JP4058141B2 - 厚膜パターン組成物、厚膜パターン形成用塗布組成物、およびプラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚膜パターン組成物、厚膜パターン形成用塗布組成物、およびプラズマディスプレイパネルに係り、特に、気体放電を用いた自発光形式の平板ディスプレイパネルの隔壁として用いられる厚膜パターン組成物、およびその厚膜パターン組成物を用いたプラズマディスプレイパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス放電パネルであるプラズマディスプレイパネル(PDP)は、2枚の対向するガラス基板にそれぞれ規則的に配列した一対の電極を設け、その間にNe、He、Xe等を主体とする希ガスを封入した構造となっている。そして、これらの電極間に電圧を印加し、電極周辺の微小なセル内で放電を発生させることにより、各セルを発光させて表示を行うようにしている。情報の表示するためには、規則的に並んだセルを選択的に放電発光させる。このPDPには、電極が放電空間に露出している直流型(DC型)と絶縁層で覆われている交流型(AC型)の2タイプがあり、双方とも表示機能や駆動方式の違いによって、さらにリフレッシュ駆動方式とメモリー駆動方式に分類される。
【0003】
DC型のPDPおよびAC型のPDPにおいて、各セルは2枚のガラス基板が隔壁により対向保持されて形成されている。このような隔壁は、表示放電空間をできるだけ大きくして高輝度の発光を得るために、ガラス基板に対して垂直に切り立ち、かつ、幅が狭く十分な高さを有することが要求される。特に高精細のPDPでは、例えば、高さ100μmに対して幅が30〜50μmであるような高アスペクト比の隔壁が必要とされる。
【0004】
従来より、PDPにおける隔壁は、ガラスフリット、不定形のアルミナ、ジルコン、ジルコニア等の骨材、着色剤からなる組成物と焼成により消失するエチルセルロース、アクリル系樹脂をターピネオール、ブチルカルビトールアセテート等の溶剤に溶解させた有機ビヒクルを三本ロール等により混練したペーストをスクリーン印刷によりパターン状に印刷、乾燥を所望の高さになるまで繰り返し、焼成する方法、あるいはスクリーン印刷、ブレードコート、ダイコート等により塗布、乾燥しベタ膜を形成した後、ベタ膜上に耐サンドブラスト性を有するマスクをパターン状に形成し、サンドブラスト加工を行い、マスクを剥離した後焼成する方法等により形成されている。
【0005】
このようにして背面板(片方のガラス基板)の上に形成された隔壁間には蛍光体が充填され、しかる後、前面板(もう一方のガラス基板)と重ね合わせられ、封着される。この封着時に隔壁頂部と前面板とが密着し隔壁に圧力が加わるため、隔壁は高強度で、また、その頂部は凹凸のない平坦なものであることが要求される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の隔壁組成物においては、強度が十分でなく、更に骨材の凝集物が多数存在し局部的に弱い部分ができるため、封着時に破損が生じたり、また、隔壁頂部に凝集物が突起を形成し、封着時に突起部に圧力が集中するために、隔壁が欠けてしまうという問題がある。また、隔壁内部に微小クラックが生じた場合、これに起因してクラックがどんどん拡張するなどして隔壁に欠陥が生じるなどの問題がある。
【0007】
このような隔壁の欠陥は、隣接する放電空間での誤放電や、蛍光体上に隔壁の欠片が残ることによる発光の点欠陥の原因を引き起こしてしまうおそれがある。
【0008】
このような実情のもとに本発明は創案されたものであり、その目的は、隔壁の強度を高めてパネル封着時に破損が生じるのを防止し、さらにはもし仮に隔壁に微小クラックが生じても、このクラックの拡張を防止しパネル封着時に破損が生じるのを防止することができる厚膜パターン組成物、およびそれを形成するための厚膜パターン形成用塗布組成物、およびそれを用いた誤放電や点欠陥のないプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明は、厚膜パターンの溶融母体となるガラスフリットと、主として厚膜パターンの形態および強度を維持するための骨材とを主成分として含有する厚膜パターン組成物であって、前記骨材は、その形態が針状体または繊維状体からなり、当該骨材のアスペクト比は5以上かつその短軸径が0.01〜3.0μmであり、当該形態のものが骨材成分の中で25%以上含有されてなるように構成される。
【0010】
また、本発明の好ましい態様として、前記針状体または繊維状体からなる骨材は、チタン酸カリウム、酸化チタン、アルミナ、ウォラストナイト、炭化ケイ素、または窒化ケイ素から構成される。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、さらに着色用の顔料が含有されて構成される。
【0012】
本発明は、厚膜パターンの溶融母体となるガラスフリットと、主として厚膜パターンの形態および強度を維持するための骨材とが、有機ビヒクルと混合されて構成される厚膜パターン形成用塗布組成物であって、前記骨材は、その形態が針状体または繊維状体からなり、当該骨材のアスペクト比は5以上かつその短軸径が0.01〜3.0μmであり、当該形態のものが骨材成分の中のなかで25%以上含有されてなるように構成される。
【0013】
