JP4056023B2 - 高圧燃料噴射管の製造方法および高圧燃料噴射管 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はディーゼル内燃機関にあって、燃料供給路としてシリンダーヘッド側のそれぞれノズルホルダーと燃料ポンプ側とに接続して配置される管径20mm程度以下の比較的細径からなる高圧燃料噴射管や蓄圧式燃料噴射システムにおけるコモンレールからのフィードパイプ等(以下単に高圧燃料噴射管という)の製造方法および高圧燃料噴射管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のディーゼル内燃機関用高圧燃料噴射管材としては、本出願人が所有する特公平1−46712号公報が知られている。この公報記載の高圧燃料噴射管材は、厚肉の鋼管からなる外管に、内側に流通路が形成されたステンレス鋼管からなる薄肉の内管を内挿して、両管に同時かつ一体的な空引きによる伸管加工を施して内外管を圧嵌して二重金属管を構成したものであり、この際内管の肉厚を二重金属管材全体の外径に対し、1.2ないし8.5%としたものである。
【0003】
そしてこの公報記載の高圧燃料噴射管材は、NOxの低減や黒煙対策の1つとして噴射時間1〜2ミリ秒、流速が最大で50m/sec、内圧600〜1000bar(ピーク圧)という現在の燃料の噴射圧の高圧化に対応した条件で動作させても、内周面におけるキャビテーション・エロージョンの発生が防止できるのみならず、繰り返し高圧疲労に対する耐久性もほぼ満足できるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
さて実際の使用条件下では、燃料供給路としてシリンダーヘッド側と燃料ポンプ側とのそれぞれノズルホルダーに接続して配置するためには前記した高圧燃料噴射管材の管端部に截頭円錐状、円弧状、または算盤球状の接続頭部をプレス加工などにより成形する必要がある。
【0005】
しかしながら前記公報記載の高圧燃料噴射管材に、プレス加工などにより接続頭部成形を実施すると該接続頭部の内周面に位置する内管に、該内管が外管に比べて極めて硬度が高く、またプレス加工により成形される接続頭部の形状が特殊であるという原因と推察される座屈が生じる場合があった。
【0006】
本出願人はこのような内管の座屈現象の発生を防止するため、特願平9−218162号に記載したような高圧燃料噴射管の製造方法を提案した。この出願により得られた高圧燃料噴射管は、前記内管の座屈を効果的に防止できるのみならず、上記した燃料噴射条件下では優れた耐キャビテーション・エロージョン性能を有するものであったが、例えば管内ピーク圧が1200barを超えかつ負圧を含みキャビテーションが発生する過酷で特殊な噴射条件下では繰返し高圧疲労による破壊が発生することがあった。
【0007】
このような破壊の原因は、エンジンの振動や外部振動、高圧燃料噴射管の材質、製造過程や後工程において加わる残留応力、内周面の清浄度など各種の要因が考えられるが、本発明者は残留圧縮応力に着目した。すなわち内管に予め芯引きによる伸管加工で発生した残留圧縮応力が、外管に内管を内挿せしめ空引きによる伸管加工によって圧嵌して両管を同時かつ一体的に縮径されて二重金属管が形成される際に、該伸管加工を実施するダイスを出た直後に前記二重金属管に復元力が働いて解放されてしまい、かえって前記内管の内周面側に引張応力が残留し、この残留引張応力により内圧繰返し疲労強度が本来有している内管の材料強度に比べ低下することによるものと判断した。
【0008】
したがって本発明は、上記燃料噴射条件より過酷な1200barを超えかつ負圧を含みキャビテーションが発生する噴射条件の下でも前記出願において問題となった内圧繰返し疲労強度を向上するとともに、その内周面において十分な耐キャビテーション・エロージョン性能を発揮し得る高圧燃料噴射管の製造方法および高圧燃料噴射管を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、厚肉の鋼管からなる外管と、該外管に内挿された硬度(Hv)を400〜550とした薄肉の鋼管からなる内管とから構成された二重金属管による高圧燃料噴射管において、前記内管の内周面側に前記残留引張応力を発生させることなく、残留圧縮応力を解放することなく存在させておくことにより内圧繰返し疲労強度を向上できることを見出だし本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち上記目的を達成するため本発明の第1の実施態様は、厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