JP4046306B2 - エチレン重合用固体触媒成分、エチレン重合用触媒及びエチレン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融張力が高く、分子量分布が狭いエチレン系重合体の製造に用いる固体触媒成分、その固体触媒成分を含むエチレン重合用触媒及びエチレン系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン系重合体の製造方法として、無機化合物担体上に無機マグネシウム化合物を担持し、チタン化合物で処理する固体成分を触媒に用いる方法が、特公昭52-13826号、特開昭56-15644号などに開示されている。
【0003】
これらの触媒で製造されるエチレン系重合体は、溶融張力の指標として用いられるHLMFR(ここで、HLMFRは、JIS K 7210、表1の条件4に従い、温度が190℃及び荷重が21.6kgの条件で測定されるものである。)のスウェル比(HLMFR測定時のスウェル比(ストランドの直径からオリフィスの直径を引いたものをオリフィスの直径で割ったもの))は比較的大きいが、重合活性が低く、ファウリングを起こしやすいこと、分子量分布が広いため低密度領域ではべたつき成分が多く、高密度領域では発煙成分が多いこと、またインフレーションフィルムにしたとき透明性が悪いことなどの問題があった。
【0004】
すなわち、溶融張力が高く、重合活性が高く、ファウリングを起こさず、べたつき成分、発煙成分が少なく、フィルムにしたときの透明性に優れるエチレン系重合体は、上記の触媒を用いる方法で製造することはできなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融張力が高く、重合活性が高く、ファウリングを起こさず、分子量分布が狭くてべたつき成分、発煙成分が少なく、フィルムにした場合の透明性に優れるエチレン系重合体を製造することができる触媒系を開発することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を実現するために鋭意努力を重ねた結果、無機マグネシウム化合物を水溶液中で無機化合物担体に担持乾燥させ、チタン化合物及び電子供与性化合物で処理し、さらに有機アルミニウム化合物で処理することにより得られる固体成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒により、溶融張力が高く、ファウリングを起こさず、分子量分布が狭く、べたつき成分、発煙成分が少なく、フィルムにしたときの透明性に優れるエチレン系重合体を製造できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、
1)無機化合物担体に無機マグネシウム化合物(M)を水溶液中で担持し乾燥させた後、チタン化合物(T)及び電子供与性化合物(D)で処理し、更に一般式(A)
(R1)m(R2)nAl(X)3-m-n(A)
(式中、R1及びR2は、同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜20のアルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わし、m及びnは0,1または2であり、m+n=1または2である。)で示される有機アルミニウム化合物で処理することにより得られるエチレン重合用固体触媒成分であって、最終固体触媒成分中のチタン化合物(T)に対する電子供与性化合物(D)のモル比(D/T)が 0.3 <D/T<4となるようにチタン化合物(T)及び電子供与性化合物(D)で処理することにより得られることを特徴とするエチレン重合用固体触媒成分、
2)無機化合物担体上に無機マグネシウム化合物(M)を水溶液中で担持し乾燥させる際の乾燥温度が100〜300℃である前記1に記載のエチレン重合用固体触媒成分、
3)一般式(A)で示される有機アルミニウム化合物として、R 1 及びR 2 が、同一でも異なってもよく各々炭素数2〜6のアルキル基を表わす化合物を用いる前記1または2に記載のエチレン重合用固体触媒成分、
【0008】
4)一般式(A)で示される有機アルミニウム化合物を無機マグネシウム化合物(M)に対するモル比が 0.1 <A/M<100となる量で処理する前記1〜3のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分、
5)無機マグネシウム化合物がMgX2・nH2O(Xはハロゲン原子であり、nは0または1〜6の整数である。)、Mg(OH)X(Xはハロゲン原子である。)及びMgSO4から選択される少なくとも一種である前記1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分、
【0009】
8)電子供与性性化合物が、酸素、窒素あるいは硫黄原子を含む複素員環式化合物である前記1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分、
9)前記1〜8のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分(I)及び一般式(B)
Al(R3)a(X2)3-a (B)
(式中、R3は炭素数が多くとも12個の脂肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化 水素であり、X2はハロゲン原子または水素原子であり、aは1以上3以下の数 である。)で示される有機アルミニウム化合物(II)からなるエチレン重合用触媒、及び
10)前記9記載のエチレン重合用触媒を用い、エチレンを単独重合またはエチレンとα−オレフィンを共重合させるエチレン系重合体の製造方法に関する。
【0010】
以下、本発明のエチレン重合用固体触媒成分、エチレン重合用触媒及びエチレン系重合体の製造方法について詳しく説明する。
