発明者らは、プラズマディスプレイ(PDP)を高発光効率化できるPDP部材のパネル構造について鋭意検討を行った結果、従来のパネル構造とは異なる、以下に述べる新規な構造によって達成されることを見出した。以下に、本発明の実施態様について説明する。
本発明の第一の実施態様を図1に示す。前面基板のガラス基板上に、透明電極4とライン抵抗を下げるためのバス電極5からなる、略平行に走る1対の主放電用の維持電極6が形成されている。この維持電極の上には透明誘電体7が形成され、さらにその上には保護膜8としてMgO膜が形成されている。透明誘電体は電荷を蓄積するために、保護膜は耐スパッタ性および高い2次電子放出係数のため放電の維持にとって有用である。背面基板のガラス基板上に、高反射率誘電体層11が形成され、その上には放電セルを仕切るための隔壁9が形成されている。この隔壁内にはアドレス電極10が配されている。アドレス電極は、隔壁の表面または/および内部にあってもよい。また、図2に示すように、アドレス時の放電面を確保するため、隔壁側面の一部が基板と平行な平坦部13となっている。平坦部でなくても、隔壁側面の一部の傾斜が緩やかになっているだけでもよい。また、隣接の非放電(非表示)セルへの放電干渉の抑制のため、図2に示すように主隔壁の頂部は隔壁底部における中央線X−X’線よりも片側に寄って形成されていることが好ましい。これにより平坦部13を含む放電セルでのみアドレス放電を行うことができる。
本発明の第一の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。従来は、図20のように背面ガラス基板上にアドレス電極が形成されていたが、本発明ではアドレス電極と維持電極の距離が近く、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さを高くして蛍光体塗布面積を増やせば、放電により発生する紫外線を有効利用できるので、発光効率を向上させることができる。しかし、図20に示すような従来の構造では、隔壁の高さを高くするとアドレス電極と維持電極の距離が長くなり、アドレス放電の開始電圧が上昇してしまうといった課題があった。本発明では、隔壁の高さを高くしてもアドレス電極と維持電極の距離を一定に保てるので、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく、発光効率を向上させることができる。
また、図3に示すように背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極14を形成してもよい。補助電極を形成して適当なパルス電圧を印加すると、維持電極で行われる主放電を広げることもできる。この補助電極は、図3のようにアドレス電極に略平行でもよいし、図4のように略垂直に形成してもよい。
本発明の第二の実施態様を図5に示す。第一の実施態様とは、内部にアドレス電極が配されている隔壁(以下、主隔壁とする)に加えて、主隔壁と交差しており維持電極と略平行に形成された隔壁(以下、補助隔壁とする)が形成された格子状隔壁パターンであること以外は同様の構造である。補助隔壁は主隔壁より0.005〜0.2mm程度低いことが好ましい。これにより、パネル封着時の真空排気の効率を良くすることができる。隔壁パターンとしては、本発明のように格子状でもよいし、ワッフル状などでもよい。格子状などとすることで、蛍光体塗布面積を増加させることができるので、放電により発生する紫外線を有効利用でき、発光効率を向上させることができる。
本発明の第二の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極の距離を一定に保てるので、蛍光体塗布面積を増加させるために隔壁の高さを高くしてもアドレス放電の開始電圧を上昇させることもなく、発光効率を向上させることができる。
また、第一の実施態様と同様に、背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極を形成してもよい。補助電極を形成して適当なパルス電圧を印加すると、維持電極で行われる主放電を広げることもできる。この補助電極は、アドレス電極に略平行方向でもよいし、略垂直方向に形成してもよい。
本発明の第三の実施態様を図6に示す。第二の実施態様とは、主隔壁の表面および/または内部のアドレス電極が補助隔壁の内部に張り出した補助電極を有すること以外は同様の構造である。この補助電極は隔壁の表面および/または内部に形成することができる。アドレス時の放電面を確保するための隔壁側面の一部が基板と平行な平坦部はなくてもよく、補助電極上の補助隔壁頂部が放電面となる。張り出した補助電極は図6のように一つの発光セルに対して1つであっても、図7のように2つあってもよい。
本発明の第三の実施態様では、第一の実施態様と同様に、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極の距離を一定に保てるので、蛍光体塗布面積を増加させるために隔壁の高さを高くしてもアドレス放電の開始電圧を上昇させることもなく、発光効率を向上させることができる。また、補助隔壁頂部をアドレス時の放電面として用いることができるため、主隔壁に形成する平坦部を放電面とするよりもアドレス時の放電面を広く確保できる。
