JP4052050B2 - 交流駆動型プラズマ表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体層に特徴を有する交流駆動型プラズマ表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在主流の陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、平面型(フラットパネル形式)の表示装置が種々検討されている。このような平面型の表示装置として、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)、プラズマ表示装置(PDP:プラズマ・ディスプレイ)を例示することができる。中でも、プラズマ表示装置は、大画面化や広視野角化が比較的容易であること、温度、磁気、振動等の環境要因に対する耐性に優れること、長寿命であること等の長所を有し、家庭用の壁掛けテレビの他、公共用の大型情報端末機器への適用が期待されている。
【0003】
プラズマ表示装置は、希ガスから成る放電ガスを放電空間内に封入した放電セルに電圧を印加して、放電ガス中でのグロー放電に基づき発生した真空紫外線で放電セル内の蛍光体層を励起することによって発光を得る表示装置である。つまり、個々の放電セルは蛍光灯に類似した原理で駆動され、放電セルが、通常、数十万個のオーダーで集合して1つの表示画面が構成されている。プラズマ表示装置は、放電セルへの電圧の印加方式によって直流駆動型(DC型)と交流駆動型(AC型)とに大別され、それぞれ一長一短を有する。AC型プラズマ表示装置は、表示画面内で個々の放電セルを仕切る役割を果たす隔壁を例えばストライプ状に形成すればよいので、高精細化に適している。しかも、放電のための電極の表面が誘電体材料から成る誘電体層で覆われているので、かかる電極が磨耗し難く、長寿命であるといった長所を有する。
【0004】
AC型プラズマ表示装置の典型的な構成例の一部分の模式的な分解斜視図を、図1に示す。このAC型プラズマ表示装置は所謂3電極型に属し、一対の放電維持電極12の間で放電が生じる。図1に示すAC型プラズマ表示装置は、フロントパネルに相当する第1パネル10とリアパネルに相当する第2パネル20とがそれらの外周部で接合されて成る。第2パネル20上の蛍光体層25の発光は、例えば、第1パネル10を通して観察される。
【0005】
第1パネル10は、透明な第1の基板11と、第1の基板11上にストライプ状に設けられ、透明導電材料から成る複数の一対の放電維持電極12と、放電維持電極12のインピーダンスを低下させるために放電維持電極12上に設けられ、放電維持電極12よりも電気抵抗率の低い材料から成るバス電極13と、バス電極13及び放電維持電極12上を含む第1の基板11上に形成された誘電体層14と、誘電体層14上に形成されたMgOから成る保護膜15から構成されている。
【0006】
一方、第2パネル20は、第2の基板21と、第2の基板21上にストライプ状に設けられた複数のアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)22と、アドレス電極22上を含む第2の基板21上に形成された誘電体材料層23と、誘電体材料層23上であって隣り合うアドレス電極22の間の領域にアドレス電極22と平行に延びる絶縁性の隔壁24と、誘電体材料層23上から隔壁24の側壁面上に亙って設けられた蛍光体層25とから構成されている。蛍光体層25は、AC型プラズマ表示装置においてカラー表示を行う場合、赤色蛍光体層25R、緑色蛍光体層25G、及び青色蛍光体層25Bから構成されており、これらの各色の蛍光体層25R,25G,25Bが所定の順序に従って設けられている。図1は一部分解斜視図であり、実際には第2パネル20側の隔壁24の頂部が第1パネル10側の保護膜15に当接している。一対の放電維持電極12と、2つの隔壁24の間に位置するアドレス電極22とが重複する領域が、放電セルに相当する。そして、隣り合う隔壁24と蛍光体層25と保護膜15とによって囲まれた放電空間内には、放電ガスが封入されている。第1パネル10と第2パネル20とは、それらの外周部において、フリットガラスを用いて接合されている。
【0007】
放電維持電極12の射影像が延びる方向とアドレス電極22の射影像が延びる方向とは直交しており、一対の放電維持電極12と、3原色を発光する蛍光体層25R,25G,25Bの1組とが重複する領域が1画素(1ピクセル)に相当する。グロー放電が一対の放電維持電極12間で生じることから、このタイプのAC型プラズマ表示装置は「面放電型」と称される。一対の放電維持電極12間に電圧を印加する直前に、例えば、放電セルの放電開始電圧よりも低いパルス電圧をアドレス電極22に印加することで、放電セル内に壁電荷が蓄積され(表示を行う放電セルの選択)、見掛け上の放電開始電圧が低下する。次いで、一対の放電維持電極12の間で開始された放電は、放電開始電圧よりも低い電圧にて維持され得る。放電セルにおいては、放電ガス中でのグロー放電に基づき発生した真空紫外線の照射によって励起された蛍光体層が、蛍光体材料の種類に応じた特有の発光色を呈する。尚、封入された放電ガスの種類に応じた波長を有する真空紫外線が発生する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
現在商品化されているAC型プラズマ表示装置においては、その輝度の低さが問題となっている。例えば、42インチ型のAC型プラズマ表示装置の輝度は、高々900cd/m2程度である。しかも、実際にAC型プラズマ表示装置を商品化するにあたっては、例えば、第1パネル10の外面に電磁波遮蔽や外光反射防止のためのシートやフィルムを張り合わせる必要があり、AC型プラズマ表示装置における実際の表示光はかなり暗くなってしまう。
【0009】