本発明の放電空間を区画する隔壁を有するプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁は、上記の厚膜パターン組成物から構成されてなるように構成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の厚膜パターン組成物の一例として、プラズマディスプレイパネル(PDP)の作製時に用いられる隔壁の組成物を例にとって説明する。当該隔壁の組成物の説明をする前に、プラズマディスプレイパネル全体の構成を簡単に説明しておく。
【0017】
図1は、AC型PDPの一構成例を示す斜視図である。この図において、符号1は前面板、符号2は背面板、符号3は隔壁、符号4は維持電極、符号5はバス電極、符号6は誘電体層、符号7はMgO層、符号8はアドレス電極、符号9は蛍光体層を示している。
【0018】
図1は、PDPの構成が理解しやすいように、前面板1と背面板2を離した状態で示してある。図1に示されるようにAC型PDPは、ガラス板からなる前面板1と背面板2とが互いに平行に対峙され、背面板2に立設された隔壁3によって前面板1と背面板2とが密封されたセルを構成するように一定間隔で固着されている。
【0019】
前面板1の背面側には、透明電極である維持電極4と金属電極であるバス電極5とからなる複合電極が互いに平行に形成され、これを覆うように誘電体層6、およびMgO層7が順次形成されている。
【0020】
また、背面板2の前面側には、複合電極と直交するとともに隔壁3の間に位置するようにアドレス電極8がストライプ状に互いに平行に形成され、また、アドレス電極8上のセル底面上に蛍光体層9が設けられている。また、図2にその断面図が示されるように、ガラス基板2に下地層10を形成した後にアドレス電極8を設け、さらに誘電体層6’を積層した後、隔壁3、蛍光体層9を設けた構造としたものである。
【0021】
このようなAC型PDPは面放電型であり、前面板1における複合電極間に交流電源から所定の電圧を印加して電場を形成することにより、前面板1と背面板2と隔壁3とで区画される表示要素としての各セル内で放電が行われる。そして、この放電により生じる紫外線により蛍光体9を発光させることで、前面板1を透過する光を観察者が視認できるようになっている。
【0022】
図3はDC型PDPの一構成例を示したものであり、そのなかで、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)におけるX−X線での断面図である。図中、符号11は前面板、符号12は背面板、符号13は陰極、符号14は電極体、符号15は表示陽極、符号16は隔壁、符号17は放電セル、符号18は端子部、符号19は抵抗体、符号20は補助電極、符号21は電極体、符号22は蛍光体層、符号23はプライミングスリットをそれぞれ示している。
【0023】
DC型PDPは、図3に示されるように、前面板11と背面板12の2枚のガラス基板を合わせてパネル化され、また、前面板11上には陰極13からなる第1の電極群が形成され、背面板12上には電気的に接続した電極4本と表示陽極15とからなる第2の電極群が形成されている。陰極13と表示陽極15が略直交するように前面板11と背面板12とが隔壁16により対向保持されて放電セル17が形成されている。放電セル17内の陰極13と電極体14とによって単位放電電極対が構成されている。
【0024】
そして、表示陽極15は線状部15aとこの線状部15aから横向きに突き出た突起部15bとを備え、電極体14からは端子部18が表示陽極15と平行に伸びており、表示陽極15の突起部15bと電極体14の端子部18との間は抵抗体19により電気的に接続されている。また、隣接する表示陽極15の間にはそれと平行に補助陽極20が設けられており、陰極13と交差する箇所には補助陽極20上にも電極体21が設けられている。
【0025】
DC型PDPでは、陰極13と表示陽極15の間に所定の電圧を印加すると、抵抗体19を介して電極体14に電流が流れ、放電セル17内にて陰極13と電極体14との間で放電が起こり、この放電により発生する紫外線で、例えばR,G,B,各3色の蛍光体層22を発光させるようになっている。この発光は前面板11を通して外部に放射され、フルカラーの画像表示が行われる。この場合、補助陽極18は放電セル17内に放電の種火となる荷電粒子をプライミングスリット23を通して供給する役目を持つ。なお、符号24は誘電体層で、表示陽極15、端子部18、抵抗体19及び補助陽極20を放電空間から電気的に隔絶せしめ、放電発生箇所を電極体14、21のみに限定する。
【0026】
本発明におけるPDP用の隔壁3および隔壁16(以下隔壁3を代表として取りあげて説明する)は、厚膜パターン形成用塗布組成物をスクリーン印刷により隔壁形状にパターン印刷する方法や、厚膜パターン形成用塗布組成物をスクリーン印刷、ブレードコート、ダイコート等により塗布、乾燥しベタ膜を形成した後、ベタ膜上に耐サンドブラスト性を有するマスクをパターン状に形成し、サンドブラスト加工を行い、マスクを剥離した後焼成する方法等により形成される厚膜パターン組成物である。
【0027】
上記の隔壁3(厚膜パターン組成物)は、溶融母体となるガラスフリットと、主として隔壁3の形態および強度を維持するための骨材とが主成分として含有される。そして、隔壁3に含有される骨材としては、ある程度の長さを備える線状体が用いられる。この線状体をより具体化したものとして、針状体または繊維状体が挙げられる。針状体とは、一般に直線棒状形状をなし、リジットなものをいう。また、繊維状体とは、一般に長さに対して極端に直径が小さくてしなやかな材料のことをいう。特に、繊維状単結晶で、所定の強度を示すものはウィスカーとよばれる。