また、第一の実施態様と同様に、背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極を形成してもよい。補助電極を形成して適当なパルス電圧を印加すると、維持電極で行われる主放電を広げることもできる。この補助電極は、アドレス電極に略平行方向でもよいし、略垂直方向に形成してもよい。
本発明の第四の実施態様を図8に示す。主隔壁にアドレス電極10に加えて、種火放電用のプライミング電極16が配されており、主隔壁の両側面のアドレス電極上とプライミング電極上に基板と平行な平坦部があること以外は同様の構造である。平坦部は、隔壁側面の一部の傾斜が緩やかになっているだけでもよい。
本発明の第四の実施態様では、第一の実施態様と同様に、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極の距離を一定に保てるので、蛍光体塗布面積を増加させるために隔壁の高さを高くしてもアドレス放電の開始電圧を上昇させることもなく、発光効率を向上させることができる。
さらに、例えば維持電極とプライミング電極間の種火放電により生ずる荷電(プライミング)粒子を引き金として主放電の放電開始電圧を下げたり、印加パルスの立ち上がりから放電がかなり遅れて起こる、いわゆる放電の統計遅れを、種火放電により抑制することができることが知られている(例えば特許文献2〜5)。本発明においても、種火放電用のプライミング電極にも交流のパルス電圧を印加し、主放電用の維持電極との間で、主放電を誘発する種火放電を行う。維持電極とプライミング電極間の種火放電により生ずる荷電(プライミング)粒子が引き金となり、主放電の放電開始電圧を下げることができる。また、放電遅れによる書き込み不良、すなわち不灯セルがなくなり画質劣化の少ないPDPを実現できる。この種火放電の効果は、主放電だけでなく、アドレス放電に関しても同様である。
また、図9に示すように主隔壁の頂部は中央に寄って形成されていることが好ましい。アドレス電極およびプライミング電極の放電面を確保するとともに、隣接の非放電(非表示)セルへの放電干渉を抑制することができる。アドレス電極とプライミング電極は、一つの主隔壁にアドレス電極とプライミング電極を1つずつ形成してもよいし、一つの主隔壁にアドレス電極とアドレス電極、隣の主隔壁にプライミング電極とプライミング電極、というふうに形成してもよい。
また、第一の実施態様と同様に、背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極を形成してもよい。補助電極を形成して適当なパルス電圧を印加すると、維持電極で行われる主放電を広げることもできる。この補助電極は、アドレス電極に略平行方向でもよいし、略垂直方向に形成してもよい。
本発明の第五の実施態様を図10に示す。第四の実施態様とは、主隔壁に形成したアドレス電極とプライミング電極がそれぞれ補助隔壁に張り出した補助電極を有すること以外は、同様の構造である。この補助電極は隔壁の表面および/または内部に形成することができる。主隔壁のアドレス電極とプライミング電極上の平坦部はなくてもよい。
本発明の第五の実施態様では、第一の実施態様と同様に、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極の距離を一定に保てるので、蛍光体塗布面積を増加させるために隔壁の高さを高くしてもアドレス放電の開始電圧を上昇させることもなく、発光効率を向上させることができる。また、種火放電用のプライミング電極にも交流のパルス電圧を印加し、主放電用の維持電極との間で、主放電を誘発する種火放電を行う。維持電極とプライミング電極間の種火放電により生ずる荷電(プライミング)粒子が引き金となり、主放電の放電開始電圧を下げることができる。また、種火放電により荷電粒子が増えるので放電の統計遅れを抑制することができ、放電遅れによる書き込み不良、すなわち不灯セルがなくなり画質劣化の少ないPDPを実現できる。この種火放電の効果は、主放電だけでなく、アドレス放電に関しても同様である。
さらに、アドレス電極とプライミング電極の補助電極を、2つの補助隔壁にそれぞれ配することで、アドレス時やプライミング時の十分な放電面を確保することができるので、安定したアドレス放電やプライミング放電を得ることができる。
また、第一の実施態様と同様に、背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極を形成してもよい。補助電極を形成して適当なパルス電圧を印加すると、維持電極で行われる主放電を広げることもできる。この補助電極は、アドレス電極に略平行方向でもよいし、略垂直方向に形成してもよい。
本発明の第六の実施態様を図11に示す。前面板の主放電用の維持電極がバス電極から形成されており、そのバス電極はパターン化された誘電体で覆われていること以外は第三の実施態様と同様である。
本発明の第六の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用のバス電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電用電極が、図20に示すような従来のPDPパネルや第一〜第五の実施態様における、バス電極と透明電極からなる場合と比較して、電極間ギャップを広くすることができる。電極間ギャップを長くとることで、紫外線発生効率の高い陽光柱を利用することができ、発光効率を向上させることができる。
