JP4067718B2 - 樹脂製型の処理法および樹脂製型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂製型の処理法および処理された樹脂製型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光硬化性の樹脂組成物に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、硬化樹脂層が一体的に積層されてなる立体形状物(以下、「光造形物」という。)を形成する光造形法が提案されている(特開昭60−247515号公報、特開昭62−35966号公報、特開昭62−101408号公報、特開平5−24119号公報参照)。
【0003】
また、最近において、射出成形法、プレス成形法、真空成形法、圧空成形法、発泡成形法、パルプモールド成形法、注型重合法などの各種成形法に用いる成形型を光造形法により製造する試みがなされている。
そして、硬化樹脂からなる成形型(以下、「樹脂製型」という。)として用いる光造形物には、成形型に要求される機械的強度、耐圧性、耐熱性および耐久性を満足する必要があり、特に、高温、高圧条件下に実行されるエンジニアリングプラスチックの射出成形法において、当該条件に耐え得る光造形物(硬化物)を与える樹脂組成物の開発が望まれていた。
このような要請に応えるために、本発明者らは、繰り返し耐久性に優れた樹脂製型を容易に製造することができる方法について提案している(特開平8−137027号公報、同8−250584号公報参照)。
【0004】
しかして、エポキシ系の樹脂組成物を硬化して得られる樹脂製型には、通常、その内部および表面近傍において、当該樹脂組成物に由来するエポキシ基が残留している。
そして、そのような樹脂製型を用いて、高温高圧条件下にナイロンなどの射出成形を行うと、当該樹脂製型の表面近傍に存在するエポキシ基と、アミド結合(−CONH−)の分解により生成するアミノ基とが反応し、樹脂製型の成形面に対して成形品が強固に密着し、この結果、離型性が著しく損なわれるという問題がある。
このような場合において、シリコーンオイルなどのオイル状の離型剤を成形面に塗布することも考えられるが、樹脂製型の成形面近傍に残留する官能基と、成形品に含有されている官能基とが反応しているときには、オイル状の離型剤を塗布しても当該成形品を取り出すことはきわめて困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、樹脂製型の成形面近傍に残留する官能基に対して反応性のある官能基を含有または生成する材料を成形する場合であっても、当該樹脂製型に良好な離型性および耐久性を付与することのできる樹脂製型の処理法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、成形面近傍に残留する官能基に対して反応性のある官能基を含有または生成する材料を成形する場合であっても、良好な離型性および耐久性を発現することのできる樹脂製型を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の処理法は、樹脂組成物を硬化して得られる樹脂製型の処理法であって、樹脂製型の成形面に、当該成形面の近傍に残留する前記樹脂組成物由来の官能基Aであるエポキシ基に対して反応性のある官能基Bであるアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤を塗布し、前記官能基Aと前記官能基Bとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と前記離型剤とを化学的に結合させることを特徴とする。
【0008】
本発明の処理法においては下記の形態が好ましい。
(1)前記樹脂製型が、光硬化性の樹脂組成物に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより得られる光造形物からなること。
【0009】
また、本発明の処理法は、光造形物からなる樹脂製型の成形面に存在する微小段差を光硬化性または熱硬化性の樹脂組成物によって被覆し、この樹脂組成物を硬化させることにより当該成形面を円滑化させた後、前記樹脂製型の成形面に、当該成形面の近傍に残留する前記樹脂組成物由来の官能基Cであるエポキシ基に対して反応性のある官能基Dであるアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤を塗布し、前記官能基Cと前記官能基Dとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と前記離型剤とを化学的に結合させることを特徴とする。