【0011】
(I)固体触媒成分
(1)固体触媒成分の構成成分
本発明における固体触媒成分は、無機化合物担体、水、無機マグネシウム化合物、チタン化合物、電子供与性化合物、及び一般式(A)
(R1)m(R2)nAl(X)3-m-n(A)
で示される有機アルミニウム化合物を用いて調製される。
【0012】
i)本発明で使用する無機化合物担体とは、有機化合物を含まない、マグネシウム成分の担持体となる化合物であり、200℃以上の温度でも熱的に安定な化合物が好ましい。
具体例として、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、アルミナ、燐酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中で、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、アルミナ担体としては、アモルファス状のほか、結晶性の化合物を使用することもできる。担体は比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは200〜800m2/g、細孔体積が0.5〜3.0cm3/g、好ましくは1.0〜2.5cm3/g、平均粒径が5〜200μm、好ましくは20〜150μmのものが用いられる。
【0013】
ii)無機マグネシウム化合物としては、水溶性の無機マグネシウム化合物が用いられる。
具体例としては、MgX2・nH2O(Xはハロゲン原子を表わし、nは0または1〜6の整数である。)、Mg(OH)X(Xはハロゲン原子である。)及び MgSO4などを挙げることができる。特に好ましいのは、MgX2・nH2Oで ある。
【0014】
iii)チタン化合物としては、次式
Ti(OR)n(X)4-n
(式中、nは0または1〜3の整数、Oは酸素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するフェニル基または炭素数1〜20のフェニル基を有するアルキル基である。)で示される4価のチタン化合物またはTi(OR)nX3-n(nは0または1〜2の整数、Oは酸素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフェニル基または炭素数1〜20のアルキル基を有するフェニル基または炭素数1〜20のフェニル基を有するアルキル基である。)で示される3価のチタン化合物が使用される。
【0015】
具体例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、三塩化チタン、三臭化チタン、三ヨウ化チタンのようなハロゲン化チタン;テトラメトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタンのようなアルコキシチタン;エトキシチタントリクロリド、ブトキシチタントリクロリド、フェノキシチタントリクロリド、ジブトキシチタンジクロリド、トリブトキシチタンクロリドのようなアルコキシチタンハライドなどを例示することができる。
【0016】
また、これら各種チタン化合物は、一種を単独で使用することもできるし、二種類以上併用して使用することもできる。好ましくは、TiX4及びTiX3(式中、Xはハロゲン原子である。)で示されるハロゲン化チタン化合物であり、特に四塩化チタン及び三塩化チタンが好ましい。
【0017】
iv)電子供与性化合物(D)としては、カルボン酸類、エステル類、エーテル類、アルデヒド類、アルコール類、ケトン類等の酸素含有化合物、ニトリル類、アミン類等の窒素含有化合物等が用いられる。
【0018】
これらの中でも好ましいのは、酸素原子及び/または窒素原子を環に含む複素環式化合物である。さらに好ましいのは、全炭化水素基の炭素数が多くとも32個であり、酸素原子及び/または窒素原子を環に含む4員環ないし8員環の複素環式化合物である。具体例としては、オキセタン、フラン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2−メチルオキソラン、2,5−ジメチルオキソラン、3−メチルオキソラン、ピラン、テトラヒドロピラン、2−メチルオキサン、2、6−ジメチルオキサン、モルホリン、2,4,6−トリメチルオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,4−ジオキサン、ベンゾフラン、クマラン、ベンゾピラン、クロマン、イソクロメン、イソクラマン等の含酸素複素環式化合物ならびにピリジン、ピリタジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンキノリン、イソキノリン等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。
【0019】
v)一般式(A)
(R1)m(R2)nAl(X)3-m-n (A)
で示される化合物としては、R1及びR2が、同一でも異なってもよく、各々1〜20の炭素数を有するアルキル基を表わし、Xがハロゲン原子である化合物が用いられる。
好ましくは、R1及びR2が各々1〜10の炭素数を有するアルキル基で、XがClの化合物である。具体例としては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジノルマルブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムクロライド、ジノルマルオクチルアルミニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0020】
更に好ましいのは、R1及びR2が各々2〜6の炭素数を有するアルキル基で、XがClの化合物である。例えば、ジエチルアルミニウムクロライド、ジノルマルブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムクロライドなどである。