また、第六の実施態様でも、誘電体はベタ膜であってもよいが、パターン化することで、発光セルの開口部から可視光を約10%吸収していた誘電体を除くことができ、発光効率を向上させることができる。
アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。張り出した補助電極は図11のように一つの発光セルに対して1つであっても、図12のように2つあってもよい。
また、第一の実施態様と同様に、背面ガラス基板上に、隔壁と誘電体層の下に補助電極を形成してもよい。この補助電極は、アドレス電極に略平行方向でもよいし、略垂直方向に形成してもよい。
本発明の第七の実施態様を図13に示す。前面板においては、バス電極を覆う誘電体が、バス電極を覆う略ストライプ状の主パターンと主パターンと交差する方向にある補助パターンからなる。主パターンは、補助パターンより0.005〜0.2mm程度低いことが好ましい。これにより、パネル封着時の真空排気の効率を良くすることができる。背面板においては、内部にアドレス電極が配されている主隔壁に加えて、主隔壁と交差しており維持電極と略平行に形成された補助隔壁が形成され、主隔壁と補助隔壁の高さが同じである格子状隔壁パターンからなる。また、主隔壁の内部に配されたアドレス電極から補助隔壁内部へ張り出した補助電極をもつ。この補助電極は隔壁の内部および/または表面に形成することができる。
本発明の第七の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用のバス電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。放電開始電圧を低減するため、バス電極から主パターン内部に張り出した補助バス電極を形成してもよい。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。張り出したアドレス電極の補助電極は図13のように一つの発光セルに対して1つであっても、図14のように2つあってもよい。
また、蛍光体ペーストをディスペンサー法等を用いてセル内に塗布する場合、隔壁頂部に蛍光体ペーストが付着してしまうという問題点があったが、主隔壁と補助隔壁の高さが同じであるため、粘着テープ等による蛍光体ペースト頂部付着除去作業が行いやすい。すなわち、放電面から蛍光体が取り除かれるため、放電安定化に好適である。
本発明の第八の実施態様を図15に示す。前面基板に形成された1対の主放電用の維持電極が、前面基板に形成された1本の透明電極とバス電極からなる維持電極6と背面基板に形成された1本の維持電極6に変わったこと以外は、第一の実施態様と同様の構造である。バス電極は、図15のように透明電極の両端にあってもよいし、片端にあってもよい。
本発明の第八の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成された主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電は、放電セルの高さ方向にある維持電極間で行う対向放電であるので、放電ギャップは放電セルの高さ間隔と同程度にすることができる。図20に示すような従来の面放電型の電極間距離に比べて、放電ギャップは1.5〜3倍程度になる。すなわち、放電のモードが陽光柱により近くなり、紫外線発生効率を高く、すなわち発光効率を高くすることができる。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極との距離が近いため、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さによらずアドレス電極と維持電極との距離を一定に保てるため、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく隔壁を高くすることができる。これにより、蛍光体の塗布面積を増加させることができ、発光効率を向上させることができる。
また、第八の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成したそれぞれの主放電用の維持電極をセル開口部全体に形成することができるため、主放電用の電極面積を大きくとることができ、放電電流が増加するので輝度を向上させることができる。
また、高精細化にともない、セルピッチが小さくなるにつれて、放電空間が狭くなり発光効率は低下する傾向にある。従来の面放電型では、セル開口部の中央に約0.08mm程度の放電ギャップ(スリット)を持つために、セルピッチの減少にともないセル開口部に占める電極の割合が減少していき、発光効率が減少すると考えられる。しかし、本発明の第八の実施態様では、セル開口部に放電ギャップ(スリット)がなく、セル開口部全面に電極を持つ。そのため、セルピッチが減少しても発光効率低下の影響は、従来の面放電型と比較して少ない。すなわち、高精細PDPに適している。
本発明の第九の実施態様を図16に示す。前面基板に形成された1対の主放電用の維持電極が、前面基板に形成された1本の透明電極とバス電極からなる維持電極6と背面基板に形成された1本の維持電極6に変わったこと以外は、第二の実施態様と同様の構造である。バス電極は、図16のように透明電極の両端にあってもよいし、片端にあってもよい。
