JP4064123B2 - ゴムクローラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムクローラ(弾性クローラともいう)に係り、コンバイン等の農機や、バックホー等の建機などの走行部に採用される無限軌道走行装置(クローラ式走行装置)に採用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
農機、建機などの走行部に採用される無限軌道走行装置は、例えば、駆動輪と、アイドラ(従動輪)と、複数の転輪とにわたって無端帯状のクローラベルト(履帯)を巻き掛けることによって主構成されていて、駆動輪を回転駆動させることにより、クローラベルトを周方向に循環回走させ、これにより走行するように構成されている。
前記クローラベルトとして、本体部分がゴムによって形成されたゴムクローラがあり、駆動輪としてスプロケットによって構成されているものがある。
【0003】
前記ゴムクローラは、クローラ本体をゴムによって無端帯状に形成し、このクローラ本体に、係合孔を周方向に間隔をおいて形成し、この係合孔にスプロケットの歯を挿入して該スプロケットを回転させることで、ゴムクローラが駆動されるように構成されている。
ところで、この種の走行装置で路面を走行すると、係合孔から泥土、砂利、小石その他の異物がゴムクローラの内周側に侵入し、それがゴムクローラの内周側に溜まると共に、それがころがって泥玉となり、最後には、圃場にころげ落ちることとなる。
【0004】
この泥玉が圃場に落とされると、例えば、稲刈する場合の邪魔者となって株元からの刈り取りができず、無理に刈り取ると刈刃を損傷することになるし、また、稲穂とともに泥をコンバインの中に送り込んでしまうこともある。
また、ゴムクローラの内周側に浸入した侵入物が転輪で踏み付けられて押固められて硬化し、これが繰返されると、転輪通過面のゴムが損傷し、所謂虫喰い現象を生じさせることによって、ゴムと芯金との接着が破壊されて該芯金およびこの芯金を外囲いしたスチールコードの発錆を招き、延いては、全体の損傷に至る場合がある。
【0005】
このため、土砂等が係合孔を通してゴムクローラの内周側に浸入しないように、係合孔のクローラ外周側を薄肉ゴム膜部で閉塞するようにしたものがある(特開昭56−86871号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のものにあっては、クローラ本体及び薄肉ゴム膜部は、モールド内にゴムを入れ加硫することによって成型されるが、薄肉ゴム膜部のゴムゲージ(肉厚)は、クローラ本体に比べて非常に薄肉(例えば、0.5〜3mm)に形成されるため、クローラ本体を最適加硫となるように加硫すると、薄肉ゴム膜部が加硫オーバーとなり(加硫もどりが生じ)、薄肉ゴム膜部の加硫ゴムの物理的性質(例えば、伸び強度)が最高値を通り越して低下することとなるという問題がある。
【0007】
そして、走行時において、薄肉ゴム膜部にスプロケットの歯が接触したり、異物が巻き込まれたりして薄肉ゴム膜部が伸ばされることが繰り返されると、薄肉ゴム膜部が次第に破れて、ちぎれていき、薄肉ゴム膜部が早期に破損するという問題が生じる。
また、薄肉ゴム膜部がスプロケットの歯に接触して伸ばされないように、薄肉ゴム膜部をクローラ外周側に変位させて、薄肉ゴム膜部がスプロケットの歯に接触しないようにすることが考えられているが、薄肉ゴム膜部をあまりクローラ外周側に変位させると、スプロケット等の巻き掛け部分において、薄肉ゴム膜部が大きく伸ばされることとなり、薄肉ゴム膜部に傷等を受けていると、そこから破けてくることとなる。
【0008】
