JP4055227B2 - 作業車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は作業車両の車速制御装置に関するものであり、特に、作業環境条件の変化に応じて車速を自動制御する車速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
比較的小型の作業車両に於いては、エンジンの動力を油圧伝動装置やベルト式変速装置等の無段変速機構によって変速するものが知られている。此種作業車両では、変速レバー等の車速指定装置により前記無段変速機構を任意の作動位置に変更して、車速を無段階に変速することができる。また、作業中に高負荷になってエンジン回転数が低下したときは、エンジン回転数を規定回転数に保持するために、前記無段変速機構を作動させて車速を減速する。また、圃場の端部で旋回するときは、作業機を上昇させるとともに前記無段変速機構を作動させて車速を減速する。或いは、傾斜地での作業に於いても、左右傾斜の繰り返し頻度の大きさに応じて車速を減速させる必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、作業環境条件が刻々と変化する中で、どの条件に基づいて車速を制御するかが問題であり、また、車速制御に入った後の制御解除も様々な条件が考えられる。これらの操作をオペレータの判断によりすべて手動で行うことは困難である。
【0004】
そこで、作業環境条件の変化に応じて車速を自動制御するとともに、簡単な操作で制御解除を行えるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、車速指定装置の操作に従って車速を無段階に変更する無段変速機構を搭載した作業車両に於いて、前記車速指定装置の操作位置と無段変速機構である油圧伝動装置(HST)のトラニオン軸の回転角度とを比例関係に設け、前記車速指定装置の操作位置に拘わらず、トラニオン軸の回転角度をHSTアクチュエータにより変更して車速制御を行う制御手段を設け、様々な作業環境条件の変化に対して新たに発生した変化に応じた車速制御を行うとともに、前記車速指定装置の操作位置がHSTのトラニオン軸の回転角度に対応する変速位置に略一致したときは、車速指定装置の手動操作を優先して車速の自動制御を解除するように構成したことを特徴とする作業車両を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1は小型の作業車両の一例として芝刈機10を示し、機体の前部にエンジン11を搭載し、該エンジン11の動力は油圧伝動装置(以下HSTという)12等の無段変速機構により減速されて後輪13へ伝達される。無段変速機構としてはHSTのほかベルト式変速装置等、他の構成の変速機構であってもよい。
【0007】
後輪13と前輪14との間には、機体の下部にリンク機構15を介してモア16が懸架されており、エンジン動力の一部がフロントPTO軸17から該モア16へ伝達されるとともに、昇降アクチュエータ18の作動により該モア16が上下へ昇降可能となっている。
【0008】
一方、ステアリングハンドル19の近傍にスロットルレバー20が設けられ、該スロットルレバー20を回動操作することによりエンジンガバナ(図示せず)のラック位置が移動して、エンジン11の回転数を調整することができる。また、ステアリングハンドル19の側方下部に車速指定装置としての変速レバー21が設けられ、該変速レバー21を回動操作することにより前記HST12のトラニオン軸が回転して、出力軸の回転数(即ち車速)を変更することができる。更に、運転席22の側方下部に昇降レバー23が設けられ、該昇降レバー23を回動操作することにより前記昇降アクチュエータ18が作動し、リンク機構15を介して前記モア16が昇降する。
【0009】
そして、運転席22の下部にコントローラ24が設けられ、後述するように車速制御の制御手段として該コントローラ24が各種レバーの操作信号やセンサの検出信号等を読み込み、作業環境条件の変化に応じて該コントローラ24から各アクチュエータへ制御信号を出力する。尚、符号25は車速制御の実行及び解除を選択する制御入切スイッチである。
【0010】
