JP4042041B2 - 点火コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、点火コイル、より詳しくはエンジンのプラグホールに直接搭載されるスティックタイプの点火コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、スティックタイプの点火コイルが紹介されている。図9に、特許文献1に記載の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。図に示すように、点火コイル100は、中心コア部101と二次スプール102とエポキシ樹脂103と台座部104とイグナイタ105とを備えている。
【0003】
中心コア部101は、中心コア106と熱収縮チューブ107と弾性部材108とを備えている。中心コア106は、珪素鋼板製であって丸棒状を呈している。弾性部材108は、シリコン単胞スポンジ製であって錠剤状を呈している。弾性部材108は、中心コア106の軸方向上端に配置されている。熱収縮チューブ107は、これら中心コア106および弾性部材108を被覆している。
【0004】
二次スプール102は、樹脂製であって円筒状を呈している。二次スプール102は、中心コア部101の外周側に、ほぼ同軸的に配置されている。二次スプール102の外周面には、二次巻線が巻回されてなる二次コイル部109が配置されている。
【0005】
台座部104は、コネクタ部(図略)の一部として形成されており平板状を呈している。台座部104は、中心コア部101および二次スプール102の上方に配置されている。台座部104の下端面からは、リング状の調芯部110が突設されている。調芯部110は、中心コア部101外周面と二次スプール102内周面との隙間111に、上方から挿入されている。イグナイタ105は、パワートランジスタ(図略)や混成集積回路(図略)やヒートシンク(図略)などがモールド樹脂により封止され形成されている。イグナイタ105は、台座部104に載置されている。エポキシ樹脂103は、上記各部材間に充填されている。そして、各部材間の絶縁を確保している。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−185430号公報(第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エポキシ樹脂103は、まず液状のまま各部材間に注入され、次いで各部材間において熱硬化することにより、各部材間に充填される。エポキシ樹脂103注入の際、各部材間に介在していた空気は、エポキシ樹脂103と置換される。このとき、空気とエポキシ樹脂103との置換が充分に行われないと、エポキシ樹脂103中にボイド112(気泡)が残留することになる。このボイド112は、エポキシ樹脂103や各部材にクラックなどの不具合を発生させる一因となる。
【0008】
従来は、特に、中心コア部101外周面と二次スプール102内周面との隙間111において、エポキシ樹脂103中にボイド112が残留しやすかった。その理由は、隙間111には、上方から調芯部110が挿入されているからであった。
【0009】
すなわち、ボイド112は、図中矢印で示すように、まず上方に移動し、次いで二次スプール102上端と台座部104下端面との隙間を介して外周方向に移動するという経路を辿り、隙間111から二次スプール102外周側に移動する。しかしながら、この経路の途中には調芯部110が介在している。このため、ボイド112の移動が調芯部110に堰き止められてしまう。
【0010】
ここで、調芯部110は、中心コア部101および二次スプール102の調芯を行っている。このため、仮に、調芯部110を撤去すると、中心コア部101に対して二次スプール102が相対的に偏心し、隙間111にエポキシ樹脂103肉厚の薄い薄肉部が形成されるおそれがある。薄肉部が形成されると、その部分に加わる熱応力が大きくなり、クラックなどの不具合が発生するおそれがある。
【0011】
本発明の点火コイルは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、中心コア部を調芯でき、中心コア部とスプールとの隙間のボイドが除去しやすい点火コイルを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
記課題を解決するため、本発明の点火コイルは、棒状の中心コアを持つ中心コア部と、該中心コア部の外周側にほぼ同軸的に配置された筒状のスプールと、該中心コア部と該スプールとの隙間に充填される樹脂絶縁材と、該中心コア部の調芯を行うコア調芯部を持つ蓋体と、を備えてなる点火コイルであって、前記中心コア部は、前記中心コアの外周側に被覆部材を備えており、軸方向一端に前記被覆部材がリング状に突出して形成されるコア側凹部を備え、前記コア調芯部は、該コア側凹部に挿入される凸状コア調芯部であり、点火コイルは前記蓋体に立設され前記スプールの調芯を行うスプール調芯部を有し、前記スプールの前記蓋体側の端部および前記スプール調芯部にはスリットまたは孔が設けられていることを特徴とする。