なお、薄肉ゴム膜部が破れると、この破れた部分から土砂等がゴムクローラの内周側に浸入し、従来の技術で説明した問題が生じる。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、薄肉ゴム膜部の耐久性の向上を図ったゴムクローラを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、無端帯状に形成されたクローラ本体に、該クローラ本体を駆動するスプロケットの歯が挿入される係合孔が周方向に間隔をおいて形成されていると共に、この係合孔のクローラ外周側を塞ぐ薄肉ゴム膜部が設けられており、これらクローラ本体及び薄肉ゴム膜部はゴムを加硫することで形成されると共に、この加硫の際において、ゴムクローラを成型するモールドの、薄肉ゴム膜部を形成する部分に断熱材を設けることにより薄肉ゴム膜部の加硫温度をクローラ本体の加硫温度よりも低くし、これによって薄肉ゴム膜部とクローラ本体とがともに最適加硫となるように、薄肉ゴム膜部の加硫速度をクローラ本体よりも遅くして加流することで形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、薄肉ゴム膜部にクローラ本体よりも加硫速度の遅いマトリックスゴムを使用し、このマトリックスゴムを、SBR、NBR、EPDM、IIRなどの加硫速度の遅いゴム群のうち、少なくとも1種類を含有し、薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムのゴム配合中の天然ゴム配合量がクローラ本体に使用されるゴムのゴム配合中の天然ゴム配合量に対して3分の2重量部以下とされているのがよい。
また、薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムのゴム配合中のシリカ配合量がクローラ本体に使用されるゴムのゴム配合中のシリカ配合量に対して2分の3重量部以上とされているのがよい。
【0011】
また、薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムが、クローラ本体を構成するゴムよりも伸びが高い性質のゴムによって構成されているのがよい。
また、薄肉ゴム膜部の、クローラ本体に連接するゴム膜基部の肉厚を、中央側よりも厚くするのがよい。
また、クローラ本体がスプロケットに巻き掛けられた状態において、薄肉ゴム膜部とスプロケットの歯との間に隙間が形成されるように構成するのがよい。
また、薄肉ゴム膜部は、係合孔を実質的に塞ぐゴム膜本体と、このゴム膜本体をクローラ本体に連接させるゴム膜基部とから構成され、ゴム膜基部は、係合孔の内面のクローラ厚さ方向中途部から係合孔の内方に向けて延出された後、クローラ外周側に向けて延出されて形成されていて、ゴム膜基部のクローラ外周側に、クローラ外周側から凹む凹状部を有する構成とされるのがよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2は第1の形態のゴムクローラ6を示し、該ゴムクローラ6は、農業機械や建設機械等の走行部として採用されるクローラ式走行装置に使用されるゴムクローラ6であり、クローラ式走行装置は、例えば、進行方向前後一側に配置されたスプロケットと、進行方向前後他側に配置されたアイドラと、これらスプロケットとアイドラとの間に配置された複数個の転輪とをトラックフレームに左右方向の軸心廻りに回転自在に支持すると共に、これらスプロケット,アイドラ及び転輪に亘ってエンドレス状のゴムクローラ6を巻き掛けることで主構成されている。
【0013】
前記ゴムクローラ6は、ゴムによって無端帯状に形成されたクローラ本体8と、このクローラ本体8内に、クローラ周方向Aに間隔をおいて埋設された芯体9と、クローラ内周側Cの左右方向B(クローラ幅方向)中央側に、クローラ周方向Aに間隔をおいて設けられていて転輪等の脱輪(ゴムクローラ6の外れ)を防止する脱輪防止部10と、スチールコード等の抗張力コードからなり、芯体9を外囲いするようにクローラ本体8内に埋設された抗張体11を備えて構成されている。
【0014】
前記芯体9は、金属製又は硬質樹脂製等で形成され、左右方向Bに長く形成されており、そのクローラ内周側Cの左右方向B中央側に、左右一対の係合突部14が設けられ、この左右の係合突部14が脱輪防止部10とされている。
クローラ本体8は、無端帯状の帯体部15と、クローラ外周側Dに配置され且つクローラ周方向Aに間隔をおいて配置されていて走行路面に接地するラグ12とを備えている。
