JP4048823B2 - 車両のパワートレイン配設構造 - Google Patents

車両のパワートレイン配設構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車室と、この車室の前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上述のエンジンルーム内に配設されたエンジンにより後輪を駆動するような車両のパワートレイン配設構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述例の後輪駆動車両のエンジン配設構造としては、例えば特開平6−2239147号公報に記載の構造がある。
すなわち、図21に示すように、車室91と、この車室91の前方にダッシュパネル92により区画されたエンジンルーム93とが設けられ、上述のエンジンルーム93内に縦置き配設されたエンジン94により後輪(図示せず)を駆動すべく構成したFR(前部機関後輪駆動)タイプの一般的な構造である。なお、図中、95はフロントサイドフレーム、96はインタクーラ、97はクーラコンデンサ、98はラジエータである。
【0003】
この従来構造においては重量物としてのエンジンが車両中心部から前方に離反したエンジンルーム内に配置されているので、ヨー慣性モーメントが比較的大きい問題点があった。
【0004】
そこで、上述のヨー慣性モーメントを低減し、操舵安定性を向上させるためには、特開2001−105833号公報に開示されたような空調ユニットのコンパクト化構造、または特開平10−324141号公報に開示されたようなフィルムダンパキー式の空調ユニットを用いることが考えられる。
【0005】
このような空調ユニットを用いると、前部機関構成のエンジンをある程度、車両の中心部寄りに後退させ、ヨー慣性モーメントの低減により、操縦安定性をある程度向上させることができる。
【0006】
上述のヨー慣性モーメントをさらに低減して、操縦安定性を向上させるためには、エンジンを小型化するか或はエンジンをさらに後退レイアウト化する必要があるが、エンジンの小型化には限界があり、このためエンジンを車両の中心部に配置すべく、さらに後退させる要請があった。
しかし、エンジンを単に後退させると、エンジンルーム93と車室とを仕切るところのダッシュパネルおよびその上方に設けられたカウル部とエンジンとが干渉する問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、FR車両において、カウル部には車幅方向中間部に閉断面の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分を設け、この閉断面減少部分にエンジンの後端部を配設することで、エンジンを後退配置することができ、重量物としてのエンジンを後退配置することで、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操舵安定性を向上させることができると共に、車両前部にクラッシャブルスペースを確保することができる車両のパワートレイン配設構造の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両のパワートレイン配設構造は、車室と、該車室の前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内に配設されたエンジンにより後輪を駆動する後輪駆動車両において、上記ダッシュパネルの上方には、車幅方向に延びる閉断面状のカウル部が設けられ、上記カウル部は車幅方向中間部に閉断面の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分を有すると共に、上記閉断面減少部分に上記エンジンの後端部が配設されたものである。
【0009】
上記構成のダッシュパネルは、ダッシュロアパネルに設定してもよい。
上記構成によれば、カウル部の車幅方向中間部に設けられた閉断面減少部分にパワートレインを構成するエンジンの後端部を配設したので、エンジンを後退配置することができ、重量物としてのエンジンが可及的車両の中央寄りに配設できるので、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操舵安定性を向上させることができると共に、エンジンを後退配置したことにより車両前部にクラッシャブルスペースを確保することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記カウル部は、閉断面減少部分を覆うように、閉断面が通常の大きさの部分を接続する補強パネルを備えたものである。
