以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るガス分析システムの構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るガス分析システム10の構成図である。
図1に示すように、ガス分析システム10は、分析対象の気体であるサンプルガスからガスクロマトグラムを生成するガスクロマトグラフ20と、サンプルガスの分析の結果を表示するための例えばPC(Personal Computer)などのコンピューター60とを備えている。
ガスクロマトグラフ20は、キャリアガスとして使用される空気が圧縮されて貯蔵されている、空気の供給源である圧縮空気タンク21と、圧縮空気タンク21に接続されていて圧縮空気タンク21から供給される空気が流れる流路22と、流路22に接続されていて流路22から空気がキャリアガスとして流入する流路23と、流路23に接続されていて流路23から空気がキャリアガスとして流入するとともに、サンプルガスを注入するための注射器90からサンプルガスが注入されるための注入部24と、注入部24に接続されていて、注入部24でキャリアガスにサンプルガスが混合されたガスとしての混合ガスを成分毎に分離するためのキャピラリーカラムとしてのガス分離カラム25と、流路22に接続されていて流路22から空気がキャリアガスの参照用の空気(以下「参照用空気」という。)として流入する流路26と、流路26に接続されていて流路26から参照用空気が流入するキャピラリーカラムとしての参照用カラム27と、ガス分離カラム25および参照用カラム27に接続されていて、ガス分離カラム25および参照用カラム27から流入するガスの成分を検出する検出器30とを備えている。
ガス分離カラム25と、参照用カラム27とは、同一の構造のカラムであって、互いに重なって同一の経路を通るように配置されている。
検出器30は、ガスの成分をソフトイオン化することができるコロナ放電によって、ガスの成分をイオン化して、イオン化後の電子を捕獲することによってガスの成分を検知するものである。
図2は、検出器30の内部の構成図である。
図2に示すように、検出器30は、ガス分離カラム25(図1参照。)に接続されている管であるサンプル用管41と、サンプル用管41を流れるガスに対してコロナ放電を実行するコロナ放電部としてのサンプル用コロナ放電部42と、サンプル用コロナ放電部42によるコロナ放電によって生成されたイオンを検知するイオン検知部としてのサンプル用イオン検知部43とを備えている。サンプル用コロナ放電部42は、サンプル用管41に設置されていてコロナ放電を実行するためのサンプル用イオン電極42aと、サンプル用イオン電極42aに対向するイオン対向電極42bと、サンプル用イオン電極42aに接続されていて電圧を変更可能なサンプル用高電圧電源42cとを備えている。サンプル用イオン検知部43は、サンプル用管41に設置されていてイオンを検知するためのサンプル用イオン検知電極43aと、サンプル用イオン検知電極43aに対向するイオン検知対向電極43bと、イオン検知対向電極43bに接続されている電源43cと、サンプル用イオン検知電極43aに接続されていてサンプル用管41内のイオンを検知するためのサンプル用イオン検知回路44とを備えている。サンプル用コロナ放電部42およびサンプル用イオン検知部43は、混合ガスの流路において、ガス分離カラム25の下流に配置されている。ガス分離カラム25からサンプル用管41の内部に入ったガスは、サンプル用コロナ放電部42によるコロナ放電によって成分がイオン化され、イオン化後の電子がサンプル用イオン検知部43によって捕獲されることによって、成分の濃度が検知される。
検出器30は、参照用カラム27(図1参照。)に接続されている管である参照用管51と、参照用管51を流れるガスである、参照用空気に対してコロナ放電を実行するコロナ放電部としての参照用コロナ放電部52と、参照用コロナ放電部52によるコロナ放電によって生成されたイオンを検知するイオン検知部としての参照用イオン検知部53とを備えている。参照用コロナ放電部52は、参照用管51に設置されていてコロナ放電を実行するための参照用イオン電極52aと、参照用イオン電極52aに対向するイオン対向電極52bと、参照用イオン電極52aに接続されていて電圧を変更可能な参照用高電圧電源52cとを備えている。参照用イオン検知部53は、参照用管51に設置されていてイオンを検知するための参照用イオン検知電極53aと、参照用イオン検知電極53aに対向するイオン検知対向電極53bと、イオン検知対向電極53bに接続されている電源53cと、参照用イオン検知電極53aに接続されていて参照用管51内のイオンを検知するための参照用イオン検知回路54とを備えている。参照用コロナ放電部52および参照用イオン検知部53は、参照用空気の流路において、参照用カラム27の下流に配置されている。参照用カラム27から参照用管51の内部に入った空気は、参照用コロナ放電部52によるコロナ放電によって成分がイオン化され、イオン化後の電子が参照用イオン検知部53によって捕獲されることによって、成分の濃度が検知される。
サンプル用管41を流れるキャリアガスと、参照用管51を流れる参照用空気とは、同一の圧縮空気タンク21から供給された空気である。
サンプル用コロナ放電部42と、参照用コロナ放電部52とは、同様の構造である。しかしながら、コロナ放電によってガスをイオン化することができる電圧は、コロナ放電を実行するためのイオン電極の針の長さ、形状および傾き、コロナ放電を実行するためのイオン電極およびイオン対向電極の間の距離、コロナ放電を実行する環境の温度、湿度、気圧および酸素濃度など、様々な条件によって変わる。したがって、コロナ放電によってガスをイオン化することができる電圧は、サンプル用コロナ放電部42と、参照用コロナ放電部52とで一致しない可能性がある。