【0010】
本発明の樹脂製型は、成形面の少なくとも一部において、基材樹脂におけるエポキシ基と化学的に結合されたアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤が存在していることを特徴とする。
本発明の樹脂製型は、上記の処理が成形面の少なくとも一部に施されてなることを特徴とする。
本発明の樹脂製型は、射出成形用または注型重合用の型として好適に用いることができる。
【0011】
【作用】
(1)樹脂製型の成形面近傍に残留する官能基Aと、離型剤の含有する官能基Bとが反応することにより、当該成形面における基材樹脂と、前記離型剤とが化学的に結合し、当該離型剤が成形面に強固に密着される。この結果、成形面における離型性の付与効果を長期にわたり発現することができる。
【0012】
(2)樹脂製型の成形面近傍に残留していた官能基Aが、離型剤の含有する官能基Bとの反応によって消滅する。この結果、当該官能基Aに対して反応性のある官能基を含有または生成する材料を当該樹脂製型で成形する場合であっても、得られる成形品と成形面との間に化学的な結合を介在させないので、当該成形品を容易に取り出すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
<処理法>
本発明の処理法は、樹脂製型の成形面近傍に残留する官能基A(以下、「残留官能基A」という。)に対して反応性のある官能基B(以下、「反応性官能基B」という。)を含有する離型剤(以下、「反応性離型剤」ともいう。)を当該成形面に塗布し、残留官能基Aと反応性官能基Bとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と、前記反応性離型剤とを化学的に結合させる点に特徴を有する。ここに、「基材樹脂」とは、処理される樹脂製型を構成する硬化樹脂をいい、成形面を円滑化するために使用した樹脂組成物の硬化物を含むものとする。
【0014】
〔1〕樹脂製型:
本発明の方法による処理が施される樹脂製型としては、硬化性の樹脂組成物を硬化して得られるものを挙げることができる。
ここに、樹脂製型を得るために使用する樹脂組成物は、光硬化性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。
【0015】
また、樹脂製型として、光硬化性の樹脂組成物に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより得られる光造形物からなるものが好ましい。
【0016】
光造形物からなる樹脂製型を得るために使用される好適な樹脂組成物としては、ダイレクト型用光造形樹脂として市販されているエポキシ系の樹脂組成物「デソライト SCR801」,「デソライト SCR802」(ジェイエスアール(株)製)を挙げることができる。
【0017】
ここに、樹脂製型を得るための光造形法の一例を具体的に説明すると、支持ステージ上に光硬化性の樹脂組成物を供給してその薄層(1)を形成し、この薄層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状の硬化樹脂層(1)とする。次いで、この硬化樹脂層(1)上に樹脂組成物を供給してその薄層(2)を形成し、この薄層(2)に対して選択的に光照射することにより、前記硬化樹脂層(1)上にこれと連続して一体的に積層するよう新しい硬化樹脂層(2)を形成する。そして、光照射されるパターンを変化させながら或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化樹脂層(n)が一体的に積層されてなる光造形物が形成される。
硬化樹脂層(n)の厚さは、例えば5〜300μm程度とされ、得られる光造形物の勾配(積層方向における表面の勾配)や造形時間などを考慮して適宜設定することができる。
【0018】
樹脂製型の成形面近傍における残留官能基Aとしては、エポキシ基、オキセタニル基、チイラン基、チタニル基および水酸基などを挙げることができる。
なお、「成形面近傍」とは、離型性に影響を与える範囲をいい、例えば、成形面(基材の表面)からの深さが1000nm以下の範囲をいうものとする。
【0019】
〔2〕反応性離型剤:
樹脂製型の成形面に塗布される反応性離型剤としては、反応性官能基Bを含有し、かつ、塗布面において離型性を発現させることができる化合物並びに樹脂(オリゴマーおよびポリマー)の中から選択される。
