JP4048665B2 - 熱現像材料、現像方法及び画像形成方法 - Google Patents
熱現像材料、現像方法及び画像形成方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像により画像を形成する熱現像材料に関するもので、さらに詳しくは、ハレーションやイラジエーションを防止する染料を使用し、鮮鋭性を向上させることができ、且つ該染料が熱現像後には消色して残色や色調等の妨害を与えることなく、保存安定性に優れ、且つ高湿度下での保存においても色調変化の少ない熱現像材料に関する。
【0002】
さらにまた、長期に亘る熱現像において変形や変色等を生ずることのない熱ローラーを用いた現像方法及び縦マルチ走査型レーザー露光を行う画像形成方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
近年、医療や印刷の分野で環境保護や作業性の面から湿式処理に伴う廃液の出ない熱現像感材が強く望まれている。特に熱現像により、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が必要とされている。これらの光熱写真材料は通常、80℃以上の温度で現像が行われるので、熱現像材料と呼ばれている。
【0004】
従来からこのタイプの熱現像材料では、感光層の他に、該感光層に向けて照射した光が吸収されず通過して支持体の界面や中間層や接着層で乱反射するのを防ぐイラジエーション防止層(AI層)あるいはバッキング層(BC層)が設けられる。上記AI層は主に感光層と支持体の間に、BC層は支持体に対して感光層の反対側に設定される。AI層やBC層には感光用の主波長を効率良く吸収する染料が使用される。露光時には必要な染料であっても、現像後に染料が残っていると、可視部の吸収による残色を生じ、銀画像の識別を妨げるようになるため、できるだけ染料を消去して可視部の吸収を下げる必要があった。このため、熱現像材料は現像時に熱で分解して消色する染料(以後、単に熱消色染料ともいう)を使用することが考えられてきた。上記熱消色染料を使用した熱現像材料としては例えば、米国特許第3,745,009号、同4,033,948号、同4,524,128号、同4,594,312号、同4,994,356号、同5,135,842号、同5,314,795号、同5,324,627号、同5,384,237号、欧州特許第911,693号等の各明細書が知られている。しかしながら、従来から熱現像材料用として良好な特性を示す染料がなく、染料の使用量を残色を生じない程度にまで減量するか、又は可視部の吸収の少ない赤外領域の染料を使用する等の方法が取られてきた。
【0005】
さらには、染料の熱現像時の消色性は良好であっても、例えば現像時に熱ローラーと熱現像材料との接触により染料が分解し、その分解物が熱ローラーに付着し、これが次の熱現像材料に転写して汚れを発生する、染料が熱等により分解し易い性質を有することから染料自体及び該染料を含有する層を有する熱現像材料の保存安定性が悪い、熱ローラーに染料分解物の付着が繰り返され堆積してローラー表面の均一性を損ない現像ムラを引き起こす、その他染料そのものや分解物が蒸発して熱ローラーの材料と反応して物性を劣化させる等の欠点を有していた。
【0006】
そこで、熱ローラーについても、化学反応性の少ない耐熱素材が探索され、シリコーンゴムやノルボルネン−オレフィンゴム等が検討されてきたが現像の均一性においては不充分であった。また、レーザー露光の入射光と熱現像材料を構成する構成層の界面での反射光の位相とが該構成層の屈折率や膜厚、あるいは入射角度や反射角度によりずれるため、光量が増幅または減衰して特有の一定な模様を描く、いわゆる干渉縞を生じて、画像品質を損なう現象についても、染料の種類やレーザー露光の方法等について多くの対策研究が行われたが、今だ有効な方法が見いだされていないのが実情である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱現像により得られる画像の鮮鋭性が高く、熱消色染料の熱消色性が優れていて残色が少なく、保存時の熱消色染料の安定性が高いこと、特に高湿下の保存安定性が優れること、現像時に熱消色染料による熱ローラーの汚れの発生やローラーの劣化が少ないこと、長期ランニング時の安定性に優れていること、さらにはレーザー露光において画像上に干渉縞を生じにくいこと等の特徴を有する熱現像材料、該熱現像材料の現像方法及び画像形成方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記構成により達成される。
【0009】
1.支持体上に感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含有する感光層及び非感光層を有する熱現像材料において、該感光層又は非感光層中に、下記一般式(1)で示され、且つ80〜200℃の熱により消色する染料を含有し、且つ該染料を含有する層が、ガラス転移温度−20〜80℃のラテックスを含有することを特徴とする熱現像材料。
【0010】
【化4】
【0011】
式中、R1は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、置換基を有してもよい芳香族基、NR11R12、OR11又はSR11を表し、R11とR12は独立して水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R11とR12が結合して窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよい。R2は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、又は芳香族基を表す。Z1は窒素原子を含むヘテロ環基、Z2は窒素原子を有しない芳香族基を表す。L1は偶数のメチン鎖を有する2価の結合基、Xはアニオン基を表す。
【0012】
2.前記熱により消色する染料が下記一般式(2)で示される塩基発生前駆体化合物を含有することを特徴とする前記1に記載の熱現像材料。
【0013】
【化5】
【0014】
式中、Z3およびZ4は置換基を有してもよい4員から9員の環を形成するに必要な原子群、L2は2価の結合基、Yは置換基を表す。nは0≦n≦4の正数を表し、nが2以上の場合は隣接する置換基が環を形成してもよい。
【0015】
3.前記熱により消色する染料を含有する層が、該染料の感光主波長に対する濃度が0.20以上であり、熱現像後に0.18以下になるように塗設されている層を有することを特徴とする前記1又は2に記載の熱現像材料。
【0017】
4.前記熱により消色する染料を含有する層が、下記一般式(3)で示されるポリハロメタン化合物を含有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の熱現像材料。
【0018】
【化6】
【0019】
式中、Qは置換基を有してもよい芳香族基又はヘテロ環基、L3は2価の結合基、Xはハロゲン原子を表す。
【0020】
5.前記1〜4の何れか1項に記載の熱現像材料の現像が、金属酸化物を含有するシリコーンゴム製の熱ローラーを用いて行われることを特徴とする熱現像材料の現像方法。
【0021】
6.前記金属酸化物の少なくとも1部が表面処理された酸化鉄類であることを特徴とする前記5に記載の熱現像材料の現像方法。
【0022】
7.前記1〜4の何れか1項に記載の熱現像材料の画像露光が、縦マルチ方式のレーザー露光機を用いて行われることを特徴とする画像形成方法。
8.支持体上に感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含有する感光層及び非感光層を有する熱現像材料において、該感光層又は非感光層中に、下記一般式(a)で示され、且つ80〜200℃の熱により消色する染料を含有することを特徴とする熱現像材料。
【化C】
(式中、R 1 は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、置換基を有してもよい芳香族基、NR 11 R 12 、OR 11 又はSR 11 を表し、R 11 とR 12 は独立して水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R 11 とR 12 が結合して窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよい。R 2 は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、又は芳香族基を表す。Z 1 は窒素原子を含むヘテロ環基、Z 2 は窒素原子を有しない芳香族基を表す。L 1 は、下記式で表される2価の結合基、Xはアニオン基を表す。)
