JP4051970B2 - エチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン・ビニルエステル共重合体とポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤を含有する水性エマルジョンに関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体などのエチレン・ビニルエステル共重合体を含有する水性エマルジョンは、例えば、接着剤、塗工剤、塗料、紙・繊維・壁紙などのバインダー、セメントの混和剤などに数多く使用されている。
かかるエチレン・ビニルエステル共重合体を含有する水性エマルジョンとしては、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を含有する水性エマルジョンがエマルジョン状態での保存安定性と機械安定性に優れ、また、使用後、すなわち、乾燥状態で優れた強度を有することが知られていることから(特開平6−65550号公報、特開平6−9934号公報、特開11−71434号公報など)、広く賞用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、該水性エマルジョンは、乾燥状態における耐水性が十分ではなく、さらなる耐水性の向上が求められている。
本発明の目的は、乾燥状態で、さらに優れた耐水性を発揮するエチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者らが鋭意検討したところ、ポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル類を特定量含有し、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を実質的に含有しないエチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンが、かかる課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、エチレンおよびビニルエステルを重合して得られる共重合体とポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤とを含有する水性エマルジョンにおいて、該共重合体のビニルエステル単位100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の含有量が1〜10重量部であり、該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類における炭素数11のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率が90重量%以上であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類が0.01重量部以下であるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする水性エマルジョン;
【0006】
該水性エマルジョンを乾燥して得られる乾燥品;ならびに、
エチレンとビニルエステルとをポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤存在下に乳化重合により、エチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンを製造する方法において、該共重合体のビニルエステル単位100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が1〜10重量部であり、該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類における炭素数11のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率が90重量%以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類が0.01重量部以下であるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤存在下に重合することを特徴とするエチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンの製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の水性エマルジョンは、エチレンとビニルエステルを重合して得られる共重合体を含有する水性エマルジョンである。
ここで、ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、イソノナン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのアルキル酸ビニルエステルなどが挙げられる。ビニルエステルとして、2種類以上のビニルエステルを用いてもよい。ビニルエステルの中でも、酢酸ビニルが好適である。
【0008】
該共重合体におけるエチレンに相当する部分のエチレン単位としては、ビニルエステルに相当する部分のビニルエステル単位100重量部に対し、通常、5〜70重量部程度であり、好ましくは5〜45重量部程度である。
エチレン単位が5重量部以上である場合には、本発明の水性エマルジョンを乾燥して得られる乾燥品の耐水性が向上する傾向にあることから好ましく、70重量部以下の場合には、該水性エマルジョンを接着剤として使用した時の接着強度が向上する傾向にあるので好ましい。
【0009】
本発明の共重合体に用いられる単量体として、エチレン、ビニルエステルの他に、エチレンと共重合可能な単量体を用いていてもよく、具体的には、塩化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩などのビニル化合物;スチレン、αーメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート等の(メタ)アクリル酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、イタコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;N-メチロールアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;スルホン酸アリル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物等が例示される。
【0010】
本発明の水性エマルジョンは、エチレンおよびビニルエステルを重合して得られる共重合体とポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤とを含有する水性エマルジョンにおいて、該共重合体のビニルエステル単位100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の含有量が1〜10重量部であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類が0.01重量部以下であるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤を含有する水性エマルジョンである。中でも、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を実質的に含有しない水性エマルジョンが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類は、得られた水性エマルジョンに添加されてもよいが、通常、エチレンとビニルエステル等を共重合する際に界面活性剤として用いられる。