ここに、反応性離型剤の骨格を構成する樹脂としては、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)系樹脂、フッ素系樹脂および炭化水素系樹脂を挙げることができる。
また、反応性官能基Bとしては、アミノ基、メルカプト基、水酸基、イソシアネート基およびカルボキシル基などを挙げることができる。
反応性離型剤の粘度としては、通常10〜50,000cps(25℃)とされ、好ましくは30〜18,000cps(25℃)とされる。
【0020】
好ましい反応性離型剤の具体例としては、下記一般式(1)で表される両末端アミノ変性シリコーンオイル、下記一般式(2)で表される側鎖アミノ変性シリコーンオイル、下記一般式(3)で表されるメルカプト変性シリコーンオイル、下記一般式(4)で表されるフェノール変性シリコーンオイルなどを挙げることができ、これらのうち、エポキシ基が残留する樹脂製型などに対して、下記一般式(1)〜(2)で表されるアミノ変性シリコーンオイルを使用することが特に好ましい。
【0021】
【化1】
Figure 0004067718
【0022】
なお、反応性離型剤として、上記一般式(1)〜(5)で表されるような変性シリコーンオイルを使用する場合において、当該変性シリコーンオイルの希釈剤として、変性されていない通常のシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル)、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルなどを併用することも可能である。
【0023】
〔3〕好適な実施形態:
以下、エポキシ系の樹脂組成物を硬化して得られる樹脂製型の表面に、上記(1)または(2)で表されるアミノ変性シリコーンオイルを塗布し、当該樹脂製型に残留するエポキシ基と、アミノ変性シリコーンオイルの有するアミノ基とを反応させて、樹脂製型の表面における基材樹脂と、アミノ変性シリコーンオイルとを化学的に結合させる処理法について説明する。
【0024】
反応性離型剤であるアミノ変性シリコーンオイルの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばディッピング法、刷毛やヘラを使用する方法、スプレーによる方法などを例示することができる。
アミノ変性シリコーンオイルの塗布量も特に限定されるものではなく、過剰に塗布された場合であっても、樹脂製型の表面における基材樹脂と、アミノ変性シリコーンオイルとを化学的に結合させた後、後述する洗浄処理によって過剰量の塗膜(未反応の反応性離型剤)を容易に除去することができる。
【0025】
樹脂製型の成形面近傍におけるエポキシ基(残留官能基A)と、アミノ変性シリコーンオイルの含有するアミノ基(反応性官能基B)とが反応することにより、当該成形面における基材樹脂と、前記アミノ変性シリコーンオイルとが化学的に結合する。
エポキシ基とアミノ基との反応(離型剤の固定反応)は、アミノ変性シリコーンオイルによる塗膜を加熱処理することにより行われる。ここに、加熱条件としては、反応させる官能基の種類によっても異なるが、例えば、40〜100℃で10〜120分間とされる。
【0026】
加熱処理後、未反応のアミノ変性シリコーンオイルを有機溶剤などを用いて洗浄除去する。
このようにして処理された成形面においては、基材樹脂に対して化学結合を介して離型剤が固定されており、溶剤洗浄などによっても除去されることはない。このように、離型剤が成形面に固定化されているので、従来のオイル状の離型剤(シリコーンオイル)を塗布する場合と異なり、離型性の付与効果(シリコーン被膜の形成による摩擦係数の低下等)を長期にわたり、ムラなく確実に発現することができる。
また、成形面(基材の表面)に微細形状が存在していても、これに影響を与えることはない。
【0027】
しかも、成形面近傍におけるエポキシ基(残留官能基A)が、アミノ変性シリコーンオイルの含有するアミノ基(反応性官能基B)との反応によって消滅することにより、当該エポキシ基に対して反応性のある官能基(例えばアミノ基)を含有する材料、例えばナイロンなどのアミノ基を生成する材料を当該樹脂製型で成形する場合であっても、得られる成形品と成形面との間に化学的な結合を生じさせないので、当該成形品を容易に取り出すことができる。
【0028】
〔4〕他の実施形態:
