JP4060165B2 - 液体燃料用バーナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体燃料用バーナーに関し、詳しくは、酸素を含む支燃性ガスと液体燃料とを混合して燃焼させる液体燃料用バーナーにおいて、液体燃料を効果的に微粒化させて燃焼させることができる構造を備えた液体燃料用バーナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鉄屑等の被加熱物を加熱するための気体燃料用バーナーとして、一次酸素を供給する酸素ガス供給管の外周に燃料ガス供給路を設け、さらにその外周に二次酸素供給路を設けた三重管構造のバーナーが広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような三重管構造の気体燃料用バーナーでは、中心の酸素ガス供給管から高速の酸素ガス流を噴出させるとともに、二次酸素を用いて燃料ガスを燃焼させることにより、火炎を安定化させるようにしている。このため、火炎の不安定化による加熱効率の低下を引き起こすことなく、酸素ガス流を高速化することが可能となっている。
【0003】
一方、液体燃料用バーナーでは、液体燃料供給路の先端に、液体燃料を霧化して噴出するための燃料霧化器を設けるとともに、この燃料霧化器の外周に支燃性ガスを噴出するノズルを設けることにより、酸素を含む支燃性ガスと液体燃料とを効果的に混合し、安定した火炎を得られるようにしている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−259413号公報(第2−5頁、第2図)
【0005】
【特許文献2】
特開2001−21113号公報(第2頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の気体燃料用バーナーは、ノズル先端部に流速の遅い燃料噴出孔や二次酸素噴出孔を有しているため、このような気体燃料用バーナーを電気炉で鉄原料を溶解する用途に用いた場合、スプラッシュによるノズル閉塞が問題となる。また、従来の液体燃料用バーナーでは、低品位の重油を用いた場合や、燃料にゴミが混入した場合等に、燃料霧化器が閉塞することがあった。さらに、液体燃料を噴霧するために高圧を維持する必要があるが、液体燃料の流量を低下させたときに圧力が低下して十分な霧化を行えなくなることもあった。また、ガスの噴出力によって液体燃料を霧化乃至微粒化することも行われているが、この場合はノズル構造が複雑になって製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構造でありながら、液体燃料を効率よく燃焼させることができ、しかも高速火炎を得ることができる液体燃料用バーナーを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の液体燃料用バーナーは、酸素を含む支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給管の外周に、液体燃料を供給する液体燃料供給路と、噴霧用ガスを供給する噴霧用ガス供給路とを設けた液体燃料用バーナーにおいて、前記支燃性ガス供給管のバーナー先端側には、該支燃性ガス供給管の内径を円錐面により縮径した絞り部と、該絞り部からバーナー先端側に向けて拡開した円錐部と、該円錐部よりバーナー先端側の直胴部と、該直胴部に形成した周溝とを有する中細形状のノズルが設けられ、前記噴霧用ガス供給路及び液体燃料供給路の先端部には、小径の通孔からなる噴霧用ガス噴出孔及び液体燃料噴出孔を有するノズル部材が設けられ、該ノズル部材よりバーナー先端側には、前記噴霧用ガス噴出孔及び液体燃料噴出孔からそれぞれ噴出した噴霧用ガスと液体燃料とを混合する混合室が設けられ、前記混合室の先端側には、該混合室で混合した混合流体を前記ノズル内に噴出する複数の混合流体噴出孔を前記ノズルの内周面に開口し、前記周溝は、前記混合流体噴出孔と前記ノズル先端との間に設けられていることを特徴とし、特に、前記噴霧用ガスが空気又は蒸気であること、また、前記ノズル先端における前記支燃性ガスの初期流速が音速以上であることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の液体燃料用バーナーにおける前記円錐部の拡開角度が3〜10度の範囲に設定されていることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一形態例を示す液体燃料用バーナーの断面図である。この液体燃料用バーナーは、酸素を含む支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給管11を中心として、その外周に外管12及び水冷ジャケット13を同心円状に配置し、支燃性ガス供給管11と外管12との間に噴霧用ガスを供給する噴霧用ガス供給路14を、外管12と水冷ジャケット13との間に液体燃料を供給する液体燃料供給路15を、それぞれ設けた三重管構造となっている。なお、前記水冷ジャケット13は、冷却水の往路16と復路17とを有する通常の水冷ジャケットを用いることができる。