本発明の第九の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成された主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電は、放電セルの高さ方向にある維持電極間で行う対向放電であるので、放電のモードが陽光柱により近くなり、紫外線発生効率を高く、すなわち発光効率を高くすることができる。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極との距離が近いため、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さによらずアドレス電極と維持電極との距離を一定に保てるため、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく隔壁を高くすることができ、蛍光体の塗布面積を増加することで発光効率を向上させることができる。さらに隔壁パターンを格子状などとすることで、蛍光体塗布面積を増加させることができるので、放電により発生する紫外線を有効利用でき、発光効率を向上させることができる。
また、第九の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成したそれぞれの主放電用の維持電極をセル開口部全体に形成することができるため、主放電用の電極面積を大きくとることができ、放電電流が増加するので輝度を向上させることができる。
また、高精細化にともない、セルピッチが小さくなるにつれて、放電空間が狭くなり発光効率は低下する傾向にあるが、第八の実施態様と同様にセル開口部に放電ギャップ(スリット)がなく、セル開口部全面に電極を持つ。そのため、セルピッチが減少しても発光効率低下の影響は、従来の面放電型と比較して少なく、高精細PDPに適している。
本発明の第十の実施態様を図17に示す。第九の実施態様とは、主隔壁の内部のアドレス電極が補助隔壁の内部に張り出した補助電極を有すること以外は同様の構造である。この補助電極は隔壁の内部および/または表面に形成することができる。アドレス時の放電面を確保するための隔壁側面の一部が基板と平行な平坦部はなくてもよく、補助電極上の補助隔壁頂部が放電面となる。張り出した補助電極は一つの発光セルに対して1つであっても、2つあってもよい。
本発明の第十の実施態様では、第九の実施態様と同様に、前面基板側と背面基板側に形成された主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電は、放電セルの高さ方向にある維持電極間で行う対向放電であるので、放電のモードが陽光柱により近くなり、紫外線発生効率を高く、すなわち発光効率を高くすることができる。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。
アドレス電極と維持電極との距離が近いため、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さによらずアドレス電極と維持電極との距離を一定に保てるため、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく隔壁を高くすることができ、蛍光体の塗布面積を増加することで発光効率を向上させることができる。さらに隔壁パターンを格子状などとすることで、蛍光体塗布面積を増加させることができるので、放電により発生する紫外線を有効利用でき、発光効率を向上させることができる。
また、第十の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成したそれぞれの主放電用の維持電極をセル開口部全体に形成することができるため、主放電用の電極面積を大きくとることができ、放電電流が増加するので輝度を向上させることができる。
また、高精細化にともない、セルピッチが小さくなるにつれて、放電空間が狭くなり発光効率は低下する傾向にあるが、第九の実施態様と同様にセル開口部に放電ギャップ(スリット)がなく、セル開口部全面に電極を持つ。そのため、セルピッチが減少しても発光効率低下の影響は、従来の面放電型と比較して少なく、高精細PDPに適している。
本発明の第十一の実施態様を図18に示す。前面基板に形成された1対の主放電用の維持電極が、前面基板に形成された1本の透明電極とバス電極からなる維持電極6と背面基板に形成された1本の維持電極6に変わったこと以外は、第四の実施態様と同様の構造である。バス電極は、図18のように透明電極の両端にあってもよいし、片端にあってもよい。
本発明の第十一の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電は、放電セルの高さ方向にある維持電極間で行う対向放電であるので、放電のモードが陽光柱により近くなり、紫外線発生効率を高く、すなわち発光効率を高くすることができる。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極との距離が近いため、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さによらずアドレス電極と維持電極との距離を一定に保てるため、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく隔壁を高くすることができ、蛍光体の塗布面積を増加することで発光効率を向上させることができる。また、隔壁パターンを格子状などとすることで、蛍光体塗布面積を増加させることができるので、放電により発生する紫外線を有効利用でき、発光効率を向上させることができる。
