JP4061448B2 - 物品の保存方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装体または収納体の外表面積当たりの付着鉄粉量が極めて少なく清浄度の高い鉄粉系脱酸素剤包装体または鉄粉系脱酸素性容器を用いる物品の保存方法に関する。本発明は、特に、鉄と付加物を形成する物質を含む、饅頭、香水、石鹸、輸液用バッグに例示される飲食料品、化粧品、医用品等の物品の保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食料品、化粧品、日用品、医薬品などの物品を手軽で確実に長期保存する方法として、各種の脱酸素剤を用いる保存方法が行われている。そして、これら各種の脱酸素剤の中では、安価で機能的に優れ、安全衛生性が高い鉄粉を主剤とする鉄粉系脱酸素剤の使用が主流になっている。
しかし、本発明者らの経験によれば、この鉄粉系脱酸素剤を用いて物品を保存する場合、保存する物品によっては時として物品の表面に汚れや褐変、黒変などの好ましくない変色が発生する現象が見られた。
【0003】
本発明者らは、その原因のひとつとして、脱酸素剤の主剤である鉄粉を包装袋に機械充填する際に微量ではあるが大気中に浮遊したり、包装袋から滲み出たりした鉄粉が酸素剤包装袋の外表面に付着し、この付着鉄粉と物品中の成分とが反応して鉄付加物を形成して汚れや褐変、黒変などの好ましくない変色現象を発生させることを見出した。
【0004】
従来の通気性包装袋は、通常、機械的強度及び脱酸素速度の制御の両方の点から無孔の紙系基材と貫通孔もしくはそれに近い状態の微小孔を設けた有孔な樹脂層とを積層した包装材を用いて製袋し、これに脱酸素剤を収納して脱酸素包装体を作製していた。また、従来の脱酸素剤は、粉体であるため充填機で脱酸素剤を包装袋に収納する際に、どうしても浮遊鉄粉が発生し包装袋の外表面に付着したり、あるいは、収納した粉末鉄粉が微小孔を通じて包装体の外表面に染み出て付着したりすることがあった。そして、この付着鉄粉が、物品、特に鉄と付加物を形成する物資を含む物品の保存の際に褐変、黒変などの好ましくない変色現象を発生させることが見出された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を解決し、汚れや褐変、黒変などの好ましくない変色現象が発生しないように改良された鉄粉系脱酸素剤包装体または脱酸素性収納体を用いる物品の保存方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この問題の解決策を種々検討したところ、付着鉄粉量を一定量以下に減少させた脱酸素包装体を用いることが極めて有効な対策であることが分かった。
本発明者らは、前記の課題を解決する方法を検討した結果、鉄粉系脱酸素剤包装体あるいは脱酸素性収納体の外表面に付着する鉄粉量をある一定量以下に少なくした清浄度の高い脱酸素剤包装体あるいは脱酸素性収納体を用いることによって物品、特に鉄と付加物を形成するような物質を含む物品の保存において汚れや褐変、黒変といった好ましくない変色現象の発生を防止できることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、鉄粉系脱酸素剤包装体あるいは脱酸素性収納体を用いて物品を保存する方法において、包装体あるいは収納体の外表面積当たりの付着鉄粉量を0.5mg/m2以下にした清浄な脱酸素剤を用いることよって物品、特に鉄と付加物を形成する物質を含む物品の保存において汚れや褐変、黒変といった好ましくない変色現象の発生を防止することを特徴とする物品の保存方法に関する。
【0008】
本発明においては、鉄粉系脱酸素剤を有孔多層包装袋に収納した後、これを無孔紙系通気性包装材によって包装してなる包装体、もしくは、鉄粉系脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合、成形、延伸したシート状脱酸素剤を通気性包装材によって包装してなる包装体であって、前記包装材の脱酸素剤包装体外側表面の面積当たりの付着鉄粉量が0.5mg/m2以下である脱酸素剤包装体、又は、鉄粉系脱酸素剤に熱可塑性樹脂を配合、成形したシート状脱酸素剤に酸素バリヤー層を積層した少なくとも2層以上の脱酸素性多層体であって、前記脱酸素性多層体を物品収納側表面の面積当たりの付着鉄粉量が0.5mg/m2以下である脱酸素性多層体を物品収納側表面の少なくとも一部に使用してなる容器を用いることによって鉄と付加物を形成し変色しやすい物品を保存できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の脱酸素剤包装体とは、粉末の鉄粉系脱酸素剤、あるいは、鉄粉系脱酸素剤に熱可塑樹脂を配合、成形、必要に応じて延伸したシート状の脱酸素剤を、一部または全面に通気性を有する包装材によって包装・被覆したものである。この脱酸素剤包装体は、物品と共にガスバリア性容器内に収納することにより、物品の長期間の保存を容易にする。
