JP4063142B2 - 夜間障害物報知装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、夜間に車両の周辺を移動する歩行者などの障害物の位置を報知する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
不特定の移動体の位置を検出し、スポットライトを移動体に追従して照射するようにした移動体追従スポットライト制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】
特開2002−083383号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の移動体追従スポットライト制御装置を車両に搭載し、横断歩道を渡る歩行者に追従してスポットライトを照射し、運転者に歩行者の存在を認識させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、バスやトラックなどのスポットライトを装備した大型車両が路側に停車しているときに、車両の直前または直後を歩行者が横断した場合、大型車両から歩行者に追従してスポットライトが照射されるので、大型車両の運転者は歩行者が自車両の直前または直後を横断中であることを認識できる。ところが、大型車両の周囲を走行している車両の運転者は、横断中の歩行者が大型車両からスポットライトで照射されていても大型車両の死角になり、横断中の歩行者を発見することができない。大型車両の周囲を走行している他の車両の運転者は、歩行者が大型車両の死角から外れて自車両の直前に飛び出したときに初めて、スポットライトが照射された歩行者を発見することになる。したがって、このような場合には、スポットライトを装備した大型車両自身は歩行者の存在を認識することができるが、大型車両の周囲に位置する他の車両は、大型車両がスポットライトを装備していても歩行者の存在を十分に認識することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、車両の周辺を移動する歩行者や自転車などの障害物の存在を自車両はもちろんのこと、周辺車両からも認識可能とする夜間障害物報知装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車両の周辺の物体を検出してそれらの位置を繰り返し検出し、検出位置の時間変化に基づいて物体の所定時間後の移動位置を予測する。そして、予測した推定位置に電磁波マーカーを照射するとともに、推定移動位置の移動に合わせて電磁波マーカーの照射方向を調節する。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の周辺を移動する歩行者や自転車などの障害物の存在を自車両はもちろんのこと、周辺車両からも認識できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は一実施の形態の構成を示す図である。レーザー投光器1はレーザー光を照射する。このレーザー投光器1では、レーザーダイオード(不図示)から照射されたビーム径の小さい、平行光に整形したレーザ光を2次元スキャナー(不図示)に一度反射させ、レーザー光の照射方向を水平および垂直の任意の方向に可変することができる。また、レーザー投光器1のレーザーダイオードの照射タイミングを断続させて2次元スキャナーの動作と連動させることによって、道路面に任意のパターンのレーザー光マーカーを描画することができる。詳細を後述するが、この一実施の形態では車両前方を横切る歩行者の一歩先の路面にレーザー光を照射してマーカーを描画する。
【0010】
レーザー投光器1は、水平ステップモーター2により図中Aの方向、すなわち水平方向に自在に回動可能であり、また、垂直ステップモーター3により図中Bの方向、すなわち垂直方向に自在に回動可能である。なお、レーザー投光器1の水平ステップモーター2、垂直ステップモーター3、レーザーダイオード(不図示)および2次元スキャナー(不図示)はそれぞれ、水平制御線4、垂直制御線5、レーザー制御線6、スキャナー制御線7を介して制御回路8により制御される。
【0011】
赤外線カメラ9は歩行者10から発せられる遠赤外線を検出する。画像処理装置11は、赤外線カメラ9により撮像された画像を処理し、歩行者10の存在を検出する。制御回路8は、画像処理装置11による歩行者10の検出位置の時間変化により歩行者10の移動方向と移動量を求め、所定時間後の歩行者10の移動位置を予測し、予測位置にレーザー投光器1からレーザー光を照射するように水平ステップモーター2および垂直ステップモーター3を制御する。
【0012】
図2は、一実施の形態の夜間歩行者報知装置を設置した大型車両を示す。この一実施の形態では、大型車両としてバス20に夜間歩行者報知装置を設置した例を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して説明する。レーザー投光器1および赤外線カメラ9は、バス20の前面の行先表示板付近の高い位置に設置される。