図3は、サンプル用イオン検知回路44の構成図である。
図3に示すように、サンプル用イオン検知回路44は、サンプル用イオン検知電極43a(図2参照。)に接続されていて電流を電圧に変換する電流電圧変換アンプ44aと、電流電圧変換アンプ44aから出力された電圧のベース電圧が例えば1.0Vになるように調整するバイアス調整回路44bとを備えている。
以上においては、サンプル用イオン検知回路44の構成について説明しているが、参照用イオン検知回路54の構成についても同様である。
図4は、検出器30と、コンピューター60との接続を示す構成図である。
図4に示すように、コンピューター60は、D/Aコンバーター71を介してサンプル用高電圧電源42cに信号を入力することによって、サンプル用高電圧電源42cによって生成される電力の電圧を制御する。また、コンピューター60は、サンプル用イオン検知回路44からの信号をA/Dコンバーター72を介して入力することによって、サンプル用イオン検知回路44によって検知された電圧を取得する。
同様に、コンピューター60は、D/Aコンバーター73を介して参照用高電圧電源52cに信号を入力することによって、参照用高電圧電源52cによって生成される電力の電圧を制御する。また、コンピューター60は、参照用イオン検知回路54からの信号をA/Dコンバーター74を介して入力することによって、参照用イオン検知回路54によって検知された電圧を取得する。
図5は、コンピューター60のブロック図である。
図5に示すように、コンピューター60は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部61と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部62と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部63と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部64と、コンピューター60全体を制御する制御部65とを備えている。
コンピューター60は、サンプルガスの分析結果を表示部62に表示することができる。
記憶部64は、ガスを分析するためのガス分析プログラム64aを記憶している。ガス分析プログラム64aは、例えば、コンピューター60の製造段階でコンピューター60にインストールされていても良いし、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体からコンピューター60に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター60に追加でインストールされても良い。
記憶部64は、サンプル用イオン検知回路44(図2参照。)のベース電圧VSBの下限の閾値VSLを示すサンプル側下限閾値情報64bと、ベース電圧VSBの上限の閾値VSHを示すサンプル側上限閾値情報64cと、参照用イオン検知回路54(図2参照。)のベース電圧VRBの下限の閾値VRLを示す参照側下限閾値情報64dと、ベース電圧VRBの上限の閾値VRHを示す参照側上限閾値情報64eとを記憶している。閾値VSLおよび閾値VSHは、これらの間にサンプル用イオン検知回路44の検知電圧VDSが存在する場合に、サンプル用イオン検知電極43a(図2参照。)に例えば1pAなどの極めて微かなイオン化電流が流れるように、ガス分析システム10を用いて事前に取得されたものである。同様に、閾値VRLおよび閾値VRHは、これらの間に参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRが存在する場合に、参照用イオン検知電極53a(図2参照。)に例えば1pAなどの極めて微かなイオン化電流が流れるように、ガス分析システム10を用いて事前に取得されたものである。
記憶部64は、サンプル用コロナ放電部42(図2参照。)によるコロナ放電の電圧、すなわち、サンプル用高電圧電源42c(図2参照。)の電圧(以下「サンプル側コロナ放電電圧」という。)VCSと、サンプル用コロナ放電部42によって実行されるコロナ放電によるエネルギー(以下「サンプル側エネルギー」という。)との対応関係を示すサンプル用特性64fを、ガス分離カラム25(図1参照。)における流量と、検出器30(図1参照。)の温度との組み合わせ毎に記憶している。同様に、記憶部64は、参照用コロナ放電部52(図2参照。)によるコロナ放電の電圧、すなわち、参照用高電圧電源52c(図2参照。)の電圧(以下「参照側コロナ放電電圧」という。)VCRと、参照用コロナ放電部52によって実行されるコロナ放電によるエネルギー(以下「参照側エネルギー」という。)との対応関係を示す参照用特性64gを、参照用カラム27(図1参照。)における流量と、検出器30の温度との組み合わせ毎に記憶している。なお、ガス分離カラム25と、参照用カラム27とが同一の構造のカラムであるので、ガス分離カラム25における流量と、参照用カラム27における流量とは、常に等しい。サンプル用特性64fおよび参照用特性64gは、ガス分析システム10と、イオン化エネルギーの値が既知であるガスとを用いて事前に取得されたものである。サンプル側コロナ放電電圧VCSと、参照側コロナ放電電圧VCRとは、1V単位で制御されることが可能であり、下限が0Vであって、上限が例えば10000Vである。
記憶部64は、参照側コロナ放電電圧VCRに対する適切なサンプル側コロナ放電電圧VCSを示す関数(以下「コロナ放電電圧関数」という。)64hを記憶している。コロナ放電電圧関数64hは、具体的には、VCS=f(VCR,t,v)である。VCS=f(VCR,t,v)におけるt、vは、それぞれ、検出器30の温度、ガス分離カラム25における流量である。すなわち、コロナ放電電圧関数64hは、検出器30の温度と、ガス分離カラム25における流量との組み合わせに依存する関数である。
