JP4063673B2 - クロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光測定の方法および装置 - Google Patents

クロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光測定の方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は分光測定に関し、詳細にはクロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光測定により、化合物を分析する方法および装置に関する。
工場現場または自然環境現場で、複合混合物中に存在する化学物質をその場所で測定することに関心がもたれている。十分な機能を有する化学センサ・システムは、その前部に、例えば化合物セパレータとしてのガスクロマトグラフィ(GC)分析器を、その後方に検出器(すなわち分光計)を、それぞれ組み込んでいる。
ガスクロマトグラフィは化合物を分離する方法であり、任意のガス・サンプル(化学成分の混合物からなる)はシャッター機構によりGCカラムに導入される。導入されたガス・サンプルの成分は2相に分配される。1つの相は大きい表面積を持つ固定床であり、他方の相はこの固定床の中に浸透するガスである。サンプルは、気化され、移動気相(キャリアガス)によりカラム内を移送される。そのときの温度におけるコーティング中へのサンプルの溶解度に基づいて、サンプルが、固定(液体)相に分配される(つまり固定相および移動相間において平衡する)。サンプルの成分は、成分の相対的な蒸気圧および固定床との親和性に基づいて互いに分離される。このプロセスは溶出(溶離)と呼ばれる。
クロマトグラフの心臓部はカラムである。初期のカラムは不活性担体を充填した金属製チューブであり、この担体は固定相液体でコーティングされていた。現在では、最も普及しているカラムは融解石英製であり、キャピラリ状の開口管である。固定相液体がキャピラリ内壁にコーティングされている。
化合物は、GCカラム内に留まる時間によって識別される(サンプルの注入時からピークの最大値が現れるまでの時間)。化学種は、それらの保持時間を基にしてサンプルから識別される。いずれのピーク高さも、特定の検出された化合物の強度または濃度を示す。
キャリアガス(例えば、ヘリウム、濾過空気、窒素)は注入口、次にカラムを通り連続的に流れる。キャリアガスの流量は注意して制御し、再現性の高い保持時間を保証し、検出器のドリフトおよびノイズを最少にしなければならない。サンプルは通常、加熱された注入口に注入され(微量注射器を用いることが多い)、そこで気化され、カラム内に送られる。多くの場合、長さ15〜30メートルのキャピラリーカラムが使用されるが、高速GCでは大幅に短い(1メートル未満)カラムが使用され、これらのカラムの内側は高沸点液体(固定相)の薄膜(例えば、0.2ミクロン)でコーティングされている。サンプルは移動相と固定相に分配され、液体相(固定相液体)における溶解度および蒸気圧に基づいて個々の成分に分離される。カラムを出た後、キャリアガスおよびサンプルは検出器を通過する。検出器は一般に、サンプルの量を測定し、その量を表わす電気信号を発生する。
高速GC分析器またはポータブルGC分析器の特定の構成部品は、高度に改良されてきている。これらの改良部品には、カラム、インジェクタ、およびカラムの精密温度制御を実現するヒータが含まれる。一方では、ポータブル・ガスクロマトグラフ用の検出器は依然として、相対的に劣る検出限界および感度の問題を残している。さらに、従来の検出器、例えば水素炎イオン化検出器(FID)、熱伝導度検出器および光−イオン化検出器のうちいずれかと結合されたGC分析器は、単に、GCカラムから溶出した化合物の有無を示す信号を発生するだけである。しかし、化合物の存在の有無の表示だけでは不十分であり、多くの場合、正確に化合物を識別できる追加の特定情報を得るのが望ましい。
正確に化合物を識別する1つの方法は、各クロマトグラムのピークの直交軸上で示した情報セットを提供できる測定器の組み合わせを利用する。(当業者には、用語の直交の意味は、複数のレベルで特定の化学種を高信頼性で、正確に識別できるデータ、かつ識別のために化合物のさまざまな特性を利用するデータを意味する、ことは理解されるであろう。)このような測定器の組み合わせの1つは、質量分析計(MS)にGCを組み合わせたものである。質量分析計は一般に、GCから溶出する各化合物のフラグメント・イオンの指紋パターンを生成するため、化合物を識別する性能の良い検出器の1つと考えられている。検出器として質量分析計を使用することにより、GCにより得られる分析分離の重要度が大幅に増している。GC−MSの組合せにより得られる情報は、ほとんどの場合、化合物の正確な識別に十分なものである。
GC−MCの不都合な点は、小型、低コスト、現場使用可能な測定器として適さないことである。したがって、今でも、高信頼の直交情報を生成できる現場使用の化学センサを実現することへの強い要望がある。優れた現場測定器は、小型インジェクタ/カラムおよび小型検出器/分光計の両方を備え、さらに検出された化合物を識別できる正確な直交データを高速に生成する必要がある。
GCは絶えず小型化され、コストも低下しているが、質量分析計は依然として高価であり、100,000ドルは軽く超える。質量分析計のサイズは比較的大きく、現場での使用を難しくしている。また、質量分析計の問題点は低圧で操作する必要があることであり、そのスペクトルは解析するのが難しく、高度に訓練されたオペレータを必要とすることが多い。したがって、現場使用可能な分光計の開発は継続されている。
飛行時間イオン移動度分光計(TOF−IMS)は、イオン移動度分光測定の開発初期からガスクロマトグラフ用の検出器として説明されてきており、キャピラリ・クロマトグラフィを用いるTOF−IMSの最初の成功例は1982年であった。高速応答および低記憶効果が得られ、TOF−IMS内の気相イオン化学は再現性が高く、移動度スペクトルから化学的種別情報を収集する基礎を提供する。したがって、GC用のイオン化検出器としてのTOF−IMSは、IMSの全プロセスが周囲圧力で行われ、真空システムを必要としない点を除いて、質量分析計と類似の機能を示す。IMSスペクトルはまた、イオン断片化(fragmentation)がより発生しないため、ピーク数が少なくなり、容易に解明できる。TOF−IMS検出器を用いるガスクロマトグラフの有用性は、空気品質監視、化学薬剤監視、爆発物検出、および特定の環境用途において認識されてきた。
現場利用性は依然として、TOF−IMSの問題点として残っている。過去10年間にわたる進歩にもかかわらず、TOF−IMSドリフト・チューブは依然として、サイズが大きくて高価であり、小型化した場合の検出限界の低下が問題である。したがって、小型インジェクタ/カラムおよび小型検出器/分光計の両方を備え、さらに検出された化合物を識別できる正確な直交データを即時に生成できる、優れた現場測定器に対する研究は現在も継続している。
高電界非対称波形イオン移動度分光計(FAIMS)はTOF−IMSの代替となるものである。FAIMSデバイスでは、化合物を含むガス・サンプルをイオン化源に印加する。イオン化されたガス・サンプルのイオンはイオン・フィルタに吸引され、高電界非対称波形イオン移動度濾過法を施される。次に、フィルタを通過した選択イオン種はイオン検出器に達し、選択されたイオン種の表示を可能にする。
FAIMS濾過法では、フィルタ電極間の高電界にキャリアガス中のイオンを通過させる。電界はフィルタ電極に非対称周期電圧(一般に、別の制御バイアスと共に)を加えることにより形成される。
このプロセスは、イオン移動度の差を強調することにより濾過効果を得る。非対称電界は高電界強度および低電界強度条件の間で交番し、イオンを電界の作用によりイオン移動度に従って移動させる。通常、高電界における移動度と低電界におけるそれとでは差動移動度の差は、ガス・フロー中でイオンがフィルタを通過して運ばれるとき、イオンの正味変位を生じさせる。補償バイアス信号がない場合、イオンはフィルタ電極の1つに衝突し、中性化される。特定のバイアス信号がある場合、特定のイオン種は流路の中心に戻り、フィルタを通過する。非対称電界に応じる移動度の変化量は、化合物に依存する。これにより、適切に設定されたバイアスを与えた状態での、イオン種に応じたイオンの相互分離が可能になる。
過去には、Mine Safety Appliances Co.(MSA)が、円筒形デバイス内で機能するFAIMSの実現を試みた。これについては、米国特許第5,420,424号に開示されている。(電界イオン分光計(FIS)としてMSAにより参照されている。図1参照。)このデバイスは部品が多くて複雑であり、実用性には多少の制限がある。
高速検出は現場で使用される検出装置に必要とされる特徴である。公知のFAIMSデバイスの特性の1つは、検出時間が比較的遅いことである。しかし、GCははるかに高速で作動するため、公知のFAIMSデバイスは各GCピークが示すイオンの完全なスペクトルを生成できない。したがって、これらのFAIMSデバイスは、GCに結合される場合、約10秒の応答時間を要する、単一化合物検出モードに限定される必要がある。次の化合物を測定するにはさらに10秒間必要である。
前述の装置は多くの用途に適合するが、さらに、戦場およびその他の環境で利用するために、検出された化合物のリアルタイムまたはほぼリアルタイムの表示を提供できる小型で、現場使用可能なイオン検出器/分光計を実現することが望ましい。
さらに、GC−FAIMSデバイスは、一度につき1つの化学種に的を絞っているため、例えば空港のセキュリティ検出器、戦場、または工業的環境で有効である広範囲の化学種の同時検出は不可能である。このような装置はまた、ガス・サンプル中の陽イオンおよび陰イオンの両方の同時検出が不可能である。
したがって本発明の目的は、従来技術の限界を克服する機能的で小型の、現場使用可能な検出器/分光計を提供することである。
本発明の別の目的は、GCおよびFAIMSの利点を特徴とするが、短い処理時間で高速に動作できる化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、GCおよびFAIMSの利点を特徴とするが、一度に複数の化学種を検出できる化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、GCおよびFAIMSの利点を特徴とするが、検出された化学種を完全に識別する直交データを発生できる化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、GCおよびFAIMSの利点を特徴とするが、陽イオンおよび陰イオンを同時に検出できる化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、小型イオン・インジェクタ/カラムおよび小型検出器/分光計の両方を備え、かつ、サンプル中の種々の化合物を識別するための正確な直交データを高速で生成できる現場使用可能な化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムに、その現場で、広範囲の化合物を識別するための正確な直交データを高速で生成できる新型の化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、陽イオンおよび陰イオンの両方を同時に検出する能力を有し、かつ分析時間の短縮を達成するセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、反応イオン・ピークを利用して、GCサンプルから保持時間データを抽出する能力を有する一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、得られた化学種の情報を2Dおよび3D表示する能力を有する一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、パターン認識アルゴリズムを利用することにより化学種の情報の抽出が可能な一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、イオン化のために消耗部品を必要としない一種のセンサを提供することである。