上記構成によれば、上記補強パネルで閉断面減少部分を覆い、かつ閉断面通常部分を接続するので、該補強パネルにてカウル部の剛性を確保することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記補強パネルはパネル閉断面を有するボックス型に形成されたものである。
上記構成によれば、補強パネルを、パネル閉断面を有するボックス型と成したので、カウル部の剛性向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記補強パネルはカウル部に着脱可能に取付けられたものである。
上記構成によれば、上述の補強パネルを取付け、取外しすることができるので、エンジンまたはエンジン補機などのサービス性、メンテナンス性が向上する。特に点火プラグの交換時等に有効となる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記補強パネルにはワイパーモジュールが取付けられたものである。
上記構成によれば、上述の補強パネルを有効利用してワイパーモジュールを取付けることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記補強パネルまたは/およびワイパーモジュールは、上方からの所定以上の荷重により上記カウル部から離脱して脱落し得るように上記カウル部に取付けられたものである。
【0015】
上記構成によれば、歩行者の安全を図ることができる。すなわち、車両が歩行者と衝突して、歩行者がボンネット上に傾倒したような場合には、上述の補強パネルおよびワイパーモジュールの少なくとも何れか一方は歩行者の傾倒荷重によりカウル部から離脱して落下するので、ワイパーモジュールの特にワイパーピボットによる歩行者への付勢荷重低減を図って、歩行者の安全を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記補強パネルにはウオッシャータンクが取付けられたものである。
上記構成のウオッシャータンクは、フロントウインドガラスに洗浄液を噴射して前方視界を確保する時に用いる洗浄液貯溜手段である。
【0017】
上記構成によれば、補強パネルを有効利用して、そのデッドスペース部分にウオッシャータンクを取付けることができ、洗浄液の経路的にも有効なレイアウトが達成できる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記カウル部の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネルを支持するインパネメンバと、空調ユニットとが設けられ、上記インパネメンバは上記空調ユニットと重複した位置に設けられたものである。
【0019】
上記構成によれば、インパネメンバと空調ユニットとを重複した位置に設けたので、エンジンをより一層後方にレイアウトすることができ、かつインパネメンバと空調ユニットのレイアウトの両立を図ることができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記カウル部の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネルを支持するインパネメンバが設けられ、上記インパネメンバはカウル部の閉断面減少部分と対応する位置で、該カウル部の形状に沿って後方へ湾曲形成されたものである。
【0021】
上記構成によれば、インパネメンバをカウル部の形状に沿って後方へ湾曲形成させたので、閉断面が減少した部分をインパネメンバの湾曲に対応して若干拡大することが可能となる。この結果、車体剛性に寄与するカウル部の剛性を確保することができ、車体剛性の向上を図ることができる。またワイパーモジュールのレイアウトスペースを確保することができるので、上記閉断面減少部分にワイパーモジュールを配設することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記カウル部の下部に配設されるダッシュパネルを設け、上記ダッシュパネルはカウル部の閉断面減少部分と対応して凹設されたものである。
上記構成によれば、カウル部の閉断面減少部分と対応してダッシュパネルを凹設したので、エンジンの後退レイアウトがより一層確実となる。
【0023】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のパワートレイン配設構造を示し、図1においてエンジン1が搭載されたエンジンルーム2と、乗員が乗り込む車室3とが仕切り手段としてのダッシュロアパネル4を隔てて区画されている。
【0024】
上述の車室3の前方に設けられ、かつダッシュロアパネル4にて区画されたエンジンルーム2の上部はボンネット5で開閉可能に覆われる一方、エンジンルーム2内のエンジン1よりも前部にはインタクーラ6、空調用のクーラコンデンサ7、ラジエータ8が前高後低状に傾斜して配置され、またラジエータ8とエンジン1との間には空気浄化手段としてのエアクリーナ9が配置されている。