【0011】
ここで、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類とは、通常、下記一般式(1)
R1-O-(R2O)n-H (1)
で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの混合物である。
ここで、式中、R1としては、通常、炭素数が1〜11の分岐があってもよいアルキル基である。
水性エマルジョンに含有されるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤として、R1の炭素数が1〜11のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルを90重量%程度以上含有すると、該剤を含有する水性エマルジョンから得られる乾燥品の耐水性が向上する傾向にあることから好ましい。
また、R2としては、通常、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基であり、異なるアルキレン基が同一分子中に含有されていてもよい。アルキレン基としては、中でもエチレン基が好適である。
さらに、nとしては、通常、5〜60程度である。
【0012】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルなどを主成分とするポリオキシエチレンアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0013】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの製造方法としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等を重合して得られるオレフィンオリゴマーをオキソ反応することによって製造されるアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを付加することにより得ることができる。
また、ラテムル1135S−70、ラテムル1108(いずれも登録商標、花王株式会社製)などの市販のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類をそのまま使用してもよい。
【0014】
また、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類とは、通常、下記一般式(2)
R3-Ph-O-(R4O)m-H (2)
(式中、R3は、通常、炭素数が1〜20程度の分岐があってもよいアルキル基を表し、R4としては、通常、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基を表し、好ましくはエチレン基である。R4として、異なるアルキレン基が同一分子中に含有されていてもよい。mは、5〜60程度の整数を表し、Phは、ハロゲン原子、アルキル基などが置換していてもよいフェニレン基等を表す。)
で表されるポリオキシアルキレンフェニルエーテルの混合物であり、通常、アルキルフェノールとポリオキシアルキレンとをエーテル化することにより得ることができる。
ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0015】
本発明の水性エマルジョンには、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類およびポリオキシアルキレンフェニルエーテル類以外の非イオン界面活性剤として、例えば、エチレンオキサイドの付加量が10〜80重量%程度のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルなどを含有していてもよい。
また、水性エマルジョンには、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルなどのアニオン界面活性剤を含有していてもよい。
さらに、水性エマルジョンには、例えば、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの繊維系誘導体などの保護コロイドを含有していてもよい。
【0016】
本発明の水性エマルジョンの製造方法としては、例えば、エチレンとビニルエステルとをポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の存在下、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を実質的に存在せしめることなく、水中で乳化重合することにより得る方法などが挙げられる。
具体的な製造方法としては、例えば、ビニルエステル100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類を1〜10重量部程度用い、ビニルエステルなどのエチレンと共重合可能な単量体、保護コロイド、および、pH調整剤等を水中で混合し、必要に応じて、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、アニオン界面活性剤などを混合する。この際、ビニルエステル100重量部に対し、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を0.01重量部以下混合させてもよいが、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を混合させない方法が好適である。続いて、得られた混合物を窒素雰囲気下30〜80℃程度に昇温したのち、エチレンで置換した上で0〜10Mpa程度、好ましくは、1〜7Mpa程度に加圧し、ラジカル開始剤およびビニルエステル単量体、さらに必要に応じて、エチレンと共重合可能な単量体などを添加しながら重合する方法などが挙げられる。
【0017】
ここで、ラジカル開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルヒドロペルオキシドなどの酸化剤を単独で、あるいは、L−、D−アスコルビン酸、亜硫酸塩、ロンガリット、硫酸第1鉄などの還元剤と酸化剤との組み合せたレドックス系等が挙げられる。
また、pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、コハク酸、炭酸などの酸及びその塩;アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アミンなどの塩基などが挙げられ、連鎖移動剤としては、メルカプタン類などが挙げられる。
【0018】
本発明の乾燥品は、かくして得られた水性エマルジョンを乾燥して得られるものである。また、乾燥品には、例えば、消泡剤、発泡剤、増粘剤、粘度調整剤、充填剤、難燃剤、顔料などの配合剤を含有していてもよい。
【0019】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中の部および%は、特に断らないかぎり重量基準を意味する。
また、不揮発分は、予め乾燥させたアルミカップに水性エマルジョン約1gを正確に採取し、精秤した後、105℃の恒温乾燥器に入れて2時間乾燥し、採取された水性エマルジョンに対する得られた乾燥物の重量比率(%)で求めた。
【0020】
(実施例1)