本発明の処理法の他の例においては、光造形物からなる樹脂製型の成形面に存在する微小段差(積層構造に由来する微小段差)を光硬化性または熱硬化性の樹脂組成物によって被覆し、この樹脂組成物を硬化させることにより当該成形面を円滑化させた後、前記樹脂製型の成形面に、当該成形面の近傍に残留する官能基C(被覆用樹脂組成物由来の官能基)に対して反応性のある官能基Dを含有する離型剤を塗布し、前記官能基Cと前記官能基Dとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と前記離型剤とを化学的に結合させる。
このような処理法によれば、積層構造などに由来する段差が解消され、設計データに忠実で円滑な成形面が形成されることにより、寸法精度が高くて良好な表面状態を有する成形品を得ることができる。
また、このような処理が施された樹脂製型によれば、成形面と成形品との接触面積が少なくなる結果、更なる離型性の向上を図ることができる。
ここに、被覆用の樹脂組成物に由来する官能基Cとしては、上記残留官能基Aと同一の基を挙げることができる。また、当該官能基Cと反応可能な官能基Dとしては、上記反応性官能基Bと同一の基を挙げることができる。
樹脂製型の成形面に存在する微小段差を被覆して円滑化処理する具体的な方法としては、本発明者らにより提案されている特願平11−128352号明細書に記載の方法を挙げることができる。
【0029】
<樹脂製型>
本発明の樹脂製型は、成形面の少なくとも一部において、基材樹脂と化学的に結合された離型剤が存在していることを特徴とする。
また、本発明の樹脂製型は、本発明の処理が成形面の少なくとも一部に施されてなることを特徴とする。
本発明の樹脂製型は、高温高圧の条件で使用される成形型、具体的には、射出成形用の型、注型重合用の型として好適に用いることができる。
また、本発明の樹脂製型は、プレス成形法、真空成形法、圧空成形法、発泡成形法、パルプモールド成形法などの各種成形法にも用いることができる。
【0030】
本発明の樹脂製型は、上記の残留官能基A(例えばエポキシ基)に対して反応性のある官能基(例えばアミノ基)を含有または生成する材料(例えばナイロン)を成形する場合に特に効果的であるが、そのような材料以外の材料であっても好適に使用することができる。
また、本発明の樹脂製型は、ガラスフィラーを含有する材料、高温高圧条件下に成形されるエンジニアリングプラスチックなどを射出成形する場合に特に好適に使用することができる。
【0031】
本発明の樹脂製型を射出成形用の型として用いる場合において、当該樹脂製型の成形面上に、常法に従ってオイル状の離型剤を塗布することも可能である。かかるオイル状の離型剤としては、変性または変性されていないシリコーンオイル、植物油系オイル、フッ素化合物系オイルなどを挙げることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔光造形法による樹脂製型の製造例〕
エポキシ系のダイレクト型用光造形樹脂「デソライト SCR802」(ジェイエスアール(株)製)を用い、光造形装置「ソリッドクリエーターJSC−2000」(ソニー(株)製)により、下記条件(1)〜(5)に従ってキャビティー型およびコア型をそれぞれ造形した。次いで、得られた光造形物からなる樹脂製型(キャビティー型およびコア型)の表面に付着した樹脂組成物を拭き取り、溶剤洗浄した後常温で乾燥した。
なお、図1は、コア型を示す平面図(I)および側面図(II)である。同図において、11はピン形状、12はリブ、13はピン形状、14はツメ、15は固定用ネジ穴、16はピン形状である。
【0033】
(1)液面におけるレーザー光強度:100mW,
(2)走査速度:各組成物において硬化深さが0.3mmとなる適正走査速度,
(3)形成する硬化樹脂層の厚み:0.2mm,
(4)キャビティー型積層回数:306回,
(5)コア型積層回数:220回
【0034】
<実施例1>
上記の製造例によって得られた樹脂製型(キャビティー型およびコア型)の成形面に、反応性離型剤としてアミノ変性シリコーンオイル「SF8417」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を刷毛を用いて万遍なく塗布した。次いで、当該樹脂製型を、40℃に設定されたオーブン内で60分間加熱処理した。その後、当該樹脂製型の成形面に残留しているアミノ変性シリコーンオイルをエチルアルコールで洗浄除去し、当該エチルアルコールを常温で乾燥除去した。その後、当該樹脂製型を、160℃に設定されたオーブン内で120分間加熱処理を行うことにより、本発明の樹脂製型(以下、「樹脂製型(1)」という。)を得た。
【0035】
<実施例2>
(i)被覆用樹脂組成物の調製:
