JP4047094B2 - 車両用シートバック構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用シートバック構造に関するものであり、特に、乗り心地性能を向上できる車両用シートバック構造に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用シートは乗員の乗り心地性能に大きな影響を与えるものであるため、従来から様々な工夫が施され快適性を向上させている。例えば、特開平7−275076号公報に示されているように、シートクッションの大腿部支持部と尻部支持部との振動を個別に吸収減衰して効果的に乗員の乗り心地を向上させるものがある。
ところが、このようなシートクッションに対する振動防止対策だけでは不十分であるという問題がある。即ち、図11に示すように、シートクッション1とシートバック2とからなるシート3に乗員が着座する場合、車両走行時にシート3に入力される振動はシートクッション1に上側後方(矢印A)に押し上げるようにして作用する他、シートバック2の腰部支持部4においては、たたかれ感(矢印B)として乗員に作用し、胸部支持部5では前後方向(矢印C)での胸の揺れ(視線Dの揺れ)となって作用する。このような視線の変化や、たたかれ感は乗員に対して大きな不快感を与えてしまうのである。尚、図11においては、胸部と尻部(骨盤)は共に大きなバネマス系のマスと考えられるため、図中対応する部位にマスとしての外線を描いた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、乗員の背部、特に胸部を柔らかく支持し、シートバック2からの圧迫を抑えようとすると、ストロークが増加し揺れ感が増し、視線が揺れて不安定になるという問題がある。一方、上記胸部をしっかりと固定して、ストロークを規制し、揺れ感を抑えようとすると、体圧変化が増し、腰部の圧迫(腰部へのたたかれ感)が増し乗り心地性能が悪化するという問題がある。
そこで、この発明は、胸の揺れを少なくすると共に腰部へのたたかれ感をなくすことができる車両用シートバック構造を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両用シートのシートバック(例えば、実施形態におけるシートバック11)のフレーム(例えば、実施形態におけるフレーム12)に胸部支持部(例えば、実施形態における胸部支持スプリング19)と尻部支持部(例えば、実施形態における尻部支持スプリング20)とを弾性的に架設し、前記胸部支持部を前記尻部支持部よりも低い支持強度に設定すると共にこれら胸部支持部と尻部支持部とを連結する連結部(例えば、実施形態における連結ワイヤ21)を設け、前記シートバックのフレームの上部(例えば、実施形態における横サポート部材17)と前記胸部支持部とを弾性的に連結する連結スプリング(例えば、実施形態における連結スプリング22)と、前記シートバックのフレームの下部(例えば、実施形態における下辺部12D)と前記尻部支持部とを連結する連結バー(例えば、実施形態における揺動連結バー23)を有し、該連結バーは、端部にフック部(例えば、実施形態におけるフック部23A、23B)を有し、前記尻部支持部をフレームの下部に対して揺動自在に支持したことを特徴とする。
このように構成することで、胸部支持部により乗員の胸部を柔らかく支持してシートバックからの圧迫によるたたかれ感を抑えつつ、連結部により尻部支持部と胸部支持部とを支持して胸部支持部の揺れ、視線の揺れを抑えることができる。また、連結部によりシートバックの胸部支持部と腰部支持部とのラインを維持した状態とすることができるため、乗員の背中を腰痛などが起きない適正な姿勢であるS字状に維持したままシートバックで支持することができる。更に、連結スプリングと連結バーによりS字状に維持された乗員の背中の揺動を一定範囲に抑えることができる。
【0005】
請求項2に記載した発明は、前記胸部支持部と前記尻部支持部との間に、該胸部支持部及び前記尻部支持部よりも低い支持強度の腰部支持部(例えば、実施形態における腰部支持スプリング25)を前記シートバックのフレームに弾性的に架設したことを特徴とする。