耐圧容器に、水80部に酢酸ビニル30部、ヒドロキシエチルセルロース1.5部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=35、花王(株)製)0.7部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1108」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=8、花王(株)製)0.7部、硫酸第一鉄七水和物0.002部、酢酸ナトリウム0.06部及び酢酸0.1部を溶解した溶液を添加した。次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで5.0MPaまで加圧し、2.5%過硫酸ナトリウム水溶液を1.1部/h、9%ロンガリット水溶液0.8部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて、耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、酢酸ビニル70部を3時間かけて添加し、容器内の液温を50℃に維持しながら、重合開始後5時間経過した時点で酸化剤を3%過硫酸ナトリウム及び2%tert−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液に切り替え、6部/hの速度で耐圧容器に添加し、残留酢酸ビニル単量体が1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位30部、不揮発分が55%、粘度170mPa・s、ガラス転移温度-7℃のエチレン・酢酸ビニル水性エマルジョンを得た。
【0021】
(実施例2)
耐圧容器に、水90部に酢酸ビニル30部、ヒドロキシエチルセルロース1.5部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=35、花王(株)製)1.5部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1108」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=8、花王(株)製)1.5部、硫酸第一鉄七水和物0.002部を溶解した溶液を添加した。次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで2.0MPaまで加圧し、2%過硫酸ナトリウム水溶液を0.8部/h、1.5%ロンガリット水溶液0.6部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて、耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、酢酸ビニル70部を4時間かけて添加し、容器内の液温を50℃に維持しながら、重合開始後5時間経過した時点で酸化剤を6%過硫酸ナトリウムに切り替え、1.5部/hの速度で耐圧容器に添加し、残留酢酸ビニル単量体が1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位12部、不揮発分が51%、粘度660mPa・s、ガラス転移温度10℃のエチレン・酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョンを得た。
【0022】
(実施例3)
耐圧容器に、水70部に酢酸ビニル10部、ビニルスルホン酸ナトリウム0.2部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=35、花王(株)製)4部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1108」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=8、花王(株)製)2部、過硫酸アンモニウム0.2部、硫酸第一鉄七水和物0.002部および酢酸0.1部を溶解した溶液を添加した。次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで4.0MPaまで加圧し、8%過硫酸アンモニウム水溶液を0.8部/h、2.0%ロンガリット水溶液1.3部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて、耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、ビニルスルホン酸ナトリウム0.2部を溶解した水溶液7部、ならびに、酢酸ビニル90部を4時間かけて添加し、容器内の液温を50℃に維持しながら、圧力が4.0MPaに一定になるように3時間エチレンを添加し、重合開始後5時間経過した時点で酸化剤として8%過硫酸ナトリウム3.5部/h、および、還元剤として5%ロンガリット水溶液3部/hの速度で耐圧容器に添加し、残留酢酸ビニル単量体が1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位29部、不揮発分が56%、粘度310mPa・s、ガラス転移温度-6℃のエチレン・酢酸ビニル・ビニルスルホン酸共重合体の水性エマルジョンを得た。
【0023】
(実施例4)
耐圧容器に、水180部に酢酸ビニル30部、塩化ビニル40部、ヒドロキシエチルセルロース2部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=35、花王(株)製)4部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1108」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=8、花王(株)製)4部、硫酸第一鉄七水和物0.006部、酢酸ナトリウム0.2部および酢酸0.1部を溶解した溶液を添加した。次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで3.5MPaまで加圧し、3%過硫酸ナトリウム水溶液を5部/h、5%ロンガリット水溶液2部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、酢酸ビニル70部、13%N-メチロールアクリルアミド水溶液25部および塩化ビニル90部を5時間かけて添加し、容器内の液温を50℃に維持しながら、重合開始後5時間経過した時点で酸化剤を8%過硫酸ナトリウム及び1%tert−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液に切り替え、12部/hの速度で耐圧容器に添加し、残留酢酸ビニル単量体が1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位12部、塩化ビニル単位120部、不揮発分が50%、粘度62mPa・s、ガラス転移温度22℃のエチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル・N-メチロールアクリルアミド共重合体の水性エマルジョンを得た。
【0024】
(実施例5)
耐圧容器に、水85部に酢酸ビニル33部、ヒドロキシエチルセルロース0.5部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=35、花王(株)製)1部、ポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1108」(アルキル基の炭素数11以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量90重量%以上、ポリオキシエチレン基の平均付加数n=8、花王(株)製)1部、ラウリル硫酸ナトリウム1部、硫酸第一鉄七水和物0.002部、酢酸ナトリウム0.08部および酢酸0.06部を溶解した溶液を添加した。次に、耐圧容器内を窒素ガスで置換し、容器内を50℃まで昇温した後、エチレンで6.5MPaまで加圧し、6%過硫酸ナトリウム水溶液を2.3部/h、2.5%ロンガリット水溶液1.3部/hを耐圧容器に添加して重合を開始させた。続いて、耐圧容器内の液温が上昇したことを確認した後、酢酸ビニル67部、アクリル酸2−エチルヘキシル9部および20%N-メチロールアクリルアミド水溶液20部を5時間かけて添加し、容器内の液温を50℃に維持しながら、圧力が6.5MPaに一定になるように4時間エチレンを添加し、残留酢酸ビニル単量体が1%未満になった時点で耐圧容器を冷却し、未反応のエチレンガスを除去した後、生成物を取り出した。酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位34部、アクリル酸2−エチルヘキシル単位9部、不揮発分が51%、粘度100mPa・s、ガラス転移温度-22℃のエチレン・酢酸ビニル・アクリル酸2−エチルヘキシル酸共重合体の水性エマルジョンを得た。
