JP4058264B2 - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や車両の操舵系にモータによる操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、特に操舵フィーリングの調整が容易に行える電動パワーステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置の制御装置は、操舵トルクに応じてモータからのアシストトルクを制御するもので、運転者の操舵補助を行う基本的な機能のほかに、運転者が意図通りに操縦できるように、操舵フィーリングが良好であることが重要である。そのように制御装置を調整するためには、多数のパラメータを調整することが必要で、調整が難しいという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような事情によりなされたものであり、本発明の目的は、操舵フィーリングの調整が容易に行える電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハンドルと一体的に設けられたステアリングシャフトを補助負荷付勢するモータと、前記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサの出力値等によって演算されたモータ電流指令値に基づいて前記モータを制御する電流制御部をコントロールユニットに備えた電動パワーステアリング装置の制御装置に関するもので、本発明の上記目的は、前記モータの温度を検出するモータ温度検出手段と、該モータ温度検出手段が検出した温度t(℃)に車種や車両の状態量に応じて設定された値である所定のオフセット分a(℃)を加えた温度(t+a)に基づいて前記モータ電流指令値を補正する電流指令値補正手段とを備えるとともに、前記電流指令値補正手段は、温度20℃におけるトルク定数をKT20、温度tにおけるトルク定数をK(t)としたときに、前記モータ電流指令値をKT20/K(t+a)倍して補正し、前記電流制御部は前記補正されたモータ電流指令値によってモータ電流を制御することによって達成される。
【0005】
また、本発明の上記目的は、前記オフセット分を、車両のヨーレート又は横加速度に応じて設定することによってより効果的に達成される。
【0006】
【作用】
なお、従来の電動パワーステアリング装置の制御装置では、特開平11−208488号公報にあるように、モータの温度が操舵状況や環境温度により大きく変化し、温度変化によって出力するトルクが変化することを制御装置で補正して、モータ出力の温度変動を抑える機能がある。これは、モータ温度を検出し、モータ温度により温度変動を相殺するゲインを計算し、モータの電流指令値に乗じて補正するものである。
【0007】
これに対し、本発明は、検出されたモータ温度にオフセットを加算することにより、本来の温度変動を相殺するゲインよりも大きいゲインを電流指令値に乗じるため、操舵フィーリングを軽めに設定できる。これにより、多数のパラメータを調整することなく、操舵フィーリングの調整が行えるようになる。
【0008】
また、前記オフセット分を車両の状態量に応じて設定できるようにすれば、電動パワーステアリング装置の動特性に影響を与えることなく、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、電動パワーステアリング装置のモータの温度変化による特性変化が操舵補助特性の変化として現われないように、モータ温度検出手段によりモータ温度を検出し、その検出値に基づいてモータ電流指令値を補正する機能を利用し、検出したモータ温度にオフセットを加えることにより、操舵フィーリングの調整が簡単に行える。
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0011】
先ず、本発明を実施するに適した電動パワーステアリング装置の構成を図1に示して説明する。操向ハンドル1の軸2はユニバーサルジョイント4a及び4b,ピニオンラック機構5を経て操向車輪のタイロッド6に結合されている。軸2には、操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、操向ハンドル1の操舵力を補助するモータ20がクラッチ21、減速ギア3を介して軸2に結合されている。パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット30には、バッテリ14からイグニションキー11を経て電力が供給され、コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTと車速センサ12で検出された車速Vとに基いてアシスト指令の操舵補助指令値Iの演算を行ない、演算された操舵補助指令値Iに基いてモータ20に供給する電流を制御する。クラッチ21はコントロールユニット30でON/OFF制御され、通常の動作状態ではON(結合)されている。そして、コントロールユニット30によりパワーステアリング装置が故障と判断された時、及びイグニションキー11によりバッテリ14の電源供給がOFFとなっている時に、クラッチ21はOFF(切離)される。
【0012】