これら各種有機アルミニウム化合物は、一種を単独で使用することもできるし、2種類以上併用して使用することもできる。
【0021】
(2)固体触媒成分の調製法
無機マグネシウム化合物(M)はその水溶液を用いて無機化合物担体に担持させる。
具体的方法としては、無機化合物担体を無機マグネシウム化合物の水溶液中でスラリーとして担持させた後乾燥させる方法、無機化合物担体と無機マグネシウム化合物の混合物中に水を加えてスラリーとし、乾燥させる方法等を例示することができる。
【0022】
担持温度は好ましくは0℃〜150℃であり、更に好ましくは20℃〜100℃である。
担持時間は、担持温度によって異なるが、一般に5分ないし48時間であり、好ましくは10分ないし24時間であり、さらに好ましくは20分ないし12時間である。
【0023】
無機マグネシウム化合物の担持量としては、マグネシウムとしてシリカ中に0.1〜10mmol/g担持させることが好ましい。マグネシウム担持量が0.1mmol/g以下だと充分に活性が発現せず、また、10mmol/g以上だとシリカに担持されないマグネシウム成分が生ずるために触媒のモルフォロジーが良好でなくなる。
さらに特に好ましいマグネシウム担持量は1〜4mmol/gである。
【0024】
乾燥温度は、常圧においては100℃以上300℃以下が望ましい。乾燥時間は、一般に10分ないし100時間であり、好ましくは20分ないし50時間であり、さらに好ましくは40分ないし25時間である。乾燥方法は、100〜150℃で乾燥後、不活性ガスを流通させて流動層を形成させた状態で150〜300℃で焼成させることが好ましい。乾燥は減圧下で行なってもよい。この場合の温度は減圧下での圧力の沸点よりも高い温度で熱処理を行なえばよく、必ずしも100℃を超える必要はない。
【0025】
チタン化合物及び電子供与性化合物で処理する方法は、チタン化合物及び電子供与性化合物を予め接触させたものを加えることにより処理することが好ましい。
チタン化合物(T)の処理量は、水溶性マグネシウム化合物(M)に対するモル比(T/M)が0.01<T/M<10となる量が好ましく、更に0.1<T/M< 5となる量が好ましい。。
チタン化合物の処理量が少ないと重合活性が低く、チタン化合物の処理量が多いと不必要なチタン化合物の除去のための洗浄工程がより多く必要となる。
【0026】
電子供与性化合物(D)の処理量は、チタン化合物(T)に対するモル比(D/T)が0.5<D/T<1000となる量が好ましい。電子供与性化合物を加える量 がD/T≦0.5になるとチタン化合物と形成した錯化物が固形物として全量溶解 せずに残り、マグネシウム化合物(M)を含む担体上にうまく担持されない。また、電子供与性化合物をD/T≧1000となる量加えてもその効果は変わらないため、不要な電子供与性化合物を加える分、最終的電子供与性化合物を除去するためより多くの時間を要し工業的生産に不利となる。更に好ましい処理量は1<D/T<500の範囲である。
【0027】
処理温度は、使用する電子供与性化合物によって異なるため、好ましい温度を限定することはできないが、0〜200℃が工業的に好ましい。更に好ましくは20℃〜100℃である。
処理時間は、処理温度によって異なるが、一般に5分ないし48時間であり、好ましくは10分ないし24時間であり、さらに好ましくは20分ないし12時間である。
反応雰囲気は不活性ガス下であることが好ましい。
【0028】
処理後の乾燥条件としては、残存する電子供与性化合物の量で規定されるべきである。なぜなら、電子供与性化合物含有量により、成形性の指標となるスウェル比、溶融張力及び分子量分布が変化するからである。残存する電子供与性化合物が多いと分子量分布は狭いものの、スウェル比、溶融張力が低い。逆に残存する電子供与性化合物が少なすぎるとスウェル比、溶融張力が高いものの、分子量分布が広くなり、重合活性は低下する。すなわち、本発明で好ましい乾燥条件とは、最終触媒中の電子供与性化合物(D)とチタン化合物(T)のモル比(D/T)が0.3<D/T<4となるように電子供与性化合物残存量が制御されうる温 度、時間である。更に好ましい乾燥条件は、最終触媒中の電子供与性化合物(D)とチタン化合物(T)のモル比(D/T)が0.5<D/T<2となるように電 子供与性化合物残存量が制御されうる温度と時間である。
【0029】
また、乾燥温度は電子供与性化合物の沸点以上が望ましい。これは乾燥を促進するためであり、乾燥を一層促進する意味では常圧よりも、減圧で乾燥する方が好ましい。
【0030】
一般式(A)の有機アルミニウム化合物で処理する際に、希釈剤として不活性溶媒を用いることがが好ましい。
不活性溶媒としては、沸点が10〜300℃の脂肪族炭化水素(例えば、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなど)、脂肪族環状炭化水素(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などを例示することができる。
【0031】
有機アルミニウム化合物(A)の使用量は、担持された水溶性マグネシウム化合物(M)に対して0.1<A/M<100となる量で処理することが好ましい。 有機アルミニウム化合物(A)の処理量(A/M)が0.1以下であるとべたつき 成分が多く、また処理量(A/M)を100以上としても効果はかわらず、余分な有機アルミニウム化合物(A)成分を除去するための洗浄工程が必要となる。
【0032】
処理温度は、使用する溶媒によって異なるため好ましい温度を限定することはできないが、例えばn−ヘキサンを溶媒として用いる場合には、好ましくは0℃〜150℃であり、更に好ましくは20℃〜100℃である。また、n−デカンを溶媒として用いる場合には、好ましくは0℃〜200℃であり、更に好ましくは20℃〜150℃である。