本発明のさらに別の目的は、保持時間データに加えて、差動移動度のスペクトル情報を提供する一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、標準サンプルをGCに通す必要性をなくすることができる一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、各々が特定の化合物を検出するように調整されているFAIMSデバイス・アレイにより、簡単な電子装置を用いて、複数の化合物を高速で同時に検出する一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、溶出されたサンプルをイオン化することにより化合物を検出し、印加される異なる振幅の高電界非対称波形を利用して、化学種の高精度な識別に有効な、異なるレベルのイオン集団を生成するGC検出器を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、複数のFAIMSデバイス・アレイを利用して、検出されるイオンを余分に提供する一種のセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、各イオン・フィルタが個々の流路(またはフロー・チャネル)を有し、かつ化合物の識別を容易にするために異なるドーパントがドープされている複数のFAIMSデバイス・アレイを利用するセンサを提供することである
本発明のさらに別の目的は、溶出されたGCピークの内容の高速分析を実現するために、各々がスペクトルの割り当てられたバイアス範囲を掃引される複数のFAIMSデバイス・アレイを利用するセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、高電圧非対称電界の振幅を変化させることにより、またはFAIMSデバイスを通るイオン流量を調整することにより、イオンの集団状態およびイオン動態に関する情報を提供できる検出器を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、GCおよびFAIMSの利点を特徴とするが、同時かつ個別に検出するために、陽イオンおよび陰イオンを、同時にフィルタに通して検出器に送る長手方向に延びる流路を備えることにより、陽イオンおよび陰イオンを同時に検出できる化学センサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、ドリフト、キャリヤガスおよびサンプル・ガス量の比率が適正に制御されてPFAIMSに運ばれるサンプル量の希釈度を制御することにより、広範囲の濃度にわたってサンプルを検出できるセンサを提供することである。
本発明のさらに別の目的は、偏向電極の電位を制御して、イオン・フィルタ領域に注入されるイオン量を調整することにより、希釈度を制御して広範囲の濃度にわたってサンプルを定量的に検出できるセンサを提供することである。
上記およびその他の目的は、ここに開示する本発明により満たされるであろう。本発明は、小型で現場使用可能なパッケージ内に納まる、イオン移動度の差に基づいて化学種を識別する新規の方法と装置により、MS、TOF−IMS、FAIMS、FISおよび他の従来デバイスのコスト、サイズまたは性能限界の問題を克服する。
本発明の1つの構成では、ポータブル化学センサが提供される。本発明の他の構成では、物質を識別するための改良された実験室装置が提供される。本発明の好ましい実施形態では、新規の平板状ないし平板状の高電界非対称イオン移動度分光計(PFAIMS)デバイスをGCと結合させて、新しい種類の化学センサ、すなわちGC−PFAIMSを実現する。
本発明の実施形態によれば、リアルタイムまたはほぼリアルタイムに、その場で、正確な直交データを高速で生成して、広範囲の化合物を識別できる現場使用可能な化学センサを実現する。本発明の1つの構成によれば、ガス・サンプル中の化学種を特徴付ける複数のデータを生成するためのシステムが提供される。本発明によるセンサ・システムは広範囲の化学種を同時検出する能力を有し、また、ガス・サンプル中の陽イオンおよび陰イオンの両方を同時検出する能力を有する。高イオン化エネルギー源を用いて、本発明の実施におけるデバイスは、反応イオン・ピークを利用して、GCから保持時間データを抽出する。これらデバイスは、保持時間データに加え、差動移動度スペクトル情報を生成する能力を有し、化学種情報の2Dおよび3D表示を可能にし、さらに、パターン認識アルゴリズムを利用して、GC−PFAIMS検出データから化学種および追加情報を抽出することも可能である。
さらに別の有利な点は、本発明のデバイスは、低消費電力で、現場で操作できる低コスト、小型、大量生産可能なパッケージであり、さらに、検出された種々の化学種を完全に識別できる直交データを生成できることである。
本発明の実施例において、GC−PFAIMSは、低コストで高感度(ppb−ppt)である。これらデバイスはまた、イオン化するための消耗品(FIDにおける水素ガスのような)を一切必要としない利点を有する。環境条件(例えば、湿度、水分)の変化に起因して保持時間がシフトするため、水素炎イオン化検出器または熱伝導度センサを用いるGCは、現場において、化学標準サンプルを使用して校正する必要がある。しかし、本発明のGC−PFAIMSの操作では、GC自体の検出原理と異なる検出原理を利用するので、2次情報が提供され(すなわち、GCの各ピークに対して差動移動度スペクトルを提供する)、この情報を利用して、実験結果を確認できる。したがって、本発明を使用することにより、複雑で時間を要する、標準サンプルをGCに通す操作の必要がなくなる。
本発明の1つの実施形態には、入口セクション、イオン化セクション、イオン・フィルタセクション、イオン種検出の出力セクション、制御セクション、ガス・サンプルのガスクロマトグラフ(GC)分析セクション、入口セクションに連結されたGCセクションを含む。イオン化セクションはGCセクションからのガス・サンプルをイオン化するセクションであり、イオン化されたサンプルは移動してイオン・フィルタセクションのイオン・フィルタに達する。制御セクションは、高電界非対称波形電圧を供給し、イオン・フィルタセクションを制御して、イオン・フィルタを通過し出力セクションに達して検出されるサンプル中のイオン種を制御する。
本発明の1つの実施形態によれば、イオン・フィルタセクションは少なくとも1つの基板を有し、イオン・フィルタはこの基板上に、基板により出力セクションから分離された少なくとも1つの平面電極を有する。
本発明の1つの実施形態によれば、イオン・フィルタセクションは一対の絶縁基板を有し、イオン・フィルタは一対の平面電極(各基板上に1つ)を有する。
本発明の1つの実施形態によれば、平板状ハウジングは、入口セクションと出力セクションとの間に流路を形成し、流路に沿って延びる少なくとも一対の基板で形成される。イオン・フィルタは流路中に配置され、フィルタは少なくとも一対のフィルタ電極を備える。少なくとも1つの電極が、流路において互いにに対向する基板上にそれぞれ配置されている。制御セクションは、イオン・フィルタ電極に非対称の周期電圧を供給するように配置され、フィルタを通過するイオンの移動を制御する。
本発明のさらに別の実施形態では、平板状チャンバが流路を形成し、GCセクションがガス・サンプルを分離した後にイオン化し、高電界非対称周期信号を印加された平板状チャンバ内で濾過が始まり、流路内で検出が行われて、サンプル中の化学種を識別するための正確なリアルタイムの直交データを生成する。
本発明の別の実施形態では、GCはさらにガス・サンプルを入口に送るキャピラリ・カラムを備え、ガス・サンプルは化合物を含む第1流量のキャリアガスを含む。好ましくは、入口セクション、イオン化セクション、イオン・フィルタセクション、および出力セクションは流路により連通し、さらに、ドリフト・ガスを入口に供給することによって、化合物を含むキャリアガスを流路に沿って出力セクションに送るドリフト・ガス源が備えられている。1つの実施例ではさらに、ドリフト・ガス・チューブを備えており、この場合には、カラム出口を有するキャピラリ・カラムはこのドリフト・ガス・チューブ内に収納される。このカラム出口から、キャリアガス流れおよびカラム出口でキャリアガス流れを包むドリフト・ガス流れを送り出す。1つの実施例では、入口セクションでドリフト・ガス・チューブを結合する結合部を備えており、キャピラリ・チューブはドリフト・ガス・チューブ内から入口セクションに差し込まれる。
別の実施形態では、入口セクション、イオン化部部分、イオン・フィルタセクション、および出力セクションは、平面上に形成され、この平面は、イオン化セクションからフィルタ部分を通過し、出力セクションに達するガス・サンプル中のイオン流れのための流路を長軸に沿って形成している。この場合の出力セクションは、複数のイオン種を同時に検出する検出器を備えている。好ましくは、検出器は、陽イオンおよび陰イオン種を同時に検出するための複数の電極を備える。
本発明のさらに別の実施形態では、サンプルをイオン化し、反応イオンを生成するイオナイザを備え、反応イオンがイオン化されたサンプルと反応して、反応イオン・データ・ピークを生成する。この場合、制御セクションはさらに、反応イオン・データ・ピークを求めることにより、サンプルから保持時間データを抽出する回路を備える。
さらに別の実施形態では、サンプル中の化合物を求めるための補足データを生成する装置を備えており、このデータには、保持時間および別の変数が含まれる。好ましくは、この変数は検出されたイオン種の濃度である。
本発明の1つの実施形態の実施例では、表示部は出力セクションに連結され、少なくとも検出された化学種を表わす少なくとも2次元のデータを表示する。好ましくは、制御セクションはさらに、出力セクションで検出されたデータに応じてイオン種を識別するパターン認識部を備える。好ましい実施形態では、データは差動移動度スペクトルおよび保持時間データを含む。
さらに別の実施形態では、分離部はイオン・フィルタセクションおよび出力セクションとを結合し、イオンが流路を介してイオン化セクションからイオン・フィルタに送られる。この分離部はイオン・フィルタと出力セクションとの結合を非導電に保っている。