このように構成することで、支持強度が最も低い腰部支持部を設けているため、乗員の腰部を柔らかく支持するサポート感を持たせることができると共にたたかれ感を抑制できる。また、腰部支持部を加えることで連結部の幅、強さの自由度を上げることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を図面と共に図11を一部援用して説明する。
図1、図2はこの発明の第1実施形態を示している。図1、図2においてシートクッション10(図2に示す)に回動可能に支持されたシートバック11はパイプ材を主体として形成された四角い枠状のフレーム12を備えている。このフレーム12は後述するスプリングを架設すると共に、鎖線で示すウレタンなどのパット材13が取り付けられるものである。
フレーム12は側部プレート14を有し、フレーム12の上辺部12Uには図示しないヘッドレストのサポート部15が2箇所に溶接固定されている。
フレーム12の下辺部(フレームの下部)12Dの両側には前記側部プレート14に連なり、シートクッション10に回動自在に取り付けられるブラケット16が設けられている。
【0008】
フレーム12の側辺部12Sの上部には横サポート部材(フレームの上部)17がフレーム12の両側辺部12S,12Sに渡って取り付けられている。横サポート部材17の中央部は下側に落とし込むようにして形成され、この落とし込み部17Aは図2に示すようにシートバック11の背後に向かい、フレーム12の側辺部12Sに対して斜めに設けられている。
また、フレーム12の側辺部12Sの内側には上下方向に縦サポート部材18の上下端が取り付けられている。
【0009】
そして、このように構成されたフレーム12の両側辺部12S,12Sに渡り、フレーム12の上側であって横サポート部材17の直下位置に胸部支持部を構成する胸部支持スプリング19が弾性的に架設され、フレーム12の下側であってフレーム12の下辺部12Dの直上位置に尻部支持部を構成する尻部支持スプリング20が弾性的に架設されている。
【0010】
胸部支持スプリング19、尻部支持スプリング20は共にS字部分が連続して形成された鋼材等からなり、胸部支持スプリング19を尻部支持スプリング20よりも低い支持強度に設定してある。具体的には尻部支持スプリング20の線径よりも胸部支持スプリング19の線径を小さくすることで支持強度に差を持たせてある。尚、胸部支持スプリング19や尻部支持スプリング20のS字部分のピッチ(山の間隔)や振幅(山の高さ)を調整することで支持強度を調整してもよい。
このように支持強度を尻部支持スプリング20より低く設定した胸部支持スプリング19によって乗員の胸部を柔らかく支持している。
【0011】
上記胸部支持スプリング19と尻部支持スプリング20との間には乗員の腰部の脊椎の両側に跨るように100mmから150mmの間隔を隔てた位置に2つの連結ワイヤ(連結部)21が設けられている。この連結ワイヤ21により胸部支持スプリング19と尻部支持スプリング20とが連結方向に硬直な状態で連結されている。具体的には、各連結ワイヤ21の上端にはフック部21aが設けられ、このフック部21aが胸部支持スプリング19に回動を許容した状態で係止し、連結ワイヤ21の下端端末は前記尻部支持スプリング20に至りその後各端部に向かい尻部支持スプリング20に沿って配索されて、留め金21bにより尻部支持スプリング20に一体に固定されている。尚、上述した「連結方向に硬直」とは、少なくとも連結ワイヤ21と尻部支持スプリング20が一体固定されていることを意味している。
【0012】
また、フレーム12の横サポート部材17と胸部支持スプリング19とは、胸部支持スプリング19の揺動を規制する連結スプリング(連結部材)22により2箇所で連結されている。この連結スプリング22は、前記連結ワイヤ21の外側位置に配置されている。
一方、前記フレーム12の下辺部12Dと尻部支持スプリング20とは、尻部支持スプリング20をフレーム12の下辺部12Dに対して揺動自在に支持する揺動連結バー(揺動連結部材)23により2箇所で連結されている。
この揺動連結バー23も前記連結ワイヤ21の外側位置に配置され、揺動連結バー23の上端には回転自在なフック部23Aが形成され、下端のフック部23Bはシートクッション10の回動軸24に回動自在に係止している。