このクローラ本体8の左右方向B中央部で且つクローラ周方向Aで隣り合う芯体9間には、スプロケットの歯を芯体9に噛み合わせるべく、該スプロケットの歯が挿入される係合孔13が形成されていて、スプロケットの歯を芯体9に噛み合わせて、スプロケットを回転駆動させることにより、ゴムクローラ6を周方向Aに循環回走させるように構成されている。
【0015】
また、この種の走行装置により走行しているとき、ゴムクローラ6の外周側Dから土砂等が係合孔13を通じて侵入し、これが泥玉形成の要因、又はクローラ本体8の虫喰い現象等による耐久性低下の要因等になるので、本発明のゴムクローラ6にあっては、係合孔13からゴムクローラ6の内周側に土砂等が浸入しないように、係合孔13のクローラ外周側Dを閉塞する薄肉ゴム膜部17が設けられている。
この薄肉ゴム膜部17は、係合孔13のクローラ外周側Dを閉塞する主要ゴム層17Aによって主構成されていると共に、この主要ゴム層17Aのクローラ外周側Dを覆う被覆ゴム層17Bを有する構成とされている。
【0016】
この薄肉ゴム膜部17の主要部分である主要ゴム層17Aは、クローラ本体8を構成するゴムとは別の種類のゴムであって、クローラ本体8を構成するゴムよりも加硫速度の遅いゴムで形成されている。
また、被覆ゴム層17Bは、クローラ本体8と同様の(又は別の)ゴムによって構成されている。
この第1の形態のゴムクローラ6にあっては、薄肉ゴム膜部17は、クローラ本体8よりも加硫速度の遅いゴムのみで構成されているのではなく、クローラ外周側Dにクローラ本体8と同様のゴムからなる被覆ゴム層17Bを有するが、これに限定されることなく、後述する第2の形態のゴムクローラ6のように、薄肉ゴム膜部17全体を加硫速度の遅いゴムで構成しても勿論よい。
【0017】
前記薄肉ゴム膜部17の主要ゴム層17A(薄肉ゴム膜部17全体が加硫速度の遅いゴムで構成される場合は、薄肉ゴム膜部17)のマトリックスゴムは、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、IIR(ブチルゴム)などの加硫速度の遅いゴム群のうち、少なくとも1種類を含有し、且つその含有量が全マトリックスゴム100重量部に対して10重量部以上となるように構成されている。
また、薄肉ゴム膜部17の主要ゴム層17A(薄肉ゴム膜部17全体が加硫速度の遅いゴムで構成される場合は、薄肉ゴム膜部17)の天然ゴム配合量はクローラ本体8の天然ゴム配合量に対して3分の2重量部以下とされているのがよい。
【0018】
また、薄肉ゴム膜部17の主要ゴム層17A(薄肉ゴム膜部17全体が加硫速度の遅いゴムで構成される場合は、薄肉ゴム膜部17)のシリカ配合量はクローラ本体8のシリカ配合量に対して2分の3重量部以上とされているのがよい。
前記構成のゴムクローラ6にあっては、クローラ本体8及び薄肉ゴム膜部17は、ゴムクローラ6を成型するモールド内で加硫して形成されるが、このクローラ本体8及び薄肉ゴム膜部17が同じゴムで構成されていると、薄肉ゴム膜部17のゴムゲージが、クローラ本体8に比べて非常に薄肉に形成されるため、クローラ本体8を最適加硫となるように加硫すると、薄肉ゴム膜部17が加硫オーバーとなり、薄肉ゴム膜部17の加硫ゴムの伸び強度等の物理的性質が最高値に対して低下することとなるが、前述したように、薄肉ゴム膜部17の主要部分を、クローラ本体8を構成するゴムよりも加硫速度の遅いゴムで形成する(薄肉ゴム膜部17に、クローラ本体8を構成するゴムよりも加硫速度の遅いゴムを使用する)ことで、クローラ本体8及び薄肉ゴム膜部17を、ともに最適加硫にすることができ、薄肉ゴム膜部17を構成するゴムの物理的性質を適正なものとすることができ(従来のものに比べて、薄肉ゴム膜部17を構成するゴムの物理的性質を向上させることができ)、薄肉ゴム膜部17の耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、前記薄肉ゴム膜部17は、実質的に係合孔13を塞ぐゴム膜本体19と、このゴム膜本体19をクローラ本体8に連接させるゴム膜基部20とから構成され、ゴム膜基部20(付け根部分)のクローラ内周側Cの隅部分18には、3mm以上のアールがつけられており、これにより、薄肉ゴム膜部17のゴム膜基部20が中央側に比べて厚肉となり、これによって破損し易い部分の強度が確保でき、薄肉ゴム膜体17の耐久性向上が図られている。