【0033】
処理時間は、処理温度によって異なるが、一般に5分ないし48時間であり、好ましくは10分ないし24時間であり、さらに好ましくは20分ないし12時間である。
処理の反応雰囲気としては不活性ガス下であることが好ましい。
【0034】
有機アルミニウム化合物(A)での処理後に、沸点が10〜300℃の脂肪族炭化水素(例えば、i−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなど)、脂肪族環状炭化水素(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン,トルエン,キシレンなど)などの不活性溶媒を用いて洗浄してもよい。
【0035】
洗浄温度は、使用する溶媒によって異なるため好ましい温度を一概に限定することはできないが、例えばn−ヘキサンを溶媒として用いる場合には、好ましくは0℃〜200℃であり、更に好ましくは20℃〜150℃である。また、n−デカンを用いる場合には、好ましくは0℃〜200℃であり、更に好ましくは20℃〜150℃である。
【0036】
洗浄時間は洗浄温度によって異なるが、一般に1分ないし10時間であり、好ましくは2分ないし5時間であり、さらに好ましくは5分ないし2時間である。
洗浄回数は、溶液中の残存金属成分の濃度により異なるが、一般に2回以上、好ましくは3回以上行なう。洗浄は不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい
【0037】
(II)有機アルミニウム化合物
本発明のエチレン重合用触媒において前記固体触媒成分(I)と共に用いる有機アルミニウム化合物(II)は、下記一般式(B)で示される。
Al(R3)a(X2)3-a (B)
【0038】
上記式(B)中、R3は炭素数が多くとも12個の脂肪族、脂環族もしくは芳 香族の炭化水素であり、X2はハロゲン原子または水素原子であり、aは1以上 3以下の数である。
具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジノルマルブチルアルミニウムクロライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムクロライド、ジノルマルオクチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ノルマルブチルアルミニウムジクロライド、ノルマルヘキシルアルミニウムジクロライド、ノルマルオクチルジクロライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルブチルアルミニウムハイドライド、ジノルマルヘキシルアルミニウムハイドライド、ジノルマルオクチルアルミニウムハイドライドなどを挙げることができる。
これら有機アルミニウム化合物(II)は、一種を単独で使用することもできるし、2種類以上併用して使用することもできる。
【0039】
(3)エチレン系重合体の製造
固体触媒成分(I)と有機アルミニウム化合物(II)からなる本発明の触媒を用いることにより、溶融張力が高く、重合活性が高く、ファウリングを起こさず、分子量分布が狭く、べたつき成分、発煙成分が少なく、フィルムにした場合の透明性に優れるエチレン系重合体を得ることができる。
本発明の固体触媒成分を用いて得られるエチレン系重合体は、エチレン単独重合でもエチレンとα−オレフィンとの共重合であってもよい。
エチレンと共重合する場合に使用するα−オレフィンとしては、炭素数が多くとも20個、好ましくは多くとも12個のものであり、具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。エチレン共重合体に占める上記α−オレフィンの割合は、一般に20モル%以下が好ましく、特に15モル%以下が好ましい。
【0040】
本発明によるエチレン系重合体の製造方法を実施するにあたり、重合方法は特に限定されず、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法、気相重合法などが可能である。また、重合方式としても、バッチ重合のみならず、連続重合、回分式重合を行なう方法にも適用できる。
液相重合法は通常炭化水素溶媒中で実施される。炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独または混合物が用いられる。
【0041】
重合温度は一般に0〜300℃であり、実用的には20〜200℃である。重合圧力は、大気圧〜100kg/cm2G、好ましくは3〜50kg/cm2Gである。また、必要に応じて分子量調節のために、重合系に水素などの連鎖移動剤を共存させることができる。
【0042】
本発明の触媒系により、HLMFR0.0001g/10分からMFR1000g/10分まで、密度0.880から0.970g/cm3までのエチレン系重合体を製造すること が可能である。
また、従来の触媒系で得られるエチレン系重合体よりも溶融張力の高い成形性に優れたエチレン系重合体を単段重合で生産性よく製造できる。
【0043】
更に多段重合などのプロセスなどを利用することにより更に溶融張力の高い成形性に優れたエチレン系重合体を製造することが可能であり、プロセス等の技術を利用して流動特性を制御することにより、フィルム(バランスフィルムを含む)成形、ブロー成形、あるいはパイプ成形して使用することもできる。
【0044】
本発明の方法で得られるエチレン系重合体は通常のポリオレフィンに使用される添加剤や加工法を利用することができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。
【0045】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
