JP4051732B2 - 核燃料粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は原子炉に用いられる核燃料粒子、特に燃料被覆管に振動をかけながら充填するのに適した振動充填型の核燃料粒子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料被覆管に振動をかけながら二酸化ウラン粉末のような核燃料粒子を直接に充填する振動充填法は核燃料粒子をいったんペレットに成形した後に燃料被覆管に充填する方法に比べて工程数が少ないため、経済性の面で有望であると考えられる。振動充填法に用いられる核燃料粒子の密度は充填密度を高める観点から理論密度(Theoretical Density)の95%以上と高いことが求められ、粒子の形状は流動性、充填性を考慮すると球形に近いものが、また粒度分布は狭いものが望まれる。
【0003】
振動充填法で用いる核燃料粒子の製造方法には外部ゲル化法及び内部ゲル化法が知られている。外部ゲル化法は硝酸ウラニルのような核燃料を含む水溶液をアンモニア水に滴下することにより球状のADU(重ウラン酸アンモン)の粒子を生成させ、このADU粒子を焙焼還元して酸化物粒子(UO2)とし、更にこれを焼結して核燃料粒子を得る方法である。内部ゲル化法は核燃料を含む水溶液に加水分解によりアンモニアを生成する化合物(ヘキサメチレンテトラミン)を混合し、この混合物を90℃に加熱したシリコーン浴に滴下するなどの方法で加熱し球状のADUの粒子を生成させ、このADU粒子を焙焼還元して酸化物粒子とし、更にこれを焼結して核燃料粒子を得る方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし内部ゲル化法は使用済みのシリコーン浴をアセトン等の有機溶媒で洗浄することが必要であり、そのため廃有機溶媒が発生する問題がある。またゲル化法では硝酸ウラニル水溶液をアンモニア水やシリコーン浴に滴下する工程が煩雑であり、生産性を上げるために多数の滴下ノズルを必要とする。更にゲル化法では得られる焼結粒子の粒度は滴下する液滴の大きさである程度決るが、粒子の充填密度を上げるために必要な数十μmの酸化物粒子を得ることが困難である。
本発明の目的は、液滴を発生させるような煩雑な工程を経ず、生産性が高く、理論密度に対して95%以上の高密度で、燃料被覆管への充填性に優れた核燃料粒子の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニア又は過酸化水素のいずれか一方又は双方を添加して沈殿物を生成する工程と、上記沈殿物から造粒粉末を作製する工程と、上記造粒粉末を焙焼還元して核燃料物質を含む酸化物粉末を作製する工程と、上記酸化物粉末を900〜1800℃で焼結する工程とを含む核燃料粒子の製造方法である。
フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2とすることにより焼結性のよいUO2粉末を作製でき、このUO2粉末の焼結により、密度が高く燃料被覆管への振動充填に適した粒径を有する核燃料粒子を製造できる。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、沈殿物から造粒粉末を作製する工程が沈殿物を圧縮造粒又は転動造粒する工程である製造方法である。
スラリーは水分を含むため、圧縮造粒又は転動造粒により所望の粒径の造粒粉末を容易に作製できる。
【0006】
請求項3に係る発明は、フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニアと二酸化炭素を添加するか又は炭酸アンモニウムを添加して沈殿物を生成する工程と、上記沈殿物を乾燥し解砕する工程と、上記解砕物を焙焼還元して核燃料物質を含む酸化物粉末を作製する工程と、上記酸化物粉末を900〜1800℃で焼結する工程とを含む核燃料粒子の製造方法である。
0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニアと二酸化炭素を添加するか又は炭酸アンモニウムを添加した場合には、生成する沈殿物は粒径が数十〜数百μmと比較的大きな顆粒状であるため、造粒せずに乾燥し、解砕するだけで、焙焼還元し、焼結できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本願発明においては、フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液が原料として使用される。A/Mの値が2を超えると、アンモニア等の添加により生成する沈殿物の一次粒子が粗くなり、その結果焼結性の良好なUO2粉末の作製が困難となる。沈殿物生成のためにA/Mの下限値は0.01である。A/Mの好ましい範囲は0.01≦A/M≦1.5である。