AC型プラズマ表示装置では、第1の基板11における放電維持電極12上に誘電体層14が形成されており、誘電体層14は、通常、例えば、ガラスペーストをスクリーン印刷することによって形成される。AC型プラズマ表示装置の駆動においては、この誘電体層14に電荷を蓄積し、放電維持電極12に逆向きの電圧を印加することで誘電体層14に蓄積された電荷を放出させ、プラズマを発生させている。輝度はこのプラズマから発生する真空紫外線の量に依存しており、輝度を向上させるためには誘電体層14に多くの電荷を蓄積させる必要がある。そのための手段として、誘電体層14を高い比誘電率を有する材料から構成する方法、誘電体層14の厚さを薄くする方法が考えられる。また、電荷分布を出来るだけ均一にするために、誘電体層14は均一・均質な層であることが要求される。更には、誘電体層14は、緻密な層であることが、耐圧向上の観点、その下に存在する放電維持電極12の損傷発生の防止といった観点から望ましい。更には、輝度向上の観点からも、誘電体層14の厚さは出来る限り薄いことが望ましい。
【0010】
通常、スクリーン印刷法にて誘電体層14を形成しているが、スクリーン印刷法では、薄く均一な膜厚を有する誘電体層14を形成することが困難であり、誘電体層14の薄い部分や亀裂部などから異常放電が発生し易くなるという問題がある。
【0011】
誘電体層14をSiO2等をスパッタリング法や蒸着法等で形成するという方法もあるが、SiO2は比誘電率が3〜4程度とあまり高くないため、容量をあまり高くできず、電荷の蓄積を十分に行えないという問題がある。
【0012】
更には、一対の放電維持電極12の間隔が1×10-4m程度よりも狭い場合、誘電体層14の厚さが厚いと誘電体層14内での放電破壊が生じ、誘電体層14への電荷の蓄積が困難となる。よって、一対の放電維持電極12の間隔が狭い場合、誘電体層14の厚さを薄くする必要がある。然るに、従来のガラスペーストを用いたスクリーン印刷法によっては、薄い誘電体層14を形成することは困難である。
【0013】
従って、本発明の目的は、誘電体層の厚さを薄くでき、且つ、比較的高い比誘電率を有する材料を使用することによって誘電体層においる電荷の蓄積を増加することにより、高輝度を達成し得る交流駆動型プラズマ表示装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の交流駆動型プラズマ表示装置は、
第1の基板上に形成された放電維持電極、及び、第1の基板と放電維持電極の上に形成された誘電体層を備えた第1パネル、並びに、第2パネルが、それらの外周部で接合されて成る交流駆動型プラズマ表示装置であって、
該誘電体層は、窒素化合物から成ることを特徴とする。
【0015】
本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、窒素化合物として、SiNX、SiOXNY、Mg3N2、AlN、あるいは、BCNを挙げることができる。尚、誘電体層は、これらの材料から選択された1種類の材料から成る単層構造(単層膜構造)とすることもできるし、これらの材料から選択された複数種類の材料から成る多層構造(積層膜構造)とすることもできる。更には、誘電体層として、その他、例えば、Mg3N2とBNの多層構造、AlNとBNの多層構造、BCNとBNの多層構造を挙げることもできる。
【0016】
また、上述の態様を含む本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、誘電体層の厚さを、1.0×10-6m乃至3.0×10-5m、好ましくは1.0×10-6m乃至1.5×10-5m、一層好ましくは、1.0×10-6m乃至1.0×10-5m、更に一層好ましくは2.0×10-6m乃至1.0×10-5mとすることが望ましい。ここで、誘電体層の厚さとは、放電維持電極上の平均厚さを意味する。このように、従来の交流駆動型プラズマ表示装置における誘電体層の膜厚(通常、3.0×10-5mを超える膜厚)と比較して薄い誘電体層を形成するので、誘電体層の容量を大きくすることができる。その結果、駆動電圧の低減を図ることができると共に、電荷蓄積量を増加させることができるので、交流駆動型プラズマ表示装置の輝度の向上、駆動電力の低減を図ることができる。
【0017】
上述の各種態様を含む本発明の交流駆動型プラズマ表示装置にあっては、第1パネルに形成された放電維持電極は一対で作動する構成とすることができる。一対の放電維持電極の間の距離は、所定の放電電圧において必要なグロー放電が生じる限りにおいて本質的には任意であるが、一対の放電維持電極の間の間隔は1×10-4m以下、好ましくは5×10-5m未満、一層好ましくは5.0×10-5m未満、更に一層好ましくは2×10-5m以下であることが望ましい。尚、一対の放電維持電極の間の距離が1×10-4m以下の場合、誘電体層の膜厚が厚すぎると、誘電体層内での放電破壊が生じ、誘電体層における電荷の蓄積が困難となる場合がある。本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、誘電体層の厚さを従来よりも薄くすることによって、即ち、誘電体層の厚さを3.0×10-5m以下、望ましくは1.5×10-5m以下、一層望ましくは1.0×10-5m以下とすることによって、このような現象の発生を確実に抑制することができる。
【0018】
誘電体層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法といった各種の物理的気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、若しくは、化学的気相成長法(CVD法)やゾル−ゲル法に基づき第1の基板及び放電維持電極上に形成することが好ましい。このように、PVD法やCVD法、ゾル−ゲル法を採用することによって、薄く、緻密で、しかも、均一・均質な誘電体層を形成することができる。
【0019】
ここで、PVD法として、より具体的には、
(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法
(b)プラズマ蒸着法
(c)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法