さらに別の実施形態では、イオン・フィルタセクションはさらに、濾過されたイオンを出力セクションに高速で移動させて検出するための短いドリフト・チューブを備える。好ましくは、イオン・フィルタはさらに、フロー・ドリフト・チューブ内で互いに対向する一対の電極を備える。この場合に、イオン・フィルタはさらに、一対の電極を備えることもでき、また制御セクションが一対の電極に対し、制御電界として高電界非対称周期電圧および制御機能を供給して、検出のためにイオン・フィルタを介して出力セクションに運ばれたサンプル中の化学種を制御する。ドリフト・チューブは、イオン・フィルタ内のイオンに制御電界を印加するための第1流路領域を形成し、またイオン・フィルタは第1流路領域に配置される。出力セクションはさらに、イオン検出領域を有し、ドリフト・チューブは第2流路領域を形成し、分離部は第1流路領域と検出領域間で第2流路領域内に配置され、イオン・フィルタセクションが制御電界の影響の下でドリフト・チューブ内のイオンを通過させる。フィルタ・セクションを通過したイオンは分離部を介して検出セクションに運ばれて、検出される。分離部は制御電界を検出領域から絶縁する。別の方法では、さらに一対の基板を備え、この基板はドリフト・チューブを形成する。この場合、電極同士は電気的に絶縁されており、基板は平板状の電気的絶縁体である。
別の実施形態では、少なくとも一対の基板が、その基板の間にイオンを流す流路を形成している。この流路は、入口セクションと出力セクション間で流路内に配置された一対のイオン・フィルタ電極を含む複数の電極を有している。1つのフィルタ電極が各基板に組み合わされている。イオン・フィルタは種々のイオン種を含むサンプルを受け入れるように構成され、フィルタ電極は制御セクションと協働してイオンを制御し、イオン・フィルタは選択された複数のイオン種をサンプルから検出セクションへ同時に通過させる。好ましくは、出力部はさらに、フィルタを通過する選択された複数のイオン種を同時に検出できる検出器部を含む。制御セクションは検出器部において別個に独立した出力を供給する。この出力はサンプル中から同時に検出される化学種を表す信号を発生する。検出器部は、流路中に配置された少なくとも一対の検出器電極から形成され、少なくとも1つの電極は基板上に形成される。検出器電極は信号を、検出されたイオン種を表わす個々の出力に送る。第1の検出器電極は第1レベルに保持され、第2の検出器電極は第2レベルに保持されて、フィルタを通過した異なるイオン種を同時に検出する。
本発明の1つの実施形態では、入口セクション、イオン化セクション、イオン・フィルタセクション、および出力セクションは、それらの間にイオンを流す流路を形成しており、さらに、入口セクションと出力セクションとの間で流路内に配置された一対のイオン・フィルタ電極を含む複数の電極を備える。この複数の電極には流路中に形成される検出器電極のアレイを含むことができる。
本発明の1つの実施形態では、イオン・フィルタを通るイオンの軌道は制御セクションにより調節される。出力セクションはさらにセグメントに分かれた検出器を形成するように順に並べた複数の電極を有する検出器を備え、それらのセグメントはイオン・フィルタの下流において流路に沿って離間して配置されて、イオン軌道に従って空間的にイオンを検出する。
本発明の1つの実施形態では、入口セクション、イオン化セクション、イオン・フィルタセクション、および出力セクションは流路を形成しており、さらに、流路内には、電極配列を形成するように設けられた複数の電極を備える。これらの複数の電極は各基板に組み合わせられる少なくとも1つのフィルタ電極であり、イオン・フィルタセクションを形成する。このシステムはさらに、一対の基板を備えてもよい。イオン・フィルタは基板上に形成される少なくとも一対のフィルタ電極を有する。この基板は、フィルタ電極と出力セクションとの間で流路に沿って配置される少なくとも1つの絶縁面を有する。このシステムは出力セクションと連通する複数の専用の流路を備えることができ、その場合の電極配列には、専用流路に設けられるフィルタ電極対アレイが含まれる。システムは複数の専用の流路を有してもよく、この場合、電極アレイは出力部において検出器電極アレイを有している。この検出器電極アレイは専用流路に連通されている。このシステムは、各々が各基板に設けられている少なくとも一対の検出器電極を含む電極アレイを備えてもよく、この場合、入力部はさらに少なくとも1つの電極が設けられたイオン化領域を備える。電極の配列は、複数のセグメントを有するセグメント化検出器を形成することもできる。各セグメントは基板の少なくとも1つの電極から形成されている。これらのセグメントは出力セクションの流路に沿って、長手方向に連続的に形成される。電子回路部は、濾過される化学種に応じて、供給された制御信号を所定範囲で掃引するように構成される。基板により、入力部、流路、出力部、電極、および電子回路部を支持するデバイス・ハウジングを形成できる。フロー・ポンプを利用して、ガス・サンプルを、流路を介して入力部から出力部に吸引する。第3の基板を設けてもよく、この場合、基板は平板状で、2つの流路を形成する。1つの実施例では、入力部は、フロー・ポンプで吸引されたガス・サンプルをイオン化するイオン化源を備え、さらに少なくとも1つの流路中の空気を循環する第2ポンプを備える。
本発明の1つの実施形態では、長軸に沿って延びるスペーサを設けて、入口セクションと出力セクションとの間に流路を形成する。イオン・フィルタが流路中に配置され、一対の間隔を空けたフィルタ電極を有する。制御セクションが、イオン・フィルタ電極間に非対称周期電圧を印加し、かつ制御電界を発生させる電子コントローラを備える。この制御電界が、フィルタを通り長軸に沿って出力セクションに移動するイオンの経路を制御する。スペーサを電極と組み合わせて、流路を囲むデバイス・ハウジングを形成できる。出力部となる出口はさらに検出領域を有してもよく、スペーサは、長軸に沿って延び、かつ入力セクションを検出領域に接続する流路延長部を形成し、イオンはフィルタを通過した後検出領域に移動して検出される。検出領域は少なくとも一対の検出器電極を備えてもよく、さらにイオン・フィルタを検出器から離間させる分離部を備えてもよい。この分離部は検出器電極と制御電界の間を絶縁する。スペーサはさらに長手方向に延長部を形成してもよい。この場合、流路は、これらの延長部の間を延び、スペーサの長手方向に延びる。この実施形態ではさらに、スペーサと組み合わされて入口と出口の間に流路を形成する一対の基板を備えてもよい。さらにこの基板は流路内で互いに対向するフィルタ電極を形成する。好ましくは、基板は、入口と、イオン検出器を有する出力セクションとの間に電気的に絶縁された流路部を形成する絶縁面を有する。別の実施例では、スペーサは、シリコン製であり、流路中に閉じ込め電極を形成する。さらにイオン・フィルタの下流に検出器を設けて、閉じ込め電極を制御することによりフィルタから移動するイオンを検出する。出口はさらに、少なくとも一対の電極で形成された検出器を備えて、流路中のイオンを検出する。この場合、コントローラはさらに信号を電極に供給する電子リード線を備える。さらに、以下の(1)〜(3)の構成が可能である。すなわち、(1)出口には検出器アレイを形成し、各検出器は、フィルタを通過するイオン種を検出するために流路中に配置された一対の電極から構成される。または、(2)出口に検出器を設け、一対のイオン検出器電極を有する。電子回路部はさらに、異なるイオン種を同時かつ個別に検出できるように構成されており、検出された複数のイオンは、検出器により同時に検出された互いに異なる検出イオン種を表わし、電子回路部は各検出器電極からの別々の出力リード線を備える。または、(3)出口に複数の電極セグメントを有する検出器を設け、これらのセグメントが流路に沿って離間して配置されて、イオン軌道に応じて複数のイオンを空間的に別個に検出する。
イオン・フィルタは複数のフィルタを配列させたものでもよく、各フィルタは流路中に一対の電極を有する。好ましくは、流路は平板状であり、さらに入口にイオン源を備える。ポンプは、流路と連通してフィルタを通してイオンを流し、さらに流路中にヒータを備えて流路を加熱し、中性化されたイオンをパージする。この場合、ヒータは少なくとも1つの追加機能を有する一対の電極を備えてもよい。このヒータ電極はイオン・フィルタ電極を備えてもよい。電子コントローラは、フィルタ電極を通して電流を選択的に供給し、熱を発生させる。
本発明の1つの実施形態では、一対の間隔を空けた基板が、基板間で、入口と出力セクションとの間に流路を形成する。さらに、流路中に配置されたイオン・フィルタが一対の離間したフィルタ電極を有する。各基板上には少なくとも1つの電極が設けられている。さらに制御セクションが流路を加熱するヒータを有する。1つの実施例では、基板上の一対の電極がヒータ用の熱源として利用され、制御セクションは熱源にヒータ信号を送るように構成される。1つの実施例では、一対の離間した基板が、基板間で、入口と出力セクションとの間に流路を形成する。この流路中にイオン・フィルタが配置される。さらに、少なくとも一対の間隔を空けた検出器電極を備え、少なくとも一方の検出器電極が各基板上に設けられる。さらに制御セクションが流路を加熱するヒータを備え、熱源として検出器電極を利用する。
本発明の1つの実施形態では、制御機能は制御セクションにより作り出されるデューティ・サイクル制御機能である。流路は入口と出力セクション間で延びており、イオン・フィルタはこの流路中に配置される。制御セクションは、デューティ・サイクル制御機能を用いて非対称周期電圧のデューティ・サイクルを選択的に制御することにより、入口からのイオン種を互いに分離させて、所望のイオン種を、イオン・フィルタを通過させて検出する。1つの実施例では、非対称周期電圧はバイアス電圧で補償されない。さらに、イオン・フィルタの下流には、フィルタを通過するイオン種を検出する検出器が設けられる。
本発明の1つの実施形態では、流路を有するシステムにおいて、複数のデータを生成してガス・サンプル中の化学種を決定する方法が提供される。イオン入口、出力部、および入口と出力間で流路中に配置されるイオン移動度フィルタを形成し、このフィルタが入口から出力に流れるイオンを通過させる。この方法は、GCを用いてガス・サンプルを分離し、キャリアガス中の分離されたサンプルをイオン入口に送るステップと、サンプルをイオン化し、ドリフト・ガスをサンプルに供給し、イオン化されたサンプルをイオン・フィルタに送るステップと、イオンがフィルタ内にあるときに、イオン・フィルタに非対称周期電圧を供給して、イオン化されたサンプル内のイオンの流路を制御するステップと、イオン種をイオン・フィルタに通して出力セクションで検出するステップとを有する。この方法はさらに、非対称周期電圧のデューティ・サイクルを調整してイオン種をイオン移動度に応じて分離するステップと、デューティ・サイクルに応じてフィルタを介してイオン種を通過させて出力部で検出するステップとを含んでもよい。
本発明の別の実施形態では、クロマトグラフィを用いて化合物を分析する方法を提供する。この方法は、分析するガス混合物をクロマトグラフィによりクロマトグラフカラム内で分離し、ガス混合物をイオン化し、イオン化されたガスを電界非対称イオン移動度分光計に通し、分離された混合物の成分を高電界非対称イオン移動度フィルタに通し、混合物中のイオンをイオン移動度に応じて検出する、各ステップを含む。この方法はさらに、溶出されたサンプルにドリフト・ガスを供給して、分光計を通過するイオン流れの容量および流速を増加させるステップを含むことができる。サンプルはGCのキャピラリ・カラムの出口から溶出され、さらに、流れているドリフト・ガスでキャピラリ・カラム出口を囲むステップが含まれる。この方法はまた、システムがサンプルをイオン化し、反応イオンを生成するイオナイザを備え、この反応イオンがイオン化されたサンプルと反応して反応イオン・データ・ピークを生成するステップを含み、さらに、反応イオン・データ・ピークの強度(濃度)の変動を監視してGC保持時間を得るステップを含むことができる。さらに、この方法は、高周波数においてイオンを通過させることにより、陽イオンおよび陰イオンを同時に検出するステップを含むことができる。このシステムはサンプルをイオン化するイオナイザを備える。また、別のステップでは、検出データを処理し、保持時間、補償電圧および強度を得て、これをサンプルに関連付けしてサンプルの化学種を識別する。