を内挿せしめ伸管加工を実施して二重金属管を形成する方法において、前記内管を製品寸法まで芯引きによる伸管加工によって縮径して、該内管の内周面側に残留圧縮応力を発生せしめ、ついで該内管を外管内に内挿し、空引きによる伸管加工によって前記外管のみを縮径せしめ該外管の内周面を前記内管の外周面に少なくとも密着せしめた高圧燃料噴射管の製造方法を特徴とし、さらに前記内管はばね調質された鋼管からなり、そして前記内管の硬度(Hv)を400〜550とし、さらにまた前記硬度を有する内管の内周面にSn、In、Al、Pbより選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層をさらに形成することが好ましい。
【0011】
また本発明の第2の実施態様は、厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を内挿せしめ伸管加工を実施して二重金属管を形成する方法において、前記内管をほぼ製品寸法まで芯引きによる伸管加工によって縮径して、該内管の内周面側に残留圧縮応力を発生せしめ、ついで該内管を外管内に内挿し、空引きによる伸管加工によって前記外管を縮径せしめるとともに、前記内管を僅かに縮径して前記外管の内周面を該内管の外周面に少なくとも密着せしめた高圧燃料噴射管の製造方法を特徴とし、さらに前記内管はばね調質された鋼管からなり、そして前記内管の硬度(Hv)を400〜550とし、さらにまた前記内管の内周面にSn、In、Al、Pbより選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層をさらに形成することが好ましい。
【0012】
さらに本発明の第3の実施態様は、厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を嵌合して形成した二重金属管において、前記内管の内周面側に圧縮残留応力が存在している高圧燃料噴射管を特徴とし、また前記内管はばね調質された鋼管からなり、そして前記内管の硬度(Hv)を400〜550とし、またさらに前記内管の内周面にSn、In、Al、Pbおよびこれら基合金からなる軟質金属のめっき層をさらに有することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明すれば、図1は本発明の高圧燃料噴射管を示す図で、(a)は一実施例の縦断側面図、(b)は他の実施例の一部切欠による側面図、図2は本発明のその製造方法を示す図で、(a)は内管の伸管加工を示す部分概略説明図、(b)は内管と外管を重合する伸管加工を示す部分概略説明図であって、1は管径20mm以下の比較的厚肉で細径の内径を有する高圧配管用鋼管で、例えばSTS 370、410、480、あるいはDIN St 52などの炭素鋼や合金鋼などから形成された単層または多重巻管からなる外管であり、例えば220〜240の硬度(Hv)を有するものである。
【0014】
また3は前記外管1の内側に位置するよう密着ないし僅かに圧接されて内部に流通路を形成する該外管より硬質、好ましくは400〜550の硬度(Hv)を有する鋼管からなる内管であって、例えば加工硬化され、かつ/またはばね調質されたSUS 301、SUS 304などのような主としてオーステナイト系ステンレス鋼管などから形成されたものである。前記内管3の硬度(Hv)を400〜550とした理由は、400未満では燃料噴射管に用いる高圧燃料に対する耐キャビテーション・エロージョン性能が得られず、一方550を超えると硬度が高すぎて接続頭部成形時に接続端部の内周面における内管に座屈が発生する可能性が大となるからである。
【0015】
そして前記外管1に該内管3を内挿した後、伸管加工により二重金属管からなる噴射管材を形成するが、この際、形成された二重金属管の外径に対する内管3の肉厚の割合は、前記特公平1−46712号公報記載と同様に1.2〜8.5%が好ましいが、内管の肉厚をこの割合より厚くすることもできる。
なおばね調質されたオーステナイト系ステンレス鋼管を内管として用いることもできる。
【0016】
つぎに上記のように構成される二重金属管からなる高圧燃料噴射管の製造方法を図2に基づいて説明する。
まず図2(a)に図示するように内管3は予めプラグ6とダイス7を用いて2〜4回芯引きによる伸管加工によって製品寸法の肉厚またはほぼ製品寸法に近い肉厚まで縮径され、該芯引きによる伸管加工により加工硬化するとともに内周面側に残留圧縮応力が付与される。
【0017】
つぎに上記のように芯引きによる伸管加工された内管3を外管1内に間隙をおいて内挿し、図2(b)に示すようにダイス8を用いて少なくとも1回空引きによる伸管加工することにより該外管1を縮径し、内挿した内管3の外周面にその内周面を密着ないし僅かに圧接する。