【0013】
上記実施形態によれば、胸部支持スプリング19により乗員の胸部を柔らかく支持することができ、腰部には何らシートバック11からの力が作用しないため、シートバック11からの圧迫によるたたかれ感を抑えることができる。また、連結ワイヤ21により尻部支持スプリング20と胸部支持スプリング19とを連結方向に硬直した状態で支持できるため、尻部と胸部の初期ズレが抑えられ、視線の揺れを最小限に抑えることができる。その結果、乗員の腰部のたたかれ感の抑制と乗員の胸部の揺れの抑制を同時に達成することができ、乗り心地性能を格段に向上することができる。
【0014】
更に、連結ワイヤ21によりシートバック11の胸部支持スプリング19と腰部支持スプリング20とのラインを維持した状態とすることができるため、乗員の背中を腰痛などが起きない適正な姿勢であるS字状に維持したままシートバック11で支持することができ、乗員が猫背になるのを防止して疲労を軽減することができる。
そして、上記連結スプリング22と揺動連結バー23によりS字状に維持された乗員の背中の揺動を一定範囲に抑えることができるため乗り心地性能を向上することができる。
【0015】
また、連結ワイヤ21による腰部の脊椎の支持範囲が100〜150mmに設定されているので、支持範囲が100mmより小さい場合に生ずる背中の左右の前後の揺れを防止し安定して支持し、支持範囲が150mmより大きい場合に生ずる脊椎の両脇への違和感をなくし快適に支持して、乗り心地性能を更に向上することができる。
尚、この実施形態では揺動連結バー23が下部でフレーム12の下辺部12Dを中心に若干揺動し、連結ワイヤ21の上部が胸部支持スプリング19に対して若干揺動できるため、乗員の尻部と胸部との関係を部分回転を抑えた自然な状態で支持することができる。
【0016】
図2に示すように、乗員Zの尻部に対応する位置に加速度を測定するセンサS1を、腰部に対応する位置にセンサS2を、胸部に対応する位置にセンサS3を配置した状態で、車両を80km/hで走行させ、各センサの検出結果から周波数Hz(横軸)と伝達率(縦軸)を求める実験を行った。その結果、シートバックのスプリングをシートバック面に一様に配置した従来のシートバック(改良前)では、図4に示すように3〜6Hzでの肩部(実線)、胸部(鎖線)、腰部(破線)で前後方向の伝達率のピークが検出されたが、図3に示すこの実施形態のシートバック11(改良後)では前記ピークが肩部、胸部、腰部で一様に低下していることが証明された。
【0017】
また、上下方向の振動に関しては、図5に示す尻部においても図6に示す胸部においても改良前(破線)に対して改良後(実線)のこの実施形態のシートバックで著しく伝達率が低減していることが証明された。尚、図5、図6においても周波数Hzは横軸と伝達率は縦軸としている。
【0018】
次に、この発明の第2実施形態を説明する。尚、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明は省略する。
図7に示すように、この第2実施形態では前記実施形態のシートバック11の胸部支持スプリング19と尻部支持スプリング20との間に、フレーム12の両側辺部12S,12Sに渡って腰部支持スプリング25を設けたものである。この腰部支持スプリング25も他のスプリングと同様にS字部分が連続して形成された鋼材等からなり、胸部支持スプリング19よりも低い支持強度に設定するべく、胸部支持スプリング19の線径よりも小さい線形に設定してある。尚、この腰部支持スプリング25は前記連結ワイヤ21に取り付けてもよく、連結ワイヤ21に固定しなくてもよい。
【0019】
したがって、この実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加え、支持強度が最も低い腰部支持スプリング25を設けているため、乗員の腰部を柔らかく支持するサポート感を持たせることができると共にたたかれ感を抑制でき、より一層乗り心地性能を向上することができる。また、腰部支持スプリング25を加えることで連結ワイヤ21の幅、強さの自由度を上げることができチューニングし易くなる。
【0020】
