JP4040824B2 - 溶接金属 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水圧鉄管への利用が検討されている引張強さが950MPa級の高張力鋼(以下、HT950級鋼という)の継手を被覆アーク溶接棒で溶接する際に必要とされる破壊靭性が優れた溶接金属に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、揚水発電所の水圧鉄管は、大規模化により大径厚肉化の傾向をたどり、それに、伴って高強度化が図られ、最近ではHT950級鋼の適用に向けて検討が進められている。しかし、以下に示す種々の課題がある。先ず、その課題の1つは、溶接金属部の破壊靭性の確保であり、溶接材料の分野においても、高靭性溶接材料の取組みがなされている。従来の技術では、既存の低温・高強度鋼用溶接材料の延長として考えられ、被覆アーク溶接における溶接金属のNiの含有量を約2.5質量%になるように調整することで破壊靭性を確保している。溶接金属の破壊靭性試験として、主に採用されているCTOD試験(亀裂先端開口変位試験)を実施した場合、温度0℃におけるCTOD値は0.1mm前後の値を得ていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近時、水圧鉄管に要求される仕様がより厳しくなり、CTOD値が0.1mm以上要求される事例が出てきたことに加え、その破壊形態が延性破壊、いわゆる安定破壊であることが求められている。従来のNiの含有量が約2.5質量%である溶接金属では、0.1mm以上のCTOD値を安定的に得ることは難しく、更に破壊形態としては、脆性破壊の部分が必ず含まれ、いわゆる不安定破壊の状態であり、CTOD値が極めて悪くなることがあるという問題点がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、950MPa級の高張力鋼の継手を被覆アーク溶接棒で作製した場合、十分なCTOD値を得ることができ、かつ安定的に破壊する溶接金属を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願第1発明に係る溶接金属は、低水素系被覆アーク溶接棒を使用して形成される溶接金属において、溶接金属全質量あたり、C:0.07質量%以下、Mn:1.1乃至1.6質量%、Si:0.30乃至0.60質量%、Ni:3.1乃至4.5質量%並びにCr及びMoの総量:0.9乃至1.9質量%を含有し、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.025質量%以下及びN:0.025質量%以下に規制し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、引張強さが800乃至1100MPaであることを特徴とする。
【0006】
本願第2発明に係る溶接金属は、低水素系被覆アーク溶接棒を使用して溶接される溶接金属において、溶接金属全質量あたり、低水素系被覆アーク溶接棒を使用して形成される溶接金属において、溶接金属全質量あたり、C:0.07質量%以下、Mn:1.1乃至1.6質量%、Si:0.30乃至0.60質量%、Ni:3.1乃至4.5質量%並びにCr及びMoの総量:0.9乃至1.9質量%を含有し、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.025質量%以下及びN:0.025質量%以下に規制し、更にNb:0.015質量%以下、V:0.015質量%以下、Ti:0.030質量%以下及びCu:0.30質量%以下からなる群から選択された1種以上を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、引張強さが800乃至1100MPaであることを特徴とする。
【0007】
また、前記溶接金属は、引張強さが920乃至1100MPaであることが好ましい。
【0008】
前記低水素系被覆アーク溶接棒は、鋼心線と被覆材とからなり、例えば、前記鋼心線は、鋼心線全質量あたり、C:0.07質量%以下、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、N:0.0070質量%以下及びO:0.100質量%以下に規制し、前記被覆剤は、被覆剤全質量あたり、金属炭酸塩:CO2換算値で15乃至25質量%及び金属フッ化物:F換算値で4乃至10質量%を含有する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。本願発明者等が上述の課題を解決すべく、鋭意実験研究を重ねた結果、溶接金属のNiの含有量を適切に調整することにより、優れた破壊靭性を得ることができると共に、安定的な破壊を得ることができることを見出した。