【0020】
つまり、本発明の点火コイルは、蓋体の凸状コア調芯部を、中心コア部のコア側凹部に挿入することにより、中心コア部の調芯を行うものである。
【0021】
本発明の点火コイルによると、コア調芯部により、中心コア部を調芯することができる。また、本発明の点火コイルによると、中心コア部の調芯は、中心コア部の内周側において行われる。したがって、本発明の点火コイルによると、コア調芯部とスプールとを軸方向に敢えてずらさなくても、前出の図9において調芯部110が挿入されていた隙間111の上端部に、比較的広いスペースを確保することができる。したがって、隙間111のボイド112を迅速に、また充分に除去することができる。また、点火コイルの軸長が短くなる。
【0023】
構成は、被覆部材を中心コア部の軸方向一端からリング状に突出させるものである。そして、このリング内周側に、蓋体の凸状コア調芯部を挿入することにより、中心コア部の調芯を行うものである。本構成によると、比較的簡単な構造で中心コア部を調芯することができる。
【0024】
ましくは、上記構成において、前記スプールの前記蓋体側の端部に設けられた前記スリットまたは前記孔と前記スプール調芯部に設けられた前記スリットまたは前記孔とが径方向に対向する構成とする方がよい。
【発明の実施の形態】
以下、本発明の点火コイルの実施の形態について説明する。
【0025】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態の点火コイルの構成について説明する。図1に、本実施形態の点火コイルの軸方向断面図を示す。いわゆるスティックタイプの点火コイル1は、エンジンブロックの上部において、気筒毎に形成されたプラグホール(図略)内に収納されている。また、点火コイル1は、後述するように、点火プラグ(図略)と図中下側において接続されている。
【0026】
点火コイル1は、ハウジング2を備えている。このハウジング2は、樹脂製であり上方に向かって拡径する段付筒状を呈している。段差よりも下部は、円筒状を呈している。一方、段差よりも上部は、矩形状を呈している。そして、ハウジング2の上端部には、広口部20が形成されている。また広口部20の側壁の一部には、切り欠き窓21が形成されている。
【0027】
ハウジング2の内部には、中心コア部5と一次スプール3と一次コイル部30と二次スプール4と二次コイル部40とコネクタ6の台座部61とイグナイタ9とが、それぞれ収納されている。
【0028】
このうち中心コア部5は、中心コア54と弾性部材50a、50bと熱収縮チューブ52とからなる。中心コア54は、幅の異なる短冊状の珪素鋼板を直径方向に積層して形成されており、棒状を呈している。弾性部材50aはシリコン単泡スポンジ製であって錠剤状を呈している。弾性部材50aは、中心コア54の上端に配置されている。弾性部材50bはソリッドシリコン製であって錠剤状を呈している。弾性部材50bは、中心コア54の下端に配置されている。熱収縮チューブ52は、加熱により収縮する樹脂製である。熱収縮チューブ52は、中心コア54および弾性部材50a、50bを外周側から被覆している。なお、熱収縮チューブ52は、本発明の被覆部材に含まれる。
【0029】
二次スプール4は、樹脂製であって有底円筒状を呈している。二次スプール4は、中心コア部5とほぼ同軸的に、かつ中心コア部5の外周側隣りに配置されている。なお、二次スプール4は、本発明のスプールに含まれる。二次コイル部40は、二次スプール4の外周面に巻回された二次巻線からなる。また、二次スプール4の上端面には、スプール側係合爪41が立設されている。
【0030】
一次スプール3は、二次スプール4とほぼ同軸的に、かつ二次スプール4の外周側隣りに配置されている。一次コイル部30は、一次スプール3の外周側に巻回された一次巻線からなる。また、一次コイル部30の外周側には、一枚の珪素鋼板からなり、長手方向に貫通するスリットの入った円筒状の外周コア43が配置されている。
【0031】
コネクタ6は、樹脂製であって、コネクタ本体60と台座部61とからなる。コネクタ本体60は、角筒状であって、切り欠き窓21からハウジング2外方に突出して配置されている。台座部61は、下方に開口する凹状コア調芯部610を持つ平板状を呈している。台座部61は、広口部20のほぼ中央に配置されている。台座部61は、本発明の蓋体に含まれる。台座部61および凹状コア調芯部610については、後述する。台座部61の下面からは、スプール調芯部63および台座部側係合爪66が立設されている。スプール調芯部63は、リング状を呈している。スプール調芯部63は、二次スプール4上端の内周面を保持している。台座部側係合爪66は、前記スプール側係合爪41に係止されている。