制御部65は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部65のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部65のCPUは、記憶部64または制御部65のROMに記憶されているプログラムを実行する。
制御部65は、ガス分析プログラム64aを実行することによって、サンプル側コロナ放電電圧および参照側コロナ放電電圧を制御する電圧制御部65aを実現する。
図6は、カラムにおける流量が1ml/mであり、検出器30の温度が35℃である場合のサンプル用特性64fおよび参照用特性64gの一例を示す図である。
図6においては、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVと、水蒸気のイオン化エネルギーより低いエネルギーである12.0eVとが示されている。
コロナ放電電圧関数64hであるVCS=f(VCR,t,v)は、参照側コロナ放電電圧VCRに対して参照用特性64gにおいて対応付けられているエネルギーの値より特定の値だけ低いエネルギーに対してサンプル用特性64fにおいて対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCSを示すものである。ここで、特定の値とは、例えば、0.6eVである。例えば、コロナ放電電圧関数64hであるVCS=f(VCR,t,v)は、図6に示すように、参照用特性64gにおいて12.6eVに対応付けられている参照側コロナ放電電圧VCR1と、12.6eVより0.6eVだけ低い12.0eVに対してサンプル用特性64fにおいて対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCS2とを対応付けるものである。
次に、コンピューター60によるサンプルガスの分析結果の例について説明する。
図7(a)は、コンピューター60によるサンプルガスの理想的な分析結果の一例を示す図である。図7(b)は、コロナ放電によるエネルギーが低すぎる場合のコンピューター60によるサンプルガスの分析結果の一例を示す図である。図7(c)は、コロナ放電によるエネルギーが高すぎる場合のコンピューター60によるサンプルガスの分析結果の一例を示す図である。
図7に示す各分析結果において、縦軸は、サンプル用イオン検知回路44によって出力される電圧によって、ガスの成分の濃度を示している。サンプル用イオン検知回路44によって出力された電圧は、5Vが検知可能な濃度の上限を示しており、VSBが未検知の状態を示している。各分析結果において、横軸は、保持時間を示している。
図7(a)に示す分析結果は、コロナ放電によるエネルギーが約12eVである場合の分析結果である。
図7(b)に示す分析結果は、コロナ放電によるエネルギーが約10eVである場合の分析結果である。図7(b)に示す分析結果は、図7(a)に示す分析結果と比較して、サンプルガスのうち、イオン化エネルギーが約10eVより大きく約12eV以下である成分の濃度を検出することができていない。
図7(c)に示す分析結果は、コロナ放電によるエネルギーが約15eVである場合の分析結果である。コロナ放電によるエネルギーは、一般的には15eV以上である。図7(c)に示す分析結果は、イオン化エネルギーが約12eVより大きい、キャリアガスの成分を検出して、サンプル用イオン検知回路44によって出力された電圧が飽和している。具体的には、図7(c)に示す分析結果は、キャリアガスのうち、イオン化エネルギーが12.6eVである水蒸気と、イオン化エネルギーが13.6eVである02と、イオン化エネルギーが14.5eVであるN2とを検出してしまっており、サンプルガスの成分の濃度を全く検出することができていない。なお、混合ガスにおいて、キャリアガスに含まれていた水蒸気、02、N2のそれぞれの濃度は、サンプルガスの各成分の濃度より圧倒的に高い。
次に、コロナ放電電圧を制御する場合のコンピューター60の動作について説明する。
図8は、コロナ放電電圧を制御する場合のコンピューター60の動作の一部のフローチャートである。図9は、図8に示すフローチャートの続きのフローチャートである。
コンピューター60の電圧制御部65aは、コロナ放電電圧の制御の開始が指示されると、図8および図9に示す動作を実行する。
図8および図9に示すように、電圧制御部65aは、サンプル側コロナ放電電圧VCSおよび参照側コロナ放電電圧VCRをともに0Vにする(S101)。
次いで、電圧制御部65aは、サンプル用イオン検知回路44の検知電圧VDS、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRがそれぞれベース電圧VSB、VRBに安定している状態の継続時間を示す安定状態継続時間を0秒に初期化する(S102)。
次いで、電圧制御部65aは、現時点がサンプリング時間であると判断するまで、現時点がサンプリング時間であるか否かを判断する(S103)。ここで、電圧制御部65aは、割り込みフラグが立っている場合に、現時点がサンプリング時間であると判断し、割り込みフラグが倒れている場合に、現時点がサンプリング時間ではないと判断する。なお、電圧制御部65aは、図8および図9に示す動作とは無関係に、割り込みフラグを立てる処理を例えば10~20ms毎に繰り返している。
電圧制御部65aは、現時点がサンプリング時間であるとS103において判断すると、割り込みフラグを倒す(S104)。
