JP4045947B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寸法安定性、剛性、厚み均質性、幅寸法均一性に優れ、磁気テープへの加工時の磁性層塗布加工適性に優れ、高温高湿下で長期保管してもトラックずれが少なく、走行耐久性、寸法安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることことができる二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、特に磁気記録媒体用などの支持体としての有用性がよく知られている。近年、磁気テープは機材の軽量化、小型化、長時間記録化のため高密度化が要求されている。高密度記録化のためには、記録波長を短くし、記録面積を小さくすることが有用である。しかしながら、記録面積を小さくすると、磁気テープの走行時における熱やテープ保存時の熱変形により、記録トラックのずれが起こりやすくなるという問題点がある。したがって、テープ使用環境での熱寸法安定性および保存安定性といった特性の改善に対する要求がますます強まっている。また、記録面積を小さくするためには、磁性層の一層の薄膜化が必要となるが、これに伴い、機械的強度が不充分となるため、フィルムを用いた磁気テープの腰が弱くなったり伸びやすくなり、例えば、テープダメージを受けやすくなったり、ヘッドタッチが悪化し電磁変換特性が低下するといった問題が生じやすくなる。
【0003】
そこで、薄膜化されたテープとする場合には、上記寸法安定性の要求に応え、従来の厚いテープとの互換性(ヘッドの当たりや走行性など)を得ることが望まれ、この観点から、支持体には、強度、寸法安定性の点から剛性の高い芳香族ポリアミドが用いられている。しかしながら、この芳香族ポリアミドフィルムは現在市販されている量が従来のポリエステルフィルムと比べて格段に少なく、芳香族ポリアミドフィルムによる金属薄膜型磁気記録媒体の量的拡大には制約が多い。
【0004】
一方、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)やポリエチレンナフタレート(以下、PENという)は、そのままでは剛性が低いため、二軸配向ポリエステルフィルムの高強度化のための技術として、縦、横二方向に延伸したフィルムを再度縦、横に延伸して、高強度化する方法(例えば、特許文献1、2)が知られている。しかしながら、各種用途における加工工程での環境条件によって寸法が変化し、特に磁気記録媒体への加工工程においては、磁性層むらが生じやすかったり、使用環境条件によって寸法変化が生じ、記録トラックにずれが生じ記録再生時にエラーが発生する、強度が不充分で薄膜対応が困難となり所望の電磁変換特性が得られない等の問題が生じ易かった。
【0005】
また、幅方向の二段微延伸やエージング処理を組み合わせてことにより寸法安定性を改善する方法(例えば、特許文献3)も知られているが、本手法では、厚み均質性や幅方向物性均一性が不十分であったり、結果として支持体の寸法安定性、強度等の特性にもむらが生じ、磁気記録媒体への加工工程において磁性層の塗布むらが生じたり、磁気記録媒体としての使用環境下における寸法安定性も充分ではない。また、フィルム表面に金属系の強化膜を形成することで二軸延伸ポリエステルフィルムを高強度化させるという方法(例えば、特許文献4、5)が知られているが、磁気記録媒体への加工工程において、カールが発生して加工し難いという問題がある。また、結晶サイズを規定の範囲として寸法安定性を改善する方法(例えば、特許文献6)が知られているが、該手法では磁性層の塗布むらが生し易かったり、磁気テープとしての使用環境下における寸法安定性が不十分となっていた。
【0006】
上述したように、従来の二軸配向ポリエステルフィルムの場合、寸法安定性、剛性、厚み均質性、幅方向物性均一性といった磁気記録媒体として重要な特性をすべて満足したものは得られておらず、大容量の高密度記録媒体への適用に際して、多くの課題が残されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−329209号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平10−128845号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−11786号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2000−11376号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平11−33925号公報
【0012】
【特許文献6】
特開2001−30350号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、特に寸法安定性、剛性、厚み均質性、幅寸法均一性に優れ、磁気テープへの加工時の磁性層塗布加工適性に優れ、高温高湿下で長期保管してもトラックずれが少なく、走行耐久性、寸法安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることことができる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
最近の磁気記録材料用途においては、長時間記録化のためのベースフィルムの一層の薄膜化と高密度化が要求されている。本発明では、その要求を満たすための最も需要な特性として、磁気テープのドライブ内での温度、湿度、張力等によるテープの長手方向及び幅方向の寸法安定性に加えて、磁性層塗布加工工程における磁性層むら抑制に着目した。鋭意検討した結果、その寸法安定性の指標として、熱収縮率、厚み方向の結晶サイズχc、弾性率を下記範囲とすることによって、テープ加工工程や磁気テープ使用環境の温度、湿度、張力に対する長手方向及び幅方向の寸法変化が少なく、走行耐久性、保存安定性等に優れた高剛性の二軸配向ポリエステルフィルムが得られることがわかった。
【0015】
すなわち、上記目的を達成するための本発明は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを含み、幅方向の100℃、30分における熱収縮率が−0.4%以上0%未満、厚み方向の結晶サイズχcが50〜65Å、長手方向の弾性率Ymが6〜15GPa、かつ、長手方向の弾性率Ymと幅方向の弾性率Ytの比Ym/Ytが1.2〜2.5である磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルムを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とするポリエステルを用いることができる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸としては例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみ用いてもよく、二種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸などのオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0017】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−βーヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等、特に好ましくは、エチレングリコールを用いることができる。これらのジオール成分は一種のみ用いてもよく、二種以上併用してもよい。なかでも、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0018】
また、このポリエステルには、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の多官能化合物等の他の化合物を、ポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合させてもよい。
【0019】
本発明で用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、またはこれらを主成分とする共重合体や変成体も本発明の効果発現の観点から好ましく用いられる。
【0020】
ここで、酸成分として、テレフタル酸以外の他の酸成分を少量、共重合してもよい。また、エチレングリコール以外の他のグリコール成分を共重合成分として加えてもよい。
【0021】