【0008】
請求項1に係る方法では、フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニア又は過酸化水素のいずれか一方又は双方を添加して生じる沈殿物が不定形であるため、これに造粒操作を加えることにより所望の粒度の造粒粉末を作製することができる。沈殿物の造粒工程において、沈殿物の水分量が比較的少なくペースト状の場合は、例えば沈殿物を所望の孔径のスクリーンを通すことにより円柱状の顆粒を形成し、この顆粒を転動造粒して球状あるいは等軸の造粒粉末を作製できる。また沈殿物の水分量が比較的多いスラリー状の場合は、例えば加熱した一対のロールの間にスラリーを通し、乾燥させながら圧縮造粒して造粒粉末を作製できる。造粒工程に送られる沈殿物にはフッ化アンモニウムのような塩が含まれているが、この塩は造粒の際にバインダとして有効に作用する。
一方、請求項2に係る方法では、フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニアと二酸化炭素を添加するか又は炭酸アンモニウムを添加するとAUC(炭酸ウラニルアンモニウム)の沈殿物を生成するが、この沈殿物は粒径が数十〜数百μmと比較的大きな顆粒状であるため、造粒処理を必要としない。この顆粒状の沈殿物は乾燥され、解砕される。請求項2の方法によれば比較的粒径の小さい焼結粒子が得られる。
【0009】
請求項1及び3に係る方法では、焙焼還元工程は還元性雰囲気において、好ましくは500〜700℃の温度で行われ、その結果、UO2粉末のような核燃料物質を含む酸化物粉末が生成する。酸化物粉末は酸化物粉末の比表面積と得られる焼結粉末の密度の目標値に依存して900〜1800℃の温度、より好ましくは1200〜1750℃の温度で焼結される。焼結温度が900℃未満では焼結が不十分となり、1800℃を超えると焼結炉の耐久性が劣化し、エネルギーが不経済となり、かつ粒子同士の焼結が起り好ましくない。
【0010】
【実施例】
次に本発明の具体的態様を示すために、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
UO22を水に溶解してウラン濃度が250gU/Lのフッ化ウラニル水溶液を作製した。この水溶液のA/Mの値は0.038であった。この水溶液にNH3/U=10となるようにアンモニア水を添加してADU(重ウラン酸アンモン)を沈殿させた。沈殿したADUを遠心ろ過し、水洗した後、再度遠心ろ過を行って含水率80%のADUスラリーを得た。このスラリーをドラムドライヤを使用して圧縮造粒しながら乾燥させて顆粒状のADU造粒粉末を作製した。このADU造粒粉末を水素を50%含む窒素ガス雰囲気中で650℃で2時間焙焼還元し、UO2粉末を作製した。このUO2粉末のBET法による比表面積は4.2m2/gであった。
上記UO2粉末をモリブデン製の皿に入れ、水素雰囲気中おいて1600℃で5時間焼結した。焼結後、焼結粒子を皿から取出し、以下の3群の篩(A〜C)を使用して3種類の粒度に篩分した。即ち、A群の篩は篩番号#12〜#16(篩の目開き:1410μm〜1000μm)の篩から構成され、B群の篩は篩番号#100〜#150(篩の目開き:149μm〜105μm)の篩から構成され、C群の篩は篩番号#270〜#400(篩の目開き:53μm〜37μm)の篩から構成されている。
篩分後の焼結粒子の理論密度に対する密度(%)を液浸法により測定した。その結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
Figure 0004051732
【0012】
表1から明らかなように、A/M=0.038のフッ化ウラニル水溶液を原料として使用することにより、作製されるUO2粉末の比表面積も4.2m2/gと大きく、従って理論密度に対して98%以上の高密度の焼結粒子が得られることが判る。
【0013】
<実施例2>
硝酸ウラニル6水和物を水に溶解してウラン濃度が250gU/Lの硝酸ウラニル水溶液を作製した。この水溶液のA/Mの値は0.67であった。この硝酸ウラニル水溶液のpHが2〜4の範囲を保つようにアンモニア水を添加しながら、過酸化水素水を添加して過酸化ウラン(UPO)を沈殿させた。沈殿したUPOを遠心ろ過し、水洗した後、再度遠心ろ過を行って含水率80%のUPOスラリーを得た。このスラリーをドラムドライヤを使用して圧縮造粒しながら乾燥させて顆粒状のUPO造粒粉末を作製した。このUPO造粒粉末を水素を50%含む窒素ガス雰囲気中で550℃で2時間焙焼還元し、UO2粉末を作製した。このUO2粉末のBET法による比表面積は12.0m2/gであった。