下記の例において、触媒及びエチレン系重合体の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0046】
1.触媒分析
金属成分の分析:触媒を高純度水酸化カリウムを用いてアルカリ溶融させ分解し、高周波誘導プラズマ発光分光分析(I.C.P.;日本Jarell-Ash社製)により測定した。
電子供与性化合物の分析:触媒をアセトンで処理し、抽出された成分を、ガスクロマトグラフ(島津社製)により測定した。
2.メルトフローレート(MFR)
JIS K-6760に従い、温度が190℃及び荷重が2.16kgの条件で測定した。
3.ハイロードメルトフローレート(HLMFR)
JIS K-6760に従い、温度が190℃及び荷重が21.6kgの条件で測定した。
【0047】
4.ハイロードメルトフローレート(HLMFR)のスウェル比
JIS K-6760に従い、温度が190℃及び荷重が21.6kgの条件で測定した時に押出されたストランドの直径を測定し、測定値からオリフィスの径(2.095mm )を差し引き、オリフィスの径(2.095mm)で除して求めた。
【数1】
スウェル比=(ストランド直径(mm)−2.095)/2.095。
5.HLMFR/MFR
HLMFRをMFRで割った値で、流動特性の指標となり、この値が大きいほど流動特性が優れている。
【0048】
6.密度
JIS K-6760に従い測定した。
7.分子量分布(Mw/Mn)
WATERS社製GPC装置を用いて測定した。
8.溶融張力
東洋精機社製 CAPIROGRAPH 1C を用い、190℃、押し出し速度15mm/分、引き取り速度6.5m/分の条件で測定した。
【0049】
実施例1:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
富士シリシア社製シリカゲル(CARIACT P-10)81gにMgCl2水溶液(5 4mg/ml)355mlを加え、室温にて30分間撹拌した。
次に130℃の乾燥器中で10時間乾燥させた。乾燥粉体を流動層脱水器中において温度250℃で加熱窒素を最小流動化速度の4.5倍に等しい表面ガス速度 にて24時間焼成を行なった。得られた粉体を窒素で室温まで冷却した。得られた粉体中(以下、シリカ担持マグネシウム化合物と略記する。)には2.0mmo l/gのMgが残存していた。
【0050】
上記で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol)に TiCl4(市販品:純度99重量%以上)及びテトラヒドロフラン(THF) (市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した0.16mmol/mlのTiCl4溶液12.5ml(Ti 2.0mmol)を窒素雰囲気下で加え、室温で 1時間撹拌した。この混合物から減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去し、さらに130℃に昇温後2時間減圧乾燥を続けた。
【0051】
更に、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)(東ソーアクゾ社製)6.0mmolを加え、40℃で2時間撹拌した。静置して上澄み液を除去後、この 混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。得られた固体触媒成分中には、Ti2.4wt%、THF5.0wt%が含まれていた。
【0052】
[重合]
内容積1.5リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブにトリイソブチ ルアルミニウム1.0mmol、1−ブテン40g、イソブタン600mlを加え 、撹拌を行ないながら、85℃に昇温し、水素分圧がオートクレーブに設置してある圧力計のゲージ圧力で1.0kg/cm2となるように水素を導入した。上記で調製した固体触媒成分61mgを少量のヘキサンでスラリーとした後、エチレンで加圧してオートクレーブ中に導入し、重合開始とした。また、エチレン分圧がオートクレーブに設置してある圧力計のゲージ圧力で5kg/cm2となるよう にエチレンの供給を続けながら30分間重合を行なった。重合開始30分後、エチレンの供給を停止した後、撹拌を停止し、オートクレーブ内の未反応ガスを排出し、重合を停止した。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。生成した重合体を60℃で4時間真空乾燥し、70gの重合体を得た。重合活性(生成重合体重量を触媒重量、エチレン分圧、時間で徐した値)は460g/g×(kg/cm2)×時間(h)、MFRは1.3g/10分、HLMFRは35g/10分、HLMFR/MFRは27、HLMFRスウェル比は73%、密度は0.921g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.5、溶融張力は2.4gであった。
【0053】
実施例2:エチレンと1−ブテンの共重合
[触媒]
触媒は実施例1で調製した固体触媒成分を使用した。
[重合]