この際内管3は図2(b)のように前記した製品寸法の肉厚のまま、もしくは外管1の縮径とともに僅かに縮径するよう伸管加工される必要がある。
その理由は前工程における2〜4回の芯引きによる伸管加工によって内周面側に付与された残留圧縮応力が解放することを防止することであり、製品寸法の肉厚のままであれば当然前記解放を防止できるが、本発明者は僅かな縮径でも前記解放を著しく低減することを見出した。
【0018】
すなわち外管とともに内管をダイスを用いて空引きにより伸管加工をする際に、内管の断面減少率(リダクション)が10%を超えると内管の内周面側に付与された残留圧縮応力が顕著に解放され、結果として前記した管内ピーク圧が1200barを超えかつ負圧を含みキャビテーションが発生する過酷で特殊な噴射条件下では繰返し高圧疲労による破壊の発生率が急上昇することが分かった。したがって内管は縮径しないことが好ましいが、その断面減少率を10%以下、好ましくは5%以下にすることにより繰返し高圧疲労による破壊の発生率を大幅に減少させることができる。
なお空引きによる伸管加工の際には、内管3の内周面が塑性変形せずに僅かに弾性変形する程度に外管1の内周面により内管3の外周面を圧縮することが好ましい。
【0019】
このようにして形成された二重金属管の内管の内周面に、さらにSn、In、Al、Pbより選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層を形成したり、または製品寸法あるいはほぼ製品寸法にまで芯引きによる伸管加工によって縮径された内管の内周面にSn、In、Al、Pbより選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層を形成した後、前記のようにして二重金属管を形成することが好ましい。
前記内管の内周面に軟質金属によるめっき層を施した理由は、該軟質金属によるめっき層によって、管内ピーク圧が1200barを超えかつ負圧を含む過酷で特殊な噴射条件下で発生するキャビテーションによる衝撃エネルギーが、前記軟質金属による1種のクッション作用によって減衰され高い衝撃エネルギーのピークが二重金属管の母材自体に伝えられないからである。特に本発明では内管に外管より硬質の鋼管を用いたため、この硬質の鋼管による前記した効果と相俟ってキャビテーションの衝撃エネルギーのピークを減衰してキャビテーション・エロージョンの発生を効果的に防止することができるのである。
なお前記軟質金属のめっき層を予め内管の内周面に形成しておいたとしても、空引きによる伸管加工による前記外管の縮径によっても前記内管は縮径しないか、あるいは殆ど縮径しないため該内管には加工硬化が見られず、したがってめっき層も軟質状態を保持するため前記効果を奏することができるのである。また前記めっき層は溶融めっき法、電気めっき法あるいは化学めっき法など従来公知のめっき法を使用して施すことができ、まためっき層の層厚を5μm〜150μmとすることが好ましい。前記層厚が5μm未満では前記衝撃エネルギーに対する減衰効果が十分でなく、一方150μmを超えると後工程で施される曲げ加工や、頭部成形加工時にめっき層が剥離する可能性があるので上記の範囲とすることが好ましい。
【0020】
上記のように形成された二重金属管からなる高圧燃料噴射管は、ついで割型チャックによりチャックされてパンチ部材を用いてプレス加工により図1(a)のような截頭円錐状、円弧状、図1(b)のような算盤珠状の接続頭部2が成形され、通常その後にディーゼル内燃機関付近に配管するために曲げ加工が施される。
【0021】
なお図1において、4は必要に応じ接続頭部2の首下部に嵌合したスリーブワッシャーであり、同時にその背後に接続頭部2の押圧座面2′を相手部材の受圧座面へ当接した状態で該相手部材に螺合する締付けナット5を組込んでなるものである。
【0022】
【実施例】
つぎに本発明の実施例を比較例とともに以下に説明する。
実施例1
清浄化のための前処理を施して長さ3200mmに切断したSUS 301からなるステンレス鋼管の内管を3回の芯引きによる伸管加工によって、外径3.5mm、内径2.5mm、肉厚0.5mmで、硬度(Hv)が470になるよう縮径し、ついで清浄化のための前処理を施した長さ3200mmのSTS 370の鋼管からなり、かつ硬度(Hv)が110の外管(外径12mm、内径7.2mm、肉厚2.4mm)の内部に前記内管を緩やかに内挿せしめた。その後固定したダイスを用いて空引きによる伸管加工を1回行って外管側を縮径せしめ、ついで矯正加工して外径8.0mm、内径2.5mm、肉厚2.75mmで、内管の硬度(Hv)が475、外管の硬度(Hv)が230に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0023】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材を、ディーゼル機関用燃料噴射ポンプおよびインジェクターを使用して、該ポンプとインジェクターの間に配設し、燃料噴射ポンプを駆動して管内ピーク圧が1250barでかつ負圧を含まない噴射条件で内圧繰返し疲労強度試験を行なった。