また、本発明に用いられるポリエステルには、ポリエーテルイミドを5〜30重量%の範囲で含有させてもよい。用いられるポリエーテルイミドとしては、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596565号、特許第2596566号、特許第2598478号のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号に記載のポリマーである。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。本発明では、ガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドが好ましく、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物が、ポリエステルとの相溶性、コスト、溶融成型性等の観点から最も好ましい。このポリエーテルイミドは、“Ultem”(登録商標)の商標名で、General Electric社より入手可能である。
【0022】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、不活性粒子を含有することが好ましい。不活性粒子としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子等を挙げることができる。この中でも、高分子架橋粒子、アルミナ、球状シリカ、ケイ酸アルミニウムが特に好ましい。
【0023】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の各種添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などを添加することもできる。
【0024】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の100℃、30分における熱収縮率が−0.4%以上0%未満であるが、−0.35%〜−0.05%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは−0.25〜−0.15%の範囲である。熱収縮率が0%以上であると、磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦や、テープ加工工程での熱履歴による幅方向の収縮、データの保存安定性等が悪化する。一方、熱収縮率が−0.4%未満であると、テープ加工工程での熱履歴により皺が発生し易くなる。
【0025】
また、厚み方向の結晶サイズχcは50〜80Åの範囲にある。結晶サイズχcを上記範囲とすることにより、テープ破断の発生頻度が少なく、テープ加工工程における磁性層の塗布むらや皺の発生を抑制できる上、磁気テープ使用環境下におけるテープの寸法変化が低減でき、エッジダメージの発生を抑制することも可能となる。ここで、厚み方向とは、ポリエステル主鎖方向に最も近い結晶面の法線方向に対して垂直な方向であり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートでは(100)面の方向である。厚み方向の結晶サイズχcは、使用するポリエステルによって変わるが、ポリエチレンテレフタレートの場合は、好ましくは55〜75Åであり、さらに好ましくは58〜70Åの範囲である。また使用するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合には、50〜65Åの範囲が好ましい。
【0026】
さらに、本発明に二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向の弾性率Ymは6〜15GPaの範囲にある。長手方向の弾性率Ymが6GPa未満であると、テープドライブ内での長手方向への張力によって長手方向に伸びやすく、この伸びの変形により幅方向に収縮して、記録トラックがずれるという問題が発生し易い。さらにドロップアウトの多発により、データの保存安定性が悪化したり、電磁変換特性が悪化し易くなる。一方、長手方向の弾性率Ymが15GPaを超えると、テープ破断が起きやすくなったり、幅方向のヤング率が不足し、エッジダメージの原因となる。
【0027】
また、長手方向の弾性率Ymと幅方向の弾性率Ytの比Ym/Ytは1.2〜2.5の範囲にある。Ym/Ytがこの範囲であると、データテープ内での長手方向へかかる張力や、テープ加工工程でかかる熱や張力による長手及び幅方向の寸法変化が抑制でき、データの保存安定性も向上させることができる。
【0028】
なお、上記した長手方向の弾性率Ymは好ましくは7〜14.5GPa、さらに好ましくは8〜14GPaの範囲であり、Ym/Ytは好ましくは1.4〜2.2、さらに好ましくは1.5〜2.0の範囲である。
【0029】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向の弾性率Ytが4.5〜9GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜8.5GPaの範囲、さらに好ましくは5.5〜8GPaの範囲である。幅方向の弾性率Ytが4.5GPa未満であると、エッジダメージの原因となったりすることがある。一方、幅方向の弾性率Ytが9GPaを超えると、長手方向のヤング率の低下を招いたり、スリット性が悪化することがある。また、幅方向のヤング率Ytを上記範囲とすることは、磁気テープ使用環境の温度、湿度、張力に対する幅方向の寸法変化を抑制する上で有効である。
【0030】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム長手方向の厚みむらが1〜5%であることが好ましく、より好ましくは1〜4%の範囲であり、さらに好ましくは1〜3%の範囲である。厚みむらが上記範囲を超えると、磁性層の塗布むらが生じやすくなるため、特にリニアテープのマルチヘッドでは端のヘッドでの当たりが弱くなりPESノイズの原因ともなる。
【0031】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向における配向角の最大値と最大値の差x(゜)のフィルム幅L(m)に対する比x/Lが0〜15(゜/m)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜10(゜/m)の範囲であり、さらに好ましくは0〜5(゜/m)の範囲である。
【0032】
厚みむら、x/Lが上記範囲を超えると、これらの物性むらにより、寸法変化率にもむらが生じ、結果的に磁気テープ使用環境の温度、湿度、張力に対する長手方向、及び幅方向の寸法安定性が悪化したり、テープ加工工程において、磁性層の塗布むらが生じたり、製品化できない箇所が増えて収率悪化を招く原因となる。
【0033】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面Aの表面粗さRaは1.5〜20nmが好ましく、より好ましくは2〜15nm、さらに好ましくは3〜8nmである。ここで、表面Aとは磁気テープとする際に磁性層を塗布する側の面のことを示す。表面AのRaが上記範囲の下限未満であると、フィルム表面A上に形成される磁性層が平滑すぎて、デジタルリニアテープ(DLT)、リニアテープオープン(LTO)、クオーターインチカセット(QIC)、デジタルビデオカセット(DVC)等のデータ記録装置での磁気記録・再生時に磁気ヘッドにより磁性層が摩耗しやすくなる。また、表面AのRaが上記範囲の上限を超えると、該磁性層が粗面すぎて、磁気テープの電磁変換特性が低下する傾向にある。つまり、表面AのRaを上記範囲内とすることで、磁性層の記録・再生時の磁気ヘッドによる摩耗を極力少なくし、及び磁気記録テープの電磁変換特性を良好に保つことが可能となる。
【0034】
本発明の支持体の表面Aとは反対側の表面Bの表面粗さRaは5〜50nmが好ましく、より好ましくは6〜30nm、さらに好ましくは7〜10nmである。ここで、表面Bとは磁気テープの走行面側となる面である。表面BのRaを上記範囲内とすることにより、フィルムを製膜した後、フィルムを所定の幅にスリットする際、巻姿の良い製品を採取しやすく、支持体のフィルム表面A上に磁性層を設けた後にロール状に巻き取った状態において、支持体のフィルム表面Bの粗さが表面A側に転写され磁性層にうねり状の変形が起きるのを最小限とすることが可能となる。
【0035】