【0025】
上述のエンジン1はシリンダブロック10、シリンダヘッド11、シリンダヘッドカバー12およびオイルパン13を有し、この実施例ではレシプロエンジン(詳しくは直列4気筒エンジン)を縦置き配置している。
【0026】
上述のダッシュロアパネル4の後端部には車室フロアを形成するフロアパネル14が設けられるが、上述のエンジン1はそのエンジン回転軸としてのクランクシャフトの軸芯線15が車室3のフロアパネル14の高さよりも高い位置に配設されている。
【0027】
また上述のエンジン1の後部には、フロアパネル14のトンネル部16車外側に位置するようにトランスミッション17が接続され、エンジン1とトランスミッション17とでパワートレイン18を構成し、上述のエンジン1によりトランスミッション17、プロペラシャフトおよびリヤディファレンシャル装置を介して後輪を駆動すべく構成している。
【0028】
上述のダッシュロアパネル4の上部にはカウルアッパパネル19とカウルロアパネル20とを接合して車幅方向に延びる閉断面21構造のカウル部22(車体剛性部材)が設けられており、カウル閉断面21の上部にはフロントウインドガラス23を取付けている。
【0029】
さらに上述のダッシュロアパネル4とインストルメントパネル24との間には、可及的エンジン1に近接するように空調ユニット25を配設する一方、上述のカウル部22の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネル(具体的には左右のヒンジピラーにおけるピラーインナパネル)を連結し、かつ上述のインストルメントパネル24を支持するインパネメンバ26を設けている。ここで、上述のインパネメンバ26は空調ユニット25と車両前後方向に重複した位置に設けられている。なお図1において27は前輪である。
【0030】
図2は図1の要部の平面図であって、車両前部において車両の前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム28,28を設け、これらフロントサイドフレーム28,28の前端部相互間には車幅方向に延びるバンパレインフォースメント29を取付けている。
【0031】
またバンパレインフォースメント29の後方位置において左右のフロントサイドフレーム28,28間には車幅方向に延びるフロントクロスメンバ30を横架している。
【0032】
さらにカウル部22の左右両端部から車両の前方に向けて斜め方向に延びるエプロンレインフォースメント31,31を設け、これら左右の各エプロンレインフォースメント31,31の前端部相互間には車幅方向に延びるシュラウドメンバ32を取付けている。上述の各要素28,29,30,31,32は剛性部材である。なお、図2において33はフロントピラー、34はステアリングホイールである。
【0033】
図3は図1の要部の斜視図であって、ダッシュロアパネル4はその車幅方向中央部4aが同パネル4の両側部つまり乗員に対応する位置の一般面4bより車両後方に凹設されて、この中央部4aの前部にエンジン配設空間Eを形成し、このエンジン配設空間E内にエンジン1の後端部1Rを配設している。
図4は図3の分解斜視図、図5は図3のA−A線矢視断面図、図6は図3のB−B線矢視断面図、図7は図3のC−C線矢視断面図であって、カウルアッパパネル19およびカウルロアパネル20の車幅方向中間部にはそれぞれ車両後方側に窪む凹部19a,20aを形成して、カウル部22の車幅方向中間部に閉断面21の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分21Dを形成している。
【0034】
図5、図6はダッシュロアパネル4の中央部4aに対応する断面図であり、図7はダッシュロアパネル4の一般面4bに対応する断面図であって、図7に示すカウル閉断面21が通常の大きさの部分つまり閉断面通常部分21Nに対して、図5、図6の閉断面減少部分21Dはカウル閉断面21の大きさが車両前後方向に減少し、しかも、この閉断面減少部分21Dはエンジン配設空間25と対応して設けられていて、この閉断面減少部分21Dにエンジン1の後端部1Rが配設されている。
【0035】
また図4、図5、図6に示すように、上述の閉断面減少部分21Dを覆って、閉断面通常部分21Nを接続する補強手段として補強パネル35を設けている。
この補強パネル35は凹状の断面構造を有すると共に、外周フランジ部35aには合計4つの取付け部35b…を一体形成している。
【0036】
上述の取付け部35bと対応するように閉断面減少部分21Dに相当してカウルアッパパネル19およびカウルロアパネル20にはそれぞれ取付け部19b,20bが形成されている。
【0037】