【0010】
従来より溶接金属中にNiを添加することにより、低温において高靭性が得られることが知られている。本発明以前のHT950級鋼用被覆アーク溶接材料は、その思想を継承した設計となっている。即ち、溶接金属にNiを添加することにより、優れた破壊靭性が得られるものの、Niの添加量は2.5質量%程度でよく、Niは2.5質量%を超えた量を添加しても、それ以上の破壊靭性の向上効果が認められなかった。ところが、HT950級鋼の溶接金属においては、2.5質量%を超えて、Niを添加しても破壊靭性の向上効果があることがわかり、Niの含有量が3.1質量%以上であると、破壊モードが安定的破壊になることが判明した。
【0011】
以下、本発明の溶接金属の組成限定理由について説明する。
【0012】
C:0.07質量%以下
Cは溶接金属の強度確保に必要な元素である。しかし、Cの含有量が0.07質量%を超えると溶接割れの感受性が高くなる。従って、Cの含有量は0.07質量%以下とする。
【0013】
Mn:1.1乃至1.6質量%
Mnは強度の確保と脱酸効果とを目的に添加する。Mnの含有量が1.1質量%未満では、強度及び脱酸効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.6質量%を超えると、上部ベイナイトが晶出して破壊靭性が劣化する。従って、Mnの含有量は1.1乃至1.6質量%とする。
【0014】
Si:0.30乃至0.60質量%
Siは強度の確保と脱酸効果とを目的に添加する。Siの含有量が0.30質量%未満では、強度及び脱酸効果が不十分である。一方、Siの含有量が0.60質量%を超えると、島状マルテンサイトが晶出して破壊靭性が劣化する。従って、Siの含有量は0.30乃至0.60質量%とする。
【0015】
Ni:3.1乃至4.5質量%
NiはCTOD値の確保と安定した破壊とを得るために添加する。Niの含有量が3.1質量%未満では、脆性破壊の発生が皆無にならない。そして、CTOD値はせいぜい0.1mm程度であり、このとき、破壊モードは不安定破壊である。一方、Niの含有量が4.5質量%を超えると、粒界が脆化して靭性が低下する。従って、Niの含有量は3.1乃至4.5質量%とする。
【0016】
Cr及びMoの総量:0.9乃至1.9質量%
Crは焼き入れ性を確保するために添加し、Moは焼き戻し脆化を防止するために添加する。Cr及びMoの含有量は総量で0.9質量%未満では焼き入れ性及び焼き戻し脆化を防止する効果が不十分である。一方、Cr及びMoの含有量は総量で1.9質量%を超えると、δフェライト層が晶出し、破壊靭性が劣化する。従って、Cr及びMoの含有量は総量で0.9乃至1.9質量%とする。
【0017】
P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下
P及びSは溶接時に最終凝固部に偏析し靭性が劣化する。このため、その含有量は極力低減することが好ましい。しかし、P及びSの含有量を少なくするほどコストが上昇する。従って、本発明に影響が少ない範囲として、Pの含有量は0.010質量%以下に規制し、Sの含有量は0.010質量%以下に規制する。
【0018】
O:0.025質量%以下
Oは主としてSi又はMn等と非金属介在物を形成し、破壊靭性を劣化させる。このため、Oの含有量はなるべく低い値とすることが好ましい。しかし、Oの含有量を少なくするほど、コストが上昇する。従って、本発明に影響が少ない範囲として、Oの含有量は0.025質量%以下に規制する。
【0019】
N:0.025質量%以下
過剰なNは靭性劣化の原因となるため、なるべくNの含有量は低い値とすることが好ましい。従って、Nは0.025質量%以下に規制する。
【0020】
引張強さ(σ B ):800乃至1100MPa
上述の組成範囲で安定した破壊靭性が得られる引張強さ範囲は800乃至1100MPaである。引張強さが800MPa未満では、Niの添加効果が不十分で不安定破壊が皆無にならない。一方、引張強さが1100MPaを超えると、耐割れ性が極めて劣化する。従って、引張強さは800乃至1100MPaとする。なお、より好ましいCTOD値を得るためには、引張強さを920MPa以上とすることが望ましい。
【0021】
Nb:0.015質量%以下、V:0.015質量%以下、Ti:0.030質量%以下及びCu:0.30質量%以下からなる群から選択された1種以上