本発明に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムに不活性粒子を含有する場合、平均粒径は0.001〜2μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μm、さらに好ましくは0.01〜0.5μmである。不活性粒子の平均粒径が上記範囲の下限未満であると、フィルム表面突起としての役割を果たさないことがある。また、上記範囲の上限を超えると、粗大突起となって脱落しやすくなることがある。
【0036】
また、本発明に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムに含有される不活性粒子の含有量は、0.01〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。不活性粒子の含有量が上記範囲の下限未満であると、フィルムの走行特性等に有効に働かなくなる傾向にある。また、上記範囲の上限を超えると凝集して粗大突起となり脱落しやすくなる。
【0037】
また、本発明では、フィルムの基層部の片側にフィルムの走行性やハンドリング性を良化させる役割を担うフィルム層を薄膜積層した2層構造をとるものが特に好ましい。なお、基層部とは、層厚みにおいて、最も厚みの厚い層のことであり、それ以外が積層部である。磁気材料用途で重要とされる弾性率や寸法安定性等の物性は、主に基層部の物性によって決定される。また、この2層構造のフィルムにおける積層部は、不活性粒子の平均粒径d(nm)と積層厚さt(nm)との関係が、0.2d≦t≦10dである場合、均一な高さの突起が得られるため好ましい。
【0038】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、49℃、90%RHの条件下、長手方向に32MPaの荷重を掛けた状態で72時間処理する前の幅寸法(A)と該処理後の幅寸法(B)とから下式により求められる幅寸法変化率(%)が0〜0.3%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜0.25%であり、さらに好ましくは0〜0.2%である。
【0039】
幅寸法変化率(%)={(A−B)/A}×100
幅寸法変化率が上記範囲の上限を超えると、テープ加工時に皺が発生し易くなる。また、上記範囲の下限未満であると、テープ加工時に幅収縮が起こりやすく、寸法安定性が悪化したり、テープの走行耐久性の悪化、ドロップアウトの多発などデータの保存性が悪化し易くなる。
【0040】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、温度50℃、荷重28MPaの条件下で30分経時後のクリープコンプライアンスが、0.11〜0.4GPa-1であることが好ましい。クリープコンプライアンスが上記範囲の上限を超えると、磁気テープの走行時あるいは保存時の張力によって起こる磁気テープの伸び変形や、記録再生時のトラックずれが生じ易くなる。また、上記範囲の下限未満であると、磁気テープが破断する原因ともなる。クリープコンプライアンスは、さらに好ましくは0.13〜0.35GPa-1、最も好ましくは0.15〜0.30GPa-1の範囲である。
【0041】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気記録テープ用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷原紙用などに好ましく用いられる。特に好ましい用途は、均一で微細な表面形態を必要とするデーターストレージ用などの高密度磁気記録媒体である。その記録容量としては、好ましくは30GB(ギガバイト)以上、より好ましくは70GB以上、さらに好ましくは100GB以上である。また、高密度磁気記録媒体用ベースフィルムの厚みは、2〜8μmが好ましい。より好ましくは3.5〜6.5μm、さらに好ましくは4〜6μmである。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面A側に磁性層を設けることにより、磁気記録媒体を作製することができる。
【0043】
磁性層としては、強磁性金属薄膜や強磁性金属微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層などが好適な例として挙げられる。強磁性金属薄膜としては、鉄、コバルト、ニッケルやその他の合金等が好ましい。また、強磁性金属微粉末としては、強磁性六方晶フェライト微粉末や、鉄、コバルト、ニッケルやその他の合金等が好ましい。結合剤としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル等を単量単体として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱可塑性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、電子線硬化型樹脂を使用することも可能である。
【0044】
磁性層の形成法は、磁性粉を、熱可塑性、熱硬化性あるいは放射線硬化性などの高分子(結合剤)と混練し、塗布、乾燥、カレンダリングを行う塗布法、金属または合金を、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレコーティング法などにより、基材フィルム上に磁性金属薄膜層を直接形成する乾式法のいずれの方式も採用できる。
【0045】
本発明の磁気記録媒体においては、強磁性金属膜上に保護膜が設けられていてもよい。この保護膜によって、さらに走行耐久性、耐食性を改善することができる。保護膜としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物保護膜、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物保護膜、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物保護膜、グラファイト、無定型カーボン等の炭素からなる炭素保護膜があげられる。前記炭素保護膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法等で作製したアモルファス構造、グラファイト構造、ダイヤモンド構造、もしくはこれらの混合物からなるカーボン膜であり、特に好ましくは一般にダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質カーボン膜である。また、この硬質炭素保護膜上に付与する潤滑剤との密着性をさらに向上させる目的で、硬質炭素保護膜表面を酸化性もしくは不活性気体のプラズマによって表面処理してもよい。
【0046】
本発明では、磁気記録媒体の走行耐久性および耐食性を改善するため、上記磁性膜もしくは保護膜上に、潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。
【0047】
次に本発明の支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)の製造法について具体的に説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0048】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を溶融成形したシートを、長手方向と幅方向に逐次二軸延伸および/または同時二軸延伸することにより延伸配向させたフィルムであり、二軸延伸を多段階の温度で順次延伸を重ねて、高度に配向させることにより得られる。
【0049】
以下では、好ましい製造方法として、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムを逐次二軸延伸法により製造する例について説明する。
【0050】
まず、本発明で使用する高分子量ポリエチレンテレフタレートは通常の方法により、即ち、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によって高分子量ポリマを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセス(DMT法)である。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。
【0051】