【化D】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱現像材料は、通常は支持体上に少なくても1層の感光層及び非感光層を設けた構成とされ、該非感光層としては感光層の下部(支持体と感光層の間)に設けられるAI層、感光層の上部に設けられる保護層、更に支持体に対して感光層の反対側に設けられるBC層、その上部に設けられる保護層等が含まれる。上記感光層中には、主としてハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤および高分子結合剤が含まれている。また、上記非感光層の主としてAI層やBC層には感光波長に対して吸収効率が高く、且つ熱消色性のよい本発明の一般式(1)で示される熱消色染料を存在させ、それによって、熱現像材料の構成層界面での乱反射による鮮鋭性の劣化や干渉縞の発生を防止するようにしている。なお、上記熱消色染料は熱現像材料の画像特性を損なわない範囲で感光層及び非感光層の保護層等に含有させてもよい。
【0024】
さらに、上記感光層及び非感光層、特にはAI層及びBC層には、含有され熱消色染料の熱消色性を向上させるため、熱により層の塩基性を高める一般式(2)で示される塩基発生前駆体化合物を含有させることができる。
【0025】
また、上記感光層及び非感光層(保護層、AI層及びBC層を含む)には高分子結合剤が含有され、特に熱消色染料の消色性を高めるための消色反応の場を提供することができるラテックスを含有させるのが好ましい。さらにまた、上記感光層及び非感光層、特にはAI層及びBC層には熱消色染料を消色又は濃度低下させる際の触媒として作用するポリハロメタン化合物を含有させるのが好ましい。
【0026】
以下、一般式(1)(一般式(a))の消色染料、一般式(2)の塩基発生前駆体化合物、前記高分子結合剤、特にはラテックス、触媒として作用するポリハロメタン化合物、その他熱現像に用いられる熱現像ローラーの構成やレーザーの露光方法及び現像方法等について順次説明する。
【0027】
式中、R1は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、置換基を有してもよい芳香族基、NR11R12、OR11又はSR11を表し、R11とR12は独立して水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基又は芳香族基を表し、R11とR12が結合して窒素原子を含むヘテロ環を形成してもよい。R2は水素原子、置換基を有してもよい脂肪族基、又は芳香族基を表す。Z1は窒素原子を含有するヘテロ環基、Z2は窒素原子を有しない芳香族基を表す。L1は偶数のメチン鎖を有する2価の結合基、Xはアニオン基を表す。
【0028】
R1の置換基としては、それぞれ置換されてもよいアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、オクトキシ基、ドデカノキシ基、ドコサノキシ基、2−エチルヘキサノキシ基)、ハロゲン化アルコキシ基(トリフロロメトキシ基、パーフロロオクタノキシ基)、シクロアルコキシ基(シクロヘキサノキシ基、シクロオクタノキシ基、シクロペンタノキシ基等)、芳香族基(フェノキシ基、ナフテノキシ基等)、ヘテロ環基(ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピペラジル基、イミダゾリル基、トリアゾール基、テトラゾール基等)、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、プロピルアミノ基、オクチルアミノ基、テトラデシル基)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジオクチルアミノ基)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基)、を表し、アルキル基部分は炭素数1から25が好ましい。特にヘテロ環基の中で好ましい基は、フェノキサジン基(フェノキサジン基、2,7−ジクロロフェノキサジン)、フェノチアジン基(フェノチアジン基、2,8−ジクロロフェノチアジン基、2,8−ジフロロフェノチアジン基、2,3,7,8−テトラジクロロフェノチアジン基)、カルバゾール基(カルバゾール基、2,7−ジクロロカルバゾール基、2,7−ジフロロカルバゾール基)、キノリン基、キノキサリン基を挙げることができる。R2の置換基として水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基)、アルケニル基、アルキン基を挙げることができるが、特に水素原子が好ましい。Xはアニオン部を表し、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、パラトルエンスルホン酸、1,5−ジスルホナフタレン、四フッ化硼素、塩素酸、六フッ化燐等を挙げることができる。Z1は窒素原子を含むヘテロ環であり、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、イミダゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラゾリン環等を挙げることができる。Z2は、置換基を有してもよい芳香族環を表し、この芳香族環上の2つの隣接する置換基が、更に芳香族環またはヘテロ環を形成してもよい。なお、本発明の熱消色染料は、欧州特許第911,693号明細書、特開昭61−123454号公報および特開平7−333784号公報に記載の染料合成方法に準じて合成することができる。
【0029】
一般式(1)の好ましい化合物例として以下のものを挙げることができる。
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
【化12】
【0036】
【化13】
【0037】
【化14】
【0038】
【化15】
【0039】
【化16】
【0040】
【化17】
【0041】
【化18】
【0042】
【化19】
【0043】
【化20】
【0044】
〈一般式(2)の塩基発生前駆体化合物〉
次に本発明の塩基発生前駆体化合物を示す一般式(2)についてさらに詳述する。
【0045】
式中、Z3およびZ4は置換基を有してもよい4員から9員の環を形成するに必要な原子群を、L2は2価の結合基、Yは置換基を表す。nは0≦n≦4の正数を表しnが2以上の場合、隣接する置換基が環を形成してもよい。
【0046】
Z3及びZ4の好ましいヘテロ環はピリミジン環、イミダゾール環、s−トリアジン環、プリン環、ベンツイミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンツイミダゾール環、チアジアゾール環の窒素原子を4級化したオニウム体を挙げることができる。L2は2価の結合基であって、それぞれ置換基を有してもよい炭層数1〜30の飽和または不飽和の脂肪族基、芳香族基およびヘテロ環基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、オクチレン基、ドデシレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基やこれらの炭素原子に置換基を有するものが挙げられる。尚、本発明の塩基発生前駆体化合物は、特公平7−59545号および特公平8−10321号等の各公報記載の方法に準じて合成することができる。
【0047】
一般式(2)の好ましい化合物例として以下のものを挙げることができる。
【0048】
【化21】
【0049】
【化22】
【0050】
【化23】
【0051】
本発明の一般式(1)および一般式(2)の化合物を本発明の熱現像材料の感光層又は非感光層に、例えばサンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や後述する極性溶媒等に分散して添加することができる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて平均粒子径が0.05μmから10μmの微粒子分散体を添加することができる。微粒子分散体としては、分散微粒子の粒子径の標準偏差を平均粒子径で割り100を掛けた数値で表す単分散度が1〜30、好ましくは1〜20のものが好ましい。
〈熱現像材料の高分子結合剤〉
本発明の熱現像材料の高分子結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材、熱消色染料が80〜200℃以下の熱で消色する反応に好ましい素材、あるいは塩基発生前駆体が熱により速やかに塩基を発生するような素材が選択される。上記高分子結合剤としては例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがあり、本発明の熱現像材料の高分子結合剤としては、水分散系ポリマーが好ましい。また、好ましいポリマーの組成について更にガラス転移点が−20℃から80℃が好ましく、特に−5℃から60℃が好ましい。ガラス転移点が高いと熱現像する温度が高くなり、低いとカブリ易くなり、感度の低下や軟調になるからである。
【0052】