内容積6.0リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブにトリイソブチ ルアルミニウム4.0mmol、1−ブテン160g、イソブタン2400mlを加え 、撹拌を行ないながら、85℃に昇温し、水素分圧がオートクレーブに設置してある圧力計のゲージ圧力で0.9kg/cm2となるように水素を導入した。固体触媒成分280mgを少量のヘキサンでスラリーとした後、エチレンで加圧してオートクレーブ中に導入し、重合開始とした。また、エチレン分圧がオートクレーブに設置してある圧力計のゲージ圧力で5kg/cm2となるようにエチレンの 供給を続けながら60分間重合を行なった。重合開始60分後、エチレンの供給を停止した後、撹拌を停止し、オートクレーブ内の未反応ガスを排出し、重合を停止した。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。生成した重合体を60℃で4時間真空乾燥し、434gの重合体を得た。重合活性は310g/g×(kg/cm2)×h、MFR0.87g/10分、HLMFRは 23g/10分、HLMFR/MFRは26、HLMFRスウェル比は60%、密度は0.922g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.6 、溶融張力は3.5g、融点は122.1℃、結晶化温度は110.1℃であった。
【0054】
得られた樹脂をペレタイズ後、少量評価用インフレ−ション成形機によりフィルム成形を行ない、厚み30μmのフィルムを得た。このフィルムは、全ヘーズ4.8%、MD方向のクラリティー69.7%、TD方向のクラリティー64.0%、エレ メンドルフ引き裂き強度290kg/mm、フィルムインパクト強度178kg・cm/mmであった。
【0055】
比較例1:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
実施例1で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol )を窒素雰囲気中でヘキサン30mlによりスラリー化し、このスラリーを撹拌しながら、TiCl4(市販品:純度99重量%以上)2.0mmolを加え、40℃で2時間撹拌した。生成物をヘキサン30mlで5回洗浄した。この混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。
【0056】
[重合]
上記の固体触媒成分72mgを使用した他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブにはファウリングが認められ、壁面にシート状ポリマーが付着していた。回収した重合体の収量は29g、重合活性は160g/g×(kg/cm2)×hで、MFRは0.65g/10分で、HLMFR /MFRは27、HLMFRスウェル比は105%、密度は0.921g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は7.0、溶融張力は7.2であった。
【0057】
比較例2:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
富士シリシア社製シリカゲル(CARIACT P-10)25.2gを流動層脱水器中において温度250℃で加熱窒素を最小流動化速度の4.5倍に等しい表面ガス速度にて 24時間焼成を行なった。得られた粉体を窒素で室温まで冷却させた。次にTiCl4(市販品:純度99重量%以上)1.9g(10mmol)、無水MgCl2 (丸安工業社製:純度99重量%以上)2.9g(30mmol)及びテトラヒド ロフラン(THF)100ml(市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した溶液20mlを上記で得られたシリカゲル3.0gに窒素雰囲気下で加 え、室温で1時間撹拌した。この混合物から減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去した。
【0058】
更に、ジエチルアルミニウムクロライド(東ソーアクゾ社製)6.0mmolを 加え、40℃で2時間撹拌した。静置して上澄み液を除去後、この混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。得られた固体触媒成分中には、Ti2.2wt%、THF21wt%が含まれていた。
【0059】
[重合]
上記の固体触媒成分93mgを使用し、水素0.8kg/cm2、ブテン35gにした他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。重合体の収量は、52gで、重合活性は220g/g×(kg/cm2)×hで、MFRは1.2g/10分で、HLMFRは30g/10分、HLMFR/MFRは25、HLMFRスウェル比は42%、密度は0.921g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.7、溶融張力は1.3gであった。
【0060】
比較例3:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
実施例1で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol )にTiCl4(市販品:純度99重量%以上)及びテトラヒドロフラン(TH F)(市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した0.16mmol/mlのTiCl4溶液12.5ml(Ti 2.0mmol)を窒素雰囲気下で加え、室 温で1時間撹拌した。この混合物から室温減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去した。さらさらの粉体になった時点で減圧乾燥を止めた。
【0061】
更に、ジエチルアルミニウムクロライド(東ソーアクゾ社製)6.0mmolを 加え、40℃で2時間撹拌した。静置して上澄み液を除去後、この混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。得られた固体触媒成分中には、Ti2.3wt%、THF17wt%が含まれていた。
【0062】
[重合]