溶接金属の強度をより確実に確保するためには、Nb、V、Ti及びCuを添加することが望ましい。一方、適用する鋼板によっては、Nb、V、Ti及びCuが添加されている可能性がある。母材と溶接金属部との境界付近では、これらの成分が希釈されて溶接金属に入ることも考えられるが、その量が多くなった場合、強度が高すぎ、破壊靭性も劣化する。また、耐割れ性が劣化することが懸念される。従って、Nbの含有量は0.015質量%以下、Vの含有量は0.015質量%以下、Tiの含有量は0.030質量%以下及びCu:0.30質量%以下からなる群から選択された1種以上とすることが好ましい。
【0022】
上述の如く説明した組成を有する溶接金属を得る方法として、JIS Z3111に従った溶接方法を適用することができる。即ち、開先面及び裏当金表面に2層以上、かつ3mm以上のバタリングを低水素系被覆アーク溶接棒で実施した板厚が20mmmの試験板を使用し、7乃至8層、12乃至15パス(パス間温度は100℃)で積層溶接する。また、溶接金属の試験片に使用した引張試験片(A1号)及び化学分析用試験片はともに、ビード中央かつ板厚中央部の位置から採取したものである。なお、この方法で得られた引張試験の結果及び化学分析の結果は、板厚がより一層厚い厚板を使用して作製した継手のビード中央かつ、板厚の1/4の位置から採取した試験片により試験した結果とはほぼ等しいことを確認している。
【0023】
また、被覆アーク溶接棒は、鋼心線と被覆材とからなる。この鋼心線の成分を限定した理由について説明する。
【0024】
C:0.07質量%以下
鋼心線中のCは、含有量が高くなると耐割れ性が劣化する。このため、なるべくCの含有量は低い値とすることが望ましい。しかし、Cの含有量は少なくなるほど、コストが上昇する。従って、本発明に影響が少ない範囲として、Cの含有量は0.07質量%とすることが好ましい。
【0025】
P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、N:0.0070質量%以下及びO:0.100質量%以下に規制
低温靭性の確保のため、P、S、N及びOの含有量はなるべく低い値とすることが望ましい。しかし、P、S、N及びOの含有量は少なくなるほど、コストが上昇する。従って、本発明の影響が少ない範囲として、Pの含有量は0.010質量%以下、Sの含有量は0.010質量%以下、Nの含有量は0.0070質量%以下及びOの含有量は0.100質量%以下に規制することが好ましい。
【0026】
次に、被覆剤の成分の限定理由について説明する。
【0027】
金属炭酸塩:CO 2 換算で15乃至25質量%
金属炭酸塩はアークの熱で分解されてガスが発生し、アーク雰囲気を大気から保護する働きがある。金属炭酸塩の含有量がCO2換算で15質量%未満では、シールドガスが不足し、溶接金属中に大気中の窒素、水素及び酸素が溶解し、靭性又は耐割れ性の劣化を起こす。一方、金属炭酸塩の含有量がCO2換算で25質量%を超えると、アークが不安定になり、ビード形状又はスラグ剥離性等の溶接作業性が劣化する。従って、金属炭酸塩の含有量はCO2換算で15乃至25質量%とすることが好ましい。
【0028】
金属フッ化物:F換算で4乃至10質量%
金属フッ化物は、溶融スラグの流動性調整のため添加する。金属フッ化物がF換算で4質量%未満では、溶融スラグの粘性が不足し、スラグの被包性が悪くなり、ビード形状も劣化する。一方、金属フッ化物がF換算で10質量%を超えると、保護筒の形状が不完全となり、アークの安定性が悪くなる。従って、金属フッ化物はF換算で4乃至10質量%とすることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例に係る溶接金属について、その特性を比較例と比較して具体的に説明する。
【0030】
本発明の成分の溶接金属を得るために被覆アーク溶接棒の被覆剤に各種合金成分を添加する手法を使用した。下記表1及び2に示す組成の鋼心線を使用し、下記表3乃至8に示す組成の被覆剤を塗布した。なお、被覆アーク溶接棒は、心線の直径を4mmとし、下記数式1により算出される被覆剤の被覆率が26乃至45%となるように作製した。なお、表1乃至8において、「−」は添加していないことを示す。
【0031】
【数1】
被覆率=(被覆剤の質量/溶接棒の全質量)×100(%)
【0032】
溶接金属の化学組成及び強度を測定するのに使用した溶接金属については、JIS Z3111に従って試験を実施した。試験体を100℃の温度で予熱し、8層15パスで積層溶接した。なお、パス間温度は100℃で管理した。その後、引張試験片(A1号)及び化学分析用試験片を採取した。そして、化学成分の分析及び引張試験を行った。この溶接金属の化学分析の結果を表11乃至14に示し、引張試験の結果を表15及び16に示す。なお、これら試験片はともに、ビード中央でかつ板厚中央部の位置から採取したものである。また、表11、13及び14において、「Tr.」は含有量が微量であることを示す。