次いで、電圧制御部65aは、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRが参照側下限閾値情報64dに示される閾値VRL以上であり参照側上限閾値情報64eに示される閾値VRH以下であるか否かを判断する(S105)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRLより小さいか閾値VRHより大きいとS105において判断すると、検知電圧VDRが閾値VRHより大きいか否かを判断する(S106)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRHより大きくない、すなわち、検知電圧VDRが閾値VRLより小さいとS106において判断すると、参照側コロナ放電電圧VCRを1V上げる(S107)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRHより大きいとS106において判断すると、参照側コロナ放電電圧VCRを1V下げる(S108)。
電圧制御部65aは、S107またはS108の処理の後、S102の処理を実行する。
電圧制御部65aは、S105~S108の処理によって、参照側コロナ放電電圧VCRを変化させて参照用イオン検知部53によってイオンを検知し、参照用イオン検知部53による検知結果に基づいて、参照用空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応する参照側コロナ放電電圧VCRを特定する。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下であるとS105において判断すると、サンプル用イオン検知回路44の検知電圧VDSがサンプル側下限閾値情報64bに示される閾値VSL以上でありサンプル側上限閾値情報64cに示される閾値VSH以下であるか否かを判断する(S109)。なお、検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下であると電圧制御部65aがS105において判断した時点において、参照側エネルギーは、約12.6eVになっている。
電圧制御部65aは、検知電圧VDSが閾値VSLより小さいか閾値VSHより大きいとS109において判断すると、検知電圧VDSが閾値VSHより大きいか否かを判断する(S110)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDSが閾値VSHより大きくない、すなわち、検知電圧VDSが閾値VSLより小さいとS110において判断すると、サンプル側コロナ放電電圧VCSを1V上げる(S111)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDSが閾値VSHより大きいとS110において判断すると、サンプル側コロナ放電電圧VCSを1V下げる(S112)。
電圧制御部65aは、S111またはS112の処理の後、S102の処理を実行する。
電圧制御部65aは、S109~S112の処理によって、サンプル側コロナ放電電圧VCSを変化させてサンプル用イオン検知部43によってイオンを検知し、サンプル用イオン検知部43による検知結果に基づいて、キャリアガスとしての空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するサンプル側コロナ放電電圧VCSを特定する。
電圧制御部65aは、検知電圧VDSが閾値VSL以上であり閾値VSH以下であるとS109において判断すると、安定状態継続時間が0秒であるか否かを判断する(S113)。なお、検知電圧VDSが閾値VSL以上であり閾値VSH以下であると電圧制御部65aがS109において判断した時点において、サンプル側エネルギーは、約12.6eVになっている。
電圧制御部65aは、安定状態継続時間が0秒であるとS113において判断すると、安定状態継続時間の計測の開始時刻を示す計測開始時刻を現在時刻にする(S114)。
電圧制御部65aは、安定状態継続時間が0秒ではないとS113において判断するか、S114の処理を実行すると、現在時刻から計測開始時刻を差し引いた時間を安定状態継続時間とする(S115)。
次いで、電圧制御部65aは、安定状態継続時間が特定の時間Tを超えたか否かを判断する(S116)。ここで、時間Tは、例えば10秒である。
電圧制御部65aは、安定状態継続時間が特定の時間を超えていないとS116において判断すると、S103の処理を実行する。
電圧制御部65aは、安定状態継続時間が特定の時間を超えたとS116において判断すると、サンプル用特性および参照用特性の誤差を補正する(S117)。
図10は、サンプル用特性および参照用特性の誤差の一例を示す図である。
図10に示すように、S117の処理の実行の時点でのガス分離カラム25における流量と、S117の処理の実行の時点での検出器30の温度との組み合わせに対応付けられた、サンプル用特性64fおよび参照用特性64gにおいて、12.6eVに対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCS、参照側コロナ放電電圧VCRは、それぞれVCS1、VCR1であるとする。そして、S117の処理の時点で決定されているサンプル側コロナ放電電圧VCS、参照側コロナ放電電圧VCRが、それぞれVCS3、VCR3であるとする。ここで、VCS3、VCR3は、エネルギーが12.6eVになるコロナ放電電圧である。したがって、S117の処理の時点における実際のサンプル用特性164f、参照用特性164gは、それぞれ、サンプル用特性64f、参照用特性64gに対してΔVCS、ΔVCRの誤差が生じている。ここで、ΔVCSは、VCS3-VCS1であり、ΔVCRは、VCR3-VCR1である。したがって、電圧制御部65aは、S117において、コロナ放電電圧関数64hであるVCS=f(VCR,t,v)を、VCS=f(VCR-ΔVCR,t,v)+ΔVCSと補正する。