本発明の別の実施形態では、ガス・サンプル中の化学種を決定するセンサ・システムは、入口セクション、イオン化セクション、イオン・フィルタセクション、イオン種を検出する出力セクション、制御セクション、およびガス・サンプルのガスクロマトグラフ(GC)分析を行うセクションを備える。GCセクションは入口セクションに連結される。イオン化セクションはGCセクションからのガス・サンプルをイオン化するために配置される。イオン化されたサンプルはイオン・フィルタセクションに移動し、制御セクションは高電界非対称周期電圧、および制御機能をイオン・フィルタに与えて、フィルタを介して出力セクションに運ばれて検出されるサンプル中のイオン種を制御する。平板状ハウジングがサンプル入口と出力部の間で流路を形成し、この流路に沿って延びる少なくとも一対の基板で形成される。少なくとも一対のフィルタ電極を有する、イオン・フィルタが流路中に配置され、少なくとも1つの電極が流路内で互いに対向する基板上に設けられる。制御セクションが、非対称周期電圧をイオン・フィルタ電極に供給して、フィルタを通るイオンの移動を制御するように構成された制御部を有する。
以下の詳細な説明は、化合物を分析するための、クロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光計の方法および装置の実施形態に関する。本発明の実施例では、濾過はイオン移動度の差を強調することにより達成される。非対称電界は高電界強度および低電界強度条件の間で交番し、イオンを電界の作用によりイオン移動度に従って移動させる。一般に、高電界中の移動度は低電界中の移動度とは異なる。この移動度の差は、ガス・フロー中をイオンがフィルタを通過して移動するときに、イオンの正味変位を生じさせる。補償バイアス信号がない場合、イオンはフィルタ電極の1つに衝突し、中性化される。特定のバイアス信号がある場合、特定のイオン種は流路の中心に戻り、フィルタを通過する。非対称電界によじる移動度の変化量は、化合物に依存する。これにより、適切に設定されたバイアスを与えた状態での、イオン種に応じたイオンの相互分離を可能にする。
本発明の実施例では、用語の検出器、分光計およびセンサは特定の意味を持つ。しかし、これら用語は、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、区別なく使用されることがある、ことは理解されるであろう。
本発明の前述およびその他の特徴および利点は、添付図面と併わせた以下の詳細な説明により完全に理解されるであろう。図面では、同一参照符号は同一要素を指す。
本発明は、ガスクロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光測定法により化合物を分析するための方法および装置を提供する。本発明の好ましい実施形態では、図2aに示すGC−PFAIMS化学センサ・システム10は、平板状の高電界非対称イオン移動度分光計(PFAIMS)セクション10Bに緊密に結合され、かつ、データおよびシステム・コントローラセクション10Cにより機能するガスクロマトグラフ(GC)分離セクション10Aを備える。データおよびシステム・コントローラは、システム10の動作を制御し、また検出データを評価および報告する。
本発明の好ましい実施形態では、図2bに示すように、GCセクション10Aは、溶解度に応じてGCから溶出するキャリアガス・サンプル12a(化合物と共に)をPFAIMS分光計10Bの入口16に送出するキャピラリ・カラム11を備える。(加熱されることもある)ドリフト・ガス12cもまた、カラム11を囲む通路11aを経由して入口16に導入される。このドリフト・ガスは分光計を通してイオンを移送するのに必要な容量である。ドリフト・ガスの流量は保持時間の再現性を保証し、検出器のドリフトおよびノイズを最少にするように制御される。化合物/キャリアガス12aおよびドリフト・ガス12cは、イオン源またはイオナイザ18(例えば、放射線、コロナ放電)によりイオン化領域17でイオン化される。この実施形態では、キャリアガスおよびドリフト・ガスは正圧下にあるが、ポンプ14を使用してガス・サンプルをイオン化領域17に吸引し、イオン化されたガスを流路26に沿って流し出すこともできる。いすれにせよ、ガスおよび化合物サンプルは、イオン・フィルタ24の平行電極プレート20、22の間の流路に沿って押出されるか、または吸引され、同時に、コントローラ30の命令により、RF/DC発生器回路28によりフィルタ電極に供給される高強度非対称波形無線周波数(RF)信号40および補償信号41を与えられる。
出力部31は検出器32を備える。イオンはフィルタ24を通過するとき、フィルタ電極に衝突するため、一部は中性化され、残りは検出器32に達する。データおよびシステム・コントローラ10Cはフィルタ電極の信号を調整し、それにより、どのイオン種がフィルタを通過するか制御する。コントローラ10Cは検出器電極を駆動し、それらの出力を受け取り、解析し、表示する。
図2cに示す本発明の別の実施形態では、GCセクション10Aが、PFAIMS分光計10Bの入口16に結合されたGCカラム11を含み、イオン化されたサンプルはフィルタ24を通して検出領域32に送る。検出領域32は質量分析計82または他の検出器に直接結合できる。イオン化源は、全体または一部をドリフト・チューブ内に配置するか、またはドリフト・チューブの外側に配置することができるが、この場合、ガス・サンプルがイオン化源と作用するようにイオン化領域ドリフト・チューブ内に開口している。GCとFAIMSの接続は、GC出口とPFAIMS入口ハウジングの両方に螺合し、かつ、GCカラムがコネクタを通過して、キャリアガスおよびサンプル・ガスをイオン化領域に送り出すことができるT型コネクタを用いるのが望ましい。T型コネクタはGCカラムを保護する役割も果たす。T型コネクタはまた、ドリフト・ガスを受入れ、それをPFAIMSに送り出す。
図2dに示す本発明のさらに別の実施形態では、GC−PFAIMSシステムはイオン化するためのイオン化源18’(遠隔でもよい)を備え、ドリフト・ガス12cはイオン化領域17を通過してPFAIMSフィルタセクション24に導かれ、一方、GCカラムから溶出されたサンプル12aは、イオン化領域の後方に位置する混合領域17’に入る。その結果の生成イオン42’はフィルタ24に流れ込む。
このデバイスの1つの実施形態では、反応イオン17”はドリフト・ガス12cのイオン化により生成され、その後、混合領域17’内でGCカラムからのサンプル12aと混合されて、サンプル12cから所望の生成イオン42’を生成する。GCにより導入された特定の化学物質がイオン化源を侵食する理由から、この構成の利点は、サンプル分子がイオン化源と接触せず、それの作用を受けないことである。この構成を使用すれば通常は特定のイオン化源を使用できない多くの化学物質を使用できる。
GCとFAIMSとの結合も重要である。なぜなら、従来のGCから溶出される化合物の流量が小さすぎて、従来のFAIMSに必要な流量と一致しないからである。イオン軌道がガス流量に大きく影響されることは、公知である。GC(GCカラム)をFAIMSに単に結合するだけでは、イオンがフィルタ電極で多量に中性化されるため、イオンが検出器領域に到達しない結果を引き起こす。
本発明の実施例では、PFAIMSセクション10Bのフィルタ24を適正に機能させるためには、イオンはある一定の速度(例えば、15ミリメートル長さのイオン・フィルタ対し約6メートル/秒)で移動する必要がある。ガス流速はフィルタでのイオン速度を決定する。イオン・フィルタ領域中のガスの平均速度は、V=Q/Aで定義できる。ここでQはガスの容積流量であり、Aはチャネル(流路)の断面積である。一例では、PFAIMSの断面積Aは、5×10E−6 mである。したがって、例えば、フィルタを通るイオンが、約6メートル/秒の平均速度を有するには流量Q=2リットル/分のガスが必要である。このデバイスでは、イオン速度がV=6メートル/秒未満である場合、イオンはフィルタを通過できず、フィルタ電極方向に偏向され、中性化される。
カラムから溶出するGCサンプルの一般的な流量は、数ミリリットル/分の範囲であり、PFAIMSに導入して検出するには遅すぎる。したがって、新規の構成では、両者の接続を調整する必要がある。好ましくは、追加のドリフト・ガスを加えて、GCカラムからのサンプル流れを増加させることにより、GC−PFAIMS方法を実行可能にする。
ドリフト・ガスの容積流量に対するGCカラム内のキャリアガス流量(または、キャリアガスとサンプルの割合)を調整することにより、PFAIMS検出器のダイナミック・レンジを拡大する種々の希釈法を実現できる(例えば、図2c参照)。PFAIMSが高濃度のサンプルを検出する必要がある場合、このサンプル量を公知の方法で希釈し、PFAIMSが最適感度状態で検出できるようにするのが望ましい。
好ましい実施形態では、イオン・フィルタは基板の絶縁面上に形成される。電極を平坦な絶縁面上に形成できることの利点は、パッケージを小型にし、大量生産するのに好都合なことである。したがって、イオン・フィルタはこのような絶縁面上に、流路上で互いに対向するフィルタ電極により形成される。一方、領域X(図2(b))における基板の絶縁面は、フィルタ電極における制御信号を検出器電極から絶縁することにより、ノイズを低下させ、性能を向上させる。
本発明のGC−PFAIMSの実施形態はPFAIMS基板の多機能用途を特徴とする。基板は、GC−PFAIMSデバイスの構成部品またはセクションの高精度な形成および位置決めのためのプラットフォーム(または物理的支持構造)である。基板はハウジングを形成し、他の構成部品を封入するのと同様に、流路をフィルタおよび場合により検出器で囲む。この多機能構成により、部品数が減少すると同時に、構成部品を正確に位置決めして、大量生産における品質および均一性を達成できる。デバイスの小型化はまた、予期しない性能改良をもたらしたが、おそらく、ドリフト・チューブが短くなったことと、基板が電気的絶縁機能を果たしていることが理由であろう。絶縁体(例えば、ガラスまたはセラミック)として、基板は、電極のような構成部品の形成のための直接的なプラットフォームとなり、向上した性能特性を備えることができる。
絶縁された基板/流路を持つGC−PFAIMSセンサにより、簡単な構造ですぐれた性能を得ることができる。GC−PFAIMSデバイスに電気的に絶縁された流路を使用することにより、供給される非対称周期電圧(PFAIMSデバイスの特徴である)を、検出が行われる出力部から(例えば、検出器の電極から)絶縁できる。この小型化が達成されるのは、絶縁基板が、流路内のフィルタと検出器との間に絶縁領域“X”(図2b)を形成するからであり、この空間がさらに有効にフィルタ電界を検出器から分離する。よりノイズのない検出環境は、PFAIMSデバイスの感度の向上、したがってGC−PFAIMSセンサの性能向上を意味する。本発明の実施例では、ppb(十億分率)および場合によりppt(兆分率)の感度を得ることができる。