上記UO2粉末をモリブデン製の皿に入れ、水素雰囲気中おいて900℃で5時間焼結した。焼結後、焼結粒子を皿から取出し、実施例1で使用したものと同様の3群の篩(A〜C)を使用して3種類の粒度に篩分した。篩分後の焼結粒子の理論密度に対する密度(%)を液浸法により測定した。その結果を表2に示す。
【0014】
【表2】
Figure 0004051732
【0015】
表2から明らかなように、A/M=0.67の硝酸ウラニル水溶液を原料として使用することにより、作製されるUO2粉末の比表面積も12.0m2/gと大きく、従って理論密度に対して98%以上の高密度の焼結粒子が得られることが判る。
【0016】
<実施例3>
UO22を水に溶解してウラン濃度が250gU/Lのフッ化ウラニル水溶液を作製した。この水溶液のA/Mの値は0.038であった。この水溶液に(NH32CO3/U=10となるように炭酸アンモニウムを添加してAUC(炭酸ウラニルアンモニウム)を沈殿させた。沈殿したAUCを濾紙で濾過して、含水率69%のAUCケーキを得た。このケーキを箱形のオーブンで乾燥させた後、解砕を行いAUC粉末を作製した。このAUC粉末を水素を50%含む窒素ガス雰囲気中で550℃で2時間焙焼還元し、UO2粉末を作製した。このUO2粉末のBET法による比表面積は10.8m2/gであり、平均粒径は110μmであった。
上記UO2粉末をモリブデン製の皿に入れ、水素雰囲気中おいて1600℃で5時間焼結した。焼結後、焼結粒子を皿から取出し、焼結粒子の理論密度に対する密度(%)と平均粒径を測定した。
その結果、A/M=0.038のフッ化ウラニル水溶液を原料として使用することにより、作製されるUO2粉末の比表面積も10.8m2/gと大きく、従って理論密度に対して99%と高密度の焼結粒子が得られ、平均粒径は80μmであった。
【0017】
<比較例1>
水にUF6ガスを吹込んでウラン濃度が250gU/Lのフッ化ウラニル水溶液を作製した。この水溶液のA/Mの値は4.0であった。その後の工程は実質的に実施例1の方法を繰返してBET法による比表面積が1.7m2/gのUO2粉末を作製した。
上記UO2粉末をモリブデン製の皿に入れ、水素雰囲気中おいて1750℃で5時間焼結した。焼結後、焼結粒子を皿から取出し、実施例1で使用したものと同様の3群の篩(A〜C)を使用して3種類の粒度に篩分した。篩分後の焼結粒子の理論密度に対する密度(%)を液浸法により測定した。その結果を表3に示す。
【0018】
【表3】
Figure 0004051732
【0019】
表3から明らかなように、A/M=4.0のフッ化ウラニル溶液を原料として使用したため、作製されるUO2粉末の比表面積も1.7m2/gと小さく、従って得られる焼結粒子の密度は理論密度に対して95%以下と低いことが判る。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニア又は過酸化水素のいずれか一方又は双方を添加して沈殿物を生成し、造粒した後、焙焼還元するか、あるいは上記酸性水溶液にアンモニアと二酸化炭素を添加するか又は炭酸アンモニウムを添加して沈殿物を生成し、この沈殿物を造粒しないで乾燥し解砕した後、焙焼還元して核燃料物質を含む酸化物粉末を作製し、900〜1800℃で焼結するようにしたので、従来の方法に比べて爆発性物質、廃水溶液又は廃有機溶媒を発生させることなく密度が高く、燃料被覆管への充填性に優れた核燃料粒子を製造できる。

Claims (3)

  1. フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニア又は過酸化水素のいずれか一方又は双方を添加して沈殿物を生成する工程と、
    前記沈殿物から造粒粉末を作製する工程と、
    前記造粒粉末を焙焼還元して核燃料物質を含む酸化物粉末を作製する工程と、
    前記酸化物粉末を900〜1800℃で焼結する工程と
    を含む核燃料粒子の製造方法。
  2. 沈殿物から造粒粉末を作製する工程が沈殿物を圧縮造粒又は転動造粒する工程である請求項1記載の製造方法。
  3. フリーの酸濃度をA、核燃料物質のメタル濃度をMとするとき、0.01≦A/M≦2である核燃料物質を含む酸性水溶液にアンモニアと二酸化炭素を添加するか又は炭酸アンモニウムを添加して沈殿物を生成する工程と、
    前記沈殿物を乾燥し解砕する工程と、
    前記解砕物を焙焼還元して核燃料物質を含む酸化物粉末を作製する工程と、
    前記酸化物粉末を900〜1800℃で焼結する工程と
    を含む核燃料粒子の製造方法。
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