上述のカウルロアパネル20における取付け部20bの下面には図6に示す如く予めナット36が溶接固定されていて、各取付け部35b,19b,20bに上下方向に一致するように形成されたボルト挿通孔に上方から挿入されるボルト37を上述のナット36に締付けることで、補強パネル35をカウル部22に着脱可能に取付けている。
【0038】
図8は図1の正面図であって、エンジン1におけるシリンダヘッド11の両側部には複数の吸気管38…と複数の排気管39…とがそれぞれ配設されていて、図8に示すように上述のエンジン1は正面視において吸気管38側が上方となり、排気管39側が下方となる方向に所定角度傾斜して配設されている。
【0039】
図8に仮想線αで示す傾斜させていない直立レイアウトのエンジンに対して、同図に実線で示すように吸気管38側が上方となる方向にエンジン1に傾斜配設すると、吸気管38の配設スペースが拡大され、これにより吸気管38のレイアウトの自由度が向上すると共に、排気側においてはシリンダヘッド11の排気ポート開口端と排気管39の上流端との間が距離Lだけ短くなるので、複数の排気管39の集合部下流にキャタリスト40を設けると、このキャタリスト40の配設位置が上記距離Lだけ排気ポート開口端に近接されるので、有効となる。
【0040】
平面図で示す図2において、シリンダヘッド11の左側に位置する吸気管38は吸気マニホルドを有するもので、これら吸気管38は平面視において車幅方向の外方から車幅方向内方のエンジン1側つまりシリンダヘッド11側に広がるように配設されている。
【0041】
しかも、複数の吸気管38のうちの最後部の吸気管38(図2において図示右側に位置し、ダッシュロアパネル4に近い側の1つの吸気管)は、平面から見てエンジン1側が後方に位置し、車幅方向外方側が前方に位置するように配設されている。
【0042】
同様に、図2においてシリンダヘッド11の右側に位置する排気管39は排気マニホルドを有するもので、これら排気管39は平面視において車幅方向の外方から車幅方向内方のエンジン1側つまりシリンダヘッド11側に広がるように配設されている。
【0043】
しかも、複数の排気管39のうちの最後部の排気管39(図2において図示右側に位置し、ダッシュロアパネル4に近い側の1つの排気管)は、平面から見てエンジン1側が後方に位置し、車幅方向外方側が前方に位置するように配設されており、このような吸排気管38,39のレイアウト構造により、エンジン後退配置の際に、吸排気管38,39とダッシュロアパネル4、カウル部22との干渉を回避すべく構成している。
【0044】
このように図1〜図8で示した実施例の車両のパワートレイン配設構造は、車室3と、該車室3の前方にダッシュロアパネル4により区画されたエンジンルーム2とが設けられ、上記エンジンルーム2内に配設されたエンジン1により後輪を駆動する後輪駆動車両において、上記ダッシュロアパネル4の上方には、車幅方向に延びる閉断面21状のカウル部22が設けられ、上記カウル部22は車幅方向中間部に閉断面21の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分21Dを有すると共に、上記閉断面減少部分21Dに上記エンジン1の後端部1Rが配設されたものである。
【0045】
この構成によれば、カウル部22の車幅方向中間部に設けられた閉断面減少部分21Dにパワートレイン18を構成するエンジン1の後端部1Rを配設したので、エンジン1を後退配置することができる。つまり図1に従来のエンジンのレイアウト位置を仮想線βで示し、この実施例のエンジン1のレイアウト位置を実線で示すように、該エンジン1を後方にレイアウトして、セントラルミッドショップ化を達成することができ、このように重量物としてのエンジン1が可及的車両の中央寄りに配設できるので、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操舵安定性を向上させることができると共に、エンジン1を後退配置したことにより車両前部にクラッシャブルスペースを確保することができる。
【0046】
また、上記カウル部22は、閉断面減少部分21Dを覆うように、閉断面21が通常の大きさの部分つまり閉断面通常部分21Nを接続する補強パネル35を備えたものである。
この構成によれば、上記補強パネル35で閉断面減少部分21Dを覆い、閉断面通常部分21Nを接続するので、該補強パネル35にてカウル部22の剛性を確保することができる。
【0047】
さらに、上記補強パネル35はカウル部22に着脱可能に取付けられたものである。
この構成によれば、上述の補強パネル35を取付け、取外しすることができるので、エンジン1またはエンジン補機などのサービス性、メンテナンス性が向上する。特に点火プラグの交換時等に有効となる。
【0048】
加えて、上記カウル部22の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネル24を支持するインパネメンバ26と、空調ユニット25とが設けられ、上記インパネメンバ26は上記空調ユニット25と上下方向および車両前後方向に重複した位置に設けられたものである。