また、この薄肉ゴム膜部17に使用される加硫速度の遅いゴムは、クローラ本体8を構成するゴムよりも伸びが高い性質のゴムによって構成されているのがよい。
【0020】
また、第1の形態のゴムクローラ6にあっては、クローラ本体8とは異なる種類のゴムを使用することにより、薄肉ゴム膜体17の加硫速度をクローラ本体8に対して遅くするようにしているが、これに限定されることなく、その他、原料ゴムに加えられる加硫促進剤等の配合量を変えること等によって、薄肉ゴム膜部17の加硫速度をクローラ本体8よりも遅くなるようにしてもよい。
図3は第2の形態のゴムクローラ6を示しており、第1の形態のゴムクローラ6と異なる点は、薄肉ゴム膜部17が全体的にクローラ本体8を構成するゴムよりも加硫速度の遅いゴムから構成されている点、薄肉ゴム膜部17が、ゴム膜基部20側から中央側21に向かうにしたがって漸次薄肉となるように形成されていて、薄肉ゴム膜部17のゴム膜基部20側の肉厚aが中央部の肉厚bよりも厚肉とされて耐久性向上が図られている点、及びクローラ周方向Aで隣り合う薄肉ゴム膜部17が、同じゴム材料によって構成された連結部22によって連結されている点であり、その他の構成については、第1の形態のゴムクローラ6と略同様に構成される。
【0021】
なお、連結部22はクローラ本体8の一部を構成し、すなわち、薄肉ゴム膜部17よりも厚肉部分の一部を構成するが、芯体9に接していると共に、芯体9は通常金属によって形成され、熱伝導率が高いことから、連結部22が、クローラ本体8のその他の部分よりも加硫速度が遅いゴムによって構成されていることは、該連結部22のゴムの物理的性質に影響を与えることがない。
図4は第3の形態のゴムクローラ6を示しており、第1の形態のゴムクローラ6と異なる点は、クローラ本体8がスプロケット2に巻き掛けられた状態において、スプロケット2の歯2Aが、薄肉ゴム膜部17に接触しないように、薄肉ゴム膜部17とスプロケット2の歯2Aとの間に隙間Lが形成されるように構成されている点であり、その他の構成については、第1の形態のゴムクローラ6と略同様に構成される。
【0022】
なお、スプロケット2の歯2Aは角が尖らないように、丸み(R)が付けられている。
ここで、下記の表1に、クローラ本体8又は薄肉ゴム膜部17に使用される配合ゴム材料A〜Gの一例を示す。
また、この表1の下欄の物性は、各配合ゴム材料A〜Gの加硫進行速度を表している。
また、下記の表2は、表1に例示した配合ゴム材料A〜Gを、クローラ本体8及び薄肉ゴム膜部17に使用した組み合わせの例を示すと共に、100hr走行時の薄肉ゴム膜部17の破損状態の評価を示す。
【0023】
評価の欄において、○と◎は、良又は優良で、△と×は、悪いことを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表2から、比較例1,2と実施例1,2から薄肉ゴム膜部17に使用するゴム配合中の天然ゴム(NR)配合量がクローラ本体8に使用するゴム配合中の天然ゴム配合量に対し3分の2以下にすることで薄肉ゴム膜部17の耐久性が良いことがわかる。
また、比較例3はクローラ本体8と薄肉ゴム膜部17に加硫速度が同じゴム材料を使用した点で比較例1と同様だが、天然ゴムが入らないゴム材料を使用した例である。比較例4はクローラ本体8に加硫速度の遅いゴム材料を、薄肉ゴム膜部17に加硫速度の速いゴム材料を使用した例である。
【0027】
また、実施例3はシリカ配合のゴム材料を使用した例で比較例1に比べ、シリカ配合が優れていることが分かる。実施例4はシリカを増量した例である。
また、比較例5は比較例1と同様加硫速度が同じゴム材料であっても、シリカ配合のゴム材料を使用した例である。