上記方法により得られたPETのペレットを180℃で3時間以上、減圧乾燥した後、該ポリマーの融点以上に加熱後、定量的にTダイ口金から吐出させ、高電圧を印加させながら冷却ドラムに密着させて冷却し未延伸フィルムを得る。ここで、本発明においては、最終的に得られる二軸配向ポリエステルフィルムの厚みむらを1〜5%とするために、例えば、該口金のドラフト比(=口金リップ間隙/押し出されたシート厚み)を1〜15とすることが好ましく、更に好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8である。さらに、静電印加法では、通常直径0.15mmワイヤー電極を用いられるが、厚みむら低減の観点から、好ましくは直径が0.05〜0.3mmのワイヤー電極、より好ましくは0.1〜0.2mmのワイヤー電極を用いることが好ましい。さらに好ましくは断面が矩形で、長手方向に一様な形態を持つテープ状の電極を用いると良い。
【0052】
続いて、該未延伸フィルムを、Tg(ポリエステルのガラス転移温度)〜(Tg+55℃)の範囲の加熱ロール群で加熱し、長手方向に1段もしくは多段で3〜8倍に延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。この際、本発明の弾性率を満足させるには、長手方向の延伸速度は50,000〜200,000%/分で行い、一段目の延伸条件を(Tg+10)〜(Tg+40)℃の温度範囲で1.5〜3倍とし、引き続いて、(一段目の延伸温度−40)℃〜(一段目の延伸温度−10)℃の温度範囲で1.5〜4.5倍多段階に延伸することが好ましい。続いて、横方向の延伸を行う。幅方向の延伸方法としては、例えばステンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸温度はTg〜(Tm(ポリエステルの融点)−40)℃の範囲で、倍率は3〜8倍(再縦延伸を行う場合は1段目の延伸は3〜4.5倍)、延伸速度は2,000〜10,000%/分の範囲で行うのが好ましい。さらに横延伸後に、再縦延伸および/または再横延伸を行う。再縦延伸条件としては、長手方向の延伸は温度Tg〜(Tg+70)℃の加熱ロール群で、延伸倍率は1.2〜2.2倍の範囲で延伸を行うことが好ましい。再横延伸の方法としては、テンターを用いる方法が好ましく、温度は(Tm−140)℃〜(Tm−40)℃、延伸倍率は1.2〜2.0倍の範囲で行うのが好ましい。続いて、この延伸フィルムを緊張下、及び幅方向に弛緩処理しながら熱処理する。この際、得られるフィルム厚み方向の結晶サイズ(χc)を50〜80Åとするためには、熱固定温度を(Tm−50)℃〜(Tm−20)℃とすることが好ましく、より好ましくは(Tm−45)℃〜(Tm−25)℃、更にに好ましくは(Tm−35)℃〜(Tm−30)℃とし、熱固定時間を3〜20秒とすることが好ましく、より好ましくは5〜15秒の範囲で行うのが好ましい。また、得られるフィルムの熱収縮率を−0.4%以上、0%未満とするためには、熱処理後に弛緩処理を少なくとも2段階で行うことが好ましく、この際、弛緩処理条件は1段目の弛緩処理を(熱固定温度−10)℃〜熱固定温度で弛緩率を1〜5%の範囲で施した後、2段目以降の弛緩処理を(熱固定温度−150)℃〜(熱固定温度−10)℃で施し、総合弛緩率を3〜15%、より好ましくは5〜13%、さらに好ましくは7〜10%とすることが好ましい。また、2段目以降の弛緩処理は、2段目の弛緩処理を(熱固定温度−50)℃〜(熱固定温度−10)℃、3段目の弛緩処理を(熱固定温度−150)℃〜(熱固定温度−135)℃で、弛緩処理温度が1段目>2段目>3段目、弛緩率が1段目>2段目≧3段目となるように施すのがより好ましい。さらに、この際、得られる二軸配向ポリエステルフィルムのx/Lを0〜15(゜/m)とするためには、フィルムを再横延伸後、一旦、フィルムをガラス転移温度以下まで冷却し、または、フィルムの端部が中央部より高温となるように温度勾配をつけ、かつ中央部の温度を90℃以下に保って予熱処理した後、熱処理する方法、また、フィルムを二軸延伸後、フィルムの端部の温度が中央部の温度より10℃以上高くなるように熱処理する方法などを用いるのが好ましい。
【0053】
その後、フィルムエッジを除去し、ロールに巻き取る。さらに必要に応じて、フィルムをコアに巻いた状態(ロール状フィルム)で、熱風オーブン内で加熱処理してもよい。好ましい処理温度は、(Tg−10)℃〜(Tg−60)℃の範囲、より好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg−55)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−20)〜(Tg−50)℃の範囲である。好ましい処理時間は、10〜360時間の範囲、より好ましくは24〜240時間の範囲、さらに好ましくは72〜168時間である。また、このロール状フィルムで加熱処理を、上記温度および時間内で、温度、時間を変更して2段階以上の多段階で行うこともできる。このロール状加熱処理を行うことによって、クリープ特性の寸法安定性が改良されるので好ましい。
【0054】
上述したような方法により、寸法安定性、厚み均一性、幅方向の物性均一性、剛性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムが得られ、また、磁気記録媒体製造時に発生する問題等を解決できる。
【0055】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。なお、スリットされる前の(テープ形状となる前の)シート状の磁気記録媒体について測定する際の長手方向(MD)、幅方向(TD)は、記録媒体中の支持体を構成する二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向、幅方向と同じとする。
【0056】
(1)熱収縮率
JIS−C2318に規定された方法に従って、幅10mm、標線間隙約100mmのサンプルを、温度100℃、荷重0.5gで30分間熱処理した。その熱処理前後の標線間隙を(株)テクノニーズ製熱収縮率測定器を用いて測定し、次式より熱収縮率を算出した。
【0057】
熱収縮率(%)={(L0−L)/L0}×100
L0:加熱処理前の標線間隙
L :加熱処理後の標線間隙
(2)結晶サイズ(χc)
X線回折装置を用いて反射法により回折強度測定した。フィルム厚みが50μmとなるように積層したものをサンプルとして、フィルム長手方向に垂直な面(100面)内でX線の照射角を変えて、以下の条件で測定した。
【0058】
Figure 0004045947
2cm×2cmに切り出して、方向をそろえて重ね合わせ、コロジオン・エタノール溶液で固めた試料をセットして、広角X線回折測定で得られた2θ/θ強度データのうち、各方向の面の半価幅から、下記のScherrerの式を用いて計算した。ここで厚み方向の結晶サイズは、配向主方向に垂直な方向(100面)を測定した。
【0059】
結晶サイズχc(Å)=Kλ/βOcosθB
K :定数(=1.0)
λ :X線の波長(=1.5418Å)
θB :ブラック角
βO =(βE 2−βI 21/2
βE :みかけの半価幅(実測値)
βI :装置定数(=1.046×10-2
(3)弾性率
ASTM−D882に規定された方法に従って、オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、幅10mm、試長100mmのサンプルを、温度23℃、湿度65%RH、引張り速度10mm/分の条件で、5回測定を行い、その平均値をとった。
【0060】
(4)厚みむら
アンリツ(株)製フィルムシックネステスタ「KG601A」及び電子マイクロメーター「K306C」を用いて、長手方向に、30mm幅、10m長でサンプリングした支持体サンプルについて、厚みを搬送速度3m/分で連続的に測定する。この測定結果から、10m長における厚みの最大値をTmax、最小値をTmin、厚み平均値をTaveとし、R=Tmax−Tminを求め、RとTaveから下記式により厚みむら(%)を求めた。
【0061】
厚みむら(%)=(R/Tave)×100
(5)x/L
白色光を光源として偏光顕微鏡を用い、その消光値から配向主軸とフィルム幅方向との狭角を求め、これを配向角(°)とする。この配向角をフィルム幅方向の全幅について測定し、フィルム幅方向における配向角の最大値と最小値の差x(°)を求める。この配向角の差x(°)のフィルム幅L(m)に対する比の値x/L(°/m)を求める。なお、配向主軸は幅方向を0°、幅方向と垂直な方向(長手方向)を90°とした。
【0062】
(6)表面粗さRa
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて、触針先端半径0.5m、触針荷重5mg、測定長1mm、カットオフ値0.08mmでの中心線平均粗さRaを、フィルム幅方向に走査して、20回測定を行ない、その平均値をとる。
【0063】
(7)幅寸法変化率