【0049】
この構成によれば、インパネメンバ26と空調ユニット25とを重複した位置に設けたもので、エンジン1をより一層後方にレイアウトすることができ、かつインパネメンバ26と空調ユニット25のレイアウトの両立を図ることができる。さらに、この実施例では車両の正面衝突時に空調ユニット25が後退移動しようとするのをインパネメンバ26にて防止することができる。
【0050】
また、上記カウル部22の下部に配設されるダッシュロアパネル4を設け、上記ダッシュロアパネル4はカウル部22の閉断面減少部分21Dと対応して凹設されたものである。
この構成によれば、カウル部22の閉断面減少部分21Dと対応してダッシュロアパネル4を凹設したので、エンジン1の後退レイアウトがより一層確実となる。
【0051】
図9、図10は車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示し、この実施例ではカウル部22の閉断面現象部分21Dを覆い、かつ閉断面通常部分21Nを接続する補強手段としての補強パネル35を、蓋部材41と有底筒状の箱部材42とでパネル閉断面43を有するボックス型に形成したものである。
【0052】
この実施例においては上述の蓋部材41の外周部複数箇所たとえば4箇所にカウルアッパパネル19の取付け部19bおよびカウルロアパネル20の取付け部20bに対応する取付け部41bを一体形成すると共に、箱部材42の上端開口部に設けられたフランジ部42aにも上記取付け部19b,20b,41bに対応する合計4つの取付け部42bを一体形成している。
【0053】
そして、上述の各取付け部41b,42b,19b,20bに上下方向に一致するように設けられたボルト挿通孔にボルト37(図6参照)を挿入し、このボルト37をナット36(図6参照)に締付けて、ボックス型の補強パネル35をカウル部22に着脱可能に取付けたものである。
【0054】
このように図9、図10に示す実施例の補強パネル35はパネル閉断面43を有するボックス型に形成されたものである。
この構成によれば、補強パネル35を、パネル閉断面43を有するボックス型と成したので、カウル部22の剛性向上を図ることができる。
【0055】
なお、図9、図10に示す実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図9、図10において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0056】
図11は車両のパワートレイン配設構造のさらに他の実施例を示し、図9、図10で示した構造に加えて、パネル閉断面43内にワイパーモジュール44を取付けたものである。
上述のワイパーモジュール44はワイパーモータ45と複数のリンク46とワイパーピボット47とを有し、ワイパーアーム48を駆動するものである。
【0057】
またワイパーモータ45側とワイパーピボット47側とにはそれぞれ取付け部材49,50が一体的に設けられ、取付け部材49はボルト等の取付け手段により箱部材42の内底部に設けられた取付け座51に固定され、取付け部材50はスペーサ等を介して蓋部材41に取付けられる。
さらに蓋部材41にはワイパーピボット47を上方へ導出する開口部52が設けられる一方、箱部材42の底部には水抜き穴53が形成されている。
【0058】
しかも、上述の蓋部材41において箱部材42の上端開口部の口縁よりも内側の位置には、環状かつ不連続のスリット(切れ目)等による脆弱部54を形成して、上方から所定以上の荷重が作用した時、脆弱部54が破断されて、該脆弱部54で囲繞された蓋部材41の内方部がカウル部22から離脱して脱落し得るように構成している。
【0059】
このように図11で示す実施例にあっては、補強パネル35にはワイパーモジュール44が取付けられたものである。
この構成によれば、上述の補強パネル35を有効利用してワイパーモジュール44を取付けることができる。
【0060】
しかも、上記補強パネル35または/およびワイパーモジュール44(この実施例では補強パネル35を構成する蓋部材41の脆弱部54で囲繞された部分とワイパーモジュール44の双方)は、上方からの所定以上の荷重により上記カウル部22から離脱して脱落し得るように上記カウル部22に取付けられたものである。
【0061】
この構成によれば、歩行者の安全を図ることができる。すなわち、車両が歩行者と衝突して、歩行者がボンネット5上に傾倒したような場合には、上述の補強パネル35およびワイパーモジュール44の少なくとも何れか一方は歩行者の傾倒荷重によりカウル部22から離脱して落下するので、ワイパーモジュール44の特にワイパーピボット47による歩行者への付勢荷重低減を図って、歩行者の安全を図ることができる。