図2は車速制御系のブロック図であり、前記スロットルレバー20、変速レバー21、昇降レバー23にはポテンショメータ等の検出具が取り付けられており、夫々の検出具により各レバーの操作信号がコントローラ24へ送られる。また、エンジン回転センサ26によりエンジンの回転数を検出し、トラニオン軸角度センサ27によりHST12の作動位置(トラニオン軸の回転角度)を検出する。更に、操舵角センサ28にて前輪14の操舵角を検出し、傾斜センサ29にて機体のローリング角を検出し、昇降センサ30にてモア16の昇降位置を検出する。
【0011】
コントローラ24はこれらの入力信号に基づき、後述する制御方法にてエンジンガバナのラックアクチュエータ31へ制御信号を出力してエンジン11の回転数を調整したり、HSTアクチュエータ32へ制御信号を出力してHST12のトラニオン軸の回転角度を変更し、出力軸の回転数(車速)を増減する。また、昇降アクチュエータ33へ制御信号を出力し、前記モア16を昇降させる。
【0012】
図3乃至図5は芝刈機10の車速制御のメインフローチャートであり、先ず各レバーやスイッチ等の設定信号と各種センサの検出信号を読み込む(ステップ01)。そして、制御入切スイッチ25が入であることを判別したら(ステップ02)、車速制御が実行される。尚、一旦制御入切スイッチを入にして減速制御を実行中の場合は(ステップ20)、後述する制御解除の条件がないときは車速制御を続行し、制御解除による急激な増速を防止する。
【0013】
ステップ03は制御解除の一条件を示し、変速レバー21の操作位置LとHST12のトラニオン軸の回転角度θとを比較し、変速レバーの操作位置Lが減速制御中のトラニオン軸の回転角度θS に対応する操作位置LS に略一致したか否かを判断する。図6に示すように、通常の操作では変速レバーの回動操作に比例してトラニオン軸の回転角度θが変化し、例えば変速レバーの操作位置がL1 のときにトラニオン軸の回転角度がθ1 となる。しかし、後述するように、車速制御により減速する場合、HSTアクチュエータ32によりトラニオン軸の回転角度のみを減速目標値θS まで小さく変更するが、変速レバーは元の操作位置L1 のままである。
【0014】
いま、オペレータが減速状態を解除すべく変速レバーを意識的に操作して、変速レバーの操作位置Lがトラニオン軸の回転角度θS に対応する操作位置LS に略一致したときは、現在の車速制御モードが解除される(ステップ30)。このときは、変速レバーの操作位置LS に対応した車速となり、変速操作と実際の車速が一致するのでオペレータの違和感がなく、制御解除時の安全性を確保できる。それ以降は、変速レバーの手動操作を優先し、HSTの減速目標値θS を現在の変速レバーの操作位置LN に対応したトラニオン軸の回転角度θN にする(ステップ31)。
【0015】
ステップ03で変速レバーの操作位置Lがトラニオン軸の回転角度θS に対応する操作位置LS と一致しない場合は、現在何れかの車速制御モードで車速制御中であるかを判別し(ステップ04)、車速制御中であれば車速制御モード解除条件判定のサブルーチンに進む(ステップ05)。車速制御モードはステップ07にて後述するように、エンジンモードと旋回モードと傾斜モードの3種類が規定されている。
【0016】
図7に示すように、車速制御モード解除条件判定のサブルーチンでは、先ず現在の車速制御モードを判別し(ステップ051)、旋回モードの場合にモアの下降操作があれば(ステップ052)、旋回モード解除をセットする(ステップ053)。一方、傾斜モードの場合に左右傾斜の繰り返しが規定時間以上発生しないときは(ステップ058)、傾斜モード解除をセットする(ステップ059)。
【0017】
ここで、現在の車速制御モードがエンジンモードである場合に、作業内容によりオペレータがスロットルレバー20を操作して、エンジンの基準回転数(作業設定時に無負荷状態での最大回転数)NK を低下させた状態のとき、即ちスロットル位置変更制御中であれば(ステップ054)、変速レバーの操作位置Lがトラニオン軸の回転角度θS に対応する操作位置LS に略一致したときに(ステップ055)、エンジンモード解除をセットする(ステップ056)。これに対して、スロットル位置変更制御中ではなく、エンジンの基準回転数NK が通常の高回転(例えば2000rpm 以上)である場合は、エンジン回転数Nがこの基準回転数NK のマイナス100rpm 程度以上に復帰したときに(ステップ057)、エンジンモード解除をセットする(ステップ056)。