(d)DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法
を挙げることができる。
【0020】
また、CVD法として、常圧CVD法(APCVD法)、減圧CVD法(LPCVD法)、低温CVD法、高温CVD法、プラズマCVD法(PCVD法,PECVD法)、ECRプラズマCVD法、光CVD法を例示することができる。
【0021】
誘電体層の表面には保護膜が形成されていることが好ましい。保護膜を形成することで、イオンや電子と放電維持電極との直接接触を防止することができる結果、放電維持電極の磨耗を防ぐことができる。保護膜は、この他にも、放電に必要な2次電子を放出する機能を有する。保護膜を構成する材料として、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)を例示することができるが、中でも酸化マグネシウムは、2次電子放出比が高い上に、化学的に安定であり、スパッタリング率が低く、蛍光体層の発光波長における光透過率が高く、放電開始電圧が低い等の特色を有する好適な材料である。尚、保護膜を、これらの材料から成る群から選択された少なくとも2種類の材料から構成された積層膜構造としてもよい。
【0022】
誘電体層の表面には、誘電体層よりも薄い(例えば、2μm以下、好ましくは1μm以下)酸化ケイ素層が形成されていてもよい。このように、窒素化合物から成る誘電体層と酸化ケイ素層との積層構造とすることによって、誘電体層内の応力を緩和し、誘電体層にクラックが生じることを防止することができるし、誘電体層におけるピンホールの発生を防止することができる。尚、保護膜を形成する場合、この酸化ケイ素層の表面に保護膜を形成する。
【0023】
上述の各種態様を含む本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、一対の放電維持電極の一方を第1パネルに形成し、他方を第2パネルに形成する構成とすることができる。尚、このような構成の交流駆動型プラズマ表示装置を、便宜上、2電極型と呼ぶ。この場合、一方の放電維持電極の射影像は第1の方向に延び、他方の放電維持電極の射影像は、第1の方向とは異なる第2の方向に延び、一対の放電維持電極が対面するごとく対向して配置されている。あるいは又、一対の放電維持電極を第1パネルに形成し、所謂アドレス電極を第2パネルに形成する構成とすることもできる。尚、このような構成の交流駆動型プラズマ表示装置を、便宜上、3電極型と呼ぶ。この場合、一対の放電維持電極の射影像は互いに平行に第1の方向に延び、アドレス電極の射影像は第2の方向に延び、一対の放電維持電極とアドレス電極とが対面するごとく対向して配置されている構成とすることができるが、かかる構成に限定するものではない。これらの場合、第1の方向と第2の方向とは、交流駆動型プラズマ表示装置の構造の簡素化の観点から、直交していることが好ましい。
【0024】
また、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置において、第1パネルに一対の放電維持電極を設ける場合、一対の放電維持電極の対向する縁部の間のギャップ形状を直線状としてもよいし、一対の放電維持電極の対向する縁部の間のギャップ形状を、放電維持電極の幅方向に屈曲したパターン若しくは湾曲したパターンとすることもでき、これによって、放電に寄与する放電維持電極の部分の面積の増加を図ることができる。
【0025】
例えば、3電極型の交流駆動型プラズマ表示装置を例にとり、以下、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置の説明を行うが、2電極型の交流駆動型プラズマ表示装置にあっては、必要に応じて、以下の説明における「アドレス電極」を「他方の放電維持電極」と読み替えればよい。
【0026】
放電維持電極を構成する導電性材料は、交流駆動型プラズマ表示装置が透過型であるか、反射型であるかによって異なる。透過型の交流駆動型プラズマ表示装置では、蛍光体層の発光は第2の基板を通して観察されるので、放電維持電極を構成する導電性材料に関して透明/不透明の別は問わないが、アドレス電極を第2の基板上に設けるので、アドレス電極は透明である必要がある。一方、反射型の交流駆動型プラズマ表示装置では、蛍光体層の発光は第1の基板を通して観察されるので、アドレス電極を構成する導電性材料に関して透明/不透明の別は問わないが、放電維持電極を構成する導電性材料は透明である必要がある。尚、ここで述べる透明/不透明とは、蛍光体材料に固有の発光波長(可視光域)における導電性材料の光透過性に基づく。即ち、蛍光体層から射出される光に対して透明であれば、放電維持電極やアドレス電極を構成する導電性材料は透明であると云える。不透明な導電性材料として、Ni、Al、Au、Ag、Pd/Ag、Cr、Ta、Cu、Ba、LaB6、Ca0.2La0.8CrO3等の材料を単独又は適宜組み合わせて用いることができる。透明な導電性材料として、ITO(インジウム・錫酸化物)やSnO2を挙げることができる。放電維持電極やアドレス電極は、スパッタリング法や、蒸着法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、メッキ法、リフトオフ法等によって形成することができる。
【0027】
放電維持電極に加えて、放電維持電極全体のインピーダンスを低下させるために、放電維持電極に接して、放電維持電極よりも電気抵抗率の低い材料から成るバス電極が設けられている構成とすることもできる。バス電極は、典型的には、金属材料、例えば、Ag、Au、Al、Ni、Cu、Mo、Cr、Cr/Cu/Cr積層膜から構成することができる。かかる金属材料から成るバス電極は、反射型の交流駆動型プラズマ表示装置においては、蛍光体層から放射されて第1の基板を通過する可視光の透過光量を低減させ、表示画面の輝度を低下させる要因となり得るので、放電維持電極全体に要求される電気抵抗値が得られる範囲内で出来る限り細く形成することが好ましい。バス電極は、スパッタリング法や、蒸着法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、メッキ法、リフトオフ法等によって形成することができる。
