. 請求項1〜9のいずれかにおいて、
    方向を特定した通信データの送信動作と、方向を特定しない通信データの送信動作とで、通信チャンネル、通信速度、通信周波数の少なくとも一つを異ならせることを特徴とする通信データ中継方法。
  12. 送信元端末装置から送信された通信データを一あるいは複数の車両のそれぞれに搭載された中継端末装置を用いて中継して所定領域内に存在する送信先端末装置に送る車々間通信システムであって、
    前記中継端末装置は、
    前記送信元端末装置あるいは他の前記中継端末装置から送信された通信データを受信する第1の受信手段と、
    自装置が前記所定領域に対応して決められた一あるいは複数の車両に搭載されたものに該当するか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段によって該当する旨の判断がなされたときに、方向に依存しない通信可能な他の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置を中継対象として設定し、該当しない旨の判断がなされたときに第1の特定方向に存在する通信可能な他の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置を中継対象として設定する中継先設定手段と、
    前記中継先設定手段によって設定された中継対象の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置を特定し、これらの前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置に向けて通信データを送信する第1の送信手段と、
    を備え、前記判定手段は、前記通信データには前記所定領域を特定する目標位置が含まれており、この目標位置に基づいて、前記判定手段は、自装置が前記所定領域に対応して決められた一あるいは複数の前記車両に搭載されたものであるか否かを判定し、
    前記中継先設定手段は、前記通信データの送信に先立って、通信可能な他の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置の位置情報を取得する確認処理を行い、この位置情報に基づいて前記第1の特定方向に存在する他の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置を特定し、
    前記送信元端末装置および前記中継端末装置のそれぞれにおける前記通信データの送信は、前記中継先設定手段によって設定される送信対象となる他の前記中継端末装置あるいは前記送信先端末装置が複数存在する場合にはこれら複数の中継端末装置あるいは送信先端末装置に向けて行われることを特徴とする車々間通信システム。
  13. 請求項12において、
    前記中継端末装置は、通信可能範囲に存在する他の前記中継端末装置および前記送信先端末装置の検出を行う前記確認処理を所定の時間間隔で行う端末検出手段をさらに備えることを特徴とする車々間通信システム。
  14. 請求項12または13において、
    前記送信元端末装置から送信される通信データには、前記送信元端末装置が搭載された車両の走行予定経路が含まれており、
    前記送信先端末装置は、
    前記中継端末装置によって中継された通信データを受信する第2の受信手段と、
    通信データに含まれる前記走行予定経路上を走行中の車両に搭載された前記送信元端末装置に向けて応答メッセージが含まれる通信データを送信する第2の送信手段と、
    を備えることを特徴とする車々間通信システム。
  15. 請求項14において、
    前記送信元端末装置から送信される通信データには、この通信データを送信した送信開始時刻がさらに含まれており、
    前記送信先端末装置は、前記第2の受信手段によって受信された通信データに含まれる前記走行予定経路および前記送信開始時刻と、前記送信元端末装置を搭載した車両の走行速度とに基づいて、前記応答メッセージが含まれる通信データが前記送信元端末装置に到達する到達予測時刻を計算する到達予測時刻計算手段をさらに備え、
    前記送信先端末装置の前記第2の送信手段から送信される通信データには、前記到達予測時刻に前記送信元端末装置が搭載された車両が走行中の前記走行予定経路上の走行予測位置が含まれており、
    前記応答メッセージが含まれる前記通信データを受信した一の前記中継端末装置の前記中継先設定手段は、前記送信先端末装置の位置と前記走行予測位置とによって中継対象となる第2の特定方向を決定し、この第2の特定方向に存在する通信可能な他の前記中継端末装置に向けて通信データを中継することを特徴とする車々間通信システム。
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