【0011】
前記支燃性ガスは、酸素を含むガスであればよく、この種のバーナーに用いられている空気、酸素富化空気、酸素を用いることができる。また、液体燃料は、重油、灯油等の各種液体燃料を用いることができる。そして、前記噴霧用ガスには、各種ガスを使用することが可能であるが、燃焼に悪影響を与えたり、有害排ガスを発生したりすることがなく、かつ、低コストで適当な圧力のものが得られるガスを用いることが好ましく、例えば空気や蒸気(スチーム)が最適である。
【0012】
前記支燃性ガス供給管11のバーナー先端側には、支燃性ガス供給管11の内径を円錐面21により縮径した絞り部22と、この絞り部22からバーナー先端側に向けて拡開した円錐部23と、この円錐部23よりバーナー先端側の直胴部24と、この直胴部24に形成した周溝25とを有する中細形状のノズル26が設けられている。
【0013】
また、前記噴霧用ガス供給路14及び液体燃料供給路15の先端部には、小径の通孔からなる噴霧用ガス噴出孔31と液体燃料噴出孔32とを有するノズル部材33が設けられており、このノズル部材33よりバーナー先端側に、両供給路14,15に供給されて両噴出孔31,32から噴出した噴霧用ガスと液体燃料とを混合する混合室34が設けられている。さらに、この混合室34の先端には、室内で混合した混合流体を前記ノズル26内に噴出して微粒化する複数の混合流体噴出孔35が、ノズル26の内周面に開口するようにして設けられている。なお、噴霧用ガス供給路14と液体燃料供給路15との位置関係は逆であってもよく、噴霧用ガス供給路14を外側に、液体燃料供給路15を内側に配置することもできる。また、両噴出孔31,32の形態は、スリットあるいはマルチホールの型式を採用することができる。
【0014】
前記ノズル26における前記円錐部23の拡開角度θは、3〜10度の範囲に設定することが好ましい。この拡開角度θが3度未満でも、10度を超えても、円錐部23を設けた効果、すなわち、ガス流速を向上させる効果を十分に得ることができない。さらに、前記ノズル26における円錐部23の入口部の直径D1と出口部の直径D2とは、入口部の断面積A1と出口部の断面積A2との比の値、即ち(A2/A1)が、流体の条件を同じとした場合のラバールノズルにおけるスロートの断面積AL1とノズル出口部の断面積AL2との比の値、即ち周知の計算式で求めた(AL2/AL1)よりも大きく、かつ、3倍以下の値となるように、前記拡開角度θを満足しつつ、各直径D1,D2を設定することが好ましい。したがって、円錐部23の長さは、これらの値から自ずと限定された範囲となる。円錐部23をこのような形状に形成することにより、支燃性ガスの流れを若干過膨張の状態にできるので、ノズル26内の圧力が低くなり、支燃性ガスが混合流体噴出孔35に流入して逆火が発生することを防止できる。
【0015】
なお、ラバールノズルにおけるスロートの断面積AL1とノズル出口部の断面積AL2との比の値は、次の式(1)、式(2)により求めることができる。
【0016】
【数1】
AL1:ラバールノズルのスロート断面積 [m2]
AL2:ラバールノズル出口断面積 [m2]
m:支燃性流体の質量流量 [kg/h]
P0:スロート部より基端側における支燃性流体の圧力 [Pa]
p:ノズル外部の圧力 [Pa]
k:支燃性流体の比熱比 [−]
ρ0:支燃性流体の密度 [kg/m3]
【0017】
前記絞り部22の直径は、前記円錐部23の入口部の直径D1と等しくなるが、絞り部22の直径と支燃性ガス供給管11の直径との関係は、絞り部上流の円錐面21の角度を支燃性ガスの流れを阻害しないように設定すれば任意であり、絞り部22の長さも任意である。さらに、この絞り部22は円錐面21と連続した曲面で形成することもできる。
【0018】
また、前記直胴部24の直径も、前記円錐部23の出口部の直径D2と等しくなる。この直胴部の長さは、直径D2等の条件に応じて異なってくるが、通常は、直径D2に対して1/2〜1/20の範囲が適当である。このような直胴部24を設けることにより、混合流体噴出孔35から支燃性ガスの周囲に噴出した混合流体が拡散してしまうことを抑制し、支燃性ガスとの混合を効果的に行って適切な火炎を形成することができる。
