JP4055894B2 - プレス成形体の成形方法及び成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用フロアカーペット等、車両用吸音材に好適なプレス成形体の成形方法及び成形金型に係り、特に、成形金型の空冷機能を高めることで、成形性を向上させるとともに、成形時間の短縮化を可能にしたプレス成形体の成形方法及び成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、車両用フロアカーペット1の概略構成を示す断面図であり、車両用フロアカーペット1は、カーペット層2の裏面に厚肉のクッション層3が積層一体化されている。
【0003】
カーペット層2としては、基布にパイルをタフティング加工により植設し、パイルの抜け落ちのためのバッキング層(図示せず)を裏打ちしたタフトカーペットや各種繊維パイルをニードルパンチ加工により絡み合わせたニードルパンチカーペットを使用できる。また、クッション層3としては、緩衝性、断熱性、吸音性を備えることが望ましいことから、フエルト、あるいは嵩高性不織布が一般に使用されている。
【0004】
そして、カーペット層2とクッション層3とを一体化して所要形状の車両用フロアカーペット1を成形するためには、図8,図9に示す成形方法が従来から行なわれている。図8を基に成形金型4の構成について説明する。
【0005】
成形金型4は、製品面形状を形成するため所要の型面形状を備えた成形上型5と成形下型6とから大略構成され、成形上型5は、加熱軟化状態の成形材料を冷却するために、チラー管(約5℃の冷却水を循環させる冷却用配管)5aが内部にインサートされており、昇降シリンダ5bにより、所定ストローク上下動可能に構成されている。
【0006】
一方、成形下型6についても、成形材料を冷却するためのチラー管6aが内部にインサートされ、成形下型6内部には、エア充填空間6bが設定されており、外部からの工場エアがこのエア充填空間6bに供給され、成形下型6の複数箇所に開設されているブロー孔6cからエアを製品キャビティ内に吹き込み、成形材料を冷却するという構成である。
【0007】
そして、車両用フロアカーペット1を成形するには、図8に示すように、カーペット層2の原反シートSとクッション層3の原反マットMを図示しない熱風加熱炉において加熱軟化処理して型開き状態にある成形金型4内に投入する。
【0008】
次いで、図9に示すように、成形上型5が昇降シリンダ5bの駆動により所定ストローク下降して、成形上下型5,6の型締めにより、カーペット層2とクッション層3とが一体的に所要形状に賦形されるとともに、このとき、厚肉で冷却効率の劣るクッション層3については、成形下型6のエア充填空間6bから冷却用のエアをブロー孔6cを通じてクッション層3の内部に送り込んで冷却時間の短縮化を図るようにしているのが実情である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のプレス成形体(車両用フロアカーペット)1の成形方法は、成形金型4に空冷機構を付設し、成形上下型5,6で加熱軟化状態にある成形材料を冷却すると同時に、工場エアを成形材料内に吹き込んで、冷却時間の短縮化を図るようにしているが、実際の工場サイドでは、夏場においてエア温度が40℃近い高温まで上昇するため、冷却効率が低下するきらいがある。
【0010】
冷却効率が低下した場合、プレス成形体の冷却不足が原因となり、成形品にブカツキ等の成形不良が発生するため、冷風設備を導入して、冷却用エアのエア温度を環境温度に左右されることなく一定に維持するか、あるいは空冷時間を長く設定して、成形材料を充分に冷却させることが考えられる。
【0011】
しかし、新たな冷風設備を導入する場合には、成形金型の設備費の高騰化を招くとともに、空冷時間を長引かせた場合には、成形時間の長期化によるタクト延長で生産能率を低下させるという問題点がある。
【0012】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、熱可塑性バインダを含有する原反シート、あるいは原反マットを加熱軟化処理後、プレス成形金型で所要形状に成形するプレス成形体の成形方法及び成形金型において、設備費をそれ程かけることなく、空冷機構を改善することで、プレス成形体の成形性を高め、成形時間を短縮化できるプレス成形体の成形方法及び成形金型を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス成形方法は、熱可塑性バインダを内部に含む原反材料を加熱軟化処理した後、チラー管をインサートした成形上下型の型締めにより、プレス成形体を所要形状に成形するとともに、少なくとも一方