【0028】
本発明で用いられる線状体は、そのアスペクト比が5以上(その上限は用途に応じて適宜決められる)であり、その短軸径(直径)が、0.01〜3.0μmであるものが用いられる。アスペクト比が5未満となると、本発明の隔壁の強度の向上効果やクラックの拡張防止効果が小さくなってしまう。短軸径(直径)を、0.01〜3.0μmとしたのは、隔壁の大きさとのバランスを考慮しつつ本発明の効果を確実に発現させるためである。
【0029】
隔壁に骨材として含有される線状体は、上記所定の数値範囲のものを100%とすることが望ましいが、本発明の作用効果を逸脱しない範囲で他の骨材成分を75%未満含有させること、すなわち、上記所定の数値範囲のものを、骨材成分のなかで25%以上含有させるようにすることもできる。
【0030】
本発明における線状体の骨材としては、例えば、チタン酸カリウム、酸化チタン、アルミナ、ウォラストナイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の隔壁の焼成温度以下の温度で安定に存在するものであって、かつその形状が上記の所定の数値範囲内にあるものが使用される。中でも特に、チタン酸カリウム、酸化チタン、アルミナ、ウォラストナイトが好ましい。
【0031】
より具体的な商品名等を挙げると、チタン酸カリウム「ティスモ」「トフィカ」「デントール」(大塚化学社製)、「キスパック」(九州耐火煉瓦社製)、針状酸化チタン「FTL−100」「FTL−200」「FT−1000」「FT−2000」(石原産業社製)、ウォラストナイト「サイカテックHN−3」(巴工業社製)、炭化ケイ素「SCW」(タテホ化学工業社製)、「トーカウイスカー」(東海カーボン社製)、窒化ケイ素「UBE SN−W」(宇部興産社製)、「SNW」(タテホ化学工業社製)などが例示される。
【0032】
本発明におけるPDP用の隔壁3に含有されるガラスフリットはバインダー(接着剤)として役割をなすものであり、そのガラス転移点(Tg)は、塗布組成物中、ペーストとして用いる樹脂が焼成により完全に消失する温度以上であることが望ましい。さらに、ガラスフリットの軟化点はガラス基板が変形する温度以下でなければならない。具体的には、Tgが350〜500℃、軟化点が400〜600℃の間で適宜選択される。
【0033】
なお、本発明におけるガラス転移点とは、示差熱分析(DTA)により粉末状のガラスフリットやガラス、骨材、顔料の混合フリット等を所定の条件で加熱し、フリットが軟化する際の形状変化に起因するレファレンスとの温度差の変化率(傾き)を検出し、その傾きの変化点(屈曲点)を軟化点とする。具体的には、(株)リガク社製の高温型TG−DTA TG−8110タイプ、マクロ試料ホルダーを用い空気中昇温速度10℃/min.、サンプル量400〜650mg程度、レファレンスとしてアルミナ、試料容器として(株)リガク社製マクロ用一対型Pt容器を使用してフリットの軟化点を測定する。参考までに軟化点が550℃とされているガラスフリットを実際に測定したチャートを図4に示す。図4において矢印で示した点が本発明で言う軟化点である。
【0034】
さらに、残留歪を極力小さくし、基板の反りや誘電体層のクラックの発生を抑えるために、ガラスフリットの熱膨張係数(α)をガラス基板、下地層、誘電体層の熱膨張係数にできるだけ合わせる必要がある。従って、具体的には、α=60〜90×10-7/℃程度のものを使用するのが望ましいが、骨材、着色剤を添加することでαが変化するため、最終的に隔壁組成物とした時のαが60〜90×10-7/℃程度となるよう適宜選択すればよい。
【0035】
上記本発明に用いられる骨材は、その材料の選定の仕方次第では、着色剤としての機能をも併用させることができるが、さらに、積極的に着色を要す場合が多々あり、その場合には隔壁3中に着色剤が含有される。
【0036】
着色剤としては、耐熱性があるものが用いられる。本発明の場合、基板の作製工程中の焼成温度以上の耐熱性があればよい。このような着色剤としては、複合酸化物系顔料(Cr,Co,Ni,Fe,Mn,Cu,Sb,As,Bi,Ti,Cd,Al,Ca,Si,Mg,Ba等の2種以上の金属の酸化物からなる顔料)、酸化チタン、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、シリカ、マグネシア、チタン酸鉛、チタン酸カリウム、硫セレン化カドミウム、弁柄(Fe2 O3 )、亜酸化銅、カドミウム水銀赤(CdS+HgS)、クロムバーミリオン、銀朱、アンチモン赤ヨード赤、ジンクアイアンレッド、モリブデン赤、鉛丹、カドミウムレッド、クロムグリーン、亜鉛緑、コバルトグリーン、酸化クロム、ビリジアン、エメラルドグリーン群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、硫化銅、チタンイエロー、チタンブラック、黒色酸化鉄(Fe3 O4 )、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、黄鉛などが挙げられ、これらは適宜目的に応じ選択して用いれば良い。
【0037】
