JP4045150B2 - 軌道回路伝送装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、軌道回路伝送装置、特に、軌道回路を利用して列車に対して地上側からATC等の情報を伝送することができる列車制御用の軌道回路伝送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、軌道回路を利用した列車制御用通信装置は、レール(軌道)を所定長さ毎に区分して形成した閉塞区間のレールを軌道回路の一部とし、その軌道回路の列車の進出する側に、所定周波数の信号を送出する送信機を接続し、列車に搭載された受信機では、この信号を軌道回路を介して受信、復調することによりATC等の信号を受信していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の軌道回路を利用した軌道回路伝送装置においては、軌道回路の一部を構成するレールが、雑音、特に周波数性雑音を受けやすい環境にあるため、特に雑音周波数と信号周波数とが一致した場合に、信号強度が雑音と比較して相対的に低下するため、伝送品質が悪化するという問題点があった。
また、従来のデジタル化されたデータを列車に送信する装置では、絶縁されていない同一軌道を分割して閉塞区間を構成している場合にも使用できるよう混信対策も考慮し、単一周波数を使用して、普段は信号を送信せず、列車が在線している軌道回路にのみ信号を送信するようにしていた。しかし、この手法では、軌道回路の境界を通過してから次の軌道回路に対応した信号を受信するまでの間にデータを受信できない区間が存在するという問題点があった。
この発明は、これらの問題点を解決するためになされたもので、ATCなどの情報を常に列車に伝送し続けることが可能な高い信頼性をもつ軌道回路伝送装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る軌道回路伝送装置は、単一軌道上に構成された複数の軌道回路ごとに送信機を接続し、軌道回路上の列車に設けられた受信機に対して信号を送信する軌道回路伝送装置において、上記各送信機は、在線検知用信号発生手段と、各軌道回路ごとに異なる符号が設定された同期用疑似雑音(PN)符号発生手段と、同期用PN符号発生手段と同期をとって動作する伝送データ用PN符号発生手段と、在線検知用信号を同期用PN符号で拡散して送信する同期信号スペクトル拡散変調手段と、伝送データを伝送データ用PN符号で拡散して在線検知用信号と同一周波数帯を使用して送信する伝送データスペクトル拡散変調手段とから構成され、上記受信機は、受信信号から同期用PN符号発生手段で発生するPN符号を参照して在線検知用信号の受信強度と同期用PN符号の同期情報とを取り出す同期捕捉手段と、同期用PN符号に同期した伝送データ用PN符号を発生する伝送データ用PN符号発生手段と、この伝送データ用PN符号発生手段で発生されたPN符号により受信信号を逆拡散することにより送信されたデータを取り出すデータ復調手段とから構成される復調手段を上記各送信機に対応させて複数設けると共に、各復調手段から出力された在線検知用信号の強度を比較し、受信強度の最も大きな復調手段の在線検知用信号に対応した伝送データを出力するデータ選択手段を設けたものである。
【0005】
即ち、この発明は、在線検知に使用する信号を妨害波に強いスペクトル拡散変調方式で送信し、これと同時に在線検知用信号とは直接関係のないデータをスペクトル拡散変調方式により送信する。一般にATC信号などのデータを重畳したスペクトル拡散変調信号の同期を得るのは難しいが、在線検知に使用する信号は比較的簡単な信号を送信するため、これをスペクトル拡散変調した変調波を受信機で受信した場合、在線検知用信号の同期を捕捉するのは比較的容易であり、確実に受信強度を観測できる。この同期情報を利用してデータのスペクトル拡散復調を実施することによりデータを確実に取り出すことが可能である。
異なる軌道回路では同期用PN符号、データ伝送用PN符号などを変更することにより複数の信号を受信している場合でも在線検知用信号の受信強度は確実に受信可能である。また、在線検知用信号の同期情報を利用すれば、他に強力な信号を受信している間も別系統のデータを受信し続けることが可能であるため、列車軌道回路境界を越え、最も強い受信強度を持っていた信号が観測されなくなった瞬間にそれまですでに受信し続けていた次区間の信号の復調結果を出力させることが可能である。このため、軌道回路を伝送路としたスペクトル拡散変調方式による、信号非受信区間のない信頼性の高い通信を実現することができる。
【0006】
この発明に係る軌道回路伝送装置は、また、在線検知用信号、同期捕捉用PN符号の種類、および同期用PN符号を複数受信した時、同期用PN符号の組合せから軌道回路に与えられた固有情報を検出する在線情報検出手段を上記受信機に設けたものである。即ち、この発明は、在線検知用信号、またはそれをスペクトル拡散変調しているPN符号を監視する。この手法を使用する場合には、送信機にはあらかじめ軌道回路ごとに固有の情報が与えられており、この情報を受信機において送信データとは独立して検出する。このようにすることにより複数の信号を同時受信する際の混信による通信品質の悪化を防止し、さらに列車の在線位置の情報や緊急時の電文の通信など、よりきめ細かい列車制御を実現することが出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図1は、実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。この図において、1、1n…は複数台の送信機で、それぞれ後述するように構成され、単一軌道6上で構成される軌道回路ごとに接続されている。2は受信機で各送信機1、1n…が接続された軌道6に接続され、各送信機と共に軌道回路伝送装置を形成するものである