次に、この発明の第3実施形態を説明する。尚、第1実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明は省略する。
図8に示すように、この実施形態は第1実施形態と同様の構成のフレーム12に網状部材26を設けたものである。
【0021】
フレーム12に設けた横サポート部材17の落とし込み部17Aに連結スプリング22の上端が取り付けられ、連結スプリング22の下端が網状部材26の上部に取り付けられている。フレーム12の側部プレート14,14には各々連結スプリング27の一端が上部と下部に取り付けられ、連結スプリング27の他端は網状部材26の側部に取り付けられている。
【0022】
そして、フレーム12の下辺部12Dと網状部材26の下部とは、網状部材26をフレーム12の下辺部12Dに対して揺動自在に支持する揺動連結バー23により2箇所で連結されている。
網状部材26は、前記各連結スプリング22、27及び揺動連結バー23を取り付ける枠部28と、この枠部28の横方向に複数の線材を張設したものである。枠部28の下部であって乗員の尻部に対応する位置には複数の線材を横方向に張った尻部支持部としての張設密部29が設けられ、枠部28の上部であって乗員の胸部に対応する位置には複数の線材を横方向に張った胸部支持部としての張設疎部30が設けられている。張設密部29に対して張設疎部30は線材の配設幅が広くく設定され、張設疎部30を張設密部29よりも低い支持強度に設定してある。
【0023】
したがって、上記各連結スプリング22、27、揺動連結バー23及び張設疎部30と張設密部29自体により張設疎部30と張設密部29はフレーム12に対して弾性的に架設されることとなる。
そして、上記枠部28の上下に渡り張設疎部30と張設密部29を連結して乗員の腰部の脊椎の両側に跨るように100mmから150mmの間隔を隔てた位置に2つの連結ワイヤ(連結部)31が各線材に固定されている。この連結ワイヤ31により張設疎部30と張設密部29とが連結方向に硬直な状態で連結されている。尚、連結ワイヤ31は一本でも枠部28により姿勢を保つことができる。
【0024】
上記実施形態によれば、張設疎部30により乗員の胸部を柔らかく支持することができ、腰部には何らシートバック11からの力が作用しないため、シートバック11からの圧迫によるたたかれ感を抑えることができる。また、連結ワイヤ31により張設疎部30と張設密部29とを連結方向に硬直した状態で支持できるため、張設疎部30の揺れ、視線の揺れを最小限に抑えることができる。その結果、乗員の腰部のたたかれ感の抑制と乗員の胸部の揺れの抑制を同時に達成することができ、乗り心地性能を格段に向上することができる。
【0025】
更に、連結ワイヤ31によりシートバック11の張設疎部30と張設密部29とのラインを維持した状態とすることができるため、乗員の背中を腰痛などが起きない適正な姿勢であるS字状に維持したままシートバック11で支持することができ、乗員が猫背になるのを防止して疲労を軽減することができる。
更に、連結スプリング22と揺動連結バー23とによりS字状に維持された乗員の背中の揺動を一定範囲に抑えることができるため乗り心地性能を向上することができる。
【0026】
尚、この実施形態では、網状部材26が単純な構造であるので、低コストで製造できるメリットがある。また、支持強度の調整を行う場合は、線材の本数を変更するだけでよいため、低コストで目標とする支持強度に設定でき設計の自由度も高くなる。
【0027】
次に、この発明の第4実施形態を説明する。尚、第3実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明は省略する。
図9に示すように、この実施形態は第3実施形態における網状部材26に替えて樹脂プレート32を用いたものである。
【0028】
樹脂プレート32はその下部であって乗員の尻部に対応する位置には両側部にX字状の複数の小リブ33と中央部に2つの中リブ33’が配設された尻部支持部としての高支持強度部34が設けられている。樹脂プレート32はその上部であって乗員の胸部に対応する位置には両側部にX字状の大リブ35が複数配設された胸部支持部としての中支持強度部36が設けられている。尚、中央部の大リブ35は90度回転した状態で形成されている。