23℃、65%RHの雰囲気下において、試料長(フィルム長手方向):143mm、幅:31mmの支持体サンプルを、24時間調湿調温した後、大日本印刷(株)製クロムマスク上の中央に、サンプルを貼り付け、光学顕微鏡を用いて、幅方向の寸法(Amm)を測定する。その後、サンプルを、49℃、90%RHの雰囲気中に、長手方向に32MPaの荷重をかけた状態で、72時間放置する。72時間放置後、荷重を解放し、23℃、65%RHの条件下にて24時間調湿調温後、サンプル幅方向の寸法(Bmm)を測定する。幅方向の寸法変化率は下記式により求める。なお、該測定は5回行い、5回の平均値を採用した。
【0064】
幅寸法変化率(%)=((A−B)/A)×100
(8)クリープコンプライアンス
二軸配向フィルムを、幅4mm、試長15mmにサンプリングし、真空理工(株)製TMA TM−3000および加熱制御部TA−1500にセットし、50℃、65%RHの条件下に調湿調温し、その時の試料フィルムの長さをL0(μm)とした。その後28MPaの荷重を試料フィルムにかけて、30分間保持した後の試料フィルムの長さをL1(μm)とした。このときの試料フィルムの伸縮量から、次式より、クリープコンプライアンスを算出した。
クリープコンプライアンス(GPa-1)={(L1−L0)/L0}/0.028
なお、測定は5回行い、5回の平均値を採用した。また、ここでいうクリープとは一定応力のもとで歪みが時間と共に増大する現象のことであり、クリープコンプライアンスとはこの歪みと一定応力の比であり、「高分子化学序論(第2版)」((株)化学同人発行)p150に記載されたものである。
【0065】
(9)フィルム全厚み、及び積層厚み
透過型電子顕微鏡(日立(株)製H−600型)を用いて、加速電圧100kVで、支持体の断面を、超薄切片(RuO4染色)で観察する。その界面の観察結果から、全厚み、及び積層厚みを求める。倍率は判定したい支持体の全厚み、積層厚みによって適宜倍率に設定すればよいが、一般的には全厚み測定には1千倍、積層厚み測定には1万〜10万倍が適当である。
【0066】
また、2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて積層厚みを測定することもできる。表層から深さ3,000nmの範囲のフィルム中の不活性粒子の内もっとも高濃度の粒子に起因する元素(M+)と、ポリエステルの炭素元素との濃度比(M+/C+)を、表面から深さ3,000nmまで厚さ方向にSIMSで分析する。表層では不活性粒子に起因する元素濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて不活性粒子に起因する元素濃度は高くなる。本発明のフィルムの場合は、一旦極大値となった不活性粒子に起因する元素濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線において、不活性粒子に起因する元素濃度が極大値の1/2まで減少した深さを積層厚みとする。測定条件は次の通りである。
【0067】
1)測定装置
2次元イオン質量分析装置(SIMS)
西独、ATOMIKA社製 A−DIDA3000
2)測定条件
1次イオン種 :O2 +
1次イオン加速電圧:12KV
1次イオン電流 :200nA
ラスター領域 :400μm□
分析領域 :ゲート30%
測定真空度 :5.0×10-9Torr
E−GUN :0.5KV−3.0A
なお、表層から深さ3,000nmの範囲に最も多く含有する不活性粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定し難いので、表面からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し積層厚みを求めることもできる。
【0068】
(10)ポリマの熱特性(ガラス転移温度、融点)
示差走査熱量計として、セイコー電子工業(株)社製のロボットDSC「RDC220」を用いて、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、下記条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って融点(Tm)等を決定した。
【0069】
測定条件
加熱温度:270〜540K(RCS冷却法)
温度校正:高純度インジウム及びスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
平均昇温速度:約10mg
試料重量:アルミニウム製開放型容器(33mg)
なお、ガラス転移温度(Tg)は、次式により算出した。
【0070】
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(11)磁気テープの走行耐久性および保存安定性
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面A(原料(A1)の層の表面)側に、下記組成の磁性塗料と非磁性下層塗料とをエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で塗布厚0.2μm、非磁性下層の厚みは1.5μmとした。)し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面(表面B側)に、下記組成のバックコート層を形成した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理した後、60℃で48時間のキュアリングを施し、磁気記録媒体とした。
【0071】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 :100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン :200重量部
・メチルエチルケトン :300重量部
・トルエン :100重量部
この磁気記録媒体を1/2インチ幅にスリットし、磁気テープとして、長さ670m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。該カセットテープを、Quantum社製DLT(IV)Driveを用い、150時間走行させ、次の基準でテープの走行耐久性を評価した。
【0072】
◎:テープ端面の伸び、折れ曲がりがなく、削れ跡が見られないもの。
【0073】
○:テープ端面の伸び、折れ曲がりがないが、若干削れ跡がもられるもの。
【0074】
△:テープ端面の伸びはないが、一部折れ曲がり、削れ跡が見られるもの。
【0075】
×:テープ端面の一部が伸び、ワカメ状の変形が見られ、削れ跡が見られるもの。
【0076】
また、上記作製したカセットテープをQuantum社製DLT(IV)Driveを用い、データを読み込んだ後、カセットテープを60℃、80%RHの雰囲気中に100時間保存した後、データを再生して次の基準で、テープの保存安定性を評価した。
【0077】
◎:テープ幅の変化が2μm以下であり、トラックずれがなく、正常に再生したもの。
【0078】
○:テープ幅の変化が2μmを超え、4μm以下であり、トラックずれが無く、正常に再生したもの。
【0079】
△:テープ幅の変化が4μmを超え、6μm以下であり、トラックずれが無く、正常に再生したもの。
【0080】
×:テープ幅の変化が4μmを超え、読みとり不可が見られるもの。
【0081】
(12)磁気テープの磁性層塗布むら
磁気記録媒体を樹脂埋めし、それをダイヤモンドカッターで切り出し、その断面を透過型電子顕微鏡で観察して、磁性塗料と非磁性下層塗料の総厚みを測定し、該厚みの最大値をMmax、最小値をMmin、該厚み平均値をMaveとし、R=Mmax−Mminを求め、RとMaveから下記式により磁性層むら(%)を求め、
磁性層むら(%)=(R/Mave)×100
次の基準で磁性層塗布むらを評価した。
【0082】
◎:磁性層むらが8%以下であるもの。
【0083】
○:磁性層むらが8%を超え、12%以下の範囲であるもの。
【0084】
△:磁性層むらが12%を超え、15%以下の範囲であるもの。
【0085】
×:磁性層むらが15%を超えるもの。
【0086】
(13)磁気テープの電磁変換特性(C/N)
磁気記録媒体を8mm幅にスリットし、パンケーキを作製した。次いで、このパンケーキから長さ200m分の磁気テープをカセットに組み込んで、カセットテープとした。
【0087】
該磁気テープを市販のHi8用VTR(SONY社製EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/Nの測定を行った。このC/Nを市販されているHi8用MPビデオテープと比較して、次の通りランク付けした。