【0032】
イグナイタ9は、パワートランジスタ(図略)や混成集積回路(図略)やヒートシンク(図略)などがモールド樹脂により封止され形成されている。イグナイタ9は、ECU(エンジン制御ユニット、図略)および一次コイル部30に電気的に接続されている。
【0033】
エポキシ樹脂8は、ハウジング2内に配置された上記部材間に介在している。エポキシ樹脂8は、本発明の樹脂絶縁材に含まれる。エポキシ樹脂8は、広口部20から真空引きしたハウジング2内に注入することにより、上記部材間に浸透し硬化する。
【0034】
高圧タワー部7は、ハウジング2の下方に配置されている。高圧タワー部7は、タワーハウジング70と高圧ターミナル71とスプリング72とプラグキャップ73とを備えている。
【0035】
タワーハウジング70は、樹脂製であって円筒状を呈している。タワーハウジング70の内周側中程には、上方に突出するボス部74が形成されている。高圧ターミナル71は、金属製であって下向き開口76を持つカップ状を呈している。下向き開口76には、ボス部74が挿入されている。すなわち、ボス部74により高圧ターミナル71が支持されている。また、高圧ターミナル71の上端面中央からは、上方に突出する凸部75が配置されている。この凸部75は、前記二次スプール4の下端開口42に挿入されている。また、凸部75は、二次コイル部40と電気的に接続されている。
【0036】
スプリング72は、螺旋状を呈している。スプリング72の上端は、高圧ターミナル71の下向き開口76に止着されている。スプリング72には、点火プラグが弾接している。
【0037】
プラグキャップ73は、ゴム製であって円筒状を呈している。このプラグキャップ73は、タワーハウジング70の下端部に環装されている。プラグキャップ73の内周側には、点火プラグが圧入され弾接している。
【0038】
次に、本実施形態の点火コイル1の通電時の動きについて説明する。ECUからの制御信号は、コネクタ6を介して、イグナイタ9に伝達される。イグナイタ9により電流の断続が行われると、自己誘導作用により一次コイル部30に所定の電圧が発生する。この電圧が、一次コイル部30と二次コイル部40との相互誘導作用により、昇圧される。そして、昇圧により発生した高電圧が、二次コイル部40から、高圧ターミナル71およびスプリング72を介して、点火プラグに伝達される。この高電圧により、点火プラグのギャップに火花が発生する。
【0039】
次に、本実施形態の点火コイルの台座部および凹状コア調芯部について説明する。図2に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。図に示すように、台座部61のほぼ中央には、凹状コア調芯部610が下方に開口して凹設されている。凹状コア調芯部610の内周側には、中心コア部5の上端が挿入されている。また、凹状コア調芯部610の開口縁からは、前記スプール調芯部63が立設されている。スプール調芯部63には、調芯部側スリット630が形成されている。調芯部側スリット630は、周方向に120゜ずつ離間して、合計三つ配置されている。一方、スプール調芯部63の外周側に配置された二次スプール4の上端には、スプール側スリット44が形成されている。スプール側スリット44は、調芯部側スリット630と径方向に対向している。すなわち、スプール側スリット44も、調芯部側スリット630と同様に、周方向に120゜ずつ離間して、合計三つ配置されている。
【0040】
次に、エポキシ樹脂注入時におけるボイドの動きについて説明する。エポキシ樹脂8は、中心コア部5外周面と二次スプール4内周面との隙間11に注入される。エポキシ樹脂8中のボイド10は、図中矢印で示すように、隙間11内をまず上方に移動する。次いで、調芯部側スリット630とスプール側スリット44とを介して、ボイド10は二次スプール4外周側に移動する。その後、二次スプール4外周側に移動したボイド10は、前出の図1の広口部20を介して、点火コイル1外部に放出される。
【0041】
次に、本実施形態の点火コイルの効果について説明する。本実施形態の点火コイル1によると、凹状コア調芯部610により、中心コア部5を調芯することができる。また、スプール調芯部63により、二次スプール4を調芯することができる。このため、中心コア部5と二次スプール4とを、ほぼ同軸的に配置することができる。
【0042】
また、本実施形態の点火コイル1によると、凹状コア調芯部610は二次スプール4の上方に配置されている。すなわち、凹状コア調芯部610と二次スプール4とが軸方向にずれている。このため、前出の図9において調芯部110が挿入されていた隙間11の上端部に、比較的広いスペースを確保することができる。したがって、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。
【0043】