【0029】
また、これら高支持強度部34と中支持強度部36との間には中央部にリブを弱めるか、更に基材の剛性が高ければ複数のスリット37を形成して低支持強度部38が設けられている。そして、各部の支持強度は高い順に高支持強度部34、中支持強度部36、低支持強度部38となっている。
したがって、樹脂プレート32は前述した第3実施形態と同様に、各連結スプリング22、27、揺動連結バー23及び樹脂プレート32自体によりフレーム12に対して弾性的に架設されることとなる。
【0030】
そして、上記樹脂プレート32の中央部の上下に渡り低支持強度部38と中支持強度部36と高支持強度部34を連結して乗員の腰部の脊椎の両側に跨るように100mmから150mmの間隔を隔てた位置に2つの連結リブ(連結部)39が設けられている。尚、連結リブ39は中央の大リブ35と中央の中リブ33’を挟むようにして配置されている。この連結リブ39により低支持強度部38と中支持強度部36と高支持強度部34との支持面の関係がズレないように保持されている。
【0031】
上記実施形態によれば、中支持強度部36により乗員の胸部を柔らかく支持することができ、腰部に低支持強度部38を設けたことによりシートバック11からの力が乗員の腰部にほとんど作用しないため、シートバック11からの圧迫によるたたかれ感を抑えることができる。また、連結リブ39により低支持強度部38と中支持強度部36と高支持強度部34とを連結方向に硬直した状態で支持できるため、中支持強度部36の揺れ、視線の揺れを最小限に抑えることができる。その結果、乗員の腰部のたたかれ感の抑制と乗員の胸部の揺れの抑制を同時に達成することができ、乗り心地性能を格段に向上することができる。
【0032】
更に、樹脂プレート32自体が一枚の板材であり、連結リブ39によりシートバック11の中支持強度部36と高支持強度部34とのラインを維持した状態とすることができるため、乗員の背中を腰痛などが起きない適正な姿勢であるS字状に維持したままシートバック11で支持することができ、乗員が猫背になるのを防止して疲労を軽減することができる。
そして、連結スプリング22と揺動連結バー23によりS字状に維持された乗員の背中の揺動を一定範囲に抑えることができるため乗り心地性能を向上することができる。
【0033】
また、前記第3実施形態と同様に連結リブ39により背中の左右の前後の揺れを防止し安定して支持すると共に脊椎の両脇への違和感をなくし快適に支持して、乗り心地性能を更に向上することができる。
尚、この実施形態では、成型が容易な樹脂プレートを用いているため、低コストで製造できるメリットがある。
【0034】
次に、この発明の第5実施形態を説明する。尚、図8の第3実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明は省略する。
図10に示すように、この実施形態は第3実施形態と同様の構成の枠部28を用いた網状部材40を備えている。
【0035】
網状部材40の枠部28は2本の線材(上側)40、線材(下側)41により上から下に3つに区画され各部が後述する中支持強度部42と低支持強度部43と高支持強度部44に割り当てられるようになっている。
枠部28の上部から下部に渡り、上記線材40,41に固定され上下に横断するようにして4本の支持スプリング45が設けられている。各スプリング45,45,45,45は同一振幅のS字状部を連続して形成したもので、上部の区画には中ピッチ部45mで中支持強度部42が形成され、中部の区画には小ピッチ部45sで低支持強度部43が形成され、下部の区画には大ピッチ部45bでの高支持強度部44が形成されている。尚、ピッチが大きいほど撓みにくいため支持強度が高く、ピッチが小さいほど撓みやすく支持強度が低い。
【0036】
したがって、乗員の尻部に対応する下部の区画は支持スプリング45の大ピッチ部45bにより支持強度が高くなり尻部支持部としての高支持強度部44が形成され、乗員の胸部に対応する上部の区画では支持スプリング45の中ピッチ部45mにより支持強度が中くらいになり胸部支持部としての中支持強度部42が形成され、乗員の腰部に対応する中部の区画は支持スプリング45の小ピッチ部45sにより支持強度が低くなり低支持強度部43が形成されることとなる。