【0062】
なお、図11に示す実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例にほぼ同様であるから、図11において前図と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0063】
図12〜図15はそれぞれ脆弱部の他の実施例を示し、図12の実施例では箱部材42の上端開口部の口縁に近接するフランジ部42aと蓋部材41とに上下方向に対応すべく環状かつ不連続のスリット55,56(脆弱部)を形成し、上方から所定以上の荷重が作用した時、補強パネル35の略全体と、ワイパーモジュール44とを落下すべく構成したものである。
【0064】
図13の実施例では箱部材42の上端開口部の口縁に近接するように蓋部材41側には環状かつ不連続のスリット56(脆弱部)を形成し、箱部材42側には上述のスリット56と対応する位置においてフランジ部42aに環状または略環状の薄肉部57(脆弱部)を形成し、上方から所定以上の荷重が作用した時、補強パネル35の略全体と、ワイパーモジュール44とを落下すべく構成したものである。
【0065】
図14の実施例では箱部材42の上端開口部の口縁近傍位置において該箱部材42の周壁部つまり立壁部に環状かつ不連続のスリット58(脆弱部)を形成し、上方から所定以上の荷重が作用した時、箱部材42とワイパーモジュール44とを落下すべく構成したものである。この図14の実施例においては図11で示した取付け部材49,50はその何れもが箱部材42の内底部側に固定される。
【0066】
図15の実施例では箱部材42の上端開口部の口縁よりも内方側と対応して蓋部材41に環状かつ不連続のスリット56(脆弱部)を形成する一方、箱部材42の周壁部つまり立壁部にはその上端開口部の近傍位置に環状または略環状の薄肉部59(脆弱部)を形成し、上方から所定以上の荷重が作用した時、補強パネル35の略全体と、ワイパーモジュール44とを落下すべく構成したものである。
【0067】
図12〜図15に示す各実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図12〜図15において前図と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0068】
図16は車両のパワートレイン配設構造のさらに他の実施例を示し、この実施例ではカウル部22の閉断面の閉断面減少部分21Dを覆い、かつ閉断面通常部分21Nを接続する補強パネル35としての蓋部材41に、ウオッシャータンク60を取付けたものである。
【0069】
上述のウオッシャータンク60はウオッシャー液注入口61を備えたタンク62と、このタンク本体62の凹部62aに取付けられたポンプ63と、ポンプ63の吐出部に接続されたウオッシャーパイプまたはウオッシャーホース64とが予めサブアセンブリされたもので、タンク本体62のトップデッキ面62bの複数箇所にはトップデッキ下面に予め接合またはインサート成形されたナット(図示せず)と連通するボルト挿通孔65が形成されている。
【0070】
また上述の蓋部材41にはウオッシャー液注入口61の抜け穴66と、上述のボルト挿通孔65に対応するボルト挿通孔67とが設けられていて、ボルト等の取付け部材を用いて、蓋部材41の下部にウオッシャータンク60を着脱可能に取付けたものである。
【0071】
このように図16で示す実施例においては、上記補強パネル35にはウオッシャータンク60が取付けられたものである。
ここで、上述のウオッシャータンク60は、フロントウインドガラス23に洗浄液(ウオッシャー液)を噴射して前方視界を確保する時に用いる洗浄液貯溜手段である。
【0072】
この構成によれば、補強パネル35を有効利用して、そのデッドスペース部分にウオッシャータンク60を取付けることができ、洗浄液(ウオッシャー液)の経路的にも有効なレイアウトが達成できる。
【0073】
なお、図16に示す実施例においてもその他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図16において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0074】
図17、図18は車両のパワートレイン配設構造のさらに他の実施例を示し、インパネメンバ26と空調ユニット25とを車両の前後方向および上下方向に重複した位置に取付ける場合、インパネメンバ26が空調ユニット25内に位置するように構成したものである。
【0075】
すなわち、空調ユニット25を、インパネメンバ26が配設可能な凹部68を有するメインケース69と、上述の凹部68に配置されてインパネメンバ26を保持するサブケース70とに分割し、メインケース69側にエバポレータ71、ヒータコア72、エアミックスドア73、デフロスタドア74、ベントドア75、ヒートドア76、デフロスタ連通口77、ベント連通口78、ヒート吹出口79を設けたものである。
