JP4048020B2 - 湿式攪拌ボールミル - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、ステータ内に充填される微小ビーズと、原料タンクより供給される原料スラリーとを攪拌混合してスラリーを粉砕する摩砕型の湿式攪拌ボールミルに関する。
【0002】
【従来技術】
この種の湿式攪拌ボールミルでは、粉砕されたスラリーはビーズを分離したのちミル外に排出され、ビーズを分離する方式として、従来機ではスクリーンやスリット機構が用いられてきたが、前者のスクリーンの場合、ビーズの径よりも小さな孔を無数に開けることは非常に困難であり、製作できたとしても圧力損失が大きく、目詰まりも生じ易い。また後者のスリット機構は、その代表的な例がステータに固定されるディスクと、シャフトに固定されて回転し、固定ディスクと一定のクリアランスを存して固定ディスクとの間にビーズが通過できないようなスリットを形成するディスクよりなり、ディスク間のスリットでビーズを分離してスラリーをスリットより排出させるようになっているが、スリット幅はビーズの粒径の1/3程度、例えば0.1mm程度のビーズを使用する場合には、0.03mm程度に設定する必要があり、こうしたスリット幅を得ることは製作上非常に困難で、製作できたとしてもスリットにビーズが噛み込み易く、ディスクの損傷も生じ易い。しかもスリット幅が狭いためにスラリーの排出量、すなわちスラリーの粉砕処理量に限界がある。
【0003】
本出願人は先に、縦型のミルで、ミル上部にビーズ分離のため二枚のディスクを一定の間隔を存してブレードで連結し、インペラの形態を採ったセパレータを取付け、その下にビーズとスラリーを攪拌するための円板やピンを取付けたロータを配置した湿式攪拌ボールミルを提案した(WO96139251)。このボールミルのセパレータによると、スクリーンやスリット方式に比べ、製作が容易で圧力損失も少なく、目詰まりも生じないし、スラリーの粉砕処理量も比較的多い等の利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の湿式攪拌ボールミルに改良を加え、ビーズの分離性能及び単位重量のスラリーを粉砕するのに要する動力である動力原単位を向上させた湿式攪拌ボールミルを提供することを目的とする。
【0005】
請求項1に係わる発明は、円筒状の密閉容器よりなるステータと、該ステータの軸心に配置されてモータを駆動源として回転駆動され、軸心に排出孔を形成すると共に、軸外より排出孔に通ずる導出孔を形成した主軸と、主軸に固着される円板状のディスク及びディスク間を連結する複数のブレードよりなり、インペラの形態をなしてステータの全長ないしほゞ全長にわたって連続して配置されるセパレータと、ステータに設けられる原料スラリーの投入口と、ステータ内に充填されるビーズよりなり、上記セパレータは、その回転駆動によって生ずる遠心力により比重の比較的大なるビーズを径方向外方に飛ばして分離し、内周側の比重の比較的小なるスラリーを主軸の導出孔を通して排出孔より排出させることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明の円板状のディスクが、ステータ内の少なくとも両端ないしほぼ両端において上記主軸に固着されることを特徴とする。
【0006】
本発明によると、セパレータの回転による遠心分離作用によってセパレータ外周部に押出されるビーズが、元々セパレータ外に存在するビーズと一緒になってステータとセパレータ間の空間で形成される粉砕室でセパレータの攪拌作用によってスラリーの粉砕を行う。そしてセパレータ内周側のスラリーは主軸の導出孔を通って排出孔より軸心排出される。
【0007】
ビーズは上記粉砕室の容積の60〜95%充填すればよい。この量は従来のこの種ミルに比べ、ミル全体の容積に対しては少なく、したがってビーズの充填量を低くできるため起動動力の低減が可能になり、また単位容積当たりの動力を大きく設定できるうえ、粉砕が周速の速い外周部の粉砕室で行われるため、粉砕効率が向上する。
【0008】
またセパレータは、ステータの全長ないしほゞ全長にわたって配置されるためビーズの分離面積が増加し、ビーズの分離性能が向上すると共に、分離面積が小さい場合、スラリーの供給量を増加させてミル内の流速を上げると、ビーズが分離部分に偏って異常動力が発生し易くなるのに対し、分離面積が広くなると、ビーズが分散され、偏りも防止できる。
【0009】
本発明のミルは横型でも縦型でもよい。ビーズの充填量は横型の場合、導出孔から洩出しないように主軸のレベル以下に充填するとよい。
【0010】
縦型の場合には、ビーズはセパレータによる遠心力の作用のほか重力の作用によって攪拌作用が増す。縦型の場合にはまた、ビーズは上述するように粉砕室の容積の60〜95%充填され、この量はミル全体の容積の半分程度となるから主軸に形成される導出孔もビーズが洩出しないようにセパレータ上側部に設けるのが望ましい。
したがって請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、ミルが縦型であり、導出孔はセパレータ上側部に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明のセパレータは上述するように、遠心力によるビーズの分離作用と、攪拌作用を行うが、攪拌作用を増すためにセパレータを多段に配置してセパレータ間の接続部分に攪拌羽根を設けたり、セパレータの羽根をセパレータ外周側に伸ばして突出させ、或いはセパレータ外周部にピン等の突起を突出させてもよいし、セパレータの上下いづれか或いは上下に攪拌羽根や攪拌ピンよりなるロータを設けてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態である縦型の湿式攪拌ボールミルを示すもので、冷却用ジャケット付きの密閉内筒容器よりなるステータ1と、ステータ1の軸心に縦向きに配置されて図示省略したモータにより回転駆動され、上側部軸心に排出孔2を形成すると共に、軸外から排出孔2に通ずる導出孔3を径方向に形成した主軸4と、該主軸4の上下に一定間隔で固定される円板状のディスク5及びディスク5を連結するブレード6よりなって、図2に示すようにインペラの状態をなし、ステータ1のほゞ全長にわたって配置されるセパレータ7よりなり、ステータ内には図示していないが、ジルコニア、ガラスビーズ、酸化チタン、鋼球或いは珪酸ジルコニア等のビーズがステータ1の約半分の高さのレベルまで充填されている。図中、8は図示省略した原料タンクから供給される原料スラリーの供給口である。