上記極性溶媒等に溶解して用いられるポリマーとしては例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、デンプンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。更に乾燥後、膜を形成したのち、その塗膜の平衡含水率の低いものが好ましく、特に含水率の低いものとして、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(メチルメタクリル酸)などのポリ(アクリル酸エステル)類、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類を挙げることができる。
【0053】
また、上記水分散系ポリマーとしては、平均粒子径が1nmから数μmの範囲の微粒子にして水系分散媒中に分散されたものが好ましい。水分散系ポリマーは水系塗布の結合剤として広く使用されている中で耐水性を向上させることができる点からラテックスが特に好ましい。結合剤として耐水性を得る目的のラテックスの使用量は、塗布性を勘案して決められるが耐湿性の観点から多いほど好ましく、全結合剤に対して50〜100質量%、80〜100質量%が好ましい。
《ラテックスの具体例》
好ましい水分散系ラテックスの具体例を以下に示すが、ここでは、スチレンをSt、メチルアクリレートをMA、メチルメタクリレートをMMA、エチルアクレイレートをEA、ブチルアクリレートをBA、イソノニルアクリレートをINA、シクロヘキシルメタクリレートをCA、ヒドロキシエチルクリレートをHEA、ヒドロキシエチルメタクリレートをHEMA、アクリル酸をAA、アクリルアミドAAm、スチレンスルホン酸をSt−S、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アミドをAMPS、イソプレンスルホン酸をIP−S、2−プロペニル−4−ノニルフェノキシエチレンオキサイド(n=10)スルホン酸エステルをPF−Sと省略して表し、付帯数字は質量組成比を表す。
【0054】
〈一般式(3)のポリハロメタン化合物〉
本発明に使用するポリハロメタン化合物は、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号等の明細書に開示されているような化合物を適用することができる。これらのポリハロメタン化合物はカブリ防止剤として使用されているが、本発明では、熱消色染料を含む層または隣接層にこれらを存在させることにより消色性を促進させるところが大きく異なる。
【0055】
本発明のポリハロメタンを示す一般式(3)についてさらに詳述する。
式中、Qは置換基を有してもよい芳香族基またはヘテロ環基、L3は2価の結合基、Xはハロゲン原子を表す。
【0056】
Qの好ましい芳香族基としてベンゼン環、ナフタリン環、アントラセン環、フローレン環、アントラセン環、アズレン環、ヘテロ環基としてピリジン環、フェナンスロリン環、アクリジン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、キノクサリン環、イソキノリン環、チオナフテン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンツイミダゾール環等を有する基をあげることができる。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子、臭素原子または沃素原子を表す。L3は2価の結合基を表し、−SO2−基、−SO−基、アルキレン基(メチレン基、エチレン基、ブチレン基、アセチレン基等)を挙げることができる。Qの芳香属環やヘテロ環上に導入できる置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、ヘキシルスルホニルアミノ基、シクロヘキシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキザモイル基等から選択することができる。また、隣接する置換基が縮合環を形成し、更に上記置換基を有しても良い。
【0057】
下記に好ましいポリハロメタン化合物の具体例を示す。
【0058】
【化24】
【0059】
【化25】
【0060】
【化26】
【0061】
【化27】
【0062】
本発明のポリハロメタン化合物は、前記一般式(1)や一般式(2)の化合物の添加方法と同様に有機溶媒に溶解して又は水や水溶性溶媒に微粒子分散しして添加することができる。
〈熱現像用熱ローラー〉
本発明の熱現像材料を現像する現像機の熱現像部に採用する熱ローラーは、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性、帯電防止特性等を備えた任意のローラーを採用することができるが、特に耐熱性と耐薬品性を高めたシリコーンゴム(オルガノポリシロキサン)ローラーが好ましい。シリコーンゴムは、必要に応じて種々の着色剤を添加して色着けが行われている。シリコーンゴムに黒色を与える代表的な着色剤としてはカーボンブラックや黒ベンガラ(Fe3O4)が知られている。また種々の添加剤を添加して耐熱性を与えることも行われている。このようなシリコーンゴム組成物に耐熱性を与える方法としては、一般的には架橋促進剤として白金触媒が代表的であり、また白金触媒とカーボンブラック等の添加剤との組合わせも提案されている。例えば米国特許第3,652,488号明細書ではカーボンブラックが、また米国特許第3,635,874号明細書では酸化チタンが助剤として挙げられている。国内では特公昭51−24302号公報で酸化鉄(FeO)x(Fe2O3)yを添加する方法が用いられており、中でも黒ベンガラ(Fe3O4)は黒色で、熱伝導性に優れていることから好ましいものとして記載されている。
【0063】
しかしながら、上記黒ベンガラ等の酸化鉄類は熱現像材料の還元剤と酸化剤との酸化還元反応により色が黒から赤に変化し、それにともなって機械強度、耐熱性が低下し易いという問題がある。本発明ではシリコーンゴムローラーに添加される金属酸化物が酸化鉄類のときは、好ましくはその表面を変質防止のための処理を施したものが用いられる。
【0064】
以下、熱ローラーとしてのシリコーンゴムローラーを製造するための各成分の好ましい配合例を示す。
(A)珪素原子の一部を炭素数1〜30の異種原子で置換されてもよいオルガノポリシロキサン100質量部に対して、
(B)金属酸化物10〜100質量部、
(C)硬化剤0.1〜10質量部、
(D)変質防止のための表面処理が施された酸化鉄類0.1〜50質量部が添加される。
【0065】
以下、上記(A)、(B)、(C)及び(D)についてさらに詳述する。
本発明のシリコーンゴムローラーを製造するための(A)成分のオルガノポリシロキサンは、該オルガノポリシロキサンの珪素原子に置換または非置換の炭素数1〜10の1価の炭化水素基を有し、該1価の炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基などが例示され、さらに該1価の炭化水素基が有してもよい置換基として例えばメチル基、ビニル基又はフェニル基等から選択される一価の基が好ましい。上記アルケニル基は0.01〜5モル%、特に0.02〜0.5モル%含有されることが好ましい。さらにまた上記1価の炭化水素基としてのアルキル基、アルケニル基、アリール基などの炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換されたものであってもよく、例えば3,3,3−トリフロロプロピル基、2−シアノエチル基などが挙げられ、3,3,3−トリフロロプロピル基が特に好ましい。また、上記オルガノポリシロキサンの分子鎖両末端基としてはヒドロキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、トリビニルシリル基などが挙げられるが特にこれらに限定されない。前記(A)成分のオルガノポリシロキサンは、十分な機械強度を出すために、重合度が2,700以上、好ましくは3,000〜20,000であるが、特に好ましくは4,800〜10,000である。また(A)成分のオルガノポリシロキサンは構造や重合度の異なる2種以上を併用することもできる。
【0066】
(B)成分の金属酸化物はシリコーンゴムの補強用として用いられ、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、マグネタイト、ヘマタイト、黒ベンガラ等が挙げられ、特にシリカが好ましく用いられ、該シリカとしてはシリコーンゴムに適度の硬さを与え且つその引張り強さ等の機械強度を向上させるために、その有する比表面積が66m2/g以上のものが使用されるが、特に99m2〜444m2/gのものが好ましい。このような補強性シリカとして具体的には、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。またこれらのシリカは直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジクロルジメチルシラン等で表面処理されたものを用いることもできる。(B)成分の配合量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10〜100質量部であり、好ましくは20〜50質量部である。配合量がこの数値範囲外であると、シリコーンゴム組成物の加工性が悪くなったり、十分な機械強度が得られなくなる場合がある。