【0076】
また上述の凹部68の複数箇所にはガイドレール80(ガイド手段)を設ける一方、サブケース70側にはガイドレール80に対応して複数のガイド溝81(ガイド手段)を形成し、これら両者80,81の合わせ構造によりサブケース70をメインケース69に位置決め固定して、両ケース69,70間にインパネメンバ26が配置されるように構成している。
【0077】
さらにメインケース69の左右両側部と、これに対応するインパネメンバ26側にはそれぞれ取付けブラケット82,83を接合固定し、これら両ブラケット82,83をボルト、ナット等の締結手段で締結して、図17に示すようにインパネメンバ26に対して空調ユニット25を取付け固定したものである。
【0078】
なお、インパネメンバ26に対しては、まずメインケース69が先行して取付けられ、この後に、サブケース70を取付けるものである。
【0079】
このように図17、図18で示した実施例においては、上記カウル部22の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネル24を支持するインパネメンバ26と、空調ユニット25とが設けられ、上記インパネメンバ26は上記空調ユニット25と重複する該空調ユニット25の略中間位置に設けられたものである。
【0080】
この構成によれば、インパネメンバ26が空調ユニット25と重複するようにその略中間位置に設けたので、エンジン1をより一層後方にレイアウトすることができ、かつインパネメンバ26と空調ユニット25のレイアウトの両立を図ることができる。また、空調ユニット25の吹出し口も適切な位置に配設できる。
【0081】
しかも、車両の正面衝突時に空調ユニット25が後退移動しようとするのを、上述のインパネメンバ26にて確実に阻止することができる。
なお、図17、図18に示す実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図17、図18において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0082】
図19、図20は車両のパワートレイン配設構造のさらに他の実施例を示し、上述のインパネメンバ26をカウル部22の閉断面減少部分21Dと対応する位置で、該カウル部22の形状に沿って後方へ凹状に湾曲形成して、車幅方向の中間部においてインパネメンバ26にはその車幅方向両サイドよりも後退した凹部26Rを設けたものである。
【0083】
また、これに伴って上記閉断面減少部分21Dを若干リヤ側に拡大化したものである。
【0084】
このように図19、図20で示した実施例においては、上記カウル部22の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネル(ヒンジピラー参照)を連結し、かつインストルメントパネル24を支持するインパネメンバ26が設けられ、上記インパネメンバ26はカウル部22の閉断面減少部分21Dと対応する位置で、該カウル部22の形状に沿って後方へ湾曲形成されたものである。
【0085】
この構成によれば、インパネメンバ26をカウル部22の形状に沿って後方へ湾曲形成させたので、閉断面が減少した部分21Dをインパネメンバ26の湾曲に対応して若干拡大することが可能となる。この結果、車体剛性に寄与するカウル部22の剛性を確保することができ、車体剛性の向上を図ることができる。またインパネメンバ26を後方に凹状に湾曲させない場合には図19に矢印で示すワイパレイアウトスペースW1が確保されるのみで、図20に比較例の構成を仮想線x,yで示すようにカウル閉断面21内にワイパーモジュール44を配設すると、このワイパーモジュール44とカウルロアパネル20とが干渉するが、この実施例のようにインパネメンバ26に凹部26Rを設けてカウル部22の閉断面減少部分21Dをリヤ側へ若干拡大化すると、図19に矢印で示すように拡大されたワイパーモジュール44のレイアウトスペースW2を確保することができるので、上記閉断面減少部分21Dにワイパーモジュール44を配設することができる。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のダッシュパネルは、実施例のダッシュロアパネル4に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0087】
【発明の効果】