さらに、絶縁基板上に電極を形成することにより、イオン・フィルタ電極および検出器電極を近接して配置することができ、その結果、期待以上のイオン収集効率の向上が得られ、調整・加熱・制御する必要があるデバイスの大きさが低減される。これにより流路も短縮され、必要電力も減少する。さらに、小型電極を使用することにより、キャパシタンスが減少するので電力消費が低減する。同様に、基板の絶縁面がこのような電極を形成するに適したプラットフォームなので、間隔を空けた電極を配置することは、大量生産に適する。これは単一チップ上に実現できる。
支持体/ハウジングとして基板を利用することは、GC−PFAIMSデバイス周辺を形成する他の“ハウジング”部品または他の構造体を妨害しないことを意味する。例えば、デバイス全体に防湿バリヤを設けることが望ましい。同様に、バッテリのような他の構成部品は、基板/ハウジング外部(例えば、バッテリ・ケース内)に装着することができる。それでもなお、本発明のGC−PFAIMSの実施形態は、性能および特有の構造、基板の絶縁機能;支持機能;多機能ハウジング機能、および他の新規の特徴の長所により、全般的に従来技術に勝る。
図3aは、(GCを取り外した)PFAIMSデバイスの1つの実施形態を示しており、基板が組み合わさって平板状のハウジング13を形成している。この多用途で、部品数の少ないハウジング構造により、実際の占有容積が小さくなり、小型(最大で、1インチ(約2.5cm)×1インチ×1インチの小型化)で、高効率で作動するPFAIMSデバイスが可能になる。
好ましくは、分光計セクション10Bは、間隔を空けた絶縁基板52、54(例えば、Pyrex(登録商標)グラス、Teflon(登録商標)、PCボード)で形成され、その基板上には(金、プラチナ、銀等からなる)フィルタ電極20、22を有する。基板52、54はさらに、これら基板間に、流路26に沿って入力部16および出力部31を形成している。好ましくは、出力部31は、流路で互いに対向する絶縁面19、21上に取り付けられる、検出器電極33、35を持つ検出器32を備える。
ポンプ14は空気流を発生させ、小型構造のハウジング/基板構造と共に、小型のPFAIMSデバイスを実現する。ポンプ14は、調整された空気流を流路に供給するために循環させる。
図3bはPFAIMSの1つの実施形態の正面断面図であり、電極20および22は絶縁基板52および54上に形成されている。絶縁または導電のスペーサ56aおよび56bは、電極20と22との間に調整された空隙を設け、流路を形成する役割を果たす。
イオン・フィルタ24はフィルタ電極の電気信号に応じて、選択されたイオンを通過させる。特定のイオンの取る軌道は、供給された電気信号の作用を受けて、そのイオン種の特性の関数になる。本発明の1つの実施形態の実例では、非対称電気信号は、補償バイアス電圧44と共に供給され、その結果、フィルタは、電子コントローラ30により供給される制御信号に応じて所望のイオン種を通過させる。バイアス電圧44を所定の電圧範囲にわたり掃引することにより、サンプル・ガス12の完全なスペクトルを得ることができる。別の実施形態では、非対称電気信号により、所望のイオン種を通過させることができ、この場合の補償は、電気コントローラ30により供給される制御信号の命令に従って、バイアス電圧を補償する必要もなく、非対称電気信号のデューティ・サイクルを変化させるものである。
別の実施形態では、基板52、54はスペーサ56a、56bにより分離されている。これらのスペーサはシリコン・ウェーハをエッチングまたはダイシングして形成できるが、パターン付けしたテフロン(Teflon)(登録商標)、セラミック、または他の絶縁体からも製作できる。スペーサ56a、56bの厚みは、基板と電極20、22の間の距離を決定する。1つの実施形態では、これらのスペーサを電極として使用し、閉じ込め電圧をシリコン・スペーサ電極に供給して、濾過されたイオンを流路の中心に閉じ込める。この封入により、多数のイオンが検出器に衝突し、その結果、検出機能が向上する。
図3cの分解組立図に示す別の実施形態では、構造電極20xおよび22xは絶縁スペーサ56a、56bにより分離され、流路26はそれらの内部に形成される。一端では、入力部11xがフィルタ24xにイオンを供給し、他端では、濾過されたイオンが出力部31xに入る。
PFAIMS分光計10Bが動作する際、一部のイオンが電極20、22と衝突し、中性化される。これらイオンは加熱することにより除去できる。1つの実施形態では、イオンの除去は、例えばフィルタ電極20、22またはスペーサ電極56a、56bに電流を供給するなどして、流路26を加熱することでなされる。ヒータ電極として、これら電極を使用してイオン・フィルタ領域を加熱することにより、イオン・フィルタ領域が外部温度の変化の影響を受けないようにすることができる。
本発明のデバイスは種々の電極配列を有する。これらの配列には、電極対、電極アレイおよびセグメント化電極が含まれる。濾過は、図2(b)に示すように、単一のフィルタ電極20、22対により行ってもよい。しかし、デバイス性能はフィルタ・アレイ62(例えば、図4〜5)を備えることにより向上する。図4(a、b)には単一のフローチャネル内に設けられた複数フィルタ(すなわち、アレイ)が示されており、図5には各々が少なくとも1つのフィルタまたはアレイを有する複数の流路が示されている。
フィルタ・アレイ62は対となる複数のフィルタ電極20a〜eおよび22a〜eを有してもよく、各電極対に供給する信号を制御して、異なるイオン種を同時に通過させることができる。さらに、各電極対に対してある電圧範囲にわたり制御電圧を掃引して、イオン・スペクトルを濾過することができる。
さらに、フィルタ・アレイを用いることにより、補償電圧の全体スペクトル範囲を、単一フィルタを使用する場合に比べて高速で走査できる。アレイ構成では、各フィルタを狭い電圧範囲の走査に利用することができる。これら走査のすべてを組み合わせることは、結果として、短い時間で所望の全スペクトルを掃引することになる。3つのフィルタがある場合、例えば、スペクトルは3つに分割でき、その各々がフィルタの1つに割り当てられ、それらのすべてが同時に測定可能である。
別の実施形態では、フィルタ・アレイ62は、対となるフィルタ電極20a〜eおよび22a〜eを備え、アレイの各フィルタに異なる補償バイアス電圧44を掃引せずに供給することにより、異なるイオン種を同時に検出できる。この場合、この固定補償電圧により補償できる1つのイオン種だけが、各フィルタを通過し、その濃度が測定される。本発明の実施例では、アレイ62は、分光計のサイズと用途に応じて、任意の数のフィルタを含むことができる。
フィルタ・アレイ62は1つの共通流路26または個別の流路26a〜e(図5)を備えることができる。各流路は、例えば、入口16a、イオン化領域18a、閉じ込め電極56a’、56b’、イオン・フィルタ電極対20a、22a、検出器電極対33a、35a、および出口68aからなる個別の構成部セットを有してもよく、他のイオン種が検出されている間に、特定のイオン種を検出できる。複数の流路を有することにより、追加情報が得られ、サンプリング処理における自由度が大きくなる。
当業者には明らかなように、それぞれの化学種は異なるドーパントに対して異なる親和性を有する。したがって、電極アレイを有する本発明の実施例では、複数の流路を設け、各流路に異なるドーパントを加えることができる。その結果、イオン・フィルタおよび検出器は選択された特定のイオン種に対応し、さらに流路を特定のイオン種に対応させることにより識別能力を向上できる。
短時間で十数種類以上の化合物を測定することを望む場合、アレイ形態の使用は重要である。高速GCをPFAIMSの前段に配置する場合、GCから溶出する化学物質のピーク幅は数秒の狭さである。時間内に必要な補償電圧範囲にわたる完全なスペクトル掃引を行って、GCに含まれる情報を収集するために、スペクトル範囲をアレイのイオン・フィルタ間で細分することができる。これにより、GCピークのすべての成分を同時に検出できる。
本発明の別の実施例では、検出器32は単一または複数の化学種を同時に検出できる。1つの実施形態では、検出器32は、所定の電圧レベルの上側電極33と、他の電圧レベル(場合により、グラウンド・レベル)の下側電極35とを備える。上側電極33は正極性のイオンを電極35に向けて下方に偏向し、イオンを検出する。例えば、図6はこの構成を示しているが、この構成に限定されない。
図6の構成は、特定サンプルの分析状態においていくつかの利点を有する。図6に示すPFAIMSデバイスは2つの流路26’、26’’を有する。GCカラムから溶出するサンプル12は入口16に入り、領域1の流路26’内のイオン化領域17でイオン化される。この実施形態では、電極18はこの領域内でイオン化を行う。
図6の実施形態はまた、本発明の範囲内で、単一電極、偏向電極、MS等の異なる電極構成を有することもある。
イオンはステアリング電極(steering electrode)56ax、56bxの間を通過し、濾過または調整されたガスを含む領域2の流路26’’に流入する。サンプルおよびガスは、流路1に沿って領域1のガス排出口16xから排出される。サンプル分子は、イオン化領域17に導入されると、イオン化され、これらのイオン42’は電極56ax、56bxによりその移動方向を操作され、流路#2に入り、そこでイオン・フィルタ20、22を通過して移動し、検出器32で検出される。イオン移動度と供給電圧に応じて、イオン42’’は検出器32に達する。ガスは排出され、ハンドラ(handler)32において清浄化され、濾過され、ポンプで吸引され、その後、清浄な濾過されたガス66として、領域2の流路2に戻される。
この構成にはいくつかの利点がある。第1の利点は、流路#1と#2の間の開口領域の圧力が平衡していれば、この構成により、流路#1と#2の流量を個別に制御できることである。このことは、特定のGCシステムに応じて、サンプルの流量を大きくしたり、小さくしたりできることを意味し、一方で、イオン・フィルタを通るイオン流量を一定に維持して、均一な、再現性のある結果を得ることができることを意味する。サンプル導入システムが原因でイオン・フィルタを通る流量を変化させる必要がある場合、PFAIMS測定に悪影響を与える。イオン濾過の効率は大きな影響を受け、流量が異なると、PFAIMS分光計のピーク位置(補償電圧)が異なる。さらに、これにより異なる高電圧高周波数電界を利用することが必要となり、電子回路が複雑になる。
第2の利点は、イオン・フィルタ領域でイオンの中性化が起こらないことである。このことは、GCカラムから出る高濃度のサンプルを測定するときに重要となる。イオン化源が供給できるイオン量は固定されているため、サンプル分子が多すぎると、一部の中性サンプル分子はサンプル・イオンと共にクラスタ化し、個別のサンプル分子には見えない、大きな分子を生成することがある。流路#2の清浄ガス流れにイオンを直接注入することにより、また高電圧高周波電界の影響によって、クラスタ化した分子は分解され、イオンは期待されるスペクトルを発生する。
第3の利点は、PFAIMS検出器のダイナミック・レンジが拡大されることである。イオン化領域17(図6)に流入するドリフト・ガスおよびGCサンプル/キャリアガスの容積流量の比を調整することにより、GCから溶出する化合物の濃度を公知の方法により調整/希釈して、サンプルを、PFAIMSフィルタおよび検出器に最適の濃度でPFAIMSイオン・フィルタ24に送ることができる。さらに、ステアリング電極56ax、56bxをパルス化または他の方法で制御して、所定の時間に領域2に入るイオン量を決定できる。
図6の領域1にも、イオン・フィルタ24xを備えることができる。この構成により、並列PFAIMSデバイスが実現し、フィルタ24xは領域1内に、二点鎖線に示すような 電極20’、22’を有し、また、検出器32xは二点鎖に示すような電極33‘,35’を有することもできる。