その結果得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0024】
実施例2
内管として実施例1と同一寸法で同一材質のステンレス鋼管を硬度(Hv)が440となるよう3回の芯引きによる伸管加工により縮径した。
ついで実施例1と同様の寸法と材質の外管内部に前記内管を緩やかに内挿せしめて外管とともに内管を僅かに縮径するようダイスを用いて空引きにより伸管加工を行い、その後矯正加工して外径8.0mm、内径2.4mm、肉厚2.8mm(断面減少率:約3%)で、内管の硬度(Hv)が465、外管の硬度(Hv)が230に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0025】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について実施例1と同様の内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0026】
実施例3
内管として長さを1000mmに切断した以外は実施例1と同一寸法で同一材質のステンレス鋼管と、同じく長さを1000mmに切断した以外は実施例1と同様の寸法と材質の外管とを使用して、実施例1と同様な手順で二重金属管からなる噴射管材を得た。ついで得られた噴射管材を温度430℃に保持したPb浴に浸漬した後、外周面をガスワイピングして該噴射管材の内管の内周面にPbの溶融めっき層を150μm形成し、しかる後300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0027】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について実施例1と同様の内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0028】
比較例1
それぞれ清浄化のための前処理を施して長さ3200mmに切断したSUS 301の鋼管からなるステンレス鋼管の内管を3回の芯引きによる伸管加工によって、外径4.8mm、内径3.8mm、肉厚0.5mmで、硬度(Hv)が200になるよう縮径し、ついで清浄化のための前処理を施した長さ3200mmのSTS 370の鋼管からなり、かつ硬度(Hv)が110の外管(外径12mm、内径6.9mm、肉厚2.55mm)の内部に前記内管を緩やかに内挿せしめた。その後固定したダイスを用いて前記内外管を圧嵌するよう両管を同時にかつ一体的に空引きによる伸管加工を1回行って縮径せしめ、ついで矯正加工して外径8.0mm、内径2.5mm、肉厚2.75mm(断面減少率:約30%)で、内管の硬度(Hv)が490、外管の硬度(Hv)が230に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0029】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について、実施例1と同様にして内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた試料について圧力繰返しにより疲労破壊が生じたものが見られた。
【0030】
比較例2
比較例1と同様の寸法と材質の内管と外管を用いて、比較例1と同様に両管を同時に、かつ一体的に空引きによる伸管加工を1回行って縮径せしめ、ついで矯正加工して噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。ただし内径は2.4mm(断面減少率:約32%)とした。
【0031】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について、実施例1と同様にして内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた試料について圧力繰返しにより疲労破壊が生じたものが見られた。
【0032】
実施例4
内管として実施例1と同一の寸法であるがSUS 304からなるステンレス鋼管を、硬度(Hv)が420となるよう3回の芯引きによる伸管加工により縮径した。