図8および図9に示すように、電圧制御部65aは、S117の処理の後、現時点の参照側コロナ放電電圧VCRを、S117において生成されたコロナ放電電圧関数であるVCS=f(VCR-ΔVCR,t,v)+ΔVCSに代入することによって、サンプル側コロナ放電電圧VCSを決定する(S118)。すなわち、電圧制御部65aは、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するサンプル側コロナ放電電圧VCSより特定の程度低い電圧を、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応する参照側コロナ放電電圧VCRに基づいて、サンプル側コロナ放電電圧VCSとして決定する。そして、電圧制御部65aは、S118において決定したサンプル側コロナ放電電圧VCSでサンプル用コロナ放電部42にコロナ放電を実行させる。したがって、サンプル側エネルギーは、約12.0eVになる。なお、S118において使用されるコロナ放電電圧関数は、S118の処理の実行の時点でのガス分離カラム25における流量と、S118の処理の実行の時点での検出器30の温度との組み合わせに対応付けられたものである。
なお、制御部65は、S118の処理の後、注入部24にサンプルガスを注入しても良い旨の表示を表示部62に実行する。すなわち、制御部65は、S118の処理の後、サンプルガスの測定を可能にする。したがって、利用者は、注入部24にサンプルガスを注入して、図示していないスタートボタンを押すことができる。制御部65は、スタートボタンが押されると、サンプルガスの成分の分析を開始する。
電圧制御部65aは、S118の処理の後、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRが参照側下限閾値情報64dに示される閾値VRL以上であり参照側上限閾値情報64eに示される閾値VRH以下であるか否かを判断する(S119)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下であるとS119において判断すると、再びS119の処理を実行する。なお、検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下であると電圧制御部65aがS119において判断した時点において、参照側エネルギーは、約12.6eVになっている。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRLより小さいか閾値VRHより大きいとS119において判断すると、検知電圧VDRが閾値VRHより大きいか否かを判断する(S120)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRHより大きくない、すなわち、検知電圧VDRが閾値VRLより小さいとS120において判断すると、参照側コロナ放電電圧VCRを1V上げる(S121)。
電圧制御部65aは、検知電圧VDRが閾値VRHより大きいとS120において判断すると、参照側コロナ放電電圧VCRを1V下げる(S122)。
電圧制御部65aは、S119~S122の処理によって、参照側コロナ放電電圧VCRを変化させて参照用イオン検知部53によってイオンを検知し、参照用イオン検知部53による検知結果に基づいて、参照用空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応する参照側コロナ放電電圧VCRを特定する。
電圧制御部65aは、S121またはS122の処理の後、現時点の参照側コロナ放電電圧VCRを、S117において生成されたコロナ放電電圧関数であるVCS=f(VCR-ΔVCR,t,v)+ΔVCSに代入することによって、サンプル側コロナ放電電圧VCSを決定する(S123)。すなわち、電圧制御部65aは、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するサンプル側コロナ放電電圧VCSより特定の程度低い電圧を、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応する参照側コロナ放電電圧VCRに基づいて、サンプル側コロナ放電電圧VCSとして決定する。そして、電圧制御部65aは、S123において決定したサンプル側コロナ放電電圧VCSでサンプル用コロナ放電部42にコロナ放電を実行させる。したがって、サンプル側エネルギーは、約12.0eVになる。なお、S123において使用されるコロナ放電電圧関数は、S123の処理の実行の時点でのガス分離カラム25における流量と、S123の処理の実行の時点での検出器30の温度との組み合わせに対応付けられたものである。
電圧制御部65aは、S123の処理の後、S119の処理を実行する。
図11は、コロナ放電電圧が制御される場合の検知電圧VDR、VDSの変化の一例を示すタイミングチャートである。
図11に示すように、コロナ放電電圧の制御の開始時点である時間t0において、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRは、閾値VRLより小さい。したがって、電圧制御部65aは、参照側コロナ放電電圧VCRを上げ続ける(S106でNOおよびS107)。その結果、時間t0より後の時間t1において、参照用管51の内部の空気における水蒸気がイオン化されて、参照用イオン検知回路54によって検知され始める。すなわち、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRが増加し始める。
次いで、時間t1より後の時間t2において、参照用イオン検知回路54の検知電圧VDRは、閾値VRL以上で閾値VRH以下になる。ここで、サンプル用イオン検知回路44の検知電圧VDSは、閾値VSLより小さい。したがって、電圧制御部65aは、サンプル側コロナ放電電圧VCSを上げ続ける(S110でNOおよびS111)。その結果、時間t2より後の時間t3において、サンプル用管41の内部の空気における水蒸気がイオン化されて、サンプル用イオン検知回路44によって検知され始める。すなわち、サンプル用イオン検知回路44の検知電圧VDSが増加し始める。