【0028】
本発明の交流駆動型プラズマ表示装置において、第1パネルを構成する第1の基板及び第2パネルを構成する第2の基板の構成材料として、高歪点ガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)を例示することができる。第1の基板と第2の基板の構成材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
蛍光体層は、例えば、赤色を発光する蛍光体材料、緑色を発光する蛍光体材料及び青色を発光する蛍光体材料から成る群から選択された蛍光体材料から構成され、アドレス電極の上方に設けられている。交流駆動型プラズマ表示装置がカラー表示の場合、具体的には、例えば、赤色を発光する蛍光体材料から構成された蛍光体層(赤色蛍光体層)がアドレス電極の上方に設けられ、緑色を発光する蛍光体材料から構成された蛍光体層(緑色蛍光体層)が別のアドレス電極の上方に設けられ、青色を発光する蛍光体材料から構成された蛍光体層(青色蛍光体層)が更に別のアドレス電極の上方に設けられており、これらの3原色を発光する蛍光体層が1組となり、所定の順序に従って設けられている。そして、一対の放電維持電極とこれらの3原色を発光する1組の蛍光体層が重複する領域が、1画素に相当する。赤色蛍光体層、緑色蛍光体層及び青色蛍光体層は、ストライプ状に形成されていてもよいし、格子状に形成されていてもよい。更には、放電維持電極とアドレス電極とが重複する領域にのみ、蛍光体層を形成してもよい。
【0030】
蛍光体層を構成する蛍光体材料としては、従来公知の蛍光体材料の中から、量子効率が高く、真空紫外線に対する飽和が少ない蛍光体材料を適宜選択して用いることができる。カラー表示を想定した場合、色純度がNTSCで規定される3原色に近く、3原色を混合した際の白バランスがとれ、残光時間が短く、3原色の残光時間がほぼ等しくなる蛍光体材料を組み合わせることが好ましい。真空紫外線の照射により赤色に発光する蛍光体材料として、(Y2O3:Eu)、(YBO3Eu)、(YVO4:Eu)、(Y0.96P0.60V0.40O4:Eu0.04)、[(Y,Gd)BO3:Eu]、(GdBO3:Eu)、(ScBO3:Eu)、(3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)を例示することができる。真空紫外線の照射により緑色に発光する蛍光体材料として、(ZnSiO2:Mn)、(BaAl12O19:Mn)、(BaMg2Al16O27:Mn)、(MgGa2O4:Mn)、(YBO3:Tb)、(LuBO3:Tb)、(Sr4Si3O8Cl4:Eu)を例示することができる。真空紫外線の照射により青色に発光する蛍光体材料として、(Y2SiO5:Ce)、(CaWO4:Pb)、CaWO4、YP0. 85V0.15O4、(BaMgAl14O23:Eu)、(Sr2P2O7:Eu)、(Sr2P2O7:Sn)を例示することができる。蛍光体層の形成方法として、厚膜印刷法、蛍光体粒子をスプレーする方法、蛍光体層の形成予定部位に予め粘着性物質を付けておき、蛍光体粒子を付着させる方法、感光性の蛍光体ペーストを使用し、露光及び現像によって蛍光体層をパターニングする方法、全面に蛍光体層を形成した後に不要部をサンドブラスト法により除去する方法を挙げることができる。
【0031】
尚、蛍光体層はアドレス電極の上に直接形成されていてもよいし、アドレス電極上から隔壁の側壁面上に亙って形成されていてもよい。あるいは又、蛍光体層は、アドレス電極上に設けられた誘電体材料層上に形成されていてもよいし、アドレス電極上に設けられた誘電体材料層上から隔壁の側壁面上に亙って形成されていてもよい。更には、蛍光体層は、隔壁の側壁面上にのみ形成されていてもよい。誘電体材料層の構成材料として、低融点ガラスや酸化ケイ素を挙げることができ、スクリーン印刷法やスパッタリング法、真空蒸着法等に基づき形成することができる。場合によっては、蛍光体層や隔壁の表面に、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)等から成る第2の保護膜を形成してもよい。
【0032】
第2の基板には、アドレス電極と平行に延びる隔壁(リブ)が形成されていることが好ましい。尚、隔壁(リブ)はミアンダ構造を有していてもよい。誘電体材料層が第2の基板及びアドレス電極上に形成されている場合には、隔壁は誘電体材料層上に形成されている場合もある。隔壁の構成材料として、従来公知の絶縁材料を使用することができ、例えば広く用いられている低融点ガラスにアルミナ等の金属酸化物を混合した材料を用いることができる。隔壁の形成方法として、スクリーン印刷法、サンドブラスト形成法、ドライフィルム法、感光法を例示することができる。ここで、スクリーン印刷法とは、隔壁を形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口部が形成されており、スクリーン上の隔壁形成用材料をスキージを用いて開口部を通過させ、第2の基板上若しくは誘電体材料層上(以下、これらを総称して、第2の基板等上と呼ぶ)に隔壁形成用材料層を形成した後、かかる隔壁形成用材料層を焼成する方法である。ドライフィルム法とは、第2の基板等上に感光性フィルムをラミネートし、露光及び現像によって隔壁形成予定部位の感光性フィルムを除去し、除去によって生じた開口部に隔壁形成用の材料を埋め込み、焼成する方法である。感光性フィルムは焼成によって燃焼、除去され、開口部に埋め込まれた隔壁形成用の材料が残り、隔壁となる。感光法とは、第2の基板等上に感光性を有する隔壁形成用の材料層を形成し、露光及び現像によってこの材料層をパターニングした後、焼成を行う方法である。サンドブラスト形成法とは、例えば、スクリーン印刷やロールコーター、ドクターブレード、ノズル吐出式コーター等を用いて隔壁形成用材料層を第2の基板等上に形成し、乾燥させた後、隔壁を形成すべき隔壁形成用材料層の部分をマスク層で被覆し、次いで、露出した隔壁形成用材料層の部分をサンドブラスト法によって除去する方法である。尚、隔壁を黒くすることにより、所謂ブラック・マトリックスを形成し、表示画面の高コントラスト化を図ることができる。隔壁を黒くする方法として、黒色に着色されたカラーレジスト材料を用いて隔壁を形成する方法を例示することができる。