この実施形態では、異なるガス状態がそれぞれの領域で実現される。2つのステアリング電極56ax、56bxを適正に制御することにより、どちらの領域にイオンを送るかの選択が可能になる。各チャンバがそれ自体のガスおよびバイアス状態を有するため、単一サンプルに対して複数組のデータを生成できる。これにより、サンプル導入にGCを使用するかしないかにかかわらず、簡単な構造で化学種の識別が向上する。
電子コントローラ30は制御電子信号を供給する。制御回路はオン・ボード(例えば、図3)、またはオフ・ボードにでき、GC−PFAIMSデバイス10は少なくとも、制御回路(例えば、図4〜6)に接続するリード線および接触パッドを有する。コントローラからの信号は、図4の基板上に示すように、リード線71によりフィルタ電極に供給される。
電子コントローラ30は、例えば、増幅器34およびマイクロプロセッサ36を備えることができる。増幅器34は、電極35に収集される電荷の関数である検出器32の出力を増幅し、その出力を分析のためにマイクロプロセッサ36に提供する。同様に、増幅器34’を備えることもでき、この場合、電極33は検出器としても利用される。したがって、どちらの電極もイオン電荷および電極に供給される電圧に応じてイオンを検出できる。すなわち、上側電極33を一方の極性の第1検出器として使用し、下側電極35を他方の極性の第2検出器として利用することにより、かつ2つの異なる増幅器を使用することにより、複数のイオンを検出できる。このように、本発明のGC−PFAIMSセンサは、異なるイオン種の同時複数検出が可能である。
さらに、図4に示すように検出器アレイ64を検出器32a〜eとして設けて、複数の選択されたイオン種を同時に検出できるので、ガス・サンプルのスペクトルを得るのに必要な時間が短縮されて、高速検出が実現する(図4)。
別の1つの実施形態では、GC−PFAIMSデバイスの分解能を向上させるために、図7に示すように、検出器32を複数のセグメントに分割する。イオンが電極20と電極22間のフィルタ24を通過するとき、個々のイオン38c’〜38c’’’’は空間的に分離されて検出され、イオンは、そのサイズ、電荷および断面積に応じて決定される軌道42c’〜42c’’’’のそれぞれを有する。したがって、各セグメントが特定のイオン種を検出するため、つまり、検出器セグメント32’は1つのイオン種の濃度(含有率)を検出し、一方で、検出器セグメント32’’は異なるイオン種の濃度を検出するため、スペクトル分解能が向上する。
GC−PFAIMSデバイスは小型でコンパクトであり、絶縁基板に起因するキャパシタンス効果は小さい。好ましい実施形態では、本発明の実施例のデバイスは、広範囲の化合物を識別するため、リアルタイムまたはほぼリアルタイムに、その現場で正確な直交データを高速で生成できる。
本発明による簡単化されたGC−PFAIMSセンサ・システムの利点は一般に、所定のガス・サンプルのスペクトルを生成するのに数分の1秒しか必要としないことである。以前のGC−FAIMSを組み合わせた化学センサ・システムでは、この性能は得られなかった。
本発明の1つの実施例では、PFAIMSは、小型であり,特有の構成を有しているため、イオン・フィルタ領域内のイオンの移動時間を最短化する短いフィルタ電極の使用が可能となり、検出時間が最短化される。イオン化領域から検出器までの平均イオン移動時間tdは、ドリフト・ガス速度Vとイオン・フィルタ領域の長さLfとにより決定され、td=Lf/Vで表される。本発明のデバイスではLfを小さくでき(例えば、15mm以下)、またRF非対称電界の周波数を5MHz程度に高くできるため、PFAIMSの応答時間を極めて短くでき(約1ミリ秒)、その一方で、イオン濾過(識別)の効率を今まで通り高くできる。
本明細書に記載のPFAIMSは、一般のGCおよび高速GCの両方において、単一GCピーク中の化合物の完全な電界非対称イオン移動度スペクトルを生成できることを示してきた。これは従来のFAIMSデバイスでは不可能である。例えば、FIS(MSAにより開発されたFAIMS)は円筒形構成を特徴とし、その電界は不均一であり、イオン収束が発生する。効果的なイオン収束のためには、極めて長いイオン・フィルタ領域長さLfが必要であり、イオンの移動時間tdを大幅に長くする(本明細書に記載のPFAIMSに比べて10〜100倍、またはそれ以上の長さ)。この結果、FISは単一GCピーク中に含まれる化合物の完全なスペクトル走査を実行できない。
繰り返すが、本発明のPFAIMSだけが、一般のGCおよび高速GCの両方において、単一GCピーク中の化合物の完全なFAIMSスペクトルを生成できる。部分的には、これは、小型サイズのGC−PFAIMSがイオンの滞在時間を(すなわち、PFAIMSセクションのイオナイザから検出器に移動する時間)1ミリ秒(1秒の1/1000)程度にまで短くするからである。全体スペクトル(例えば、100ボルトの範囲にわたるバイアスの掃引)は1秒以下で得られる。これにより、イオンの特性把握の速度は、最新の四重極型質量分析計の速度と同等になるが、真空中でMSを作動させる必要はない。したがって、PFAIMSの高速検出はGCとの結合を可能にし、GCの全性能を活用できる高性能化学検出システムを実現する。
本発明の実施例におけるこのシステムは、従来のFISでは追随できない高速GCモードでも作動できる。このモードでは、PFAIMSはGCピーク中のイオンの完全なスペクトルを生成し、図2に示すような、データの2次元および3次元グラフ表示を可能にする。2次元および3次元プロットにより、検出される化合物を高速且つ、高精度で識別できる。これは本発明の重要な利点であり、極めて有意義な化学検出および特性把握を可能にする。
長さの短いPFAIMSセクション10Bおよび容積の小さいイオン化セクションは、GC−PFAIMSがイオン形成の研究をする能力を提供することを意味する。イオンが極めて高速でPFAIMS部分を移動する場合、クラスタの形成およびイオン分子相互作用が発生するための時間が短いために、モノマー・イオンが最も観察される。PFAIMSセクションでの滞在時間が増加すると、イオンが他の中性サンプル分子と相互作用する機会が増加して、イオンと中性分子が付着することにより,大径のクラスタおよび最終生成イオンが形成されてしまうことになる。
また、高電界強度非対称波形電界の強さ(振幅)を変化させることにより、イオンのクラスタ化に影響を与えることができる。大きい振幅または高周波数を持つ電界を供給することにより、イオンのクラスタ形成量を減少させることができ、化合物の識別を向上させる別の手段となる。
本発明の実施例では、GC−PFAIMSシステムを以下のように形成した。すなわち、モデル5710ガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard Co.,Avondale PA)にHPスプリットレス・インジェクタ、30m SP 2300キャピラリ・カラム(Supelco、Bellefonte,PA)、1m長さのカラム、、およびPFAIMS検出器を装備した。空気が1〜2リットル/分でGCドリフト・チューブに供給された。また、空気は、モデル737 Addco Pure Air発生器(Miami、FL)から供給され、さらに5Å分子シーブ・ベッド(sieve bed)(直径5cm×長さ2m)により浄化された。ドリフト・チューブは、PFAIMS電子回路パッケージを含んだアルミニウム・ボックスの一方の側面上に配置された。キャピラリ・カラムの10cm部分が加熱されたチューブを通してPFAIMSまで達している。キャリアガスには分子シーブ・ベッド(sieve bed)により浄化された窒素(99.99%)を使用した。スプリットレス・インジェクタの圧力は10psig(6.9×10−2MPa)であり、分割比は200:1であった。
補償電圧は+/−100Vdcから走査した。非対称波形の、高い方の電圧は1.0kV(20kV/cm)であり、低い方の電圧は−500V(−5kV/cm)であった。周波数は1MHzであり、高周波数は20%のデューティ・サイクルを有する、ただし、本発明の実施例では、システムを最高5MHzの周波数で作動させた。増幅器はAnalog Devicesのモデル459増幅器を基本とし、増幅器の線形、応答時間および帯域幅はそれぞれ7msと140Hzを示した。信号は、走査値をデジタル化して格納する。National Instrumentsボード(モデル6024E)および結果を、時間に対するイオン濃度のスペクトル、プロットおよびグラフとして表示する専用のソフトウェアを使用して処理した。イオン源は全放射能強度が2mCiの小型63Niフォイルであった。しかし、フォイルからのイオン・フラックス量の大部分はイオン化領域の幾何的形状により失われ、予測される実効放射能強度は0.6〜1mCiであった。
GC−PFAIMSセンサは比較的低コスト、高速、高感度、ポータブル化学センサである。GC−PFAIMSは水素炎イオン化検出器(FID)のある最良特性と質量分析計のそれとを組み合わせている。しかし、PFAIMSの平均的検出限界はFIDの限界に比べてほぼ1桁(約10倍)向上している。図8は、同族ケトン(ketone)混合物に対する化合物濃度の関数として、FID応答とPFAIMS応答とを比較している。(平均FID検出限界は2E−10gであり、一方、平均PFAIMS検出限界は2E−11gであることに注意)
質量分析計と同様に、GC−PFAIMS走査により提供される情報は正確な化合物の識別を得る能力を持つ。図9はGC−PFAIMSクロマトグラム(右欄)であり、生成された生成イオンのピーク強度の和を構成する。FIDを使用してもこの同一データを生成できる。GC−PFAIMSでは、クロマトグラムは生成されたデータの一部のみを表わす。FIDと異なり、GC−PFAIMS走査により発生した補償電圧とイオン濃度とを関連付けする2次元プロット(左欄)が得られる。イオン強度は勾配で表される。このデータの組み合わせは、本明細書に開示するGC−PFAIMSセンサ・システムのGCから溶出される化合物を同定する手段を提供する。
本発明によるGC−PFAIMSは、予想外の利点を提供する。GC−PFAIMSは3つのレベルの情報、すなわち保持時間、補償電圧、およびイオン濃度を提供する。さらに、陽イオンおよび陰イオンのスペクトルの両方が同時に得られるため、異なる測定条件(MSで必要とされる)の下での連続分析の必要がなくなる。GC−PFAIMSにより提供される豊富な情報は、場合によっては、標準サンプルを用いる外部校正の必要をなくする。
現場において、または、環境条件、湿度変動もしくはサンプル濃度などの特定の条件においては、化合物の保持時間は予測値からずれることがある。未知の復合混合物を分析する場合に、これは重要な問題である。このずれを補正するために、既知の濃度の既知の標準サンプルを最初にGCに通して、GCを校正する。しかし、標準サンプルを通すことは時間を要し、検出プロセスが複雑になる。さらに、標準サンプルは消耗品であり、現場で使用するには不便である。PFAIMSは2次元情報を提供するため、異なる化合物に対するGC保持時間が予測値からずれるとしても、PFAIMSスペクトルにより提供される追加情報が、標準サンプルを必要とせずに化合物の正確な同定をを可能とする。PFAIMS分光計の再現性は、図10(PFAIMS対FIDの再現性比較)に示すように、FIDの再現性に比べて優れている。
図11aに示すような、左欄の情報は、本明細書に開示したPFAIMS分光計10Bに特有のものである。今日まで、イオン種を識別するために、保持時間に対する補償電圧の2次元プロットが表示されたことはなかった。