一方実施例1と同様の寸法であるがSTS 410の鋼管からなり、かつ硬度(Hv)が125の外管の内部に前記内管を緩やかに内挿せしめた。その後固定したダイスを用いて空引きによる伸管加工を1回行って外管側を縮径せしめ、ついで矯正加工して外径8.0mm、内径2.5mm、肉厚2.75mmで、内管の硬度(Hv)が425、外管の硬度(Hv)が240に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0033】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について実施例1と同様の内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0034】
実施例5
内管として実施例4と同一寸法で同一材質のステンレス鋼管を硬度(Hv)が400となるよう3回の芯引きによる伸管加工により縮径した。
ついで実施例4と同様の寸法と材質の外管内部に前記内管を緩やかに内挿せしめて外管とともに内管を僅かに縮径するようダイスを用いて空引きにより伸管加工を行い、その後矯正加工して外径8.0mm、内径2.4mm、肉厚2.8mm(断面減少率:約3%)で、内管の硬度(Hv)が425、外管の硬度(Hv)が240に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0035】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について実施例1と同様の内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0036】
実施例6
内管として長さを1000mmに切断した以外は実施例4と同一寸法で同一材質のステンレス鋼管に対して、硫酸第一錫(43g/リットル)、硫酸(100g/リットル)、および光沢剤とレベラー(50ミリリットル/リットル)の組成からなる浴中において、樹脂製で短寸のプロテクターを軸方向に間隔を保持して複数個設けた線状の不溶性陽極を前記内管に挿入し、Sn板を陰極として直流電圧3A/dm2、浴温18℃の条件下で電気めっき処理を施して内管の内周面に厚さ18μmのSnめっき層を形成し、しかる後同じく長さを1000mmに切断した以外は実施例4と同様の寸法と材質の外管とを使用して、実施例4と同様な手順で二重金属管からなる噴射管材を得、ついで得られた噴射管材を300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0037】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について実施例1と同様の内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた全ての試料について107回の圧力繰返し終了まで破壊には至らなかった。
【0038】
比較例3
内管として比較例1と同一の寸法であるがSUS 304からなるステンレス鋼管を、硬度(Hv)が340となるよう3回の芯引きによる伸管加工により縮径した。
一方比較例1と同様の寸法であるがSTS 410の鋼管からなり、かつ硬度(Hv)が125の外管の内部に前記内管を緩やかに内挿せしめた。その後固定したダイスを用いて前記内外管を圧嵌するよう両管を同時かつ一体的に空引きによる伸管加工を2回行って縮径せしめ、ついで矯正加工して外径8.0mm、内径2.5mm、肉厚2.75mmで、内管の硬度(Hv)が430、外管の硬度(Hv)が240に加工硬化した二重金属管からなる噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。
【0039】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について、実施例1と同様にして内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた試料について圧力繰返しにより疲労破壊が生じたものが見られた。
【0040】
比較例4
比較例3と同様の寸法と材質の内管と外管を用いて、比較例3と同様に両管を同時に、かつ一体的に空引きによる伸管加工を1回行って縮径せしめ(断面減少率:約32%)、ついで矯正加工して噴射管材を得、しかる後に300mmの長さに切断した試料を20本準備した。ただし肉厚は2.8mmとした。
【0041】
このように準備した20本の二重金属管からなる噴射管材について、実施例1と同様にして内圧繰返し疲労強度試験を行なった結果、得られた試料について圧力繰返しにより疲労破壊が生じたものが見られた。