【0088】
○:+3dB以上のもの
△:+1dB以上、+3dB未満のもの
×:+1dB未満のもの
【0089】
【実施例】
実施例1
DMT法による重合を行った。即ち、テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、生成した低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、重合生成物を冷水中にストランド状に吐出し、直ちにカッティングして固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのペレットとした。
【0090】
上記方法により得られた固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)について、DSCを用いて熱特性を測定したところ、Tg:82℃、Tm:256℃であった。
【0091】
このPETを用い、押出機2台(A、B)を用いて、次の方法で製膜を行った。
【0092】
285℃に加熱された押出機Aには、実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.65のPETに平均粒径0.07μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた原料(A1)を、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。また、285℃に加熱した押出機Bには、上記した実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.65のPETに平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子を0.5重量%含有させた原料(B1)を、180℃で3時間真空乾燥した後に供給した。
【0093】
続いて、原料(A1)をサンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に3段階に濾過し、また、原料(B1)をサンドフィルター、3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に2段階で濾過した後、ポリマーの温度が285℃となるようにしてTダイで合流させ口金からシート状に押出した。この時、ドラフト比(=口金リップ間隙/押し出されたシート厚み)は5、LD間(口金リップと冷却ドラムとの距離)は20mmとした。さらに、このシート状押出ポリマを表面温度25℃のキャストドラム上に、テープ状(厚み0.04mm、幅7.2mm)の電極を用いた静電印加法により密着させて冷却固化させ、2層積層した未延伸フィルム(積層厚み比A1/B1=5/1)を作製した。
【0094】
この得られた未延伸フィルムをロール式延伸機にて、まず、ロールの周速差を利用して長手方向に120℃、1.7倍に予備延伸した後、さらに長手方向に115℃、2.1倍に延伸し、続いて、ステンターにより幅方向に95℃、3.3倍に延伸し、さらにロール縦延伸機を用いて150℃、1.9倍に再縦延伸を行った後、テンターにおいて200℃で1.3倍に再横延伸を行った。その後、一旦、70℃までフィルムを冷却し、引き続き、フィルムの中央部が220℃でフィルム端部は中央部より10℃高くなるように温度勾配をつけて、12秒間の熱処理を行った後、220℃のゾーンで幅方向に4%の弛緩率で1段目の弛緩処理を行い、次いで、175℃のゾーンで幅方向に3%の弛緩率で2段目の弛緩処理を行い、さらに、100℃のゾーンで幅方向に1.5%の弛緩率で3段目の弛緩処理を行い、フィルムを室温まで徐冷して巻き取り、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。なお、フィルム厚みは、押出量の調節により所望水準とした。
【0095】
表1、2に得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜条件を示す。また、表3、4に、二軸配向ポリエステルフィルムと該フィルムを支持体としたものから得られた磁気記録媒体の特性として、磁気テープの、磁性層塗布むら、走行耐久性、保存安定性、磁気変換特性を示す。
【0096】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層塗布むらがなく、走行耐久性、保存安定性等に優れた磁気テープとすることができた。
【0097】
実施例2
延伸条件、熱処理条件、弛緩処理条件を表1に示す条件に変更することにした以外は実施例1と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0098】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層塗布むらが少なく、走行耐久性、保存安定性等、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0099】
実施例3
弛緩処理条件を表1に示す条件に変更することにした以外は実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0100】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層塗布むらが少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0101】
実施例4
熱処理条件を表1に示す条件に変更することにした以外は実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0102】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは比較的寸法安定性に優れており、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0103】
実施例5
熱処理条件を表1に示す条件に変更することにした以外は実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0104】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層塗布むらがなく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0105】
実施例6
延伸条件を表1に示す条件に変更することにした以外は実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0106】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層塗布むらが少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0107】
実施例7
実施例1と同様な方法で固有粘度0.85のポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット(Tg80℃)を製造した。このPETのペレット50重量%と、General Electric(GE)社製の固有粘度0.68のポリエーテルイミド(PEI)”ウルテム”1010(Tg216℃)50重量%とを、290℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に供給して、PEIを50重量%含有したブレンドチップ(I)を作製した。このブレンドチップ(I)について、DSCを用いて熱特性を測定したところ、Tg:89℃、Tm:254℃であった。
【0108】
次いで、押出機2台(A、B)を用いて、次の方法で製膜を行った。
【0109】
295℃に加熱された押出機Aには、実施例1と同様にして得た実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)に平均粒径0.09μmのシリカ粒子を0.05重量%含有させたペレット(II)と、上記方法で得たPEIを含有したブレンドチップ(I)とを8:2の比でドライブレンドした混合原料(A1)を、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。また、295℃に加熱した押出機Bには、実施例1と同様にして得た実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)に平均粒径0.3μmの炭酸カルシウム粒子を0.5重量%含有させたペレット(III)と、上記方法で得たPEIを含有したブレンドチップ(I)とを8:2の比でドライブレンドした混合原料(B1)を、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。