【0013】
【実施例】
実施例1
図1において、内径80mmφ、高さ222mm、内容積1.115lの冷却用ジャケット付き密閉容器よりなるステータ1内にモータを駆動源として回転駆動される排出孔2付きの主軸4と、該主軸4に一定間隔で固着される円板状のディスク5及びディスク5を連結するブレード6よりなってインペラの形態をなす、径が60mmφ、高さ200mmのセパレータ7を配置した縦型の湿式攪拌ボールミル内にビーズとして0.1mmφのジルコニアZrO2を1480g充填した。因みにこの充填量は、0.4lとなり、ステータ内容積からセパレータ7が占める容積を除いた粉砕室の容積は0.65lである。
【0014】
その後、供給口8よりキンセーマテック株式会社製のシリカ(商品名「SiLICICSS100」、平均粒径2.36μm、最大粒径7.7μm)を水に添加した濃度32%の原料スラリー(粘度5cp)を126Kg/h供給し、セパレータ7を3815rpm の回転数で回転させて製品スラリーを主軸上方に軸心排出した。そして所定の粉砕時間ごとに動力原単位Kwh/kgを計算すると共に、 排出された製品スラリー中のシリカの平均粒子径と最大粒子径を測定した。結果を以下の表1及び図3に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
実施例2
ジルコニアZrO2の充填量を1800gで、0.49lとした以外は、実施例1と同じ条件でスラリーの粉砕を行い、動力原単位Kwh/kgを計算すると共に、シリカの平均粒径及び最大粒子径を測定した。結果を以下の表2及び図3に示す。
【0017】
【表2】
【0018】
比較例
実施例1で用いたステータ1と同じステータを用い、この中に図4に示すようにディスク18の径が60mmφ、ディスク間の間隔を5mmにしてブレード12で連結してなるセパレータ11と,ピン13よりなるロータ14を配置した縦型の湿式攪拌ボールミル(ステータ内容積からセパレータ11とロータ14が占める容積を除いた粉砕室容積は0.87l)を用い、実施例1と同じ粒径のジルコニアZrO2を2500g(0.67l)を充填し、供給口15より実施例1と同じ原料スラリーを70Kg/h供給した。そして回転数を2713rpm に設定して製品スラリーを主軸16に形成した排出孔17を通して上方に軸心排出し、実施例1と同じ時間間隔で動力原単位Kwh/kgを計算すると共に、製品スラリー中のシリカの平均粒子径と最大粒子径を測定した。結果を以下の表3と図3に示す。
【0019】
【表3】
【0020】
以上の表1〜表3及び図3に見られるように、粉砕時間が長くなり、動力原単位が上がる程、いづれの場合も平均粒子径及び最大粒子径共に小さくなるが、実施例1、2は比較例に比べ、ビーズの充填量を低くしたにもかかわらず、同じ動力原単位で平均粒子径及び最大粒子径共に小さくなり、同じ粒子径の製品を得るのに実施例は比較例に比べ、1/2の動力原単位で粉砕が可能となった。
【0021】
本発明によると、セパレータをミルの全長ないしほぼ全長にわたって配置したことによりビーズの分離性能が向上すること、ビーズの充填量を下げ、原料スラリーの供給量を上げても超微粉砕が動力を上げることなく行うことができ、動力源単位を下げることもできること、粉砕がセパレータ外周の周速の速い部分で行われるため粉砕効率が向上すること等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる湿式攪拌ボールの断面図。
【図2】図1のA−A線におけるセパレータの断面図。
【図3】実施例及び比較例のビーズの粒度と動力源単位の関係を示すグラフ。
【図4】比較例で用いたミルの断面図。
【符号の説明】
1・・ステータ
2、17・・排出孔
3・・導出孔
4、16・・主軸
5、18・・ディスク
6、12・・ブレード
7、11・・セパレータ
8、15・・供給口
13・・ピン
14・・ロータ
Claims (3)
- 円筒状の密閉容器よりなるステータと、該ステータの軸心に配置されてモータを駆動源として回転駆動され、上記軸心に排出孔を形成すると共に、軸外より上記排出孔に通ずる導出孔を形成した主軸と、該主軸に固着される円板状のディスク及び該ディスク間を連結する複数のブレードよりなり、インペラの形態をなしてステータの全長ないしほゞ全長にわたって連続して配置されるセパレータと、上記ステータに設けられる原料スラリーの投入口と、上記ステータ内に充填されるビーズよりなり、上記セパレータは、その回転駆動によって生ずる遠心力により比重の比較的大なるビーズを径方向外方に飛ばして分離し、内周側の比重の比較的小なるスラリーを上記主軸の上記導出孔を通して上記排出孔より排出させることを特徴とする湿式攪拌ボールミル。
- 上記円板状のディスクは、上記ステータ内の少なくとも両端ないしほぼ両端において上記主軸に固着されることを特徴とする請求項1記載の湿式攪拌ボールミル。
- ミルは縦型であり、上記導出孔は上記セパレータの上側部に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の湿式攪拌ボールミル。
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