さらに、種火放電用のプライミング電極にも交流のパルス電圧を印加し、主放電用の維持電極との間で、主放電を誘発する種火放電を行う。維持電極とプライミング電極間の種火放電により生ずる荷電(プライミング)粒子が引き金となり、主放電の放電開始電圧を下げることができる。また、種火放電により荷電粒子が増えるので放電の統計遅れを抑制することができ、放電遅れによる書き込み不良、すなわち不灯セルがなくなり画質劣化の少ないPDPを実現できる。この種火放電の効果は、主放電だけでなく、アドレス放電に関しても同様である。
また、第十一の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成したそれぞれの主放電用の維持電極をセル開口部全体に形成することができるため、主放電用の電極面積を大きくとることができ、放電電流が増加するので輝度を向上させることができる。
また、高精細化にともない、セルピッチが小さくなるにつれて、放電空間が狭くなり発光効率は低下する傾向にあるが、本発明の第十一の実施態様では、セル開口部に放電ギャップ(スリット)がなく、セル開口部全面に電極を持つ。そのため、セルピッチが減少しても発光効率低下の影響は、従来の面放電型と比較して少なく、高精細PDPに適している。
また、隣接の非放電(非表示)セルへの放電干渉の抑制のため、主隔壁の頂部は中央付近に形成されていることが好ましい。アドレス電極とプライミング電極は、一つの主隔壁にアドレス電極とプライミング電極を1つずつ形成してもよいし、アドレス電極とアドレス電極、隣の主隔壁にプライミング電極とプライミング電極、というふうに形成してもよい。
本発明の第十二の実施態様を図19に示す。第十一の実施態様とは、主隔壁に形成したアドレス電極とプライミング電極が補助隔壁に張り出した補助電極を有すること以外は、同様の構造である。主隔壁のアドレス電極とプライミング電極上の平坦部はなくてもよい。バス電極は、図19のように透明電極の両端にあってもよいし、片端にあってもよい。
本発明の第十二の実施態様では、略平行にはしる1対の主放電用の維持電極に交流のパルス電圧を印加し、その間で主放電を行う。主放電は、放電セルの高さ方向にある維持電極間で行う対向放電であるので、放電のモードが陽光柱により近くなり、紫外線発生効率を高く、すなわち発光効率を高くすることができる。アドレス電極は、維持電極とアドレス放電することにより壁電荷を形成し、発光セルと非発光セルの選択を行う。アドレス電極と維持電極との距離が近いため、アドレス放電の開始電圧を下げることができる。また、隔壁の高さによらずアドレス電極と維持電極との距離を一定に保てるため、アドレス放電の開始電圧を上昇させることなく隔壁を高くすることができ、蛍光体の塗布面積を増加することで発光効率を向上させることができる。また、隔壁パターンを格子状などとすることで、蛍光体塗布面積を増加させることができるので、放電により発生する紫外線を有効利用でき、発光効率を向上させることができる。
さらに、種火放電用のプライミング電極にも交流のパルス電圧を印加し、主放電用の維持電極との間で、主放電を誘発する種火放電を行う。維持電極とプライミング電極間の種火放電により生ずる荷電(プライミング)粒子が引き金となり、主放電の放電開始電圧を下げることができる。また、種火放電により荷電粒子が増えるので放電の統計遅れを抑制することができ、放電遅れによる書き込み不良、すなわち不灯セルがなくなり画質劣化の少ないPDPを実現できる。この種火放電の効果は、主放電だけでなく、アドレス放電に関しても同様である。
また、第十二の実施態様では、前面基板側と背面基板側に形成したそれぞれの主放電用の維持電極をセル開口部全体に形成することができるため、主放電用の電極面積を大きくとることができ、放電電流が増加するので輝度を向上させることができる。
また、高精細化にともない、セルピッチが小さくなるにつれて、放電空間が狭くなり発光効率は低下する傾向にあるが、本発明の第十二の実施態様では、セル開口部に放電ギャップ(スリット)がなく、セル開口部全面に電極を持つ。そのため、セルピッチが減少しても発光効率低下の影響は、従来の面放電型と比較して少なく、高精細PDPに適している。
また、アドレス電極とプライミング電極は、一つの主隔壁にアドレス電極とプライミング電極を1つずつ形成してもよいし、アドレス電極とアドレス電極、隣の主隔壁にプライミング電極とプライミング電極、というふうに形成してもよい。
次に、本発明の第一から第十二の実施態様に共通した、隔壁または電極に好適な形態について述べる。主放電用の維持電極、アドレス電極、種火放電用のプライミング電極の一部あるいは全てが、ガラス軟化点400〜650℃のガラスで覆われていることが好ましい。400〜650℃のガラスを用いることによって、緻密性がよく、気泡の少ない層で電極を覆うことができる。これにより、絶縁破壊を少なくし、安定な放電を行うことができる。ガラス軟化点が400℃より低いと有機物の分解前にガラスが軟化するため逆に気泡を形成する要因となる。650℃より高いと焼結不足となりやすく絶縁破壊が起こりやすくなる。例えば、PbO−B2O3系の低軟化点ガラスを好ましく用いることができる。焼成時の形状保持性からガラス以外に、SiO2、TiO2、Al2O3、高軟化点ガラス(軟化点700℃以上)などの材料をフィラー成分として含んでもよい。フィラーの含有量は、低軟化点ガラスの軟化点、被覆層の厚み、焼成温度にもよるが、好ましくは低軟化点ガラス100重量部に対してフィラー1〜40重量部である。より好ましくは2〜20重量部である。