下記式(i)で表されるエポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)74重量部と、下記式(ii)で表されるエポキシ樹脂25重量部と、カチオン重合用光開始剤「UVI−6970」(ユニオンカーバイド社製)1部とを攪拌容器内に仕込み、50℃で2時間攪拌することにより、粘度(25℃)が180cpsの樹脂組成物(以下「樹脂組成物(1)」という。)を得た。
【0036】
【化2】
Figure 0004067718
【0037】
(ii)成形面の円滑化処理:
上記の製造例によって得られた樹脂製型(キャビティー型およびコア型)の成形面に存在する微小段差を埋めるよう、樹脂組成物(1)を刷毛を用いて塗布した。
次いで、樹脂組成物(1)の塗膜に対し、紫外線照射装置「SPOTCURESP−III 」(ウシオ電機(株)製)により、1J/cm2 の紫外線を照射した。その後、当該光造形物(キャビティー型およびコア型)を、80℃に設定されたオーブン内で2時間にわたり加熱処理を行うことにより、前記成形面を円滑化処理した。
【0038】
(iii)反応性離型剤の塗布・加熱処理:
上記(ii)により円滑化処理された成形面に反応性離型剤を塗布したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂製型(以下、「樹脂製型(2)」という。)を得た。
【0039】
<比較例1>
上記の製造例により得られた樹脂製型(キャビティー型およびコア型)を160℃に設定されたオーブン内で120分間加熱処理を行うことにより、比較用の樹脂製型(以下、「樹脂製型(3)」という。)を得た。
【0040】
<樹脂製型の評価(射出成形)>
実施例1〜2および比較例1によって得られた樹脂製型(1)〜(3)の各々を用いて、ガラス繊維強化ナイロン6(ガラス繊維量:30%)「ウベナイロン6 1015GC950」(宇部興産(株)製)を成形材料として、型締力75t、シリンダー温度280℃、型温度80℃、射出圧200kg/cm2 、1段目保圧360kg/cm2 (4秒間)、2段目保圧230kg/cm2 (6秒間)の条件で射出成形を行うことにより成形品を得た。なお、樹脂製型(1)〜(3)の各成形面には、植物油系離型剤「ベリコート3S−5」(中京化成工業(株)製)をスプレーにより塗布して射出成形を行った。
▲1▼ 得られた成形品の寸法精度、▲2▼ 得られた成形品の表面状態、▲3▼ 樹脂製型の繰り返し耐久性を下記のようにして評価した。結果を表1に示す。
【0041】
〔成形品の寸法精度〕
射出成形品の設計寸法に対して、誤差0.5%未満の場合を「良好」、誤差0.5%以上の場合を「不良」として評価した。
【0042】
〔成形品の表面状態〕
表面粗さ計「サーフコム 575A」((株)東京精密製)により、走査速度1.5mm/sの条件で表面粗さを測定することにより表面状態を評価した。
評価基準としては、表面粗さが5μm以下である場合を「○」、5μmを超える場合を「△」とした。
【0043】
〔樹脂製型の繰り返し耐久性〕
樹脂製型を用いた射出成形を連続して行い、当該樹脂製型が破損せずに成形可能な回数(ショット数)を測定した。
【0044】
【表1】
Figure 0004067718
【0045】
<実験例>
本発明の処理による離型性の向上効果を確認するため、下記のような実験を行った。
【0046】
(i)テストピースの作製:
樹脂製型の製造例で使用したエポキシ系のダイレクト型用光造形樹脂「デソライト SCR802」(ジェイエスアール(株)製)をアプリケーターを用いてガラス基板上に塗布し後、紫外線照射装置「UBX0311−00」(アイグラフィックス(株)製)で紫外線を照射することにより、当該ガラス基板上に膜厚200μmの硬化フィルム(樹脂製型の基材樹脂と同一の硬化樹脂からなるフィルム)を形成した。ここに、照射光量は100mJ/cm2 とした。
このようにして硬化フィルムが形成されたガラス基板を3枚用意し、それらのうち、1枚の硬化フィルム表面には、実施例1および実施例2で使用したアミノ変性シリコーンオイル「SF8417」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を刷毛を用いて塗布し(これを「テストピース(A)」とする。)、他の1枚の硬化フィルム表面には、ジメチルシリコーンオイル「SH200」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株))製)を刷毛を用いて塗布し(これを「テストピース(B)」とする。)、更に他の1枚の硬化フィルム表面には、何も塗布しなかった(これを「テストピース(C)」とする。)。