上述してきた隔壁3の組成物は、ガラスフリットを40〜95%、好ましくは60〜90%;骨材を1〜60%、好ましくは5〜30%;着色剤を0〜30%の範囲で構成するのがよい。これらを含む厚膜パターン形成用塗布組成物は、これらを混合した後、有機ビヒクルを加え三本ロール、ビーズミル等により混練、分散してペースト状の塗布組成物とされる
ここで用いる有機ビヒクルの樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリルエステル、アルキッド樹脂等のポリエステル系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ドデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルメタクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、ノニルメタクリレート、ノニルアクリレート、デシルメタクリレート、デシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−メトキシアクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、α−メチルスチレン、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニル−2−ピロリドン等のモノマーからなるホモポリマーおよび上記モノマーから選択された2種以上のモノマーからなる共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が例示される。
【0038】
溶剤としては、α−、β−、γ−テルピネオールのようなテルペン類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール、1−ブトキシ−2−プロパノール等のアルコール類等が例示され、これらを単独または、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0039】
さらに、可塑剤、沈降防止剤、分散剤等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0040】
次に、図1を参照しつつ隔壁3を備える背面板の作製方法について簡単に説明する。まず、ガラス基板2の上にアドレス電極8をパターン形成する。
【0041】
電極8の形成方法としては、(1)スパッタ法、真空蒸着法等の薄膜形成プロセスとフォトプロセスを組み合わせる方法、(2)スクリーン印刷法によるパターン印刷による方法、(3)スクリーン印刷やブレードコート、ダイコート、ロールコート、リバースコート等のコーティング法とフォトプロセスを組み合わせる方法等が挙げられる。フォトプロセスとしては、フォトレジストを塗布して乾燥させた後、露光及び現像工程によりパターニングする方法、あるいは、ドライフィルムレジストを用いて同様にパターニングする方法などがある。電極の膜厚としては、例えば、電極材料としてCrを用い、スパッタ法により成膜を行った場合には、0.05〜0.2μm程度であり、成膜されたCr薄膜をフォトレジストを用いてパターニングして電極が形成される。なお、電極材料及びパターニング方法は必ずしもこれらの方法に限定されるものではない。
【0042】
上記いずれかの方法を使用して所定パターンのアドレス電極8を形成した後、隔壁3を形成する。隔壁3の形成方法としては、前述したように前記厚膜パターン形成用塗布組成物を用い、スクリーン印刷により隔壁形状にパターン印刷する方法や、スクリーン印刷、ブレードコート、ダイコート等によりベタ膜を作製した後、ベタ膜上に耐サンドブラスト性を有するマスクをパターン状に形成し、サンドブラストにより隔壁形成材の不要部分を除去して所定の隔壁形状にする方法が例示できる。またさらには、ペーストを予めフィルムにコーティングした後、基板にラミネートし同様にサンドブラスト加工を行う方法等が例示される。上記何れかの方法によって隔壁を形成した後、焼成を行い所定の隔壁3を得る。形成する隔壁3の高さは、50μm〜250μm程度である。
【0043】
なお、図2に示すようなPDPにおいては、下地層10、誘電体層6’として隔壁3の焼成温度以上の軟化点を有するガラスフリットを主要成分とするペーストを使用して形成すればよく、その膜厚は1μm〜50μm程度とする。
【0044】
また、この作製方法は、図3に示すDC型構造のPDPにも応用できることは勿論である。
【0045】
【実施例】
以下に具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。実施例では比較評価のために骨材以外の材料は同一のものとしたが、本発明は骨材も含めこれらに限定されるものではない。なお、実施例中「部」は重量部、「%」は「重量%」を示す。
【0046】
(実施例1)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0047】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合し、フリット混合物を作製した。
【0048】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0049】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0050】
パネル背面板の作製