また、隔壁が誘電率の異なる2層以上の複数層で構成されることが好ましい。誘電率が高い層に電気力線が集中するため、放電させたい隔壁の一部の誘電率を高くすると、効率的に放電を起こすことができる。誘電率の差が、3以上が好ましく、より好ましくは5以上である。従って、誘電率の高い層が電極近傍にあることが好ましい。電極近傍に効率よく電気力線を集中させ、放電を起こしやすくすることができる。電極近傍の層とは、電極の一部または全部と接する隔壁層のことである。
また、隔壁表面の一部あるいは全てが絶縁性の材料で被覆されていることが好ましい。絶縁性の材料で被覆することで、電極の絶縁破壊を抑制し、より信頼性の高いPDPを作製できるからである。絶縁性の材料で被覆しないと、電極の絶縁破壊が生じやすい傾向にあり、過電流による駆動回路の破壊が起こりやすくなる傾向にある。
蛍光体の一部あるいは全てが絶縁性の材料で被覆されていることが好ましい。放電による蛍光体の輝度低下、色度変化などを少なくできるのでより長寿命なディスプレイを提供できるからである。
絶縁性の材料としては、MgO、MgGd2O4、BaGd2O4、Sr0.6Ca0.4Gd2O4、Ba0.6Sr0.4Gd2O4、SiO2、TiO2、Al2O3、前述の低軟化点ガラスの群から選ばれる少なくとも1種以上を含むのが好ましい。好ましくはMgOを70%以上含むことである。さらに好ましくはMgOを90%以上含むことである。MgOは放電による耐スパッタ性に優れると同時に2次電子放出係数が高いので、放電開始電圧の低減や、放電の安定性を高めることが出来るからである。さらに、できるだけPDPの励起紫外線の透過性が良好である材料が好ましい。例えば、MgF2、CaF2、BaF2などのフッ化物などが挙げられる。好ましくは、MgOとMgF2の混合材料が好ましく用いることができる。
次に、本発明のプラズマディスプレイ用部材ならびにプラズマディスプレイの作製手順を説明する。ここでは、AC型プラズマディスプレイを例にその作製手順を説明するが、必ずしもこの構造に限定されるものではない。
はじめに背面基板の作製方法を説明する。ガラス基板は、ソーダガラスの他にPDP用の耐熱ガラスである旭硝子製の“PD200”や日本電気硝子製の“PP8”を用いることができる。
第一から第七の実施態様の場合、ガラス基板上に電極を形成しなくてもよいので誘電体層を設けなくてもよいが、隔壁の倒れや剥がれを抑止することや、高反射率にすることで背面基板側に漏れていた可視光や紫外線を表示面側に戻すことが可能となるので、誘電体層を設けるのが好ましい。この誘電体層は高反射率層であることが好ましい。具体的には、550nmの可視光の反射率が50%以上あることが好ましく、さらに好ましくは60%以上である。
第一から第七の実施態様で補助電極を形成する場合や第八から第十二の実施態様の場合、ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、背面基板側の補助電極または主放電用の維持電極として放電セルのピッチにてストライプ状電極パターンを形成する。形成する方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常400〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。さらに、背面基板側の補助電極または主放電用の維持電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。また、形成する方法としては、ガラスやフィラーなどの無機粉末と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷で全面印刷する方法などがある。
続いて、第一から第十二の実施態様に共通の基板上に隔壁と、隔壁の表面および/または内部にアドレス電極と、第四、第五、第十一、第十二の実施態様ではさらに隔壁の表面および/または内部に種火放電用のプライミング電極を形成する工程について説明する。まず、アドレス電極とプライミング電極を形成する高さまでの下層の隔壁を形成する。隔壁の形成方法としては、サンドブラスト法、型転写法、フォトリソグラフィー法等が挙げられる。本発明に使用する隔壁の材料としては特に限定されず、公知の材料を適用することができる。隔壁パターンは特に限定されないが、格子状、ワッフル状などが好ましい。
次に、アドレス電極とプライミング電極を下層の隔壁の上に形成する。アドレス電極とプライミング電極は同時に形成することができる。アドレス電極とプライミング電極の作製方法としては、背面基板側の補助電極や主放電用の維持電極の作製法で述べた方法と同様の公知材料、方法を用いることができる。作製方法としては、特にフォトリソグラフィー法が好ましい。例えば、フォトリソグラフィー法の場合、隔壁ペーストとして感光性ガラスペーストを用いることができる。感光性ガラスペーストは、例えば感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分と、低融点ガラスと、フィラーとして高融点ガラスを少なくとも各1種類ずつ含む。これら各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し、感光性ガラスペーストを作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整される。隔壁の表面にアドレス電極とプライミング電極を形成する場合は、後述の絶縁性材料の被覆工程や蛍光体の形成を行うが、隔壁の内部にアドレス電極とプライミング電極を形成する場合は、続いて下層の隔壁の電極上に形成された上にさらに上層の隔壁を形成する。