【0037】
したがって、この実施形態においては、上述した各実施形態の基本的効果に加え、枠部28と2本の線材40,41及び同一の4本の支持スプリング45という単純な構成で製造できるため、大幅なコストダウンを図ることができるメリットがある。
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、第4実施形態のリブの形状や個数などは支持強度を変化させることができればこれに限られるものではない。また、第5実施形態の支持スプリング45の支持強度をピッチを変化させることで調整するのに替えて、振幅の大小で支持強度の強弱を変化させることも可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1に記載した発明によれば、胸部支持部により乗員の胸部を柔らかく支持してシートバックからの圧迫によるたたかれ感を抑えつつ、連結部により尻部支持部と胸部支持部とを支持して胸部支持部の揺れ、視線の揺れを抑えることができるため、乗り心地性能を向上することができる効果がある。また、上記連結部によりシートバックの胸部支持部と腰部支持部とのラインを維持した状態とすることができるため、乗員の背中をS字状に維持したままシートバックで支持することができ、したがって、乗員が猫背になるのを防止して疲労を軽減することができる効果がある。
更に、連結スプリングと連結バーによりS字状に維持された乗員の背中の揺動を一定範囲に抑えることができるため乗り心地性能を向上することができる。
【0039】
請求項2に記載した発明によれば、支持強度が最も低い腰部支持部を設けているため、乗員の腰部を柔らかく支持するサポート感を持たせることができると共にたたかれ感を抑制でき、より一層乗り心地性能を向上することができる。また、腰部支持部を加えることで連結部の幅、強さの自由度を上げることができチューニングし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1実施形態の平面図である。
【図2】 この発明の第1実施形態のシートの部分側面図である。
【図3】 この発明の第1実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図4】 図3に対応する従来のグラフ図である。
【図5】 この発明の第1実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図6】 この発明の第1実施形態の実験結果を示すグラフ図である。
【図7】 この発明の第2実施形態の平面図である。
【図8】 この発明の第3実施形態の平面図である。
【図9】 この発明の第4実施形態の平面図である。
【図10】 この発明の第5実施形態の平面図である。
【図11】 従来及びこの発明の第1実施形態の側面説明図である。
【符号の説明】
11 シートバック
12 フレーム
12D 下辺部(フレームの下部)
17 横サポート部材(フレームの上部)
19 胸部支持スプリング(胸部支持部)
20 尻部支持スプリング(尻部支持部)
21 連結ワイヤ(連結部)
22 連結スプリング(連結部材)
23 揺動連結バー(揺動連結部材)

Claims (2)

  1. 車両用シートのシートバックのフレームに胸部支持部と尻部支持部とを弾性的に架設し、前記胸部支持部を前記尻部支持部よりも低い支持強度に設定すると共にこれら胸部支持部と尻部支持部とを連結する連結部を設け
    前記シートバックのフレームの上部と前記胸部支持部とを弾性的に連結する連結スプリングと、
    前記シートバックのフレームの下部と前記尻部支持部とを連結する連結バーを有し、
    該連結バーは、端部にフック部を有し、前記尻部支持部をフレームの下部に対して揺動自在に支持したことを特徴とする車両用シートバック構造。
  2. 前記胸部支持部と前記尻部支持部との間に、該胸部支持部及び前記尻部支持部よりも低い支持強度の腰部支持部を前記シートバックのフレームに弾性的に架設したことを特徴とする請求項1記載の車両用シートバック構造。
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