【0033】
第2の基板上に形成された一対の隔壁と、一対の隔壁によって囲まれた領域内を占める放電維持電極とアドレス電極、蛍光体層(例えば、赤色蛍光体層、緑色蛍光体層及び青色蛍光体層のいずれか1つの蛍光体層)によって1つの放電セルが構成される。そして、かかる放電セル内、より具体的には、隔壁によって囲まれた放電空間内に混合ガスから成る放電ガスが封入されており、蛍光体層は、放電空間内の放電ガス中で生じた交流グロー放電に基づき発生した真空紫外線に照射されて発光する。
【0034】
本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、放電空間に封入された希ガスの圧力は、1×102Pa乃至5×105Pa、好ましくは1×103Pa乃至4×105Paとすることもできる。尚、一対の放電維持電極の間隔を5×10-5m未満とする場合には、放電空間内における希ガスの圧力を1×102Pa以上3×105Pa以下、好ましくは1×103Pa以上2×105Pa以下、更に好ましくは1×104Pa以上1×105Pa以下とすることが望ましく、このような圧力範囲とすることによって、希ガス中で発生した真空紫外線に照射されて蛍光体層が発光するし、このような圧力範囲内では、圧力が高いほど交流駆動型プラズマ表示装置を構成する各種部材のスパッタリング率が低減する結果、交流駆動型プラズマ表示装置を長寿命化することができる。ここで、放電空間に封入される希ガスには、以下の▲1▼〜▲4▼が要求される。尚、希ガスとして、He(共鳴線の波長=58.4nm)、Ne(同74.4nm)、Ar(同107nm)、Kr(同124nm)、Xe(同147nm)を単独で用いるか、又は混合して用いることが可能であるが、ペニング効果による放電開始電圧の低下が期待できる混合ガスが特に有用である。かかる混合ガスとしては、Ne−Ar混合ガス、He−Xe混合ガス、Ne−Xe混合ガス、He−Kr混合ガス、Ne−Kr混合ガス、Xe−Kr混合ガスを挙げることができる。特に、希ガスの中でも最も長い共鳴線波長を有するXeは、分子線の波長172nmにも強い真空紫外線を放射するので、好適な希ガスである。
【0035】
▲1▼ 交流駆動型プラズマ表示装置の長寿命化の観点から、化学的に安定であり、且つ、ガス圧力を高く設定し得ること
▲2▼ 表示画面の高輝度化の観点から、真空紫外線の放射強度が大きいこと
▲3▼ 真空紫外線から可視光線へのエネルギー変換効率を高める観点から、放射される真空紫外線の波長が長いこと
▲4▼ 消費電力低減の観点から、放電開始電圧の低いこと
【0036】
本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、誘電体層を比較的大きな比誘電率を有する材料、即ち、窒素化合物から構成することによって(例えば、スパッタリング法やCVD法にて形成されたSiNX、SiOXNY、Mg3N2、AlN、BCNの比誘電率は、それぞれ、6〜9、4〜9、3〜9、4〜9、3〜8である)、スパッタリング法や蒸着法等で形成されるSiO2から成る誘電体層の容量と比較して、誘電体層の容量を大きくすることができる。しかも、ガラスペーストをスクリーン印刷することによって形成される従来の誘電体層と比較して、誘電体層の膜厚を格段に薄くすることができる。従って、誘電体層の電荷蓄積量を増加させることができるので、交流駆動型プラズマ表示装置の輝度の向上、駆動電力の低減を図ることが可能となる。しかも、誘電体層を窒素化合物から構成することにより、誘電体層として緻密な膜を形成することができ、高耐圧化が可能となるし、異常放電が発生し難くなる。
【0037】
また、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、緻密で均一・均質な誘電体層を設けることによって、イオンや電子と放電維持電極との直接接触を防止することができる結果、放電維持電極の磨耗を防ぐことができる。誘電体層は、壁電荷を蓄積する機能だけでなく、過剰な放電電流を制限する抵抗体としての機能、放電状態を維持するメモリ機能を有する。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、実施の形態と略称する)に基づき本発明を説明する。
【0039】
(実施の形態1)
実施の形態1の交流駆動型プラズマ表示装置(以下、プラズマ表示装置と略称する)は、窒素化合物から成る誘電体層を備え、図1に示した構造を有する3電極型のプラズマ表示装置である。誘電体層14は、より具体的にはSiNX(Xの値は約2)から成り、放電維持電極12上における平均厚さは1μm乃至30μm(より具体的には、例えば6μm)であり、比誘電率は約6.9である。
【0040】
以下、実施の形態1のプラズマ表示装置の製造方法を説明する。
【0041】
第1パネル10は、以下の方法で作製することができる。即ち、先ず、高歪点ガラスやソーダガラスから成る第1の基板11の全面に例えばスパッタリング法によりITO層を形成し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によりITO層をストライプ状にパターニングすることによって、一対の放電維持電極12を、複数、形成する。放電維持電極12は第1の方向に延びている。次に、全面に例えば蒸着法によりクロム膜やアルミニウム膜、銅膜等を形成し、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術によりクロム膜やアルミニウム膜、銅膜等をパターニングすることによって、各放電維持電極12の縁部に沿ってバス電極13を形成する。尚、一対の放電維持電極12の間の間隔を2×10-5m(20μm)とした。