この発明によれば、FR車両において、カウル部には車幅方向中間部に閉断面の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分を設け、この閉断面減少部分にエンジンの後端部を配設したので、エンジンを後退配置することができ、重量物としてのエンジンを後退配置することで、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操舵安定性を向上させることができると共に、車両前部にクラッシャブルスペースを確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の車両のパワートレイン配設構造を示す側面図。
【図2】 図1の要部の平面図。
【図3】 図1の要部の斜視図。
【図4】 図3の要部の分解斜視図。
【図5】 図3のA−A線矢視断面図。
【図6】 図3のB−B線矢視断面図。
【図7】 図3のC−C線矢視断面図。
【図8】 図1の要部の正面図。
【図9】 補強パネルの他の実施例を示す側面図。
【図10】 図9の補強パネルの分解斜視図。
【図11】 補強パネルに対するワイパーモジュール取付け構造を示す分解斜視図。
【図12】 脆弱部の他の実施例を示す断面図。
【図13】 脆弱部の他の実施例を示す断面図。
【図14】 脆弱部の他の実施例を示す断面図。
【図15】 脆弱部の他の実施例を示す断面図。
【図16】 補強パネルに対するウオッシャータンク取付け構造を示す分解斜視図。
【図17】 本発明の車両のパワートレイン配設構造の他の実施例を示す側面図。
【図18】 図17の要部の分解斜視図。
【図19】 本発明の車両のパワートレイン配設構造のさらに他の実施例を示す平面図。
【図20】 図19の要部断面図。
【図21】 従来の車両のパワートレイン配設構造を示す平面図。
【符号の説明】
1…エンジン
1R…後端部
2…エンジンルーム
3…車室
4…ダッシュロアパネル
18…パワートレイン
21…カウル閉断面
21D…閉断面減少部分
21N…閉断面通常部分
22…カウル部
24…インストルメントパネル
25…空調ユニット
26…インパネメンバ
35…補強パネル
43…パネル閉断面
44…ワイパーモジュール
60…ウオッシャータンク

Claims (10)

  1. 車室と、該車室の前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、
    上記エンジンルーム内に配設されたエンジンにより後輪を駆動する後輪駆動車両において、
    上記ダッシュパネルの上方には、車幅方向に延びる閉断面状のカウル部が設けられ、
    上記カウル部は車幅方向中間部に閉断面の大きさが車両前後方向に減少した閉断面減少部分を有すると共に、
    上記閉断面減少部分に上記エンジンの後端部が配設された
    車両のパワートレイン配設構造。
  2. 上記カウル部は、閉断面減少部分を覆うように、閉断面が通常の大きさの部分を接続する補強パネルを備えた
    請求項1記載の車両のパワートレイン配設構造。
  3. 上記補強パネルはパネル閉断面を有するボックス型に形成された
    請求項2記載の車両のパワートレイン配設構造。
  4. 上記補強パネルはカウル部に着脱可能に取付けられた
    請求項2または3記載の車両のパワートレイン配設構造。
  5. 上記補強パネルにはワイパーモジュールが取付けられた
    請求項2,3または4記載の車両のパワートレイン配設構造。
  6. 上記補強パネルまたは/およびワイパーモジュールは、上方からの所定以上の荷重により上記カウル部から離脱して脱落し得るように上記カウル部に取付けられた
    請求項4記載の車両のパワートレイン配設構造。
  7. 上記補強パネルにはウオッシャータンクが取付けられた
    請求項1,2または4記載の車両のパワートレイン配設構造。
  8. 上記カウル部の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネルを支持するインパネメンバと、空調ユニットとが設けられ、
    上記インパネメンバは上記空調ユニットと重複した位置に設けられた
    請求項1,2,3,4,5,6または7記載の車両のパワートレイン配設構造。
  9. 上記カウル部の車両後方近傍には車幅方向に延びて車体両側部のパネルを連結し、かつインストルメントパネルを支持するインパネメンバが設けられ、
    上記インパネメンバはカウル部の閉断面減少部分と対応する位置で、該カウル部の形状に沿って後方へ湾曲形成された
    請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の
    車両のパワートレイン配設構造。
  10. 上記カウル部の下部に配設されるダッシュパネルを設け、
    上記ダッシュパネルはカウル部の閉断面減少部分と対応して凹設された
    請求項1,2,3,4,5,6,7.8または9記載の
    車両のパワートレイン配設構造。
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