側の成形型のブロー孔を通じてエアを成形材料内に吹き込むことで冷却サイクルを速めたプレス成形体の成形方法において、前記一方側の成形型のチラー管の近接位置に外部エアを導入するエア管が設定され、該エア管内のエアをチラー管により冷却し、冷却されたエアを一方側の成形型内部のエア充填空間部に貯留し、各ブロー孔から強制冷却されたエアを成形材料内に吹き込むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るプレス成形体の成形方法に使用するプレス成形金型は、熱可塑性バインダを含有する原反材料を加熱軟化処理した後、所要形状にプレス成形するプレス成形体の成形金型において、前記成形金型は、チラー管を内部にインサートした相互に型締め並びに型開き可能な成形上下型から構成され、少なくとも一方側の成形型には、内部のエア充填空間部からブロー孔を通じて成形材料内にエアを吹き込むことができる空冷機構を備えるとともに、一方側の成形型のチラー管の近接位置にチラー管とほぼ同一パターンでエア管が設定され、該エア管内に外部エアを導入し、エア管で冷却されたエアを成形下型のエア充填空間部に送り込むことを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明方法は、熱可塑性バインダを含有するシート状、あるいはマット状の原反材料全般に適用でき、例えば、熱成形用フエルト、不織布マット、カーペット、熱可塑性樹脂シート、熱可塑性複合樹脂シート等が適用できる。特に、本発明方法は、空冷機能を高めたため、肉厚な熱成形用フエルトや嵩高性不織布マットに好適である。用途としては、車両用フロアカーペット、インシュレータダッシュ、天井、エンジンルーム用吸音材、ラゲージルーム用トリム部材等、広範囲の用途に適用できる。
【0016】
更に、チラー管の近接位置に設定されるエア管は、成形上下型の一方側、あるいは双方に設けても良い。また、チラー管に近づければ近づける程冷却効果が期待でき、熱伝導率の高い素材でエア管を作成し、チラー管とエア管とを良好な熱伝導体でスポット的に両者を接続すればより冷却効率を高めることができる。
【0017】
そして、本願発明に係るプレス成形体の成形方法によれば、常温のエアで成形材料を冷却するという従来方法とは異なり、工場内のエアをエア管内に供給し、このエア管と、近接位置にあるチラー管によりエア管内を通過するエアを強制冷却し、冷却されたエアをブロー孔を通じて成形材料内に送り込むという方法を採用したため、夏場など、工場内のエア温度が上昇したときでも、チラー管の冷却作用により常に一定の冷却用エアを成形材料内に送り込むことができ、冷却時間が少なくて済み、かつ冷却不足による成形不良も回避できる。
【0018】
更に、本願発明に係るプレス成形体のプレス成形金型によれば、工場内のエアを供給する入口部と、ブロー孔と通じるエア充填空間部に出口部を設定したエア管を成形金型内部でチラー管の近接位置に設定するという構成であり、特に、エア管とチラー管とを成形金型のダイキャスト工程時にインサートすれば、簡単に製造でき、別途冷風設備を成形金型に導入する構成に比べ、簡単かつ廉価に実施できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るプレス成形体の成形方法及び成形金型の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明に係るプレス成形体の一実施形態を示す車両用フロアカーペットの斜視図、図2は本発明に係るプレス成形金型の一実施形態の全体図、図3は図2に示すプレス成形金型におけるプレス成形下型を示す平面図である。また、図4乃至図6は本発明方法の一実施形態である車両用フロアカーペットの製造方法の各工程を示す説明図である。
【0021】
図1において、車両用フロアカーペット10は、図示しない車両のフロアパネルの面形状に沿うように成形され、中央には、車両の長手方向に沿って延びるトンネル部10aが形成されており、製品表面側に位置するカーペット層11とその裏面側に一体化されるクッション層12との積層構造体から構成されている。
【0022】
更に詳しくは、カーペット層11は、この実施形態ではタフトカーペット(基布にタフティング加工によりパイルが植え込まれ、基布層の裏面にパイルの目止め層及びバッキング層が一体化されている)仕様であり、パイルや基布は、ポリエステル繊維が使用されている。
【0023】
また、クッション層12としては、嵩高性不織布が使用され、熱可塑性バインダとして、ベースのポリエステル繊維中に低融点の熱融着性繊維が適宜割合で混入されている。
【0024】