なお、検知電圧VDRは、S105~S108の処理によって、閾値VRL以上であり閾値VRH以下である状態に維持される。同様に、検知電圧VDSは、S109~S112の処理によって、閾値VSL以上であり閾値VSH以下である状態に維持される。検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下である状態に維持されている場合、参照側エネルギーは、約12.6eVになっている。検知電圧VDSが閾値VSL以上であり閾値VSH以下である状態に維持されている場合、サンプル側エネルギーは、約12.6eVになっている。
そして、検知電圧VDRが閾値VRL以上であり閾値VRH以下である状態(S105でYES)と、検知電圧VDSが閾値VSL以上であり閾値VSH以下である状態(S109でYES)とが時間Tより長い時間継続すると(S116でYES)、時間t3より後の時間t4においてサンプル側コロナ放電電圧VCSが参照側コロナ放電電圧VCRに応じて下げられる(S118)。したがって、サンプル側エネルギーは、約12.0eVになる。
以上に説明したように、ガス分析システム10は、サンプルガスの成分をコロナ放電によってイオン化する(S118およびS123)ので、サンプルガスのうち10.6eV以下のイオン化エネルギーの成分だけでなく10.6eVを超えるイオン化エネルギーの成分も検知することができる。
ガス分析システム10は、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧でコロナ放電を実行する(S118およびS123)ので、キャリアガスとしての空気に含まれる、イオン化エネルギーが12.6eVである水蒸気と、イオン化エネルギーが13.6eVである02と、イオン化エネルギーが14.5eVであるN2とを検知することを防止することができ、その結果、サンプルガスの成分を適切に検知することができる。
ガス分析システム10は、参照用空気に対する参照用コロナ放電部52のコロナ放電電圧である参照側コロナ放電電圧VCRを変化させて参照用イオン検知部53によってイオンを検知することによって、水蒸気のイオン化エネルギーに対応する参照側コロナ放電電圧VCRを特定した(S105~S108またはS119~S122)後、混合ガスに対するサンプル用コロナ放電部42の、水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧を、水蒸気のイオン化エネルギーに対応する参照側コロナ放電電圧VCRに基づいて決定し(S118またはS123)、決定した電圧でサンプル用コロナ放電部42にコロナ放電を実行させるので、サンプルガスの成分の検知中にキャリアガスの温度、湿度などの状況が変わったとしても、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧でサンプル用コロナ放電部42によってコロナ放電を実行することができ、その結果、サンプルガスの成分を適切に検知することができる。
ガス分析システム10は、混合ガスの流路にガス分離カラム25を備えるだけでなく、参照用空気の流路にもガス分離カラム25と同一の構造である参照用カラム27を備えるので、混合ガスの流路と、参照用空気の流路との分岐点からサンプル用コロナ放電部42およびサンプル用イオン検知部43までの流路上の距離と、この分岐点から参照用コロナ放電部52および参照用イオン検知部53までの流路上の距離との差を抑えることができる。したがって、ガス分析システム10は、サンプルガスの成分の検知中にサンプル用コロナ放電部42およびサンプル用イオン検知部43におけるキャリアガスの温度、湿度などの状況が変わった場合に、参照用コロナ放電部52および参照用イオン検知部53における参照用空気の温度、湿度などの状況も同時期に変わるので、サンプル用コロナ放電部42のコロナ放電電圧であるサンプル側コロナ放電電圧VCSを、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧に適切に制御することができ、その結果、サンプルガスの成分を更に適切に検知することができる。
ガス分析システム10は、ガス分離カラム25と、参照用カラム27とが互いに重なって同一の経路を通るように配置されている。したがって、ガス分析システム10は、ガス分離カラム25の内部を通過している最中のキャリアガスの温度が変わった場合に、参照用カラム27の内部を通過している最中の参照用空気の温度も同様に変わるので、サンプル側コロナ放電電圧VCSを、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧に適切に制御することができ、その結果、サンプルガスの成分を更に適切に検知することができる。
電圧制御部65aは、「コロナ放電電圧を変化させてイオン検知部によってイオンを検知し、イオン検知部による検知結果に基づいて、空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧を特定する方法」として、本実施の形態において、「イオン検知部によってイオンを検知するまでコロナ放電電圧を0Vから1Vずつ昇圧する方法」を採用している(「S101、S105~S108」および「S101、S109~S112」)。しかしながら、「コロナ放電電圧を変化させてイオン検知部によってイオンを検知し、イオン検知部による検知結果に基づいて、空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧を特定する方法」は、本実施の形態において示した方法以外の方法でも良い。例えば、電圧制御部65aは、「コロナ放電電圧を変化させてイオン検知部によってイオンを検知し、イオン検知部による検知結果に基づいて、空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧を特定する方法」として、「イオン検知部によってイオンを検知しなくなるまでコロナ放電電圧を例えば10000Vから1Vずつ降圧する方法」を採用しても良い。