【0110】
続いて、混合原料(A1)をサンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に3段階に濾過し、また、混合原料(B1)をサンドフィルター、3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に2段階で濾過した後、ポリマーの温度が295℃となるようにしてTダイで合流させ口金からシート状に押出した。この時、ドラフト比(=口金リップ間隙/押し出されたシート厚み)は5、LD間(口金リップと冷却ドラムとの距離)は20mmとした。さらに、このシート状押出ポリマを表面温度25℃のキャストドラム上に、テープ状(厚み0.04mm、幅7.2mm)の電極を用いた静電印加法により密着させて冷却固化させ、2層積層した未延伸フィルム(積層厚み比A1/B1=5/1)を作製した。
【0111】
この得られた未延伸フィルムをロール式延伸機にて、まず、ロールの周速差を利用して長手方向に118℃、1.6倍に延伸した後、さらに長手方向に110℃、2倍延伸し、続いて、ステンターにより幅方向に100℃、3.3倍に延伸し、さらにロール縦延伸機を用いて150℃、1.7倍に再縦延伸を行った後、テンターにおいて205℃で1.3倍に再横延伸を行った。その後、一旦、70℃までフィルムを冷却し、引き続き、フィルムの中央部が220℃でフィルム端部は中央部より10℃高くなるように温度勾配をつけて7秒間の熱処理を行った後、210℃のゾーンで幅方向に4%の弛緩率で1段目の弛緩処理を行い、次いで、160℃のゾーンで幅方向に2%の弛緩率で2段目の弛緩処理を行い、さらに、100℃のゾーンで幅方向に1%の弛緩率で3段目の弛緩処理を行い、フィルムを室温まで徐冷して巻き取り、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。なお、フィルム厚みは、押出量の調節により所望水準とした。
【0112】
表1、3が示すように、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層むらが少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0113】
実施例8
ナフタレン−2,6ジカルボン酸ジメチル100部およびエチレングリコール60部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、150℃から238℃に徐々に昇温しながら120分間エステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で、三酸化アンチモン0.024部を添加し、エステル交換反応終了後、リン酸トリメチルをエチレングリコール中で135℃、5時間、1.1〜1.6kg/cm2の加圧下で加熱処理した溶液(燐酸トリメチル換算量で0.023部)を添加した。その後、反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高減圧下にて重縮合反応を行って、25℃のo−クロロフェノール溶融で測定した固有粘度が0.61dl/g、DEG共重合量1.0mol%のポリエチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを得た。
【0114】
上記方法により得られた固有粘度が0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)について、DSCを用いて熱特性を測定したところ、Tg:119℃、Tm:261℃であった。
【0115】
このPENを用いて、押出機2台(A、B)を用いて、次の方法で製膜を行った。300℃に加熱された押出機Aには、上記方法で得た実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.61のPENに平均粒径0.09μmのシリカ粒子を0.05重量%含有させた原料(A1)を、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。また、300℃に加熱した押出機Bには、上記方法で得た実質的に不活性粒子を含有しない固有粘度0.61のPENに平均粒径0.3μmの炭酸カルシウム粒子を0.5重量%含有させた原料(B1)を、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。
【0116】
続いて、原料(A1)をサンドフィルター、1.2μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターおよび0.8μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に3段階に濾過し、また、原料(B1)をサンドフィルター、3μmカットの繊維焼結ステンレス金属フィルターの順に2段階で濾過した後、ポリマーの温度が255℃となるようにしてTダイで合流させ口金からシート状に押出した。この時、ドラフト比(=口金リップ間隙/押し出されたシート厚み)は5、LD間(口金リップと冷却ドラムとの距離)は20mmとした。さらに、このシート状押出ポリマを表面温度25℃のキャストドラム上に、テープ状(厚み0.04mm、幅7.2mm)の電極を用いた静電印加法により密着させて冷却固化させ、2層積層した未延伸フィルム(積層厚み比A1/B1=5/1)を作製した。
【0117】
この得られた未延伸フィルムをロール式延伸機にて、まず、ロールの周速差を利用して長手方向に135℃、5.5倍に延伸し、続いて、ステンターにより幅方向に135℃、3.5倍に延伸し、さらにロール縦延伸機を用いて170℃、1.6倍に再縦延伸を行った後、テンターにおいて180℃で1.4倍に再横延伸を行った。その後、一旦、70℃までフィルムを冷却し、引き続き、フィルムの中央部が215℃でフィルム端部は中央部より10℃高くなるように温度勾配をつけて7秒間の熱処理を行った後、210℃のゾーンで幅方向に4%の弛緩率で1段目の弛緩処理を行い、次いで、160℃のゾーンで幅方向に2%の弛緩率で2段目の弛緩処理を行い、さらに、100℃のゾーンで幅方向に1%の弛緩率で3段目の弛緩処理を行い、フィルムを室温まで徐冷して巻き取り、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。なお、フィルム厚みは、押出量の調節により所望水準とした。
【0118】
表1、3が示すように、得られたフィルムの寸法安定性は比較的優れており、磁性層塗布むらも少なく、走行耐久性にも比較的優れ、保存安定性、電磁変換特性が優れた磁気テープとすることができた。
【0119】
比較例1
熱処理時間を5秒にし、弛緩処理を施さないことにした以外は実施例8と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0120】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、保存安定性、電磁変換特性も劣った磁気テープとなった。
【0121】
比較例2
弛緩処理を表1に示す条件で一段のみで施すことにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0122】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、電磁変換特性も劣った磁気テープとなった。
【0123】
比較例3
弛緩率を表1に示す条件で施すことにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0124】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、保存安定性、電磁変換特性も劣った磁気テープとなった。
【0125】
比較例4
弛緩率を表1に示条件で二段で施すことにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0126】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、保存安定性、電磁変換特性も劣った磁気テープとなった。
【0127】
比較例5
弛緩率を表1に示条件で二段で施すことにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。得られたフィルムは皺のあるものとなった。