【0042】
その後、全面にSiNXから成る誘電体層14を、高周波マグネトロンスパッタ装置を使用した、以下の表1に例示する条件に基づくスパッタリング法にて形成した。
【0043】
[表1]
ターゲット :Si3N4
プロセスガス:Ar=300sccm
ガス圧力 :0.3Pa
RFパワー :1.5kW
基板温度 :室温
【0044】
尚、以下の表2に例示する条件に基づくプラズマCVD法にて、SiNXから成る誘電体層14を形成することもできる。
【0045】
[表2]
プロセスガス:SiH4/NH3/N2=160/800/2000sccm
ガス圧力 :200Pa
RFパワー :2kW
基板温度 :380゜C
【0046】
次いで、誘電体層14の上に、電子ビーム蒸着法により厚さ0.6μmの酸化マグネシウム(MgO)から成る保護膜15を形成する。以上の工程により第1パネル10を完成することができる。
【0047】
第2パネル20は以下の方法で作製することができる。即ち、先ず、高歪点ガラスやソーダガラスから成る第2の基板21上に例えばスクリーン印刷法により銀ペーストをストライプ状に印刷し、焼成を行うことによって、アドレス電極22を形成する。アドレス電極22は、第1の方向と直交する第2の方向に延びている。次に、スクリーン印刷法により全面に低融点ガラスペースト層を形成し、この低融点ガラスペースト層を焼成することによって誘電体材料層23を形成する。その後、隣り合うアドレス電極22の間の領域の上方の誘電体材料層23上に、例えばスクリーン印刷法により低融点ガラスペーストを印刷し、焼成を行うことによって、隔壁24を形成する。尚、隔壁の平均高さを130μmとした。次に、3原色の蛍光体スラリーを順次印刷し、焼成を行うことによって、隔壁24の間の誘電体材料層23上から隔壁24の側壁面上に亙って、蛍光体層25R,25G,25Bを形成する。以上の工程により第2パネル20を完成することができる。
【0048】
次に、プラズマ表示装置の組み立てを行う。即ち、先ず、例えばスクリーン印刷により、第2パネル20の外周部にフリットガラス層を形成する。次に、第1パネル10と第2パネル20とを貼り合わせ、焼成してフリットガラス層を硬化させる。その後、第1パネル10と第2パネル20との間に形成された空間を排気した後、例えばNe−Xe混合ガスを封入し、かかる空間を封止し、プラズマ表示装置を完成させる。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、誘電体層14を、平均厚さ6μm、比誘電率約5のSiOXNY(X及びYの値は約1)から構成した。
【0050】
このような誘電体層14は、以下の表3に例示する条件に基づくスパッタリング法にて形成することができ、あるいは又、以下の表4に例示する条件に基づくプラズマCVD法にて形成することもできる。
【0051】
[表3]
ターゲット :SiO2
プロセスガス:N2=300sccm
ガス圧力 :0.3Pa
RFパワー :1.5kW
基板温度 :室温
【0052】
[表4]
プロセスガス:SiH4/N2O/N2=200/600/1200sccm
ガス圧力 :150Pa
RFパワー :2kW
基板温度 :380゜C
【0053】
こうして得られたプラズマ表示装置の輝度測定を行った。併せて、全面に、厚さ20μmのガラスペースト(比誘電率:約13)から成る誘電体層14をスクリーン印刷法にて形成することによって得られたプラズマ表示装置(比較例のプラズマ表示装置と呼ぶ)の輝度測定を行った。その結果、実施の形態1及び実施の形態2にて得られたプラズマ表示装置は、比較例のプラズマ表示装置と比べて、輝度の向上、放電電圧の低下が認められた。
【0054】
また、実施の形態1及び実施の形態2において、誘電体層14の平均厚さを25μm,10μm,7μmとし、一対の放電維持電極12の間の間隔を20μmとしたプラズマ表示装置を作製し、輝度測定を行ったところ、誘電体層の厚さが薄くなるに従い、輝度の向上が認められた。しかも、異常放電は観察されなかった。一方、全面に、平均厚さ25μm,10μm,7μmのガラスペースト(比誘電率:約13)から成る誘電体層14をスクリーン印刷法にて形成することによって得られたプラズマ表示装置(一対の放電維持電極12の間の間隔を20μmとした)にあっては、プラズマ表示装置において異常放電が観察されたものがあり、特に、7μmの膜厚の誘電体層を有するプラズマ表示装置にあっては異常放電が多数観察された。
【0055】
更には、実施の形態1及び実施の形態2において、一対の放電維持電極12の間の間隔を100μm,40μm,20μmとし、誘電体層14の平均厚さを10μmとしたプラズマ表示装置を作製し、放電電圧測定を行ったところ、一対の放電維持電極12の間の間隔が狭くなる程、プラズマ表示装置の放電電圧が低下することが判った。しかも、全てのプラズマ表示装置において異常放電は観察されなかった。一方、全面にガラスペースト(比誘電率:約13)から成る誘電体層14をスクリーン印刷法にて形成することによって得られたプラズマ表示装置(一対の放電維持電極12の間の間隔を100μm,40μm,20μmとし、誘電体層14の平均厚さを10μmとした)にあっては、プラズマ表示装置において異常放電が観察されたものがあった。
【0056】
(実施の形態3)
実施の形態3は実施の形態1の変形である。実施の形態3においては、SiNXの代わりに、全面にMg3N2から成る誘電体層14を、高周波マグネトロンスパッタ装置を使用し、以下の表5に例示する条件に基づくスパッタリング法にて形成した。尚、放電維持電極12上における誘電体層14の平均厚さを6μmとした。また、得られたMg3N2の比誘電率は約7である。
【0057】
[表5]
ターゲット :Mg3N2
プロセスガス:Ar=240sccm
ガス圧力 :0.3Pa
RFパワー :900W
基板温度 :室温
【0058】