ところで、本発明は、このような車両用フロアカーペット10をプレス成形する際、成形時間を短縮化できるとともに、冷却不足による成形不良を確実に回避して、成形性能をアップできる成形方法及びそれに使用する成形金型に関する。
【0025】
図2において、本発明方法に使用する成形金型20の一実施形態について説明する。成形金型20は、所定ストローク上下動可能な成形上型30と、固定側の成形下型40とから大略構成されている。
【0026】
更に詳しくは、成形上型30は、昇降シリンダ31に連結されており、かつ成形上型30の型面に沿って均一な冷却機能を付与するように、成形上型30内には、チラー管32がインサートされている。
【0027】
一方、成形下型40は、同様に型面に冷却機能をもたせるために、チラー管41がインサートされているとともに、本実施形態では、チラー管41の直下の近接位置にチラー管41と同一の配管パターンでエア管42がインサートされている。
【0028】
更に、成形下型40は、内部にエア充填空間部43が設定され、このエア充填空間部43内のエアは、成形下型40に複数箇所に設けられているブロー孔44を通じて製品キャビティC内に吹き込まれる。
【0029】
上記チラー管41及びエア管42は、それぞれ熱伝導率に優れた素材、例えば、ステンレスを使用したフレキシブルパイプが使用され、成形下型40のアルミダイキャスト時にインサート成形により埋設される。また、エア管42の入口部42aを通じて図3に示すように外部エアが導入され、エア管42の出口部42bは、成形下型40に設けられているエア充填空間部43と連通している。
【0030】
従って、エアの流れは、図2,図3に示すように、工場内の外部エア(常温)が入口部42aから導入され、チラー管41と同一パターンに配管されたエア管42内に導入されるが、チラー管41とエア管42が近接位置にあるため、エア管42を通過するエアがチラー管41により低温に冷却され、冷却されたエアは、出口部42bからエア充填空間部43に供給され、エア充填空間部43から多数のブロー孔44を通じて製品キャビティC内に冷却用エアが送り込まれる。
【0031】
従って、従来の空冷機構のように、常温のエアを供給するのとは異なり、チラー管41の温度(約5℃)に近い温度まで冷却されたエアを使用できるため、プレス成形金型20の空冷機能を高めることができ、環境温度の変動に左右されることなく、冷却時間を短縮化でき、ひいては、成形タクトの短縮化に大きく貢献できるとともに、冷却不足によるブカツキ等の成形不良も確実に回避でき、成形性を高める等の有利さがある。尚、成形下型40にエア管42をインサートする以外にも、例えば、成形下型40にエア通路を開設し、このエア通路内にチラー管41を配管するという構造を採用することもできる。
【0032】
次いで、図2,図3に示す成形金型20を使用して車両用フロアカーペット10を成形する工法について、図4乃至図6に基づいて説明する。まず、図4は、カーペット層11とクッション層12の予備加熱工程を示すもので、熱風加熱炉50内にカーペット層11の原反シートSとクッション層12の原反マットMとを投入する。
【0033】
このとき、カーペット層11の原反シートSは、通気性を備えることが好ましいことから、カーペット層11とクッション層12との接着一体化を図る上で、ウエブ状ホットメルト、あるいはラテックスがスプレーコーティング処理されている。また、カーペット層11とクッション層12との一体化は、ウエブ状ホットメルト、あるいはラテックスの接着性と、クッション層12の素材である不織布中に含まれる熱可塑性バインダの接着性を利用して行なわれる。
【0034】
そして、カーペット層11の原反シートS及びクッション層12の原反マットMを所定温度に加熱軟化処理して、内部の熱可塑性バインダを溶融状態にした後、図5に示すように、プレス成形金型内に原反シートS、原反マットMを重ね合わせて投入する。
【0035】
その後、図6に示すように、昇降シリンダ31の駆動により、成形上型30が所定ストローク下降して、成形上下型30,40の型締めにより、原反シートS、原反マットMを賦形して、カーペット層11の裏面にクッション層12を積層した所要形状の車両用フロアカーペット10が成形される。
【0036】
このとき、成形時間の短縮化を図るために、成形金型20における成形下型40に設けた空冷機構を動作させる。すなわち、エア管42内に導入される導入時、常温のエアは、チラー管41に冷却されてチラー管41の温度に匹敵するまで低温に冷却され、低温に冷却されたエアは、エア充填空間部43に供給された後、図6中拡大して示すように、ブロー孔44を通じてクッション層12内部に送り込まれ、クッション層12の冷却を速め、成形時間を短縮化するとともに、ブカツキ等の成形不良を回避できる。
【0037】