【0128】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、保存安定性、電磁変換特性も劣った磁気テープとなった。
【0129】
比較例6
弛緩処理温度を表1に示す条件で施すことにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成し、これからなる支持体から実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作成した。
【0130】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、電磁変換特性が劣った磁気テープとなった。
【0131】
比較例7
熱処理条件と弛緩処理条件を表1に示す条件に変更するこにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成し、これからなる支持体から実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作成した。
【0132】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは結晶サイズχcが小さく、磁性層むらがあり、電磁変換特性が劣った磁気テープとなった。
【0133】
比較例8
延伸条件を表1に示す条件に変更することにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0134】
表1、3に示したとおり、得られた二軸配向ポリエステルフィルムは寸法安定性が劣っており、走行耐久性、電磁変換特性が劣った磁気テープとなった。
【0135】
実施例9
延伸条件を表1に示す条件に変更することにした以外は、実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0136】
表1、3が示すように、得られたフィルムの寸法安定性は比較的優れており、磁性層塗布むらも比較的少なく、走行耐久性、保存安定性にも比較的優れ、電磁変換特性が優れた磁気テープとすることができた。
【0137】
実施例10
実施例1での原料(A1)と原料(B1)を口金から押出す際のドラフト比を20に変更し、静電印加法で冷却ドラムにシートを密着させる際のテープ状の電極を、ワイヤー電極(直径:0.15mmφ)に変更した以外は実施例1と同様にして2層積層した未延伸フィルムを作成した。該未延伸フィルムを実施例2と同様にして厚み4μmのフィルムの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0138】
表2、4が示すように、得られたフィルムの寸法安定性は実施例2と比較すると若干悪いが、磁性層むらも比較的少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性も比較的良好な磁気テープとなった。
【0139】
実施例11
実施例2でのフィルムを再横延伸した後の熱処理を、フィルムの端部から中央部にかけて温度勾配をかけずに、215℃で熱処理することにした以外は実施例2と同様にして厚み4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作成した。
【0140】
表2、4が示すように、得られたフィルムの寸法安定性は実施例2と比較すると若干悪いが、磁性層むらも比較的少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性も比較的良好な磁気テープとなった。
【0141】
実施例12
実施例1での原料(B1)中に配合した粒子を、平均粒径0.04μmのシリカ粒子を0.05重量%含有と変更した以外は実施例1と同様にして2層積層した未延伸フィルムを作成した。該未延伸フィルムを実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。
【0142】
表2、4が示すように、得られたフィルムは寸法安定性は優れており、磁性層むらも少なく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0143】
実施例13
実施例1での原料(A1)中に配合した粒子を、平均粒径0.03μmのシリカ粒子を0.3重量%含有と変更した以外は実施例1と同様にして2層積層した未延伸フィルムを作成した。該未延伸フィルムを実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。
【0144】
表2、4が示すように、得られたフィルムは寸法安定性に優れており、磁性層むらも少なく、保存安定性に優れた磁気テープとすることができた。
【0145】
実施例14
実施例1での原料(A1)中に配合した粒子を、粒子径0.03μmのアルミナ粒子を0.3重量%と粒子径0.4μmの架橋ポリスチレン粒子を0.5重量%とを含有と変更した以外は実施例1と同様にして2層積層した未延伸フィルムを作成した。該未延伸フィルムを実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。
【0146】
表2、4が示すように、得られたフィルムは寸法安定性に優れており、走行耐久性、保存安定性に優れた磁気テープとすることができた。
【0147】
実施例15
実施例1での原料(B1)中に配合した粒子を、平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粒子を0.5重量%含有と変更した以外は実施例1と同様にして2層積層した未延伸フィルムを作成した。該未延伸フィルムを実施例2と同様にして、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。
【0148】
表2、4が示すように、得られた支持体は寸法安定性に優れており、磁性層むらも少なく、保存安定性、電磁変換特性に優れた磁気テープとすることができた。
【0149】
【表1】
Figure 0004045947
【0150】
【表2】
Figure 0004045947
【0151】
【表3】
Figure 0004045947
【0152】
【表4】
Figure 0004045947
【0153】
【発明の効果】
二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、幅方向の熱収縮率、厚み方向の結晶サイズχc、フィルム長手方向の弾性率Ym、長手方向の弾性率Ymと幅方向の弾性率Ytの比Ym/Ytを本発明の範囲内とすることにより、特に高密度記録媒体のベースフィルムに適した特性を具備することができ、フィルム加工時の寸法安定性が良好で、磁気テープ加工時の磁性層塗布加工適性にも優れ、磁気テープとした時の記録トラックずれが起こりにくく、走行耐久性、保存安定性、電磁変換特性に優れたものとなり、その興行的価値は極めて高い。

Claims (6)

  1. ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを含み、幅方向の100℃、30分における熱収縮率が−0.4%以上0%未満、厚み方向の結晶サイズχcが50〜65Å、長手方向の弾性率Ymが6〜15GPa、かつ、長手方向の弾性率Ymと幅方向の弾性率Ytの比Ym/Ytが1.2〜2.5である磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルム。
  2. 幅方向の弾性率Ytが4.5〜9GPaであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルム。
  3. 長手方向の厚みむらが1〜5%である、請求項1または2に記載の磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルム。
  4. 幅方向における配向角の最大値と最大値の差x(゜)の幅L(m)に対する比x/Lが0〜15(゜/m)である、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルム。
  5. 一方の表面Aの表面粗さRaが1.5〜20nmであり、かつ、他方の表面Bの表面粗さRaが5〜50nmである、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルム。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の磁気記録テープ用二軸配向ポリエステルフィルムを用いてなる磁気記録テープ
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