(実施の形態4)
実施の形態4も実施の形態1の変形である。実施の形態4においては、SiNXの代わりに、全面にAlNから成る誘電体層14を、高周波マグネトロンスパッタ装置を使用し、以下の表6に例示する条件に基づくスパッタリング法にて形成した。尚、放電維持電極12上における誘電体層14の平均厚さを6μmとした。また、得られたAlNの比誘電率は約7である。
【0059】
[表6]
ターゲット :AlN
プロセスガス:Ar=240sccm
ガス圧力 :0.3Pa
RFパワー :900W
基板温度 :室温
【0060】
(実施の形態5)
実施の形態5も実施の形態1の変形である。実施の形態5においては、SiNXの代わりに、全面にBCNから成る誘電体層14を、高周波マグネトロンスパッタ装置を使用し、以下の表7に例示する条件に基づくスパッタリング法にて形成した。尚、放電維持電極12上における誘電体層14の平均厚さを6μmとした。また、得られたBCNの比誘電率は約6である。
【0061】
[表7]
ターゲット :BCN
プロセスガス:Ar=240sccm
ガス圧力 :0.3Pa
RFパワー :900W
基板温度 :室温
【0062】
実施の形態3〜実施の形態5にて得られたプラズマ表示装置にあっても、比較例のプラズマ表示装置と比べて、輝度の向上、放電電圧の低下が認められた。また、実施の形態3〜実施の形態5において、誘電体層14の平均厚さを25μm,10μm,7μmとし、一対の放電維持電極12の間の間隔を20μmとしたプラズマ表示装置を作製し、輝度測定を行ったところ、誘電体層の厚さが薄くなるに従い、輝度の向上が認められた。しかも、異常放電は観察されなかった。更には、実施の形態3〜実施の形態5において、一対の放電維持電極12の間の間隔を100μm,40μm,20μmとし、誘電体層14の平均厚さを10μmとしたプラズマ表示装置を作製し、放電電圧測定を行ったところ、一対の放電維持電極12の間の間隔が狭くなる程、放電電圧が低下することが判った。しかも、全てのプラズマ表示装置において異常放電は観察されなかった。
【0063】
以上、本発明を、実施の形態に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施の形態にて説明したプラズマ表示装置の構造や構成、使用した材料、寸法、製造方法等は例示であり、適宜変更することができるし、実施の形態における誘電体層の形成方法は例示であり、適宜変更することができる。
【0064】
蛍光体層の発光が第2の基板を通して観察される透過型のプラズマ表示装置の本発明を適用することができる。実施の形態においては、平行に延びる一対の放電維持電極からプラズマ表示装置を構成したが、その代わりに、一対のバス電極が第1の方向に延び、一対のバス電極の間で、一方のバス電極から一方の放電維持電極が他方のバス電極の手前まで、第2の方向に延び、他方のバス電極から他方の放電維持電極が一方のバス電極の手前まで、第2の方向に延びる構造とすることもできる。一対の放電維持電極の内、第1の方向に延びる一方の放電維持電極を第1の基板に設け、他方の放電維持電極をアドレス電極と平行に、隔壁の側壁上部に形成する構造としてもよい。また、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置を2電極型のプラズマ表示装置としてもよい。更には、アドレス電極を第1の基板に形成してもよい。このような構造の交流駆動型プラズマ表示装置は、例えば、第1の方向に延びる一対の放電維持電極、及び、一対の放電維持電極の一方の近傍に、一対の放電維持電極の一方に沿って設けられたアドレス電極(但し、一対の放電維持電極の一方に沿ったアドレス電極の長さを放電セルの第1の方向に沿った長さ以内とする)から構成することができる。尚、放電維持電極と短絡しないように、絶縁層を介して第2の方向に延びるアドレス電極用配線を設け、かかるアドレス電極用配線とアドレス電極とを電気的に接続し、あるいは又、アドレス電極用配線からアドレス電極が延在する構造とする。
【0065】
また、実施の形態においては、一対の放電維持電極の対向する縁部の間のギャップ形状を直線状としたが、一対の放電維持電極の対向する縁部の間のギャップ形状を、放電維持電極の幅方向に屈曲したパターン若しくは湾曲したパターン(例えば、「く」の字の組合せ、「S」字の組合せや弧の組合せ等、任意の曲線の組合せ)とすることもできる。このような構成にすることによって、一対の放電維持電極の対向する縁部の長さを長くすることができ、放電効率の向上を期することができる。このような構造を有する一対の放電維持電極の模式的な部分的平面図を、図2の(A)、(B)、(C)に示す。
【0066】
本発明のプラズマ表示装置の交流グロー放電動作の一例を説明する。先ず、例えば、全ての一方の放電維持電極12に、放電開始電圧Vbdよりも高いパルス電圧を短時間印加する。これによってグロー放電が生じ、一方の放電維持電極の近傍の誘電体層14の表面に誘電分極に起因して壁電荷が発生し、壁電荷が蓄積し、見掛けの放電開始電圧が低下する。その後、アドレス電極22に電圧を印加しながら、表示をさせない放電セルに含まれる一方の放電維持電極12に電圧を印加することによって、アドレス電極22と一方の放電維持電極12との間にグロー放電を生じさせ、蓄積された壁電荷を消去する。この消去放電を各アドレス電極22において順次実行する。一方、表示をさせる放電セルに含まれる一方の放電維持電極には電圧を印加しない。これによって、壁電荷の蓄積を維持する。その後、全ての一対の放電維持電極12間に所定のパルス電圧を印加することによって、壁電荷が蓄積されていたセルにおいては一対の放電維持電極12の間でグロー放電が開始し、放電セルにおいては、放電空間内における放電ガス中でのグロー放電に基づき発生した真空紫外線の照射によって励起された蛍光体層が、蛍光体材料の種類に応じた特有の発光色を呈する。尚、一方の放電維持電極と他方の放電維持電極に印加される放電維持電圧の位相は半周期ずれており、放電維持電極の極性は交流の周波数に応じて反転する。
【0067】