また、スプール調芯部63は、前出の図9の調芯部110よりも軸長が短い。その理由は、図9の調芯部110は、中心コア部101および二次スプール102兼用だったからである。すなわち、中心コア部101上端には、柔らかい弾性部材108が配置されている。したがって、中心コア部101を高精度に調芯するためには、調芯部110を、硬い中心コア106が配置されている高度まで、延設する必要がある。言い換えると、調芯部110の実質的調芯代Lは、調芯部110と中心コア106とが径方向に重なっている部分だけである。このような理由から、調芯部110は軸長が長かった。
【0044】
これに対し、図2のスプール調芯部63は、硬い二次スプール4だけを調芯している。したがって、スプール調芯部63は軸長が短くて済む。この点においても、本実施形態の点火コイル1によると、隙間11の上端部に、比較的広いスペースを確保することができる。したがって、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。
【0045】
また、本実施形態の点火コイル1によると、コア調芯部として凹状コア調芯部610が配置されている。このため、比較的簡単な構造にも拘わらず、中心コア部5を高い精度で調芯することができる。
【0046】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、凹状コア調芯部の形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図3に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、凹状コア調芯部610は、台座部61を上下方向に貫通している。本実施形態の点火コイル1によると、凹状コア調芯部610の作製が容易になる。
【0047】
(3)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、弾性部材の形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図4に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、弾性部材50aは、シリコン製であってカップ状を呈している。弾性部材50aは、中心コア54および熱収縮チューブ52の上端を覆っている。また、弾性部材50aは、凹状コア調芯部610の側周壁内面および上底壁下面に弾接している。本実施形態の点火コイル1によると、弾性部材50aの装着が容易になる。
【0048】
(4)第四実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、中心コア部の上端に、コア側凸部が配置されている点である。また、凹状コア調芯部として、コア側凸部を覆う凹状コア調芯部が配置されている点である。また、スプール調芯部が二次スプールの外周側に配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0049】
図5に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、弾性部材50aの上方には、画鋲状の調芯部材55が配置されている。調芯部材55は、熱収縮チューブ52の収縮力により、固定されている。調芯部材55の上面ほぼ中央からは、コア側凸部550が突設されている。一方、台座部61の下端面には、凹状コア調芯部611が凹設されている。そして、凹状コア調芯部611にコア側凸部550が挿入されることにより、中心コア部5の調芯が行われている。また、スプール調芯部63は、二次スプール4の外周側に配置されている。
【0050】
凹状コア調芯部611は、コア側凸部550だけを保持すればよいため、底が浅くてもよい。したがって、本実施形態の点火コイル1によると、凹状コア調芯部611を凹設しても台座部61が上方に突出しない。このため、点火コイル1の軸長が短い。
【0051】
また、本実施形態の点火コイル1によると、スプール調芯部63が二次スプール4の外周側に配置されている。このため、隙間11の上端部に、より広いスペースを確保することができる。したがって、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。
【0052】
(5)第五実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、コア調芯部としてリング状コア調芯部がイグナイタから突設されている点である。また、スプール調芯部が二次スプールの外周側に配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0053】