また、本発明の脱酸素性多層体とは、鉄粉系脱酸素剤に熱可塑樹脂を配合、成形し、必要に応じて延伸したフィルム状の脱酸素剤樹脂層に酸素バリヤー層等を配して2層以上の脱酸素性多層体にしたものである。この脱酸素性多層体を用いて、袋、小箱、トレー、瓶、樽などの物品を収納する容器等に成形することができる。かかる脱酸素性容器は、物品の長期間の保存を容易にする。
【0010】
本発明で用いられる鉄粉系脱酸素剤は、還元鉄、酸化第一鉄、炭化鉄、水酸化鉄などの鉄粉を主剤とし、ハロゲン化金属などの電解質を添加して、これに必要に応じて活性炭、ゼオライト、ケイソウ土などの担体を混合したり、あるいは、これらの担体に担持させた酸素吸収組成物である。この鉄粉系脱酸素剤は、通常、通気性包装袋に収納して脱酸素剤包装体として用いられる。
鉄粉系脱酸素剤層に用いられる組成物としては、鉄粉を主剤とし、ハロゲン化金属塩を含み、必要に応じて水難溶性フィラー等の成分を添加したものを挙げることが出来る。鉄粉主剤は、そのまま用いて他の組成物と単に混合しても良いが、鉄粉の表面をハロゲン化金属塩で被覆あるいはハロゲン化金属塩を分散付着させた処理を行った鉄粉の使用が好ましい。
【0011】
シ−ト状脱酸素剤に用いる鉄粉の粒度としては、細かいものが酸素吸収速度、能力の点で好ましいが、細かすぎると取扱い性が困難になったり、シート化後に延伸する場合、延伸性が悪くなったりするので、通常、粒径は1〜300μm、好ましくは10〜150μm程度である。また、ハロゲン化金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩化物塩、臭素ナトリウム、臭化カリウムなどの臭化物塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物塩が好適に用いられる。主剤の鉄粉の処理条件として、鉄粉100重量部に対しハロゲン化金属塩0.4〜4重量部の割合で被覆したものが好適に用いられるが、酸素吸収速度、能力保持時間の点から、0.4〜2.5重量部が更に好ましい。
【0012】
形状付与された脱酸素剤の一例として、シート状脱酸素剤包装体を用いる方法について詳述する。シート状脱酸素剤包装体としては、例えば、粉末状の鉄粉系脱酸素剤および必要に応じ活性炭などの脱臭剤を熱可塑性樹脂と混合し、シート化させたものを挙げることができる。前記シートは、必要に応じて延伸したり、あるいは、これに紙などの基材に活性炭を含有させた脱臭層を積層接着させてもよい。活性炭などの脱臭剤を用いると、粉末状の鉄粉系脱酸素剤と熱可塑性樹脂を混合し、シート化する際に加熱操作のため樹脂成分が分解、揮散して臭気を帯びた場合、除臭する効果が得られる。
【0013】
シート状脱酸素剤包装体において鉄粉系脱酸素剤層に用いられる脱酸素剤としては、前記の鉄粉系脱酸素剤が使用できる。
【0014】
シート状脱酸素剤包装体において鉄粉系脱酸素剤と混合される熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテンなどのオレフィン系樹脂が用いられる。シート状脱酸素剤は、通常、鉄粉系脱酸素剤30〜85重量部に対し、上記の熱可塑性樹脂を15〜70重量部の割合で混練、溶融してシート化し、必要に応じて延伸される。延伸する場合の倍率は、通常、1.5〜20倍、好ましくは1.5〜12倍である。
【0015】
シート状脱酸素剤は、含水または無水の何れの形態でも使用できる。例えば、シート状脱酸素剤に酸素吸収を補助する含水シート層を積層したもの、また、酸素以外のガス吸着、ガス発生等の付加機能を持たせるための成分を添加・混合したり、あるいはこれらの成分を含む層を積層したものなどを挙げることができる。シート状脱酸素剤の厚さは、製造の際の加工性及び使用の目的に応じて0.05〜4mmの範囲で、好ましくは0.1〜3mmの範囲で選択可能である。また、寸法、形状については必要とする酸素吸収能力及び使用の目的により適宜選択可能である。
【0016】
本発明のシート状脱酸素剤の形状に制限はなく、粉末状の鉄粉系脱酸素剤を熱可塑性樹脂と混練し、フィルム、ビーズなどの形状を付与したものを用いることができる。
【0017】
鉄粉系脱酸素剤又はシート状脱酸素剤を通気性包装材により包装することにより脱酸素剤包装体が得られる。