コントロールユニット30は主としてCPUで構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。例えば位相補償器31は独立したハードウェアとしての位相補償器を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示している。尚、コントロールユニット30をCPUで構成せず、各機能要素を独立のハードウェアで構成することも可能である。
【0013】
ここで、コントロールユニット30の一般的な機能及び動作を説明する。トルクセンサ10で検出されて入力される操舵トルクTは、操舵系の安定性を高めるために位相補償器31で位相補償され、位相補償された操舵トルクTAが操舵補助指令値演算器32に入力される。又、車速センサ12で検出された車速Vも操舵補助指令値演算器32に入力される。操舵補助指令値演算器32は、入力された操舵トルクTA及び車速Vに基いてモータ20に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iを決定する。操舵補助指令値演算器32にはメモリ33が付設されている。メモリ33は車速Vをパラメータとして操舵トルクに対応する操舵補助指令値Iを格納しており、操舵補助指令値演算器32による操舵補助指令値Iの演算に使用される。操舵補助指令値Iは減算器30Aに入力されると共に、応答速度を高めるためのフィードフォワード系の微分補償器34に入力され、減算器30Aの偏差(I−i)は比例演算器35に入力され、その比例出力は加算器30Bに入力されると共にフィードバック系の特性を改善するための積分演算器36に入力される。微分補償器34及び積分演算器36の出力も加算器30Bに加算入力され、加算器30Bでの加算結果である電流制御値Eが、モータ駆動信号としてモータ駆動回路37に入力される。モータ20のモータ電流検出値iはモータ電流検出回路38で検出され、モータ電流検出値iは減算器30Aに入力されてフィードバックされる。
【0014】
モータ駆動回路37の構成例を図3に示して説明すると、モータ駆動回路37は加算器30Bからの電流制御値Eに基いて電界効果トランジスタ(FET)FET1〜FET4の各ゲートを駆動するFETゲート駆動回路371、FET1〜FET4で成るHブリッジ回路、FET1及びFET2のハイサイド側を駆動する昇圧電源372等で構成されている。FET1及びFET2は、電流制御値Eに基いて決定されるデューティ比D1のPWM(パルス幅変調)信号によってON/OFFされ、実際にモータに流れる電流Irの大きさが制御される。FET3及びFET4は、デューティ比D1の小さい領域では所定1次関数式(a,bを定数としてD2=a・D1+b)で定義されるデューティ比D2のPWM信号で駆動され、デューティ比D1の大きい領域ではPWM信号の符号により決定されるモータの回転方向に応じてON/OFFされる。例えばFET3が導通状態にあるときは、電流はFET1、モータ20、FET3、抵抗R2を経て流れ、モータ20に正方向の電流が流れる。又、FET4が導通状態にあるときは、電流はFET2、モータ20、FET4、抵抗R1を経て流れ、モータ20に負方向の電流が流れる。従って、加算器30Bからの電流制御値EもPWM出力となっている。又、モータ電流検出回路38は抵抗R2の両端における電圧降下に基いて正方向電流の大きさを検出すると共に、抵抗R1の両端における電圧降下に基いて負方向の電流の大きさを検出する。モータ電流検出回路38で検出されたモータ電流検出値iは、減算器30Aに入力されてフィードバックされる。
【0015】
上述のような一般的なコントロールユニット30に対して、本発明では図4に示すように、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTに基づいて操舵補助や補償制御のためのモータ電流指令値Irefを決定した後、電流指令値補正部48において、モータに取り付けられたモータ温度検出手段23(例えばサーミスタ等)において検出されたモータ温度にオフセット分を加えた温度に基づいてモータ電流指令値Irefの補正が行われる。補正後のモータ電流指令値IrefをIref とすると、モータ電流検出回路38からのモータ電流検出値iがモータ電流指令値Iref と等しくなるように電流制御部50が制御している。
【0016】
具体的には、モータ電流指令値Iref は上下制限値±Ilmtを有する最大電流制限部40から出力され、モータ電流指令値Iref とモータ電流検出値iとの差(Iref −i)が減算器41で求められ、その差電流(Iref −i)が電流制御部50に入力される。一方、位相補償器31の出力は操舵補助指令値演算部32、演算器42及び電流指令値補正部48を経て最大電流制限部40に入力され、電流制御部50からの駆動電流及びモータ電流検出回路38からのモータ電流検出値iに基いて、モータ角速度推定部43で推定された角速度ωはロストルク補償器44及び収れん性制御器45に入力され、モータ角加速度推定部46からの角加速度ωは慣性補償器47に入力される。ロストルク補償器44、収れん性制御器45及び慣性補償器47の各出力は演算器42に入力されている。尚、図4では、モータ20をモータ電気的特性部21とモータトルク定数部22とに分離している。
【0017】
収れん性制御器45は、車両のヨーの収れん性を改善するためにハンドルが振れ回る動作に対してブレーキをかけるようになっている。ロストルク補償器44は、モータ20のロストルクの影響をキャンセルするために、ロストルク補償信号LTを出力してモータ20のロストルクの発生する方向、つまりモータ20の回転方向に対してロストルク相当のアシストを行なう。又、慣性補償器47はモータ20の慣性により発生する力相当分をアシストするものであり、慣性補償信号を出力して慣性感又は制御の応答性の悪化を防ぐようになっている。