また、実施例5は加硫速度、天然ゴム配合、シリカ配合等の本件条件を全て満足した(薄肉ゴム膜部17の加硫速度は遅く、天然ゴム配合量は3分の2以下、シリカ配合量は2分の3以上)例である。実施例6はシリカ配合のゴム材料をいずれにも用いているが薄肉ゴム膜部17に使用するゴム材料のほうにシリカ量を多くした例である。
【0028】
図5は第4の形態のゴムクローラ6を示しており、第1の形態のゴムクローラ6と異なる点は、ゴムクローラ6を成型するモールド24の、薄肉ゴム膜部17を形成する部分25に断熱材26等を設けることにより薄肉ゴム膜部17の加硫温度をその他の部分よりも低くするようにしている点であり、その他の構成については、第1の形態のゴムクローラ 6と略同様に構成される。
この形態のゴムクローラ6にあっては、薄肉ゴム膜部17の加硫温度をクローラ本体8の加硫温度よりも低くすることにより、薄肉ゴム膜部17の加硫速度が遅くなり、これによって、薄肉ゴム膜部17とクローラ本体8とを、ともに最適加硫とすることができ、薄肉ゴム膜部17の物理的性質を適正なものとすることができる。
【0029】
なお、薄肉ゴム膜部17の加硫温度を低くする方法としては、断熱材26を用いるのに限定されることはなく、例えば、モールド24の、薄肉ゴム膜部17を形成する部分25を冷却するようにしてもよい。
図6及び図7は第5の形態のゴムクローラ6を示しており、第1の形態のゴムクローラ6と異なる点は、薄肉ゴム膜部17にクローラ周方向Aの切り込み27(溝)が設けられている点であり、その他の構成については、第1の形態のゴムクローラ6と略同様に構成される。
【0030】
薄肉ゴム膜部17が、あまりクローラ外周側Dに位置していると、ゴムクローラ6がスプロケット等に巻き掛けられた時において、薄肉ゴム膜部17が大きく伸ばされることとなるので、薄肉ゴム膜部17は、スプロケットの歯の先端側が、ややかかる位置に設けられていて、スプロケットの歯が薄肉ゴム膜部17に接触するが、薄肉ゴム膜部17にクローラ周方向Aの切り込み27を入れることで、スプロケットの歯の押し付けを緩和できる。
図8は、第6の形態のゴムクローラ6を示しており、薄肉ゴム膜部17のゴム膜基部20が、係合孔13の内面のクローラ厚さ方向E中途部から係合孔13の内方に向けて延出された第1壁20Aと、この第1壁20Aからクローラ外周側Dに向けて延出された第2壁20Bとから構成されていて、薄肉ゴム膜部17が略樋形に形成されていると共に、ゴム膜基部20のクローラ外周側Dに、クローラ外周側Dから凹む凹状部28(くびれ部)を有するものである。
【0031】
また、ゴム膜基部20の第1壁20Aは、ゴム膜本体19及び第2壁20Bよりも厚肉に形成されている。
ところで、係合孔13には、スプロケットの歯が挿入されるので、ゴム膜本体19は、係合孔13のクローラ外周側Dを塞ぐように、すなわち、クローラ本体8のクローラ厚さ方向E中心からクローラ外周側D寄りに設けられるが、ゴムクローラ6がスプロケットに巻き掛けられた部分においては、クローラ本体8のクローラ厚さ方向Eの中心からクローラ外周側Dに行くほど引張り力が大きくなって屈曲変化が大きくなるので、ゴム膜本体19は、比較的大きな伸び縮みが頻繁に生じる。
【0032】
しかしながら、ゴム膜基部20は、係合孔13の内面のクローラ厚さ方向E中途部(クローラ本体8のクローラ厚さ方向E中心の近傍位置)から係合孔13の内方に向けて延出されており、薄肉ゴム膜部17のクローラ本体8への連結部分(付け根部分)がクローラ本体8のクローラ厚さ方向Eの中心に近い位置にあるので、ゴムクローラ6の巻掛け部分における、薄肉ゴム膜部17のクローラ本体8への連結部分の伸び縮みは小さい(尚、薄肉ゴム膜部17のクローラ本体8への連結部分がクローラ本体8のクローラ厚さ方向Eの中心位置にあってもよい)。
【0033】
したがって、図8に示すゴム膜部薄肉17の構成より、薄肉ゴム膜部17に亀裂が生じたとしても、その亀裂がクローラ本体8に波及する惧れが極めて小さいという効果を奏する。