【0067】
(C)成分は、本発明の組成物を硬化させてシリコーンゴムとするものであり、一般には有機過酸化物が使用される。また(A)成分のオルガノポリシロキサンが分子中に2個以上のアルケニル基を含有する場合には硬化剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒の組合わせたものが使用可能である。硬化剤の量は後記のように本発明の組成物を硬化させるのに十分な量であればよい。本発明で使用可能な有機過酸化物を例示するとジクミルパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これら有機過酸化物の配合量は、本発明の組成物を硬化させるのに十分な量として(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内である。
【0068】
また、前記(A)成分のオルガノポリシロキサンが分子中に2個以上のアルケニル基を含有する場合に硬化剤として使用可能なオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端メチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体などが例示される。他方白金系触媒としては塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とジビニルテトラメチルシロキサンとの錯体等が例示される。上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、一般に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中に含まれるケイ素原子に結合する水素原子のモル数と(A)成分中のアルケニル基のモル数との比率が(0.5:1)〜(20:1)になる量であり、白金系触媒の量は、一般に(A)成分の質量にもとづいて、白金量換算で0.1〜3,000ppm程度であり耐熱化剤として白金化合物を用いる場合は共用できる。
【0069】
次に(D)成分はシリコーン組成物の好ましい成分であり、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、酸化チタン、酸化すず等の金属酸化物で表面処理して変質防止されたマグネタイト、ヘマタイト、黒ベンガラ等の酸化鉄類、又はマンガン、アンチモン、スズ、亜鉛等の金属を表面にドープして変質防止処理がなされたマグネタイト、ヘマタイト、黒ベンガラ等の酸化鉄類が0.1〜50質量%含有される。
【0070】
本発明のシリコーン組成物の特に好ましい成分としては、1〜10質量%のアルミナ又シリカ−アルミナで処理されたマグネタイト及び/又は10〜20質量%のマンガンがドープされた微粉状のヘマタイトである。一般にマグネタイトやヘマタイトは酸化剤に接する場合、80℃を越えると表面が酸化されて黒色から赤色に変色して変質するが、上記のように表面処理されたマグネタイトやヘマタイトは、耐熱性に優れ、これらを配合したシリコーン組成物から得られるシリコーンゴムローラーの耐熱試験や対薬品性において茶変や赤変を生ぜず、さらには白金化合物を併用すると優れた耐熱性を示し、且つ高温に暴露後の機械的強度の低下が少ないという特性が発揮される。上記のようにアルミナ又はシリカ−アルミナの処理量はマグネタイトに対して1〜10質量%であり、1質量%未満ではシリコーンゴムローラーに十分な耐熱性を付与することができず、10質量%を越えると表面処理されたマグネタイトの十分な分散性が得られず、機械的強度の均一なシリコーンゴムローラーが得られない。
【0071】
また、ヘマタイトは通常赤色であるが、マンガンが上記したように10〜20質量%ドープされた微粉状のヘマタイトは優れた黒色となり、マンガンのドープ量が10質量%未満ではシリコーンゴムローラーに対して十分な黒色を与えず、20質量%を越えるとヘマタイトが凝集し易くなり、且つ分散性が低下する。上記したマンガンやヘマタイトは市販のものをもちいて表面処理を行うことができる。
【0072】
また(D)成分は更に本発明の目的を損なわない範囲内において、シランカップリング剤などの有機化合物やAl、Siなどの無機化合物で処理し、流動性や耐薬品性を改良したものも使用可能である。(D)成分の粒径は0.1〜5.0μmものが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0μmである。0.1μm未満のものは活性が高く配合が困難なことがあり、5.0μmを超えると硬化物の機械強度を損ねることがある。本発明において、(D)成分をオルガノポリシロキサン組成物に配合する際通常用いられるニーダー、バンバリーミキサー、オープンロールなどの混練り機を使用しうる。(D)成分の配合量は前記したように(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜5質量部の範囲で用いられる。0.1質量部未満であると十分な黒色とならず、耐熱性、耐薬品性も不充分となり50質量部を超えるとシリコーンゴムローラーの弾性が悪くなる。また前記(D)成分を2種以上併用してもよい。
【0073】
なお、上記白金化合物は(D)成分と共にシリコーンゴムの耐熱性の効果を相乗的に向上させるものであり、形態としては前記のように塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液などが挙げられる。白金化合物の添加量は白金量換算で本発明のシリコーンゴム組成物100質量部に対して0.0001〜0.1質量部で好ましくは0.001〜0.01質量部ある。上記限定範囲下限値未満であると効果が不十分になり、限定範囲上限値を超えても効果は変わらずかえって経済的でない。
【0074】
また、シリコーンゴム組成物には、前記(A)〜(D)成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲内の量で、通常シリコーンゴムに適宜配合される種々のゴム配合剤、例えばジフェニルシランジオール、低重合度の分子鎖末端水酸基のシリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン、アルコキシシラン等の分散剤、粉砕シリカ、けいそう土、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、アスベスト、ガラスウール、微粉マイカ、溶融シリカ粉末等を添加配合しても差し支えない。更に必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、窒化ホウ素、酸化アルミニウム等の熱伝導性向上剤などを配合してもよい。
【0075】
シリコーンゴム組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、(A)、(B)成分をニーダー等の混練装置に仕込み、室温で配合した後、80〜200℃の温度で、30分〜5時間熱処理し、その後(D)成分を加えローラーミルやバンバリーミキサー等で混練りする方法などを採用することができる。その後(C)成分を添加し公知の方法で加熱硬化すればよい。このようにして得られるシリコーンゴム硬化物は、良好な耐熱性と耐薬品性を有する。
〈本発明の熱現像材料に含有される有機銀塩〉
本発明の熱現像材料に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドのようなアルデヒド類とサリチル酸、ベンジル酸3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸のようなヒドロキシ置換酸類);チオエン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオエン及び3−カルボキシメチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−チオエン);イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;メルカプチド類の銀塩等が挙げられる。
〈本発明の熱現像材料に含有される還元剤〉
本発明の熱現像材料には還元剤を内蔵させることが好ましい。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号等の各明細書、及びResearch Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものが挙げられる。
【0076】
アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシ−3−ピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノレダクトン類エステル(例えば、ピペリジノヘキソースレダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒド又はケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシム類;アジン類;脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ;ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ;レダクトン及び/又はヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体;ヒンダードフェノール類;3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤は、ヒンダードフェノール類である。ヒンダードフェノール類としては、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化28】
【0078】
式中、Rは水素原子、又は炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、−C4H9、2,4,4−トリメチルペンチル)を表し、R′及びR″は炭素原子数1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、t−ブチル)を表す。
【0079】
一般式(A)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は、以下の化合物に限定されるものではない。
【0080】
【化29】
【0081】
【化30】
【0082】
前記一般式(A)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当り1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
〈本発明の熱現像材料に含有される感光性ハロゲン化銀〉
本発明の熱現像材料の感光層中に含有される感光性ハロゲン化銀は、シングルジェット若しくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えばアンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法で予め調製し、次いで本発明の他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。この場合に感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の接触を充分に行わせるため、例えば感光性ハロゲン化銀を調製するときの保護ポリマーとして米国特許第3,706,564号、同第3,706,565号、同第3,713,833号、同第3,748,143号、英国特許第1,362,970号各明細書に記載されたポリビニルアセタール類などのゼラチン以外のポリマーを用いる手段や、英国特許第1,354,186号明細書に記載されているような感光性ハロゲン化銀乳剤のゼラチンを酵素分解する手段、又は米国特許第4,076,539号明細書に記載されているように感光性ハロゲン化銀粒子を界面活性剤の存在下で調製することによって保護ポリマーの使用を省略する手段等の各手段を適用することができる。
【0083】
感光性ハロゲン化銀は、光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑えるために、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。
【0084】
上記ハロゲン化銀の量はハロゲン化銀及び後述の有機銀塩の総量に対し50質量%以下好ましくは25〜0.1質量%、更に好ましくは15〜0.1質量%の間である。
【0085】
本発明の熱現像感光材料に使用される感光性ハロゲン化銀はまた、英国特許第1,447,454号明細書に記載されている様に、有機銀塩を調製する際にハライドイオン等のハロゲン成分を有機銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで有機銀塩の生成とほぼ同時に生成させることができる。
【0086】
更に他の方法としては、予め調製された有機銀塩の溶液もしくは分散液、または有機銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。このようにして形成されたハロゲン化銀は有機銀塩と有効に接触しており好ましい作用を呈する。ハロゲン化銀形成成分とは有機銀塩と反応して感光性ハロゲン化銀を生成しうる化合物であり、どのような化合物がこれに該当し有効であるかは次のごとき簡単な試験で判別する事が出来る。即ち、有機銀塩と試験されるべき化合物を混入し必要ならば加熱した後にX線回折法によりハロゲン化銀に特有のピークがあるかを調べるものである。かかる試験によって有効であることが確かめられたハロゲン化銀形成成分としては、無機ハロゲン化物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例については米国特許第4,009,039号、同第3,457,075号、同第4,003,749号、英国特許第1,498,956号等の各明細書及び特開昭53−27027号、同53−25420号等の各公報に詳説されるが以下にその一例を示す。
【0087】
上記ハロゲン化銀の生成に(1)無機ハロゲン化物が用いられる場合:例えばMXnで表されるハロゲン化物(ここでMは、H、NH4、及び金属原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、nはMがH及びNH4の時は1を、Mが金属原子の時はその原子価を表し、金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、水銀、錫、アンチモン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、セリウム等がある)が用いられ、また臭素水などのハロゲン分子も有効である。
(2)オニウムハライド類が用いられる場合:例えばトリメチルフェニルアンモニウムブロマイド、セチルエチルジメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドの様な第4級アンモニウムハライド、テトラエチルフォスフォニウムブロマイドの様な第4級フォスフォニウムハライド、トリメチルスルフォニウムアイオダイドの様な第3級スルフォニウムハライドが用いられる。
(3)ハロゲン化炭化水素類が用いられる場合:例えばヨードフォルム、ブロモフォルム、四塩化炭素、2−ブロム−2−メチルプロパン等が用いられる。
(4)N−ハロゲン化合物が用いられる場合:例えばN−クロロ琥珀酸イミド、N−ブロム琥珀酸イミド、N−ブロムフタルイミド、N−ブロムアセトアミド、N−ヨード琥珀酸イミド、N−ブロムフタラゾン、N−ブロムオキサゾリノン、N−クロロフタラゾン、N−ブロモアセトアニリド、N,N−ジブロモベンゼンスルホンアミド、N−ブロモ−N−メチルベンゼンスルホンアミド、1,3−ジブロモ−4,4−ジメチルヒダントイン、N−ブロモウラゾール等が用いられる。
(5)その他のハロゲン含有化合物が用いられる場合:例えば、塩化トリフェニルメチル、臭化トリフェニルメチル、2−ブロム酢酸、2−ブロムエタノール、ジクロロベンゾフェノン等が用いられる。
【0088】
これらのハロゲン化銀形成成分は有機銀塩に対して化学量論的には少量用いられる。通常、その範囲は有機銀塩1モルに対し0.001モル乃至0.7モル、好ましくは0.03モル乃至0.5モルである。ハロゲン化銀形成成分は上記の範囲で2種以上併用されてもよい。上記のハロゲン化銀形成成分を用いて有機銀塩の一部をハロゲン化銀に変換させる工程の反応温度、反応時間、反応圧力等の諸条件は作製の目的にあわせ適宜設定することができるが、通常、反応温度は−23℃乃至74℃、その反応時間は0.1秒乃至72時間であり、その反応圧力は大気圧に設定されるのが好ましい。この反応は又、前記結合剤として使用されるポリマーの存在下に行われることが好ましい。この際のポリマーの使用量は有機銀塩1質量部当たり0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。
【0089】
上記した各種の方法によって調製される感光性ハロゲン化銀は、例えば含硫黄化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物又はこれらの組み合わせによって化学増感することができる。この化学増感の方法及び手順については、例えば米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号等の各明細書、特開昭51−22430号、同51−78319号、同51−81124号等の各公報に記載されている。又ハロゲン化銀形成成分により有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する際に、米国特許第3,980,482号明細書に記載されているように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【0090】