電圧制御部65aは、「水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧を決定する方法」として、本実施の形態において、「サンプル用特性64fおよび参照用特性64gに基づいて生成されたコロナ放電電圧関数64hを使用する方法」を採用している(S118およびS123)。しかしながら、「水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧を決定する方法」は、本実施の形態において示した方法以外の方法でも良い。例えば、電圧制御部65aは、水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧として、水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の固定の電圧だけ低い電圧を決定しても良い。
図8および図9に示す動作において、S105~S108の処理がS109~S112の処理より前に実行されるようになっているが、S109~S112の処理がS105~S108の処理より前に実行されるようになっていても良い。
サンプル用イオン検知回路44は、ガスの成分を本実施の形態において電圧によって検知しているが、ガスの成分を電流によって検知しても良い。同様に、参照用イオン検知回路54は、ガスの成分を電流によって検知しても良い。
制御部65は、本実施の形態において、スタートボタンが押されると、サンプルガスの成分の分析を開始する。しかしながら、制御部65は、注入部24にサンプルガスが注入されたことを図示していない仕組みによって検出した場合に、サンプルガスの成分の分析を自動で開始しても良い。更に、制御部65は、S118の処理の後、注入部24にサンプルガスを図示していない仕組みによって自動で注入しても良い。
(第2の実施の形態)
本実施の形態に係るガス分析システムの構成について説明する。
なお、本実施の形態に係るガス分析システムの構成のうち、第1の実施の形態に係るガス分析システム10(図1参照。)の構成と同様の構成については、ガス分析システム10の構成と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図12は、本実施の形態に係るガス分析システム210の構成図である。
図12に示すガス分析システム210の構成は、第1の実施の形態に係るガス分析システム10(図1参照。)がガスクロマトグラフ20(図1参照。)に代えてガスクロマトグラフ220を備えた構成と同様である。ガスクロマトグラフ220の構成は、ガスクロマトグラフ20が参照用カラム27(図1参照。)を備えていない構成と同様である。ガス分析システム210において、参照用管51(図2参照。)は、流路26に直接接続されている。
ガス分析システム210は、高価な参照用カラム27を備えていないので、低コストで実現することができる。
(第3の実施の形態)
まず、本実施の形態に係るガス分析システムの構成について説明する。
なお、本実施の形態に係るガス分析システムの構成のうち、第1の実施の形態に係るガス分析システム10(図1参照。)の構成と同様の構成については、ガス分析システム10の構成と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図13は、本実施の形態に係るガス分析システム310の構成図である。
図13に示すガス分析システム310の構成は、第1の実施の形態に係るガス分析システム10(図1参照。)がガスクロマトグラフ20(図1参照。)に代えてガスクロマトグラフ320を備えた構成と同様である。ガスクロマトグラフ320の構成は、ガスクロマトグラフ20が流路26(図1参照。)および参照用カラム27(図1参照。)を備えていない構成と同様である。
ガス分析システム310は、流路26および参照用カラム27を備えていないので、参照用管51(図2参照。)、参照用コロナ放電部52(図2参照。)および参照用イオン検知部53(図2参照。)を検出器30が備えていないし、D/Aコンバーター73(図4参照。)およびA/Dコンバーター74(図4参照。)も備えていない。
ガス分析システム310は、参照側下限閾値情報64d(図5参照。)、参照側上限閾値情報64e(図5参照。)および参照用特性64g(図5参照。)を記憶部64(図5参照。)に記憶していない。また、ガス分析システム310は、サンプル側コロナ放電電圧VCSに対する適切な新たなサンプル側コロナ放電電圧VCS´を示すコロナ放電電圧関数を、コロナ放電電圧関数64h(図5参照。)に代えて記憶部64に記憶している。ガス分析システム310のコロナ放電電圧関数は、具体的には、VCS´=f(VCS,t,v)である。VCS´=f(VCS,t,v)におけるt、vは、それぞれ、検出器30の温度、ガス分離カラム25における流量である。すなわち、ガス分析システム310のコロナ放電電圧関数は、ガス分離カラム25における流量と、検出器30の温度との組み合わせに依存する関数である。
図14は、カラムにおける流量が1ml/mであり、検出器30の温度が35℃である場合のガス分析システム310のサンプル用特性64fの一例を示す図である。
図14においては、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVと、水蒸気のイオン化エネルギーより低いエネルギーである12.0eVとが示されている。