【0047】
(ii)離型性の評価:
上記(i)によって作製されたテストピース(A)〜(C)を10分間室温下に静置した後、40℃に設定されたオーブン内で60分間加熱処理し、次いで、硬化フィルム表面をn−ヘキサンで洗浄処理した。
このようにして加熱処理および洗浄処理が施されたテストピースの各々について、離型性としてその表面性を評価した。表面性の評価は、テストピースの表面を爪で引っかき、滑らかな感触を与えるものを「○」、引っかかる感触を与えるものを「×」とした。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0004067718
【0049】
以上の結果から、下記のことが理解される。
(1)反応性離型剤(アミノ変性シリコーンオイル)を使用することにより、硬化フィルムの表面性が向上し、良好な離型効果が発現された。
そして、この離型効果は、溶剤洗浄によっても失われることはなく、当該反応性離型剤は、硬化フィルム表面に強固に密着されていた。
従って、残留官能基Aを有する基材に対して反応性離型剤を使用すれば、離型性の付与効果を長期にわたり発現することができる。
【0050】
(2)反応性のない通常のシリコーンオイルは、硬化フィルムに対する密着力が殆どなく、溶剤洗浄によって容易に除去されてしまう。従って、通常のシリコーンオイルを上記基材に対して塗布するだけでは、離型性の付与効果を長期にわたり発現することはできない。
【0051】
【発明の効果】
本発明の処理法によれば、樹脂製型の成形面近傍に残留する官能基に対して反応性のある官能基を含有または生成する材料を成形する場合であっても、当該樹脂製型に良好な離型性および耐久性を付与することができる。
本発明の樹脂製型によれば、成形面近傍に残留する官能基に対して反応性のある官能基を含有または生成する材料を成形する場合であっても、良好な離型性および耐久性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例で得られたコア型を示す平面図(I)および側面図(II)である。
【符号の説明】
1 光造形物
2 塗膜
11 ピン形状
12 リブ
13 ピン形状
14 ツメ
15 固定用ネジ穴
16 ピン形状

Claims (6)

  1. 樹脂組成物を硬化して得られる樹脂製型の処理法であって、
    前記樹脂製型の成形面に、当該成形面の近傍に残留する前記樹脂組成物由来の官能基Aであるエポキシ基に対して反応性のある官能基Bであるアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤を塗布し、前記官能基Aと前記官能基Bとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と前記離型剤とを化学的に結合させることを特徴とする樹脂製型の処理法。
  2. 前記樹脂製型が、光硬化性の樹脂組成物に選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより得られる光造形物からなることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製型の処理法。
  3. 光造形物からなる樹脂製型の成形面に存在する微小段差を光硬化性または熱硬化性の樹脂組成物によって被覆し、この樹脂組成物を硬化させることにより当該成形面を円滑化させた後、
    前記樹脂製型の成形面に、当該成形面の近傍に残留する前記樹脂組成物由来の官能基Cであるエポキシ基に対して反応性のある官能基Dであるアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤を塗布し、前記官能基Cと前記官能基Dとを反応させることにより、当該成形面における基材樹脂と前記離型剤とを化学的に結合させることを特徴とする樹脂製型の処理法。
  4. 成形面の少なくとも一部において、基材樹脂におけるエポキシ基と化学的に結合されたアミノ基を含有するアミノ変性シリコーンオイルよりなる離型剤が存在していることを特徴とする樹脂製型。
  5. 請求項1乃至請求項3の何れかに記載の方法による処理が成形面の少なくとも一部に施されてなることを特徴とする樹脂製型。
  6. 射出成形用または注型重合用であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の樹脂製型。
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