鉄粉系脱酸素剤又はシート状脱酸素剤を包装する通気性包装材としては、たとえば和紙、洋紙、レーヨン紙等の紙類、パルプ、セルロース、合成樹脂からの繊維等の各種繊維類を用いた不織紙、プラスチックフィルムまたはその穿孔物等、また、耐水性、耐油性を持たせるために紙、不織布などに耐水剤、耐油剤を塗布したもの、さらに、耐破損性を向上させるためにワリフなどの補強材を用いたもの、さらにはこれから選択される2種以上を積層したものなどであって、ガーレー式透気度が0.1〜3000秒/空気100ml、好ましくは、1〜1000秒/空気100mlのものであればよい。
【0018】
そのひとつの方法は、従来の技術によって製造した包装体を通気性を有する無孔紙系包装材で再包装する方法(以下2回包装法と略する)である。この方法によって脱酸素速度に実質的に影響を与えることなく、包装体の外表面に付着する微粒子鉄粉量を保存物品に悪影響を与えない量にまで減少させることができた。その鉄粉量の臨界値は、0.5mg/m2であった。
【0019】
無孔紙系包装材としては、例えば、和紙、洋紙、レーヨン紙等の紙類、パルプ、セルロース、合成樹脂からの繊維などの各種繊維類を用いた不織布を外側材にし、これを有孔の熱可塑性樹脂で内張り積層し、強度を持たせたものを用いることができる。
【0020】
内張り積層に用いられる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテンなどのオレフィン系樹脂が好ましい。
【0021】
鉄粉系脱酸素剤又はシート状脱酸素剤は、通気性包装材を一部または全部に用いて包装して、脱酸素剤包装体として使用される。包装材の一部に粘着剤又は接着剤を添着して用いても良い。
【0022】
本発明において、表面鉄粉付着の少ない脱酸素剤包装体と物品を収納するガスバリア性容器としては、酸素透過度が1〜200ml/m2・24h・atm、好ましくは、1〜100ml/m2・24h・atm程度の材料が用いられ、また、完全に密封可能であればその形態に関わらず使用することができる。本発明に使用される最も簡単な容器としては、例えば、KON/PE(ポリ塩化ビニリデンコートナイロン/ポリエチレン)、KOP/PE(ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレン/ポリエチレン)、もしくはKPET/PE(ポリ塩化ビニリデンコートポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン)などで例示される各種ポリ塩化ビニリデンコート積層フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(商品名:エバール(株)クラレ製)、ナイロンMXD−6などの積層フィルムなどから作られた袋であり、密封は通常ヒートシールにより行われる。
【0023】
本発明のもうひとつの方法は、粉末状の鉄粉系脱酸素剤を熱可塑性樹脂に混合し、膜状に成形した脱酸素剤層に酸素バリヤー層を配してなる少なくとも2層以上の多層構造を有する脱酸素性の多層体を用いる方法である。脱酸素性多層体の例として、特開昭55−90535号公報に記載されているような通気性樹脂層/脱酸素性樹脂層/バリヤー層/保護外層などからなる多層構造の多層体を挙げることができる。この脱酸素性多層体は、通気性樹脂層を内側にして物品を収納する容器あるいは容器の蓋に成形して用いられる。
この方法によって、容器内側の付着鉄粉を0.5mg/m2以下に減少させることができ容易に高い清浄度の脱酸素性包装体を得ることができる。
【0024】
脱酸素性包装体の通気性樹脂層としては、酸素透過性、透湿防止性に優れ、ヒートシール性を有する例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレンなどのオレフィン系熱可塑樹脂を挙げることが出来る。
【0025】
脱酸素性包装体の脱酸素性樹脂層に用いられる脱酸素剤としては、前記のシート状脱酸素剤包装体において用いられる鉄粉系脱酸素剤が使用できる。
脱酸素性樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、以下の樹脂を挙げることが出来る。低密度エチレン、中密度エチレン、高密度エチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びグラフト変性などのポリエチレン系樹脂、変性エチレン樹脂、上記と同様なポリプロピレン系樹脂、変性ポリプロピレン系樹脂、これらポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂の塩化物、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、α―オレフィン共重合体、不飽和カルボン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリルアミド−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体、不飽和スルフォン酸−酢酸ビニル共重合体等のビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−エチレン共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂などである。
【0026】
バリヤー層としては、酸素透過率が50ml/m2・24h・atm以下、好ましくは20ml/m2・24h・atmの以下の積層樹脂、もしくはアルミニウム等の金属箔及び金属と樹脂との共積層物を挙げることが出来る。例えば、Kコートしたビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、セロファン、ナイロンMXD−6とポリエチレンとの積層物、アルミナ又はシリカ蒸着ポリエチレンなどの金属と樹脂の共積層物が挙げられる。
【0027】
バリヤー層の外側には、保護層を積層することができる。保護層としては、防湿性でバリヤ−保護機能を有したものであれば特定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、ナイロンMXD−6などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタル酸エステルなどのポリエステル系樹脂を挙げることが出来る。
【0028】
本発明の保存対象物品としては、飲食料品、化粧品、日用品、医用品などの一般的な物品を幅広くあげることができるが、この中でも特に、鉄と付加物を形成する物質、例えば、アスコルビン酸、クマリン、タンニン、クレゾール又はヒノキチオールを含む飲食料品、化粧品、日用品、医用品などが変色を起こすことなく好適に保存される。具体的には、アスコルビン酸などの保存剤入り饅頭、菓子、飲料類、クマリンなどの香料を添加した化粧品、香水、クレゾール、ヒノキチオールなどの抗菌性物質を含む石鹸類又は輸液バッグなどの医用品類をあげることができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。なお、本発明はこの実施例に制限されるものではない。
【0030】
実施例1
粒径1〜150μm(平均粒径80μm)の鉄粉100重量部に対し、0.8重量部の塩化カルシウムを溶解した水溶液を散布し、加熱乾燥して塩化カルシウムを被覆した鉄粉からなる鉄粉系脱酸素剤を得た。これを(株)トパック製連続生産機を用いて、有孔ポリエチレンテレフタレート/紙/有孔ポリエチレンの構成からなる40mm×30mmの通気性フィルム包装袋に収納し、包装体Aを得た。得られた包装体1個ずつを外側が紙、内側が××××の貫通微細孔を有したポリエチレンフィルムからなる50mm×40mmの熱圧着2層包材でもう一度、機械包装し2回包装体Bを得た。この2回包装体Bの表面をシャーレ上で50mm×60mmのガーゼで十分に拭い、落下した粉塵とガーゼを塩酸加熱溶解処理して処理液を集めて鉄分を、ICP−AES(誘導結合型プラズマ発光分析計、セイコー電子工業(株)製、1200VR型)を用いて定量し、包装体の表面付着鉄粉量を求めた。
ヒノキチオール入り市販石鹸と、前記の2回包装した脱酸素剤包装体Bをガスバリヤー性の高いKON/PE包装袋に共に封入し、25℃下にて保存し、7日後及び30日後に包装袋内の酸素濃度を分析するとともに、30日後の石鹸の外観における異常の有無を100個の包装袋について調べた。
【0031】
実施例2
上述の鉄粉系脱酸素剤60重量部とポリエチレン40重量部とを190℃で混練押し出してシート状とした後、縦方向に5倍に延伸・裁断して厚さ1.2mm、15mm×21mmのシート状脱酸素剤を得た。
ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエチレンフィルムを積層し、穿孔加工を施した通気性フィルムのポリエチレン側と、耐水紙にシール層として有孔ポリエチレンを積層した通気性シートの耐水紙側を貼り合わせることなく重ねて二重包装材料を得た。この二重包装材料のガーレー式透気度は20秒/空気100mlであった。
この二重包装材料の通気性シートのシール層側と、ポリエチレンテレフタレートフィルムにシール層としてポリエチレンフィルムを積層した非通気性フィルムのシール層が接するように重ね、3辺をヒートシールし、片面二重包装袋(30mm×45mm)を得た。通気性シートと非通気性フィルムの間に前記シート状脱酸素剤を収納し、残りの一辺をヒートシールし、シート状脱酸素剤包装体を得た。得られたシート状脱酸素剤包装体表面を、実施例1と同様に処理して包装袋表面上の付着鉄量を定量した。