図6に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、リング状コア調芯部612は、イグナイタ9の下端面から突設されている。リング状コア調芯部612は、モールド樹脂によりイグナイタ9と一体に形成されている。すなわち、本実施形態においては、イグナイタ9が本発明の蓋体に相当する。また、スプール調芯部63は、二次スプール4の外周側に配置されている。
【0054】
本実施形態の点火コイル1によると、台座部61の形状を単純化することができる。また、モールド樹脂でパワートランジスタなどを封止する際、同時にリング状コア調芯部612を作製することができる。このため、製造工数が少なくて済む。
【0055】
また、本実施形態の点火コイル1によると、スプール調芯部63が二次スプール4の外周側に配置されている。このため、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。
【0056】
(6)第六実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、コア調芯部として凸状コア調芯部が配置されている点である。また、中心コア部にコア側凹部が配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0057】
図7に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図2と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、弾性部材50aのほぼ中央には、コア側凹部51が穿設されている。一方、台座部61には、凸状コア調芯部613が突設されている。そして、コア側凹部51に凸状コア調芯部613が挿入されることにより、中心コア部5の調芯が行われている。
【0058】
本実施形態の点火コイル1によると、凸状コア調芯部613により、中心コア部5を調芯することができる。
【0059】
また、本実施形態の点火コイル1によると、中心コア部5の調芯は、中心コア部5の内周側において行われる。したがって、凸状コア調芯部613と二次スプール4とを軸方向に敢えてずらさなくても、隙間11の上端部に、比較的広いスペースを確保することができる。したがって、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。また、点火コイル1の軸長が短くなる。
【0060】
また、本実施形態の点火コイル1によると、コア側凹部51が弾性部材50aに穿設されている。したがって、コア側凹部51の形成が容易である。
【0061】
(7)第七実施形態
本実施形態と第六実施形態との相違点は、コア側凹部が、熱収縮チューブ内周側に形成されている点である。また、スプール調芯部が二次スプールの外周側に配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0062】
図8に、本実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、熱収縮チューブ52は、弾性部材50aの上端面からリング状に突出している。すなわち、熱収縮チューブ52上端内周側は、カップ状を呈している。このカップ状部分にコア側凹部51が配置されている。そして、コア側凹部51には、凸状コア調芯部613が挿入されている。この挿入により、中心コア部5の調芯が行われている。また、スプール調芯部63は、二次スプール4の外周側に配置されている。
【0063】
コア側凹部51は、まず中心コア54と、弾性部材50aと、これら二部材と同径の丸棒型と、を直列に並べ、次いでこれら三部材の外周側に熱収縮チューブ52を被せ、それから熱収縮チューブ52を加熱し収縮させ、最後に熱収縮チューブ52内から丸棒型を撤去することにより、形成される。
【0064】
本実施形態の点火コイル1によると、熱収縮チューブ52を中心コア54および弾性部材50aに被せる際、同時にコア側凹部51を形成することができる。このため、製造工数が少なくて済む。また、比較的簡単な構造で中心コア部5を調芯することができる。
【0065】
また、本実施形態の点火コイル1によると、スプール調芯部63が二次スプール4の外周側に配置されている。このため、隙間11のボイド10を迅速に、また充分に除去することができる。
【0066】
(8)その他
以上、本発明の点火コイルの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、二次スプール4にスプール側スリット44を、スプール調芯部63に調芯部側スリット630を、それぞれ配置した。しかしながら、これらのスリットの代わりに例えば孔などを穿設してもよい。また、これらのスリットは配置しなくてもいい。スリットが無くても隙間11上端部に確保されたスペースにより、ボイド10の移動をスムーズにすることができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、内周側に二次スプール4を、外周側に一次スプール3を、それぞれ配置した。しかしながら、この配置は逆でもよい。この場合、一次スプール3が本発明のスプールに相当する。