【0019】
さらに、この直胴部24に設けられる周溝25は、前記混合流体噴出孔35とノズル先端との間に設けられるものであるが、混合流体噴出孔35から若干離れた位置、例えば、混合流体噴出孔35とバーナー先端との中間部付近に設けることが好ましい。この周溝25の深さL1や幅L2は、前記直径D2や直胴部の長さL0によって異なるが、一般的には、深さL1は、下記式(3)
1.1<{(D2+2L1)2/(D2)2}・・・(3)
即ち、L1>0.025D2
を満たすような深さに設定することが好ましく、この式を満たす深さの周溝25を設けることによって火炎をより安定化させることができる。なお、最大深さは、ノズル部分の肉厚等に応じて設定すればよく、通常は、幅L2と同程度に設定しておけばよい。
【0020】
一方、噴霧用ガス供給路14からの噴霧用ガスと液体燃料供給路15からの液体燃料とは、小径の噴霧用ガス噴出孔31及び液体燃料噴出孔32を経て支燃性ガス供給管11と水冷ジャケット13との間に形成された容積の大きな混合室34で合流混合する。したがって、噴霧用ガスと液体燃料とは、両噴出孔31,32を出て膨張しながら混合室内で気液混合の状態となり、混合流体噴出孔35から前記ノズル26内に噴出する。
【0021】
混合流体噴出孔35は、混合流体で支燃性ガス流を包み込むように設けられるものであって、通常はノズル内周面に等間隔で開口するように設けられている。この混合流体噴出孔35の設置数は、これを多くすることによって支燃性ガスの周囲に満遍なく液体燃料を供給することができるという利点はあるが、設置数を多くすると製作コストが大幅に上昇するので、通常は、6〜10個程度を同一円周上に等間隔で設けることが好ましい。また、混合流体噴出孔35の軸方向の位置は、ノズル26の形状や支燃性ガスの酸素濃度等の条件によって適当に決定することができるが、一般的には、ガス流速が最も高速となる前記円錐部23の終端部に混合流体噴出孔35が開口するように設定することが好ましい。さらに、混合流体噴出孔35における混合流体の噴出方向は、支燃性ガスの流れを大きく阻害することがないように設定すればよく、ノズル26の軸線に対する噴出方向は5〜90度の範囲で選択でき、また、ノズル内に旋回流を形成するようにして噴出させることもできる。
【0022】
このように、前記混合室34で液体燃料を噴霧用ガスと混合させ、気液混合流として混合流体噴出孔35から噴出させることにより、液体燃料の見かけ上の容積が大幅に増加するため、液体燃料のみを噴出する噴霧孔に比べて混合流体噴出孔35を大きくすることができる。したがって、タール分を多く含む低品質の重油を液体燃料として使用したり、液体燃料中にゴミが混入したりしても、液体燃料が通過する液体燃料噴出孔32や混合流体噴出孔35が閉塞することがなくなり、ノズル閉塞の発生を防止することができる。さらに、高速で流れる支燃性ガスに向かって混合流体を噴出するので、混合流体噴出孔35から噴出した液体燃料の微粒化を促進することができる。
【0023】
このように、中細形状のノズル26を用いて支燃性ガスの初期流速を音速以上にするとともに、支燃性ガスと混合させる直前の噴霧用ガスと液体燃料とを混合室34で混合して気液混合状態とした後、この混合流体を複数の混合流体噴出孔35からノズル26内を高速で流れる支燃性ガス中に噴出させることにより、液体燃料の微粒化を促進することができるので、微粒化した液体燃料と支燃性ガス中の酸素との混合、燃焼を高効率で行うことができる。
【0024】
また、液体燃料の流量を減少させる場合でも、噴霧用ガスの流量を適当に調整することにより、混合流体噴出孔35からの混合流体の噴出速度を略一定に保つことができるので、液体燃料の不均一化を避けることができ、高効率な燃焼状態を保つことができる。さらに、液体燃料の流量が同一であっても、噴霧用ガスの流量を調整することにより、混合流体噴出孔35からの液体燃料の噴出状態を変化させて液体燃料の微粒化状態を制御することが可能となるので、液体燃料と支燃性ガスとによって形成される火炎の火炎長を、被加熱物とバーナーとの距離に応じて調整することができる。
【0025】
さらに、必要に応じて前記周溝25を設けることによって火炎の安定化を図ることができ、また、必要に応じて前記直胴部24を設けることによって火炎が必要以上に拡がることを抑制することができるので、火炎の流速減衰を大幅に抑制することができる。加えて、本発明の液体燃料用バーナーは、液体燃料の流量に比べて支燃性ガスの流量を多く設定することにより、支燃性ガス、例えば酸素を吹き込むための酸素ランスとして用いることも可能であり、火炎長の制御や火炎流速の減衰抑制効果により、支燃性ガスを対象物に強力に吹き込むことができ、ランスとしても優れた性能を得ることができる。