【0013】
次に、一実施の形態の動作を説明する。今、図3に示すように、自車つまりバス20がセンターライン24を境に片側1車線の道路を走行し、自車線25の路肩にあるバス停26に停車しており、バス20の周辺には停車中のバス20を追い越す車両27が存在する状況にあるとする。なお、この一実施の形態ではレーザー投光器1のレーザー光の照射範囲と、赤外線カメラ9の検出範囲を、いずれも図3に示す検出/照射範囲28とする。ここで、停車中のバス20からお客が降車し、バス20の直前を横断して反対車線の歩道まで進む状況を想定する。このバス20の直前を横断する歩行者10の移動軌跡を1秒毎に○印で表し、それぞれの位置をa〜gとする。また、動作を理解しやすくするために、歩行者10がa〜gの各位置に来たときに、赤外線カメラ9により検出/照射範囲28を撮影するものとする。
【0014】
図4は一実施の形態の動作を示すフローチャートである。制御回路8は、ステップ1でシステムスイッチ(不図示)がオンされると歩行者報知処理を開始する。ステップ2でシステムスイッチのオフを確認し、システムスイッチがオフされると処理を終了する。
【0015】
システムスイッチがオフされていないときは、ステップ3で、赤外線カメラ9により撮影された画像に基づいて、検出/照射範囲28内に歩行者10に相当する大きさの遠赤外線を発する物体が存在するか否かを判断し、そのような物体が存在する場合は検出/照射範囲28に歩行者10がいると判断してステップ4へ進み、歩行者が存在しない場合はステップ2へ戻る。ここで、上述したように赤外線カメラ9による撮影は1秒ごとに行う。
【0016】
歩行者10が検出された場合は、ステップ4で自車両(バス20)が停車しているか走行しているか否かを判定する。この判定は、バス20に設置されている車速センサー(不図示)からの信号に基づいて判断する。バス20が停車中の場合はステップ5へ進み、走行中の場合はステップ8へ進む。
【0017】
自車(バス20)が停車中の場合は、ステップ5で、検出/照射範囲28内に存在する歩行者10の移動速度と進行方向を示す移動ベクトルの大きさを計算する。移動ベクトルは所定時間ごと、この一実施の形態では1秒おきに検出した歩行者10の位置の時間移動量を計算することより求められる。
【0018】
図5は、バス20を降車した歩行者10がa、bの位置を経てcの位置に来たときに、赤外線カメラ9で歩行者10を初めて検出した状況を表す。この1秒前の状況、すなわち歩行者10が図3に示すbの位置にあるときは、歩行者10が検出/照射範囲28から外れているために検出されない。歩行者10が検出/照射範囲28内のcの位置に来たときに、レーザー投光器1および赤外線カメラ9により歩行者10が初めて検出されるので、移動ベクトルは無し、すなわち0とする。
【0019】
図6は位置dに来た歩行者を検出した状況を表す。このとき、1秒前の前画像の歩行者の位置cに対して、cからdまでの歩行者10の移動ベクトルc→dが検出される。今、歩行者10がバス20の直前を反対車線へ向かって毎秒1m/secの速度で移動していたとすると、道路を横断する方向(ここでは垂直方向とする)の移動ベクトルは1m/sec、道路に沿う方向(ここでは水平方向とする)の移動ベクトルは0m/secと計算され、歩行者10の移動ベクトルが垂直方向と水平方向の合成ベクトルとして制御回路2のメモリ(不図示)に記憶される。
【0020】
ステップ6において歩行者の移動位置を推定する。具体的には、現在の歩行者10の位置を基点とし、ステップ5で算出した歩行者10の移動ベクトルを加えた位置を推定移動位置30として算出する。図5に示す状況では、移動ベクトルは0であるから、推定移動位置は現在の位置cと同じ位置になる。一方、図6に示す状況では、移動ベクトルが算出されているため、現在の位置dを基点にして移動ベクトルc→dを加えた位置を推定移動位置30として求める。
【0021】
ステップ7において、水平ステップモーター2と垂直ステップモーター3を制御し、推定移動位置30をレーザー光照射位置22としてレーザー光を照射する。図5に示す状況では、推定移動位置30が歩行者10の現在の位置cと同じであるから、歩行者10の現在位置cをレーザー光照射位置22としてレーザー光を照射する。一方、図6に示す状況では、歩行者10の現在位置dに移動ベクトルc→dを加算した推定移動位置30をレーザー光照射位置22としてレーザー光を照射する。
【0022】