【0033】
図1(a)はCTOD試験片を採取する開先形状を示す模式図、(b)は溶接後の裏面側の開先形状を示す模式図である。なお、図1(a)及び(b)に示される部材の寸法を示す数値の単位はmmである。
【0034】
CTOD試験については、下記表9に示す組成を有する板厚が50mmの鋼板1を使用して、図1(a)に示すX開先2の突合せ継手を試験体とした。そして、試験体を100℃の温度に予熱した後、上述の被覆溶接棒を使用し、下記表10に示す溶接条件で表面側の開先部3を8層15パスで溶接した。そして、裏面側の開先部4を図1(b)に示すように、ガウジング加工した後、この開先部4を8層15パスで溶接した。なお、溶接中のパス間温度は100乃至120℃で管理した。また、開先部3、4は、いずれも1乃至3層までを1パス、4乃至6層までを2パス、7乃至8層までを3パスで溶接されている。
【0035】
そして、CTOD試験片をWES1109に従い幅が50mm、厚さが50mmのサブサイズで採取した。そして、0℃の温度でCTOD試験を行い、CTOD値を測定した。この結果を表15及び16に示す。なお、表16に示す「−」は試験を実施していないことを示す。また、本実施例の被覆アーク溶接棒の溶接作業性についても評価した。これは、溶接中のガス吹上、溶接後のスラグ剥離、ビード形状の安定性及びビード外観(気孔欠陥がないこと等)を総合して評価した。評価は、いずれも良好であれば○とした。
【0036】
CTOD試験における破壊モードの安定又は不安定は、WES1108−1995の「CTODの試験方法」に従い、破壊モードを決定した。この破壊モードは、WES1108−1995に示されるδc(完全脆性破壊)を安定とし、δu(安全延性き裂成長を伴う脆性破壊)及びδm(最大荷重後荷重低下を伴う破壊)を不安定とした。また、表15及び16の「評価」の欄に示す評価については、作業性が○であり、破壊モードが安定であり、引張強さが820乃至1100MPaであるものを○とし、それ以外のものを×とした。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【表10】
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】
【表13】
【0050】
【表14】
【0051】
【表15】
【0052】
【表16】
【0053】
上記表15に示すように、実施例No.1乃至9は本願請求項2を満足しており、溶接作業性、引張強さ、CTOD値及び破壊モードの評価が良好であった。また、実施例No.10乃至17は本願請求項1を満足するので、溶接作業性、引張強さ、CTOD値及び破壊モードの評価が良好であった。このように、実施例No.10乃至17は本願請求項2と成分系が異なるものの、本願請求項1を満足すれば、良好なCTOD値を得ることができる。なお、実施例No.5は心線のNの含有量が高く、溶接金属のNの含有量が増加したものの、CTOD値は0.1mm以上であった。しかし、溶接金属のNの含有量がこれ以上増加した場合、CTOD値を確保することは困難である。
【0054】
一方、上記表16に示す比較例のうち、比較例No.18乃至26、28乃至31並びに43及び44は本願請求項2の比較例である。また、比較例No.32乃至42は本願請求項1の比較例である。
【0055】
本願請求項2の比較例において、比較例No.18はSiの含有量が本願請求項2の下限値未満であり、CTOD値は良好値を示したものの、酸化物による析出が原因で溶接欠陥が多発し、破壊が不安定になった。比較例No.21、19及び20は夫々心線のP、S及びOの含有量が高く、溶接金属のP,S及びOの含有量が本願請求項2の上限値を超えているので、CTOD値が劣化した。比較例No.22はSiの含有量が本願請求項2の上限値を超えているので、CTOD値が不足した。比較例No.23はMnの含有量が本願請求項2の下限値未満であるので、強度が低く、CTOD値が不足した。比較例No.24はMnの含有量が本願請求項2の上限値を超えているので、強度が高く、CTOD値が不足した。
【0056】