300×450mmのガラス基板上に下地層としてELD−1155(奥野製薬工業製)をスクリーン印刷にて印刷し、乾燥、焼成して膜厚10μmの下地層を形成した後、この下地層の上にアドレス電極としてD−590−HV−MOD(イー・エス・エル日本製)をスクリーン印刷にて電極パターン状に印刷、焼成し、膜厚8μm、線幅40μm、ピッチ240μmの電極を形成した。
【0051】
次に、このアドレス電極上に誘電体層としてPLS−3232(日本電気硝子製)をスクリーン印刷にて印刷し、乾燥、焼成して膜厚12μmの誘電体層を形成した。
【0052】
次いで、上記隔壁形成材(ペースト)をスクリーンオイル759(奥野製薬工業製)で希釈しシェアーレート15[1/sec]、22℃で600ポイズに粘度調整し、スクリーン印刷により印刷、乾燥をそれぞれ10回繰り返し、乾燥膜厚200μmのベタ膜を作製した。ベタ膜が形成された基板を80℃に加熱しベタ膜上にドライフィルムレジスト(東京応化工業製、OSBRフィルムBF−605)をラミネートした後、超高圧水銀灯を光源とする平行光プリンターを使用し、線幅100μm、ピッチ240μmのラインパターンマスクを介して露光を行った。露光条件は、365μmで測定した時に強度200μW/cm2 、照射量80mJ/cm2 であった。
【0053】
次に、無水炭酸ナトリウム0.2%水溶液を用い、液温35℃でスプレー現像を行いサンドブラスト用マスクを作製し、乾燥した後、溶融アルミナA−#800(不二見研磨材工業製)を切削材としてサンドブラスト加工により不要部分を除去した。
【0054】
次いで、水酸化ナトリウム0.7%水溶液を用い、液温30℃にてサンドブラスト用マスクを剥離し、乾燥した後、ピーク温度575℃、保持時間20分、全焼成時間2時間で焼成を行い線幅65μm、高さ150μmの隔壁を得た。
【0055】
このようにして作製した隔壁の封着時の破損を『隔壁破損頻度』として、以下の要領で評価を行った。
【0056】
隔壁破損頻度
隔壁を形成した背面板と同一サイズの素ガラス基板を隔壁面で重ね合わせ、密着プリンター(大日本スクリーン製造製、P−202−G)にて40mmHgで3分間密着した後、破損した隔壁の個数をカウントした。結果は表1に示すとおりである。なお、表1に示す数値(隔壁破損頻度)は比較例1の破損数を100として相対表記した。
【0057】
表1に示される結果より、本実施例1の隔壁破損頻度は24であり、比較例1の100に比べ著しく減少しており、隔壁強度が格段と高くなっていることがわかる。
【0058】
(実施例2)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0059】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0060】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0061】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0062】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントし、『隔壁破損頻度』を求めた。表1に示されるように、本実施例2の隔壁破損頻度は比較例1の100に比べ12と著しく減少した。
【0063】
(実施例3)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0064】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0065】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0066】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0067】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントし、『隔壁破損頻度』を求めた。表1に示されるように、本実施例3の隔壁破損頻度は比較例1の100に比べ35と著しく減少した。
【0068】
(実施例4)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0069】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0070】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0071】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製薬社製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0072】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントし、『隔壁破損頻度』を求めた。表1に示されるように、本実施例4の隔壁破損頻度は比較例1の100に比べ85と減少した。
【0073】