図6において、追い越し車両27の運転者31からはdの位置にいる歩行者10はバス20の死角となるため、認知することはできない。しかしこのとき、レーザー光照射位置22は歩行者10の現在位置dよりも先の推定移動位置30にあり、このレーザー光照射位置22は追い越し車両27の運転者31からも視認できる。図6に示す状況の1秒後に図7に示す状況に移行するが、この間、歩行者10の対向車線への移動にともなってレーザー光照射位置22も対向車線へ連続して移動するため、追い越し車両27の運転者31は、歩行者10を視認する前に、レーザー光照射位置22の対向車線側への移動によって何かがバス20の直前から追い越し車両27の直前に向かって移動してくることに気付く。したがって、ステアリングやブレーキペダルなどを操作して適切な回避動作を行うことができる。
【0023】
ここで、レーザー光照射位置22のレーザー光マーカーのパターンは、例えば図10に示すような△枠の内部に驚きを表現する感嘆符号“!”を付加したパターンとすれば、初めてこの夜間歩行者報知装置を経験する周辺車両の運転者にとっても、今すぐに回避操作が必要な状況が発生することに容易に気付く。
【0024】
図8は歩行者10がfの位置にきたときの状況を示す。このときも図7に示す状況と同様に、移動ベクトルe→fが検出され、これにより現在位置fに移動ベクトルe→fを加算した推定移動位置30が算出される。この推定移動位置30をレーザー光照射位置22としてレーザー光が照射される。もちろん、図8に示す状況においては、追い越し車両27の運転者31は、歩行者10もレーザー光照射位置22も視認できる。
【0025】
図9は歩行者10がgの位置にきたときの状況を示す。この位置gは検出/照射範囲28より外れているため、赤外線カメラ9は歩行者10を検出できない。歩行者10が位置fにいるときは、検出/照射範囲28の内側であるから赤外線カメラ9により歩行者10が検出され、図4のステップ4〜7の処理が行われたが、歩行者10が位置gに来ると、検出/照射範囲28から外れるため、図4のステップ2へ戻る。これにより、レーザー投光器1によるレーザー光の照射を停止するとともに、水平ステップモーター2および垂直ステップモーター3によりレーザー投光器1の照射軸を所定の初期位置へ戻す。
【0026】
一方、ステップ4においてバス20が走行していると判定された場合はステップ8へ進む。ステップ8において、赤外線カメラ9と画像処理装置11により歩行者10の位置を検出し、歩行者10の位置にレーザー光を照射するように水平ステップモーター2および垂直ステップモーター3を制御し、レーザー投光器1を作動させる。その後、ステップ2へ戻る。
【0027】
このように、車両の周辺を移動する歩行者および自転車を検出してそれらの位置を繰り返し検出し、検出位置の時間変化に基づいて歩行者および自転車の所定時間後の移動位置を予測する。そして、予測移動位置にレーザー光マーカーを照射するとともに、予測移動位置の移動に合わせてレーザー光マーカーの照射方向を調節するようにしたので、車両の周辺を移動する歩行者や自転車の存在を自車両はもちろんのこと、大型車両の死角に入る周辺車両からも認識でき、歩行者や自転車の安全を確保することができる。
【0028】
上述した一実施の形態では、レーザー光照射位置22へ照射するレーザー光マーカーのパターンを円形または図10に示すようなパターンとする例を示したが、図11に示すように歩行者10の現在位置(この例では位置d)と推定移動位置30とを包含する楕円形のパターンとしてもよい。あるいは、歩行者10の現在位置と推定移動位置30とを包含する長方形や菱形のパターンとしてもよい。これにより、大型車両の死角に入っている歩行者や自転車の存在を認識できる上に、死角から外れたときは直ちに歩行者および自転車を認識でき、歩行者や自転車の安全をさらに確保することができる。
【0029】
なお、上述した一実施の形態では、検出/照射範囲28において一様なレーザー照射方法とする例を示したが、検出/照射範囲28を複数の領域に区分し、各領域においてレーザー光の照射方法を変えてもよい。例えば、図3に示す例において、検出/照射範囲28の対向車線に近い領域では追い越し車両27の運転者に対する歩行者10の報知の緊急度が高いので、レーザー投光器1を調整して緊急度の高い報知を行ってもよい。
【0030】
また、レーザー投光器1にRGB3色のレーザーダイオードを用い、各レーザーダイオードの発光出力を制御することによりレーザーマーカーの色を可変にし、報知緊急度が高い場合は赤色系の色に調整することも効果的である。さらにまた、レーザー投光器1のレーザー光の照射間隔を可変にし、報知緊急度が高いほど照射間隔を短くしてもよい。
【0031】
さらに、周囲の光量が低い夜間や夕暮れ時は、昼間に比べて緊急度の高い歩行者報知を行い、また、雨、霧、雪などの天候のときは、晴天時に比べて緊急度の高い歩行者報知を行うようにしてもよい。
【0032】
上述した一実施の形態では歩行者を報知対象としたが、自転車に乗った人、あるいはバイクに乗った人も報知対象とする。
【0033】
また、上述した一実施の形態では赤外線カメラ9による歩行者検出処理を1秒ごとに行う例を示したが、例えば毎秒10〜30回の高速で検出処理を行ってもよい。検出間隔を短くするほど、歩行者の検出精度とレーザー光照射の追従精度を向上させることができる。