あるいは又、本発明のプラズマ表示装置の交流グロー放電動作を、以下のとおりとすることもできる。先ず、全画素を初期化するために全画素に対して消去放電を行い、次いで、放電動作を行う。放電動作は、初期放電によって誘電体層の表面に壁電荷を発生させるアドレス期間と、グロー放電を維持する放電維持期間とに分けて行われる。アドレス期間では、選択された一方の放電維持電極と選択されたアドレス電極に、放電開始電圧Vbdよりも低いパルス電圧を短時間印加する。パルス電圧が印加された一方の放電維持電極とアドレス電極との重複領域が表示画素として選択され、この重複領域において誘電体層の表面に誘電分極に起因して壁電荷が発生し、壁電荷が蓄積される。続く放電維持期間では、対になった放電維持電極にVbdよりも低い放電維持電圧Vsusを印加する。壁電荷が誘起する壁電圧Vwと放電維持電圧Vsusとの和が放電開始電圧Vbdよりも大きくなれば(即ち、Vw+Vsus>Vbd)、グロー放電が開始される。一方の放電維持電極と他方の放電維持電極に印加される放電維持電圧Vsusの位相は半周期ずれており、放電維持電極の極性は交流の周波数に応じて反転する。
【0068】
【発明の効果】
本発明の交流駆動型プラズマ表示装置においては、スパッタリング法や蒸着法等でSiO2から成る誘電体層を形成する場合と比較して比誘電率の高い材料から誘電体層が構成されているので、誘電体層の容量を大きくすることができる。その結果、電荷蓄積量を増加させることができ、駆動電力、即ち、消費電力の低減が可能となるばかりか、交流駆動型プラズマ表示装置の輝度の向上を図ることができる。また、誘電体層の密度が高く、均一・均質であるが故に、異常放電や電荷の異常分布が生じ難く、放電安定性が向上するので、交流駆動型プラズマ表示装置の信頼性が高くなるし、輝度の向上を図ることができる。また、緻密な(即ち、高密度の)誘電体層を得ることができるので、耐圧の向上、その下に存在する放電維持電極の損傷発生の防止が可能となる。更には、ガラスペーストをスクリーン印刷することによって形成される従来の誘電体層と比較して、充分に薄い誘電体層を形成することができるが故に、一対の放電維持電極の間の距離を短くすることができるし、輝度の向上を図ることができる。
【0069】
即ち、一対の放電維持電極の間の距離を1×10-4m以下、好ましくは5×10-5m未満、一層好ましくは5.0×10-5m未満、更に一層好ましくは2×10-5m以下とすることが可能となり、駆動電力を、一対の放電維持電極の間の距離が100μmを超える従来の交流駆動型プラズマ表示装置と比べて、低減することができる。それ故、交流駆動型プラズマ表示装置の駆動回路の負担を少なくすることができるばかりか、放電の安定性も向上する。更には、駆動電力を従来の交流駆動型プラズマ表示装置と同等若しくは従来に近い大きさとするときには、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置の発光輝度を高めることができる。一方、従来と同等の駆動電力とするときには、本発明の交流駆動型プラズマ表示装置の明るさを高めることができる。しかも、高精細度、高密度表示を達成でき、あるいは又、蛍光体層の面積増加に伴う輝度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3電極型の交流駆動型プラズマ表示装置の一般的な構成例を概念的に示す一部分解斜視図である。
【図2】本発明のプラズマ表示装置において、一対の放電維持電極の対向する縁部の間のギャップ形状を、放電維持電極の幅方向に屈曲したパターン若しくは湾曲したパターンとしたときの、一対の放電維持電極の模式的な部分的平面図である。
【符号の説明】
10・・・第1パネル、11・・・第1の基板、12・・・放電維持電極、13・・・バス電極、14・・・誘電体層、15・・・保護膜、20・・・第2パネル、21・・・第2の基板、22・・・アドレス電極、23・・・誘電体材料層、24・・・隔壁、25,25R,25G,25B・・・蛍光体層
Claims (8)
- 第1の基板上に形成された放電維持電極、及び、第1の基板と放電維持電極の上に形成された誘電体層を備えた第1パネル、並びに、第2パネルが、それらの外周部で接合されて成る交流駆動型プラズマ表示装置であって、
該誘電体層は、Mg 3 N 2 から成ることを特徴とする交流駆動型プラズマ表示装置。 - 第1の基板上に形成された放電維持電極、及び、第1の基板と放電維持電極の上に形成された誘電体層を備えた第1パネル、並びに、第2パネルが、それらの外周部で接合されて成る交流駆動型プラズマ表示装置であって、
該誘電体層は、BCNから成ることを特徴とする交流駆動型プラズマ表示装置。 - 誘電体層の厚さは、1.0×10-6m乃至3.0×10-5mであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
- 誘電体層の厚さは、1.0×10-6m乃至1.5×10-5mであることを特徴とする請求項3に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
- 誘電体層の厚さは、1.0×10-6m乃至1.0×10-5mであることを特徴とする請求項4に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
- 第1パネルに形成された放電維持電極は一対で作動し、該一対の放電維持電極の間の間隔は1×10-4m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
- 一対の放電維持電極の間の間隔は5×10-5m未満であることを特徴とする請求項6に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
- 一対の放電維持電極の間の間隔は2×10-5m以下であることを特徴とする請求項7に記載の交流駆動型プラズマ表示装置。
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