右欄のスペクトルは、所定の保持時間における左欄に示すスペクトル中の全イオンを加算することにより生成された全イオン濃度測定値である。これは2つの方法で実行できる。すなわち、ソフトウェア中の全スペクトルの強度を加算するか、または、反応イオン・ピークを形成するイオン化源(例えば、放射線およびコロナ放電源)を使用する場合は、反応イオン・ピークの強度の変化を観測する。
GC−PFAIMSの利点は、反応イオン・ピーク(RIPピーク)の強度変化を観測することにより、保持時間スペクトルを得る能力を有することにある。これによりさらに、ある範囲の化合物を識別するための、正確な直交データを高速で生成できる化学センサを実現することが可能になる。さらに有利なことは、GC−PFAIMSの総合特性が、経験の浅い者にも実行できる簡単な分析プロトコルを可能にし、低コストでの高速のサンプル分析を実現する。
詳細には、反応イオン・ピークは、窒素および水分子のような、“バックグラウンド”空気(キャリアガス)分子のイオン化により発生する化学ピークであり、特定の補償電圧において、検出器で一定強度のイオン信号を発生する。反応イオン・ピークの強度はイオン化源の活性度(エネルギー)により決定される。図11bに示すように、反応イオン・ピークは特定の補償電圧において発生する。GCから有機化合物が溶出されるとき、一部の電荷が反応イオン化合物からこの有機化合物に移動して、生成イオンを発生する。生成イオンが形成されることにより、結果として反応イオン・ピーク強度(有効な反応イオンの量)が低下する。反応イオン・ピーク強度の低下量は、生成イオンを生成するのに必要なイオン量に等しい。複数の生成イオンが同時に生成される場合、反応イオン・ピーク強度は、全ての生成イオン濃度の和に等しい量だけ減少する。言い換えると、反応イオン・ピークの変化を観測することにより、個々の生成イオン・ピークのすべてを加算するのと同じ情報を得ることができる。
本発明のPFAIMSは、陽イオンおよび陰イオンの両方を同時に測定できる能力を有する。例えば質量分析計またはIMSと異なり、PFAIMSは、検出器電極33および35のそれぞれがデータ・システムに対して個別の出力を供給する場合のように、陽イオンおよび陰イオンの両方を同時検出できる。
図12は昆虫フェロモン混合物のGC−PFAIMSスペクトルを示しており、陽イオンおよび陰イオン・スペクトルがPFAIMSにより同時に得られ、その一方で、フェロモン類似物質の混合物を分析する。GCピーク2および4によって、アニオンおよびカチオンの両方の存在を知ることができる。陽イオンおよび陰イオン・スペクトルの両方が同時に得られるため、MSで必要とされる、異なる測定器による連続分析の必要がなくなる。
同時検出は、複数のイオン種を検出するのに1回の走査を必要とするだけであるため、分析時間を削減する。また同時検出は、TOF−IMSに比較して豊富な情報内容を提供するため、検出されるイオン種の正確な識別ができる。例えば、図12では、サンプルの全GCピークを見るための全体測定には約800秒を必要とした。陰イオン(アニオン)に対してこの実験を繰り返すと仮定すると、さらに800秒待つ必要がある。利用できるサンプルが限定されており、また、測定を1度しか実施できないとき、同時検出が可能であることは重要である。
本発明による実施形態によれば、高分解能、高速作動および高感度を達成し、さらに少ない部品数で済み、低コストで大量に製造および組み立てできる構成を持つGC−PFAIMSデバイスを実現する。優れた点は、ppb(十億分率)またはppt(兆分率)の範囲の感度を持つデバイスにであるにもかかわらず、パッケージングが非常に小型になることである。さらに、この小型デバイスの減少した実質占有体積により、イオン検出の際またはデバイス表面の加熱の際に、消費電力の低減が可能となり、小型バッテリを使用することができる。この電力消費およびサイズの減少は、例えば本発明の実施例で製作されたポータブル化学センサを現場で使用する場合のように、ポータブルデバイスを現場で使用する場合には極めて重要である。
したがって、当業者には理解されるところであるが、本発明は、部品数が少なく、また部品構造が簡単な小型GC−PFAIMSデバイスの実現性を提供する。したがって、このデバイスは従来の方法で、かつ高い製造歩留まりで大量生産できる。構造の簡単化は、大幅に性能を向上させる。その結果、高品質、高性能の小型、低コストのデバイスが得られる。
本発明は、過去に開示も実現もされていない。本発明による新規的な進歩は、構成部品の形成を簡単化する多用途ハウジング/基板構造を実現したことである。別の特徴として、基板を物理的プラットフォームとして利用して、イオナイザと適正に位置合わせされるGC受容信部を形成すること、さらに、基板上にフィルタおよび検出器を形成できることが挙げられる。簡単に言えば、デバイス全体の構造を与えることができること、基板を絶縁プラットフォームまたはエンクロージャとして利用して、デバイスを通る流路を形成すること、および/または基板を利用して、性能を向上させる分離構造体を形成できることである。複数の電極形成および機能スペーサの配置についても記載しているが、これらも性能および能力を改良するものである。
本発明のGC−PFAIMS装置の実施例では、濾過の際には、制御要素と共にフィルタに非対称周期電圧が供給される。この制御要素は、バイアス電圧である必要はないが、同一の非対称信号のデューティ・サイクルを調整することにより供給される。構造体を形成できるものとして使用でき、またバイアス制御用のシリコン電極対として使用できるスペーサを、デバイス内に組み込むことができる。最後に、この装置は小型なので、イオンをパージするヒータを組み込むことができ、加熱/温度制御用のフィルタまたは検出器電極の使用が可能となる。
本発明の用途としては、ガス・サンプル中の特定化合物を検出する使いやすいポータブルGC−PFAIMS化学センサを提供できる。検出可能な物質には、例えば、薬品または爆薬に含まれる極微量の毒性ガス、または極微量の元素を含む。現在、質量分析計は、高分解能および高感度で、相対的に高速で、正確な検出を実現できることで知られているが、大型で、高価である。所望の場所(戦場、空港、または家庭もしくは職場のいずれにせよ)において多数のポータブルセンサを設置できるようにする必要性は依然として大きい。したがって、高品質性能を実現する低コストの、大量生産可能な、ポータブルデバイスに対する強い要求が存在する。本発明はこの強い要求に対応するものである。
本発明の好ましい実施形態は、高周波数高電圧波形を利用する電界非対称イオン移動度濾過方式を使用する。電界は、イオン移動方向に対し垂直に供給されるので、装置を平板状に形成するのが好ましい。この平板形状により、小型のドリフト・チューブを、低コストで製作できる。このドリフト・チューブは、好ましくは微細加工により製作される。また電子回路を小型化し、全推定電力を、現場測定器に適するレベルである4ワット以下(非加熱)にまで低減できる。
FISデバイスに勝るFAIMSデバイスの別の利点は、デバイス・アレイを組み込む能力である。FAIMSフィルタのアレイが組み込めるという事実は、アレイを構成している各フィルタを、特定化合物を検出するように設定できることを意味する。異なる化合物を検出するのにフィルタ条件を異なる設定に変更することなく、アレイを構成するフィルタの数で決まる複数の化合物を同時に検出できる。
本発明はクロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光計の方法および装置の改良を実現するものであり、好ましくは、本発明は、イオン化セクション、イオン・フィルタセクションおよびイオン検出部分に緊密に結合されたガスクロマトグラム分析計セクションを含み、イオン化の前に、サンプル化合物を少なくとも少量分離する。さらに、イオン濾過は、高電界非対称周期信号の影響を受けて、偏平なチャンバ内で進行し、流路内で行われる検出により、広範囲の化合物を識別するための正確で、リアルタイムの直交データが生成する。
本発明は、クロマトグラフ高電界非対称波形イオン移動度分光計による改良された化学分析を提供する。本発明は、小型で現場使用可能な、パッケージ内でイオン移動度に基づいて化学種を識別する新規の方法および装置によって、MS、TOF−IMS、FAIMSおよび他の従来デバイスのコスト、サイズまたは性能限界を克服する。その結果、新規な平板状の高電界非対称イオン移動度分光計デバイスをGCセパレータと緊密に結合させて、新型の化学センサ、すなわちGC−PFAIMS化学センサを実現する。広範囲の化合物を識別するため、リアルタイムまたはほぼリアルタイムに、その現場で正確な直交データを高速で生成できる現場使用可能な一体型のGC−PFAIMS化学センサを実現できる。これらのセンサはさらに、広範囲の化学種を同時識別する能力を有し、またガス・サンプル中の陽イオンおよび陰イオンの両方を同時検出する能力を有する。さらに優れた点は、このセンサは、低消費電力で、現場で操作できる低コスト、小型、大量生産可能なパッケージにより実現でき、さらに、種々の検出される化学種を完全に識別できる直交データを生成できることである。
本発明の用途の例には、化学センサ、爆発物センサ等が含まれる。前述の実施形態のさまざまな変形形態もまた、本発明の精神と範囲内に含まれる。本明細書で開示した緒例は、説明目的で示したものであり、これに限定されるものではない。前記およびその他の実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲の内容によってのみ限定される。
従来技術のFIS/FAIMS分光計の断面概略図である。 本発明のGC−PFAIMSのシステム・レベルの概略図である。 GCカラムをPFAIMSと結合した1つの構成の実施形態のより詳細な概略図である。 イオン化源が完全に流路の内側にない場合を示すGC−PFAIMSの別の概略図である。 GCカラムからサンプルを導入する前に、イオン化を実行する場合を示す別の概略図である。 本発明のPRAIMSの実施形態の斜視図である。 図3aの実施形態の側面断面図であり、スペーサと離間した基板とを示す。 絶縁スペーサを使用する、本発明の別の実施形態の分解斜視図である。 単一流路内のフィルタ・アレイおよび検出器電極の概略図である。 単一流路内のフィルタ・アレイおよび検出器電極の概略図である。 複数の流路を持つフィルタ・アレイの分解図である。 本発明の実施例における多層PFAIMSの概略図である。 本発明の実施例におけるセグメント化された検出器電極の概略図である。 PFAIMSの検出限界を工業規格の素炎イオン化検出器(FID)と比較する実験データである。 同族のアルコール混合物のGC−PFAIMSスペクトルを示す。 PFAIMSの再現性を水素炎イオン化検出器と比較した図である。2つのグラフは相対的な再現性性能を示す。 GC−PFAIMSスペクトルを示す。 反応イオン・ピーク、およびその反応イオンと生成イオンとの相互作用効果を示す。 検出器としてPFAIMSを使用して、同時に得た陽イオンおよび陰イオンのスペクトルである。
符号の説明
10…センサシステム
10A…ガスクロマトグラフセクション
10B…高電界非対称波形イオン動度分光測定セクション
10C…コントローラ
12a…キャリア・ガス・サンプル
12c…ドリフト・ガス
14…ポンプ
16…入口セクション
17…イオン化セクション
18…イオン源
24…イオン・フィルタ
26…流路
30…フィルタのコントローラ
31…出口セクション
32…検出器
52,54…基板