2回包装した脱酸素剤包装体の代わりにシ−ト状脱酸素剤包装体を用いた以外は、実施例1と全く同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0032】
比較例1
2回包装した脱酸素剤包装体の代わりに、1回包装した脱酸素剤包装体Aを用いた以外は実施例1と全く同様に保存、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0033】
【0034】
実施例3
ヒノキチオール入り石鹸の代わりにアスコルビン酸保存剤入り温泉饅頭を用いた以外は、実施例1と全く同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0035】
実施例4
ヒノキチオール入り石鹸の代わりにタンニンを含有するヨモギ饅頭を、2回包装した脱酸素剤包装体の代わりにシート状脱酸素剤包装体を用いた以外は、実施例1と全く同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0036】
比較例2
シート状脱酸素剤包装体の代わりに、比較例1の脱酸素剤包装体を用いる以外は実施例4と全く同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0037】
【0038】
実施例5
内側から、ポリプロピレン/上述の鉄粉系脱酸素剤60重量部とポリプロピレン40重量部からなる脱酸素剤樹脂組成物/酸変性ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/酸変性ポリプロピレン/ポリプロピレンからなる脱酸素性6層積層シート(以下OASと略称)を用いて60mm×50mm×25mmの容器を作製し、これにヒノキチオール入り石鹸を収納し、ポリプロピレン/酸変性ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体/酸変性ポリプロピレン/ポリプロピレンからなる5層積層シートの蓋をして封入し、実施例1と全く同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
また、実施例1と同様に処理して内側表面の付着鉄量を定量した。
【0039】
比較例3
鉄粉を含む脱酸素層を除いた5層積層シートで作成した容器、及び蓋を用いた以外は全く実施例5と同様に保存し、酸素濃度分析、外観検査を行った。
【0040】
【0041】
以上より、2回包装した脱酸素剤包装体、シート状脱酸素剤包装体及び脱酸素性6層容器を用いた実施例1〜5では、保存中の物品に汚れ、変色の発生が全く認められなかった。しかし、2回包装した脱酸素剤包装体、シート状脱酸素剤包装体を従来の脱酸素剤に代えた比較例1〜3では、保存物品に褐変もしくは黒班の汚れが発生した。従って、脱酸素剤包装体の表面に付着する鉄粉量が0.5mg/m2以下にすると保存中の物品に汚れや変色が発生しないことが分かる。また、脱酸素剤を用いないで保存した場合、汚れは見られないが変色が発生することが分かる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、物品の保存中に汚れや変色を発生させることなく長期間保存することが可能となる。特に、鉄と付加物を形成する物質を含む物品、例えば、飲食料品、化粧品、日用品、医用品などの保存に有効である。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂に鉄粉系脱酸素剤を配合したシート状脱酸素剤を、少なくとも一部が通気性を有する二重包装材料である包装材により包装してなる脱酸素剤包装体と共に、物品をガスバリア性容器に収納する物品の保存方法において、該二重包装材料が、プラスチックフィルムに穿孔加工を施した通気性フィルムと、耐水紙にプラスチックフィルムを積層した通気性シートの耐水紙側を貼り合わせることなく重ね合わせることよりなり、且つ、前記包装材の脱酸素剤包装体外側表面の面積当たりの付着鉄粉量が0.35mg/m2以下であることを特徴とする物品の保存方法。
- 脱酸素剤包装体が、鉄粉系脱酸素剤を熱可塑性樹脂に配合、成形、延伸したシート状脱酸素剤を通気性包装材によって包装してなる包装体である請求項1記載の物品の保存方法。
- 収納する物品が、鉄と付加物を形成する物質を含む物品である請求項1記載の物品の保存方法。
- 収納する物品が、アスコルビン酸、クマリン、タンニン、クレゾール及びヒノキチオールからなる群から選ばれた少なくとも一種の物質を含有する物品である請求項1記載の物品の保存方法。
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