ガス分析システム310のコロナ放電電圧関数であるVCS´=f(VCS,t,v)は、サンプル側コロナ放電電圧VCSに対してサンプル用特性64fにおいて対応付けられているエネルギーの値より特定の値だけ低いエネルギーに対してサンプル用特性64fにおいて対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCS´を示すものである。ここで、特定の値とは、例えば、0.6eVである。例えば、ガス分析システム310のコロナ放電電圧関数であるVCS´=f(VCS,t,v)は、図14に示すように、サンプル用特性64fにおいて12.6eVに対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCSであるサンプル側コロナ放電電圧VCS1と、12.6eVより0.6eVだけ低い12.0eVに対してサンプル用特性64fにおいて対応付けられているサンプル側コロナ放電電圧VCS´であるサンプル側コロナ放電電圧VCS2とを対応付けるものである。
次に、コロナ放電電圧を制御する場合のガス分析システム310のコンピューター60の動作について説明する。
図15は、コロナ放電電圧を制御する場合のガス分析システム310のコンピューター60の動作のフローチャートである。
コンピューター60の電圧制御部65aは、コロナ放電電圧の制御の開始が指示されると、図15に示す動作を実行する。
図15に示すように、電圧制御部65aは、サンプル側コロナ放電電圧VCSを0Vにする(S401)。
次いで、電圧制御部65aは、S102~S104(図6参照。)の処理と同様のS402~S404の処理を実行する。
次いで、電圧制御部65aは、S109~S116(図6参照。)の処理と同様のS405~S412の処理を実行する。
電圧制御部65aは、安定状態継続時間が特定の時間を超えたとS412において判断すると、S117(図6参照。)の処理と同様に、サンプル用特性の誤差を補正する(S413)。すなわち、電圧制御部65aは、S413において、ガス分析システム310のコロナ放電電圧関数であるVCS´=f(VCS,t,v)を、VCS´=f(VCS-ΔVCS,t,v)+ΔVCSと補正する。ここで、ΔVCSは、S413の処理の時点におけるサンプル用特性64fに対する実際のサンプル用特性の誤差である。
電圧制御部65aは、S413の処理の後、現時点のサンプル側コロナ放電電圧VCSを、S413において生成されたコロナ放電電圧関数であるVCS´=f(VCS-ΔVCS,t,v)+ΔVCSに代入することによって、新たなサンプル側コロナ放電電圧VCS´を決定する(S414)。すなわち、電圧制御部65aは、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するサンプル側コロナ放電電圧VCSより特定の程度低い電圧を、サンプル側コロナ放電電圧VCS´として決定する。そして、電圧制御部65aは、S414において決定したサンプル側コロナ放電電圧VCS´でサンプル用コロナ放電部42にコロナ放電を実行させる。したがって、サンプル側エネルギーは、約12.0eVになる。なお、S414において使用されるコロナ放電電圧関数は、S414の処理の実行の時点でのガス分離カラム25における流量と、S414の処理の実行の時点での検出器30の温度との組み合わせに対応付けられたものである。
電圧制御部65aは、S414の処理の後、図15に示す動作を終了する。
なお、制御部65は、S414の処理の後、注入部24にサンプルガスを注入しても良い旨の表示を表示部62に実行する。すなわち、制御部65は、S414の処理の後、サンプルガスの測定を可能にする。したがって、利用者は、注入部24にサンプルガスを注入して、図示していないスタートボタンを押すことができる。制御部65は、スタートボタンが押されると、サンプルガスの成分の分析を開始する。
以上に説明したように、ガス分析システム310は、サンプルガスの成分をコロナ放電によってイオン化する(S414)ので、サンプルガスのうち10.6eV以下のイオン化エネルギーの成分だけでなく10.6eVを超えるイオン化エネルギーの成分を検知することができる。
ガス分析システム310は、水蒸気のイオン化エネルギーである12.6eVに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧でコロナ放電を実行する(S414)ので、キャリアガスとしての空気に含まれる、イオン化エネルギーが12.6eVである水蒸気と、イオン化エネルギーが13.6eVである02と、イオン化エネルギーが14.5eVであるN2とを検知することを防止することができ、その結果、サンプルガスの成分を適切に検知することができる。
電圧制御部65aは、「コロナ放電電圧を変化させてイオン検知部によってイオンを検知し、イオン検知部による検知結果に基づいて、空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧を特定する方法」として、本実施の形態において、「イオン検知部によってイオンを検知するまでコロナ放電電圧を0Vから1Vずつ昇圧する方法」を採用している(S401、S405~S408)。しかしながら、「コロナ放電電圧を変化させてイオン検知部によってイオンを検知し、イオン検知部による検知結果に基づいて、空気中の水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧を特定する方法」は、本実施の形態において示した方法以外の方法でも良い。
電圧制御部65aは、「水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧を決定する方法」として、「サンプル用特性64fに基づいて生成されたコロナ放電電圧関数を使用する方法」を採用している(S414)。しかしながら、「水蒸気のイオン化エネルギーに対応するコロナ放電電圧より特定の程度低い電圧を決定する方法」は、本実施の形態において示した方法以外の方法でも良い。