(比較例1)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0074】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0075】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0076】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0077】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントした。表1に示されるように、この破損数を隔壁破損頻度100(従来の基準値)とした。
【0078】
(比較例2)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0079】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0080】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0081】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0082】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントし、『隔壁破損頻度』を求めた。表1に示されるように、比較例2の隔壁破損頻度は128であった。
【0083】
(比較例3)
フリット混合物の作製
下記の要領でフリット混合物の作製を行った。
【0084】
これらを弗素樹脂製の容器に入れ、ペイントコンディショナーRC−5000(レッドデビル社製)により15分間混合しフリット混合物を作製した。
【0085】
隔壁形成材(ペースト)の作製
次いで、下記の要領で上記フリット混合物に下記の添加物を加えて隔壁形成材(ペースト)を作製した。
【0086】
これらを均一に混合した後、三本ロールミル(井上製作所製、C−4・3/4×10)にて混練しペーストを作製した。
【0087】
パネル背面板の作製
上記隔壁形成材(ペースト)を使用し、実施例1と同じ要領で背面板を作製し、作製した隔壁について実施例1と同じ要領で隔壁の破損数をカウントし、『隔壁破損頻度』を求めた。表1に示されるように、比較例3の隔壁破損頻度は98であった。
【0088】
【表1】
【0089】
【発明の効果】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、厚膜パターンの溶融母体となるガラスフリットと、主として厚膜パターンの形態および強度を維持するための骨材とを主成分として含有する厚膜パターン組成物(好適な一例が、プラズマディスプレイパネルの隔壁)であって、前記骨材は、線状体からなるように構成しているので、隔壁の強度を高め、封着時に破損が生じるのを防止し、さらにはもし仮に隔壁に微小クラックが生じても、このクラックの拡張を防止しパネル封着時に破損が生じるのを防止することができる。
【0090】
そして、これにより誤放電や点欠陥のないプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AC型PDPの一構成例を示す斜視図である。
【図2】図1の背面板の構造を説明するための断面図である
【図3】DC型PDPの一構成例を示したものであり、そのなかで、図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)におけるX−X線での断面図である。
【図4】軟化点の測定例を示すためのグラフである。
【符号の説明】
1…前面板
2…背面板
3…隔壁
4…維持電極
5…バス電極
6…誘電体層
7…MgO層
8…アドレス電極
Claims (5)
- 厚膜パターンの溶融母体となるガラスフリットと、主として厚膜パターンの形態および強度を維持するための骨材とを主成分として含有する厚膜パターン組成物であって、
前記骨材は、その形態が針状体または繊維状体からなり、当該骨材のアスペクト比は5以上かつその短軸径が0.01〜3.0μmであり、当該形態のものが骨材成分の中で25%以上含有されてなることを特徴とする厚膜パターン組成物。 - 前記針状体または繊維状体からなる骨材は、チタン酸カリウム、酸化チタン、アルミナ、ウォラストナイト、炭化ケイ素、または窒化ケイ素である請求項1に記載の厚膜パターン組成物。
- さらに着色用の顔料が含有されてなる請求項1または請求項2に記載の厚膜パターン組成物。
- 厚膜パターンの溶融母体となるガラスフリットと、主として厚膜パターンの形態および強度を維持するための骨材とが、有機ビヒクルと混合されて構成される厚膜パターン形成用塗布組成物であって、
前記骨材は、その形態が針状体または繊維状体からなり、当該骨材のアスペクト比は5以上かつその短軸径が0.01〜3.0μmであり、当該形態のものが骨材成分の中のなかで25%以上含有されてなることを特徴とする厚膜パターン組成物。 - 放電空間を区画する隔壁を有するプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の厚膜パターン組成物から構成されてなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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-
1997
- 1997-09-11 JP JP26290297A patent/JP4058141B2/ja not_active Expired - Fee Related
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