【0069】
また、上記実施形態においては、樹脂絶縁材としてエポキシ樹脂8を使用したが、他の熱硬化性樹脂を使用してもよい。また、上記実施形態においては、一次コイル部30の外周側に、外周コア43を配置したが、外周コア43は配置しなくてもいい。
【0070】
また、上記実施形態においては、被覆部材として熱収縮チューブ52を配置した。しかしながら、例えば被覆部材として、中心コア54および弾性部材50aに、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のテープを巻回してもよい。この場合、第七実施形態(図8参照)において、中心コア54と弾性部材50aと凸状コア調芯部613とを直列に並べ、これら三部材の外周面にテープを螺旋状に巻回していくことにより、コア側凹部51の形成と、コア側凹部51への凸状コア調芯部613の挿入とが同時に行える。このため、製造工数が少なくて済む。
【0071】
また、第七実施形態以外の実施形態においては、被覆部材は配置しなくてもよい。また、第六実施形態以外の実施形態においては、弾性部材は配置しなくてもよい。また、第五実施形態以外の実施形態においては、イグナイタは点火コイル外付けでもよい。
【0072】
【発明の効果】
本発明によると、中心コア部を調芯でき、中心コア部とスプールとの隙間のボイドが除去しやすい点火コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一実施形態の点火コイルの軸方向断面図である。
【図2】 第一実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図3】 第二実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図4】 第三実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図5】 第四実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図6】 第五実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図7】 第六実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図8】 第七実施形態の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【図9】従来の点火コイルの中心コア部上端部付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
1:点火コイル、2:ハウジング、20:広口部、21:切り欠き窓、3:一次スプール、30:一次コイル部、4:二次スプール(スプール)、40:二次コイル部、41:スプール側係合爪、42:下端開口、43:外周コア、44:スプール側スリット、5:中心コア部、50a:弾性部材、50b:弾性部材、51:コア側凹部、52:熱収縮チューブ(被覆部材)、54:中心コア、55:調芯部材、550:コア側凸部、6:コネクタ、60:コネクタ本体、61:台座部(蓋体)、610:凹状コア調芯部、611:凹状コア調芯部、612:リング状コア調芯部、613:凸状コア調芯部、63:スプール調芯部、630:調芯部側スリット、66:台座部側係合爪、7:高圧タワー部、70:タワーハウジング、71:高圧ターミナル、72:スプリング、73:プラグキャップ、74:ボス部、75:凸部、76:下向き開口、8:エポキシ樹脂(樹脂絶縁材)、9:イグナイタ(蓋体)、10:ボイド、11:隙間。

Claims (2)

  1. 棒状の中心コアを持つ中心コア部と、該中心コア部の外周側にほぼ同軸的に配置された筒状のスプールと、該中心コア部と該スプールとの隙間に充填される樹脂絶縁材と、該中心コア部の調芯を行うコア調芯部を持つ蓋体と、を備えてなる点火コイルであって、
    前記中心コア部は、前記中心コアの外周側に被覆部材を備えており、軸方向一端に前記被覆部材がリング状に突出して形成されるコア側凹部を備え、
    前記コア調芯部は、該コア側凹部に挿入される凸状コア調芯部であり、
    前記点火コイルは、さらに、前記蓋体に立設され前記スプールの調芯を行うスプール調芯部を有し、
    前記スプールの前記蓋体側の端部および前記スプール調芯部には、スリットまたは孔が設けられていることを特徴とする点火コイル。
  2. 前記スプールの前記蓋体側の端部に設けられた前記スリットまたは前記孔と前記スプール調芯部に設けられた前記スリットまたは前記孔とが径方向に対向する請求項1に記載の点火コイル。
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