又、これらの感光性ハロゲン化銀には、照度不軌や、階調調整のために元素周期律表の6族から10族に属する金属、例えばRh、Ru、Re、Ir、Os、Fe等のイオン、その錯体又は錯イオンを含有させることができる。特に元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましく、中でも印刷製版用感光材料に使用される場合はRh、Re、Ru、Ir、Osから選ばれることが好ましい。
【0091】
これらの金属は錯体の形でハロゲン化銀に導入できる。本発明においては、遷移金属錯体は、下記一般式で表される6配位錯体が好ましい。
【0092】
一般式:〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜10族の元素から選ばれる遷移金属、Lは架橋配位子、mは0、1−、2−又は3−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。複数あるLは同一でもよく、また異なっていてもよい。Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)及びオスミウム(Os)である。
【0093】
金属のイオン又は錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中もしくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
〈マット剤〉
本発明においては、感光層上の保護層やBC層や該BC層上の保護層等にマット剤を含有することが好ましく、本発明に用いられるマット剤の材質は、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属又はカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0094】
マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。本発明においてマット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。又、粒子の単分散度は50以下であることが好ましく、更に好ましくは40以下であり、特に好ましくは20以下となるマット剤である。ここで、粒子の単分散度は粒子径の標準偏差を粒子径の平均値で割り100を掛けた数字で表される。本発明に係るマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0095】
本発明の熱現像材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、前記した還元可能な銀源(有機銀塩)、該銀源の還元剤、触媒活性量のハロゲン化銀等の他、必要に応じてヒドラジン化合物及び色調を抑制する色調剤を結合剤中に分散した状態で含有しているのが好ましい。本発明の熱現像材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃〜200℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し非露光領域とのコントラストで、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
〈ヒドラジン化合物〉
本発明の熱現像材料には、銀画像のコントラストを強調するための硬調化剤としてヒドラジン化合物が含有される。上記ヒドラジン化合物としては例えば、米国特許第5,545,505号明細書のカラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号明細書のカラム9〜11に記載の化合物1〜12に記載される化合物が好ましく用いられる。これらのヒドラジン化合物は公知の方法により合成することができる。
【0096】
上記ヒドラジン化合物は感光層及び/又は感光層に隣接する層に添加され、添加量はハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により一様ではないが、ハロゲン化銀1モル当たり10-6〜10-1モル程度、特に10-5〜10-2モルの範囲が好ましい。
〈色調剤〉
本発明の熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0097】
イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−ポリハロメタン化合物ジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウム又は8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);ポリハロメタン化合物+フタル酸の組み合わせ;ポリハロメタン化合物(ポリハロメタン化合物の付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。
〈増感色素〉
本発明の熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号等の各公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等の各明細に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばResearch Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
〈支持体〉
支持体としては、紙、合成紙、不織布、金属箔、プラスチックフィルムなどの支持体が使用可能であり、またこれらを組み合わせた複合シ−トを任意に用いてもよい。
〈画像露光〉
本発明において、露光は例えば、発光波長が660nm、670nm、780nm、810nm、830nmの何れかのレーザー走査露光により行うことが好ましいが、熱現像材料の露光面と走査レーザー光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザー走査露光機を用いることが好ましい。ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザー走査角度が好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることをいう。レーザー光が、熱現像材料に走査されるときの該熱現像材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザー走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
【0098】
また、本発明における露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦マルチモードのレーザー露光とすることにより縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、前記の方法の他、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、などの方法がある。なお、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
〈現像方法〉
図1は本発明の現像方法を説明する熱現像装置の一例を示す要部断面図であり、図中、レーザー光により露光された熱現像材料1は、好ましくは乳剤層側を下にして搬送ローラー2により現像部7に導入され、該現像部7により加熱搬送されて現像され、排出ローラー4により排出される。上記現像部7の構成は遠赤外線ヒーター、ニクロム線ヒーター等の熱源3を有し、矢印方向に回転する熱ドラム5と、その外周に該熱ドラム5と同期して回転する複数の熱ローラー群6との間に挟持搬送される。なお8及び8′は断熱カバーであり、断熱カバー8の裏面は熱を反射するコールドミラーとなっている。なお、熱現像材料1を現像部7に導入する前に図示しない予熱手段を設け、且つ熱現像材料1の現像後、図示しない冷却手段を設けるのが好ましい。
【0099】
ここで、熱ドラム5は銅、アルミニウム、スチール等の熱伝導性に優れた材料が用いられ、複数の熱ローラー群6は好ましくは前記した金属又は金属酸化物等で表面処理された酸化鉄類が含有されたシリコーンローラーが用いられ、その表面硬度は弾性率で表したときの値が1×10-4〜1Paとするのが好ましい。また熱現像材料1の搬送スピードは1〜100cm/secとするのが好ましく、80〜180℃で5〜100sec間加熱搬送して現像するが好ましく、搬送時の熱ドラム5と熱ローラー群6との圧力は102〜105Paとするのが好ましい。
【0100】
なお、上記では、熱ローラー群6側に熱源を設けず、該熱ローラー群6を熱源内蔵の熱ドラム5に圧接させること及び断熱カバー8内面のコールドミラーの熱反射により加熱させることにより現像を行う例を説明したが、本発明の現像方法では、熱源を熱ローラー群6に設けて現像するようにしてもよい。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の実施の態様はこれに限定されない。