【0018】
このように、図3に示したステップ05に於いて車速制御モード解除条件を判定し、現在の車速制御モードの解除条件があったときはステップ06からステップ30へ進み、現在の車速制御モードが解除される。一方、ステップ06で車速制御モードの解除条件がない場合は、車速制御モード突入条件判定のサブルーチンに進む(ステップ07)。
【0019】
図8に示すように、車速制御モード突入条件判定のサブルーチンでは、先ずエンジンの基準回転数NK の大きさによって、エンジンモードによる車速制御の突入判定値を設定する(ステップ071)。基準回転数NK が通常の高回転(2000rpm 以上)であれば、エンジン回転数Nが1800rpm 以下に低下したときを突入判定値とし、基準回転数NK が低回転(2000rpm 未満)であれば、エンジン回転数Nの低下が200rpm (回転数差)を超えたときを突入判定値とする。
【0020】
例えば、エンジン回転数Nが前記判定値に適合したときは(ステップ072)、エンジンモードによる車速制御をセットする(ステップ073)。ここでは、現在のエンジン回転数Nに応じたHSTの新たな減速目標作動位置、即ちトラニオン軸の回転角度が新たな減速目標値θSNになるようにセットする。これと同時に、傾斜モード及び旋回モードをリセットする。そして、新規に車速制御モードの突入条件が発生したことをセットする(ステップ074)。
【0021】
一方、ステップ072でエンジン回転数Nが判定値に適合しない場合は、前記傾斜センサ29にて機体の左右傾斜の繰り返し頻度を算出し(ステップ075)、大きな左右傾斜の繰り返しがあったときは(ステップ076)、傾斜モードによる車速制御をセットする(ステップ077)。ここでは、傾斜時に於けるHSTの新たな減速目標値θSNをセットし、エンジンモード及び旋回モードをリセットする。然る後にステップ074へ進む。
【0022】
また、ステップ076で大きな左右傾斜の繰り返しがない場合は、前記昇降センサ30にてモアの上昇操作があったか否かを判別し(ステップ078)、モアが上昇したときは旋回モードによる車速制御をセットする(ステップ079)。ここでは、旋回時に於けるHSTの新たな減速目標値θSNをセットし、エンジンモード及び傾斜モードをリセットする。然る後にステップ074へ進む。
【0023】
このように、図3に示したステップ07に於いて車速制御モード突入条件を判定し、新たな車速制御モードの突入条件があったときはステップ08からステップ09へ進み、HSTの現在までの減速目標値θSOと新たな減速目標値θSNとを比較し、何れか低い方を選択して今回の減速目標値θS とする。
【0024】
一方、ステップ07で新たな車速制御モードの突入条件がない場合は、エンジンモードによる車速制御中であるか否かを判別し(ステップ40)、エンジンモード制御中であればこの制御を続行すべく、エンジンモード車速制御のサブルーチンに進む(ステップ41)。また、エンジンモード制御中ではなく、旋回モードによる車速制御中であれば(ステップ50)、この制御を続行すべく旋回モード車速制御のサブルーチンに進む(ステップ51)。更に、旋回モード制御中ではなく、傾斜モードによる車速制御中であれば(ステップ60)、この制御を続行すべく傾斜モードによる車速制御のサブルーチンに進む(ステップ61)。
【0025】
尚、ステップ40,50,60に於いて、何れの車速制御中でもない場合はステップ31へ進み、HSTの減速目標値θS を現在の変速レバーの操作位置LN に対応したトラニオン軸の回転角度θN にする。
【0026】
図9に示すように、エンジンモード車速制御のサブルーチンでは、先ずスロットルレバー20が減速側に操作されているか否かを判別し(ステップ401)、スロットルレバーが減速側に操作中であるときはスロットル位置変速制御をセットし(ステップ402)、このときの減速位置を保持すべくHSTの減速目標値θS を現在のトラニオン軸の回転角度θN にする(ステップ403)。
【0027】
ここで、スロットルレバーが減速側に操作中でなく、前述したスロットル位置変更制御中であるときは(ステップ404)、スロットルレバーの増速操作があるまでは(ステップ405)、ステップ403へ進んでこのときの減速位置を保持する。また、ステップ405に於いてスロットルレバーの増速操作があった場合は、スロットルレバーが元の位置(エンジン回転数大の位置)になるまでは(ステップ406)、スロットルレバーの増速操作とエンジン回転数の上昇とに応じて、HSTの減速目標値θS をセットし(ステップ407)、スロットルレバーが元の位置に達したときは、スロットル位置変速制御をリセットする(ステップ409)。