上記の固体触媒成分74mgを使用した他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。重合体の収量は121g、重合活性は650g/g×(kg/cm2 )×h、MFRは1.4g/10分、HLMFRは38g/10分、HLMFR/ MFRは27、HLMFRスウェル比は47%、密度は.921g/cm3、Mw( 重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.0、溶融張力は1.5gであった。
【0063】
比較例4:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
実施例1で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol )にTiCl4(市販品:純度99重量%以上)及びテトラヒドロフラン(TH F)(市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した0.16mmol/mlのTiCl4溶液12.5ml(Ti 2.0mmol)を窒素雰囲気下で加え、室 温で1時間撹拌した。この混合物から減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去し、更に160℃で2時間減圧乾燥した。
【0064】
更に、ジエチルアルミニウムクロライド(東ソーアクゾ社製)6.0mmolを 加え、40℃で2時間撹拌した。静置して上澄み液を除去後、この混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。得られた固体触媒成分中には、Ti2.5wt%、THF1.1wt%が含まれていた。
【0065】
[重合]
上記の固体触媒成分113mgを使用した他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。重合体の収量は40g、重合活性は140g/g×(kg/cm2 )×h、MFRは0.65g/10分、HLMFRは20g/10分、HLMFR/MFRは31、HLMFRスウェル比は65%、密度は0.920g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は5.8、溶融張力は16gであった。
【0066】
比較例5:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
実施例1で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol )にTiCl4(市販品:純度99重量%以上)及びテトラヒドロフラン(TH F)(市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した0.16mmol/mlのTiCl4溶液12.5ml(Ti2.0mmol)を窒素雰囲気下で加え、室温で1時間撹拌した。この混合物から減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去し、更に130℃で2時間減圧乾燥した。
得られた固体触媒成分中には、Ti2.6wt%、THF5.1wt%が含まれていた。
【0067】
[重合]
上記の固体触媒成分148mgを使用した他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。重合体の収量は5.2g、重合活性は14g/g×(kg/cm2)×h、MFRは0.32g/10分、HLMFRは16g/10分、HLMFR/MFRは51、HLMFRスウェル比は77%、密度は0.925g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)6.7、溶融張力は15gであった。
【0068】
実施例3:エチレンと1−ブテンの共重合
[固体触媒成分の調製]
実施例1で得られたシリカ担持マグネシウム化合物3.0g(Mg 6.0mmol )にTiCl4(市販品:純度99重量%以上)及びテトラヒドロフラン(TH F)(市販品:純度99重量%以上)を接触反応させて調製した0.16mmol/mlのTiCl4溶液12.5ml(Ti 2.0mmol)を窒素雰囲気下で加え、室 温で1時間撹拌した。この混合物から減圧下で電子供与性化合物であるTHFを除去し、更に130℃で2時間減圧乾燥した。更に、ジエチルアルミニウムクロライド(東ソーアクゾ社製)2.0mmolを加え、40℃で2時間撹拌した。静 置して上澄み液を除去後、この混合物から減圧下60℃でヘキサンを除去し、粉末の固体触媒成分を得た。得られた固体触媒成分中には、Ti2.5wt%、TH F4.9wt%が含まれていた。
【0069】
[重合]
上記の固体触媒成分67mgを使用した他は、すべて実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。オートクレーブ内にはファウリングした事実は認められなかった。重合体の収量は30g、重合活性は180g/g×(kg/cm2) ×h、MFRは1.2g/10分、HLMFRは34g/10分、HLMFR/M FRは28、HLMFRスウェル比は93%、密度は0.924g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.4、溶融張力は3.1gであった。
【0070】
実施例4:エチレンと1−ブテンの共重合
[重合]
触媒として実施例3の固体触媒成分77mgを使用し、助触媒としてトリイソブチルアルミニウムのかわりにトリエチルアルミニウム1.0mmolを用いたほかは、実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。重合体収量は50g、重合活性は260g/g×(kg/cm2)×h、MFRは1.2g/10分、HLMFRは34g/10分、HLMFR/MFRは28、HLMFRスウェル比は7%、密度は0.926g/cm3、Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.2、溶融張力は2.3gであった。