また、上層の隔壁を形成した後に、パネル化後の真空排気の効率をよくするために、全面基板とのクリアランスを確保するためのクリアランス用隔壁をさらに設けることが好ましい。
このように下層の隔壁、アドレス電極とプライミング電極、上層の隔壁、クリアランス用の隔壁の順に形成することでアドレス電極とプライミング電極を隔壁の内部に形成することができる。アスペクト比の高い隔壁を形成する場合の加工精度、均一性といった点から、隔壁の形成方法としては、サンドブラスト法やフォトリソグラフィー法が好ましい。特に、フォトリソグラフィー法がより好ましい。
フォトリソグラフィー法で隔壁とアドレス電極とプライミング電極を作製する場合、上述のように下層の隔壁、アドレス電極とプライミング電極、上層の隔壁、クリアランス用の隔壁を順次形成してもよいが、下層の隔壁ペーストを塗布/乾燥/露光した後、現像によるパターン形成せずに、続けてアドレス電極とプライミング電極パターンを、下層の隔壁ペースト塗布膜の上に塗布/乾燥/露光/現像により形成する。このとき、隔壁ペーストと比較して電極ペーストは現像時間が非常に速いので、隔壁ペーストの現像がほとんど進まないうちに、アドレス電極とプライミング電極パターンを形成することができる。さらにアドレス電極とプライミング電極パターンが形成された下層の隔壁ペースト塗布膜の上に、上層の隔壁ペーストを塗布/乾燥/露光した後、クリアランス用の隔壁ペーストを塗布/乾燥/露光する。最後に、下層、上層、クリアランス用の隔壁塗布膜を一括現像してもよい。この方法では、下層、上層、クリアランス用の隔壁を順次作製する方法と比較して、プロセスを削減することができる。
次に、隔壁の表面にアドレス電極とプライミング電極を形成した場合では、放電空間に晒される電極の表面を絶縁性の材料で被覆することが好ましい。被覆の方法は特に限定されず公知の方法が適用できる。例えば、薄膜状態での膜の均一性の観点からはスパッタ法、真空蒸着法が好適である。低コストといった観点からは絶縁性の材料とバインダーを含む絶縁性ペーストを塗布する、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、感光性ペースト法が好ましい。被覆層の厚みは特に限定されないが、0.0005〜0.05mmが好ましい。より好ましくは、0.002〜0.02mmである。0.0005mmよりも薄い場合は電気的絶縁の機能が発現しにくいからである。また、0.05mmよりも厚い場合は、放電セルの放電空間が狭く成りすぎて輝度が低下する傾向にあるからである。例えば、低軟化点ガラスで被覆する場合、低軟化点ガラスフリット、有機バインダー(エチルセルロース系やアクリル系樹脂など)、溶媒(例えば、テルピネオールなど)を3本ロール等で混練したペーストを用いることが出来る。各組成は、被覆層の厚み、塗布条件などにより適宜調整できる。
樹脂成分除去のための焼成は、使用する樹脂が十分に脱バインダーする温度で行うのがよい。樹脂にセルロース系樹脂を用いた場合では、例えば450〜650℃である。アクリル系樹脂を用いた場合では、430〜650℃である。焼成温度が低すぎると樹脂成分が残存しやすく、高すぎるとガラス基板に歪みが導入され割れが生じてしまう。
隔壁、アドレス電極とプライミング電極、または背面基板側の補助電極や維持電極を形成したガラス基板上に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体を形成する。感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィー法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。
隔壁上の放電面に蛍光体付着が少ないという点で、スクリーン印刷法や感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィー法が好ましい。プロセス数が少ないという点からいってスクリーン印刷法が特に好ましい。ただし、第七の実施態様においては、放電面に付着した蛍光体を粘着テープ等を用いて蛍光体の頂部除去を行うとことができるためディスペンサー法も好ましく用いることができる。
蛍光体の厚みも特に限定されるものではないが、0.01〜0.03mm、より好ましくは0.015〜0.025mmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl10O17:Eu)やCaMgSi2O6である。緑色では、パネル輝度の点からZn2SiO4:Mn、YBO3:Tb、BaMg2Al14O24:Eu,Mn、BaAl12O19:Mn、BaMgAl14O23:Mnが好適である。さらに好ましくはZn2SiO4:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO3:Eu、Y2O3:Eu、YPVO:Eu、YVO4:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO3:Euである。