【0034】
上述した一実施の形態では熱物体を検出する赤外線カメラ9を用いた例を示したが、自車線を特定して自車線内のみの熱物体を検出し、警報を行う付加機能を想定するならば、可視カメラとの併用も効果的である。また、熱物体(人体)までの距離を正確に測定する必要がある場合は、レーダーなどの距離計を併用してもよい。
【0035】
さらに、上述した一実施の形態では赤外線カメラ9により歩行者という熱物体を検出する例を示したが、熱物体を検出するのではなく、歩行者、自転車、バイクなどの障害物を検出してマーキング対象としてもよく、この場合には近赤外領域に感度を有する可視カメラ、レーザーレーダー、超音波、電磁波による障害物検出手段を用いることができる。
【0036】
上述した一実施の形態では夜間歩行者報知装置のレーザー投光器1と赤外線カメラ9を車両の前方に装備する例を示したが、これらの機器の設置場所は車両の前方に限定されず、車両の後方や側方に設置してもよい。また、上述した一実施の形態では夜間歩行者報知装置を大型車両に装備した例を示したが、本発明の夜間歩行者報知装置は大型車両に限定されず、中型車や小型車に対して適用しても同様な効果が得られる。特に、小型車で車高の高いワンボックス車やトラックなどに適用することによって、顕著な効果が得られる。
【0037】
特許請求の範囲の構成要素と一実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。赤外線カメラ9が障害物検出手段を、画像処理装置11が位置検出手段を、制御回路8が移動位置予測手段を、レーザー投光器1がマーカー照射手段を、水平ステップモーター2、垂直ステップモーター3および制御回路8が照射方向調節手段ををれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 一実施の形態の夜間歩行者報知装置を大型車両に設置した様子を示す図である。
【図3】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図4】 一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図6】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図7】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図8】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図9】 一実施の形態の動作を説明するための図である。
【図10】 レーザー光マーカーのパターン例を示す図である。
【図11】 一実施の形態の変形例の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1 レーザー投光器
2 水平ステップモーター
3 垂直ステップモーター
4 水平制御線
5 垂直制御線
6 レーザー制御線
7 スキャナー制御線
8 制御回路
9 赤外線カメラ
10 歩行者
11 画像処理装置
20 バス
21 路面
22 レーザー光照射位置
23 レーザー光
24 センターライン
25 自車線
26 バス停
27 追い越し車両
28 検出/照射範囲
30 推定移動位置
31 運転者

Claims (3)

  1. 車両の周辺の物体を検出する障害物検出手段と、
    前記検出手段で検出された物体の位置を繰り返し検出する位置検出手段と、
    前記位置検出手段による検出位置の時間変化に基づいて物体の所定時間後の移動位置を予測する移動位置予測手段と、
    前記移動位置予測手段により予測した推定移動位置に電磁波マーカーを照射するマーカー照射手段と、
    前記推定移動位置の移動に合わせて前記マーカー照射手段の照射方向を調節する照射方向調節手段とを備えることを特徴とする夜間障害物報知装置。
  2. 請求項1に記載の夜間障害物報知装置において、
    前記マーカー照射手段および前記照射方向調節手段は、前記推定移動位置と、前記位置検出手段により検出された物体の現在の位置とを含む範囲に電磁波マーカーを照射することを特徴とする夜間障害物報知装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の夜間障害物報知装置において、
    車両の走行状態を検出する走行状態検出手段を備え、
    前記マーカー照射手段および前記照射方向調節手段は、前記走行状態検出手段により走行状態が検出されている間は、前記位置検出手段により検出された物体の現在の位置に電磁波マーカーを照射することを特徴とする夜間障害物報知装置。
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