【0071】
実施例5:エチレンの単独重合
[重合]
触媒として実施例1の触媒を75mgを使用した。水素3kg/cm2、1− ブテンを重合時使用しなかったほかは、実施例1と同様な条件、方法で重合を行なった。重合体収量は34g、重合活性は180g/g×(kg/cm2)×h で、MFRは0.70g/10分、HLMFRは22g/10分、HLMFR/MFRは31、HLMFRスウェル比は61%、密度は0.956g/cm3であった。
【0072】
実施例1〜5及び比較例1〜5の反応条件及び結果を表1及び2にまとめて示す。
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
本発明の固体触媒成分を使用した触媒によれば、重合活性が高く、ファウリングを起こさず、分子量分布が狭くてべたつき成分が少なく、溶融張力、流動特性のバランスに優れ、フィルムにした場合の透明性の優れたエチレン系重合体を製造することができる(実施例1〜5)。
これに対して、電子供与性化合物(D)及び有機アルミニウム化合物(A)を使用しない固体触媒成分を用いた場合には、重合活性が低く、ファウリングを起し、溶融張力の低い重合体しか得られず(比較例1)、電子供与性化合物(D)とチタン化合物の比(D/T)が本発明の規定を超えるときには、重合活性は高いがHLMFRスウェル比が低く溶融張力の低い重合体となり(比較例2及び3)、D/Tが本発明の規定より低い場合は分子分布が広く、べたつき成分を含み(比較例4)、D/Tが本発明の規定内でも、有機アルミニウム(A)を使用しない固体触媒成分を用いた場合には、触媒活性が極端に低くなり、分子量分布が広く、べたつき成分、発煙成分を含む(比較例5)。
【0075】
【発明の効果】
本発明の固体触媒成分を用いることにより、溶融張力が高く、重合活性が高く、ファウリングを起こさず、分子量分布が狭くてべたつき成分、発煙成分が少なく、フィルムにした場合の透明性の優れるエチレン系重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエチレン系重合体の製造に使用する触媒調製のフローチャート図である。
Claims (10)
- 無機化合物担体に無機マグネシウム化合物(M)を水溶液中で担持し乾燥させた後、チタン化合物(T)及び電子供与性化合物(D)で処理し、更に一般式(A)
(R1)m(R2)nAl(X)3-m-n(A)
(式中、R1及びR2は、同一でも異なってもよく、各々炭素数1〜20のアルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わし、m及びnは0,1または2であり、m+n=1または2である。)で示される有機アルミニウム化合物で処理することにより得られるエチレン重合用固体触媒成分であって、最終固体触媒成分中のチタン化合物(T)に対する電子供与性化合物(D)のモル比(D/T)が 0.3 <D/T<4となるようにチタン化合物(T)及び電子供与性化合物(D)で処理することにより得られることを特徴とするエチレン重合用固体触媒成分。 - 無機化合物担体上に無機マグネシウム化合物(M)を水溶液中で担持し乾燥させる際の乾燥温度が100〜300℃である請求項1に記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 一般式(A)で示される有機アルミニウム化合物として、R 1 及びR 2 が、同一でも異なってもよく各々炭素数2〜6のアルキル基を表わす化合物を用いる請求項1または2に記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 一般式(A)で示される有機アルミニウム化合物を無機マグネシウム化合物(M)に対するモル比が 0.1 <A/M<100となる量で処理する請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 無機マグネシウム化合物がMgX2・nH2O(Xはハロゲン原子であり、nは0または1〜6の整数である。)、Mg(OH)X(Xはハロゲン原子である。)及びMgSO4から選択される少なくとも一種である請求項1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- チタン化合物がTiX4及びTiX3(式中、Xはハロゲン原子である。)から選択される少なくとも一種である請求項1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 無機化合物担体が、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、アルミナ、燐酸アルミニウムから選択される少なくとも一種である請求項1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 電子供与性性化合物が、酸素、窒素あるいは硫黄原子を含む複素員環式化合物である請求項1乃至4のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載のエチレン重合用固体触媒成分(I)及び下記一般式(B)
Al(R3)a(X2)3-a (B)
(式中、R3は炭素数が多くとも12個の脂肪族、脂環族もしくは芳香族の炭化水素であり、X2はハロゲン原子または水素原子であり、aは1以上3以下の数である。)で示される有機アルミニウム化合物(II)からなるエチレン重合用触媒。 - 請求項9記載のエチレン重合用触媒を用い、エチレンを単独重合またはエチレンとα−オレフィンを共重合させるエチレン系重合体の製造方法。
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