蛍光体を形成した後に、絶縁性の材料で蛍光体の一部あるいは全てを被覆するのが好ましい。被覆の方法などは、前述の隔壁への被覆のところで記したものと同様であるが、蛍光体を被覆する層の焼成温度は、蛍光体の劣化を最小限にするために550℃以下であることが好ましい。より好ましくは510℃以下である。
続いて、前面基板の作製方法を説明する。ガラス基板は、ソーダガラスの他にPDP用の耐熱ガラスである旭硝子製の“PD200”や日本電気硝子製の“PP8”を用いることができる。
まず、ガラス基板上に、ITOをスパッタし、フォトエッチング法によりパターン形成する。第六、第七の実施態様の場合はITOのパターンは形成する必要はない。次いで、黒色電極用の黒色電極ペーストを印刷する。黒色電極ペーストは、有機バインダー、黒色顔料、導電性粉末と、フォトリソグラフィー法で用いる場合は感光性成分が主成分となる。黒色顔料としては、金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物としては、チタンブラックや、銅、鉄、マンガンの酸化物やそれらの複合酸化物、コバルト酸化物などがあるが、ガラスと混合して焼成したときに退色が少ない点でコバルト酸化物が優れている。導電性粉末としては、金属粉末または金属酸化物粉末が挙げられる。金属粉末としては電極材料として通常用いられる金、銀、銅、ニッケルなどを特に制限無く用いることが出来る。この黒色電極は抵抗率が大きいので、抵抗率の小さい電極も作製してバス電極を形成するため、導電性の高い電極用ペースト(例えばAgを主成分とするもの)を、黒電極ペーストの印刷面上に印刷する。この導電性ペーストとしては、アドレス電極や種火放電用のプライミング電極で用いた電極ペーストも好適に用いることができる。そして、一括露光/現像してバス電極パターンを作製する。導電性を確実に確保するため、現像前に導電性の高い電極ペーストを再び印刷し、再露光後一括現像してもよい。バス電極パターンの形成後、焼成する。その後、コントラスト向上のため、ブラックストライプやブラックマトリクスを形成するのが好ましい。
次に、第一から第五、および第八から第十二の実施態様におけるベタ膜としての透明誘電体の形成方法について述べる。透明誘電体ペーストは、有機バインダー、有機溶剤、ガラスが主成分であるが、適宜可塑剤などの添加物を加えてもよい。ガラスとしては、PbO、B2O3、SiO2、CaO等を含むものが好ましい。また、フィラーを添加することもできる。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の方法を用いることができる。厚みは、0.01〜0.03mmが好ましい。
次に第六の実施態様におけるストライプ状のパターン化された誘電体層の形成方法について述べる。パターン形成方法は、感光性ガラスペースト法が好ましい。感光性ガラスペーストは、例えば感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分と、低融点ガラスを含む。低融点ガラスは、開口率を高く保つため、可視光に対して透明であることが好ましい。また、高融点ガラスや酸化物等からなるフィラーを含んでもよいが、屈折率の違いや気泡をかみやすく、光を散乱しやすくなるので透明性を確保するためには低融点ガラスのみが好ましい。これら各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し、感光性ガラスペーストを作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整される。
感光性ガラスペースト法によるパターン形成は、背面板における隔壁の形成方法と同様にできる。
また、第七の実施態様における高さの異なる主パターンと補助パターンからなる格子状誘電体パターンの形成方法もまた、感光性ガラスペースト法が好ましい。感光性ガラスペーストは第六の実施態様で用いる感光性ガラスペーストと同じものを用いることができる。
感光性ガラスペースト法によるパターン形成は、背面板における隔壁の形成方法と同様にできる。例えば、まず感光性ガラスペーストを塗布し主パターン用の露光を行い、ついで感光性ガラスペーストをその上に塗布し、補助パターン用の露光を行う。次に一括現像し、焼成することで、高さの異なる主パターンと補助パターンからなる格子状誘電体パターンを形成することができる。
さらに、保護膜を形成する。保護膜としてはMgO、MgGd2O4、BaGd2O4、Sr0.6Ca0.4Gd2O4、Ba0.6Sr0.4Gd2O4、SiO2、TiO2、Al2O3、前述の低軟化点ガラスの群から少なくとも1種類用いるのがよいが、特にMgOが好ましい。保護膜の作製方法であるが、EB蒸着やイオンプレーティング法など公知の技術が好適である。
プラズマディスプレイパネルの製造方法について説明する。本発明の背面基板と前面基板を封着後、2枚の基板間隔に形成された空間を加熱しながら真空排気を行った後に、ヘリウム、ネオン、キセノンなどから構成される放電ガスを封入して封止する。放電電圧と輝度の両面からはXe5〜15%−Ne bal.混合ガスが好ましい。紫外線の発生効率を大きくするために、さらにXeを30%程度まで高くしてもよい。
最後に、駆動回路を装着し、エージングすることによって、PDPを作製できる。