【0026】
【実施例】
図1に示す構造で、表1の実施例に示す仕様の液体燃料用バーナーを製作するとともに、ノズル先端における支燃性ガスの流速(噴出速度)を比較するための比較対象として表1の参考例に示す仕様のラバールノズルを製作した。ノズル先端における噴出速度を測定したところ、実施例バーナー及びラバールノズル共にマッハ1.5で変わりはないことが分かった。また、図2に、実施例のバーナー及び参考例のラバールノズルにおけるノズル中心軸方向距離に対する流速(マッハ数)を測定した結果を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、支燃性ガス及び噴霧用ガスの流量を一定とし、液体燃料の流量を変化させたときの火炎の状態を観察するとともに、噴霧用ガスを供給しなかったときの火炎の状態も観察した。その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
また、支燃性ガス及び液体燃料の流量を一定とし、噴霧用ガスの流量を変化させたときの火炎の状態を観察した。その結果を表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の液体燃料用バーナーによれば、まず、液体燃料を噴出するための混合流体噴出孔を、ノズル内に混合流体を噴出するようにノズル内周面に開口させたので、ノズル前面にスプラッシュが付着しても混合流体噴出孔が閉塞することがなく、メンテナンス性を大幅に向上できる。また、液体燃料を噴霧用ガスと混合させて気液混合流とすることにより、混合流体噴出孔の孔径を大きくすることができるので、ゴミ・タール分等を多く含んだ低品位の液体燃料を使用しても、ノズル閉塞の発生を回避することができる。さらに、噴霧用ガスによって液体燃料の噴出速度を略一定に維持できるため、液体燃料を低流量とした場合でも高効率で燃焼させることができる。また、支燃性ガスと気液混合流体との相互作用によって液体燃料を均一に微粒化させることができるため、極めてシンプルなノズル構造にすることができ、製作性やメンテナンス性が大幅に向上する。加えて、ノズル先端に溝や直胴部を設けることにより、火炎の安定化や高効率化が図れ、支燃性ガスを包み込むような火炎を形成できるため、支燃性ガスの流速減衰を大幅に抑制することができる。また、噴霧用ガスの流量を調整することによって火炎長を制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示す液体燃料用バーナーの断面図である。
【図2】 実施例で測定した流速分布を示す図である。
【符号の説明】
11…支燃性ガス供給管、12…外管、13…水冷ジャケット、14…噴霧用ガス供給路、15…液体燃料供給路、21…円錐面、22…絞り部、23…円錐部、24…直胴部、25…周溝、26…ノズル、31…噴霧用ガス噴出孔、32…液体燃料噴出孔、33…ノズル部材、34…混合室、35…混合流体噴出孔
Claims (4)
- 酸素を含む支燃性ガスを供給する支燃性ガス供給管の外周に、液体燃料を供給する液体燃料供給路と、噴霧用ガスを供給する噴霧用ガス供給路とを設けた液体燃料用バーナーにおいて、前記支燃性ガス供給管のバーナー先端側には、該支燃性ガス供給管の内径を円錐面により縮径した絞り部と、該絞り部からバーナー先端側に向けて拡開した円錐部と、該円錐部よりバーナー先端側の直胴部と、該直胴部に形成した周溝とを有する中細形状のノズルが設けられ、前記噴霧用ガス供給路及び液体燃料供給路の先端部には、小径の通孔からなる噴霧用ガス噴出孔及び液体燃料噴出孔を有するノズル部材が設けられ、該ノズル部材よりバーナー先端側には、前記噴霧用ガス噴出孔及び液体燃料噴出孔からそれぞれ噴出した噴霧用ガスと液体燃料とを混合する混合室が設けられ、前記混合室の先端側には、該混合室で混合した混合流体を前記ノズル内に噴出する複数の混合流体噴出孔を前記ノズルの内周面に開口し、前記周溝は、前記混合流体噴出孔と前記ノズル先端との間に設けられていることを特徴とする液体燃料用バーナー。
- 前記噴霧用ガスが、空気又は蒸気であることを特徴とする請求項1記載の液体燃料用バーナー。
- 前記ノズル先端における前記支燃性ガスの初期流速が音速以上であることを特徴とする請求項1記載の液体燃料用バーナー。
- 前記円錐部の拡開角度が3〜10度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1記載の液体燃料用バーナー。
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