また、この形態のゴムクローラ6にあっては、前述したように、ゴム膜基部20は第1壁20Aと第2壁20Bとによって、該ゴム膜基部20のクローラ外周側Dにクローラ外周側Dから凹む凹状部28が形成されるように構成されているので、ゴムクローラ6がスプロケットに巻き掛けられた部分において、スプロケットの歯によって薄肉ゴム膜部17が押圧されたときに、ゴム膜本体19の弾性的伸長を凹状部28によって促し、すなわちゴム膜本体19が比較的容易に弾性変形して応力集中を緩和して薄肉ゴム膜部17の破れが防止され、しかも、ゴム膜基部20の第1壁20Aが厚肉に形成されているので、ゴム膜基部20の亀裂を防止することができるのである。
【0034】
また、図8において、薄肉ゴム膜部17のゴム膜本体19は、抗張体1の埋設面と、クローラ本体8の外周面8aとの間で、係合孔13を実質的に閉塞するように配置されることによって、スプロケットの歯の挿入深さを十分に確保した上で、スプロケットの歯と、この歯に係合するゴムクローラ6の係合部分との間でゴム膜本体19が挟み込まれて破れ易くなるのを防止しているのである。
また、薄肉ゴム膜部17のゴム膜本体19の厚さT1は、2mm以上、又は、クローラ本体8の最大厚さLの10%〜30%とされている。
【0035】
また、ゴム膜基部20の第2壁20Bは、図例では、クローラ外周側Dに向かうに従って係合孔13の内方に移行する傾斜状に形成されているが、クローラ厚さ方向Eに沿って形成されていてもよい。
その他の構成は、前記各形態のゴムクローラ6と略同様に構成される。
前記形態のゴムクローラ6は、種々の設計変更は自由であり、また、各形態のゴムクローラ6の構成同志を組み合わせてもよい(例えば、薄肉ゴム膜部17をクローラ本体8よりも加硫速度の遅いゴムで構成し、且つ、薄肉ゴム膜部17の加硫温度をその他の部分よりも低くするようにすることで、薄肉ゴム膜部17が最適加硫となるようにしてもよい)。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、無端帯状に形成されたクローラ本体に、該クローラ本体を駆動するスプロケットの歯が挿入される係合孔が周方向に間隔をおいて形成されていると共に、この係合孔のクローラ外周側を塞ぐ薄肉ゴム膜部が設けられており、これらクローラ本体及び薄肉ゴム膜部はゴムを加硫することで形成されると共に、この加硫の際において、ゴムクローラを成型するモールドの、薄肉ゴム膜部を形成する部分に断熱材を設けることにより薄肉ゴム膜部の加硫温度をクローラ本体の加硫温度よりも低くし、これによって薄肉ゴム膜部とクローラ本体とがともに最適加硫となるように、薄肉ゴム膜部の加硫速度をクローラ本体よりも遅くして加流することでゴムクローラを形成することにより、薄肉ゴム膜部のゴムの物理的性質を適正なものにでき、薄肉ゴム膜部の耐久性を向上させることができる。
【0037】
また、薄肉ゴム膜部に、クローラ本体よりも加硫速度の遅いゴムを使用することにより、薄肉ゴム膜部の加硫速度を遅くすることができる。
また、薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムを、クローラ本体を構成するゴムよりも伸びが高い性質のゴムによって構成することにより、薄肉ゴム膜部の耐久性をさらに向上させることができる。
また、薄肉ゴム膜部の、クローラ本体に連接するゴム膜基部の肉厚を、中央側よりも厚して、破損し易い部分を丈夫にすることにより、薄肉ゴム膜部の耐久性をさらに向上させることができる。
【0038】
また、クローラ本体がスプロケットに巻き掛けられた状態において、薄肉ゴム膜部とスプロケットの歯との間に隙間が形成されるように構成することにより、薄肉ゴム膜部の寿命が長くなる。
また、薄肉ゴム膜部は、係合孔を実質的に塞ぐゴム膜本体と、このゴム膜本体をクローラ本体に連接させるゴム膜基部とから構成され、ゴム膜基部は、係合孔の内面のクローラ厚さ方向中途部から係合孔の内方に向けて延出された後、クローラ外周側に向けて延出されて形成されていて、ゴム膜基部のクローラ外周側に、クローラ外周側から凹む凹状部を有することにより、クローラ本体に亀裂が及ぶことを防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の形態に係るゴムクローラの周方向の断面図である。
【図2】 ゴムクローラの幅方向の断面図である。