各送信機1、1n…は同じ構成とされ、それぞれ以下に述べる各手段によって構成されている。即ち、11、11nは擬似雑音(PN)符号を生成する同期PN符号発生手段、10、10nは在線検知用信号を出力する在線検知信号発生手段、12、12nは同期PN符号発生手段11、11nで生成されたPN符号と、
在線検知信号発生手段10、10nから出力された在線検知用信号とを加算する加算手段、13、13nは搬送波発生手段、14、14nは加算手段12、12nからの加算信号によって搬送波発生手段13、13nで生成された搬送波を変調し、出力する変調手段、15、15nは同期PN符号発生手段11、11nと同期を取った状態で異なるPN符号を生成するデータPN符号発生手段、16、16nはデータ発生手段で、外部から与えられたデータを、あるいは外部から与えられた情報に対応したデータを出力するものである。
【0008】
17、17nはデータPN符号発生手段15、15nで生成されたPN符号とデータ発生手段16、16nから出力されたデータとを加算する加算手段、18、18nは加算手段17、17nの加算結果を使用して搬送波発生手段13、13nから発生される搬送波を変調する変調手段である。なお、搬送波発生手段13、13nから変調手段18、18nに供給される搬送波は変調手段14、14nに供給されるものと周波数、位相がそれぞれ同じであってもよいし、いずれか一方、あるいは両方とも異なるようにすることも可能である。19、19nは変調手段14、14n、及び変調手段18、18nの出力を同時に軌道6に送信する送信手段である。なお、各送信機の同期用PN符号、データPN符号、搬送波については各送信機ごとに適宜変更され、軌道回路ごとの固有の信号を発生するようにされることは云うまでもない。
【0009】
受信機2は信号受信手段5を介して軌道回路6から受信した信号を復調手段3によって復調するものであるが、この発明においては、送信機に対応させて複数台の復調手段3、3n…が設けられている。各復調手段3、3n…は同じ構成とされ、それぞれが以下に述べる各手段によって構成されると共に、送信機の同期用PN符号、データPN符号、搬送波の組合せに対応した復調手段を構成している。即ち、30、30nは送信機1、1nの同期PN符号発生手段11、11nと同一のPN符号を発生する同期PN符号発生手段、31、31nは軌道6を介して受信した送信機1、1nからの信号を同期PN符号発生手段30、30nで発生されたPN符号を使用してPN符号の同期を取る同期捕捉手段、32、32nは同期捕捉手段31、31nからの同期情報により、在線検知用信号の受信強度を観測し、信号選択手段4に出力する在線検知信号検出手段、34、34nは送信機のデータPN符号発生手段15、15nと同一のPN符号を発生するデータPN符号発生手段、33、33nはデータPN符号発生手段34、34nから発生されたPN符号の符号位相を同期捕捉手段31、31nで得られた同期情報に一致させ、このPN符号を参照信号として受信信号を逆拡散するスペクトル拡散復調およびデータ復調を行ない、信号選択手段4に出力するデータ復調手段である。信号選択手段4は、各復調手段3、3nから出力された在線検知用信号の強度を比較し、最も強い信号から復調されたデータを外部に出力する。
【0010】
実施の形態1は以上のように構成されているため、送信機1、1nは常に信号を送信し続けた状態で、受信機2の各復調手段3、3nを並列に動作させ、列車がある軌道回路に在線している場合でも常に次の軌道回路の信号を受信し復調することが可能である。このため、軌道回路境界を越えた瞬間、次に在線した軌道回路に送信された信号を出力させることが可能となる。従って、軌道回路を伝送路とした信号非受信区間のない、スペクトル拡散変調方式による信頼性の高いデジタル通信を実現することができる。
【0011】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を図にもとづいて説明する。図2は、実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。この図において、図1と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図1と異なる点は、送信機1、1nの同期PN符号発生手段11A、11nAが複数の同期PN符号発生手段から構成され、復調手段3、3nの同期PN符号発生手段30A、30nAも同様に、複数の同期PN符号発生手段から構成されている点である。