【0042】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、内圧600〜1000bar(ピーク圧)という現在の燃料噴射条件より過酷な管内ピーク圧が1200barを超えかつ負圧を含みキャビテーションが発生する特殊な噴射条件の下でも内圧繰返し疲労強度を向上することができるとともに、その内周面において十分な耐キャビテーション・エロージョン性能を発揮し得る高圧燃料噴射管の製造方法および高圧燃料噴射管を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高圧燃料噴射管を示す図で、(a)は一実施例の縦断側面図、(b)は他の実施例の一部切欠による側面図である。
【図2】本発明のその製造方法を示す図で、(a)は内管の伸管加工を示す部分概略説明図、(b)は内管と外管を重合する伸管加工を示す部分概略説明図である。
【符号の説明】
1 外管
2 接続頭部
2′ 押圧座面
3 内管
4 スリーブワッシャー
5 締付けナット
6 プラグ
7、8 ダイス
Claims (9)
- 厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を内挿せしめ伸管加工を実施して二重金属管を形成する方法において、前記内管を製品寸法まで芯引きによる伸管加工によって縮径して、該内管の内周面側に残留圧縮応力を発生せしめ、ついで該内管を外管内に内挿し、空引きによる伸管加工によって前記外管のみを縮径せしめ該外管の内周面を前記内管の外周面に少なくとも密着せしめたことを特徴とする高圧燃料噴射管の製造方法。
- 厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を内挿せしめ伸管加工を実施して二重金属管を形成する方法において、前記内管をほぼ製品寸法まで芯引きによる伸管加工によって縮径して、該内管の内周面側に残留圧縮応力を発生せしめ、ついで該内管を外管内に内挿し、空引きによる伸管加工によって前記外管を縮径せしめるとともに、前記内管を僅かに縮径して前記外管の内周面を該内管の外周面に少なくとも密着せしめたことを特徴とする高圧燃料噴射管の製造方法。
- 前記内管はばね調質された鋼管からなることを特徴とする請求項1または2記載の高圧燃料噴射管の製造方法。
- 前記内管の硬度(Hv)を400〜550としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の高圧燃料噴射管の製造方法。
- 前記外管の内周面を前記内管の内周面に少なくとも密着せしめた後、該内管の内周面にSn、In、Al、Pbから選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層をさらに形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の高圧燃料噴射管の製造方法。
- 前記内管を伸管加工によって縮径した後、該内管の内周面にSn、In、Al、Pbから選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層を形成し、ついで前記外管に内挿することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の高圧燃料噴射管の製造方法。
- 厚肉の鋼管からなる外管に、該外管より硬質の薄肉の鋼管からなる内管を嵌合して形成した二重金属管において、前記内管がばね調質された鋼管からなり、かつ該内管の内周面側に圧縮残留応力が存在していることを特徴とする高圧燃料噴射管。
- 前記内管の硬度(Hv)を400〜550としたことを特徴とする請求項7記載の高圧燃料噴射管。
- 前記内管の内周面にSn、In、Al、Pbから選ばれた少なくとも1種またはこれら基合金からなる軟質金属のめっき層をさらに有することを特徴とする請求項7または8記載の高圧燃料噴射管。
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JP06935898A JP4056023B2 (ja) | 1997-09-30 | 1998-03-04 | 高圧燃料噴射管の製造方法および高圧燃料噴射管 |
Applications Claiming Priority (3)
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---|---|---|---|
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