【図3】 第2の形態に係るゴムクローラの周方向の断面図である。
【図4】 第3の形態に係るゴムクローラの周方向の断面図である。
【図5】 第4の形態のゴムクローラに係るモールドの断面図である。
【図6】 第5の形態に係るゴムクローラの外周側から見た図である。
【図7】 図6のC−C線矢示断面図である。
【図8】 第6の形態に係るゴムクローラの幅方向の断面図である。
【符号の説明】
1 ゴムクローラ
2 スプロケット
2A 歯
8 クローラ本体
13 係合孔
17 薄肉ゴム膜部
19 ゴム膜本体
20 ゴム膜基部
24 モールド
25 薄肉形成部分
26 断熱材
28 凹状部
A クローラ周方向
L 隙間
Claims (7)
- 無端帯状に形成されたクローラ本体に、該クローラ本体を駆動するスプロケットの歯が挿入される係合孔が周方向に間隔をおいて形成されていると共に、この係合孔のクローラ外周側を塞ぐ薄肉ゴム膜部が設けられており、これらクローラ本体及び薄肉ゴム膜部はゴムを加硫することで形成されると共に、この加硫の際において、ゴムクローラを成型するモールドの、薄肉ゴム膜部を形成する部分に断熱材を設けることにより薄肉ゴム膜部の加硫温度をクローラ本体の加硫温度よりも低くし、これによって薄肉ゴム膜部とクローラ本体とがともに最適加硫となるように、薄肉ゴム膜部の加硫速度をクローラ本体よりも遅くして加流することで形成されていることを特徴とするゴムクローラ。
- 薄肉ゴム膜部にクローラ本体よりも加硫速度の遅いマトリックスゴムが使用され、このマトリックスゴムは、SBR、NBR、EPDM、IIRなどの加硫速度の遅いゴム群のうち、少なくとも1種類を含有し、薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムのゴム配合中の天然ゴム配合量がクローラ本体に使用されるゴムのゴム配合中の天然ゴム配合量に対して3分の2重量部以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のゴムクローラ。
- 薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムのゴム配合中のシリカ配合量がクローラ本体に使用されるゴムのゴム配合中のシリカ配合量に対して2分の3重量部以上とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムクローラ。
- 薄肉ゴム膜部に使用される加硫速度の遅いゴムが、クローラ本体を構成するゴムよりも伸びが高い性質のゴムによって構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のゴムクローラ。
- 薄肉ゴム膜部の、クローラ本体に連接するゴム膜基部の肉厚を、中央側よりも厚くしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴムクローラ。
- クローラ本体がスプロケットに巻き掛けられた状態において、薄肉ゴム膜部とスプロケットの歯との間に隙間が形成されるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴムクローラ。
- 薄肉ゴム膜部は、係合孔を実質的に塞ぐゴム膜本体と、このゴム膜本体をクローラ本体に連接させるゴム膜基部とから構成され、ゴム膜基部は、係合孔の内面のクローラ厚さ方向中途部から係合孔の内方に向けて延出された後、クローラ外周側に向けて延出されて形成されていて、ゴム膜基部のクローラ外周側に、クローラ外周側から凹む凹状部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴムクローラ。
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---|---|---|---|
JP2002037414A JP4064123B2 (ja) | 2002-02-14 | 2002-02-14 | ゴムクローラ |
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