【0018】
従って、ロストルク補償器44に入力される推定値ωはモータ回転方向を示すものであり、慣性補償器47に入力される推定値ωはモータ角加速度を示すものとなっている。
【0019】
ここで、モータ電流検出値iとモータ20の出力トルクτとの関係は、トルク定数をKとして下記数1となる。
【0020】
【数1】
τ=K・i
一般的にトルク定数Kを一定とみなしてモータ電流検出値iを制御することにより、操舵補助トルクを制御している。さらに詳細な補正を行う場合には、前記トルク定数を実験的に求め、求めたトルク定数に基づいて補正することでよりよい制御状態を提供できることは明らかである。
【0021】
ところで、モータ20のトルク定数Kは図5に示すようにモータ温度tの関数となっており、温度20℃におけるトルク定数をKT20として表す。温度が下降するとKは大きくなり、上昇すると小さくなる。
【0022】
なお、トルク定数Kと温度tとの関係は、トルク定数の温度係数をαとして次の数2で表される。
【0023】
【数2】
(t)={1+α(t−20)}・KT20
上記数1において、モータ温度tの変化によるKの変動の影響を無くすために、i(実際にはIref)に(KT20/K(t))倍する補正を行い、モータ出力の温度変動を補正している。
【0024】
本発明は、数2のtにオフセット分a(a≧0)を加えてIrefの補正を行うため、K(t)≧K(t+a)となることから、本来の補正(K20 /K(t))より補正量が大きくなるため、操舵を軽くでき、多くのパラメータを変更すること無しに、すっきりした操舵フィーリングが得られる。
【0025】
なお、ここで、補正のためのオフセット分aの値は、車種によって異なるため、実車での操舵フィーリングの確認を行って決定する。
【0026】
前記オフセットaを車両の状態量、例えばヨーレートや横加速度に応じて設定できるようにすれば、車両の状態に応じて操舵フィーリングを設定することができ、電動パワーステアリングの安定性に影響を与えることなく良好な操舵フィーリングを得ることができる。
【0027】
例えば、図6のAのようにオフセットaの設定を行えば、ある旋回領域で軽めに設定し、レーンチェンジではしっかりした手応えになるような一般の車両に向いた操舵フィーリングが得られる。
【0028】
また、図6のBのように設定を行えば、高旋回時に手応えが出るようにでき、スポーティな車両に向いた操舵フィーリングが得られる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明の電動パワーステアリング装置の制御装置によれば、多数のパラメータを調整することなく、操舵フィーリングの調整が行えるようになる。
【0030】
また、前記オフセット分を車両の状態量に応じて設定できるので、電動パワーステアリング装置の動特性に影響を与えることなく、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動パワーステアリング装置の一例を示すブロック構成図である。
【図2】コントロールユニットの一般的な内部構成を示すブロック図である。
【図3】モータ駆動回路の一例を示す結線図である。
【図4】本発明によるコントロールユニットの構成例を示すブロック図である。
【図5】トルク定数の温度特性の一例を示す特性図である。
【図6】車両の状態量と、それに対応するオフセットとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 操向ハンドル
5 ピニオンラック機構
10 トルクセンサ
12 車速センサ
20 モータ
23 モータ温度検出手段
30 コントロールユニット
31 位相補償器
37 モータ駆動回路
38 モータ電流検出回路
40 最大電流制限部
48 電流指令値補正部
50 電流制御部

Claims (2)

  1. ハンドルと一体的に設けられたステアリングシャフトを補助負荷付勢するモータと、前記ハンドルの操舵トルクを検出するトルクセンサの出力値等によって演算されたモータ電流指令値に基づいて前記モータを制御する電流制御部をコントロールユニットに備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、
    前記モータの温度を検出するモータ温度検出手段と、
    該モータ温度検出手段が検出した温度t(℃)に車種や車両の状態量に応じて設定された値である所定のオフセット分a(℃)を加えた温度(t+a)に基づいて前記モータ電流指令値を補正する電流指令値補正手段とを備えるとともに、
    前記電流指令値補正手段は、温度20℃におけるトルク定数をKT20、温度tにおけるトルク定数をK(t)としたときに、前記モータ電流指令値をKT20/K(t+a)倍して補正し、
    前記電流制御部は前記補正されたモータ電流指令値によってモータ電流を制御することを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
  2. 前記オフセット分aを、車両のヨーレート又は横加速度に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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