【0102】
実施例1
〔試料としての熱現像材料の作製〕
〈下引済み支持体の作製〉
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート支持体の両面に8w/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層A−1とし、また反対側の面に下記下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設し乾燥させて下引層B−1とした。
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)、t−ブチルアクリレート(20質量%)、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる。
《下引塗布液b−1》
ブチルアクリレート(40質量%)、スチレン(20質量%)、グリシジルアクリレート(40質量%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1lに仕上げる。
【0103】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8W/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになるように塗布乾燥して下引上層A−2を設け、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになるように塗布乾燥して帯電防止機能をもつ下引上層B−2を設けた。
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる質量
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
《下引上層塗布液b−2》
スチレンブタジエン共重合ラテックス液(固形分20%) 80g
ポリエチレングリコール(質量平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる。
《ハロゲン化銀乳剤Aの調製》
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウム(硝酸銀と等モル量)を含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整して、ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
《水分散有機銀塩の調製》
4720mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5モルの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、前記ハロゲン化銀乳剤A(銀0.038モルを含む)と純水450mlを添加し5分間攪拌した。次に1モルの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに20分攪拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、所定の濃度まで水を加えて仕上げた。
〈感光層及び非感光層の塗布〉
前記下引層を施した支持体上に以下の各層を順次形成し、試料を作製した。なお、乾燥は各々75℃で1分間で行った。
《BC層塗布》
バック面側には、以下の熱消色染料組成物の水溶液または水分散体にさらに水に加えて調製した塗布液を以下の付き量なるように塗布乾燥してBC層を形成した。
【0104】
ポリビニルアルコール 2.0g/m2
表1に示す12種類の熱消色染料(比較用の染料AHD1〜AHD4を含む)
2.3×10-5モル/m2
【0105】
【化31】
【0106】
《BC層の保護層塗布》
イナートゼラチン 0.8g/m2
マット剤(PMMA:平均粒径3μ) 0.02g/m2
活性剤:N−プロピルオクチルスルホンアミド酢酸 0.02g/m2
硬膜剤:1,2−ビスビニルスホンアミドエタン 0.02g/m2
《感光層の塗布》
感光層形成のため以下の組成物の水分散体を水に加えて塗布液を調製した。この塗布液を35℃付近に保ち、銀電極(純度99.99%以上)と10%KNO3塩溶液からなる塩橋を介した3モル溶液中のAg/AgCl電極からなる参照電極から形成される銀電位計を用いて銀電位を測定し、その後以下の付き量になるように塗布乾燥して感光層を形成した。
【0107】
銀量として1.4g/m2になる量の前記水分散有機銀塩の調整液をバインダーと混合した。
【0108】
なお、上記調整液では、有機銀塩に対してハロゲン化銀の含有量は10分の1等量であった。
【0109】
感光層塗布液のpHは5.6に調整した。
【0110】
【化32】
【0111】
《表面保護層の塗布》
以下の組成物を加えて調製した塗布液を、以下の付き量になるように塗布乾燥して表面保護層を形成して表1に示す比較用の試料1−1〜1−4及び本発明用の試料1−5〜1−12の12種類の試料を得た。
【0112】
イナートゼラチン 1.2g/m2
4−メチルフタル酸 0.7g/m2
テトラクロロフタル酸 0.2g/m2
テトラクロロフタル酸無水物 0.5g/m2
シリカマット剤(平均粒径5μm) 0.5g/m2
1,2−(ビスビニルスルホンアセトアミド)エタン 0.3g/m2
〔写真性能の評価〕
上記12種類の試料を、常湿試験用試料と高湿試験用試料とに分け、それぞれの試料を半導体レーザーまたはガスレーザー感光計で露光し、次いで図1の構造の熱現像装置を用いて120℃で8秒現像処理した。上記常湿試験では、塗布乾燥後の試料を25℃、60%RHの雰囲気下に3日間置いた後にレーザー露光及び熱現像処理を行った。また、上記高湿試験では、塗布乾燥後の試料を35℃、78%RHの雰囲気下に、試料小片を同一試料番号を5枚ずつ60枚(5×12)重ね、且つ4.9kPaの圧力を上部に掛けて3日間保存した後、連続の同一番号5枚の中央部分をそれぞれ抜き取り、上と同様にレーザー露光及び熱現像処理を行った。露光には染料の吸収極大に近いレーザー光を使用した。レーザー露光は、630nm、660nm、730nm、780nm、810nm、830nmの各波長光を発生するレーザーを用いられる試料の吸収波長により適宜選択して行われ、試料の露光面と露光レーザー光の角度は76度とした。その際、露光及び現像は25℃相対湿度54%に調湿した部屋で行った。得られた画像の評価(感度及びカブリ)を濃度計により測定した。感度はカブリ(最低)濃度(Dmin)より0.3高い濃度を与える露光量の比の逆数で評価し、試料1を基準(100)として相対評価で表わした。熱消色性は、現像後の可視濃度を目視判定した。実際の熱消色性は、可視部に吸収がなく透明性が高いのが良いのであって、赤外染料が熱現像後に赤外部の吸収が減っても可視部の吸収がある場合は、熱消色はよくないと評価される。単一の波長での減衰率評価では無理なので目視評価とした。評価は1.0〜5.0の小数点付きランク方式で5.0は最もよい熱消色性を、1.0は最も悪い熱消色性を、3.0はその中間を表す。得られた評価結果を表1に示した。
【0113】
【表1】
【0114】
表1より試料1−5〜1−12は熱現像時の熱消色性が優れていると共に、低湿保存後及び高湿保存後の何れにおいても感度及びカブリ特性が優れているが、比較の試料は熱現像時の熱消色性が悪く、且つ特に高湿保存後の感度及びカブリ特性が悪く実用性に乏しいことが分かる。
【0115】
実施例2
実施例1の支持体バックにBC層及びその保護層を塗布し、乳剤層側を塗布しない他は実施例1の場合と同様にして比較用の予備試料2−1〜2−4及び本発明用の予備試料2−5〜2−12の12種類の予備試料を作製し、各予備試料の塗布乾燥後のBC染料の吸収極大波長を求めた。次いで上記各予備試料の吸収極大波長で光学濃度が0.3になるように各染料の添加量を変化させた新たな12種類の試料(比較用の試料2−1〜2−4及び本発明用の試料2−5〜2−12)を作製した。得られた12種類の新たな試料を125℃で15秒間熱ドラムで加熱した後、加熱により減衰した吸収極大波長の光学濃度を測定した。比較の熱消色染料を用いた試料1〜4の吸収極大波長の光学濃度は0.23であったが本発明の熱消色染料を用いた試料2−5〜2−12の吸収極大波長の光学濃度は0.18以下であり、本発明の熱消色染料を用いた試料は何れも熱消色性に優れていることが分かる。
【0116】
実施例3
実施例1の支持体のバックのBC層に表2に示す5種類の塩基発生前駆体化合物を熱消色染料と等モルを添加する、又は添加しない他は実施例1と同様にして試料3−1〜3−12を調製し、得られた12種類の試料を実施例1の場合と同様にして評価し、その結果を表2に示した。
【0117】
【表2】
【0118】
表2より試料3−1〜3−12の何れもが熱現像時の熱消色性が優れていると共に、低湿保存後及び高湿保存後の何れにおいても感度及びカブリ特性が優れており、特に塩基発生前駆体化合物を添加した試料3−2〜3−12が、該塩基発生前駆体化合物を添加していない試料3−1に比して優れていることが分かる。