Claims (46)

  1. サンプルのクロマトグラフ溶出物を分析する装置であって、
    入力部、イオンを濾過するイオン・フィルタ部、出力部、およびそれらを接続する流路、ならびに表示部を備え、
    前記流路が前記入力部と出力部の間で前記イオン・フィルタ部を通って延び、前記入力部が前記流路にイオン流れを供給し、前記イオンが前記流路に沿って前記イオン・フィルタ部に流れ、
    前記イオン・フィルタ部が、前記流路に前記流路を横切る補償された非対称電界を供給することにより、前記イオン流れから少なくとも1つのイオン種を選択し、前記選択が前記補償された非対称電界中の前記選択されたイオン種の高電界移動度特性に基づいてなされ、前記選択されたイオン種が前記出力部に達して検出され、
    前記入力部は前記イオン流れ内で保持時間に渡ってイオン化されたクロマトグラフ溶出物を提供し、この提供された溶出物は、少なくとも1つの濃度ピーク形状をそれぞれが持つ複数の濃度ピークを形成し、ピークは立上がり区間から前記少なくとも1つのピーク形状を通って立下がり区間にまで広がり、かつピーク持続時間を有し、前記イオン化された溶出物が各ピークについての前記少なくとも1つのピーク形状を表す代表イオン種を含んでおり、
    前記イオン・フィルタ部が、各濃度ピークに対する前記代表イオン種を、少なくとも1つの補償電圧を前記イオン・フィルタに印加することによって選択し、前記選択された代表イオン種が各濃度ピークについての前記ピーク持続時間内に、前記イオン・フィルタ部を通り前記出力部に達して、前記溶出物の特性を決定する検出データを生成させ
    前記表示部が、保持時間に対する補償電圧のプロットを表示し、この保持時間に対する補償電圧が前記サンプルの解析に用いられる装置。
  2. 請求項1において、前記イオン化されたクロマトグラフ溶出物の提供から、前記検出データの生成までの時間の長さが、前記ピーク持続時間より短い装置。
  3. 請求項1において、前記入力部が前記クロマトグラフ溶出物を前記流路に、時間t0において提供するように配置され、
    前記ピーク持続時間が時間t1として表され、前記溶出物ピークが時間t0において、前記立上がり縁で始まり、時間t1において、前記立下り区間で終了し、
    前記少なくとも1つのピーク形状の前記流路への提供から、前記検出までの時間の長さが時間t1より短い装置。
  4. 請求項1において、前記検出データが、(a)前記イオン検出の強度、(b)前記時間の長さ、(c)前記補償された非対称高電界の状態を含む装置。
  5. 請求項4において、前記イオン流れが反応イオンを含み、前記検出データがさらに(d)保持時間を含む装置。
  6. 請求項5において、前記入力部がクロマトグラフ出力を含み、
    前記溶出物が前記クロマトグラフ出力から前記流路に送り出され、前記溶出物が前記クロマトグラフ内に滞在した時間に関連する保持時間を有し、
    前記検出データにより、前記補償状態と保持時間を比較して、溶出物の特性を決定する装置。
  7. 請求項1において、前記入力部が前記溶出物をイオン化するイオン化セクションを備え、
    前記出力部が前記検出データを生成する検出器を備え、
    さらに、前記電界補償を走査する、前記フィルタ部分に接続された制御部を備え、
    前記溶出物形状を含む前記溶出物が、前記イオン化セクションでイオン化され、前記流路内で前記フィルタ部分に送られる代表イオン流れを発生させ、
    前記電界補償を前記制御部により数回走査し、前記代表イオン流れの複数の移動度スペクトルを生成し、
    前記数回の走査が、前記ピーク持続時間より短い総合持続時間を有し、前記溶出物中の化学種の特性が決定される装置。
  8. 請求項1において、前記入力部がガスクロマトグラフと前記流路に組み込まれたイオン化セクションとを備え、前記クロマトグラフが溶出物を前記イオン化セクションに送り出し、
    前記イオン化セクションが前記イオン化されたクロマトグラフ溶出物を生成する装置。
  9. 請求項1において、さらに、デバイス・ハウジングを備え、
    前記制御部が、非対称電界発生信号を前記イオン・フィルタ部に供給するための、前記ハウジングに結合された接点を有する装置。
  10. 請求項1において、前記溶出物ピークが複数のピーク形状を含み、
    前記電界補償の走査が前記フィルタ部分で実行されて、前記複数のピーク形状の差動移動度スペクトルを生成し、
    前記走査が、前記ピーク持続時間より短い時間内で実行され、前記溶出物中の化学種の特性が決定される装置。
  11. 請求項10において、さらに、前記補償された非対称電界を制御する制御部を備え、前記制御部が、前記電界に印加する可変DCバイアスを供給して、前記電界補償を走査する装置。
  12. 請求項10において、さらに、前記フィルタ部分に結合され、このフィルタ部分に非対称RF信号を供給して、前記補償された非対称電界を発生させる制御部を備え、
    前記制御部がRF信号の形状を走査して前記補償を走査する装置。
  13. 請求項12において、前記RF信号の形状がRF信号のデューティ・サイクルである装置。
  14. 請求項1において、前記入力部がさらに、前記流路内の入口と、ガス・サンプルを前記入口に送り出すキャピラリ・カラムを有するガスクロマトグラフとを備え、
    前記ガス・サンプルが、化合物を含むキャリヤ・ガスを含み、
    さらに、ドリフト・ガス源を備え、
    前記ドリフト・ガス源がドリフト・ガスを前記入口に供給して、前記化合物を含むキャリヤ・ガスを前記流路に沿って前記出力部に移送する装置。
  15. 請求項14において、さらに、ドリフト・ガス・チューブを備え、
    前記キャリヤ・ガスを送り出すカラム出口を有する前記キャピラリ・カラムが前記ドリフト・ガス・チューブ内に収納され、
    前記ドリフト・ガス流れが前記カラム出口の位置で前記キャリヤ・ガス流れを囲む装置。
  16. 請求項1において、前記イオン・フィルタ部が、前記流路の横断方向に一対の電極プレートを備え、
    前記補償された非対称電界が前記電極プレート間で発生する装置。
  17. 請求項16において、前記イオン・フィルタ部が非円筒形である装置。
  18. 請求項17において、さらに、絶縁基板を備え、
    前記電極プレートを前記イオン・フィルタ部の前記基板上に配置して、フィルタ電極を形成する装置
  19. 請求項1において、さらに、一対の基板を備え、
    前記基板を組み合わせて前記流路を形成し、
    前記イオン・フィルタ部が、前記流路の横断方向に対向し、かつ前記基板に組み込まれる一対の間隔を空けた電極を備える装置。
  20. 請求項19において、前記電界が前記電極間に形成され、前記電界が非収束である装置。
  21. 請求項20において、前記電極が平板状である装置。
  22. 請求項20において、前記電極が平行である装置。
  23. 請求項20において、前記基板がデバイス・ハウジングを形成し、このデバイス・ハウジングが前記入力部、前記流路、および前記出力部を支持している装置。
  24. 請求項1において、さらに、前記出力部に前記イオン検出を行う検出器を備え、
    前記フィルタ部が陽イオンおよび陰イオンを前記検出器まで移送し、
    前記検出器が一対の電極を備え、これらの電極がバイアスされ、協働して、前記フィルタ部分により移送された前記陽イオンおよび陰イオンを同時検出する装置。
  25. 請求項1において、さらに、前記補償された非対称電界を制御する制御部を備え、
    前記制御部により、前記電界を通過する前記イオン種の軌道を調整し、
    前記出力部がさらに、検出器を備え、
    前記検出器が、セグメント化された検出器を形成する連続する複数の電極を備え、各セグメントは前記流路に沿って離間し、前記イオン種の軌道に応じて、前記イオンを空間的に検出する装置
  26. 請求項1において、前記流路が大気圧、またはそれに近い気圧で動作する装置
  27. 請求項1において、前記イオン・フィルタ部がフィルタ・アレイを備え、各フィルタが前記流路中に一対の電極を備えている装置。
  28. 請求項1において、さらに、前記流路中にヒータを備えている装置。
  29. 請求項1において、前記クロマトグラフが、ガスクトマトグラフである装置。
  30. 請求項1において、前記表示部が、前記出力部に結合され、前記検出されたイオン種を表す少なくとも二次元のデータを表示する装置。
  31. 請求項1において、さらに、前記イオン・フィルタ部と前記出力部とを結合する分離部を備え、この絶縁部分により前記フィルタ部分と出力部の非導電接続が維持されている装置。
  32. 請求項1において、さらに、前記イオン・フィルタ部内に配置された一対のイオン・フィルタ電極を含む複数の電極を備えている装置。
  33. 請求項32において、前記複数の電極が前記流路中に形成された電極アレイを備えている装置。
  34. 請求項32において、さらに、前記出力部と連通する複数の専用流路を備え、
    前記電極の配置が、前記専用流路に設けられたフィルタ電極対のアレイを備えている装置。
  35. 請求項32において、さらに、複数の専用流路を備え、
    電極の前記電極の配置が、前記出力部内に、かつ前記専用流路と連通する検出器電極のアレイを備えている装置。
  36. 請求項32において、前記電極の前記配置が少なくとも一対の検出器電極を備え、各対の1つの電極が各基板に設けられており、
    前記入力部がさらに、イオン化領域を備え、さらに、前記イオン化領域中に少なくとも1つの電極とを備えている装置。
  37. 請求項32において、前記電極の配置がさらに、複数のセグメントを持つ分割された検出器を形成し、
    各セグメントが基板上の少なくとも1つの電極により形成され、
    前記セグメントが前記出力部内に、前記流路に沿って長手方向に連続的に形成されている装置。
  38. 請求項において、さらに、前記入力部から前記出力部に前記流路を通してガス・サンプルを吸引するフロー・ポンプを備えている装置。
  39. 請求項38において、前記入力部が、前記ポンプで吸引されるガス・サンプルの前記イオン化を行うイオン化源を備え、さらに、少なくとも1つの流路中の空気を循環させる第2ポンプを備えている装置。
  40. 請求項1において、前記イオン・フィルタ部が前記流路内に一対の電極プレートを形成し
    前記補償された非対称電界が前記電極プレート間で発生し、
    さらに、前記流路の表面を形成する一対の絶縁基板を備え、
    前記電極プレートが前記イオン・フィルタ部内の前記基板上に形成されている装置。
  41. 請求項40において、さらに、第3の基板を備え、前記一対および第3の基板が少なくとも2つの近接する流路を形成している装置。
  42. 請求項40において、さらに、前記入力部と出力部の間で前記流路に沿って延びるスペーサを備え、
    前記イオン・フィルタ部が一対の間隔を空けたフィルタ電極を備えている装置。
  43. 請求項42において、前記スペーサが前記電極と協働して、前記流路を囲むデバイス・ハウジングを形成している装置。
  44. 請求項1において、前記検出データが直交検出データを含む装置。
  45. 請求項1において、前記表示部が、前記検出データの3次元プロットを含む装置。
  46. クロマトグラフと、請求項1から45のいずれか一項に記載の装置とを備えたシステム。
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