このような構成とすることにより、各送信機1、1nから1つ、または複数の信号が同時に送信され、受信機2における復調手段3では、同期捕捉手段31が全ての同期用PN符号について受信強度を観測し、在線検知信号検出手段32でPN符号の出現手順が解析される。この手順を全ての復調手段3、3nで実行した後、信号選択手段4に送られる。この結果、受信機では、より多くの情報、例えば在線位置の情報や緊急時の電文の通信など、よりきめ細かい列車制御を実現することが出来る。
【0012】
【発明の効果】
この発明に係る軌道回路伝送装置は、軌道回路に送信機を接続し、軌道回路上の列車に設けられた受信機に対して信号を送信する軌道回路伝送装置において、上記送信機は、在線検知用信号発生手段と、同期用疑似雑音(PN)符号発生手段と、同期用PN符号発生手段と同期をとって動作する伝送データ用PN符号発生手段と、在線検知用信号を同期用PN符号で拡散して送信する同期信号スペクトル拡散変調手段と、伝送データを伝送データ用PN符号で拡散して在線検知用信号と同一周波数帯を使用して送信する伝送データスペクトル拡散変調手段とから構成され、上記受信機は、受信信号から同期用PN符号発生手段で発生するPN符号を参照して在線検知用信号の受信強度と同期用PN符号の同期情報とを取り出す同期捕捉手段と、同期用PN符号に同期した伝送データ用PN符号を発生する伝送データ用PN符号発生手段と、この伝送データ用PN符号発生手段で発生されたPN符号により受信信号を逆拡散することにより送信されたデータを取り出すデータ復調手段とから構成されると共に、異なる同期PN符号、および対応した伝送データ用PN符号を使用した複数台の上記送信機を軌道回路ごとに接続し、上記受信機には、上記各送信機からの在線検知用信号を受信して受信強度の最も大きな在線検知用信号に対応した伝送データを出力するデータ選択手段を接続したものであるため、送信機は常に信号を送信し続けた状態で、受信機の各復調手段を並列に動作させ、列車が軌道回路に在線している場合でも常に次の軌道回路の信号を受信し復調することができる。このため、軌道回路境界を越えた瞬間、次に在線した軌道回路に送信された信号を出力させることができ、軌道回路を伝送路とした信号非受信区間のない、スペクトル拡散変調方式による信頼性の高いデジタル通信を実現することができる。
【0013】
この発明に係る軌道回路伝送装置は、また、在線検知用信号、同期捕捉用PN符号の種類、および同期用PN符号を複数受信した時、同期用PN符号の組合せから軌道回路に与えられた固有情報を検出する在線情報検出手段を上記受信機に設けたものであるため、複数の信号を同時受信する際の混信による通信品質の悪化を防止し、さらに列車の在線位置の情報や緊急時の電文の通信など、よりきめ細かい列車制御を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1、1n 送信機、 2 受信機、 3、3n 復調手段、
4 信号選択手段、 10、10n 在線検知信号発生手段、
11、11n、30、30n 同期PN符号発生手段、
12、12n、17、17n 加算手段、 13、13n 搬送波発生手段、
14、14n、18、18n 変調手段、 19、19n 送信手段、
31、31n 同期捕捉手段、 32、32n 在線検知信号検出手段、
33、33n データ復調手段、 34、34n データPN符号発生手段。
Claims (2)
- 単一軌道上に構成された複数の軌道回路ごとに送信機を接続し、軌道回路上の列車に設けられた受信機に対して信号を送信する軌道回路伝送装置において、上記各送信機は、在線検知用信号発生手段と、各軌道回路ごとに異なる符号が設定された同期用疑似雑音(PN)符号発生手段と、同期用PN符号発生手段と同期をとって動作する伝送データ用PN符号発生手段と、在線検知用信号を同期用PN符号で拡散して送信する同期信号スペクトル拡散変調手段と、伝送データを伝送データ用PN符号で拡散して在線検知用信号と同一周波数帯を使用して送信する伝送データスペクトル拡散変調手段とから構成され、上記受信機は、受信信号から同期用PN符号発生手段で発生するPN符号を参照して在線検知用信号の受信強度と同期用PN符号の同期情報とを取り出す同期捕捉手段と、同期用PN符号に同期した伝送データ用PN符号を発生する伝送データ用PN符号発生手段と、この伝送データ用PN符号発生手段で発生されたPN符号により受信信号を逆拡散することにより送信されたデータを取り出すデータ復調手段とから構成される復調手段を上記各送信機に対応させて複数設けると共に、各復調手段から出力された在線検知用信号の強度を比較し、受信強度の最も大きな復調手段の在線検知用信号に対応した伝送データを出力するデータ選択手段を設けたことを特徴とする軌道回路伝送装置。
- 在線検知用信号、同期捕捉用PN符号の種類、および同期用PN符号を複数受信した時、同期用PN符号の組合せから軌道回路に与えられた固有情報を検出する在線情報検出手段を上記受信機に設けたことを特徴とする請求項1記載の軌道回路伝送装置。
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JP2002257921A JP4045150B2 (ja) | 2002-09-03 | 2002-09-03 | 軌道回路伝送装置 |
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