【0028】
一方、ステップ404に於いてスロットル位置変更制御中でない場合はステップ408へ進み、エンジンの基準回転数Nと現在のエンジン回転数NK との差から回転低下率D(D=|(NK −N)|/NK )を算出し、現在のトラニオン軸の回転角度θN にこの回転低下率Dを考慮してHSTの減速目標値θS を設定する(θS ←θN ×D)。
【0029】
図10に示すように、旋回モード車速制御のサブルーチンでは、HSTの現在の減速目標値θS を維持する(ステップ501)。また、図11に示すように、傾斜モード車速制御のサブルーチンでも、HSTの現在の減速目標値θS を維持する(ステップ501)。
【0030】
而して、図3及び図4に示したステップ31、ステップ09、ステップ41、ステップ51、ステップ61にて夫々設定されたHSTの減速目標値θS に基づき、図5に示すステップ10に於いて、現在の変速レバーの操作位置LN に対応したトラニオン軸の回転角度θN と、前記HSTの減速目標値θS とを比較してその差を判別し、現在のHST操作位置に対して増速要求するときは前記HSTアクチュエータ32に対して増速出力オンし(ステップ11)、現在のHST操作位置に対して減速要求するときはHSTアクチュエータに対して減速出力オンする(ステップ13)。また、現在のHST操作位置が減速目標値θS に一致しているときは増減出力オフにする(ステップ12)。
【0031】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では車速指定装置の操作位置と無段変速機構である油圧伝動装置(HST)のトラニオン軸の回転角度とを比例関係に設け、様々な作業環境条件の変化に応じて作業車両の車速を制御する際に、新たに発生した変化に応じた車速制御を行うことによって、刻々変化する作業環境に適した自動制御が行える。また、車速指定装置の操作位置がHSTのトラニオン軸の回転角度に対応する変速位置に略一致したときは車速の自動制御を解除するため、オペレータが減速状態を解除する意思を反映することができ、簡単な操作で制限解除を確実に行える。
【0033】
斯くして、車速制御の実行及び解除が円滑になされるようになる。
【図面の簡単な説明】
図は本発明の実施の形態を示すものである。
【図1】小型の作業車両の一例として芝刈機を示す側面図。
【図2】車速制御系のブロック図。
【図3】車速制御のメインフローチャート、その1。
【図4】車速制御のメインフローチャート、その2。
【図5】車速制御のメインフローチャート、その3。
【図6】変速レバーの操作位置とHSTのトラニオン軸の回転角度との関係を示すグラフ。
【図7】車速制御モード解除条件判定のサブルーチンのフローチャート。
【図8】車速制御モード突入条件判定のサブルーチンのフローチャート。
【図9】エンジンモード車速制御のサブルーチンのフローチャート。
【図10】旋回モード車速制御のサブルーチンのフローチャート。
【図11】警手モード車速制御のサブルーチンのフローチャート。
【符号の説明】
10 芝刈機
11 エンジン
12 油圧伝動装置(HST)
20 スロットルレバー
21 変速レバー
24 コントローラ
25 制御入切スイッチ
Claims (1)
- 車速指定装置の操作に従って車速を無段階に変更する無段変速機構を搭載した作業車両に於いて、
前記車速指定装置の操作位置と無段変速機構である油圧伝動装置(HST)のトラニオン軸の回転角度とを比例関係に設け、
前記車速指定装置の操作位置に拘わらず、トラニオン軸の回転角度をHSTアクチュエータにより変更して車速制御を行う制御手段を設け、様々な作業環境条件の変化に対して新たに発生した変化に応じた車速制御を行うとともに、
前記車速指定装置の操作位置がHSTのトラニオン軸の回転角度に対応する変速位置に略一致したときは、車速指定装置の手動操作を優先して車速の自動制御を解除するように構成したことを特徴とする作業車両。
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