【0025】
(比較例1)
実施例1においてポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」、「ラテムル1108」をそれぞれポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを主成分とする「エマルゲン931」(オキシエチレン基の平均付加数n=31、花王(株))、「エマルゲン954」(オキシエチレン基の平均付加数n=54、花王(株))に置き換えた以外は実施例1と同様に行い、酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位25部、不揮発分が56%、粘度63mPa・s、ガラス転移温度-4℃のエチレン−酢酸ビニル水性エマルジョンを得た。
【0026】
(比較例2)
実施例2においてポリオキシエチレンウンデシルエーテルを主成分とする「ラテムル1135S-70」、「ラテムル1108」をそれぞれポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを主成分とする「エマルゲン931」(オキシエチレン基の平均付加数n=31、花王(株))、「エマルゲン954」(オキシエチレン基の平均付加数n=54、花王(株))に置き換えた以外は実施例2と同様に行い、酢酸ビニル単位100部に対してエチレン単位7部、不揮発分が51%、粘度530mPa・s、ガラス転移温度16℃のエチレン・酢酸ビニル共重合体の水性エマルジョンを得た。
【0027】
<水性エマルジョンの物性>
得られた水性エマルジョンの物性を以下に示す方法で評価し、その結果を表1にまとめた。
(1)平均粒子径
ダブルビーム分光光度計(U−2000A:日立製作所製)により濁度法に従ってポリマーエマルジョンの平均粒子径を測定した。
【0028】
(2)沈降量
ポリマーエマルジョンを不揮発分濃度で30%に希釈し、10ml沈降管に注入したのち、遠心分離器にて3200rpm/minで5分間回転させ、沈降した部分の体積を測定した。尚、沈降量が少ないほど、保存安定性に優れることを示す。
【0029】
(3)機械安定性
水性エマルジョン90gをマロン安定試験機にて10kg、1000rpm/minの条件で5分間回転させ、生成した凝集物を100メッシュ(100M)、300メッシュ(300M)のステンレス製金網でろ過し、濾過残渣を水洗後105℃で乾燥、秤量して、エマルジョン中の濾過残渣濃度を表示した。尚、濾過残渣が少ないほど、機械安定性に優れることを示す。
【0030】
<乾燥品および湿潤品の物性>
得られた水性エマルジョンをポリエチレンフィルム上に塗布厚が1mmになるように均一に塗布した後、室温25℃、湿度60%の恒温室で1週間放置乾燥した。また、製膜しにくいものは、加熱して乾燥した。乾燥後、ポリエチレンフィルムを剥離し、試験用フィルムを作成して乾燥品とし、以下に示す方法で評価し、その結果を表1にまとめた。但し、耐水性試験では、塗布厚が0.5mmとなるように試験用フィルムを作成した。
湿潤品は、得られた乾燥品をさらに、室温で一日間、水中で静置し、調製した
【0031】
(4)耐水性
乾燥品を水に浸漬し、ダブルビーム分光光度計(U−2000A:日立製作所製)により可視光(500nm)の経時透過率を測定し、透過率が30%に達する時間を表示し、結果を表1に示した。尚、この時間が長いほど、耐水性に優れることを表す。
【0032】
(5)抗張力および伸び
乾燥品および湿潤品をダンベル3号で打ち抜き、恒温室においてオートグラフ(AG−50KNG:島津製作所製)を用い、500mm/分の一定速度にて、最大でサンプル長の1500%の長さまで引っ張り、破断時の伸びと強度を測定した。結果を表1に示した。
【0033】
【表1】
*:破断せず。抗張力は伸び1500%時の値を記載。
**:乾燥品を3600秒浸漬しても透過率は30%以上であった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の水性エマルジョンは、従来から賞用されていたポリオキシアルキレンフェニルエーテル類を主な非イオン界面活性剤とする水性エマルジョンと同等の保存安定性および機械安定性を有する。そして、本発明の水性エマルジョンから得られる乾燥品は、従来の水性エマルジョンから得られる乾燥品と同等の強度を有し、しかも、さらに優れた耐水性を有する。また、該乾燥品を湿潤せしめた湿潤品についても優れた強度を有する。
このことにより、本発明によって得られた乾燥品は、例えば、接着剤、塗工剤、塗料、紙・繊維・壁紙のバインダー、セメントの混和剤などに使用し得る。
Claims (4)
- エチレンおよびビニルエステルを重合して得られる共重合体とポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤とを含有する水性エマルジョンにおいて、該共重合体のビニルエステル単位100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類の含有量が1〜10重量部であり、該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類における炭素数11のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率が90重量%以上であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類が0.01重量部以下であるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤を含有することを特徴とする水性エマルジョン。
- 水性エマルジョンに含有される共重合体において、エチレン単位の含有量がビニルエステル単位100重量部に対して5〜70重量部であることを特徴とする請求項1に記載の水性エマルジョン。
- 請求項1又は2に記載の水性エマルジョンを乾燥して得られる乾燥品。
- エチレンとビニルエステルとをポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤存在下に乳化重合により、エチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンを製造する方法において、該共重合体のビニルエステル単位100重量部に対し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類が1〜10重量部であり、該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類における炭素数11のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルの含有率が90重量%以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル類が0.01重量部以下であるポリオキシアルキレン非イオン界面活性剤存在下に重合することを特徴とするエチレン・ビニルエステル共重合体含有水性エマルジョンの製造方法。
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