比較例No.25はNiの含有量が本願請求項2の下限値未満であるので、CTOD値が不足した。比較例No.26はNiの含有量が本願請求項2の上限値を超えているので、CTOD値が低下した。比較例No.28はCr及びMoの含有量の合計が本願請求項2の上限値を超えているので、強度が高く、CTOD値が低下した。比較例No.29は引張強さが本願請求項2の下限値未満であるので、強度が低く、CTOD値が不足した。比較例No.30は引張強さが本願請求項2の上限値を超えているので、強度が高く、CTOD値が低下した。比較例No.31は心線のCの含有量が高く、溶接金属のCの含有量が増加した結果、本願請求項2の上限値を超え、高温割れが発生した。このため、その後の試験を中止した。比較例No.43はCr及びMoの含有量が本願請求項2の下限値未満であるので、強度が低く、CTOD値が不足した。比較例No.44はNの含有量が本願請求項2の上限値を超えているので、強度が高く、CTOD値が低下した。
【0057】
一方、本願請求項1の比較例において、比較例No.27はCr及びMoの含有量の合計が本願請求項1の下限値未満であるので、強度が低く、CTOD値が不足した。比較例No.32は心線のCの含有量が高く、溶接金属のCの含有量が増加した結果、本願請求項1の上限値を超えているので、高温割れが発生した。このため、その後の試験を中止した。比較例No.33はSiの含有量が本願請求項1の下限値未満であり、CTOD値は良好値を示したものの、酸化物による析出が原因で溶接欠陥が多発し、破壊が不安定になった。比較例No.34はSiの含有量が本願請求項1の上限値を超えているので、CTOD値が不足した。比較例No.35はMnの含有量が本願請求項1の下限値未満であるので、強度が低く、CTOD値が不足した。比較例No.36はMnの含有量が本願請求項1の上限値を超えているので、CTOD値が不足した。比較例No.37、38及び42は夫々心線のP、S及びOの含有量が高く、溶接金属のP,S及びOの含有量が本願請求項1の上限値を超えているので、CTOD値が劣化した。
【0058】
比較例No.39はNiの含有量が本願請求項1の下限値未満であるので、CTOD値が不足した。比較例No.40はNiの含有量が本願請求項1の上限値を超えているので、CTOD値が低下した。比較例No.41はCr及びMoの含有量の合計が本願請求項1が本発明の上限値を超えているので、強度が高く、CTOD値が低下した。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、溶接金属の組成を適切に規定しているので、HT950級鋼等の高張力鋼を溶接することにより形成した場合、CTOD値が高く、かつ安定的に破壊する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はCTOD試験片を採取する開先形状を示す模式図、(b)は溶接後の裏面側の開先形状を示す模式図である。
【符号の説明】
1;鋼板
2;開先
3、4;開先部
Claims (4)
- 低水素系被覆アーク溶接棒を使用して形成される溶接金属において、溶接金属全質量あたり、C:0.07質量%以下、Mn:1.1乃至1.6質量%、Si:0.30乃至0.60質量%、Ni:3.1乃至4.5質量%並びにCr及びMoの総量:0.9乃至1.9質量%を含有し、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.025質量%以下及びN:0.025質量%以下に規制し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、引張強さが800乃至1100MPaであることを特徴とする溶接金属。
- 更にNb:0.015質量%以下、V:0.015質量%以下、Ti:0.030質量%以下及びCu:0.30質量%以下からなる群から選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接金属。
- 引張強さが920乃至1100MPaであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接金属。
- 前記低水素系被覆アーク溶接棒は、鋼心線と被覆材とからなり、前記鋼心線は、鋼心線全質量あたり、C:0.07質量%以下、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、N:0.0070質量%以下及びO:0.100質量%以下に規制し、前記被覆剤は、被覆剤全質量あたり、金属炭酸塩:CO2換算値で15乃至25質量%及び金属フッ化物:F換算値で4乃至10質量%を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接金属。
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