【0119】
実施例4
実施例2と同様に各試料のBC層に熱消色染料を添加すると共に各熱消色染料と等モルの塩基発生前駆体化合物の化合物例(2−2)を添加した他は実施例2と同様にして本発明用の12種類の試料(試料4−1〜4−12)を作製し、評価した。その結果何れの試料も光学濃度が0.15以下であり、本発明の塩基発生前駆体化合物を用いることにより熱消色性が向上することが分かる。
【0120】
実施例5
実施例1の熱消色染料を含むBC層にポリビニルアルコールに代えて表3に示すラテックスを用い、表3に示すような置換率(質量%)で添加した他は実施例1と同様にして試料5−1〜5−12を得、実施例1の場合と同様にして評価し、その結果を表3に示した。
【0121】
【表3】
【0122】
表3より試料5−1〜5−12の何れもが熱現像時の熱消色性が優れていると共に、低湿保存後及び高湿保存後の何れにおいても感度及びカブリ特性が優れており、特に本発明のラテックスを用いた試料5−2〜5−12が、該ラテックスを添加していない試料5−1に比して優れていることが分かる。
【0123】
実施例6
実施例3と同様に試料を作製したが、ここでは熱消色染料を含む層に熱消色染料と等モルのポリハロメタン化合物を表4に示すように添加して試料6−1〜6−12を作製した。
【0124】
【表4】
【0125】
表4より試料6−1〜6−12の何れもが熱現像時の熱消色性が優れており、特に本発明の塩基発生前駆体化合物及びポリハロメタン化合物を含有する試料6−2〜6−12が、該塩基発生前駆体化合物及びポリハロメタン化合物を添加していない試料6−1に比して優れていることが分かる。
【0126】
実施例7
表5に示す9種類の熱消色染料を用いて実施例1と同様にして12種類(比較用の試料7−1及び本発明用の試料7−2〜7−12)を作製したが、ここでは熱現像機の熱ローラーの材質を変化させて試料7−1〜7−12を現像した。熱現像ローラーは、白金触媒123ppm使用した重合度7800のポリオルガノシロキサンに下記組成の9種類の素材を13質量%含有させた熱ローラーを使用し、熱現像材料(試験試料)をローラーの面積の20倍量処理したときのローラーの汚れと現像後の試料の汚れを目視評価した。平滑性は、試験片の通過した部分と試験片が通過していないところとのローラーの厚みの変化(ローラーの平滑性)を目視評価した。ランク5.0は最も良いレベル、ランク1.0は最も悪いレベル、ランク3.0は中間程度を表す。評価結果を表5に示した。
【0127】
ポリオルガノシロキサンローラーに配合した素材の具体例
(1)平均粒子径0.3μmのアルミナ
(2)平均粒子径0.3μmのシリカ
(3)平均粒子径0.5μmのマグネタイト粒子
(4)平均粒子径0.6μmのヘマタイト粒子
(5)(4)の粒子表面をアルミナで10質量%表面処理
(6)(4)の粒子表面をシリカで10質量%表面処理
(7)(4)の表面粒子をシリカとアルミナで各5質量%表面処理
(8)(4)の粒子にマンガンを14質量%ドープした粒子
(9)配合素材なし
【0128】
【表5】
【0129】
表5より本発明の熱消色染料を含有する熱現像材料を用い、且つシリコーンゴム製の熱ローラーを用いて現像処理された本発明用の試料7−2〜7−12は、熱ローラーの汚れ、試験試料の汚れ、熱ローラーの平滑性の何れもが優れていることが分かる。さらには、アルミナ、シリカ等の金属酸化物、マグネタイト、ヘマタイト等の酸化鉄類を含有するシリコーンゴム製の熱ローラーで現像処理された試料7−3〜7−12が優れており、さらには金属又は金属酸化物で表面処理された酸化鉄類を含有するシリコーンゴム製の熱ローラーで現像処理された試料7−7〜7−12が特に優れているが、比較用染料を含有する熱現像材料を用いた試料7−1は熱ローラーの汚れ、試験試料の汚れ、熱ローラーの平滑性の何れかが悪く、実用性に乏しいことが分かる。
【0130】
実施例8
実施例7で得られた試料7−1〜7−12を用い、表6に示すように画像露光にレーザー光のフィルムに対する角度を変化すると共に、該レーザー光に高周波を重畳させた縦マルチレーザー露光又は高周波を重畳させない縦単一モードのレーザー露光により画像形成を行い、得られた各試料を試料8−1〜8−12とし、それらの試料の干渉縞ムラの発生の有無を観察し、該干渉縞ムラの最大発生を1.0とし、発生なしを5.0として評価し、その結果を表6に示した。
【0131】
【表6】
【0132】
表6から照射レーザーの角度を90度未満に、好ましくは55〜88度。より好ましくは60〜86度の間に設定することにより干渉縞が改良され、さらにレーザー光の高周波を重畳すると干渉縞の発生が更に改善されることが分かる。
【0133】
実施例9
熱消色染料、ラテックス、塩基発生前駆体化合物を表7の如く変化した他は実施例1と同様にして試料9−1〜9−12を得、該12種類の試料の熱消色性及び感度を実施例1の場合と同様にして評価し、その結果を表7に示した。なお、本実施例では、乳剤層と支持体の間に下記処方のAI層を追加した。
【0134】
AI層、感光層及び該感光層の保護層は、塗布速度200m/分のカーテン同時重層塗布を行い60℃の乾燥風で2分以内に乾燥した。BC層及び該BC層の保護層も同様に塗布乾燥した。なお、BC層の熱消色染料は除いた。
【0135】
比較用の試料9−1ではラテックスの代わりに写真用イナートゼラチンを同質量使用した。
【0136】
AI層組成
表7記載の結合剤としてのポリマーラテックス 1g/m2
表7記載の熱消色染料 1.2×10-5モル/m2
表7記載の塩基発生前駆体化合物 1.23×1-5モル/m2
界面活性剤 パーフロロオクチル−N−メチルスホンアミドグリシン
ナトリウム塩 8mg/m2
ジヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩 12mg/m2
増粘剤ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(分子量50万)
5mg/m2
コロイダルシリカ微粒子 4mg/m2
青味色調剤1,4−ジ(2,4,6−トリエチルフェニルアミノ)
アントラキノン 33mg/m2
【0137】
【表7】
【0138】
表7より、本発明の試料9−4〜9−12は熱消色性及び感度の何れもが優れているが比較試料9−1〜9−3は熱消色性及び感度の何れかが悪く、実用性に乏しいことが分かる。
【0139】
【発明の効果】
実施例により実証されたように、本発明の熱現像材料、該熱現像材料の現像方法及び画像形成方法によれば、熱現像により得られる画像の鮮鋭性が高く、熱消色染料の熱消色性が優れていて残色が少なく、保存時の熱消色染料の安定性が高いこと、特に高湿化の保存安定性が優れること、現像時に熱消色染料による熱ローラーの汚れの発生やローラーの劣化が少ないこと、長期ランニング時の安定性に優れていること、さらにはレーザー光の露光において画像上に干渉縞を生じにくい特徴を有する等優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱現像装置の一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1 熱現像材料
2 搬送ローラー
3 熱源
4 排出ローラー
5 熱ドラム
6 複数の熱ローラー群
7 現像部
8,8′ 断熱カバー
Claims (8)
- 支持体上に感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含有する感光層及び非感光層を有する熱現像材料において、該感光層又は非感光層中に、下記一般式(1)で示され、且つ80〜200℃の熱により消色する染料を含有し、且つ該染料を含有する層が、ガラス転移温度−20〜80℃のラテックスを含有することを特徴とする熱現像材料。
- 前記熱により消色する染料を含有する層が、該染料の感光主波長に対する濃度が0.20以上であり、熱現像後に0.18以下になるように塗設されている層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱現像材料。
- 前記請求項1〜4の何れか1項に記載の熱現像材料の現像が、金属酸 化物を含有するシリコーンゴム製の熱ローラーを用いて行われることを特徴とする熱現像材料の現像方法。
- 前記金属酸化物の少なくとも1部が表面処理された酸化鉄類であることを特徴とする請求項5に記載の熱現像材料の現像方法。
- 前記請求項1〜4の何れか1項に記載の熱現像材料の画像露光が、縦マルチ方式のレーザー露光機を用いて行われることを特徴とする画像形成方法。
- 支持体上に感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含有する感光層及び非感光層を有する熱現像材料において、該感光層又は非感光層中に、下記一般式(a)で示され、且つ80〜200℃の熱により消色する染料を含有することを特徴とする熱現像材料。
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