また、上述した実施形態は、成形金型20における成形下型40内にチラー管41とほぼ同一パターンでその近接位置にエア管42を配設したが、成形上型30に同一の構成を採用することもできる。
【0038】
更に、エア管42の冷却効率を更に高めるために、チラー管41とエア管42との間に熱伝導体を所定ピッチ間隔で繋げるようにすれば、エア管42内のエアをより迅速に冷却させることができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係るプレス成形体の成形方法によれば、常温のエアで成形材料を冷却するという従来方法とは異なり、工場内のエアをエア管に供給し、このエア管を通過させる際に、近接位置にあるチラー管によりエア管を通過するエアを強制冷却し、冷却されたエアをブロー孔を通じて成形材料内に送り込むという方法を採用したため、夏場など、工場内のエア温度が上昇したときでも、チラー管の冷却作用により常に一定温度の冷却用エアを成形材料内に送り込むことができ、冷却時間が少なくて済むことから、成形時間を短縮化でき、生産性に優れるとともに、冷却不足による成形不良も回避できることから、歩留まり向上に貢献できるという効果を有する。
【0040】
更に、本発明に係るプレス成形体のプレス成形金型によれば、工場内のエアを導入する入口部と、エア充填空間部に連通する出口部とを設定したエア管を成形金型内部でチラー管の近接位置に設定するという構成であるため、構造の簡素化が図れ、また、エア管とチラー管とを成形金型のダイキャスト工程時にインサートすれば、簡単に製造でき、別途冷風設備を成形金型に導入する構成に比べ、簡単かつ廉価に実施できることから、実用性に優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプレス成形体の成形方法を適用して製作した車両用フロアカーペットを示す斜視図である。
【図2】本発明に係るプレス成形体の成形金型の一実施形態を示す全体図である。
【図3】図2に示す成形金型における成形下型の平面図である。
【図4】本発明に係るプレス成形体の成形方法における原反材料の予備加熱工程を示す説明図である。
【図5】本発明に係るプレス成形体の成形方法における原反材料のセット工程を示す説明図である。
【図6】本発明に係るプレス成形体の成形方法における空冷アシストプレス成形工程を示す説明図である。
【図7】従来の車両用フロアカーペットの構成を示す断面図である。
【図8】従来のフロアカーペットの製造方法における原反材料のセット工程を示す説明図である。
【図9】従来のフロアカーペットの製造方法におけるプレス成形工程を示す説明図である。
【符号の説明】
10 車両用フロアカーペット
11 カーペット層
12 クッション層
20 成形金型
30 成形上型
31 昇降シリンダ
32 チラー管
40 成形下型
41 チラー管
42 エア管
42a 入口部
42b 出口部
43 エア充填空間部
44 ブロー孔
50 熱風加熱炉
C 製品キャビティ
S 原反シート
M 原反マット
Claims (2)
- 熱可塑性バインダを内部に含む原反材料(S,M)を加熱軟化処理した後、チラー管(32,41)をインサートした成形上下型(30,40)の型締めにより、プレス成形体(10)を所要形状に成形するとともに、少なくとも一方側の成形型(40)のブロー孔(44)を通じてエアを成形材料内に吹き込むことで冷却サイクルを速めたプレス成形体(10)の成形方法において、
前記一方側の成形型(40)のチラー管(41)の近接位置に外部エアを導入するエア管(42)が設定され、該エア管(42)内のエアをチラー管(41)により冷却し、冷却されたエアを一方側の成形型(40)内部のエア充填空間部(43)に貯留し、各ブロー孔(44)から強制冷却されたエアを成形材料内に吹き込むことを特徴とするプレス成形体の成形方法。 - 熱可塑性バインダを含有する原反材料(S,M)を加熱軟化処理した後、所要形状にプレス成形するプレス成形体(10)の成形金型(20)において、
前記成形金型(20)は、チラー管(32,41)を内部にインサートした相互に型締め並びに型開き可能な成形上下型(30,40)から構成され、少なくとも一方側の成形型(40)には、内部のエア充填空間部(43)からブロー孔(44)を通じて成形材料内にエアを吹き込むことができる空冷機構を備えるとともに、一方側の成形型(40)のチラー管(41)の近接位置にチラー管(41)とほぼ同一パターンでエア管(42)が設定され、該エア管(42)内に外部エアを導入し、エア管(42)で冷却されたエアを成形下型(40)のエア充填空間部(43)に送り込むことを特徴とするプレス成形体の成形金型。
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